定量的地震学6
つなぎで地震学の続きを書きます。
前回は内部面上での応力,または変位(歪み)の不連続性で表現される地震源(面源)の体源による等価物の存在を証明しました。
そして,断層面を横切る剪断作用に対する体積力の等価物として次のような表現が得られるという結論で終わりました。
まず,応力の不連続性[T]がゼロでない場合には,その寄与-∫-∞∞dτ∫Σ[Tp(u(ξ,τ),ν)]Gnp(ξ,t-τ;x,0)}dΣξは,-∫-∞∞dτ∫V(∫Σ{[Tp(u(ξ,τ),ν)]δ3(η-ξ)dΣξ}Gnp(ξ,t-τ;x,0))dVηで表現できます。
それ故,Σ上の応力不連続性の体積力等価物はf[T](η,τ)≡-∫Σ[Tp(u(ξ,τ),ν)]δ3(η-ξ)dΣξで与えられます。
一方,変位の不連続性による寄与∫-∞∞dτ∫Σ[ui(ξ,τ)]Cijpq(ξ)νj{∂Gnp(ξ,τ-t;x,0)/∂ξq}は,-∫-∞∞dτ∫V (∫Σ[ui(ξ,τ)]Cijpq(ξ)νj{∂δ3(η-ξ)/∂ηq}dΣξ)Gnp(ξ,t-τ;x,0)dVηで表現されます。
そこで,Σ上の変位不連続性の体積力等価物はfp[u](η,τ)≡-∫Σ[ui(ξ,τ)]Cijpq(ξ)νj{∂δ3(η-ξ)/∂ηq}dΣξで与えられると考えられます。
ただし,鍵括弧[ ]の量はΣ上の各点での不連続性を表わす量です。
すなわち,[T(ξ,τ)]≡T(ξ,τ)|Σ+-T(ξ,τ)|Σ-,かつ[ui(ξ,τ)]≡ui(ξ,τ)|Σ+-ui(ξ,τ)|Σ-etc.と定義されています。
という内容のことを書きました。
こうすれば応力,および変位の不連続性はそれぞれ-∫-∞∞dτ∫Σ[Tp(u(ξ,τ),ν)]Gnp(ξ,t-τ;x,0)}dΣξ=∫-∞∞dτ∫V[fp[T](η,τ)Gnp(x,t-τ;η,0)]dVη,および∫-∞∞dτ∫Σ[ui(ξ,τ)]Cijpq(ξ)νj{∂Gnp(ξ,τ-t;x,0)/∂ξq}=∫-∞∞dτ∫V[fp[u](η,τ)Gnp(x,t-τ;η,0)]dVηと体源で表現できるわけです。
まず,これらについて前回,少し書き残したことを補足することから始めます。
上記,変位不連続性の表現の被積分関数は,各pに対して,添字i,j,qのそれぞれが異なる27個の項を含んでいますが,以下では媒質に対称性があって2個か3個を除く全ての項がゼロであるような重要な例を取り上げる予定です。
しかし,取り合えず上記の恒等式自体は一般的な非均質,非等方媒質に対して成立する式です。
これらはV内の各点における体源応力が断層面の上の弾性媒質の性質のみに依存する表現になっていることは注目すべきことです。
そして,V内の断層運動は内部プロセス(内力のみの系)なので,全運動量と全角運動量は保存されなければなりません。
すなわち,全てのτに対し∫Vf[u](η,τ)dVη=0,かつ全てのτとη0に対し∫V[(η-η0)×f[u](η,τ)dVη=0 であるべきです。
実際,fp[u](η,τ)≡-∫Σ[ui(ξ,τ)]Cijpq(ξ)νj{∂δ3(η-ξ)/∂ηq}dΣξですから,ガウスの積分定理によって∫Vfp[u](η,τ)dVη=-∫VdVη∫ΣdΣξ{[([ui(ξ,τ)]Cijpq(ξ)νj{∂δ3(η-ξ)/∂ηq}=∫ΣdΣξ∫SextdSη[ui(ξ,τ)]Cijpq(ξ)νjδ3(η-ξ)です。
ところがSextとΣは全く共通点がないので,決してη=ξとは成り得ず,最右辺は確かに消えます。
一方,∫V[(η-η0)×f[u](η,τ)dVηの第m成分は∫Vεmnp(ηn-η0n)fp[u](η,τ)dVη=-∫ΣdΣξ[ui(ξ,τ)]Cijpq(ξ)νj∫VdVη(εmnp(ηn-η0n){∂δ3(η-ξ)/∂ηq})=∫Σ(εmqpCijpq(ξ)νj[ui(ξ,τ)])dΣξで与えられます。
ところがCijpq(ξ)=Cijqp(ξ),かつεmqp=εmqpなので,これの右辺もゼロになります。
こうして体積力の表現が内力である条件を満たす合理的なものであることを示すことができました。これが前回書き残した補足事項です。
さて,野外の不連続性に等価な体積力の簡単な例として,丁度1点と1方向に加えられた体積力のケースを考えます。
以前の記事「定量的地震学1,3」では次のように瞬間体積力を与えました。
“x=ξに対する1つの個別粒子に時刻t=τにn方向に瞬時的に加えられる1つの体積力f(x,t)があれば,その成分fi(x,t)は空間位置を与えるのに3次元のディラック(Dirac)のデルタ関数,衝撃の時刻を与えるのに1次元のデルタ関数に比例してfi(x,t)=Aδ3(x-ξ)δ(t-τ)δinと表現されます。
ただしAは衝撃の強さを与える定数です。fi,δ3(x-ξ),δ(t-τ)の次元がそれぞれ[力/体積]=MLT-2/L3,1/L3,1/Tであることに着目するとδinは無次元なので,衝撃の強さAは正しく,”衝撃=力積”の物理的次元を有することがわかります。”
これは,応力成分の不連続性とみなすこともできます。
ここでは,体積力の応力の不連続性との等価性を見るために,x3を深さ方向とし,x3=hの1点(0,0,h)に加わる体積力ですがδ(t-τ)に比例する瞬時的な力ではなく,τ=0から定常的にx3=hの1点(0,0,h)にFの大きさの体積力とします。
すなわち,f(η,τ)=Fδ(η1)δ(η2)δ(η3-h)θ(τ),F≡(0,0,F)とします。ここでθ(τ)はHeaviside関数(階段関数)です。
これは,平面ξ3=h上の1点を横切る応力の不連続性:[T(ξ,τ)]=T(ξ,τ)|(ξ1,ξ2,h+)-T(ξ,τ)|(ξ1,ξ2,h-)=-Fδ(ξ1)δ(ξ2)θ(τ)と同一視できることがわかります。
これは,先に得られた表現:f[T](η,τ)≡-∫Σ{[Tp(u(ξ,τ),ν)]δ3(η-ξ)dΣξの右辺において,平面ξ3=hをΣとして,[Tp(u(ξ,τ),ν)]=-Fδ(ξ1)δ(ξ2)θ(τ)を代入すれば,f[T](η,τ)=Fδ(η1)δ(η2)δ(η3-h)θ(τ)が確かに得られることからわかります。
断層スリップ(地滑り)によって引き起こされる地震波は,モーメントを帳消しにするようなある断層上の力の分布によって引き起こされる地震波と同じです。
問題としている断層スリップに対し,この力の分布は一意的ではありませんが,等方的な媒質内ではそれを常に複数の偶力源の表面分布として選択可能です。
この結論は,地震が単一の偶力源か複数の偶力源のいずれによってモデル化されるかという疑問に関連して長期間論じられた論争の見地からは皮肉な結論です。
単一の偶力源を擁護する人々は地震は断層上のスリップが原因であると強く信じていました。そして彼らは,これが単一の偶力源,すなわち断層の相対する側の運動に対応する2つの力に等価であると直線的に信じました。
しかし,弾性力学では経験上直線的アプローチは危険なことが多いようです。
複数の偶力源を擁護する人々のあるものは,地震が既存の剪断応力下での体積的崩壊であるに違いないと思っていました。
今や,複数の偶力源に等価であると認識されている近年の断層理論は,莫大な距離で観測された放射パターンによる支持のみならず,震源に非常に近いところで得られたデータによる強い支持を得ています。
断層Σは平面ξ3=0 上にあるものとします。すると,スリップ[u]はξ3方向には成分を持たず,ベクトル[u]は平面Σに平行と考えられます。
さらに,平面ξ3=0 上でのスリップ[u]の方向をξ1方向とします。すると,[u2]=[u3]=0 でありν1=ν2=0 ,ν3=1 です。
そこで,等価体積力の表現:fp[u](η,τ)=-∫Σ[ui(ξ,τ)]Cijpq(ξ)νj{∂δ3(η-ξ)/∂ηq}dΣξは,fp[u](η,τ)=-∫Σ[u1(ξ,τ)]C13pq(ξ){∂δ3(η-ξ)/∂ηq}dξ1dξ2となります。
既述のように,不均質でも等方的な物質では弾性係数CijpqはCijpq=λδijδpq+μ(δipδjq+δiqδjp)なる形をしています。独立定数λ,μはLame(ラメ)の定数と呼ばれます。
よって,今の場合の被積分関数のC13pq(ξ)は,C1313(ξ)=C1331(ξ)=μ(ξ)を除いて全てゼロです。
それ故,f1[u](η,τ)=-∫Σμ(ξ)[u1(ξ,τ)]δ(η1-ξ1)δ(η2-ξ2){∂δ(η3)/∂η3}dξ1dξ2,f2[u](η,τ)=0,f3[u](η,τ)=-∫Σμ(ξ)[u1(ξ,τ)]{∂δ(η1-ξ1)/∂η1}δ(η2-ξ2)δ(η3)dξ1dξ2となります。
まず,f1[u](η,τ)=-∫Σμ(ξ)[u1(ξ,τ)]δ(η1-ξ1)δ(η2-ξ2){∂δ(η3)/∂η3}dξ1dξ2を見ると,これは±η1方向内の力でη2方向に腕がありη3方向にモーメントを持つΣにわたる単偶力源を示しているとわかります。
実際,積分を実行すると,f1[u](η,τ)=-μ(η)[u1(η,τ)]{∂δ(η3)/∂η3}です。
これは平面η3=0+上に寄与する点力とη3=0-上に寄与する反対向きの点力のペアであると考えられ,補足事項の最初の式で示したように,内力なのでf1[u](η,τ)の合力成分は消えます。
一方,力のモーメントはこの力の成分だけでは消えず,この成分によるη2軸の回りのモーメントは∫Vη3f1[u]dV=-∫Vη3μ(η)[u1(η,τ)]{∂δ(η3)/∂η3}dη1dη2dη3=∫Σμ(ξ)[u1(ξ,τ)]dΣξとなります。
Σにわたるスリップを平均すると,<u(τ)>≡∫Σ[u1(ξ,τ)]dΣξ/Sです。ただし,S≡∫ΣdΣξは断層の全面積です。
そこで,もしも断層域が均質,つまりΣの上でμ(ξ)=μ(一定)なら,η2軸の回りのf1[u](η,τ)による全モーメントは,単にη2軸の正の向きに∫Vη3f1[u]dV=∫Σμ(ξ)[u1(ξ,τ)]dΣξ=μS<u(τ)>で与えられます。
体積力には,また3軸成分:f3[u](η,τ)=-∫Σμ(ξ)[u1(ξ,τ)]{∂δ(η1-ξ1)/∂η1}δ(η2-ξ2)δ(η3)dξ1dξ2=-∂{μ(η)[u1(η,τ)]/∂η1}δ(η3)があります。
この成分によるη2軸の回りの力のモーメントは-∫Vη1f3[u]dV=∫Vη1∂{μ(η)[u1(η,τ)]/∂η1}δ(η3)dη1dη2dη3=-∫Σμ(ξ)[u1(ξ,τ)]dΣξです。
これについても,もしも媒質が均質でΣの上でμ(ξ)=μ(一定)なら,-μS<u(τ)>です。
よって,均質,不均質いずれにしても全モーメントはゼロです。これも既に,補足事項として一般的な形で証明した事実に一致しています。
途中ですが今日はここで終わります。
参考文献:K.Aki,& P.G.Richards 「Quantitative Seismology(Theory and Method)」
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