遅延選択実験(タイムマシン?)(3)
遅延選択実験の翻訳と解釈の作業の続きです。
Ⅲ.The Delayed-Choice Version of a Quantum Beat Experiment(量子ビ-ト実験の遅延選択バージョン)
時間領域での干渉の遅延選択の様相も空間の干渉と同様な方法で論じることができます。
実験の観測としては量子ビートの方法が用いられます。
最も簡単なケースは,周波数ω1,ω2に対してパルス緩和時間τが特性ビート周波数(ω2-ω1)の逆数よりも小さいレーザーパルスを持つ基底状態|c>から,2つの周波数ω1,ω2に対応する2つのエネルギー準位|a>,|b>がコヒーレントに励起されるケースです。
系の状態|ψ>は2つの励起状態|a>,|b>の重ね合わせで記述されます。
すなわち,|ψ>=(α|a>+β|b>)|O>(α,βは複素係数)です。初期には光子は全く存在しないので電場は"真空状態=|O>"です。
自発放出により2つの状態は基底状態|c>に落下して戻ります。すなわち,次の2つの経路を生じます。|c>→|a>→|c>,および|c>→|b>→|c>です。
これらの"ルート"の干渉は時間-解像蛍光強度Iの変調として現われます。より正確には強度はI=(1/r2)Θ(t-r/c)exp{-2γ(t-r/c)}[|αε1|2+|βε2|2+Sαβ*ε1ε2*exp{i(ω1-ω2)(t-r/c)}+c.c]で与えられます。
ただし,r=|r|でΘはHeaviside関数(階段関数)です。(※訳注:c.cは複素共役(complex conjugate)です。)
簡単のために,2つの状態の崩壊率が共通の1つの定数γで与えられるとしています。また,ε1,ε2は2つの遷移に関わる電場に対応する量でありS=1です。
第Ⅱ節で論じた空間的干渉現象との類似は明らかです。
さらに,単一光子の量子ビートの特性を強調しておきます。
多くの原子が相互作用ゾーンにあるときでさえ干渉は2つの区別できないチャンネル;|c>→|a>→|c>,|c>→|b>→|c>を通った単一光子によるものです。
両チャンネルが区別できないことを保証するには測定過程において注意が必要です。
実際にどのチャンネルに関係しているかの情報を得たいのなら,例えば遷移|c>→|b>→|c>の光子のみを透過させるフィルターを用いますが,そのときには変調(干渉)は消えて強度IにおいてS=0 です。
このケースでは,オブザーバブル:σ^+=|+><+|=(1/2)(1+σ^z)が測定されます。|+>は円偏光光子の固有状態を表わしています。そこでσ^+は式(4)のI^xに対応していると考えられます。
一方,両経路の重ね合わせ(干渉)が観測されるケースではオブザーバブル:π^≡(1/2)(|+>+|->)(<+|+<-|)=(1/2)(1+σ^x)が測定されます。これは式(11)のJ^xに対応していると考えられます。
遅延選択バージョンでは,各蛍光光子が放出された後ですがその光子がフィルター位置まで到達する前にフィルターを除去したりします。
(第Ⅳ節.実験の設定(Experiment Setup)につづく)
第Ⅲ節は簡単なレビューなので短いです。
たまにはこのブログの科学記事も短いものでお茶を濁すことにして今日はこれで終わります。
参考文献: T.Hellmuth,H.Walther,A.Zajonc and W.Schleich ”Delayed-choice experiments in quantum interference”Phys.Rev.A Vol.35,No.6,(1987),pp2532-2541
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