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2010年1月

2010年1月30日 (土)

超弦理論(27)(2-16)(no-ghost theorem)

 ずいぶん,久しぶりですが,超弦理論(superstring theory)の続きです。

10年以上前に作った自分のノートを転載しているだけなんですが,ただの単純な書き写しでは却って疲れるので内容を吟味しながら書いています。

 

すると忘れていたり間違っていたりを発見して思いがけず写すという作業以外に時間を取られたりします。

さて,このシリーズのすぐ前の2009年12/13の記事「超弦理論(26)(2-15)」では,DDF状態|f>=-n1i1-n2i2..-nkik|0,p0>に対して|{λ,μ},|f>≡L-1λ1-2λ2..L-mλm-1μ1—2μ2...K-nμn|f>で定義される状態が26次元フォック空間(Fock space)の基底(basis)をなすという事実を見ました。

今度はこの結果を用いて1つか2つの更なるツールを収集した後,"ゴースト非存在の定理(no ghost theorem)"を証明します。

まず,を"擬似状態(spurious state)"の作る空間とします。

2009年4/13の記事「超弦理論(19)(2-8)」で見たように,擬似状態|s>はある|χ1>,|χ2>に対して|s>=L-11>+L-22>のように書ける状態と同じです。

 

これは,|s>=L-11>+L~-22'>,L~-2≡L-2+(3/2)L-12とも表現されます。

(訳注60):以前の記事「超弦理論(19)(2-8)」では擬似状態の定義を次のように与えました。 

すなわち,任意の状態:|φ>は,拘束条件としてLm|φ>=0 (m>0),かつ(L0-a)|φ>=0 を満たすなら物理的状態(physical state)であると言われます。

一方,(L0-a)|ψ>=0 に従う状態|ψ>があらゆる物理的状態|φ>と直交するとき,すなわち,|ψ>が全ての物理的状態|φ>に対して<φ|ψ>=0 を満たすなら|ψ>は擬似状態であるといわれます。

 

(訳注終わり)※

 

|s>=L-11>+L~-22'>,L~-2≡L-2+(3/2)L-12なる型の状態はゼロノルム状態を構成する過程から現われた結合です。

 

そして,この右辺でL-2の代わりにL~-2を用いることのメリットは後で明らかになります。

さて,擬似状態の作る空間に対し,それと直交する空間Πn=1-nμn|f>の形の状態から作られる空間とします。ここで|f>はDDF状態です。

超弦理論(26)(2-15)」で与えた|{λ,μ},|f>≡L-1λ1-2λ2..L-mλm-1μ1—2μ2...K-nμn|f>の型の任意の状態は,右辺の陽な展開の中にいくつかLを持つ擬似状態か,それとも全くLを持たずに属するかのいずれかです。

そして,この|{λ,μ},|f>がフォック空間の基底をなすことを前記事で示したので,∀|φ>∈は|φ>=|s>+|k>;|s>∈,|k>∈と書けることがわかります。

  

これは基底の定義によって,任意のの元|φ>はまたはの元である|{λ,μ},|f>の線形結合で与えられるからです。

|{λ,μ},|f>は一次独立なのでこの分割表現:|φ>=|s>+|k>は一意的(unique)です。それ故,|φ>がL0の固有状態なら|s>と|k>のそれぞれもL0の同じ固有値に属する固有状態です。

 

特に,もしも(L0-1)|φ>=0 なら(L0-1)|s>=0,かつ(L0-1)|k>=0 です。

(訳注61):(証明):|φ>=|s>+|k>(|s>∈,|k>∈)であって,かつ|φ>がL0の固有状態,すなわちL0|φ>=c|φ>ならL0|s>+L0|k>=c(|s>+|k>)です。

一方,アノマリーを含むヴィラソロ(Virasoro)代数:[Lm,Ln]=(m-n)Lm+n+(D/12)(m3-m)δm+n,および交換関係:[Km,Ln]=mKm+nから,[L0,Ln]=-nLn,[L0,Kn,]=-nKnなので0|s>∈,かつL0|k>∈です。

そこで,L0|φ>=c|φ>のの元との元への分割表現L0|φ>=L0|s>+L0|k>=c|s>+c|k>の一意性によってL0|s>=c|s>,かつL0|k>=c|k>です。(証明終わり) (訳注終わり)※

さて,|φ>=|s>+|k>(|s>∈,|k>∈)が物理的状態であって,それ故,Lm|φ>=0 (m=1,2,..)を満足するします。また,|φ>は(L0-1)|φ>=0 にも従います。(a=1に対応) そこで(L0-1)|s>=0,かつ(L0-1)|k>=0 です。

このとき,|s>と|k>もまた物理的状態で,Lm|s>=0 かつLm|k>=0 (m=1,2,..)に従うことを証明します。

実はこれは,m=1とm=2について成立することが示されれば十分です。何故なら,m>2のLmは全てL1,L2の交換子の繰り返しから得られるからです。

(訳注62):実際,ヴィラソロ代数:[Lm,Ln]=(m-n)Lm+n+(D/12)(m3-m)δm+nによりL3=[L2,L1]なので,もしもL1|s>=0,L2|s>=0ならL3|s>=[L2,L1]|s>=0 です。

 

 さらに,L4=2[L3,L1],=2[[L2,L1],L1]より,L4|s>=0,も得られます。以下はこれの繰り返しです。(訳注終わり)※

そしてまた,先に述べたように,任意の擬似状態|s>∈はある|χ1>,|χ2>に対して|s>=L-11>+L~-22>,L~-2≡L-2+(3/2)L-12と表現されます。

まず,(L0-1)|s>=0 からL01>=(L0+1)|χ2>=0 が導かれます。

(訳注63):記事「超弦理論(19)(2-8)」を見ると,次のようなことも書かれています。

 

 "任意の擬似状態|ψ>は(L0-a+n)|χn>=0 に従う状態|χn>を用いて|ψ>=Σn>0-nn>と表わすことができます。

 

 そして,これは(L0-a+1)|χ1>=0,(L0-a+2)|χ2>=0 に従う状態|χ1>,|χ2>を用いて|ψ>=L-11>+L-22>の形に表現できます。

 

 さらに,(L0-a+2)|χ2~>=0 を満たす|χ2~>を用いて|ψ>=L-11>+L~-22~>とも表現されます。"

 

 と書かれています。

 

今の場合は,a=1としているので,これはL01>=0,(L0+1)|χ2>=0,かつ|s>=L-11>+L~-22>を意味します。

 

それ故,L01>=0 ,(L0+1)|χ2>=0 は最初から仮定されていますから証明の必要なしです。(訳注終わり)※

 

次に,m=1に対してLm|s>=0 かつLm|k>=0 を証明するためにL1|φ>=0 からのL1|s>+L1|k>=0 に着目します。

ここで,L1|s>=L1(L-11>+L~-22>でL1|k>=L1Πn-nμn|f> (|f>はDDF状態)です。

 

このとき,1|s>も擬似状態であり,L1|s>=L-11>+L~-22>と書けることがわかります。

(訳注64):実際,1-11>=(2L0+L-11)|χ1>=L-111>,L1L~-22>=(3L-1+3L0-1+3L-10+L~-21)|χ2>={6L-1(L0+1) +L~-21}|χ2>=L~-212>です。

そこで,1>≡L11>,|η2>≡L12>と置けばL1|s>=L-11>+L~-22>と書けます。

さらに,L01|s>=(-L1+L10)|s>=L1(L0-1)|s>=0 よりL1|s>もL0の固有状態です。(訳注終わり)※

また,L1|k>=L1Πn-nμn|f>(|f>はDDF状態)であり,DDF状態は物理的なのでL1|f>=0 であること,および交換関係[m,Ln]=mKm+nを用いると,L1|k>∈なることがわかります。

それ故,等式 0=L1|s>+L1|k>は 0 のへの一意的な分割表現を意味します。そこで,L1|s>=L1|k>=0 と結論されます。

後は,L2|s>=L2|k>=0,またはL~2|s>=L~2|k>=0 を証明するだけですが,これはL1|s>=L1|k>=0 を得た論旨を一般化すれば得られます。

 

※(訳注65):(証明)まず,L~2|φ>=0 から,L~2|s>+L~2|k>=0 に着目します。

~2|s>=L~2(L-11>+L~-22>で,L~2|k>=L~2Πn-nμn|f>(|f>はDDF状態)です。L2-11>=L-121>は容易に得られます。

一方,L~2L~-22>={D/2+13L0+18L0(L0+1)+18L-11(L0+1)|χ2>+L~-2L~22>=(13L0+D/2)|χ2>+L~-2L~22>ですが,D=26なのでL~2L~-22>=L~-2L~22>を得ます。

よって,1>≡L~21>,|η2>≡L~22>と置けばL~2|s>=L-11>+L~-22>と書けます。L~2|s>∈ですね。

また,L~2|k>=L~2Πn-nμn|f>とL~2||f>=0,および交換関係[m,Ln]=mKm+nから,L~2||k>∈なることがわかります。

それ故,結局 0=L~2|s>+L~2||k>は 0 のへの一意的な分割表現を意味するため,L~2|s>=L~2|k>=0 を得ます。(証明;訳注終わり)※

 

以上から,任意の状態:|φ>=|s>+|k>∈(|s>∈,|k>∈)について,もし|φ>が物理的状態なら|s>は擬似状態であると同時に物理的状態であり,|k>も物理的状態であることが示されました。

今や"ゴースト非存在の定理(no-ghost theorem)"は,ほぼ我々の手中にあります。

擬似状態についての以前の論議から物理的かつ擬似である状態はヌル(null)でありあらゆる物理的状態と直交することを知っています。それ故,<s|s>=<s|k>=0 です。

したがって,<φ|φ>=<s|s>+<s|k>+<k|s>+<k|k>=<k|k>となります。

ところで,|k>∈のノルムが常に非負であること,すなわち<k|k>≧0 であることは容易に示すことができます。

の任意の状態|k>は|k>=|f>+ΣαΠ'-nμnα|fα>と書くことができます。ただし|f>,|fα>はDDF状態です。

 

ここで,積記号:Π'におけるプライム(prime):"'"はK-nμnα(n=1,2,..,∞)におけるK-nのべきμnαが全てゼロであるような状態を除くことを意味します。 

この表現式を改めて|k>=|f>+|k~>;|k~>≡ΣαΠ'-nμnα|fαと書くと,DDF状態の性質から<k~|k~>=<f|k~>=0 です。

 

何故なら,前記事で述べたように,|f>がDDF状態ならn>0 に対してKn|f>=0 が成り立ちます。

 

そして,[Km,Kn]=0 なので<fβ|Π'mμmβΠ'-nμnα|fα>=<fβ|Π'-nμnα,Π'Kmμmβ|fα>=0,<f|Π'-nμnα|fα>=0 となるからです。

それ故,<k|k>=<f|f>≧0 です。ただしDDF状態では<f|f>=0 ⇔ |f>=0 です。

 

既に,<φ|φ>=<k|k>なることがわかっているので,これで任意の物理的状態|φ>が常に非負のノルムを持つことが証明されました。

したがってフォック空間の部分空間である物理的ヒルベルト空間(physical Hilbert space)にはゴースト(ghost)は存在しないことが示されました。

実際には,より強い命題をも示すことができます。 

すなわち,"任意の物理的状態:|φ>はDDF状態|f>と「擬似物理的状態」:|s>の和として|φ>=|f>+|s>と表現される。"という命題です。 

実際,交換関係:[Lm,Kn]=-nKm+n,およびm>0 の全てのLmはDDF状態|f>,|αを消滅させるという事実を用いると,|k>=|f>+|k~>が物理的なら|k~>0 なので|k>=|f>なることを容易に示すことができます。

 

※(訳注66):(証明):m>0 のとき,|k>=|f>+|k~>が物理的ならm|k>=0 ,かつm|f>=0 です。

 

そこで,m>0 のとき,Lm|k~>=ΣαΠ'm-nμnα|fα>=0 でm-nμnα|fα>は1次独立なので,m-nμnα|fα>=0 です。

m=nとすると,n-nμnα|fα>=cnα0μnα|fα>より,Π'nμnα-nμnα|fα>=c0λ|fα>=0 です。

 

そして,0=-k0α0=-k0(定数)ですから,任意のαについて|fα>=0 です。したがって,|k~>=ΣαΠ'-nμnα|fα>=0 が得られます。それ故,|k>=|f>となります。(証明;訳注終わり)※

 

この|k>=|f>と分解:|φ>=|s>+|k>から物理的状態に対して,|φ>=|f>+|s>なる表現が得られるわけです。

ここでの余分な擬似物理的状態:|s>の存在は一見すると厄介なもののように見えます。しかし,実際には弦(ひも)理論が興味深い理由と密接に関係しています。

 

つまり,変換:|f>→|f>+|s>がゲージ変換の弦理論におけるアナロジーとなっているからです。

今日は,曲がりなりにもボーズ弦(Bosonic string)のD=26次元の背景空間における"ゴースト-非存在の定理(no-ghost theorem)"の証明が完了したことに満足してここで終わります。

参考文献:M.B.Green,J.H.Schwarz,& E.Witten著「superstring theory」(Cambridge University Press)

  

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もうすぐ還暦

 あと2日で50代も終わりです。

 いつまでたっても頭の中はガキのマンマですが。。。

 それにしても60年もよく生きのびてきたものです。

 10代の終わりの頃は当時の友人たちと,「キルケゴールやゲバラのように30代で終わらなければ残りは人生ではなくただの平凡な"トン生"だなどとエラそうなこと言ってましたが。。。。

PS:2月3日には将棋の谷川浩司九段のA級順位戦8回戦:三浦弘之八段戦があります。今は5勝2敗のトップで三浦八段とは並んでいます。

 羽生名人への挑戦権まであと僅かです。頑張っていただきたいです。

 そういえば野沢菜ちゃんも1/25が(20+6)歳の誕生日だったらしいです。 

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2010年1月26日 (火)

遅延選択実験(タイムマシン?)(4)

 少し間が空きましたが遅延選択実験の論文翻訳の続きです。一応翻訳作業は終わりました。

 

 むずかしいところもなく,ただサボっていただけです。

 

 結局,全体を読んで私が求めていた論文ではないとわかりました。これは従来の素朴な遅延選択実験の結果を再確認したに過ぎず,新しいものはほとんどないと感じました。

 

 ただ,私がこうした実験の詳細を考えたのは初めてで,私の新たな思考体験になったので無駄な作業ではなかったですが。。。

 

 というわけで量子テレポーテーションやEPR相関と関連したものとしてこれに続きウォルボーンらによる2002年の論文「二重スリット量子消しゴム」http://grad.physics.sunysb.edu/~amarch/Walborn.pdf を読むことにします。

 

 以下は翻訳内容です。

  

.Experiment Setup(実験の設定)

 本節では図3,図4に要約された遅延選択相互作用の実験設定と遅延選択量子ビート実験を論じます。

   

 .遅延選択干渉実験

反復率が81MHz(81×106回/秒)(波長:647nm(647×10-9m))のアクティブモードにロックされたクリプトンのイオンレーザーによって持続時間150ps(ピコ秒=10-12秒)のパルスが生成されます。

これの8000の音響-光学モードのうちから1つのパルスを選択します。このパルス反復率の縮小は必要な操作です。なぜなら,遅延選択のために干渉計の腕の一方を遮断するポケットセルのシャッターを頻繁にON-OFFをするのは不可能だからです。

さらに,このパルス周波数の縮小は2つのパルスの間の時間が光子が干渉計を通過する時間:約24ns(ナノ秒=10-9秒)よりも長いことを保証します。また,レーザー入射と上記の音響-光学変調計との間に光学減衰装置(T=10-9s)がレーザービームに挿入されます。これはパルス当たりの平均光子数を0.2以下にします。

入射光は最初のビーム・スプリッター(下図3)を通過します。

 

ここで分かれた2つのビームは道を変え互いに離れた単一モードの長さ5m(直径:5μm=5×10-6m)の2つの光ファイバー(ファイバ-路)に集光されます。 ファイバーの主軸はその中の偏光が線形になるように調整されています。

       

   

  

 そして,第二のビーム・スプリッターにより2つのビームが再び結合した後,暗部の計数の率が小さくなるよう冷却された光増倍管1,2(PM1,PM2)によって干渉が検知されます。

2つの光増倍管の各々で記録される光強度は,2つのビームの経路の差が光学距離λ/2のときに正反対のパターンになるような補足の関係で変わります。

この干渉計の2つの腕に沿った光路の経路差はフィルター中の温度誘導のファイバーの屈折率の変動に強く影響されます。空気中での干渉のパターンは時間的に安定しています。

実験に遅延選択モードを導入するために,光子が第一のビーム・スプリッターを通過するまで一方の腕の光路を遮断します。この目的のために干渉計の上の方の腕にポケットセル(PC)を導入します。

 

1つの腕の路を遮断するためポケットセルに電圧をかけます。その結果,入射光の直交する2つの偏光成分(90度回転した偏光)の間に1/2だけ位相のずれた波が導入されます。

ポケットセルの後に偏光方向が回転したとき光を検知するGian偏光プリズム(POL)が挿入されます。そしてポケッツセルのシャッターの上がる時間は4nsです。

実験では遅延選択モードの干渉パターンが"正常な"モードのそれと比較されます。正常な操作では光のパルスが第一のビーム・スプリッターに到達した際にポケットセルは開いていてそれは全体の装置を通る間キープされます。

しかし,遅延選択モードではポケットセルのシャッターは通常は閉じていてパルスが第一のビーム・スプリッターを通過した後に5nsだけ開けます。それ故,光パルスはポケットセルが開いているときうまく光ファイバー中を通過します。

光パルスが到着したときにポケットセルが全開であることを確実にするためにはファイバーの長さが十分である必要があります。シャッターの上がる時間が4nsなので長さは少なくとも1m必要です。

遅延選択実験のこのバージョンでの時間順序に関する興味深い点のいくつかは,Mittelstaedtによって挙げられ論じられています。彼は状態の収縮(ビーム・スプリッター2)と状態の準備(ビーム・スプリッター1)の位置が空間的に離れている事実を強調しました。

"光子が第一のビーム・スプリッターに到達する前か後にポケットセルのスイッチを入れる。"という表現はこうした位置に同期した時計を置くことに等価と解釈されます。

データを採取する間に継続する光パルスにおいて操作モードを正常モードや遅延選択モードにスイッチします。光増倍管でカウントされる光子は,それに応じて多重チャンネルの異なる分析装置に格納されます。

こうしたスイッチングはクリプトンのイオンレーザーのモード・ロッカーの40.5MHzのドライバーから導かれるパルスで制御されます。

.量子ビート実験

量子ビート実験はバリウム原子の原子ビームを用いて実行されます。2つのヘルムホルツコイルで生成される磁場はその向きを原子ビームの方向に垂直に取ります。(下図4参照)

  

 

  

同時的に励起した色素レーザーから1パルスの持続時間が1.5psで繰り返しの周波数が10kHzのパルスが出てx方向に伝播します。このレーザー光はy方向に偏極し周波数はバリウムの共鳴のライン10-11に合うように調整されています。

 

こうした条件の下でエネルギー差がΔE=2hcωLのm=+1とm=-1の2つのゼーマン(Zeeman)サブレベルのコヒーレントな重ね合わせの光パルスが用意されます。ここにωLはラーマー(Larmer)周波数です。(下図5参照) (※ただし,hc≡h/(2π);hはPlanck定数です。)

 

  

  

そして,レーザーパルスのフーリエ(Fourier)線幅より小さいゼーマン分裂に対応して用いる磁場の大きさは2.1G(Gauss)とします。そして蛍光はz方向のレーザーパルスの解像時間で観測します。集光器は,0.1arの立体角の内に光を集めます。

こうした光信号の時間依存性はパルスの高さ分析モードの多重分析装置を持つ時間-アンプ変換装置を用いて測定されます。この方法は検知システムに表示されるレーザーパルス当たりに常に1個以上の光子があるので可能なのです。

時間-アンプ変換装置はレーザーパルスを光セルでモニターする信号からスタートして最初の信号光子を得てストップします。

標準の量子干渉実験では検知器である光増倍管の前にy軸に平行な方向に偏光させる線形偏光装置が設置されます。これは2つの"経路":|0> →|+1> →|0>,および|0> →|-1> →|0>の干渉を検知することを許します。

遅延選択バージョンは放出光子が検知システムに到達するまでは1つの経路がブロックされたままであることを要求します。

 

この目的のため再び線形偏光装置の前にポケットセルを置きます。

ポケットセルに適切な電圧をかければ,経路:|0> →|+1> →|0>から帰結するσ光は偏光装置を透過する光を線形偏光の光に変わります。

 

σ光はフィルターの1つに垂直方向に線形偏光した光に変わり,それ故ブロックされます。

これには遅延選択操作ではポケットセルのシャッター時間と量子ビートの周期:τ=(2ωL)-1と比べ,原子ビームと検知システム間を光子が飛行する時間の方が長いことが必要です。そこで"飛行時間=26ns"に対応して原子ビームと検知システム間の光路を8mにします。

.Experimental result(実験結果)

 本節ではホイーラー(Wheeler)の遅延選択実験の2つのバージョンから得られた実験結果を与えます。

.干渉実験

下図6は正常モードか遅延選択モードのいずれかで走る光パルスの光増倍管1と2に30秒間に累積された光子数を示しています。カウントされた結果は多重スケールモードで動く機械的分析装置に格納されます。

 

  

 

6に示された結果は生データの4チャンネル平均です。時間軸は干渉計内のファイバーの温度で誘導される屈折率変動から決まります。この実験での干渉パターンの可視性は理想的な100%より小さいです。

 

この理由は,まずはビームスプリッターと干渉スキームの検知の不完全さのせいでしょう。

また,図3に示されているようにファイバー内の光は顕微鏡の対物レンズにより平行にされますが,残った発散光によって干渉計の出力ポートでの干渉パターンは環状になります。

 

ただしゼロ次の最大値のみが光増倍管で検知されます。光増倍管の有限な面積の開口部によっても可視性は小さくなります。

遅延モードと正常モードのデータ間のより定量的な比較は対応するチャンネルのカウントの比を取ることでなされます。これら光増倍管1,および2における比をそれぞれ下図7(a),および図7(b)に与えます。

  

  

 

これの平均値はN/N=1.00±0.02,とN/N=0.99±0.02です。この結果は量子力学のコペンハーゲン解釈によって予測されるN/N=1と非常によく一致しています。

.量子ビート実験

 まず,正常モードでの量子ビート実験の結果を示すことから始めます。下図8(a)では量子ビート信号はポケットセルに電圧をかけずに得られたものです。このケースでは蛍光のσ光とσ光の重ね合わせが観測され,指数的減衰は緩和されます。

ポケットセルに1/4波の電圧をかけた単偏光成分の検知結果,それ故信号の指数関数的時間依存性は下図8(b)に与えます。

 

  

  

8,9,10では,レーザーパルスより26ns後の検知装置での最初の蛍光光子の到着時間に対応する時刻に着目すべきです。また,光増倍管と時間-アンプ変換装置の時間解像度によれば光信号が最大で約2nsの時間で届くことにも着目すべきです。

実験の遅延選択バージョンを下図9に示します。矢印はポケットセルに電圧をかけた時刻です。

 

   

  

図の一番上のボックスに示された測定は検知器に光子が到着して2nsの後にポケットセルのスイッチが入れられたものです。

 

真ん中,および一番下のボックスのグラフはポケットセルにスイッチが入り指数減衰の変調が長時間観測された後,それぞれ17ns,および26nsまでの指数的減衰を示しています。

下図10では通常の量子ビート信号を遅延選択観測で得られるものと比較しています。ここでポケットセルに電圧がかかるスイッチが入る時刻は4nsです。評価には10nsと30nsの間にある信号のみ用いてます。

 

   

 

時間の下限はポケットセルの時間(4ns)と検知装置の時間定数(2ns)から決めています。上限の方は原子ビームと検知装置の間の飛行時間から決めます。

104個のレーザーパルスの後に正常観測と遅延観測の操作のモードをスイッチします。このようにして図10に示した2つの信号は同時に累積していきます。(正常モードと遅延モードは機械的分析装置のメモリーの異なる部分に格納します。)

10の2つの信号のうち斜線部を下図11に示します。この図では点(・)は遅延選択に,プラス(+)は正常バージョンに対応します。また,対応するチャンネルでの信号(時間差0.56ns)の比を与えています。 

   

  

 

この比は,N/N=1.03±0.02でした。これもコペンハーゲン解釈から予期されるものと一致します。僅かな偏差はポケットセルの光軸調整の誤差によるものと考えられます。

.conclusion(結論)

本論文で記述された空間領域と時間領域の干渉実験では正常モードと遅延選択モードの間に何の差異もありませんでした。そこで量子力学のコペンハーゲン解釈が実験と合致するのを再確認したに過ぎません。

これと関連しては,Allenと彼の共同研究者が本論文のⅣ.AとⅤ.Aで論じたものと同様な遅延選択実験を最近実行しましたが,彼らの結果もまた量子力学の標準的な解釈と一致しています。

「光子が"1つのルート"を通ったのか? それとも"両方のルート"を通ったのか? 」という言明に内在する論理矛盾にアプローチする道は,結局「古典論理」とは微妙に異なる「量子論理」に基づいて思考することであると結論します。

別の可能性はホイーラー(Wheeler)によって指摘されたのですが,

  

「既に運動した後に1つのルートでやってくるか,両方のルートでやってくるかを決めるというジレンマは言葉の誤用が原因である。」

  

というものです。

ボーア(Bohr)がアインシュタイン(Einstein)との論争において,現象(phenomenon)という言葉を導入したことを思い起こします。

 

ホイーラーは「どんな素現象も,記録される,すなわち1グレインの銀の印画紙が感光する,あるいは光検知装置の引き金が引かれるまでは現象ではない。」と強調しました。

それ故,我々も"干渉計の中の旅の間に光子がどうしていたか?"を述べる権利はないと考えます。

 

この旅の間には光子は"巨大な灰色ドラゴン"であり,単に"尻尾"(ビーム・スプリッター1の位置)と"検知器を叩く位置=口"でのみそれは細く鋭くなるわけです。

「遅延選択実験は過去の描像が遠回りして到達する結果である。」と結論します。

 

ホイーラーがしばしば指摘したように,遅延選択実験の奇妙さは「現在において記録されない限り過去は存在しない。」という以上のものではないということに留意すべきと考えます。  

Acknoledgement(謝辞):これは省略します。(以上終わり)

参考文献: T.Hellmuth,H.Walther,A.Zajonc and W.Schleich ”Delayed-choice experiments in quantum interference”Phys.Rev.A Vol.35,No.6,(1987),pp2532-2541

 

 ちょっと時間的余裕が無いので図も満足に入っていません。よってこの記事のメインはまだ未完成です。

 

 この論題については続きも含め少し余裕をいただきたいと思います。

 

PS:一応,誤解ないよう私なりの注釈を付けておきます。

  

 この論文において実験結果がコペンハーゲン解釈と合致するというのは,別にコペンハーゲン解釈以外の解釈は正しくないと主張するものではないです。

 

 単に,実験と合うという意味で正しいための十分条件を満たすというだけです。必要条件ではないはずなので他の多くの解釈も実験に合うならこれと同程度に妥当な候補です。

  

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2010年1月25日 (月)

日々の雑感

 先週は,私が学生時代で彼がまだ幼児のときちょくちょく会っていた甥に33年ぶり?に会って夕食を共にして飲んだりしました。この甥は意外と近くに住んでいたようです。

 わかりやすい場所で待ち合わせをしましたが,お互いに面影を感じてすぐにわかりました。

 京都よりも東に血縁の身内がいるのは,20年くらい前に1年間か2年間くらいですが2歳上の実兄が本社が大阪にある会社の四谷支社に転勤して家族ごと松戸の社宅にに住んでいたとき以来ですかね。

 金曜日には今年初めて病院で持病の診察を受けましたが正月の影響でしょうか?糖尿病は少し悪化していました。また2月1日の誕生日(還暦)が来れば僅かながら申請すれば年金がもらえるという通知も来ました。

 相変わらず正月気分が抜けず自堕落な生活が続いています。

 積極的な気力がほとんど起きません。うつ病再発かな?

 まあ,何とか屋根のあるゼイタクな生活をしているし精神的に追い込まれてもいないので,ボチボチですが始動して行かざるを得ません。

 全体に体力もなく老眼や眼精疲労,あるいは糖尿性網膜症のせいでしょうか?本やレポート文などを読み始めても長続きしませんが,とにかく私の本分?であるライフワーク的なことだけでも全うしていけば気力も回復すると思い無理にでも鼓舞してやっていこうとしています。

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2010年1月20日 (水)

遅延選択実験(タイムマシン?)(3)

 遅延選択実験の翻訳と解釈の作業の続きです。

 Ⅲ.The Delayed-Choice Version of a Quantum Beat Experiment(量子ビ-ト実験の遅延選択バージョン)

 時間領域での干渉の遅延選択の様相も空間の干渉と同様な方法で論じることができます。

 

 実験の観測としては量子ビートの方法が用いられます。

 最も簡単なケースは,周波数ω12に対してパルス緩和時間τが特性ビート周波数(ω2-ω1)の逆数よりも小さいレーザーパルスを持つ基底状態|c>から,2つの周波数ω12に対応する2つのエネルギー準位|a>,|b>がコヒーレントに励起されるケースです。

系の状態|ψ>は2つの励起状態|a>,|b>の重ね合わせで記述されます。

 

すなわち,|ψ>=(α|a>+β|b>)|O>(α,βは複素係数)です。初期には光子は全く存在しないので電場は"真空状態=|O>"です。

自発放出により2つの状態は基底状態|c>に落下して戻ります。すなわち,次の2つの経路を生じます。|c>→|a>→|c>,および|c>→|b>→|c>です。

これらの"ルート"の干渉は時間-解像蛍光強度Iの変調として現われます。より正確には強度はI=(1/r2)Θ(t-r/c)exp{-2γ(t-r/c)}[|αε1|2+|βε2|2+Sαβ*ε1ε2*exp{i(ω1-ω2)(t-r/c)}+c.c]で与えられます。

ただし,r=||でΘはHeaviside関数(階段関数)です。(※訳注:c.cは複素共役(complex conjugate)です。)

簡単のために,2つの状態の崩壊率が共通の1つの定数γで与えられるとしています。また,ε1,ε2は2つの遷移に関わる電場に対応する量でありS=1です。

第Ⅱ節で論じた空間的干渉現象との類似は明らかです。

 

さらに,単一光子の量子ビートの特性を強調しておきます。

 

多くの原子が相互作用ゾーンにあるときでさえ干渉は2つの区別できないチャンネル;|c>→|a>→|c>,|c>→|b>→|c>を通った単一光子によるものです。

 

両チャンネルが区別できないことを保証するには測定過程において注意が必要です。

実際にどのチャンネルに関係しているかの情報を得たいのなら,例えば遷移|c>→|b>→|c>の光子のみを透過させるフィルターを用いますが,そのときには変調(干渉)は消えて強度IにおいてS=0 です。

このケースでは,オブザーバブル:σ^=|+><+|=(1/2)(+σ^z)が測定されます。|+>は円偏光光子の固有状態を表わしています。そこでσ^は式(4)のI^xに対応していると考えられます。

一方,両経路の重ね合わせ(干渉)が観測されるケースではオブザーバブル:π^≡(1/2)(|+>+|->)(<+|+<-|)=(1/2)(+σ^x)が測定されます。これは式(11)のJ^xに対応していると考えられます。

遅延選択バージョンでは,各蛍光光子が放出された後ですがその光子がフィルター位置まで到達する前にフィルターを除去したりします。

 

(第Ⅳ節.実験の設定(Experiment Setup)につづく)

第Ⅲ節は簡単なレビューなので短いです。

たまにはこのブログの科学記事も短いものでお茶を濁すことにして今日はこれで終わります。

参考文献: T.Hellmuth,H.Walther,A.Zajonc and W.Schleich ”Delayed-choice experiments in quantum interference”Phys.Rev.A Vol.35,No.6,(1987),pp2532-2541

 

PS:何だか昨日の午後からこのブログ「TOSHIの宇宙」へのアクセスが多いなあ。。と思ったら,Geogleでの「浅川マキ」での検索のトップになってました。まあ,ときどきあるけど一過性でしょう。。。

 

 ここは過去最大でも延べで1日に七百アクセスくらいで,千アクセスに達したことはないですね。。

 

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2010年1月19日 (火)

浅川マキ。。。

 浅川マキ(67歳) 急死。。。私の青春の巨大な星が1つ天に召されました。

(2006年8/24の日記「 浅川マキ,山崎ハコ(暗い唄)  」参照)

       

                    合掌(チクショー)。。

 追悼曲:「別れ」  「セント・ジェームス医院」 「ハスリン・ダン」 

      「奇妙な果実」(ピアノ:山下洋輔(Billy Holiday「Strange Fruits」より)

      「ブルー・スピリット・ブルース

    

 

PS:しかし今金がないし昔3万円くらいで買った浅川マキのCD-BOX(10枚)をヤフーかなんかで売り飛ばしちゃおうかな。。?正直言って中期-後期の作品はほとんど聞かないし。。

  

 

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2010年1月15日 (金)

ハイチで大地震

 ハイチで大地震1  ハイチで大地震2 取り合えずお知らせ

 ユニセフ募金開始   

PS:1/17(日):元巨人投手の小林繁さん急死,57歳

 1/18(月):真実はいずこにあるか知りませんが「政治資金規正法」ですか?

 自民党であれ民主党であれ,同じような疑惑が数人あったとしても時の検察は何か政党の大物に疑惑を集中して(金額が大きいか小さいかの問題?)選挙前に政党の議席数を制限したり,時の政府を握っている政党や政府の支持率を落としたり自由自在にできるようです。

 日本の政治を左右する最高権力は国民が選挙で選んだ議員による国会や内閣ではなく,司法,それも検察が握っているのかしら?と思ってしまいます。

 司法が立法,行政を監視するのは当然としてもキャリアの司法,法務や検察官僚は国民が選挙で選んだわけじゃなしメンツならほどほどにして下さい。

 卑近な話本当は真っ白でも一度痴漢とうわさされたらいくら後で間違いとわかっても彼の人生は全く変わってしまう世の中です。。。

 令状なしの任意の事情聴取でも密室の中で白を黒,または黒を白にするのは得意みたいだしね。。ん?ムネオハウスの鈴木宗男さんも。。?

PS2:  「X  JAPAN のTOSHI さん  解放される?

 日本の医療チームを含む緊急援助隊もハイチに到着した模様です。

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遅延選択実験(タイムマシン?)(2)

このところ正月初めで色々とバタバタしており特に夜の時間は飲んだくれてたこともあって十分な時間が取れなかったので論文翻訳の続きが遅れてしまいました。続きですが第Ⅱ節だけです。

.The Delayed-Choice Experiment and the Quantum Mechanical Measuament(遅延選択実験と量子力学測定)

本節では図1に要約したWheelerの元の遅延選択実験をvon Neumannの意味での量子測定過程として解析します。

 

ここでは遅延選択実験の厳密な議論を未来の発表の主題となるべき量子光学の言葉に置き換えようとはせず,各々陽な演算子表現を導出する必要がある経路情報,または干渉現象に対応する2種の光子観測の相補性(complementality)を強調します。

まず,次の扱いでは光のパルスがx方向,およびy方向に伝播する状態ベクトルを,それぞれ|x>,および|y>で記述します。

 

|x>,または|y>の陽な形は,パルスを生み出すために用いられる実験テクニックに依存します。

本論文の後の方で論じるように,現行の実験はピコ秒のレーザーパルスを用いて実行されています。

 

そこで,x方向に伝播するレーザーパルス|x>はコヒーレント状態|αx(J)>の(2N+1)個のモードの重ね合わせから成り立っています。

 

(※訳注:コヒーレント状態については2007年12/15の記事「ヤングの干渉実験(4)(量子論)」を参照してください。)

すなわち,|x>=|αx(-N)x(-(N-1)),..,αx(0),..,αx(N)>|0y>(1)です。

 

ただしαx(J)はガウス振動数分布分布:αx(J) exp{-(1/2)τ2(J)-ν(0))2}(J=-N,..,+N)です。

ここでτはパルスの持続時間です。規格化定数{2π1/2n(l/L)}1/2です。nはパルス当たりの光子数,Lはレーザーの空洞の長さであり,l=cτ (cは光速)です。

単一の光子を生み出す別の実験テクニックは原子ビーム中の(2準位)原子,またはイオントラップ中のイオンからの共鳴蛍光を用います。

 

こうしたケースでは|x>は状態ベクトル|x>=Σkx[(gkx/hc){(ν-ω)+iγ}-1|Ikx>](2)で与えられます。

 

ただしγは原子の崩壊率,または2準位間の周波数の差で,gは電場への結合定数を記述しています。

 

それ故,状態|x>はローレンツ型の周波数分布を持つ異なる単一光子状態|Ikx>の重ね合わせです。

(※訳注:hc≡h/(2π)です。hはプランク(Planck)定数です。

 

ローレンツ型分布については2006年8/26の記事「ホワイトノイズ,1/f ゆらぎ」,および2007年12/3の記事「ヤングの干渉実験(1)(古典論)」を参照してください。)

簡単のため,以下の論議ではまず状態|x>と|y>は(2)式のような形とします。さらに(1)式のピコ秒パルスによって生じる干渉パターンを与えてこの節を締めくくります。

最初のビーム・スプリッターでは状態|x>に対応する波動の一部は透過し一部は反射します。透過部分についてはその位相がφだけシフトします。かくして干渉した単一光子状態は|ψ>=(1/2)1/2{|x>+exp(iφ)|y>}(3)です。

ここで,状態ベクトル|x>と|y>は直交し,規格化されていると仮定しています。

これまでの記述は準備段階のそれです。続く検知過程は対象のオブザーバブルの期待値で記述されます。

例えば,そうしたオブザーバブルの1つは第二のビーム・スプリッターを除去されたケースのx,またはyの光子増倍器によって測定される光子の強度です。

 

この場合,光の古典強度Ix(cl),Iy(cl)に対応する"量子演算子=オブザーバブル"の期待値はIx(cl)=Iy(cl)=1/2です。ここでは簡単のため,初期強度I0は1に等しいとしています。

(3)式を用いると,光の強度演算子:I^x≡|x><x|,I^y≡|y><y|の期待値として実際に上記の古典強度が生み出されることが容易に証明されます。

基底{|x>,|y>}に対するこの演算子:I^x,I^yの行列表現はI^x=(1/2)(+σ^x),I^y=(1/2)(-σ^x)(4)です。

 

ただし,は単位行列,σ^xはパウリ(Pauli)のスピン行列(spin-matrices)のx成分です。

第二のビーム・スプリッターが挿入されたケースの論議に移る前に,(1)式で記述されるピコ秒パルス(※訳注:コヒーレント状態)を用いて得られる経路情報を,(2)式で記述される単一光子状態(※訳注:個数状態)から得られる情報と比較対照します。

図11の配列では光子のルートは,経路xを通ってきた光子の検知器xか経路yを通ってきた光子の検知器yのいずれを光子がクリックするかで決まります。

 

干渉計の中には単一光子のみがあると仮定している場合なので2つの検知器については完全に逆相関です。

言いかえると,2次の相関関数g(2)(0)は消えます。

 

つまり序文(introduction)で論じたように光は反束光です。

 

一方,ピコ秒レーザーの光パルスは"コヒーレント状態にあるモード=ゼロでないg(2)(0)の状態"の重ね合わせから成るため,どちらの経路を通ったか?という完全な経路情報を得ることはできません。

反束光のみ,例えばトラップの中にstoreされた単一イオンからの蛍光のように共鳴の中で実験的に実現される式(2)の単一光子状態のみが,光子のルートを何の曖昧さも無く完全に決定する方法を与えるわけです。

 

(Ref.8も参照されたい。)

さて,今度は第二のビ-ム・スプリッター(BS2)が挿入されたケースの測定過程の議論に移ります。この場合には,検知器x,yで測定される古典強度Jx(cl),Jy(cl)x(cl)sin2(φ/2),Jy(cl)=cos2(φ/2) (5)で与えられます。

前のケースに反して対応する演算子J^x,J^y(を見出すのはそれほど直線的で簡単はありません。

 

これを見出すことが本節の残りの主題です。

まず,演算子J^x,J^y(を,それらの固有状態|s1>,|s2>で表現することから始めます。

  

J^x=αx|s1><s1|+βx|s2><s2|,J^y=αy|s1><s1|+βy|s2><s2|(6)ですね。

同時に,状態|ψ>は|ψ>=c1|s1>+c2|s2>(7)と展開されるとします。ただし,αxyxy,c1,c2は全て複素数の係数です。

系の状態|ψ>を|s1>と|s2>の1次結合で表現することは測定過程を量子力学的に記述するための第1ステップで分解(decomposition)と呼ばれます。

第2のステップは,考察対象の空間を物理系のヒルベルト空間:0 pointer基底|a1>,|a2>で張られるその測定装置のヒルベルト空間A の直積空間0Aに数学的に拡張することです。

 

(※2006年10/23の記事「観測の問題(デコヒーレンス)」を参照)

 

干渉現象を観測するケースには,測定装置は第二のビーム・スプリッター(BS2)と検知器x,yを含みます。

 

簡単のため,さらなる論議はオブザーバブルJ^x,すなわち検知器x上の信号のみに限定します。(J^yの扱いについては全く同様です。)

 

さて,検知器は2つのマクロな区別できる状態,いわゆるpointerの状態の基底状態(ground-state):|a1>=|g>と励起状態(exciting-state):|a2>=|e>で特徴づけられます。

系と測定装置が相互作用する前には,検知器は基底状態:|g>にあると仮定すれば,測定前には"系+測定装置"の拡張された状態のベクトルは|Ψ>={c1|s1>+c2|s2>}|g>で与えられるはずです。

しかし,測定装置と相互作用すると全系の状態は|Ψ>から|Ψ'>={c1|s1'>|a1>+c2|s2'>|a2>に変換されます。

Von Neumannによれば,測定器の本質的な特徴は測定器との相互作用によって系の状態の確率振幅c1,c2を不変に保つことです。

 

相互作用の効果は,単に|si'>|ai> (i=1,2)を生成するだけです。ここに|s1'>,|s2'>は系の直交状態ですが,これらは|s1>,|s2>と同じである必要はありません。

 

それ故,pointer基底|ai>(i=1,2)の各々は系の固有状態にユニークに関連しています。干渉計のケースには |Ψ'>={c1|s1'>|g>+c2|s2'>|e>(8)です。

他方,ビーム・スプリッター(下図2参照)の性質によれば,

 

(3)|ψ>=(1/2)1/2{|x>+exp(iφ)|y>} で与えられるような光子状態:|ψ>は状態 |ψ'>=(1/2){1+exp(iφ)}|y>+(1/2){1-exp(iφ)}|x>(9) に変換されます。

 

   

   

 検知器xと相互作用をした後での"系+装置=系全体"の状態は,

  

 |Ψ'>=(1/2){1+exp(iφ)}|y>|g>+(1/2){1-exp(iφ)}|O>|e>で与えられます。

これを(8)|Ψ'>={c1|s1'>|g>+c2|s2'>|e>と比較すると,c1=(1/2){1+exp(iφ)},c2=(1/2){1+exp(iφ)}(10)を得ます。

この(10)の係数値を,(7)|ψ>=c1|s1>+c2|s2>に代入すると,第二のビ-ム・スプリッターを通る前の光子状態|ψ>が決まります。

そして,この表現が,(3) |ψ>=(1/2)1/2{|x>+exp(iφ)|y>} と一致すべきですから,固有状態:|s1>,|s2>が状態 |x>,|y>によって,|s1>=(1/2)1/2{|x>+|y>},|s2>=(1/2)1/2{|x>-|y>}と表現されることがわかります。

さらに,これを(6)J^x=αx|s1><s1|+βx|s2><s2|,J^y=αy|s1><s1|+βy|s2><s2|に代入すると,J^x=(1/2)αx(1+|x><y|+|y><x|)+(1/2)βx(1-|x><y|-|y><x|),J^y=(1/2)αy(1+|x><y|+|y><x|)+(1/2)βy(1-|x><y|-|y><x|)に到達します。

最後に,αxxyyは,J^x,J^yの期待値を古典値の(5)Jx(cl)=sin2(φ/2),Jy(cl)=cos2(φ/2)と比較等置すれば決まります。

 

これは容易に実行されてJ^x=(1/2)(1-|x><y|-|y><x|),J^y=(1/2)(1+|x><y|+|y><x|)を得ます。これは確かに(5)式を生み出します。

行列表現ではJ^x=(1/2)(-σ^z),J^y=(1/2)(+σ^z)(11)となります。

 

(4)I^x=(1/2)(+σ^x),I^y=(1/2)(-σ^x)と(11)の表現は経路情報の演算子;I^x,I^yと干渉現象の演算子:J^x,J^yが交換しないことを示しています。

実際,[I^x,J^x]=-(1/2)σ^y,[I^y,J^y]=(1/2)σ^yです。

測定過程は,いわゆる抽象と読み取りに集約されます。

 

測定過程の目的は,(5)Jx(cl)=sin2(φ/2),Jy(cl)=cos2(φ/2)で与えられるようなJ^x,J^yの期待値を引き出すことです。

図1に要約されている干渉実験の標準バージョンでは,オブザーバブルとして{I^x,I^y}の組を選択するか,{J^x,J^y}の組を選択して測定するかは光子が干渉計に入る前,つまり(3)|ψ>=(1/2)1/2{|x>+exp(iφ)|y>}の|ψ>の状態が準備される前に決定されます。

しかし,遅延選択モードでは光子が干渉計を通過した後,つまり状態が準備された後に決定されます。

 

この意味で遅延選択実験は準備される状態と測定が"独立,または無関係"である度合いを厳密に調べるものです。

干渉現象の観測を量子光学の言葉で概観して本節を終わります。

 

第二のビ-ム・スプリッターの後での位置に局所化された検知器の上で測られる強度J(,t)は次の1次相関関数で決まります。すなわち,J(,t)=<ψ'|^(-)(,t)^(+)(,t)|ψ'>です。

 

(※ これは2008年1/2の「ヤングの干渉実験(8)(量子論)終わり」を参照してください。※)

 

ただし,状態ベクトル|ψ'>は,(9)|ψ'>=(1/2){1+exp(iφ)}|y>+(1/2){1-exp(iφ)}|x>で与えられます。

 

電場の正周波数部分は,^(+)(,t)=iΣkεkkexp{i(kr-kct)}です。ここでk≡||,εkは1光子当たりの電場の振幅,akは消滅演算子です。

今や,(1)|x>=|αx(-N)x(-(N-1)),..,αx(0),..,αx(N)>|0y>;αx(J) exp{-(1/2)τ2(J)-ν(0))2}(J=-N,..,+N)で定義されるピコ秒状態の|x>,|y>について2つの検知器における強度J^x,J^yを計算することができます。

xsin2(φ/2)nπ-1/2ε02exp{-(1/τ2)(x-ct)},Jy=cos2(φ/2)nπ-1/2ε02exp{-(1/τ2)(y-ct)}です。ただしε0は周波数がν(0)の光子1個当たりの電場です。

 

この結果は,上記の簡略的な扱いと一致していることに着目されたい。(第Ⅲ節:量子ビ-ト実験の遅延選択バージョンにつづく)

参考文献: T.Hellmuth,H.Walther,A.Zajonc and W.Schleich "Delayed-choice experiments in quantum interference" Phys.Rev.A Vol.35,No.6,(1987),pp2532-2541

  

PS:ネット検索でEPR相関の実験らしい「二重スリット量子消しゴム」というウォルボーンらの2002年の論文を見つけたので,今の1987年の論文の翻訳,解釈が終了したら,この続きとしてより核心に近いと思われるこれの記事を書こうと思います。

 

(S.P.Walborn,et.al."Double-slit quantum eraser"Phys.Rev.A.Vol.65(3),p033818-1~6(2002)ですね。)

 

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2010年1月14日 (木)

疲れた~。

 疲れ切ったこの体ーーでもまだ温もりーはあるさーー

 もうすぐ朝日がのぼーるだろうー    ( 浅川マキ 「別れ」 より。。。)

(※PS:(2011年10月)上記のYouTube動画は著作権侵害による第三者通報が複数寄せられて削除されたため,以下にこれをカバーしたミュージシャン?の動画を添付します。↓村上駅ってどこ?※)

 

 

 不動産屋とグルの野郎を初めとして,もう"騙された,人のいいバカオヤジ"の振りをして,なけなしのゼニを詐欺師たちに恵んでやる遊びにも飽き飽きして疲れてしまいました。。へっへっへっ (← 負け犬の遠吠えかい?)

PS:今朝(1/15)のTV朝日の朝ニュースでのO谷君は小沢事件についての見解で,珍しくも正に私の思いを代弁してくれていました。

 今までは,私はほとんどのコメントについて彼を貶していましたがかなり見直ました。O谷君,エライ。。。

 田中角栄のロッキード事件のときといい,今回の事件といい有閑階級で直接生活には心配の無い司法エリートたちが目先のつまらないメンツのためか,

 結果的に立法と行政を常に自らの意のままに操ろうとしているのを前から苦々しく思っていたことはこのブログを通読していただけるとわかるでしょう。

 緊急時には,小異を捨てて大同に付くべきだろう。大異なら話は別だが。。

 小異にこだわるのは人民の生活よりも権力争いやメンツ,あるいは金儲けの方が大事な連中たちかな?

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2010年1月10日 (日)

正月から極楽トンボ

 このところ,20年ぶりや,30年ぶりに会う旧友,先輩が偶然各地から相次いで来京したこともあって,旧交を温めて呑んだくれてばかりいて少々疲れました。病人なので節制しなけりゃいけないとは思いつつ,金もないのに当座しのぎで楽しんでしまいました。

 年甲斐もなく殴りあいなども毎日のようにありますね。いい歳をして若い女の取り合い?いいかげんにしろよ。。。

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2010年1月 5日 (火)

遅延選択実験(タイムマシン?)(1)

 量子力学の非局所性と関連した「量子もつれ(エンタングルメント)」の関係の知見についてはずいぶん以前の2006年5月の記事「公開キー暗号(神はサイコロ遊びをなさる)(量子コンピュータ)」「量子通信(神はサイコロ遊びをなさる「つづき」) 」で少し触れました。

 今も,その程度の認識から余り進歩はないのですが,「量子通信」というのはいわゆる量子テレポーテーション(瞬間移動)を意味しますから見方によっては「タイムマシン」と同じ意です。

 「タイムマシン」というのはH.G.ウェルズ(H.G.Wells)のSFが起源でしょうが,キップ・ソーン(Kip.Thone)などによるその実現化に関する大ががかりなアイデアがあるようです。これは映画「バック・トゥ・ザ・ヒューチャー(Back to the future)」シリーズに利用されています。

 これはブラック・ホール(black hole)から入ってホワイト・ホール(white hole)から抜け出す,つまり,時空自身を曲げて時空の虫食い穴(ワーム・ホールworm hole)を作り,時間的な距離の2時空点(=光速よりも速くなければつながらない2事象:events)をショート・カット(short cut)する,あるいはワープ(warp)するという発想です。

 (ホワイト・ホールというのは重力場の方程式の解としては膨張する宇宙と同じですね。)

 例えて言えば,日本からその地球の真裏側のアルゼンチンやブラジルに行くには,現在の飛行機でもかなり時間がかかるのですが,もしも地球の中に真っ直ぐ裏側まで通じる穴を掘ってそれを通過することが可能なら動力無しで落下するだけでもはるかに速いショート・カットになるというような発想です。

 ホーキング(S.Hawking)やペンローズ(R.Penrose)などマッド・サイエンティストではないか?と感じられる余りにも哲学的な人の述べられることは,私には理解できないものが多いです。

 「タイムマシン」には「親殺しのパラドックス」に近いであろうホーキングの「時間順序保護仮説」などの背理的な仮説もあります。ホーキングは「タイムマシン」を創ることが可能な根拠も不可能な根拠も両方提出するような方ですから,その真意はわかりませんが。。。

 しかし,このような時空を曲げるような膨大なエネルギーが必要で,しかも現実にワームホール内の強大な潮汐力に耐えてその穴を通過するという難問をクリアする必要もあるという実現がかなり困難な構想よりも,量子力学の非局所性を用いるのが「タイムマシン」としてはより安易な方法でしょう。

 昔からあるホイーラー(J.Wheeler)などの「遅延選択実験」というのは,未来(=原点から光円錐の外の絶対的未来)において,如何なる選択をするかが現在の観測結果を左右するというものですね。

 実際に行われた実験結果においては,現在の観測と未来の選択の間に確実な因果関係ではなく統計的に有意な相関が見られるようです。

 (これは確か2008年6月頃「EMANさんのボード」でちょっと話題になった日経サイエンス掲載のウォルボーン(S.P.Walborn)らの「二重スリット量子消しゴムの実験のレポート」からの記憶だと思います。)

 この効果をより精密にするにはその中に光子1個だけがあるような理想的な希薄レーザービームが必要らしいのですが,既に技術的には日本の研究で開発されているらしいですね。

 まあ,ナノ秒程度の未来の情報信号が原理的に得られるとしても,その未来信号を実際に我々の五感に知らせるための装置の中にそれ以上のタイムロスがあれば「タイムマシン(量子通信)」としては無意味ですが。。

 というわけで,関連した論文を探しているうちに1987年のミュンヘン大での実験論文を見つけて正月に翻訳を試みたのでそれをそのまま掲載します。

表題:「Delayed choice experiments in quantum interference(量子干渉における遅延選択実験)」

 T.Hellmuth,H.Walther,A.Zajonc, and W.Schleich

Sektion Physik,Universitat Munchen,D-8046 Garching,Federal Republic of Germany and Max-Planck-Institut fur Quantenoptik,D-8046 Garching bei Munchen,

 

Federal Republic of Germany(Received October 1986)   Phys.Rev.A Vol.35,No.6 March,1987 ,pp2532-2541

  Abstract:

 

 Wheelerによる次の示唆に従って,我々は空間と時間の両方の領域での遅延選択実験を実行した。

 

 第一の実験には低強度のMach-Zehnder干渉計を用い,第二の実験には時間解像干渉計の量子beatテクニックを用いた。

 

 得られた結果は操作の正常モードと遅延選択モードの間に観測できる差異を顕わすことが無く量子論の予測と一致した。

Ⅰ.Introduction(序)

光子描像での「ヤング(Young)の干渉実験」の記述は過去に大きな議論を生じた課題でした。

 

重大な含みのある疑問の1つは装置の中に唯1つの光子しかない多数回の事象で形成される干渉パターンが強い光源で得られる干渉パターンと同一か否か?ということです。

この問題に答える実験は何人かの論文著者により種々の配列で実行されてきました。

 

そして,DentsovとBazの実験という例外を除く全ての実験では「強度が弱くなっても強度パターンに何らの変化も生じない。」という結果を示しました。

 

さらに,その後行われたDentsovとBazの任意の再実験では結局,他の実験結果と一致する結果を得ました。

 

そこで,光は一方では波動性を示し,他方では例えば「コンプトン(Compton)効果」のような例に見られるように「粒子に特有の局所性」を示すように見えるわけです。

しかし,我々はこれらの干渉実験が全て低圧の放電ランプを用いてなされたことに注目しました。

1つの光子の検知の直後にもう1つの光子が検知される確率は2次の相関関数:g(2)(0)で与えられますが,これは今の場合には2に等しくそれ故ゼロではありません。

それ故,Hanbury-BrownとTwissによる先駆的実験以来,光子たちは束になって到着する傾向を持つことが知られています。

放電ランプからの光による単一光子の干渉実験では最初の光子の直後に続く実験を乱す第二の光子がくる確率は,無作為な光子たちによるそれよりも大きいはずです。

この状況はレーザー光を用いれば改善されてg(2)(0)=1です。

したがって,単一光子の干渉実験に対する理想的な実験,例えば非常に希釈された原子ビーム,あるいはイオントラップにおける単一イオンからの蛍光ランプの解像度においてはその光はg(2)(0)=0を有する反束光と観測されます。

しかし,これまでは反束光を用いた単一光子干渉実験はなされたことがありません。ここでは,カスケード(連続)原子をMach-Zehnder干渉計の光源とします。

同じ意味では唯一のイオンだけがトラップされるほど小さいイオントラップの単一イオンによって供給された反束光を用いる方法下での実験がなされています。 

現状では1秒間に6万カウントの光子の計数率が達成されいます。

 

また,こうした実験はRef.8の実験では重要な励起されたレーザービームを有する相互作用領域での散乱の統計によって課せられる制限を持たないことが注目されます。

ボーア(Bohr)とアインシュタイン(Einstein)はごく初期のヤングの二重スリット実験における1光子の挙動を図的に表現しようと試みるときに生じる波動-粒子の二重性の出現の瞬間に興味をおぼえていました。

粒子性によれば1光子は常に2スリットの一方だけを選択します。

 

しかし,他方,干渉する性質を説明するためには光子が両方の経路を通ると仮定する必要があります。

さらに,アインシュタインは光子の経路を決めるために検知器上の光子の運動量を用いることができると提案しました。

しかし,後にボ-アは検知器上での運動量と位置の不確定性が「ハイゼンベルク(Heisenberg)の不確定性原理」を破ることを示しました。

 

それ故,光子の経路の観測か干渉の観測かのどちらか一方のみが可能であって,両方の同時観測は不可能です。

これに関連した興味深い疑問がホイーラー(Wheeler)とフォン・ワイゼッカー(Von・Weizsacker)によって提出されました。

 

彼らは光子の経路の観測と光子がスリットを通過した後の干渉の観測のどちらの観測を決定するかで実験結果は変わるかを問うたのです。

ホイーラーの遅延選択思考実験は図1(FIG.1)に要約されます。

 

      

パルス電磁波はビーム・スプリッター(BS1)により(経路xと経路yの)2つのビームに分かれます。2つの鏡(M)は右下方で両方のビームを交錯させます。

 

検知器は(経路xの検知器と経路yの別の検知器の)2つのビームの各々の場所にあります。

2つの実験の状況が想定されます。

 

1つは第二のビーム・スプリッター(BS2)が経路xと経路yの交点に導入される場合です。

 

この実験では干渉計の2つの腕における経路長さが厳密に調整されると,destractiveな干渉のせいで一方のカウンターには信号が検知されません。

 

しかるに他の検知器では,constructiveな干渉のため第一のビーム・スプリッター上のビームと同じ強度で検知器に信号が生成されます。

ホイーラーが指摘したように,この実験は,"到着光子が両方のルートからやってきた証拠"です。

もう1つ別の配列では,第二のスプリッター(BS2)は除去され,それ故検知器は光子がxとyのどちらの経路を通ってきたかを観測します。

 

2重スリットの実験において光子の経路の情報を獲得すること,干渉を観測することを同時に行なうことは不可能です。

新しい実験の遅延選択バージョンでは,ホイーラーに従って"ずっと後の時刻に第二のビーム・スプリッターを入れるかはずすかを選択して決めます。"

かくして,既に光子が到着する運動が終わって確定した後にこの光子が1つだけのルートを通ってくるのか,両方のルートを通ってくるのかを人為的に選択して決めるわけです。

干渉実験におけるこの遅延選択の解釈はかなりの注意を喚起し,実験に対して幾つかの提案がされました。

 

このarticleは空間的と時間的の両方の遅延干渉実験の実験的実現を記述します。これらの実験の予備的結果はRef.13に載せてあります。

本論文は次のように構成されています。

 

この序文(intro.)の次の第Ⅱ節では,遅延選択実験の測定過程を状態の異なる段階,分割,対象のヒルベルト空間の拡張へと分割します。

さらに経路情報,または干渉現象に応じて非交換演算子の陽な表現を与えます。

量子ビートに基づく時間領域での遅延選択実験は第Ⅲ節で導入されます。量子ビートと同じく遅延選択干渉の設定は第Ⅳ節で論じられます。

 

対応する実験結果は第Ⅴ節で見出されます。最後に第Ⅵ節にはまとめと結論があります。(第Ⅱ節へとつづく)

 

PS:寒いから毛布の1つでも買おうかな?と西友の2階売り場をうろついていたら,毛布よりもアッタカそうな女性がいっぱい歩いてましたね。。(← 不謹慎な。。)

 

チクショー,他人の子供だけど。。。何てカワイイんだ。。。

 

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こいつは初春(はる)から。。。

 きのうもいつもの店に飲みにいったら,一見客も常連客もいい人ばかりなんだろうけど疲れることばかり,夜中には修羅場まであって,結局,最後?は私がいいトコ取りの八方美人という状態で帰宅しました。

 その後はどうなったか知りません。チョッピリ心配!! 最初からコレじゃ今年も春から。。。

 ところで,もうすぐ還暦です。。。

 (1950年2月1日生(寅年:みずがめ座:O型)です。旧正月や立春よりも前だから正しくは丑年かな?丑寅の方角は鬼門だし本当は鬼年かも。。。)

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2010年1月 1日 (金)

謹賀新年

 取り合えず,新年おめでとうございます。

 ここ数年は毎年,どこかのお店で,12/31から元旦まで個人的な歌合戦でもしながら2年越しで飲んでいます。

 夜中にお地蔵さまに初詣でをしてタダのお神酒でもいただこうかとも思いましたが混んでいると予想され面倒臭いと単に朝帰りでした。

 そういえば年賀状を出すという習慣は1995年くらいまででその後はしなくなりました。でも1990年ちょっと前頃から2000年前後までは年賀メールというのを送ったり貰ったりしていましたが,丁度携帯電話が流行りだした頃から年賀メールもやらなくなりました。。ズボラですね。

 まあ,商用の年賀状,年賀メールはありますけどね。。

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