確率と分布関数(1)(確率の定義)
ちょっと調べる必要があって1988年(38歳でまだ大型コンピュータで仕事をしていてパソコンもネットも知らなかったのどかな時代)にコツコツとまとめた確率と統計のノートから抜粋します。
最初は定義と定理の列挙です。定理の証明は簡単なものが多いので基本的には省略します。
まず,Rを実数全体の集合とします。
[定義1-1]:Rの部分集合族のうちで次の性質を持つ最大の集合族BをRのボレル集合族(Borel family of sets)と呼ぶ。
(1) M1,M2,..,∈B なら,∪k=1∞Mk∈B
(2) M∈B,N∈B なら,M-N∈B
(3) a∈R,b∈R,a<bなら(a,b)∈B
これから,またB は以下の性質も有することがわかります。
(4) R∈B,φ∈B
(5) N∈BならNc≡R-N∈B
(6) M1,M2,..,∈B なら∩k=1∞Mk∈B
(7) ∀a∈Rについて(a,∞)∈B,{a}∈B
[定義1-2]:試行の結果の全体:Ωを標本空間または確率事象といい,
Ωの元ωを根源事象または素事象という。
Ωの部分集合をA,B,C,..と表記し,各々を単に事象という。
ある事象A⊂Ωを与えたとする。
ω∈Aのとき,ωは事象Aの1つの結果である。
または,ωが起これば事象Aが起こった。 という。
事象A,B∈Ωを与えたとき,AまたはBが起これば事象A∪Bが起こったという。
事象A,Bが共に起こればA∩Bが起こったという。
また,Ac≡Ω-AをAの余事象という。
空集合φは実現不可能な事象をいう。
[定義1-3]:確率事象Ωの部分集合族F が次の3条件を満たすときF をσ-集合体(σ-加法族)という。
(1) A∈F ならAc∈F
(2) A1,A2,..,∈F なら∪n=1∞An∈F
(3) Ω∈F
そしてσ-集合体F の元を改めて事象と定義する。
※この定義からF は次の3つの性質も有することがわかります。
(1) φ∈F
(2) A1,A2,..,∈F なら∩n=1∞An∈F
(3) A1,A2,..,∈F ならlimsup n→∞An∈F,liminf n→∞An∈F
ただし,
limsup n→∞An≡∩n=1∞∪j=n∞Aj,liminf n→∞An≡∪n=1∞∩j=n∞Aj
です。それぞれ,集合族{An}の上極限,下極限と呼ばれます。
常にliminf n→∞An⊂limsup n→∞Anですが,
特にliminf n→∞An=limsup n→∞Anのとき,この共通の集合をlim n→∞Anと記して集合族{An}の極限集合と呼びます。
[例1-4]:集合族{Ω,φ}も1つのσ-集合体と見なせます。
[定義1-5]:A,B∈FでA∩B=φのとき,
"事象Aと事象Bは互いに排反である",
または,"AとBは排反事象である" という。
[定理1-6]:集合列{An}(An∈F,n=1,2,..)が非減少列:
A1⊂A2⊂..⊂An⊂An+1⊂..なら,
A≡∪n=1∞Anは互いに排反な事象の和として表わされる。
(証明)B1≡A1,Bk≡Ak-Ak-1(k=2,3,..)と置けば,
i<jのときBi∩Bj=φ(排反)です。
そして,A≡∪n=1∞An=Σk=1∞Bkと書けるのは明らかです。
(証明終わり)
※ついでに,集合演算の規則:(∪n=1∞An)∩B=∪n=1∞(An∩B)
も挙げておきます。
[定義2-1]:(確率の定義)
(1)古典的な確率の定義
1つの試行の結果としてn個の素事象が同等の確からしさで起こるとき,各素事象:ωj∈Ωに対して1/nを割り当てる。
すなわち,各々の素事象ωjに対して,
P({ωj})≡1/n(j=1,2,..,n)とし,
事象AがA={ω1,ω2,..,ωr}={ω1}∪{ω2}∪..∪{ωr}なら,
P(A)≡P({ω1})+P({ω2})+..+P({ωr})=r/n
とする集合関数P(A)を事象Aの確率という。
あるいは,事象Aの元の個数をN(A)とするとき,
P(A)≡N(A)/N(Ω) とする。
(2)相対頻度による定義
同じ条件の下で試行をn回繰り返したとき,
事象Aが起こった回数をN(A)とすれば,
相対頻度fnはfn(A)=N(A)/nと書ける。
このとき,次式の右辺の極限値が存在するなら,
P(A)≡limn→∞fn(A) を事象Aの確率という。
(3)公理による定義(Kolmogorovによる)
確率とは次の3条件を満たし,Ωの部分集合の族の"あるσ-集合体F の任意の元=事象"に対して定義された集合関数である。
この"3条件=確率の公理"は,以下の通りである。
公理1:∀A∈Fに対してP(A)≧0
公理2:P(Ω)=1
公理3(完全加法的):i≠jのときAi∩Aj=φなる事象列{An}に対し,P(∪n=1∞An)=Σn=1∞P(An)が成り立つ。
そして,Ω,F,Pをまとめて(Ω,F,P)と表記し,確率空間と呼ぶ。
この定義からPは以下の性質を持つことがわかります。
(1) P(φ)=0
(2) A∈F のときP(Ac)=1-P(A)
(3) A,B∈F でA⊂BならP(A)≦P(B)
(4) ∀A∈F に対してP(A)≦1
(5) A,B∈F のときP(Ac∩B)=P(B)-P(A∩B)
(6) A,B∈F のときP(A∪B)=P(A)+P(B)-P(A∩B)
(7) 事象列{An}が非減少列であって,A≡limn→∞An=∪n=1∞Anな
P(A)=limn→∞P(An)である。
(8) 事象列{An}が非増加列であってA≡limn→∞An=∩n=1∞Anなら
P(A)=limn→∞P(An)である。
※そして,実は非減少列,非増加列に限らず,
極限集合:A=limn→∞Anが存在すればP(A)=limn→∞P(An)が成立します。
また,A,B∈F のとき,
P(A∪B)=P(A)+P(B)-P(A∩B)
なる公式の応用として,
A,B,C∈F のとき,
P(A∪B∪C)=P(A)+P(B)+P(C)-P(A∩B)-P(B∩C)-P(C∩A)+P(A∩B∩C)
が成立すること
も容易に示せます。
[例2-2]:Ω≡{ω1,ω2,..}を可算集合,
{p1,p2,..}をΣn=1∞pn=1,pk≧0 (k=1,2,..)を満たす実数集合
とします。
このとき,∀M⊂Ωに対して集合関数Pを
P(M)≡Σ(ωi∈M)pi と定義すれば,
Pは確率の公理を満たします。
[例2-3]:Ω≡{ω|a≦ω≦b},A≡{ω|c≦ω≦d}(a≦c,b≦d)に対して,集合関数LをL(Ω)≡b-a,L(A)≡d-cで定義し,
PをP(A)≡L(A)/L(Ω)=(d-c)/(b-a)で定義すると,
Pは確率の公理を満たします。
[定義2-4]:2つの事象をA,B∈F とする。
P(B)>0 のとき,P(A|B)≡P(A∩B)/P(B)を,
"事象Bが確実に起きたという前提の下での事象Aの条件付確率"
という。
また,P(A∩B)を事象AとBの同時確率という。
[定理2-5](乗法公式):A0,A1,A2,.,Anを(n+1)個の事象とする。
もしも,P(∩j=0n-1Aj)>0 なら,
P(∩j=0nAj)=P(A0)P(A1|A0)P(A2|A1∩A0.,)..
P(An|∩j=0n-1Aj) が成り立つ。
[定理2-6]:[定義2-4]においてBをP(B)>0 の事象とすれば,
Bを固定したときの条件付確率を与える関数P(・|B)は,
確率の公理を満たすので,
(Ω,F,P(・|B))は1つの確率空間を作る。
[定理2-7](全確率の公式):可算個の排反事象列:{An}が,
P(An)>0,∪n=1∞An=Ωを満たすとき,
事象Bの確率はP(B)=Σn=1∞P(An)P(B|An)である。
[定理2-8](ベイズ(Bayes)の公式):
前定理と同じ条件の下で,
P(Aj|B)=P(Aj)P(B|Aj)/[Σn=1∞P(An)P(B|An)]
が成立する。
[定理2-9]:A∩C=φ,P(B)>0 なら,
P(A∪C|B)=P(A|B)+P(C|B)
である。
[定義2-10]:2つの事象A,Bが独立であるとは,
P(A∩B)=P(A)P(B)なることである。
2つの事象A,Bが独立でP(B)>0 なら,
P(A|B)=P(A)である。
[定理2-11]:事象A,Bが互いに排反:A∩B=φで,
P(A)>0,P(B)>0ならA,Bは独立では有り得ない。
[定理2-12]:n個の事象A1,A2,.,Anが独立であるとは,
"全てのk≦nなるkに対するA1,A2,.,Akについて,
(2n-n-1)個の等式:P(∩j=1kAj)=Πj=1kP(Aj)
が成立すること" である。
[定理2-13]:(1)P(A∩B)≧1-P(Ac)-P(Bc),(2)P((∩j=1nAj)≧1-Σj=1nP(Ajc)である。
[定義3-1]:確率変数X=X(ω)はΩ上で定義される関数で,
有限値を取り(i.e.P({ω∈Ω|-∞<X(ω)<∞})=1),
しかも∀x∈Rに対して[ω∈Ω|X(ω)≦x]が1つの事象となるものをいう。
すなわち,定義の条件は,
∀x∈Rに対して[ω∈Ω|X(ω)≦x]∈F
となることです。
以下では集合[ω∈Ω|X(ω)≦x]を略記号:(X≦x)で表記することにします。
[定理3-2]:Ωを定義域とし空でない実数集合を値域とする任意関数をXと置くと,
∀x∈Rに対し,
(1)∪n=1∞(X≦x-1/2n)=(X<x),
(2)∩n=1∞(X≦x+1/2n)=(X≦x)
である。
これから,(X≦x)∈Fだけでなく(X<x)∈Fである,
ことがわかる。
そしてσ-集合体Fの性質から,
(X>x),(x<X≦y),(x≦X<y),(X=x)
も全てFの元になる,こともわかる。
Xを確率変数,x∈Rをある定数とすると,Xをxに割り当てる標本点(素事象)の集合:Ax≡{ω∈Ω|X(ω)=x}が定義できて,
それはある確率:p=P(Ax)∈[0,1]を持ちます。
[定理3-3]:同じ確率空間(Ω,F,P)上でX,Yが共に確率変数のとき,
(1)X+Y (2)kX(k∈R) (3)X2
は確率変数である。
また,(4)(Y=0)=φなら,X/Yも確率変数である。
これから,X,Yが共に確率変数なら,
XY=(1/4){(X+Y)2-(X-Y)2},
(max(X,Y)≦x)=(X≦x)∩(Y≦x)により,
XYとmax(X,Y)も確率変数です。
[定理3-4]:集合A⊂Ωに対して,
ω∈AならIA(ω)=1,ω∈AcならIA(ω)=0
で定義されるΩ上の集合関数IAをAの定義関数,
または,指示関数という。
IAが確率変数となるための必要十分条件はA∈Fである。
(証明)x<0 なら(IA≦x)=φ,0≦x<1なら(IA≦x)=Ac,x≧1なら(IA≦x)=Ωですが,φ∈F,Ω∈Fは自明です。
そして,"Ac∈F はA∈F と同値"ですから,IA(ω)が確率変数となるための必要十分条件はA∈Fです。(証明終わり)
特にΩ∈Fですから,IΩは1つの確率変数です。
そしてx<1なら(IA≦x)=φ,x≧1なら(IA≦x)=Ωです。
そこで,x<0ならP(IA≦x)=0,0≦x<1ならP(IA≦x)=1-P(A),x≧1ならP(IA≦x)=1です。
ノートを書き写すだけの作業ですが,ここで一休みします。
(つづく)
参考文献:藤沢武久 著「新編 確率・統計」(日本理工出版会)
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コメント
どもお久しぶりです。hirotaさん。コメントありがとうございます。TOSHIです。
>P(Y=0)=0 で良いんじゃない?
ただ単に参考文献の「新編 確率・統計」の内容をコピーしただけですが,言われてみると,それでもいいというかその方がいいような気がします。
>確率変数の定義も有限値でない所は±∞と定義されてないとダメみたいに見えるから
P(定義域)=1で良いような。
これも確かに,X(ω)が有限であるという意味はi.e.P({ω∈Ω|X(ω)=±∞})=0)ではなく,i.e.P({ω∈Ω|-∞<X(ω)<∞})=1と書くべきでしたね。
こちらは私の追加文なので本文を直しておきます。
ありがとうございました。
TOSHI
投稿: TOSHI | 2010年11月18日 (木) 03時11分
確率変数の定義を
P({ω∈Ω|X(ω)=±∞})=0
としてるのに、
定理3-3 (4) の条件を
(Y=0)=φ
としてるのは何故だろう?
P(Y=0)=0
で良いんじゃない?
確率変数の定義も有限値でない所は±∞と定義されてないとダメみたいに見えるから
P(定義域)=1
で良いような。
投稿: hirota | 2010年11月17日 (水) 12時27分