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2010年3月30日 (火)

電磁波の放射(1)

先日「確率と分布」シリーズを終了させたので,現在は主として次の課題「γ崩壊とメスバウアー効果」に向かっています。

γ崩壊(γ-decay)については,原子核(nucleus) ZAN の励起状態:|i>≡|Iiπii>がγ線を放出して終状態:|f>≡|Ifπff>へ転移するという現象を考察すればいいだけなのですが,量子論の議論を展開する前に電磁気学の必要な基礎知識を明確にしておかないと不安を感じます。

理論の基礎を明確化するため,まず,2010年2/6に「電磁力学と解析力学」という記事を書きました。

 これに続いて,今回は無限に拡がった空間の中の狭い領域に電荷密度(charge density)ρe(,t),電流密度(current density)e(,t)の分布が与えられていてその時間変動が激しいときに周囲の空間に電磁波が放射される現象を考察します。

 

 これを双極子放射,四重極放射etc.の重ね合わせとして捉えるため,電磁場(electromagnetic field)の多重極展開(multipole expansion)を詳述したいと思います。

しかし,まずは過去の電磁気学や光学の記事から,このテーマに必要な古典電磁気学の基本知識を抜粋して要約します。

 

主として,2007年12/6の記事「ヤングの干渉実験(2)(量子論)」と2008年9/27の記事「先進波と負エネルギー,反粒子について」の内容から抜粋コピーしてそれらを適当に修正しました。

電磁場のスカラーポテンシャル(scalar potential)をφ(,t),ベクトルポテンシャル(vector potential)を(,t)とすると電磁場の強さ(=可観測量)である電場(,t),磁場(磁束密度)(,t)これらにより(,t)=-∇φ(,t)-∂(,t)/∂t,(,t)∇×(,t)と表わされます。

以下では,簡単のために引数,tを適宜省略します。

上述のφ(,t),(,t)は電磁ポテンシャル(electromagnetic potential)と呼ばれます。

 

そして,φ,による=-∇φ-∂/∂t,∇×なる場の強さ(field strength)の表現は,任意関数Λ=Λ(,t)についてのゲージ変換(gauge)と呼ばれる変換:φ→φ+∂Λ/∂t,-∇Λに対して不変です。これを電磁場のゲージ不変性といいます。

そして,"電磁場の基本方程式(運動方程式)真空中のマクスウェル方程式(Maxwell-eq)"のポテンシャル,φによる表現は()-2(1/c2)(∂∇φ/∂t)+(1/c2)(∂2/∂t2)=μ0e,-ε02φ-ε0(∂/∂t)=ρeと書けます。

 

序文で述べたように,ρe(,t)は電荷密度,e(,t)は電流密度を表わしています。

特に,相対論的に共変な(covariant)ゲージであるロ-レンツ(Lorenz)ゲージ,つまり条件(1/c2)(∂φ/∂t)=0 を満たすようなゲージ関数Λを採用すれば,運動方程式は(1/c2)(∂2/∂t2)-2=μ0e,□φ=(1/c2)(∂2φ/∂t2)-2φ=ρ0となってφとについて対称,かつ共変性が明白な形になります。

(上では□≡(1/c2)(∂2/∂t2)-2なる微分演算子記号を用いましたが,記号□はダランベルシャン(d'Alembertian)と呼ばれています。)

ところで,これ以外のゲージを採用すると時空座標のローレンツ変換x'μ=aμννに伴う4元電磁ポテンシャルAμ=(φ/c,)の変換が,通常のA'μ=aμννの他に新しい座標系で同じゲージ条件を満たすようにするため,A'μ=aμνν+αμ(a)のような余分の補正変換αμ(a)を追加される必要があります。

そこで,こうしたゲージ関数では電磁場:Aμ=(φ/c,)が座標系の取り方に依存する量となって相対論的に正しい共変な4元ベクトルではなくなります。

したがって,非共変ゲージを採用したのでは電磁ポテンシャルは非局所的量(non-local)となります。それ故,これが信号として観測可能な量なら電磁信号が光速を超えて相対論的因果律(causality)を破ることになると考えられます。

しかし,この問題点については以前の2006年10/9の記事「非共変ゲージの非局所性(電磁場)」で論じたように,現実に観測される物理量は場の量Aμ=(φ/c,)ではなく場の強さである電場と磁場,つまりFμν≡∂Aν/∂xμ-∂Aμ/∂xνであって,これらはゲージ選択に無関係であることから解決済みです。

つまり,如何なるゲージを選択しようと場の強さは共変ゲージから得られる量と全く一致するため共変であり,そこで局所的なことも明らかですから,現実には相対論を破らないことがわかります。

つまり,"量子論おいて観測されるのは確率であって波動関数ではない。"という話と同じような意味です。

 

電磁場を示す電磁ポテンシャル:Aμ=(φ/c,)は,量子論なら光子の波動関数に相当するため,これを「物理的実在」と考えないなら何らの矛盾も生じないわけです。

さて,時空座標をxμ=(ct,),電磁ポテンシャルをAμ=(φ/c,),電荷,電流をJμ=(cρe,e)とする4元表記では,ロ-レンツゲージ:(1/c2)(∂φ/∂t)=0 は∂Aμ/∂xμ=∂μμ=0 となり,運動方程式:□=μ0e,□φ=ρe0は,□Aμ=∂ννμ=sμとなります。ただしsμ≡Jμ/(c2ε0)です。

そして,特に電荷や電流の全くない場合:Jμ=(cρe,e)=0 の真空中の自由電磁場の方程式は,□Aμ=∂ννμ=0 です。

μ(x)={1/(2π)4}∫d4k[A^μ(k)exp(-ikx)],sμ(x)={1/(2π)4}∫d4k[s^μ(k)exp(-ikx)として,Aμ,sμを"平面波の重ね合わせ=Fourier積分"で表わせば,微分方程式:□Aμ=∂ννμ=sμは代数方程式:k2A^μ(k)=-s^μ(k)に帰着します。

特に,sμ=Jμ/(c2ε0)=0 の自由場の方程式:□Aμ=∂ννμ=0 はk2A^μ(k)=0 となりますが,これはk2=kμμ=(k0)22=0 を意味します。

 

これは量子論で光子(photon)の質量がゼロなることに相当します。

そこで,自由場ではフーリエ積分表示:Aμ(x)={1/(2π)4}∫d4k[A^μ(k)exp(-ikx)]の成分である各平面波:exp(-ikx)=exp{i(kr-ωt)}の(角)振動数(frequency)ω=ck0は波数(wave number)ベクトルの関数としてω=ωk=c||と書けます。

故に,自由場では波数の4元表示kμ=(ω/c,)はkμ=(ωk/c,)となって,exp(-ikx)=exp{i(kr-ωkt)},かつexp(ikx)=exp{-i(kr-ωkt)}です。

したがって,A^μ(k)=θ(k0)δ(k2)として自由電磁場をAμ(x)={1/(2π)4}∫d4k[θ(k0)δ(k2)exp(-ikx)]と表わせば,Aμ(x)=Aμ(,t)={1/(2π)3}∫d3(2||)-1kμkexp{(-i(kr-ωkt))+ ε-kμkμ*exp{i(kr-ωkt)}となります。

ただし,akは定数係数でありεkμは偏光(polarization)を表わす単位ベクトルです。つまりεk2=εkμεkμ=(εk0)2εk2=-1ですが,これはローレンツ条件:kεk=kμεkμ=(ωk/c)εk0kεk=0 を満たすように与えられます。

次に,一般の4元電流密度sμに対しローレンツゲージの電磁場の方程式:□Aμννμμを解きます。 

□Aμ=sμなる形から形式的にAμ=□-1μと書けるので,ダランベルシァン□の逆演算子(inverse)□-1が得られればいいと思われます。実は,これは3次元のラプラシアン(Laplacian)△=∇2の逆演算子△-1を求めるのと同じ方法で求めることができます。

すなわち,もしも□D^=1なるD^が見出されれば,□-1=D^よりAμ=□-1μはAμ=D^sμと書けて形式的に解けます。

そして微分演算子□に対して□D^=1を満たす逆演算子D^=□-1は積分演算子ですから,D^を□D(x)=δ4(x)を満たす関数D(x)で解Aμ=□-1μを表現すればAμ(x)=∫d4yD(x-y)sμ(y)と書けることになります。

実際には□A0μ0を満たす積分定数A0μをも考慮して,Aμ(x)=A0μ(x)+∫d4yD(x-y)sμ(y)が一般解になります。

一般に,□D(x)=δ4(x)を満たす関数D(x)は微分演算子□のグリーン関数(Green's function)と呼ばれます。

グリーン関数D(x)を具体的に求めるため,そのフーリエ積分表示をD(x)=(2π)-4∫D^(k)exp(-ikx)d4kと書けば,デルタ関数の積分表示がδ4(x)=(2π)-4∫exp(-ikx)d4kなので,□D(x)=δ4(x)はD^(k)=-1/k2を意味します。

それ故,形式的にはD(x)=(2π)-4∫D^(k)exp(-ikx)d4k=-(2π)-4∫[exp(-ikx)/k2]d4kと書けます。

しかし,D^(k)=-1/k2は分母がゼロになる点,つまりk2=(k0)22=0 なる位置に特異点を持ちますから,このままではwell-definedではありません。

逆に,D^(k)の極(poles)k0≡±||付近の挙動を適切に定義することで,D(x)が満たす境界条件を一意に定めることが可能なので,これらの極をどのように回避してwell-definedとするか次第で望ましいD(x)を求めることができます。

仮に,D^(k)≡-1/(k2+iε)(ε>0)と選択してD(x)≡-limε→+0(2π)-4∫[exp(-ikx)/(k2+iε)]d4kとして計算してみると,詳細は省略してD(x)=D(,t)={1/(4π||)}[δ(||-ct)-δ(||+ct)]={1/(4πc||)}[δ(t-||/c)-δ(t+||/t)]を得ます。

この関数:D(x)はt→±∞や||→∞でゼロとなるという通常の境界条件を確かに満足していますから,これを電磁場を考察する際のダランベルシャン□の基本的なグリーン関数と考えることにします。

慣例に従って,D(x)をD(x)=Dret(x)-Dddv(x)と分解してDret(x)≡Dret(,t)=θ(t)D(,t)={1/(4πc||)}δ(t-||/c),Dadv(x)≡Dadv(,t)=-θ(-t)D(,t){1/(4πc||)}δ(t+||/c)と定義します。

ret,Dadvは,それぞれ遅延(retarded)グリーン関数,先進(advanced)グリーン関数と呼ばれています。t>0 の未来を表わすだけなら,そこではDadv(,t)=0 ,D(,t)=Dret(,t)なので当面の問題では遅延グリーン関数ret(,t)だけ考慮すれば十分です。 

すると,先に書いた一般解の表現μ(x)=A0μ(x)+∫d4yD(x-y)sμ(y)は,t>0 でAμ(x)=A0μ(x)+∫d4yDret(x-y)sμ(y)となります。

あるいは,自由電磁波A0μ(x)=A0μ(,t)を無限の過去t=-∞ に入射した入射電磁波Ainμ(,t)と考えるなら,Aμ(,t)=Ainμ(,t)+c∫-∞dt'∫d3'Dret(',t-t')sμ(',t')なる表式は,現時刻tまでに入射波が散乱され全ての波が重ね合わされた結果を表わす散乱現象の記述と解釈されます。

すなわち,Aμ(,t)=Ainμ(,t)+∫d3'∫-∞tdt'{1/(4π|'|)}δ(t-t'-|'|/c)μ(',t')=Ainμ(,t)+{1/(4π)}∫d3'[sμ(',t-|'|/c)/|'|]です。

一方,sμをJμ=c2ε0μに戻し無限の過去には電磁場は存在しなかった場合:Ainμ(,t)=0 を想定すると,φ(,t)={1/(4πε0)}∫d3'[ρe(',t-|'|/c)/|'|],(,t)=0/(4π)}∫d3'[e(',t-|'|/c)/|'|]となります。

 

通常の状況はこれです。 

上述の意味で,これらのポテンシャルφ(,t),(,t)を遅延ポテンシャル(遅刻ポテンシャル)と呼び,それによる電磁波を遅延波(遅刻波)と呼びます。

これらを(角)振動数ωで展開して,μ(,t)=Ainμ(,t)+{1/(4π)}∫d3'[sμ(',t-|'|/c)/|'|]をμ(,t)=∫A^μ(,ω)exp(-iωt)dω,またはA^μ(,ω)={1/(2π)}∫Aμ(,t)exp(iωt)dtと表わすこともできます。

すると,他方μ(',t-|'|/c)=∫s^μ(',ω)exp(-iω(t-|'|/c))dω=∫s^μ(',ω)exp(iω|'|/c)exp(-iωt)ですから,A^μ(,ω)=∫A^inμ(,ω)+{1/(4π)}∫d3'[s^μ(',ω)exp(iω|'|/c)/|'|]と書けます。

したがって,Gret(,ω)=exp(iωr/c)/(4πr) (r≡||)と置けば,A^μ(,ω)=∫A^inμ(,ω)+∫d3'ret(',ω)s^μ(',ω)と表現できるためret(,ω)を遅延グリーン関数と呼ぶこともあるようです。 

このret(,ω)はヘルムホルツ方程式(Helmholtz)のグリ-ン関数になっています。つまり,[△+(ω/c)2]ret(,ω)=-δ3()を満たしています。  

 

以下,遅延波,遅延ポテンシャルのみを考えればよいケースに限定して考察をします。 

次に,Aμ(,t)=(φ(,t)/c,(,t))の多重極展開というテーマに向かいますが,まず場が時間tに依らない静場(static-field):Aμ()=(φ()/c,())における多重極展開を復習します。

まず,ルジャンドル多項式(Legendre polymomials)Pl(z)の母関数展開:1/(1-2tz+t2)1/2Σl=0ll(z)から,公式:1/|'|=1/(r2+r'2―2rr'cosθ')1/2=Σl=0(rl/r'l+1)Pl(cosθ') (r<r'),Σl=0(r'l/rl+1)Pl(cosθ') (r>r')が得られます。

ただし,cosθ'=(rr')/rr'です。これは導体における鏡像法でよく使用される式です。 

静電ポテンシャル:φ()={1/(4πε0)}∫d3e(')/|'|にこの母関数展開を代入すると,r>r'(帯電領域の外側)ではφ()=Σl=0φl()={1/(4πε0)}Σl=0-(l+1)∫ρe(')r'll(cosθ')3'となります。

 右辺の展開のl=0 の項は,φ0(r)={1/(4πε0)}r-1{∫ρe(')d3'}=q/(4πε0r)となります。ただしq≡∫ρe()d3ですが,これは全電荷量です。

これは,rが十分大きい遠方から見ると,1/2以上の1/rの高次の項は全て消えて,あたかも全電荷が原点に集中しているかに見えることを示しています。

 また,l=1の項はφ1(r)={1/(4πε0)}r-2∫ρ(')r'cosθ'd3'={1/(4πε0)}r-3{∫ρe(')(rr')d3'}=np/(4πε02)です。ここで/rは方向の単位ベクトルです。

 

 ∫ρe()3は電気双極子モーメント(electric dipole moment;電気双極子能率)を示しています。

ただし,この式で定義されるは座標原点の選び方に依らない本当の意味のベクトル量であるとはいえません。 

 実際,原点Oをベクトルだけ移動したとすれば'で指定されていた位置は新原点ではベクトル"='-で表現されるので,∫ρe(')'d3'=∫ρe("+)"d3"+∫ρe("+)d3"= ∫ρe~(")"d3"+∫ρe~(")d3"=~+qとなります。 

ここで,ρe~(")≡ρe("+),~≡∫ρe~(")"d3"と定義しました。~は新原点での上記定義による双極子モーメントですが~=qですから,明らかに双極子モーメントベクトルは座標原点に依存します。 

 しかし,全電荷qがゼロのときには~=となって双極子モーメントは原点の取り方に依らない客観性を持つため,ベクトル的物理量としての意味を持ちます。

 今の多重極展開の場合には,∫ρe()3は一般に原点の選び方に依らないベクトル量ではありませんが,双極子モーメントの時間微分d/dtは如何なるときも座標原点の取り方に依らず客観的意味を持っています。

実際,~+qよりd/dt=d~/dt+(dq/dt)ですが,全電荷qは時間的に変化しない保存量なのでdq/dt=0 です。そこでd/dt=d~/dtとなるからです

さらに,l=2の項はφ2(r)={1/(4πε0)}r-3∫ρe(')r'22(cosθ')d3'={1/(8πε0)}r-3∫ρe(')r'2(3cos2θ'-1)d3'={3/(8πε0)}r-5[∫ρe('){(rr')2-(1/3)r2r'2}d3']=Q/(8πε02)と書けます。

ただし,Q≡∫ρe('){(nr')(nr')-(1/3)r'2}d3'ですが,これをテンソル成分の形で書けばQ=Σi,j=13ijij,Qijρe(){xij-(1/3)δij2}3です。

ijを成分とする2階テンソル量を電気四重極モーメント(electric quadratic moment)と呼びます。電気四重極モーメントもテンソルとしての客観的意味を持つのは全電荷qがゼロで,かつ双極子モーメントもゼロのときだけです。 

 いずれにしても,原点r=0 に近づくにつれて,φ0からφ12,..という具合に順に電荷分布の構造が全体のφに反映されてきます。

次に,静磁場のベクトルポテンシャル()=0/(4π)}∫d3'[e(')/|'|]の展開ですが,これは静電ポテンシャルφ()={1/(4πε0)}∫d3'[ρ(')/|'|]の展開とほぼ同様に行なうことができます。

すなわち,()=Σl=0l()={μ0/(4π)}Σl=0-(l+1)e(')r'll(cosθ')3'が直ちに得られます。

そして,まず右辺のl=0 の項を調べると0()={μ0/(4πr)}e(')d3'です。

しかし,eに対して式ek()=∂j(xkej)-xkjej,つまりe()=div(:e)-diveが成立します。これと時間に依らない連続の方程式:dive0 を考慮すればe()=div(:e)を得ます。

そして,電流密度e()がゼロでない領域が空間の有限部分に限られているため,全電流はゼロです。つまり=∫e ()d3=0 ですからl=0 の0()={μ0/(4πr)}e(')d3'=0 です。

次に,l=1の項は1()={μ0/(4π)}r-2e(')r'cosθ'd3'=0/(4π)}r-3{∫e(')(rr')d3'}です。

 

ここで,{'×e(')}×e(')(')-'(e('))を用いると,∫e(')(rr')d3'=∫{'×e(')}×3'+∫'(e('))d3'です。

 一方,∂j'{xk'(')ej(')}=k'(')(div'e)+(')ek(')+k'(e('))=jek(')(')+xk'(e('))ですが,両辺を体積積分すると左辺は表面積分となって消えるため,∫'(e('))d3'=-∫e(')(rr')d3'です。

 そこで,∫e(')(rr')d3'=(1/2)[∫{e(')}d3']×を得ます。それ故,(1/2)∫{×e()}d3と置くと1()=μ0(×)/(4πr3)と表現できます。

 

 を磁気双極子モーメント(magnetic dipole moment)と呼びます。 

特に電流が1つの閉曲線Cに沿って流れる線状電流なら,原点OをCに囲まれた平面内に取り,電流の強さをIと書けばe()d3={∫Se()dS}d=Idより,=(1/2)∫{×e()}d3=(I/2)C(×)です。

ところが,(1/2)C(×)はCで囲まれた平面に垂直で電流Iの向きに右ネジを回すとネジの進む向きを持ち,Cで囲まれた領域の面積Sに等しい大きさを持つベクトルを表わすので,その向きの単位ベクトルをと書けば=ISを得ます。

 したがって,こうした線状電流の平面回路は,それが作る磁場に関しては回路を周辺とする板状の面に単位面積あたりIの磁気モーメントを持つ磁石を曲線Cの囲む平面Sに垂直に敷き詰めたものと同等です。

それ故,回路が十分微小でrが大きいときには()=1()=μ0(×)/(4πr3)と書けます。

 逆に空間内に()なる体積密度で磁気双極子が分布しているとし,微小体積内でのその巨視的意味での平均を()と書けば,()={μ0/(4π)}∫{(')×(')/|'|3}d3'です。

 ところが,rot'{(')/|'|}=rot'(')/|'|-(')×(')/|'|3です。そして∫rot'{(')/|'|}d3'=0 です。

 故に()={μ0/(4π)}∫[rot'(')/|'|]d3'です。

 

 これを()=0/(4π)}∫d3'[e(')/|'|]なる表式と比較すると,()なる磁気双極子の空間分布はm()=rot()で与えられる電流mの空間分布と見なすことができます。mは外部磁場による物質の磁化に基づく磁化電流です。 

l=2の磁気四重極項:2(r)={μ0/(4π)}r-3e(')r'22(cosθ')d3'={μ0/(8π)}r-3e(')r'2(3cos2θ'-1)d3'={3μ0/(8π)}r-5[∫e('){(rr')2-(1/3)r2r'2}d3']は電気と比較して無視できるオーダーなので磁気四重極子についてこれ以上の詳細な論議は省略します。 

()について,原点r=0 に近づくにつれて,1を初めとして2,3,..と電流分布の構造が全体のに反映されてゆきます。

長くなったため,ここでひとまず終わりにします。(つづく)

 

参考文献:砂川重信著「理論電磁気学(第2版)」(紀伊国屋書店),ジャクソン 著(西田 稔 訳)「電磁気学(上),(下)」(吉岡書店)

 

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