確率と分布関数(7)(極限定理の続き,収束の種類)
確率と分布関数の続きです。
色々と中断中のテーマはあるのですが,1つ1つコツコツと終わらせていくつもりです。今は,科学ブログを書いている限りブログネタには困りません。毎回悩んでいた昔が懐かしいくらいです。
[定理9-9]:中心極限定理(central limit theorem)(同一分布の場合)
有限な平均:μ=E[Xj],有限な分散:σ2=Var[Xj]の同一分布を持つ独立確率変数列:X1,X2,..に対して,limn→∞P({(X1+X2+..Xn-nμ)/(n1/2σ)}≦x)=(2π)-1/2∫-∞xexp(-u2/2)du(-∞<x<∞)が成立する。
(証明) Uj≡Xj-μと置くと,E[Uj]=E[Xj]-μ=0,E[Uj2]=Var[Xj]=σ2です。
Yn=(X1+X2+..Xn-nμ)/(n1/2σ)=(Σj=1nUj)/(n1/2σ)と定義して,その特性関数をφn(t)と書けば,U1,U2,..が全て独立ですから,φn(t)=E[exp(itYn)]=Πj=1nE[exp{itUj/(n1/2σ)}]となります。
ところで指数関数はexp(itu)=1+itu-(1/2)t2u2+(θ/6)(itu)3,(|θ|≦1)より,E[exp(itUj)]=1-(1/2)t2σ2+O(t3)と近似展開されます。
そこで,Πj=1nE[exp{itUj/(n1/2σ)}]={1-t2/(2n)+O(n-3/2)}n={1+t2/(2n)+O(n-3/2)}-n=[{1+t2/(2n)+O(n-3/2)}1/{t2/(2n)+O(n-3/2)}]-t2/2+O(n-3/2)と書けます。
ここで,公式:limn→∞(1+1/n)n=eから,limn→∞{1+t2/(2n)+O(n-3/2)}1/{t2/(2n)+O(n-3/2)}=eを得ます。
それ故,limn→∞φn(t)=exp(-t2/2)となります。右辺のexp(-t2/2)は標準正規分布N[0,1]の特性関数に一致しています。
φ(t)=exp(-t2/2)と置いてフーリエ反転公式:F(x2)-F(x1)=∫-∞∞[{exp(-itx2)-exp(-itx2)}φ(t)/(-it)]dtを用いると,F(x2)-F(x1)=(2π)-1/2∫x1x2exp(-u2/2)duを得ます。
したがって,F(x)=limn→∞P(Yn≦x)=(2π)-1/2∫-∞xexp(-u2/2)du (-∞<x<∞)が成立します。(証明終わり)
[例9-10]:上記の中心極限定理から大数の法則(law of large numbers)を導きます。
(解)uの関数exp(-u2/2)の性質から,任意のε1>0 に対して,あるx>0 が存在して(2π)-1/2∫-xxexp(-u2/2)du=1-ε1が成立することがわかります。
そして,別に任意のε>0 を与えて,n≧σ2x2/ε2となるようなnを取ります。このとき,x≦n1/2ε/σです。
そこで,中心極限定理によりP(|(X1+X2+..Xn)/n-μ|≦ε)=P(|(X1+X2+..Xn-nμ)/(n1/2σ)|≦(n1/2ε/σ))≧P(|(X1+X2+..Xn-nμ)/(n1/2σ)|≦x) → (2π)-1/2∫-xxexp(-u2/2)du=1-ε1 (as n→∞)となります。
したがって,十分大きいnに対して,P(|(X1+X2+..Xn)/n-μ|≦ε)>1-2ε1,すなわち,P(|(X1+X2+..Xn)/n-μ|>ε)<2ε1です。
ε1>0 は任意でしたから,limn→∞P(|(X1+X2+..Xn)/n-μ|>ε)=0 を得ます。これは先に述べた大数の法則です。(終わり)
[定理9-11]:ラプラス-ド・モアブルの定理(Laplace-de Moivre)
各試行の結果,排反事象T,Hのどちらか1つが起きるようなn回の"ベルヌーイ試行=独立試行"で,各試行の結果がTなら1,Hなら0 を割り当てる確率変数をXj(j=1,2,..,)とする。
このとき,n回の試行のうちでTが出る回数をSnとすればSn=X1+X2+..+Xn=Σj=1nXjである。
そこで,P(Xj=1)=p,P(Xj=0)=q=1-pのときYn≡(Sn-np)/(npq)1/2と置けば,Ynのd.f:Fn(y)=P(Yn≦y)に対してlimn→∞Fn(y)=(2π)-1/2∫-∞yexp(-u2/2)duが成立する。
(yについて一様収束である。)
(証明) E[Xj]=p,Var[Xj]=pqより[定理9-9]を適用すれば自明。(証明終わり)
[定理9-12]:コルモゴロフの不等式(Kolmogorov's inequality)
平均がゼロで分散が有限の独立確率変数列:X1,X2,..について,Sk≡X1+X2+..+Xkと置けば任意のε>0 に対し,P(max(|S1|,|S2|,..,|Sn|)≧ε)≦(1/ε2){Σk=1n Var[Xk]}が成立する。
(証明):集合AをA≡{ω∈Ω|max(|S1|,|S2|,..,|Sn|)≧ε}と定義し,集合列:{Ak}k=1,2,.をA1≡{ω∈Ω||S1|≧ε},Ak≡{ω∈Ω||Sj|<ε(j=1,2,..,k-1),|Sk|≧ε)(k=2,3,..,n)で定義すれば,A=A1+A2+..+An=Σk=1nAkです。
このとき,A,Ak(k=1,2,..,n)の指示関数IA,IAkについて,明らかにIA=Σk=1nIAkが成立します。故にP(A)=Σk=1nP(Ak)=Σk=1nP(IAk=1)です。
一方,Sn=Sk+(Sn-Sk)で,Sk=X1+X2+..+Xk,(Sn-Sk)=Xk+1+Xk+2+..+Xnです。
そして,SnとSkは独立ですから,Val[Sn]=Var[Sk]+Var[Sn-Sk]であり,E[Sk]=E[Sn-Sk]=0 です。
故に,E[IAkSn2]=E[IAkSk2]+E[IAk(Sn-Sk)2]≧E[IAkSk2]≧ε2P(IAk=1)=ε2P(Ak)なる不等式が得られます。
そこで,Σk=1nVar[Xk]=E[Sn2]≧E[IASn2]=Σk=1nE[IAkSn2]≧ε2Σk=1nP(Ak)=ε2P(A)=P(max(|S1|,|S2|,..,|Sn|)≧ε)が成立します。(証明終わり)
[定理9-13]:独立確率変数列:X1,X2,..があって,それぞれ平均ゼロと有限の分散和:Σk=1∞Var[Xk]<∞を持てば,P(Σk=1∞Xkが収束する)=1が成り立つ。
(これを"Σk=1∞Xkは概収束する。",あるいは,"ほとんど到るところで収束する。"という。)
(証明)Sk≡X1+X2+..+Xk=Σj=1kXjと置けば,Sn+k-Sn=Xn+1+Xn+2+..+Xn+k-1です。
一方,上記の[定理9-12]によれば,P(max(|S1|,|S2|,..,|Sn|)≧ε)≦(1/ε2){Σk=1n Var[Xk]}ですから,0≦P(max1≦k≦N(|Sn+k-Sn|)≧ε)≦(1/ε2){Σj=n+1n+N Var[Xj]}(N≧1)です。
両辺のN→ ∞ の極限を取ると, 0≦P(maxk≧1(|Sn+k-Sn|)≧ε)≦(1/ε2){Σj=n+1∞ Var[Xj]}ですが,Σk=1∞Var[Xk]<∞ なる仮定によって,n→ ∞ に対して,右辺=Σj=n+1∞ Var[Xj] → 0です。
そこで,(1/2ν)3>0 に対してpνが存在してΣj=pν+1∞ Var[Xj]<(1/2ν)3=2-3νとなります。
よって,ε=1/2νと置けば,0 ≦P(maxk≧1(|Sn+k-Sn|)≧=1/2ν)≦22ν{Σj= pν+1∞ Var[Xj]}<2-ν=1/2νが成立します。
したがって,Eν≡{ω∈Ω|maxk≧1(|Sn+k-Sn|)≧1/2ν}と置けばP(∪ν=1∞Eν)≦Σν=1∞P(Eν)<Σν=1∞2-ν=1となります。そこで,n→∞ に対して,P(∪ν=n∞Eν)→ 0 です。
それ故,E≡∩n=1∞∪ν=n∞Eνと置けば,0 ≦P(E)≦P(∪ν=n∞Eν)→ 0,つまりP(E)=0 です。
そこで,P(Ec)=1 ですが,Ec=∪n=1∞∩ν=n∞Eνc,Eνc={ω∈Ω|maxk≧1(|Sn+k-Sn|)<1/2ν}={ω∈Ω|maxk≧1[|Σj= pν+1 pν+kXj(ω)|]<1/2ν}です。
よって,ω∈Ecのとき,ある自然数nが存在してν≧nならω∈Eνc,つまり,|Σj= pν+1 pν+kXj(ω)|<1/2ν≦1/2n (k≧1)です。
ω∈Ecならω∈Encですから,n≦pn≦mのとき|Σj=m+1 ∞Xj(ω)|=|Σj=pn+1 ∞Xj(ω)-Σj=pn+1 mXj(ω)|≦|Σj=pn+1 ∞Xj(ω)|+Σj=pn+1 mXj(ω)|≦1/2n-1です。
つまり,ω∈Ecならn→ ∞ に対し|Σj=m+1 ∞Xj(ω)|→ 0 です。それ故,P(Ec)≦P({ω∈Ω||Σj=m+1 ∞Xj(ω)|→ 0 })です。
以上から,1=P(Ec)=P(∪n=1∞∩ν=n∞Eνc)=P(Σj=1 ∞Xjが収束する。) が成り立ちます。 (証明終わり)
※(注)これは2007年6/25の記事「ブラウン運動と伊藤積分(3)」で与えた(ボレル・カンテリ(Borel-Cantelli)の補題)とほぼ同じ内容です。
すなわち,"{An}n=1,2,.を集合列としAをこれらの集合の無限個の共通に含まれる要素の集合,Pを確率測度とする。このとき,(a)ΣP(An)<∞ ならP(A)=0 (b)ΣP(An)=∞ で事象:Anが独立ならP(A)=1である。"という定理です。
(上記補題の証明):(a)A=∩r=1∞∪n=r∞Anと書けます。よって∀rについてA⊂∪n=r∞Anです。
ΣP(An)が収束するので,ε>0 を任意に取れば十分大きいrに対してP(A)≦P(∪n=r∞An)≦Σn=r∞P(An)<εです。そして,ε>0 が任意なのでP(A)=0 です。
(b)A=∩r=1∞∪n=r∞Anより,Ac=∪r=1∞∩n=r∞Ancです。
故に,1-P(A)=P(Ac)=P(∪r=1∞∩n=r∞Anc)≦Σr=1∞P(∩n=r∞Anc)≦Σr=1∞Πn=r∞[1-P(An)]です。
ここで,ΣP(An)=∞ なので各rについて右辺の無限積は 0 に発散します。(Σlog[1-P(An)]≦-ΣP(An)=-∞ よりΠn=r∞[1-P(An)]=exp(-∞)=0 です。) 故に,P(A)=1です。(証明終わり)(注終わり)※
[定理9-14]:大数の強法則(strong rule of large numbers)
独立確率変数列:X1,X2,..が,各々平均:E[Xj]=μj(-∞<μj<∞),分散:Var[Xj]=σj2<∞を持てば,Sn≡X1+X2+..+Xnと置くとE[Sn]=μ1+μ2+..+μn=mnである。
もしも,Σj=1 ∞σj2<∞ なら,P(limn→∞(Sn-mn)/n=0)=1 が成り立つ。
(証明):Uj≡(Xj-μj)/jと置けば,E[Uj]=0,かつVar[Uj]=σj2/j2です。
仮定によって,Σj=1∞Var[Uj]=Σj=1 ∞σj2<∞ ですから,[定理9-13]よりP(Σj=1∞Uj=Σj=1∞(Xj-μj)/jが収束する。)=1 が成立します。そこで,Sn'≡Σj=1nUj=Σj=1n(Xj-μj)/jと置けばP(n→∞でSn'が収束する)=1 です。
ところで,S1'=U1=X1-μ1,Sn'-Sn-1'=Un(n≧2),つまりn(Sn'-Sn-1')=Xn-μn(n≧2)なので,(Sn-mn)/n=(1/n){S1'+2(S2'-S1')+..+n(Sn'-Sn-1')}=Sn'-(Σj=1n-1Sj')/nと書けます。
P(n→∞でSn'が収束する)=1 を,ほとんど到るところでlimn→∞Sn'=Sと表現すれば,ほとんどいたるところでlimn→∞(Σj=1n-1Sj')/n=Sです。
したがってP(limn→∞(Sn-mn)/n=0)=1 を得ます。(証明終わり)
※ 独立確率変数の平均がほとんど到るところで平均値の平均に収束するというこの定理を大数の強法則といいます。※
次に確率関連の収束の種類をまとめます。
1.確率収束(convergence in probability)
[定義10.1]:確率変数の列:{Xn}n=1,2..があって∀ε>0 に対しlimn→∞P(|Xn-X|>ε)=0 が成り立つとき,XnはXに確率収束するといい,Xn → PXと書く。
[定理10.2]:独立確率変数列:X1,X2,..が同一の平均E[Xj]=μ,分散Var[Xj]=σ2を持てば,∀α>0 に対して,{(X1+X2+..+Xn-nμ)/n1/2+α}n → P 0 (n→∞)である。
(証明) Yn≡(X1+X2+..+Xn-nμ)/n1/2+αと置けば,E[Yn]=0 ,Val(Yn)=nσ2/n1+2α=σ2/n2αです。
よって,平均がμ,分散がσ2の確率変数Xに対するチェビシェフの不等式:P(|X-μ|>k)≦σ2/k2を適用すればP(|Yn|>ε)≦σ2/(ε2n2α)→ 0 (n→∞)です。(証明終わり)
2.法則収束(convergence in distibution)
[定義10.3]:確率変数の列{Xn}n=1,2..,と別にある1つの独立変数XがあってXの分布関数F(x)の全ての連続点において,Xnの分布関数Fn(x)がlimn→∞Fn(x)=F(x)を満たすなら,{Xn}はXに法則収束するといい,Xn → dX,またはdlimXn=Xと書く。
[例10.4]: 確率変数Xの確率分布が,P(X=0)=P(X=1)=1/2のとき,確率変数列:{Xn}をXn≡1+1/n-Xで定義すれば,Xn → dX (n→∞)が成り立つ。
(証明):Xn≡1+1/n-Xなので,X=0 ⇔ Xn=1+1/n;X=1 ⇔ Xn=1/nです。そこでP(Xn=1+1/n)=P(X=0)=1/2,P(Xn=1/n)=P(X=1)=1/2です。
一方,Xの具体的な分布関数は,F(x)=P(X≦x)= 0 (for x< 0),1/2 (for 0≦x<1),1(for x≧1)です。
そして,x≦0 に対しては明らかにFn(x)=P(Xn≦x)=0 です。0<x≦1 に対してはn→∞で1/n≦xより,limP(Xn≦x)=1/2です。そしてx>1ならn→∞で1+1/n≦xより,limP(Xn≦x)=1です。(証明終わり)
[定理10.5]:確率変数列{Xn}が確率収束(Xn → PX)するなら法則収束(Xn → dX)する。
(証明) {Xn}が確率収束(Xn →PX)するとします。
すると,Fn(x)=P(Xn≦x)=P(Xn≦x,X≦x+ε)+P(Xn≦x,X>x+ε)≦P(X≦x+ε)+P(Xn≦x,X>x+ε)≦P(X≦x+ε)+P(|Xn-X|≦ε)です。
一方,P(X≦x-ε)=P(Xn≦x,X≦x-ε)+P(Xn>x,X≦x-ε)≦P(Xn≦x)+P(Xn>x,X≦x-ε)≦P(Xn≦x)+P(|Xn-X|≦ε)です。
以上から,P(X≦x-ε)-P(|Xn-X|≦ε)≦P(Xn≦x)≦P(X≦x+ε)+P(|Xn-X|≦ε)ですが,Xn →P X,つまりlimn→∞P(|Xn-X|≦ε)=0 ですからP(X≦x-ε)≦limn→∞P(Xn≦x)≦P(X≦x+ε)が成立します。
それ故,F(x)=P(X≦x)と置けばF(x-ε)≦limn→∞Fn(x)≦F(x+ε)です。そしてε>0 が任意なのでxがF(x)の連続点ならlimn→∞Fn(x)≦F(x),or Xn → dXが成立します。(証明終わり)
[定理10-6]:確率変数列X1,X2,..が全て独立で,それぞれ平均:E[Xj]=μj,分散:Var[Xj]=σj2(j=1,2,..)を持つとする。このときUn≡n-1/2Σj=1n{(Xj-μj)/σj}と置けば,各Xjの3次の積率が有限のtきUnはあるUに法則収束する。すなわち,Un → d Uである。
ただし,Uは標準正規分布N[0.1]を持つ確率変数である。
(証明):Yj≡(Xj-μj)/σjと置くと,E[Yj]=0,Var[Yj]=1です。
そこで中心極限定理により,分布関数の連続点ではn→∞ に対してP(Un≦x)=P({(Y1+Y2+.. +Yn)/n1/2}≦xj))→ (2π)-1/2∫-∞xexp(-u2/2)duです。
したがって,Un → d Uで,UはN[0,1]を持つ確率変数です。(証明終わり)
3.概収束(almosut sure convergence)
[定義10-7]:確率空間(Ω,F,P)上の確率変数列:{Xn}n=1,2..,およびある1つの確率変数Xに対して,P({ω∈Ω|limn→∞Xn(ω)=X(ω)})=1 が成立するとき,XnはXに概収束するといい,Xn → a.s Xと書く。
ただし,a.s.はalmosut surely(ほとんど確実に)を意味します。a.s.の代わりにa.e.=almost everywhere(ほとんど到るところで)を用いることもあります。
[定理10-8]:∀ε>0 に対してlimn→∞P(∪j≧n{ω∈Ω||Xj(ω)-X(ω)|≧ε})=0 は,Xn → a.s Xと同値である。
(証明):Ej(ε)≡{ω∈Ω||Xj(ω)-X(ω)|≧ε}と置きます。すると定理の仮定は,limn→∞P(∪j≧nEj(ε))=0 と書き直せます。
∩n=1∞∪j≧nEj(ε)⊂∪j≧nEj(ε)ですから,0≦P(∩n=1∞∪j≧nEj(ε))≦P(∪j≧nEj(ε))→ 0 (n→∞),つまりP(limsupEn(ε))=limn→∞P(∩n=1∞∪j≧nEj(ε))=0 です。
そこで,E≡∪p=1∞∩n=1∞∪j≧nEj(1/p))と置けば,0≦P(E)≦Σp=1∞P(∩n=1∞∪j≧nEj(1/p))=0 ,すなわちP(E)=0 です。
それ故,P(Ec)=1で,Ec=∩p=1∞∪n=1∞∩j≧n{Ej(1/p)}cです。
そして,ω∈Ecとすると,任意の自然数pに対して,あるnが存在してj≧nなら|Xj(ω)-X(ω)|<1/pが成り立ちます。
そこで,ω∈Ecならlimn→∞Xj(ω)=X(ω)です。故に,Ec⊂{ω∈Ωlimn→∞Xj(ω)=X(ω)}です。
したがって,1=P(Ec)≦P({ω∈Ωlimn→∞Xj(ω)=X(ω)})≦1が成り立ちます。故に,P({ω∈Ωlimn→∞Xj(ω)=X(ω)})=1,つまり,Xn → a.s Xです。
逆に,Xn → a.s X (n→∞),すなわちP({ω∈Ωlimn→∞Xj(ω)=X(ω)})=1 とします。
ω∈{ω∈Ωlimn→∞Xj(ω)=X(ω)}のとき,任意の自然数pに対しあるnが存在してj≧nなら|Xj(ω)-X(ω)|<1/pが成立します。
すなわち,任意の自然数pに対して適当なnを取ればω∈∩j=n∞{Ej(1/p)}cですが,これはω∈∩p=1∞∪n=1∞∩j=n∞{Ej(1/p)}c=Ecを意味します。
つまり,{ω∈Ωlimn→∞Xj(ω)=X(ω)}⊂Ecですから仮定により1=P({ω∈Ωlimn→∞Xj(ω)=X(ω)})≦P(Ec)≦1です。それ故,P(Ec)=1 です。故にP(E)=0 です。
E=∪p=1∞∩n=1∞∪j=n∞Ej(1/p)より,任意のpに対して∩n=1∞∪j=n∞Ej(1/p)⊂EなのでP(∪j=n∞Ej(1/p))=0 です。
つまり,limm→∞P(∩n=1m∪j=n∞Ej(1/p))=0 ,またはlimm→∞P(∪j=m∞Ej(1/p))=0 です。
ところで,任意のε>0 に対しε≧1/pなるpを採用すると,ω⊂Ej(ε)のとき|Xj(ω)-X(ω)|≧ε≧1/pによってω⊂Ej(1/p),つまりEj(ε)⊂Ej(1/p)です。
そこで,∪j=m∞Ej(ε)⊂∪j=m∞Ej(1/p)ですから,0 ≦P(∪j=m∞Ej(ε))⊂P(∪j=m∞Ej(1/p))→ 0 です。
したがって,任意のε>0 に対して,limn→∞P(∪j=m∞Ej(ε))=0 が成立します。(証明終わり)
[例10-9]:確率変数Xが(0,1)上の一様分布を持つとき,確率変数列:{Xn}をXn≡X+δn(X)で定義する。ただし,δn(x)は,0≦x≦1/nならδn(x)=1,それ以外ではδn(x)=0 なる関数である。このとき,Xn → a.s X (n→∞)が成立する。
(証明) Xj-X=δj(X)ですから,0<ε≦1を満たす任意のεに対して,|Xj-X|>εとなるのはδj(X)=1 のとき,つまり,0≦X≦1/jのときだけです。
j≧nなら1/j≦1/nですから,0≦ε≦1/nなら∪j≧n{|Xj-X|>ε}={|Xj-X|>1/n}={0≦X≦1/n}です。また,ε>1 なら∪j≧n{|Xj-X|>ε}=φです。
Xが(0,1)上の一様分布を持つことから,これはP(∪j≧n{|Xj-X|>ε})≦1/nを意味します。
したがって,limn→∞P(∪j≧n{|Xj-X|>ε})=0 です。故に,[定理10-8]からXn → a.s X (n→∞)です。(証明終わり)
[例10-10]:確率変数列:{Xn}は各々の平均がゼロで分散:Var[Xn]の和:が有限:Σn=1∞Var[Xn]<∞ であるとする。このとき,Xn → a.s 0 (n→∞)が成り立つ。
(証明):平均がμ,分散がσ2の確率変数Xに対するチェビシェフの不等式:P(|X-μ|>k)≦σ2/k2は今の場合P(|Xj|>ε)≦Var[Xj]/ε2となります。
それ故,P(∪j≧n{|Xj|>ε})≦{Σj=n∞ Var[Xj]}/ε2 → 0 (as n→∞)となります。故に,[定理10-8]からXn → a.s 0 (n→∞)です。(証明終わり)
[定理10-11]:確率変数列:{Xn}が概収束(Xn →a.s.X)するなら確率収束(Xn →PX)する。
(証明):{Xn}が概収束するとします。
ε>0 を任意に取って,Ej(ε)≡{ω∈Ω}|Xj(ω)-X(ω)|>ε}と置けばEj(ε)c={ω∈Ω}|Xj(ω)-X(ω)|≦ε}です。
仮定:Xn →a.s.XよりP(limn→∞Xn =X)=1 ですから,limn→∞P(∩j=n∞Ej(ε)c)=1,故にlimn→∞P(∪j=n∞Ej(ε))=0 です。
一方,P(|Xn-X|≧ε)=P({ω∈Ω||Xn(ω)-X(ω)|≧ε})≦P(∪j=n∞{ω∈Ω||Xj(ω)-X(ω)|≧ε})=P(∪j=n∞Ej(ε))ですから,任意のε>0 に対してlimn→∞P(|Xn-X|≧ε)=0,すなわち,Xn →PXが成立します。(証明終わり)
※(注):逆命題の「確率変数列{Xn}が確率収束(Xn →PX)するなら概収束(Xn →a.s.X)する。」は一般には成立しません。
実際,任意のε>0,δ>0 を与えると,Xn →a.s.X(概収束)の場合,あるNが存在してP(∪n=N∞{ω∈Ω|Xn(ω)-X(ω)|>ε})≦δ,つまりP(∩n=N∞{ω∈Ω|Xn(ω)-X(ω)|≦ε})>1-δが成立します。
一方,Xn →PX(確率収束)の場合,あるMが存在してn≧MならP({ω∈Ω|Xn(ω)-X(ω)|≦ε})>1-δが成立します。
上記の評価式は,概収束の場合はn=N,N+1,N+2,..について{ω∈Ω|Xn(ω)-X(ω)|≦ε}が同時に起こる確率が1に近いことを示していますが,確率収束の場合はn=M,M+1,M+2,..のそれぞれついて{ω∈Ω|Xn(ω)-X(ω)|≦ε}が起こる確率が1に近いことを示しているに過ぎません。
したがって,確率収束する場合,収束が起こる集合:{ω∈Ω|XM(ω)-X(ω)|≦ε}と集合:{ω∈Ω|XM+1(ω)-X(ω)|≦ε}の間に何の関係も要求されず,ただ,それぞれの確率が1に近いだけです。
一方,概収束する場合は{ω∈Ω|XM(ω)-X(ω)|≦ε}と{ω∈Ω|XM+1(ω)-X(ω)|≦ε}の共通集合の確率が1に近いことを意味するため,確率収束する場合より条件が厳しいです。(注終わり)※
4.二乗平均収束(convergebce in mean square)
[定義10-12]:確率変数列{Xn}n=1,2..,およびある1つの確率変数Xに対して,limn→∞E[(Xn-X)2]=0 が成立するとき,XnはXに二乗平均収束するという。
[定理10-13]: 確率変数列{Xn}が二乗平均収束するなら確率収束(Xn →PX)する。
(証明):平均がμ,分散がσ2の確率変数Xに対するチェビシェフの不等式:P(|X-μ|>k)≦σ2/k2を今の場合に適用すると, 0 ≦P(|Xj-X|>ε)≦Var[Xj]/ε2=E[(Xn-X)2]/ε2となります。
そこで,{Xn}が二乗平均収束するなら,limn→∞E[(Xn-X)2]=0 よりlimn→∞P(|Xj-X|>ε)=0 ,or Xn →PXです。(証明終わり)
今日はここまでにします。
当初の目的の重回帰係数のt検定の項目まで後一息です。(つづく)
参考文献:藤沢武久 著「新編 確率・統計」(日本理工出版会)
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