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2010年3月20日 (土)

最近考えていること(場の理論等覚え書き)

 ここ,数年,過去の知見の勉強ばかりではなく,所詮自己満足なのでテーマが大きくてなかなか手が届かないものばかりですが,自分なりに少しは考えていました。

ずいぶん前,「水の波」のシリーズを書いて非線形なK-dV方程式(Korteweg-deVries方程式):∂u/∂t+u(∂u/∂x)+μ(∂3u/∂x3)=0 を求めました。

 

これの解でu(x,t)=u1+U・sech2[{U/(12μ)}1/2{x-(u2+U/3)t}],U=u3-u1で記述される定常波形がsech2の"孤立波=ソリトン(soliton)"に着目したのも以下のような考えのためでした。

ブログはバラバラなようですが,一応,私なりの方向性があります。

 最も簡単なスピン(spin)がゼロで質量がmの自由粒子のスカラー場:φ(x)を考えると,これは線形波動方程式(クライン・ゴルドン方程式(Klein-Gordon equation)):(∂μμ+m2)φ(x)=(□+m2)φ(x)=0 を満たします。

運動量表示では,pμi∂μを代入して,(pμμ-m2)φ(p)=(p2-m2)φ(p)=0 と書けます。つまり相対論での自由粒子に対するエネルギーの恒等式p2=E22=m2と整合性を持っています。

 これは自由粒子のラグランジアン密度が0=(1/2)(∂μφ∂μφ-m2φ2)で与えられる全く普通の場の方程式です。

しかし,くりこみ手法のために非線形な自己相互作用項:(1/4)λφ40に付加したラグランジアン密度:=(1/2)(∂μφ∂μφ-m2φ2)+(1/4)λφ4/4もしばしば考察されています。

 

これに基づく運動方程式は(∂μμ+m2)φ(x)=(□+m2)φ(x)=λφ(x)3となります。上記の水の波の-dV方程式のように非線形方程式です。

 

(非線形項としては,今の段階でφの多項式形にこだわる必要はなく,取り合えずは微小であればいいとします。)

 ここで,別にくりこみの処方の便宜上ではなく,実際に自由粒子のエネルギー運動量の恒等式が2=E22=m2とはほんの僅かだけずれていて,

 

 通常の観測では無視できる程度のプランク質量,プランク長さ,プランク時間と比較できる程度のλ~ 0 の非線形項が存在すると仮想します。

つまり,従来のように理想的に運動量の確定した自由粒子を無限に拡がった平面波と考えるのではなく,ある程度は局在化された一種ソリトンのような孤立波であると考えるわけです。

そして,通常のテクノロジーには効かない程度のほんの僅かなものですが非線形項がありますから,厳密には重ねあわせの原理も成立しないのでφ4項が効いてくるようなオーダーでは級数展開も摂動法という総和の考え方も無効になります。

しかし,φ4項を相互作用項と考えて線形摂動論のアナロジーを考えることはできます。すなわち,(□+m2)φ=λφ3の両辺に積分演算子(□+m2)-1を掛けてφ=φ0+λ(□+m2)-1φ3と表現します。ただし(□+m20=0 です。

 

または,陽に(□+m2)G0(x)=-δ4(x)を満たす"グリーン関数(Green's function )=伝播関数(propagator)":G0(x)によってφ(x)=φ0(x)-λ∫d4y[G0(x-y)φ(y)3]と表わします。

これらから,原理的にはφ1=φ0+λ(□+m2)-1φ032=φ0+λ(□+m2)-1φ13,..のように反復法を用いてλのベキ展開として解を表現することはできます。

ただし,非線形な微分方程式の場合は如何に微小な項であろうと解を支配するのは最高次数の項ですから,線形摂動論におけるようにλの最低次まで取った近似解:φ1=φ0+λ(□+m2)-1φ03で十分であるという状況はありません。

  

高次項だけを総和しても低次項より大きくなって発散するという可能性もあるでしょう。

そこで,真の自由粒子の伝播関数が定義できて通常のように,それが場の時間順序積(T-product)としてiG(x―y)=<0|T(φ(x)φ(y))|0>と表現できるとしても,

 

このG(x―y)は(□+m20(x)=0 によって,(□+m2)G0(x―y)=-δ4(x―y)を満たす通常の裸の自由伝播関数:iG0(x-y)=<0|T(φ0(x)φ0(y))|0>=i(2π)-4∫d4p[exp{-ip(x-y)}/(p-m2+iε)]とはほんの少し異なるはずです。

そして,線形場を用いた摂動級数の計算では自己エネルギー部分に相当するFeynman-dyagramの内線に自由粒子伝播関数:G0(x-y)を割り当てると,その計算値の寄与は無限大に発散して物理的に有効な値が得られないことがわかっています。

 

そこで,"くりこみ"等の計算処方箋が要求されてきたわけです。

しかし,全ての自由Green関数を,G0(x-y)の代わりにG(x―y)=G0(x-y)+F(x-y)で置き換え,G0(x-y)による無限大の発散が微小で非線形な第2項F(x-y)の累積効果による無限大で相殺されて,有限有意な計算値となる可能性が期待できます。

初期のcutoff:Λの設定や正則子(regulator)による有限正則化,または次元dをd>4とする次元正則化は,Λ→∞,またはd→4の極限では補正項は得られても値そのものは無限大に戻ってしまうようなものでした。

 

しかし,今回の方法は,むしろ光子に微小な仮想質量μを想定して無限大と相殺させμ→0 の極限でもそのまま問題なしという赤外発散の解決法(極限の順序の交換で有限化する)に似ています。

自由粒子をソリトンと考えるのはインスタントン(instanton)と同じような考えだろうとか,非線形項を考えるのは格子上の場理論を考えるのと同じだろうとか,私が知らないうちに時代に取り残されたトピックが色々あるみたいですね。 

調べてはみたのですが,別にこの程度のたわごとで今さらオリジナリティなどを主張するつもりはないです。

 

既に似たものがあって,はるかに進んでいるなら教えてもらって後を付いていきます。

ただ,ここで述べた非線形化はくりこみにおける正則化手法を意図しているのではなく,必ずしもくりこみやくりこみ群を必要としない内容を述べているつもりです。

 

↓ 参考文献は後付けです。

 

参考文献1:五十嵐洋一 他「ゲージ理論におけるドメインウォールとヒッグス相中のソリトン」(日本物理学会誌),青木真也「格子上の場の理論」(シュプリンガーフェアラーク東京),戸田盛和「非線形格子力学」(岩波書店),および「非線形波動とソリトン」(日本評論社)

 

参考文献2:江沢 洋 他「くりこみ群の方法」(岩波講座),九後汰一郎「ゲージ場の量子論Ⅰ,Ⅱ」(培風館),K.Nishijima「Fields and Particles」(W.A.Benjamin,Inc.),ランダウ「相対論的量子力学1,2」(東京図書),J.D.Bjorken,S.D.Drell「Relativistic Quantum mechanics」,and「Relativistic Quantum Field」(McGraw-Hill)

  

PS:最近書いている「遅延選択実験」の話はまた別口です。

 

2008年夏の愛知県での将棋合宿の前後の頃,あるネットでしか知らない人から,何故か私に「タイムマシン」の特許申請が受理されないという旨の相談メールがありました。

 

そりゃ,そうでしょう。

 

そんなものは,まともな特許事務所,弁理士には相手にされないだろうと思いましたが,内容をよく読んで見ると,内容は別段"トンデモ"ではなく「遅延選択実験」,あるいは「量子テレポーテーション」を少し工夫しただけのものでした。

 

光子を1個まで分離する技術があれば実現可能だと思いました。

 

これについては確か現在北大準教授?で当時三菱総研の竹内繁樹氏が開発していたと思います。

 

http://utsusemi.nims.go.jp/japanese/mailmag/2003/028b.html

 

これは本当はばらしちゃいけない話でしょうけど,以後音信不通ですし,普通の人はマッドか?トンデモか?と思うような話ですしね。。。

 

しかし,あいにく去年夏に私のPCが壊れたとき,保存していた資料もメールアドレスも失くしてしまったらしく,内容もうろ覚えで詳しく思い出そうとしてもいまいち肝心の部分がハッキリしないのです。

    

"未来情報が相関として現在の観測に影響する"とはいっても,高々ナノ秒程度の話で,それを認知するのにそれ以上の時間ロスがあれば無意味なことですがね。。。

 

参考文献:「数理科学」2005年2月号(特集:エンタングルメント理論とその展開),竹内繁樹「量子コンピュータ」(講談社ブルーバックス)

     

 

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