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2010年4月 2日 (金)

電磁波の放射(3)(多重極展開:続き)

 電磁波の放射の続きです。まだ,l=2 の項の評価が残っています。

まず2(,t)={1/(12πε0)}[(d/dr)(1/r)(d/dr){<ρe(2)(t-r/c)>/r}]={1/(12πε0)}{3r-3-2-2(d/dr)+r-1(d2/dr2)}<ρe(2)(t-r/c)>={1/(12πε0)}{3r-3+2c-1-2(d/dt)+-2-1(d2/dt2)}<ρe(2)(t-r/c)>です。

これを見ると,波動帯に寄与するO(1/r)=O(r-1)のオーダーの量はやはり2階時間微分項だけで,そのφ2φ2(,t) ~ {1/(12πε02)}(d2/dt2)}<ρe(2)(t-r/c)>で与えられます。

そして,<ρe(2)(t)>=∫ρe(',)r'22(cosθ')3'(1/2)∫ρe(',))r'2(3cos2θ'-1)d3'=(3/2)∫ρe(',t){(nr')(nr')-(1/3)r' 2}d3'=3Q(t)/2 です。

 

ただし,/rであり,Q(t)≡∫ρe(',t){(nr')(nr')-(1/3)r' 2}d3'です。

 

そこで,φ2(,t) ~ 2d(t-r/c)/(8πε02)を得ます。

一方,2(,t)={-μ0/(4π)}(d/dr){<e(1)(t-r/c)>/r}=0/(4π)} {-2-1-1(d/dt)}e(1)(t-r/c)>なので,波動帯O(1/r)に寄与する部分だけで表現すると,2(,t) ~ 0/(4πcr)}(d/dt)}<e(1)(t-r/c)>です。

 

そして,<e(1)(t)>=∫e(',t)r'cosθ'd3'=∫e(',t)(nr')d3'です。

 

これに,式:{e(',t)}×e(',t)(')-'(e(',t))を適用すると,<e(1)(t)>=∫e(',t)(nr')d3'=∫e(',t)}×3'+∫'(e(',t)n)d3'となります。

 一方,∂j'{x'k(')ej(',)}=xk'(')(div'e)+(')ek(',t)+k'(e(',))=jek(',)(')+xk'(e(',))-k'('){∂ρe(',)/∂t}です。

この両辺を体積積分すると左辺は表面積分となって消えるので,'(e(',t))d3'=-∫e(',)(')3'+∫'('){∂ρe(',)/∂t}d3'です。

 故に,∫e(',t)(')3'=(1/2)[∫e(',t)d3']×+(1/2)∫'('){∂ρe(',)/∂t}d3'を得ます。

それ故,2(,t)は磁気双極子モーメント:(t)≡(1/2)∫{×e(,t)}d3により2(,t)={μ0/(4πcr)}{d(t-r/c)×(1/2)∫ρe2d(',t-r/c)'(')3'と表わされます。 

そこで,(t)≡∫ρe(',t){'(')(1/3)r'2}d3'と定義すれば,(t)=nQ(t)で,右辺最後の積分項は∫ρe(',t-r/c)'(')3'(t-r/c)+(1/3)∫ρe(',t-r/c)r'23'の2階微分です 

 したがって,2(,t)={μ0/(4πcr)}{d(t-r/c)×(1/2)2d(t-r/c)+(1/6)∫ρe2d(',t-r/c)r'23'}なる表式が得られます。

 上に得られたl=2 の電磁ポテンシャル:φ2(,t),2(,t)の波動帯表現から磁気双極子に関わる部分を取り出せば,φ2(m)(,t)=0,2(m)(,t)={μ0/(4πc)}{d(t-r/c)×}/rです。

そこで,波動帯での磁気双極子による電場,および磁場は2(m)(,t)=-∂2(m)(,t)/∂t=-{μ0/(4πc)}{2d(t-r/c)×}/r,および2(m)(,t)=∇×2(m)(,t)~{μ0/(4πc2)}[{2d(t-r/c)×]/rです。

これを見ると,やはり2(m),2(m),は互いに垂直でこの順に右手系を作り,2(m),2(m)は共に横波であると同時に|2(m)|=c|2(m)|を満たしています。

それ故,サイクル平均のエネルギー流束は,<>={c/(2μ0)}|2(m)|2となりますから,単位時間に方向へ出て行くエネルギー密度は<={μ0/(32π222)}|2d(t-r/c)|2sin2θです。 

そこで,の寄与する全方向への散逸エネルギーはP=∫dS0/(12π22)}|2d(t-r/c)|2と評価されます。 

こうした磁気双極子の振動に基づく電磁波の放射を磁気双極子放射(magnetic dipole radiation)といいます。

 一方,電気四重極モーメント:Q,またはによる部分はφ2(,t) ~ 2d(t-r/c)/(8πε02)と,2(,t)の残りの{μ0/(4πcr)}{(1/2)2d(t-r/c)+(1/6)∫ρe2d(',t-r/c)r'23'}で与えられるはずです。

しかし,元々のφ(,t)の正確な展開は,φ(,t)=Σl=0φl(,t)={1/(4πε0)}Σl=0(2l+1)-∞dt'{1/(2π)}-∞dωexp{-iω(t-t')}(iω/c)l(1)(ωr/c)l(ωr'/c)Pl(cosθ')ρe(',t')d3'です。

前回示したように,今は被積分関数の球面ベッセル関数の因子:jl(ωr'/c)=(ω/c)l{r'l/(2l+1)!!}[1-(ω/c)2r'2/{2(2l+3)}+..]のr'~ 0 付近の展開の第1項のみを取る近似をしています。 

この近似からφ(,t)=Σl=0φl(,t)={1/(4πε0)}Σl=0{(2l+1)/(2l+1)!!}(-r)l{(1/r)d/dr}l{<ρe(l)(t-r/c)>/r};<ρe(l)(t')>≡∫ρe(',t')r'll(cosθ')3'なる表現式を得たわけです。

そして,特にφ0(,t)=/(4πε0r);q≡<ρe(l)(t-r/c)>=∫ρe(',t-r/c)d3'なる無関係な静電場を得ました。

 

しかし,もしも j0(ωr'/c)=1-(ω/c)2r'2/6+..の展開の第2項まで取れば,-(ω/c)2r'2/6 のφ0(,t)への寄与は第1項のq=<ρe(l)(t-r/c)>にして,(1/6c2)∫ρe2d(',t-r/c)r'23'を代入したものになります。

この項は,先の2(e)(,t)={μ0/(4πcr)}{(1/2)2d(t-r/c)+(1/6)∫ρe2d(',t-r/c)r'23'}の右辺の第2項と同じオーダーですから,これを問題にするなら,上記の項もl=2への寄与と共に考慮する必要があります。

これを考慮すると2(e)(,t)={1/(ε02)}[2d(t-r/c)/r+{1/(3r)}∫ρe2d(',t-r/c)r'23’]と書けます。 

一方,2(e)(,t)={μ0/(8πc)}[2d(t-r/c)/r+{/(3r)}∫ρe2d(',t-r/c)r'23’]です。

これらから得られる電場は,2(e)(,t)=-∇φ2(e)(,t)-∂2(e)(,t)/∂tですが,これへのφ2(e),2(e)の右辺第2項の寄与は{/(24πε022)}∫ρe2d(',t-r/c)r'23'です。

 

また,磁場:2(e)(,t)=∇×2(e)(,t)への2(e)の右辺第2項の寄与はゼロです。そこで,結局,ポテンシャルφ2(e),2(e)の右辺第2項はO(1/r)の波動帯には寄与しません。

したがって,波動帯ではポテンシャルφ2(e),2(e)のそれぞれ右辺第1項のみを考えればいいことになります。 

すなわち,波動帯では2(e)(,t)=-∂2(e)(,t)/∂t-∇φ2(e)(,t)0/(8πc)}{-3d(t-r/c)/r+3d(t-r/c)/}=0/(8πc)}[{3d(t-r/c)×]/rです。

  

そして,2(e)(,t)=∇×2(e)(,t)~0/(8πc)}[{3d(t-r/c)×]/rが得られます。

これらを見れば,2(e),2(e)はやはり横波であって2(e)=-c×2(e)であり,|2(e)|=c|2(e)|を得ます。

そこで,双極子放射と同様に<={c/(2μ0)}|2(e)|2={μ0/(128π232)}|3d(t-r/c)×|2です。

 

全放射エネルギーへの寄与として,P=∫dS0/(128π23)}|3d(t-r/c)×|2|dΩなる評価式を得ます。 

3d(t-r/c)がに依存する方向性を持つため,電気四重極子ではその構造を詳しく指定しないと,やPの具体的な値を得ることができません。 

こうした電気四重極子による放射を電気四重極子放射(electric quadrapole radiation)と呼びます。

 短いですが今日はこのくらいにします。

 

 次回はちょっと脱線して点電荷による電磁波の放射や制動輻射(Bremsstrahlung)の古典論と量子論?を論じる予定です。

参考文献:砂川重信 著「理論電磁気学(第2版)」(紀伊国屋書店),ジャクソン 著(西田 稔 訳)「電磁気学(上),(下)」(吉岡書店)

  

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