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2010年5月 8日 (土)

原子核のγ崩壊とメスバウアー効果(4)

 原子核のγ崩壊とメスバウアー効果の続きです。GWというわけではないですが,ちょっと間が空き過ぎたので途中経過をアップします。 

前回の最後から必要な部分を再掲します。

(※再掲開始)

(θ,φ)のまわりの微小立体角dΩの中に単位時間に放射される電磁エネルギーdUはdU=|<()>|r2dΩ={c/(2μ0)}|()|22dΩ={c/(2μ02)}|Σl=1Σm=-ll(-i)l+1[aElmlm(Ω)+c-1Nlm{r×lm(Ω)}]|2dΩで与えられます。

もしも,γ線放射が純粋な電気(l,m)放射ならdUElm={c/(2μ02)}|aElm|2|lm(Ω)|2dΩです。一方,純粋な磁気(l,m)放射ならdUMlm={1/(2μ0ck2)}|aMlm|2|lm(Ω)|2dΩとなります。

 

そこで,同じ(l,m)極放射なら電気型,磁気型を問わず,同じ強度角度分布:|lm(Ω)|2を有することがわかります。

 lm(Ω)≡|lm(Ω)|2と置けばdUElm/dΩ={c/(2μ0)}Zlm(Ω)|aElm|2/k2,dUNlm/dΩ={1/(2cμ0)}Zlm(Ω)|aMm|2/k2です。

 全てのE波,M波の(l,m)波の総和はdU/dΩ={c/(2μ02)}|Σl=1Σm=-ll(-i)l+1[aElmlm(Ω)+c-1Nlm{r×lm(Ω)}]|2よりU=∫dU={c/(2μ0)}Σl=1Σm=-ll(|aElm|2+|aNlm|2/c2)/k2となります。

これに先に求めたaElmiμ0ckl+2/(2l+1)!!}{(l+1)/l}1/2lm;電気多極放射:Qlm∫rllm(Ω)*ρe()d,aNlm={iμ0ckl+2/(2l+1)!!}{(l+1)/l}1/2lm;磁気多極放射:Mlm=-∫rllm(Ω)*()dを組み合わせます。(再掲終了※)

さて,量子論では原子核のエネルギー準位の高い始状態|i>からより低い終状態|f>へのγ崩壊を考えると,対応原理から古典論でのlm,Mlmはこれらを表現する量子論の演算子lm,lmの遷移行列要素<f|lm|i>,<f|lm|i>に相当すると考えられます。

そこで,量子論に移行するには古典論における電荷密度ρe(),電流密度e(),磁気モーメント()を,それぞれρe()=ZeΨf*(i(),e()={ehc/(2M)}Σa=1Zf*()aΨi()+{aΨf()}*Ψi()],()={ehc/(2M)}Ψf*(){Σa=1Aμaσai()の右辺に置き換えればいいだけです。

ただし,hc≡h/(2π)(hはPlanck定数)です。Ψi()=<|i>は始状態の波動関数,Ψf()=<|f>は終状態の波動関数です。また,a=-ihcaですが,これは核子aの運動量です。

また,e>0 は陽子の電荷,Mは核子の質量です。さらにσaは核子aに対するPauli行列,μaは磁気回転比(gyromagnetic ratio)でaが陽子pならμp~ 2.7928,中性子nならμn~ -1.9132です。

 

つまり,量子力学における"物理量=演算子(operator)"に対して一般に<f||i>=∫d33'<f|><|O|'><'|i>=∫d33f*()<||'>Ψi(')です。

 

が位置表示で<||'>=(3(')と対角化可能なら<f||i>=∫d3Ψf*()(i()と書けます。

 

ただし位置表示で陽子の電荷密度はρe=Zeδ3('),電流密度はe={ehc/(2M)}Σa=1Z(a'a3('),磁気モーメントは={ehc/(2Mc)}{Σa=1Aμaσa3(')です。

 そして,量子論の場合には放射エネルギーdU,またはUに寄与するのはの平均値<>ではなくそのものなので,古典論で与えられる強度式にさらに因子2を掛けることが必要です。

そして,電気(l,m)極モーメントはQlm∫rllm(Ω)*ρe()d3から<f|lm|i>=eΣa=1Z∫rallma)*Ψf*(i()d3=eΣa=1Z<f|allma)*|i>です。

 

磁気(l,m)極モーメントはMlm=-∫rllm(Ω)*()d3から<f|lm|i>=-{ehc/(2Mc)}Σa=1Aμa∫rallma)*{Ψf*()σaΨi()}={ehc/(2Mc)}Σk=1A<f|{allma)*μaσa}|i>です。

 i→fのγ崩壊の確率(decay rate):wは,単位時間の全放射エネルギーUを放射光子のエネルギーcω=hcckで割れば得られます。

つまり,全放射エネルギーUが光子何個分のエネルギーに相当するかを見ることで,単位時間に何個の光子が放射されるかがわかります。

特に,電気(l,m)極放射ならwElm=UElm/(hcck)=[(μ02/hc){(l+1)/l}k2l+1/{(2l+1)!!}2]<f|lm|i>2=(2π/hc){1/(4πε0)}{2(l+1)/l}k2l+1/{(2l+1)!!}2]<f|lm|i>2です。

 

磁気(l,m)極放射ならwMlm=UMlm/(hcck)=(μ0/hc){(l+1)/l}(k2l+1/{(2l+1)!!}2)<f|lm|i>2=(2π/hc){μ0/(4π)}{2(l+1)/l}(k2l+1/{(2l+1)!!}2)<f|lm|i>2です。

ところで,前に「原子核のγ崩壊とメスバウアー効果(1)」では同じγ崩壊の確率について次のような内容の記事を書きました。

 原子核:ZAN の励起状態|i>≡|Iiπii>がγ線を放出して終状態|f>≡|Ifπff>へ転移するとします。ただしMは"核スピンのz軸成分=磁気量子数"です。

一定のスピンの偏極(polarization):m=(Mi-Mf)を持つ"γ線の量子=光子"が単位時間に波数ベクトルの周りの微小立体角dΩに放出される確率をu(Mi,Mf)dΩとすると,摂動論によって良い近似でu(Mi,Mf)dΩ=(2π/c)|<f|Hγ'|i>|2(dn/dEγ)dΩとなります。

 

(これはFermiの黄金律です。)

ここにHγ'は,"電磁場(γ線)と核の相互作用=電磁相互作用"のハミルトニアン(Hamiltonian)で,Hγ'=∫jeμ(,t)μ(,t)3=∫ρe(,t)φ(,t)3-∫e(,t)(,t)3qφ(0)-PE(0)μ(0)-(1/6)Σijijij..です。

 

そこで,遷移行列要素<f|Hγ'|i>において電気双極子放射に対応するものは,-PE(0)の遷移行列要素:-<f|PE|i>です。

 

ただし,q=q(t)(全電荷),(t)(全偏極=電気双極子),μ=μ(t)(磁気双極子),Qij=Qij(t)(電気四重極子)です。

 

これらは,q(t)≡∫ρe(,t)3,(t)≡∫ρe(,t)3,μ(t)≡(1/2)∫×e(,t)3,Qij(t)≡∫ρe(,t)(3xij-δij2)3で定義されています。

 

一方,2010年3/30の記事「電磁波の放射(2)(多重極放射)」では,電気双極子による波動帯での放射のポインテイングベクトル(Poynting vector)が={μ044/(16π22)}|×|で与えられるのを見ました。

これによれば,電気双極子による放射エネルギーの角分布はdU/dΩ=||r2={μ034/(16π2)}|×|2です。故にpの方向を極軸に取れば|×|2=p2sin2θよりU=μ0342/(6π)です。

一方,上で初めて与えた電気(l,m)極放射のエネルギーの表式は<f|lm|i>をQlmなる古典表記に戻せばUElm={c/(μ02)}|aElm|2,aElm={iμ0ckl+2/(2l+1)!!}{(l+1)/l}1/2lmです。

 

特に,l=1,m=0 の電気双極子の場合,これはUE10=μ034(2/9)|Q10|2となります。

ダブルスタンダードの恐れのある2つの出発点からの結論的式が矛盾しないためには0342/(6π)=μ034(2/9)|Q10|2となることが必要です。

 

今のγ崩壊では,崩壊確率はどこを極軸(θ=0)に取るかに依らない対称性を持つはずなので,全放射エネルギーが一致すれば十分です。

10=(3/4π)1/2∫rρe()cosθd3より,これはp2=[∫rρe()cosθd3]2を意味します。

そして過去記事「電磁波の放射(2)(多重極放射)」では,(t)≡∫ρe(,t)3と定義されていましたが,ここでのはρe(,t)=ρe()exp(-iωt)より≡∫ρe()3で与えられます。

 

よって,p=∫rρe()cosθd3ですから全く問題無しです。しかし別にこれは前に書いた記事と今回の記事が矛盾しないことの検算をしたに過ぎず,実は当たり前のことでした。

 

でも,まあボチボチですが前進しています。いずれにしろ今日はここまでにします。

 

参考文献:八木浩輔 著「原子核と放射」(朝倉書店),八木浩輔 著「原子核物理学」(朝倉書店),砂川重信著「理論電磁気学(第2版)」(紀伊国屋書店),ジャクソン 著(西田 稔 訳)「電磁気学

 

PS:5/9(日)早朝です。何だか今回の風邪は比較的軽かったようで,ほぼ完治しました。 

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