散乱の伝播関数の理論(4)(Schiff-1)
散乱の伝播関数の理論の続きです。
今回はL.I.schiff(シッフ)著,(井上 健 訳)「量子力学(下)」
衝突の理論における近似法の散乱行列の項より引用紹介します。
換算質量μを持つ2個の粒子の相対運動を記述するHamiltonian
をHとすると,この2体問題の完全なSchrödinger方程式
=波動方程式(運動方程式)"は,次のようになります。
ihc∂ψ(r,t)/∂t=Hψ(r,t)=[H0+V(r,t)]ψ(r,t)
です。
ただし,H0は自由粒子のHamiltonianであり,
H0≡{-hc2/(2μ)}∇2です。そして,hc≡h/(2π)で
hはPlanck定数です。
波動方程式は,ψについて線型な微分方程式なので,その解は
重ね合わせで表わすことができます。
そこで,異なる時刻の波動関数ψ同士の関係も線型になっている
はずです。
これは次のようにして示されます。
定常状態のSchrödinger方程式:Hu(r)=Eu(r)の解:
エネルギーEの固有関数をu(r)=uE(r)とします。
そして,固有関数族:{uE(r)}は直交規格化されているとします。
つまり,∫uE*(r)uE'(r)ψ(r,t)d3r=δEE'です。
このとき,時間を含む完全な波動方程式:ihc∂ψ(r,t)/∂t
=Hψ(r,t)の任意の解:ψ(r,t)は,
ψ(r,t)=ΣEAE(t)uE(r);AE(t)=∫uE*(r)ψ(r,t)d3r
とuE(r)で展開できます。
そして,AE(t)=AE(t0)exp{-iE(t-t0)/hc} です。
ψ(r,t)=ΣEAE(t)uE(r)に
AE(t)=∫uE*(r0)exp{-iE(t-t0)/hc}ψ(r0,t0)d3r0
を代入すると,
ψ(r,t)
=∫[ΣEuE*(r0)uE(r)exp{-iE(t-t0)/hc}]ψ(r0,t0)d3r0
を得ます。
したがって,波動関数ψは,
ψ(r,t)=i∫G(r,t;r0,t0)ψ(r0,t0)d3r0
なる形の斉次積分方程式を満たします。
(※ここでは,便宜上,離散表記していますが,デルタ関数を用いた
連続表記定式化をも包摂しています。)
この積分方程式が波動方程式:ihc∂ψ(r,t)/∂t=Hψ(r,t)
の積分である場合,
上記の関数:G(r,t;r0,t0)を,HamiltonianHに対応する
Green関数といいます。
ψ(r,t)=i∫G(r,t;r0,t0)ψ(r0,t0)d3r0なる表現は,
ψの時間について前向き(t>t0)の伝播と後向き(t<t0)の
伝播を区別していません。
しかし,これらの伝播をはっきり区別しておくと都合のいい場合が
多いので,前向き伝播に対するGをG+と書いて遅延Green関数
(retarded Green's function)と呼び次式で定義します。
すなわち,G(+)(r,t;r0,t0)=G(r,t;r0,t0)(t>t0),
G(+)(r,t;r0,t0)=0 (t<t0)と定義します。
そして,(※非相対論的量子論では)これを伝播関数(propagator:
プロパゲータ)と呼びます。
これはHeavisideの階段関数θ(τ)を用いると,
G(+)(r,t;r0,t0)≡θ(t-t0)G(r,t;r0,t0)
と表現されます。
そして,ψ(r,t)=i∫G(r,t;r0,t0)ψ(r0,t0)d3r0は
遅延Green関数によって,
θ(t-t0)ψ(r,t)=i∫G(+)(r,t;r0,t0)ψ(r0,t0)d3r0
と表現できます。
同様に,時間について後向き伝播の先進Green関数
(advanced Green's function)をG(-)と書いて定義します。
すなわち,G(-)(r,t;r0,t0)=-G(r,t;r0,t0)(t<t0),
G(-)(r,t;r0,t0)=0 (t>t0)です。
これから,G(-)(r,t;r0,t0)≡-θ(t0-t)G(r,t;r0,t0),
または,
θ(t0-t)ψ(r,t)=-i∫G(-)(r,t;r0,t0)ψ(r0,t0)d3r0
なる表現を得ます。
そこで,t>t1>t0のときには,
G(+)(r,t;r0,t0)
=i∫G(+)(r,t;r1,t1)G(+)(r1,t1;r0,t0)d3r1
が成立します。
同様にt<t1<t0のときには,
G(-)(r,t;r0,t0)
=-i∫G(-)(r,t;r1,t1)G(-)(r1,t1;r0,t0)d3r1です。
一方,t0→tの極限で成立する式:
ψ(r,t)=±i∫G(±)(r,t;r0,t)ψ(r0,t)d3r0から,
超関数的積分核(kernel)の意味で,
±iG(±)(r,t;r0,t)=δ3(r-r0)です。(複号同順)
故に,t>t1では,
δ3(r-r0)=i∫G(+)(r,t;r1,t1)G(-)(r1,t1;r0,t)d3r1,
t<t1では,
δ3(r-r0)=i∫G(-)(r,t;r1,t1)G(+)(r1,t1;r0,t)d3r1
が成立します。
特に,H≡H0={-hc2/(2μ)}∇2の自由粒子の場合のGreen関数を,
G=G0と書くと,これは容易に陽な形に表現できて,
G0(r,t;r0,t0)
=i[μ/{2πihc(t-t0)}]3/2exp[iμ|r-r0|2/{2hc(t-t0)}]
と表わせます。
※[注]:(証明):先の表現:
ψ(r,t)=∫[ΣEuE*(r0)uE(r)exp{-iE(t-t0)/hc}]
ψ(r0,t0)d3r0が有効な場合には,明らかに,
G(r,t;r0,t)
=(-i)ΣEuE*(r0)uE(r)exp{-iE(t-t0)/hc} です。
しかし,H≡H0={-hc2/(2μ)}∇2の自由粒子のときには,
uE(r)=(2πhc)-3/2exp(ipr/hc)で,E=p2/(2μ)は縮退して
おりエネルギー固有値が連続の場合ですから修正が必要です。
そこで,固有値がpの運動量固有関数up(r)を,
up(r)≡(2πhc)-3/2exp(ipr/hc)で定義し,ψ(r,t)を
ψ(r,t)=∫d3pAp(t)up(r)のようにup(r)で積分
展開します。
運動量の連続固有値pに対する直交規格化条件:
∫up*(r)up'(r)d3r=δ3(p-p')によれば,係数は
Ap(t)=∫up*(r)ψ(r,t)d3rで与えられます。
up(r)は固有値がE=p2/( 2μ)の"エネルギー固有関数
=定常状態の波動関数"でもありますから,
Ap(t)=Ap(t0)exp{-ip2(t-t0)/( 2μhc)} です。
よって,ψ(r,t)
=∫[∫d3pup*(r0)up(r)exp{-ip2(t-t0)/( 2μhc)}]
ψ(r0,t0)d3r0 を得ます。
したがって,自由粒子の場合のGreen関数は,G0(r,t;r0,t0)
=(-i)∫d3pup*(r0)up(r)exp{-ip2(t-t0)/( 2μhc)}
=(-i)(2πhc)-3∫d3pexp{ip(r-r0)/hc}
×exp{-ip2(t-t0)/( 2μhc)} と表現されます。
∫d3pexp{ip(r-r0)/hc}exp{-ip2(t-t0)/( 2μhc)}
=2π∫-11d(cosθ)∫0∞dpp2exp{ip|r-r0|cosθ/hc}
exp{-ip2(t-t0)/( 2μhc)}
=2πhc|r-r0|-1∫0∞dpp[exp{-ip2(t-t0)/( 2μhc)
+ip|r-r0|/hc}-exp{-ip2(t-t0)/( 2μhc)
-ip|r-r0|/hc}] です。
さらに,p2(t-t0)/( 2μhc)±p|r-r0|/hc
=(t-t0)/( 2μhc){p±μ|r-r0|/(t-t0)}2
-μ|r-r0|2/{2hc(t-t0)} なので,
∫0∞dpp[exp{-ip2(t-t0)/( 2μhc)+ip|r-r0|/hc}
=exp[iμ|r-r0|2/{2hc(t-t0)}]∫0∞dpp
exp[-i(t-t0)/( 2μhc){p-μ|r-r0|/(t-t0)}2]
,
=∫0∞dpp[exp{-ip2(t-t0)/( 2μhc)-ip|r-r0|/hc}
=exp[iμ|r-r0|2/{2hc(t-t0)}]
∫0∞exp[-i(t-t0)/( 2μhc){p+μ|r-r0|/(t-t0)}2]
pdp となります。
結局,G0(r,t;r0,t0)=(-i)(2πhc)-2|r-r0|-1
∫0∞dpp[exp{-ip2(t-t0)/(2μhc)+ip|r-r0|/hc}
-exp{-ip2(t-t0)/( 2μhc)-ip|r-r0|/hc}]
=(-i)(2πhc)-2|r-r0|-1exp[iμ|r-r0|2/{2hc(t-t0)}]
{2μ|r-r0|/(t-t0)}∫0∞duexp{-iu2(t-t0)/( 2μhc)}
です。
故に,
G0(r,t;r0,t0)
=(-iμ)(2πhc)-2(t-t0)-1exp[iμ|r-r0|2/{2hc(t-t0)}]
[2πμhc/{i(t-t0)}]1/2
=i[μ/{2πihc(t-t0)}]3/2exp[iμ|r-r0|2/{2hc(t-t0)}]
を得ます。(証明終わり)(注終わり)※
自由粒子のGreen関数G0が得られたので,その遅延Green関数,および
先進Green関数G0±は,それぞれ,
G0(+)(r,t;r0,t0)=θ(t-t0)G0(r,t;r0,t0),
および,G0(-)(r,t;r0,t0)=-θ(t0-t)G0(r,t;r0,t0)
で定義できます。
特に,上記のG0の陽な形から,
G0(+)(r,t;r0,t0)=G0(-)*(r0,t0;r,t)
なることがわかります。
後述するように,この関係は,H=H0+VのポテンシャルV≠0 が実
の量であるような任意のHに対するGに対しても成立します。
すなわち,G(+)(r,t;r0,t0)=G(-)*(r0,t0;r,t) です。
θ(t-t0)ψ(r,t)=i∫G(+)(r,t;r0,t0)ψ(r0,t0)d3r0
の反復形式を求めるため,t0とtの間の幾つかのきわめて短い時間
間隔を除けばVの作用は切られているとします。
t>tn>..>t1>t0と分割して,Vが作用している時間間隔を,
t1からt1+Δt1まで,t2からt2+Δt2まで,..tnから
tn+Δtn までとします。
ti+Δtiからti+1ま(i=1,2,..n)での時間間隔ではVがスイッチ
オフされていて,G(+)でなく自由粒子伝播関数G0(+)が伝播関数の役目
をなすとしていいため,
ψ(ri+1,ti+1)
=i∫G0(+)(ri+1,ti+1,;ri,ti+Δti)
×ψ(ri,ti+Δti)d3ri が成立します。
一方,tiから ti+Δtiまでの時間間隔では,
ihc∂ψ(r,t)/∂t=Hψ(r,t)
=[H0+V(r,t)]ψ(r,t) です。
Δtiは微小なので,時刻tiのψ(r,ti)から時刻ti+Δti
までのψの変化は,
Δψ≡ψ(r,ti+Δti)-ψ(r,ti)
=-(i/hc)[H0+V(r,ti)]ψ(r,ti)Δti
と表現されます。
このうち,-(i/hc)H0ψ(r,ti)Δtiの部分は,
i∫G0(+)(r,ti+Δti ;r0,ti)ψ(r0,ti)d3r0
-ψ(r,ti) で与えられます。
それ故,ψ(r,ti+Δti)
=i∫G0(+)(r,ti+Δti ;r0,ti)ψ(r0,ti)d3r0
-(i/hc)V(r,ti)Δtiψ(r,ti) と書けます。
ψ(r,ti+Δti)のこの表式を,
ψ(ri+1,ti+1)
=i∫G0(+)(ri+1,ti+1,;ri,ti+Δti)
ψ(ri,ti+Δti)d3ri の右辺のψ(ri,ti+Δti)
に代入します。
すると,
ψ(ri+1,ti+1)
=i∫G0(+)(ri+1,ti+1,;r0,ti+Δti)
[i∫G0(+)(ri,ti+Δti ;r0,ti)ψ(r0,ti)d3r0
-(i/hc)V(ri,ti)]Δti]ψ(ri,ti)]d3ri
=i∫G0(+)(ri+1,ti+1,;ri,ti){1-(i/hc)V(ri,ti)Δti}
ψ(ri,ti)d3ri となります。
故に,これらを全て合成したt0からtへの伝播は,
θ(t-t0)ψ(r,t)
=∫..∫iG0(+)(r,t,;rn,tn){1-(i/hc)V(rn,tn)Δtn}
iG0(+)(rn,tn,;rn-1,tn-1).. iG0(+)(r2,t2,;r1,t1)
{1-(i/hc)V(r1,t1)Δt1}ψ(ri,ti)
iG0(+)(r1,t1,;r0,t0)ψ(r0,t0)d3rn.. d3r1d3r0
で与えられます。
Δtiの2次以上の項を捨てて展開すれば,
θ(t-t0)ψ(r,t)
=i∫G0+(r,t ;r0,t0)ψ(r0,t0)d3r0
+(i/hc)Σj∫∫G0(+)(r,t,;rj,tj)V(rj,tj)Δtj
G0(+)(rj,tj;r0,t0)ψ(r0,t0)d3rjd3r0
+(i/hc)2Σj,k∫∫∫G0(+)(r,t,;rj,tj)V(rj,tj)Δtj
G0(+)(rj,tj;rk,tk)V(rk,tk)ΔtkG0(+)(rk,tk;r0,t0)
ψ(r0,t0)d3rjd3rkd3r0+..
と書けます。 ただしtj>tk etc.です。
これは,Vが効く時間間隔Δtjの回数を増やして長さをゼロに近づけた極限では遂にVの効果が連続的になるとすれば,総和Σを時間積分に変えた表現となります。
θ(t-t0)ψ(r,t)
=i∫G0(+)(r,t ;r0,t0)ψ(r0,t0)d3r0
+(i/hc)∫dtj∫∫G0(+)(r,t,;rj,tj)V(rj,tj)
G0(+)(rj,tj;r0,t0)ψ(r0,t0)d3rjd3r0
+(i/hc)2∫dtj∫dtk∫G0(+)(r,t,;rj,tj)V(rj,tj)
G0(+)(rj,tj;rk,tk)V(rk,tk)G0(+)(rk,tk;r0,t0)
ψ(r0,t0)d3rjd3rkd3r0+..
です。
これらの時間についての積分区間は,t0からtまでの全ての時間を
取ることができます。
なぜなら,tj<tk ならG0(+)(rj,tj;rk,tk)=0
だからです。
そして,この式の右辺は左辺の摂動級数と解釈できます。
θ(t-t0)ψ(r,t)
=i∫G0(+)(r,t ;r0,t0)ψ(r0,t0)d3r0
+(i/hc)∫dtj∫∫G0(+)(r,t,;rj,tj)V(rj,tj)
[G0(+)(rj,tj;r0,t0)ψ(r0,t0)d3r0+(i/hc)∫dtk
G0(+)(rj,tj;rk,tk)V(rk,tk)G0(+)(rk,tk;r0,t0)
ψ(r0,t0)d3rkd3r0+..]d3rj
と形式的に書き直してみます。
もしも,[ ]内が収束するなら,これは明らかに
θ(tj-t0)ψ(rj,tj) に等しいです。
そこで,θ(t-t0)ψ(r,t)
=i∫G0(+)(r,t ;r0,t0)ψ(r0,t0)d3r0+(i/hc)
∫t0tdtj∫∫G0(+)(r,t,;rj,tj)V(rj,tj)
ψ(rj,tj)d3rj なる積分方程式を得ます。
これを,出発点の斉次積分方程式:
θ(t-t0)ψ(r,t)
=i∫G(+)(r,t;r0,t0)ψ(r0,tt 0)d3r0
と比較すると,
G(+)(r,t;r0,t0)
=G0(+)(r,t ;r0,t0)+(1/hc)∫t0tdtj
∫d3rjG0(+)(r,t,;rj,tj)V(rj,tj)
G(+)(rj,tj;r0,t0) が成立します。
以上の遅延Green関数G0(+),G(+)に対する結果は,そのまま
先進Green関数G0(-),G(-)に対して書き直すことができます。
先進Green関数ではt<t0なので,t<tn<..<t1<t0として
Vが作用している時間間隔をtn-Δtnからtnまで,tn-1-Δtn-1
からtn-1まで,..,t1-Δt1からt1までとします。
結局,θ(t-t0) →θ(t0-t),G0(+),G(+) →G0(-),
G(-),(i/hc)→ (-i/hc)なる機械的な置き換えさえすればいい
ことがわかります。
そこで,特に,G(-)(r,t;r0,t0)
=G0(-)(r,t ;r0,t0)+(-1/hc)∫t0tdtj
∫G0(-)(r,t,;rj,tj)V(rj,tj)
G(-)(rj,tj;r0,t0)d3rj です。
先に述べたように,G0(+)(r,t;r0,t0)=G0(-)*(r0,t0;r,t)
からVが実の量ならG(+)(r,t;r0,t0)=G(-)*(r0,t0;r,t)
が成立することが示されました。
ところで,dθ(τ)/dτ=δ(τ)ですから,
θ(t-t0)ψ(r,t)
=i∫G(+)(r,t;r0,t0)ψ(r0,t 0)d3r0
の両辺に,左から(i∂/∂t-H/hc)を作用させると,
iδ(t-t0)ψ(r,t)
=i∫(i∂/∂t-H/hc)G(+)(r,t;r0,t0)
ψ(r0,t 0)d3r0 となります。
これから,直ちに,(i∂/∂t-H/hc)G(+)(r,t;r0,t0)
=δ3(r-r0)δ(t-t0) を得ます。
これが,G(+)(r,t;r0,t0)の満たすべき微分方程式です。
同様に,θ(t0-t)ψ(r,t)
=-i∫G(-)(r,t;r0,t0)ψ(r0,t 0)d3r0から,
(i∂/∂t-H/hc)G(-)(r,t;r0,t0)
=δ3(r-r0)δ(t-t0) が得られます。
一方,G(±)(r,t;r0,t0)の満たす摂動級数は,
G(±)(r,t;r0,t0)
=G0(±)(r,t ;r0,t0)+hc-1∫dtj∫G0(±)(r,t,;rj,tj)
V(rj,tj)G0(±)(rj,tj;r0,t0)d3rj+hc-2∫dtj∫dtk
G0(±)(r,t,;rj,tj)V(rj,tj)G0(±)(rj,tj;rk,tk)
V(rk,tk)G0(±)(rk,tk;r0,t0)..
です。
また,G(±)(r,t;r0,t0)の満たす積分方程式は,
G(±)(r,t;r0,t0)
=G0(±)(r,t ;r0,t0)
+hc-1∫t0tdtj∫d3rjG0(±)(r,t,;rj,tj)V(rj,tj)
G(±)(rj,tj;r0,t0) です。
そこで,これらを記号的に,
G(±)=G0(±)+hc-1G0(±)VG0(±)+hc-2G0(±)VG0(±)VG0(±)
+..,および,G(±)=G0(±)+hc-1G0(±)VG(±)
と表記することにします。
この表記では,積分方程式:G(±)=G0(±)+hc-1G0(±)VG(±)
は,(1-hc-1G0(±)V)G(±)=G0(±)と書けます。
そこで,(1-hc-1G0(±)V)が逆演算子(1-hc-1G0(±)V)-1
を持てば,G(±)=(1-hc-1G0(±)V)-1G0(±)です。
これから,反復法によって
G(±)=(1+hc-1G0(±)V+hc-2G0(±)VG0(±)V..)G0(±)
なる級数展開が得られます。
これは正に上記Green関数の積分摂動展開を再現しています。
一方,G(±)の満たす微分方程式もδ関数を積分演算子として1
に置き換えると,(i∂/∂t-H/hc)G(±)=1なる記号的表現
で書けます。
これは自由粒子では,(i∂/∂t-H0/hc)G0(±)=1 です。
G(±)=G0(±)+hc-1G0(±)VG(±)の両辺の左から
(i∂/∂t-H0/hc)を作用させると,
(i∂/∂t-H0/hc)G(±)
=(i∂/∂t-H0/hc)(G0(±)+hc-1G0(±)VG(±))
=1+hc-1VG(±)ですが,
これは単に,(i∂/∂t-H/hc)G(±)=1
を示すに過ぎません。
(i∂/∂t-H/hc)G(±)=1から,
G(±)=1/(i∂/∂t-H/hc)-1,or G(±)=1/(i∂/∂t-H/hc)
なる記号的表現も可能です。
前の記事では,散乱行列Sから出発してLippman-Schwinger方程式を得ました。
そして,積分方程式から出発して摂動の近似級数を得ましたが,これとは逆に,今回のSchiffの定式化では先に摂動級数を得て,それから積分方程式を構成しています。
今日はここまでにします。(つづく)
参考文献:L.I.schiff(シッフ)著,(井上 健 訳)「量子力学(下)」
PS1:日本は何で検察が政治やってんだ?
支持率も選挙結果も検察のメンツ次第で10ポイントくらい動く?
PS2:加藤一二三さんは"秀才"ではなく,一般常識を超越した「神武以来の天才」らしいので"天才の常識"以外の常識は通じないでしょう。
彼は確かクリスチャンですが,仏教と違って西洋の宗教では犬猫よりも人間様の方が大切なはずなんですがネ。
彼はそれをも超越した博愛主義者のようです。まあ,多数決が通用しない人にとっては水掛け論ですね。
かの人は昔(今も?),将棋対局中に,恐らく上座に座っている相手の後ろに回って頭越しに(上から目線で?)反対側から対局中の盤面を見てしばし考えるというトンデモ行動を取り,相手によっては「失礼な奴だな。」と思われたとしても気付かないほどの"大人物"ですね。
隣人よりも犬猫をエコひいきするのは,彼にとって犬猫の方が"山上の垂訓"に云われるより"貧しきもの"だからでしょうか?
(※"善人なおもて往生をとぐ,いわんや悪人おや。。
"ありゃ,これはイエス様じゃなくて,親鸞だったかぁ。
かつて,2006年7/1の「ユダの福音書(つづき)」で書いたカトリック異端のグノーシス派の主張とかね。
↑「親鸞の"悪人"=イエスの"(心の)貧しきもの"」?という私の"貧しい発想"です。(^^;)
そういえば,昔パソコン通信:nifty^serve時代の,FLORD(キリスト教フォーラム)か,FBIBLE(聖書フォーラム)で,「心の貧しきもの」というのは,欲(物質欲)のない人という意味じゃないですか?などと質問して,優しく否定されたようなこともあったような。。。。
まあ,この「心の貧しきもの」の解釈とか,今でもブログで得意げに書いている内容にも多々あるようですが,
恐らく誰かに聞いたか,本や新聞テレビで見聞きしたことを,さも自分が発想したかのように勘違いして大声で主張したりしていたものの1つであるかも知れませんね。
もっとも,意に染まぬなら賛同さえしていないし,パクリを自分の考えと勘違いするほどの段階では,数学や物理の先達の理論のパクリと同じく,かなり自分の血肉と化しているはずですが。。。
新約聖書の"隣人を愛せ,汝の敵を愛せ"とか,あるいは"我は諍いの種を撒くためにこの世にやってきた。"(意訳:"事なかれ主義の平安を乱すために降臨した。"とか,の方がふさわしいかもね。)
(聖書については,偶々覚えていることだけを書いているので,本当は間違っているかも知れません。
でも,新約聖書では,イエスはその時々に応じて正反対のことを述べているので神学者じゃないし解釈はむずかしいので主観です。※)
そういえば,昔何回か行った大阪生野区の次兄の家では,"兄嫁=従姉"0の"えっちゃん"が近所のノラ猫に餌をやって敷地内にたくさんの猫が集まっていましたが,大丈夫でしょうか?
集合住宅ではないけれど,あのひとも決して常識人ではないので少し心配です。(2006年3/29の記事「淡い初恋)」)
| 固定リンク
「115. 素粒子論」カテゴリの記事
- くりこみ理論(第2部)(2)(2020.12.30)
- 物理学の哲学(15)(終)(アノマリー)(2020.11.03)
- 物理学の哲学(14)(アノマリー)(2020.10.28)
- 物理学の哲学(13)(アノマリー)(2020.10.10)
- 物理学の哲学(12)(アノマリー)(2020.10.08)
「111. 量子論」カテゴリの記事
- クライン・ゴルドン方程式(8)(2016.09.01)
- クライン・ゴルドン方程式(7)(2016.08.23)
- Dirac方程式の非相対論極限近似(2)(2016.08.14)
- Dirac方程式の非相対論極限近似(1)(2016.08.10)
- クライン・ゴルドン方程式(6)(2016.07.27)
コメント