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2010年5月24日 (月)

散乱の伝播関数の理論(7)(Bjorken-Drell-2)

 散乱の伝播関数の理論の続きです。 

 

 Bjorken & Drellの"Relativistic Quantum Mechanics"

のテキストの伝播関数理論の内容紹介の続きです。

 

§6.4 The Propegator in Positron Theory

(陽電子理論の伝播関数)

 

非相対論の伝播関数(propagator)による展開を一般化して

相対論的電子論に適用します。

 

出発点はx0で発生してxへと伝播する粒子波に対する確率振幅

としての非相対論的な伝播関数:G(x;x0)の描像で与えられます。

 

この振幅は,G(x;x0)=G0(x;x0)

+∫d410(x;x1)V(x1)G0(x1;x0)

+∫∫d41420(x;x1)V(x1)G0(x1;x2)V(x2)

0(x2;x0)+..

 

なる式で与えられているように,振幅の和であって,そのn番目

の項は下の図6.4のdiagramに対応する因子の積です。

         

 この図6.4に示した散乱過程では,各線分はxi-1で生じxiまで自由に伝播する

部分の振幅G0(xi;xi-1)を表わしています。

 

 粒子波は,相互作用頂点(vertex):xiで単位時空体積当たり

V(xi)の確率振幅で散乱され,それから新しい波が

0(xi+1;xi)なる振幅で次の頂点xi+1まで時間の前方(未来)

に伝播します。

 

そこでこの振幅は相互作用が生じることが可能な全時空

のxiわたって総和されます。

 

i番目の相互作用頂点がxiまで伝播してきた粒子を

消滅させ,そこで粒子を生成してさらにti+1>tiなるxi+1まで

伝播すると表現することもできます。

 

相対論的な Diracの空孔理論でも保持しつづけるべきは,

こうした描像です。

 

Hamiltonian定式化が時間のみを強調しているのに対し,

この描像は,散乱過程において全時空的な視野を強調して

いるため,相対論にも適合します。

 

(※例えば,伝統的なHeisenberg表示では時間座標だけを

特別視していますが,状態ベクトルが時間座標にも空間座標

にも依らないような表示の方がより共変的です。※)

 

ここでの目的は非相対論的伝播関数の理論のアナロジー

よってDiracの空孔理論における散乱過程を計算できる法則

作ることです。

 

しかし対生成(対創生)の存在はそれも説明しなければ

ならないのですが,事態をより複雑にします。

 

この状況を実際に扱うにおいて採用すべき基本法則は,単に

伝播関数に関する計算の指示がFermi粒子の場合,

Dirac方程式の力学での空孔理論で論じた陽電子の理論と無矛盾

であるべきということだけです。

 

(※今のところ,場の量子論以前の歴史的なDirac空孔理論の段階

を想定して論じています。※)

 

取り合えず,厳密さを犠牲にして直観的議論に傾倒します。

 

陽電子の理論において記述すべき典型的な過程の描像を

見てみます。

 

    図6.5:陽電子理論での時空diagramの例

図6.5のFenman diagram:(a)は頂点(vertex)1で作用

するポテンシャルによる電子-陽電子対の生成(創生)

(pair production)を示していて,その後それぞれ

1,x2に伝播します。

 

6.5(b)は1つの電子e-がx1で発生してx2で終わるまで

の経路を示しています。

 

この道筋に沿っては頂点1で作用するポテンシャルに

よって1つの電子-陽電子対が発生します。

 

この対のうちの陽電子は点3で場の初期電子と対消滅

(pair-annihilate)します。

 

もう一方の片割れの電子は点2まで伝播して.そこで

ポテンシャルによって破壊されると同時に電子が生成されて

2でまで伝播します。

 

6.5(c)は頂点1で電子-陽電子対が生成されて点3まで

伝播し,そこで破壊消滅されることを示しています。

 

こうしたdiagramから次のようなことを見ます。

 

例えば,非相対論における頂点1で生成されて1から点2

伝播し点2で破壊される電子に対する振幅だけでなく,

生成され伝播し破壊消滅される陽電子の振幅も必要です。

 

もしも,この振幅がわかれば図6.5(a),(b),(c)に図示

されているタイプの各過程と,確率振幅を結び付ける計算

が可能となります。

 

そして任意の個々の過程に対してこれに寄与できる介在する

経路の全てにわたって和を取るか,積分することにより全振幅

を形成する試みが可能となります。

 

このように,電子の散乱事象に対しては図6.4と6.5(b)に

示される両方のタイプの経路が生じます。

 

(※取り合えずは)Diracの空孔理論に従って陽電子の振幅を

決める必要があります。

 

1つの陽電子の存在は,電子で満たされた海からの1つの

負エネルギー電子の欠損を意味するので,図6.5における

頂点3での陽電子の消滅はそこでの負エネルギー電子の生成

と同等であると見ることができます。

 

このことは頂点1で陽電子を生成し頂点3で消滅する振幅

頂点3で負エネルギー電子を生成し頂点1で消滅する

振幅と関連付けられることを示唆します。

 

そこで,図6.5のdiagramは正エネルギーを持って未来に伝播

する電子と負エネルギーを持って"過去に"伝播する電子と

解釈されるでしょう。

 

Diagram:6.5(a)は点1での対生成を記述しています。

 

これは負エネルギー電子がx2で生じて点1まで過去に伝播し,

そこで破壊され,代わりに創生された正エネルギー電子がx1

まで未来に伝播する描像と解釈できます。

 

散乱過程では点3まで伝播する電子は,図6.4のように

ポテンシャルによって時空の未来方向に散乱されて正エネルギ

を持って伝播するか?,図6.5(b)のように負エネルギーを持って

点1の方へと過去に"散乱されるか?という随意性を持っています。

 

時間について前方(未来),または後方(過去)にジグザグに進む

電子の経路に加え,図6.5(c)に示されているように閉じた

ループを描く可能性もあります。

 

これは空孔理論では,点1でのポテンシャルの作用が Diracの

負エネルギー電子の海の中の1つの電子を1つの正エネルギー

状態へと散乱すると解釈します。

 

そして,点3ではそれは逆に海の中へと散乱し返されます。

 

伝播関数の言葉では,点1で生成された電子が未来の点3

過去に散乱されて点1で消滅するということになります。

 

こうした過程,あるいは解釈を常識的に見て不合理だとして

無視することはできません。

 

実際,定式化はこれを要求しているし,後述するように実験

結果もその存在を支持しています。

 

さて,我々のプログラムの第一段階として,電子と陽電

子の伝播を記述するGreen関数を作ります。

 

相対論的量子力学の Dirac理論と,すぐ前に論じた非相対論

の伝播関数(prpopagator)の議論に習ってこのプログラムを

実行します。

 

 電子(Fermi粒子)の相対論的伝播関数SF'(x;x0)は,

非相対論での伝播関数G(x;x0)の定義式:

{i(∂/∂t)-(x)}G(x;x0)=δ4(x-x0)

のアナロジーで,

 

 Σλ=14μ{i∂/∂xμ-eAμ(x)}-m]αλ

F'λβ(x;x0)=δαβδ4(x-x0) を満足すると

定義されます。

 

 ここで,陽に書いたように,電子の伝播関数はγμの次数

に対応して, 4×4行列です。

 

 上式は,行列記法では,添字を省いて,

 [iγμ(∂/∂xμ)-eγμμ(x)-m]SF'(x;x0)

=δ4(x-x0) と簡単になります。

 

 非相対論の式:{i(∂/∂t)-(x)}G(x;x0)=δ4(x-x0)との

もう1つ大きな違いは,因子[iγμ(∂/∂xμ)-eγμμ(x)-m]

が相対論的に共変な演算子となるように,{i(∂/∂t)-(x)}にγ0

を掛けた演算子に相当していることです。

 

 自由電子の伝播関数を非相対論粒子のG0(x;x0)の代わりに,

 SF(x;x0)と書けば,これは行列記法で,

 [iγμ(∂/∂xμ)-m]SF(x;x0)=δ4(x-x0)

 を満足します。

 

自由伝播関数:SF(x;x0)はこれを運動量空間にFourier変換すれば

得られます。

 

非相対論のG0(x;x0)のケースと同様,SF(x;x0)は(x-x0)

だけの関数ですから,

 

F(x;x0)=SF(x-x0)

(2π)-4∫d4pexp{-ip(x-x0)}SF(p) とおきます。

 

※(注):μ=(E,)の正エネルギー電子なら,

exp{-ip(x-x0)}=exp{-ipμ(x-x0)μ}

=exp{-iE(t-t0)+i(0)} です。

 

 pμ=(-E,-)の負エネルギー電子なら

exp{-ip(x-x0)}=exp{-ipμ(x-x0)μ}

=exp{iE(t-t0)-i(0)}です。(注終わり)※

 

このFourier運動量表示を,

[iγμ(∂/∂xμ)-m]SF(x;x0)=δ4(x-x0)の左辺に

代入すると,(γμμ-m)SF(p)=を得ます。

 

右辺のは4×4単位行列です。

これは,Σλ=14μμ-m]αλFλβ(p)=δαβを意味して

います。

 

そこで,p2≠m2ならSF(p)=1/(γμμ-m)

≡(γμμ-m)-1=(γμμ+m)/(p2-m2)です。

 

(※(注):何故なら,(γμμ-m)(γνν+m)

=γμγνμν+m(γμμ-γνν)-m2

=1/2(γμγν+γνγμ)-m2

=gμνμν-m2=p2-m2だからです。※)

 

2=m2の分母の特異性,つまりp0軸上の特異点:

0=±(2+m2)1/2=±Eをどのように処理するか?という

ことが伝播関数を一意的に定義するための条件になります。

 

非相対論での特異点に対する扱いを思い出すと,この問題に

対する答は,

F(x-x0)=(2π)-4∫d4p[exp{-ip(x-x0)}SF(p)];

F(p)=1/(γμμ-m)(p2≠m2)の右辺を積分する際に,

F(x-x0)に課せられる境界条件から得られるはずです。

 

Green関数:SF(x-x0)に与えられる解釈は,"SF(x-x0)

は,点x0にある単位波源がxに生成する波を表わす。" 

ということです。

 

そうした局所化された点源のFourier成分は電子のCompton波長の逆数:m=1/λcよりも大きい多くの運動量pを含んでいます。

 

(注):電子のCompton波長はλc=hc/(mc)で,1/λc=mc/hc,

またはp=hcc=mcですが,Bjorkenテキストで一貫して

採用しているhc=c=1の自然単位では,p=1/λc=mです。

(注終わり)※

 

 そこで,p≧mなるpの存在から,電子と同様,陽電子もこの

波源x0で生成されると予期されます。

 

 運動量がpμ(E,)(E>0)の正エネルギー陽電子に対応

する運動量-pμ=(-E,-)の負エネルギー電子は運動量

がp=||~mのオーダーに到達すれば

(※ Dirac seaからジャンプして空孔(陽電子)を作ることが可能

になるので),振幅が評価できるオーダーになります。

 

 しかし,理論の必要な物理的要請は,x0から未来に向かって伝播

する波は正エネルギー電子と正エネルギー陽電子のFourier成分

のみから成ることです。

 

正エネルギー電子と正エネルギー陽電子は時間的に正の振動数

の因子exp(-iEt)を持つ波動関数で表現されるので,

F(x-x0)は未来:x0>x00(t>t0)において正振動数成分

のみ含むことができます。

 

(注):例えば,pμ=(E,)(E>0),

ψ(+)(x)=u(p,s)exp(-ipx)と.

ψc(+)(x)=C{v^(p,s)}Texp(-ipx)がそれぞれ電子と

陽電子の(規格化されていない)波動関数です。

 

上添字(+)は波動関数(spinor)の正エネルギー(正振動数)

部分,下添字cは荷電共役された波動関数を表わしています。 

 

また,Cは荷電共役(charge conjugation:粒子⇔反粒子)

演算子(このテキストのγ行列の選択ではC=iγ2γ0です。)

 

u(p,s)は正エネルギー電子の4元スピノル,v(p,s)は

負エネルギー電子の4元スピノルです。
 

そして,v^(p,s)≡v+(p,s)γ0で{v^(p,s)}T

行ベクトルv^(p,s)を転置して列の4元スピノルに戻した

ものです。 (注終わり)※

 

さて,SF(x-x0)に課せられる境界条件が満たされるように

するため,Fourier4元運動量の積分∫d4p=∫dp03

うち,複素p0 -平面の閉じた外周(contour)に沿う∫dp0

積分を実行します。

 

まず,t>t0に対する∫dp0の複素平面上の周回経路C

実軸の積分路∫-∞dp0の他には下半平面遠方で閉じている

とします。 

 

ただし,Cは内部に正振動数の極p0=ωp=+(2+m2)1/2

のみを含み,もう1つの極p0=-ωp=-(p2+m2)1/2

避けて,積分路(-∞,∞)部分を極の近傍では僅かに曲げた

経路;(-∞,∞)に変えておきます。

 

 t>0における伝播関数を,外周Cを用いて,

改めて,F(x-x0)

≡∫d3(2π)-3[exp{i(0)}×C+dp0(2π)-1

exp{-ip0(t-t0)}{(γμμ+m)}/(p2-m2)]と定義します。

 

すると,Cauchyの留数定理から,SF(x-x0)

=-i∫d3(2π)-3[exp{i(0)-iE(t-t0)}

{γE-γp+m)/(2E)}(t>t0);E=ωp 

が得られます。

 

(-∞,∞)+C1と書いて,C1が半径がRの

下半円周を時計まわりに回る経路とすれば,

3(2π)-3[exp{i(0)}

C1dp0(2π)-1exp{-ip0(t-t0)}{(γμμ+m)}

/(p2-m2)]はR→∞の極限でゼロに収束します。


(証明は簡単なので略)

 

したがって,t>t0なら.SF(x-x0)

=-i∫d3(2π)-3[exp{i(0)-iE(t-t0)}

{(γ0E-γp+m)/(2E)})} (E=ωp)  

=∫d3(2π)-3[exp{i(0)}+-∞dp0(2π)-1

 exp{-ip0(t-t0)}{(γμμ+m)}/(p2-m2)]

です。

 

同様に,t<0では∫dp0の積分路を

≡(-∞,∞)+C2として積分を実行します。

 

2は半径がR=∞の上半円周を反時計まわりに回る

経路です。

 

そこで,t<t0なら,SF(x-x0)

=-i∫d3(2π)-3[exp{i(0)+iE(t-t0)}

{(-γ0E-γp+m)/(2E)} (E=ωp) 

=∫d3(2π)-3[exp{i(0)}∫--∞dp0(2π)-1

 exp{-ip0(t-t0)}{(γμμ+m)}/(p2-m2)]

と書けます。

(注3):t>0,t<t0のいずれでも,これらのF(x-x0)

は確かに(iγμμ-m)SF(x-x0)=0 を満足するので,

(iγμμ-m)SF(x-x0)=δ4(x-x0)と矛盾しません。

 

また,t=t0 なら,(t-t0)に関する不連続性が存在すると

考えられるので,

 

(iγμμ-m)SF(x-x0)

=δ3(0)

limt→t0-∞dp0(2π)-1exp{-ip0(t-t0)}

です。

 

したがって,これらのSF(x-x0)の表現は確かに,

(iγμμ-m)SF(x-x0)=δ4(x-x0)=δ4(x-x0)

を満たす解となっています。(注3終わり)※

 

さて,負エネルギー(負振動数)の波は非相対論では無かった

のですが,ここでは不可避です。

 

本節の前の方の論議から,過去に伝播する負エネルギー電子

の波は未来に伝播する正エネルギー陽電子の波と解釈できる

ので上記の外周積分による伝播関数の定義は好都合です。

 

他方,遠方で消えるような外周積分路の他の選択では,

負エネルギー波を未来に伝播させるか,または正エネルギー波

を過去に伝播させる境界条件に対応します。

 

要約します。

 

正エネルギー波を未来に,負エネルギー波を過去に伝播させる

経路選択:C=(-∞,∞)+C1 (t>0),

-=(-∞,∞)+C2 (t<t0)において,

 

1,C2,の積分を無視することから,電子(陽電子)伝播関数

の次のようなFourier運動量積分表現を得ました。

 

F(x-x0)

=∫d3(2π)-3[exp{i(0)}

±-∞dp0(2π)-1exp{-ip0(t-t0)}{(γμμ+m)

/(p2-m2)} です。

 

こうした,外周C±の選択は,結局, 

F(p)=1/(γμμ-m)=(γμμ+m)/(p2-m2)の

分母に微小な正の虚部を付け加えて,

F(p)=(γμμ+m)/(p2-m2+iε)とする,

あるいはm2をm2-iεとして積分後にε→+0 の極限を取る

と解釈できます。

こうすれば,結局,

F(x-x0)=∫d4p(2π)-4exp{-ip(x-x0)}

{(γμμ+m)/(p2-m2+iε)}

=∫d4p(2π)-4exp{-ip(x-x0)}/(γμμ-m+iε)

となります。

 

※(注4):2をm2-iεとして積分後にε→+0 の極限を取る

のは,p0< 0 では極をp0=-(2+m2)1/2+iδに,p0> 0

では極をp0=(2+m2)1/2-iδに平行移動して,積分路

(-∞,∞)±を実軸(-∞,∞)に戻してδ→+0 の極限を取る

ことに相当します。

 

すなわち,{p0+(2+m2)1/2-iδ}{p0-(2+m2)1/2+iδ}

=(p0)22-m2)+2iδ(2+m2)1/2=p2-m2+iε;

ε≡2δ(2+m2)1/2です。  (注4終わり)※

 

ここで,まだまだ,途中なのですが私的な補足事項を書いて

今日の記事を終わりにします。

 

(補足1)西島和彦 著「相対論的量子力学」(培風館)より

(Feyman-Stuekerberg理論)

 

空孔理論では4元運動量がpiの陽電子が4元運動量pf

状態に散乱された場合,これは負エネルギー状態の-piの孔

が埋まって新たに-pfの孔ができたことになります。

 

この事象の方向,または順序を考えると,陽電子のpi→pf

なる散乱が,元々孔を埋めていた負エネルギー電子の

(-pf)→(-pi)なる散乱を意味すると思われます。

 

したがって,既に述べたように陽電子が未来に進むと

負エネルギー電子が過去に進むという見方ができます。

 

このFeynmanによる見方を正当に定式化するために,

「Stuekerberg(シュティッケルベルク)の因果律」という

仮説を導入します。

 

Stuekerbergの因果律は元々は場の量子論の言葉で書かれています。

 

すなわち,ある粒子がp1なる運動量で入射し,外場によって散乱

されてp2なる運動量で出ていったとします。

 

これは,場の理論の言葉では,"相互作用の結果,運動量p1

粒子が消滅して運動量p2の粒子が生成された。"といいます。

 

そして,Stuekerbergの因果律は,"ある粒子の消滅は必ずその粒子

の生成の後で起こる。"というものです。

そして,粒子(実在)というものを次のように定義します。

 

正エネルギーの電子と正エネルギー陽電子は実在の粒子で

あるが,負エネルギーの海を埋め尽くしている電子は観測

にかからないので,これらは粒子(実在)ではない。

(補足1終わり)※

 

(補足2):時間発展のGreen関数=伝播関数(propagator):

 G(x;x0)=G(,t;0,t0)は,時刻t00にあった

波が時刻tににある遷移振幅を表わすものです。

 

すなわち,便宜上係数iを加えた伝播関数は

iG(x;x0)=<x|x0>=<,t|0,t0>なる振幅

を意味します。

 

|Ψ>を任意の状態とすると,|0,t0>が完全系で

∫d30|0,t0><0,t0|=1を満たすなら,1を間に挟んで,

 

,t|Ψ>=∫d30,t|0,t0><0,t0|Ψ>,

または,<x|Ψ>=∫d30<x|x0><x0|Ψ> 

と表現できます。

 

これは,<x|Ψ>=<,t|Ψ>を時間tに依存する

波動関数:ψ(x)=ψ(,t)と考えて,式:

iG(x;x0)=iG(,t;0,t0)=<,t|0,t0

用いると,

 

ψ(,t) =i∫d30G(,t;0,t0)ψ(0,t0),

またはψ(x) =i∫d30G(x;x0)ψ(x0)

と書けます。

 

場の量子論では,真空を|0>とし粒子場をψ^(x)=ψ^(,t)

とすると,|x>=ψ^(x)|0>ですから,

iG(x;x0)=<x|x0>=<0|ψ^(x)ψ^(x0)|0>

です。

 

そこで,例えば|Φ>が粒子場ψ^に対応する1粒子状態なら

波動関数は,φ(x)≡<x|Φ>=<0|ψ^(x)|Φ>

となります。

 

特に,運動量がpの1粒子状態を|p>と書くとスカラー場

なら波動関数は,φ(x)≡<x|p>

=<0|ψ^(x)|p>=cexp(-ipx) です。

 

1粒子状態というのは全宇宙にただ1つ単独粒子があること

を意味しますから,相互作用する相手が全く無いので何も前提

を述べなくても自由粒子に決まっています。(Newtonの第一法則)

 

1粒子状態は,高々自由粒子の重ね合わせの純粋状態に

過ぎませんが,場の理論というのは裸の粒子が自分自身

との相互作用で衣を着ることもあるので単細胞の私には

ついていけないところもありますネ。

 

(例えばcexp(-ipx)の規格化定数cが∞になったりします。)

 

(※まあ,実際に我々が状態を考える対象は宇宙全体ではなく,

実験室の中とそれ以外を分離して実験室の中だけの部分系を想定

して,そこでの真空とか1粒子状態とかを考察するのですが,

理想的には宇宙全体を1状態と考えるべきでしょう。)

 

ところで,通常の非相対論では波はt<t0の過去には伝播

できないのでt<t0なら<x|x0>=0 です。(ただし

"光=電磁波"には過去に伝播する先進波が有りますが,

元々光は相対論的存在です。)

 

そこで,非相対論的電子では,

iG(x;x0)=θ(t-t0)<0|ψ^(x)ψ^(x0)|0>ですが,

相対論的電子では粒子場ψ^(x)は電子を消滅させ陽電子

を生成します。

 

一方,ψ^(x)は電子を生成し陽電子を消滅させます。

 

つまり,電子(陽電子)の場はb^,b^を電子の生成消滅演算子,

d^,d^を陽電子の生成消滅演算子として.

ψ^(x)=Σs=±∫d3(2π)-3/2(m/Ep)1/2

[b^(p,s)u(p,s)exp(-ipx)+d^+(p,s)v(p,s)

exp(ipx)]のように表現されます。

 

故に,ψ^(x)

=Σs=±∫d3(2π)-3/2(m/Ep)1/2[b^(p,s)u^(p,s)

exp(ipx)+d^(p,s)v^(p,s)exp(-ipx)]

です。

 

場の量子論の定式化では,b^|0>=d^|0>=0 ですから,

真空:|0>を負エネルギー電子の海であると考える必要はなく,

Dirac空孔理論のような仮説は不要となります。

 

しかも,場の量子論の定式化ではPauliの排他原理が成立しない

ため空孔理論の適用外であった Bose粒子の場も粒子,反粒子が

共存する理論の構成が可能です。

 

電子に戻ると,ψ^(x)|0>は電子だけを生成し,ψ^(x)|0>

は陽電子だけを生成しますから,<0|ψ^(x)ψ^(x0)|0>は

電子のみの振幅であり,他方<0|ψ^(x0)ψ^(x)|0>

は陽電子のみの振幅です。

 

(※元々,量子論の演算子積の順序には蓋然性があります。

 

例えば,xp,px,(xp+px)/2は古典論では同じ量ですが

量子論ではこれらはそれぞれ異なる量です。)

 

そこで,電子の場合は伝播関数:G(x;x0)をSF'(x;x0)と書けば,

iSF'(x;x0)=θ(t-t0)<0|ψ^(x)ψ^(x0)|0>

-θ(t0-t)<0|ψ^(x0)ψ^(x)|0> と書けます。

 

時間順序積(T積:T-product)を,T(ψ^(x)ψ^(x0))

≡θ(t-t0)ψ^(x)ψ^(x0)-θ(t0-t)ψ^(x0)ψ^(x)

で定義すれば,iSF'(x;x0)=<0|T(ψ^(x)ψ^(x0))|0>

とも書けます。

 

第2項に符号(-)があるのは,電子がFermi統計に従うためで

Bose粒子のT積なら第2項の符号(-)は不要です。

 

(PS:ψ^(x)はスピノルですから本当は,

<0|T(ψα^(x)ψβ^(x0))|0>etc.と書くべきでした。)

 

参考文献:J.D.Bjorken & S.D.Drell

"Relativistic Quantum Mechanics",

"Relativistic Quantum Fields"(McGraw-Hill),

西島和彦 著「相対論的量子力学」(培風館)

 

PS:せっかくの神様がくれた?休息期間なのに無駄に過ごしている

バカ野郎だな。オレは。。

  

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