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2010年6月14日 (月)

散乱の伝播関数の理論(11)(応用1-1)

散乱の伝播関数の理論の続きです。

 

Bjoken-Drellのテキスト"Mechanics"の第7章:apprications(応用)

に入ります。

 

まず,最初は電子のCoulomb散乱の計算ですが,これはここまでの

理論の応用の原点ですね。

 

§7.1 Coulomb Scattering of Electrons(電子のCoulomb散乱)

 固定されたCoulombポテンシャルによる電子の散乱過程に対する

 遷移行列(transition-matrix=S-matrix)の要素を求めます。

 

 既に得た知見によれば,これは,

 fi=-ie∫d4xψf~(x)(x)Ψi(x) (f≠i);

 (x)≡γμμ(x) で与えられます。

 

 ただし,Aμ(x)は電磁ポテンシャル,e<0 は電子の電荷です。

 

 最低次の近似では,Ψi(x)は自由平面波:ψi(x)に帰着します。

 

 この入射する自由平面波(spinor-波動関数)を,

 ψi(x)≡{m/(EiV)}1/2u(pi,si)exp(-ipix)

 とします。

 

ここでは,体積Vの箱の中に1個の電子があるという規格化を採用

しています。

 

 同様に,終状態の波動関数の共役を,

 ψf~(x)≡{m/(EfV)}1/2u~(pf,sf)exp(ipfx)

 とします。

 

 Coulombポテンシャルは点電荷:-Ze>0 に対するものとして,

 A0(x)=A0(x)=-Ze/(4πε0||),(x)=0 とします。

 

 すると,最低次近似の遷移行列要素として,

 fi={iZe2/(4πε0V)}{m2/(Eif)}1/2

 u~(pf,sf0u(pi,si)∫d4x[exp{i(pf-pi)x}/||]

 を得ます。

 

 右辺の積分のうち,時間成分のそれは,∫dx0exp{i(pf0-pi0)x0}

 =∫dtexp{i(Ef-Ei)t}=2πδ(Ef-Ei) です。

 

 この右辺のδ-関数は静電Coulombポテンシャルのもとでの始状態

 と終状態の間のエネルギーの保存を示しています。

 

 一方,空間積分は∫d3exp(-iqr)/||=4π/||2となります。

 ただし,fiです。

 

 以上から,Sfi={iZe2m/(ε0V)}(Eif)-1/2

 [u~(pf,sf0u(pi,si)/||2]2πδ(Ef-Ei)

 なる式が得られます。

 

 ところで,終運動量区間:f f+dfの体積要素d3f

 存在する自由電子の終状態の数は,Vd3f/(2π)3 です。

 

(注11-1):つまり,Vを1辺がLの立方体(V=L3)とすると,周期的

 境界条件からpk=(2π/L)nk;nk=0,±1,±2,..(k=1,2,3)

 ですが,dpk=(2π/L)dnkなので,3=(2π)33/V

 と書けます。

 そこで,d3=Vd3/(2π)3と書けます。

 

 そして,d3の中には丁度d3個の状態があるので,結局,

 要素d3にはVd3/(2π)3個の状態が存在します。

 

(注11-1終わり)※

 

 そこで,これらの終状態全体への遷移確率は,

  |Sfi|2Vd3f/(2π)3

  ={Z2(4πα)22/(EiV)}{|u~(pf,sf0u(pi,si)|2/||4}

  d3f/{(2π)3f}[2πδ(Ef-Ei)]2 で与えられます。

 

 ここで,微細構造定数(structure constant):

  α≡e2/(4πε0)~ 1/137 を用いました。

 

 右辺最後のエネルギーのδ-関数の平方因子の扱いについては,

 幾つかの説明が必要です。

 

 まず,仮に与えられた時間区間:(-T/2,T/2)の中での遷移を考え

 ている場合,エネルギーδ-関数はぼやけると思われます。

 

 すなわち,2πδ(Ef-Ei) → ∫-T/2T/2dtexp{i(Ef-Ei)t}

 =[-exp{i(Ef-Ei)t}/{i(Ef-Ei)}] -T/2T/2p

 =2sin{T(Ef-Ei)/2}/(Ef-Ei)

  となります。

 

 そして,2π∫-∞[2sin{T(Ef-Ei)/2}/(Ef-Ei)]

 δ(Ef-Ei)]dEf=2πTより,[2πδ(Ef-Ei)]2

 =2πδ(0)δ(Ef-Ei)] → 2πTδ(Ef-Ei) です。

 

 あるいは,単に無限の過去から無限の未来までの遷移時間をTと

 して2πδ(0)=T とします。

 

 これを見るための発見的方法は,

 2πδ(Ef-Ei)=lim T→∞-T/2T/2dtexp{i(Ef-Ei)t}から,

 2πδ(0)=lim T→∞-T/2T/2dt=lim T→∞Tと書くことです。

 

さて,遷移確率:|Sfi|2Vd3f/(2π)3を時間Tで割ると,

3fへの"単位時間当たりの遷移数=遷移率(transition rate)"

Rが得られます。

 

この値は,R={4Z2α22/(EiV)}

{|u~(pf,sf0u(pi,si)|2/||4}(d3f/Ef)δ(Ef-Ei)

となります。

 

散乱の断面積は,この遷移率を入射粒子の流束:

inca(x)=ψi~(x)γaψi(x)で割ったもので定義されます。

 

ただし,添字aは入射速度iβii/Eiに沿うベクトル成分

を示します。

 

ψi(x)≡{m/(EiV)}1/2u(pi,si)exp(-ipix)で採用している

のと同じ規格化から,|inc|=|i|/Vです。

 

※(注11-2):何故なら,

 i=<i>=<cα>=∫Vψi+αψi3inc

 であるからです。

 

 これは,密度ψi+αψiが位置に独立であって,

 ∫Vψi+ψi31と規格化されているからです。

 

 それ故,|inc|=|i|/Vです。

 

(注11-2終わり)※

 

 微分断面積dσ/dΩは,

 (単位時間に単位立体角当たりに散乱される粒子数)

 を(単位時間に単位面積当たりを通過する入射粒子数)

 で除した値与えられます。

 

ρ≡1/Vが数密度なので,|inc|=|i|/V=ρ|i|は入射向き

に垂直な単位面積当たりを通過する入射粒子数です。

 

一方,Rはその流束に対してd3f=pf2dpfdΩの領域に単位時間

に散乱される粒子数に等しいため,

dσ/dΩ=∫R(pf2dpf/d3f)/|inc|

となります。

 

したがって,

dσ/dΩ=∫{4Z2α22/(Ei|i|)}

{|u~(pf,sf0u(pi,si)|2/||4}(pf2dpf/Ef)δ(Ef-Ei)

です。

 

ところが,Ef2=pf2+m2よりEfdEf=pfdpf;pf=|f|です。

 

さらに,因子δ(Ef-Ei)の存在によってEi=Ef,

f=pi=|i|=|i|Eiですから,

f2dpf/(Efi|i|)=dEf を得ます。

 

 それ故,途中経過式:

 dσ/dΩ=(4Z2α22/||4)|u~(pf,sf0u(pi,si)|2

 が得られました。

 

 しかし,一般に観測者は入射粒子の偏極(spin or polarization)を

 知らないし終粒子の偏極を観測することもしません。

 

 もしも初期粒子が明確な偏極を有するなら,それには必ず適切な理由

 があります。

 

 β-崩壊による偏極電子のケースのように実験者が必ずその理由を

 見つけるはずです。

 

 そうした特殊なスピン情報が無い場合には,異なる初期偏極の個々

 の状態に等しい先験的確率を割り当てます。

 

 これらは,実際の断面積においては終状態のスピンについては総和

 となり,始状態のスピンについて平均となることを意味します。

 

 すなわち,一般的な実験で評価される量としては,

 dσ/dΩ

 =(2Z2α22/||4±sf,±si|u~(pf,sf0u(pi,si)|2

 です。

 

 ところが±sf,±si|u~(pf,sf0u(pi,si)|2

 =Σ±sf,±siΣα,βΣλ,δ,σ[u~α(pf,sf0αββ(pi,si)]

 [u+λ(pi,si0+λδγ0+δσσ(pf,sf)]

 と表現されます。

 

 一般に,4×4行列Γに対してΓ~をΓ~≡γ0Γ+γ0で定義すると,

 |u~(f)Γu(i)|2=[u~(f)Γu(i)][u~(i)Γ~u(f)]

 です。

 

 そして,特にγμ~≡γ0γμ+γ0=γμ,(iγ5)~=iγ5,

 (γμγ5)~=γμγ5です。

 

実際±sf,±siΣα,βΣλ,δ,σ[u~α(pf,sf0αββ(pi,si)]

[u+λ(pi,si0+λδγ0+δσσ(pf,sf)]は変形されます。

 

Σ±sf,±siΣα,βΣλ,σ[u~α(pf,sf0αββ(pi,si)]

[u~λ(pi,si0~λσσ(pf,sf)]であり,かつγ0~=γ0です。

 

そして±siβ(pi,si)u~λ(pi,si)

=Σr=12εr(r)β(i)w(r)~λ(i) とも書けます。

 

r=1,2 に対しては,

Λ+(i)w(r)(i)=(γμ+m)w(r)(i)/(2m)

=w(r)(i),

r=3,4 に対しては,

Λ+(i)w(r)(i)=(γμ+m)w(r)(i)=0

です。

 

そこで,w(r)+(i)(γμ++m)/(2m)=w(r)+(i) (r=1,2),

かつ,w(r)+(i)(γμ++m)/(2m)=0 (r=3,4) です。

 

ところがμ+γ0=γ0γμなので,これは,

(r)~(i)(γμ+m)/(2m)=w(r)~(i)(r=1,2),

かつ,w(r)~(i)(γμ+m)/(2m)=0 と変形されます。

 

γμμと略記すると,

(r)~σ(i)(i+m)σλ/(2m)=w(r)~λ(i) (r=1,2),

かつ,w(r)~σ(i)(i+m)σλ/(2m)=0 (r=3,4)

です。

 

そこで±siβ(pi,si)u~λ(pi,si)

=Σr=12εr(r)β(i)w(r)~λ(i)

=Σr=14Σσ=14εr(r)β(i)w(r)~σ(i)(i+m)σλ/(2m)

です。

 

故にr=14εr(r)α()w(r)~β()=δαβより,

Σ±siβ(pi,si)u~λ(pi,si)

Σσ=14δβσ(i+m)σλ/(2m)

=(i+m)βλ/(2m)

を得ます。

 

それ故±sf,±si|u~(pf,sf0u(pi,si)|2

=Σ±sf,±siΣα,βΣλ,σ[u~α(pf,sf0αββ(pi,si)]

[u+λ(pi,si0λσσ(pf,sf)]

=Σ±sfΣα,ββΣλ,σ[u~α(pf,sf0αβ(i+m)βλ

γ0λσσ(pf,sf)]/(2m) です。

 

さらに,Σ±sf,±si|u~(pf,sf0u(pi,si)|2

=Σ±sfΣα,σ[u~α(pf,sf){γ0(i+m)γ0}ασ

 σ(pf,sf)]/(2m)

=[Σα,σ0(i+m)γ0}ασ(i+m)σα]/(4m2)

を得ます。

 

何故なら,Σ±sfσ(pf,sf)u~α(pf,sf)

=Σr=14Σλ=14εr(r)σ(f)w(r)~λ(f)(f+m)λα/(2m)

=(i+m)σα/(2m) となるからです。

 

そしてα,σ0(i+m)γ0}ασ(f+m)σα]

=Tr[γ0(i+m)γ0(f+m)](trace:トレース(跡=対角和))

ですから,

 

結局,

dσ/dΩ={Z2α2/(2||4)Tr[γ0(i+m)γ0(f+m)]

です。 

 

§7.2 Some Trace Theorem;the Spin-averaged Coulomb Cross section(幾つかのトレース定理;スピンで平均化した散乱断面積)

 

前節の最後に得られた微分断面積のトレース因子は,

r[γ0(i+m)γ0(f+m)]

=Tr(γ0iγ0f)+m2Tr(γ0)2と分割できますが,公式に

よって,(γ0)2であり,Tr(γ0iγ0f)=8Eif-4pif

です。

 

したがって,dσ/dΩ={Z2α2/(2||4)(8Eif-4pif+4m2)

={Z2α22/(4||4)}{1-β2sin2(θ/2)} です。

 

すなわち,電子のCoulomb散乱の微分断面積の最低次の式として,

dσ/dΩ=={Z2α2/(4||2β2sin4(θ/2))}{1-β2sin2(θ/2)}

が得られました。

(↑※これは,"Mottの散乱公式"と呼ばれているらしいです。)

 

(注11-3):何故なら,E≡Ei=Ef,i,if2cosθ

 とおくと,pif=Eifif=E22cosθ

 =m22(1-cosθ)=m2+22sin2(θ/2) であり,

  

 8Eif-4pif+4m2=8{E22sin2(θ/2)}

 =8E2{1-β2sin2(θ/2)},E222,||2

 =(fi)2=22(1-cosθ)=42sin2(θ/2)

 となるからです。

 

(注11-3終わり)※ 

   

※(付録):γ行列,主としてそのトレースの公式集です。

 

 まず,任意の4元ベクトルaμに対し,γμμ≡Σμ=03μμ)

 をイタリック体でと書きます。

  

[性質1] 奇数個のγ行列のトレースはゼロである。

  

(証明)まず,γ52です。

 そこで1..n1..nγ5γ5です。

 

 よって,Tr(1..n)=Tr(1..nγ5γ5)

 =Tr(γ51..nγ5)です。

  

 γ5γμ=-γμγ5よりγ5=-γ5なので,

 Tr(1..nγ5γ5)=(-1)nTr(γ51..nγ5)です。

 

 それ故,nが奇数なら,Tr(1..n)=-Tr(1..n)より

 Tr(1..n)=0 です。(証明終わり)

 

[性質2] Tr=4である。 ← これは明らかです。

 

[性質3] Tr()=4abである。

 

(証明):Tr()=Tr(γμγνμν)=aμνTr(γμγν)

 =aμνTr(γνγμ)=Tr(ba)です。

 

 故に,Tr()=(1/2)Tr(abba)

 =(1/2)aμνTr(γμγν+γνγμ)=aμνTr(gμν)

 =4abです。(証明終わり)

 

[性質4] Tr(1..n)

 =a12Tr(3..n)-a13Tr(24..n)+..

 +a1nTr(2..n-1)である。

 

 特に,Tr(1234)

 =4(a1234+a1423-a1324) である。

  

(証明):12=γμγν1μ2ν=a1μ2ν(2gμν-γνγμ)

=2a1221です。

  

 故に,Tr(1..n)

=2a12Tr(3..n)-Tr(213..n)と書けます。

 

 この過程を続けると,Tr(1..n)

=2a12Tr(3..n)-2a13Tr(24..n)+..

+2a1nTr(2..n-1)-Tr(2..n1) が得られます。

 

 しかし,Tr(2..n1)=Tr(1..n)なので,

Tr(1..n)=a12Tr(3..n)-a13Tr(24..n)+..

+a1nTr(2..n-1)です。(証明終わり)

  

[性質5] (ⅰ)Trγ5=0 ,(ⅱ)Tr(γ5ab)=0 ,

(ⅲ)Tr(γ5abcd)=4iεαβγδαβγδ である。

   

 ただし,εαβγδ;α,β,γ,δ=0,1,2,3 は,4つの添字のうち

2つ以上が同じならゼロ,また,順列:(α,β,γ,δ)が(0,1,2,3),

およびその偶置換なら+1,奇置換なら-1を取る符号を示す。

  

(証明):(ⅰ):γ5=iγ0γ1γ2γ3です。

Tr(γ0γ1γ2γ3)=Tr(γ3γ0γ1γ2) です。

  

 ところが,γ3γ0γ1γ2=-γ0γ3γ1γ2=γ0γ1γ3γ2

   =-γ0γ1γ2γ3です。よってTrγ5=0 です。

  

(ⅱ):γ5γμγνはμ=νのときはγ5γμγν=±γ5なので,

  Tr(γ5γμγν)=0 です。

 

 他方,μ≠νのときは,例えばγ5γ0γ1ならγ5=iγ0γ1γ2γ3

  よりγ5γ0γ1=±iγ2γ3ですが.γ3γ2=-γ2γ3より,

  Tr(γ2γ3)=Tr(γ3γ2)=0 ですから,Tr(γ5γ0γ1)=0

  です。

  

 よって,一般にTr(γ5ab)=0 です。

  

(ⅲ):γ5γαγβγγγδは,添字α,β,γ,δのうち2つが等しいとき

例えばα=βならγαγβγγγδ=±γγγδです。

  

 ところが,(ⅱ)によってTr(γ5γγγδ)=0 なので,結局,添字

 α,β,γ,δのうちの2つが等しいときには,

 Tr(γ5γαγβγγγδ)=0 と結論されます。

 

 一方,γ5=iγ0γ1γ2γ3=-iγ0γ1γ2γ3 なので,

 γ5γ0γ1γ2γ3=+iですから,Tr(γ5γ0γ1γ2γ3)=4i

  です。

 

 そして,添字α,β,γ,δが全て異なる行列積:γαγβγγγδ

 を考えると,"添字の2つを交換する置換=互換"ごとに,

 γαγβγγγδは符号を変えます。

 

 そこで,γαγβγγγδ=εαβγδγ0γ1γ2γ3です。

 

 故にTr(γ5γαγβγγγδγ0γ1γ2γ3)

 =εαβγδTr(γ0γ1γ2γ3)=4iεαβγδ

 となります。

 

 したがって,Tr(γ5abcd)=4iεαβγδαβγδです。

 

 (証明終わり) 

[性質6] (ⅰ)γμγμ=4・,(ⅱ)γμγμ=-2,

 (ⅲ)γμabγμ=(4ab),(ⅳ)γμabcγμ=-2cba,

 (ⅴ)γμabcdγμ=2(dabccbad) である。

 

(証明):(ⅰ):γμγν+γνγμ=gνλμγλ+γλγμ)

 =2gνλμλ=2gνμです。

 

 故に,γμγμ=gμμ=4・1 です。

 

(ⅱ):γμγμ=γμγνγμν=γμν(2gμν-γμγν)

 =2-γμγμ=-2a です。

 

(ⅲ):γμabγμ=γμγνγλγμνλ

 =(2gμν-γνγμ)(2gλμ-γμγλ)aνλ

 です。

 

 よって,4gλννλ-2(γνγλ+γνγλ)aνλ

 +γνγμγμγλνλ=(4ab)-4ab+4ab

 =(4ab)1 が得られます。

  

(ⅳ):(ⅲ)より,(4ab)=γμabγμ=γμλγλγμ

 =γμλ(2gλμ-γμγλ)=2ba+2ab,

 すなわち(2ab)abba を得ます。

 

 それ故,γμabcγμ=γμabγσγμσ

 =2cab-γμabγμ=2cab-(4ab)

 =2{(4ab)-2ba}-(4ab)=-2cba

 です。

 

(ⅴ):γμabcdγμ=γμabcγσγμσ

 =2dabc-γμabcγμ=2dabc+2cbad

 です。(証明終わり)

  

[性質7] Tr(1..2n)=Tr(2n..1) である。

 

(証明):任意のγμに対し,ある行列Cが存在して

 Cγμ-1=-γμTが成立します。

 

μTはγμの転置(transport);B-J.text.の表示ではC≡iγ2γ0)

 

 故に,Tr(1..2n)=Tr(1..2nCC-1)

 =Tr(C1..2n-1)=Tr(C1-1..C2n-1)

 =(-1)2nTr(1T..2nT)=(-1)2nTr[(2n..1)T]

 =Tr(2n..1)です。 (証明終わり)

 

(付録終わり)※ 

   

 今日はここまでです。

 

参考文献: J.D.Bjorken & S.D.Drell“Relativistic Quantum Mechanics”(McGraw-Hill)

 

PS:ワールドカップサッカー初戦,日本代表1-0 でカメルーンに勝利!!

 おめでとう。。シュート5本未満で1本入れた??珍らしい。。

 

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