散乱の伝播関数の理論(11)(応用1-1)
散乱の伝播関数の理論の続きです。
Bjoken-Drellのテキスト"Mechanics"の第7章:apprications(応用)
に入ります。
まず,最初は電子のCoulomb散乱の計算ですが,これはここまでの
理論の応用の原点ですね。
§7.1 Coulomb Scattering of Electrons(電子のCoulomb散乱)
固定されたCoulombポテンシャルによる電子の散乱過程に対する
遷移行列(transition-matrix=S-matrix)の要素を求めます。
既に得た知見によれば,これは,
Sfi=-ie∫d4xψf~(x)A(x)Ψi(x) (f≠i);
A(x)≡γμAμ(x) で与えられます。
ただし,Aμ(x)は電磁ポテンシャル,e<0 は電子の電荷です。
最低次の近似では,Ψi(x)は自由平面波:ψi(x)に帰着します。
この入射する自由平面波(spinor-波動関数)を,
ψi(x)≡{m/(EiV)}1/2u(pi,si)exp(-ipix)
とします。
ここでは,体積Vの箱の中に1個の電子があるという規格化を採用
しています。
同様に,終状態の波動関数の共役を,
ψf~(x)≡{m/(EfV)}1/2u~(pf,sf)exp(ipfx)
とします。
Coulombポテンシャルは点電荷:-Ze>0 に対するものとして,
A0(x)=A0(x)=-Ze/(4πε0|r|),A(x)=0 とします。
すると,最低次近似の遷移行列要素として,
Sfi={iZe2/(4πε0V)}{m2/(EiEf)}1/2
u~(pf,sf)γ0u(pi,si)∫d4x[exp{i(pf-pi)x}/|r|]
を得ます。
右辺の積分のうち,時間成分のそれは,∫dx0exp{i(pf0-pi0)x0}
=∫dtexp{i(Ef-Ei)t}=2πδ(Ef-Ei) です。
この右辺のδ-関数は静電Coulombポテンシャルのもとでの始状態
と終状態の間のエネルギーの保存を示しています。
一方,空間積分は∫d3rexp(-iqr)/|r|=4π/|q|2となります。
ただし,q≡pf-piです。
以上から,Sfi={iZe2m/(ε0V)}(EiEf)-1/2
[u~(pf,sf)γ0u(pi,si)/|q|2]2πδ(Ef-Ei)
なる式が得られます。
ところで,終運動量区間:pf ~ pf+dpfの体積要素d3pfに
存在する自由電子の終状態の数は,Vd3pf/(2π)3 です。
※(注11-1):つまり,Vを1辺がLの立方体(V=L3)とすると,周期的
境界条件からpk=(2π/L)nk;nk=0,±1,±2,..(k=1,2,3)
ですが,dpk=(2π/L)dnkなので,d3p=(2π)3d3n/V
と書けます。
そこで,d3n=Vd3p/(2π)3と書けます。
そして,d3nの中には丁度d3n個の状態があるので,結局,
要素d3pにはVd3p/(2π)3個の状態が存在します。
(注11-1終わり)※
そこで,これらの終状態全体への遷移確率は,
|Sfi|2Vd3pf/(2π)3
={Z2(4πα)2m2/(EiV)}{|u~(pf,sf)γ0u(pi,si)|2/|q|4}
d3pf/{(2π)3Ef}[2πδ(Ef-Ei)]2 で与えられます。
ここで,微細構造定数(structure constant):
α≡e2/(4πε0)~ 1/137 を用いました。
右辺最後のエネルギーのδ-関数の平方因子の扱いについては,
幾つかの説明が必要です。
まず,仮に与えられた時間区間:(-T/2,T/2)の中での遷移を考え
ている場合,エネルギーδ-関数はぼやけると思われます。
すなわち,2πδ(Ef-Ei) → ∫-T/2T/2dtexp{i(Ef-Ei)t}
=[-exp{i(Ef-Ei)t}/{i(Ef-Ei)}] -T/2T/2p
=2sin{T(Ef-Ei)/2}/(Ef-Ei)
となります。
そして,2π∫-∞∞[2sin{T(Ef-Ei)/2}/(Ef-Ei)]
δ(Ef-Ei)]dEf=2πTより,[2πδ(Ef-Ei)]2
=2πδ(0)δ(Ef-Ei)] → 2πTδ(Ef-Ei) です。
あるいは,単に無限の過去から無限の未来までの遷移時間をTと
して2πδ(0)=T とします。
これを見るための発見的方法は,
2πδ(Ef-Ei)=lim T→∞∫-T/2T/2dtexp{i(Ef-Ei)t}から,
2πδ(0)=lim T→∞∫-T/2T/2dt=lim T→∞Tと書くことです。
さて,遷移確率:|Sfi|2Vd3pf/(2π)3を時間Tで割ると,
d3pfへの"単位時間当たりの遷移数=遷移率(transition rate)"
Rが得られます。
この値は,R={4Z2α2m2/(EiV)}
{|u~(pf,sf)γ0u(pi,si)|2/|q|4}(d3pf/Ef)δ(Ef-Ei)
となります。
散乱の断面積は,この遷移率を入射粒子の流束:
Jinca(x)=ψi~(x)γaψi(x)で割ったもので定義されます。
ただし,添字aは入射速度vi=βi=pi/Eiに沿うベクトル成分
を示します。
ψi(x)≡{m/(EiV)}1/2u(pi,si)exp(-ipix)で採用している
のと同じ規格化から,|Jinc|=|vi|/Vです。
※(注11-2):何故なら,
vi=<vi>=<cα>=∫Vψi+αψid3r=JincV
であるからです。
これは,密度ψi+αψiが位置rに独立であって,
∫Vψi+ψid3r=1と規格化されているからです。
それ故,|Jinc|=|vi|/Vです。
(注11-2終わり)※
微分断面積dσ/dΩは,
(単位時間に単位立体角当たりに散乱される粒子数)
を(単位時間に単位面積当たりを通過する入射粒子数)
で除した値与えられます。
ρ≡1/Vが数密度なので,|Jinc|=|vi|/V=ρ|vi|は入射向き
に垂直な単位面積当たりを通過する入射粒子数です。
一方,Rはその流束に対してd3pf=pf2dpfdΩの領域に単位時間
に散乱される粒子数に等しいため,
dσ/dΩ=∫R(pf2dpf/d3pf)/|Jinc|
となります。
したがって,
dσ/dΩ=∫{4Z2α2m2/(Ei|vi|)}
{|u~(pf,sf)γ0u(pi,si)|2/|q|4}(pf2dpf/Ef)δ(Ef-Ei)
です。
ところが,Ef2=pf2+m2よりEfdEf=pfdpf;pf=|pf|です。
さらに,因子δ(Ef-Ei)の存在によってEi=Ef,
pf=pi=|pi|=|vi|Eiですから,
pf2dpf/(EfEi|vi|)=dEf を得ます。
それ故,途中経過式:
dσ/dΩ=(4Z2α2m2/|q|4)|u~(pf,sf)γ0u(pi,si)|2
が得られました。
しかし,一般に観測者は入射粒子の偏極(spin or polarization)を
知らないし終粒子の偏極を観測することもしません。
もしも初期粒子が明確な偏極を有するなら,それには必ず適切な理由
があります。
β-崩壊による偏極電子のケースのように実験者が必ずその理由を
見つけるはずです。
そうした特殊なスピン情報が無い場合には,異なる初期偏極の個々
の状態に等しい先験的確率を割り当てます。
これらは,実際の断面積においては終状態のスピンについては総和
となり,始状態のスピンについて平均となることを意味します。
すなわち,一般的な実験で評価される量としては,
dσ/dΩ
=(2Z2α2m2/|q|4)Σ±sf,±si|u~(pf,sf)γ0u(pi,si)|2
です。
ところが,Σ±sf,±si|u~(pf,sf)γ0u(pi,si)|2
=Σ±sf,±siΣα,βΣλ,δ,σ[u~α(pf,sf)γ0αβuβ(pi,si)]
[u+λ(pi,si)γ0+λδγ0+δσuσ(pf,sf)]
と表現されます。
一般に,4×4行列Γに対してΓ~をΓ~≡γ0Γ+γ0で定義すると,
|u~(f)Γu(i)|2=[u~(f)Γu(i)][u~(i)Γ~u(f)]
です。
そして,特にγμ~≡γ0γμ+γ0=γμ,(iγ5)~=iγ5,
(γμγ5)~=γμγ5です。
実際,Σ±sf,±siΣα,βΣλ,δ,σ[u~α(pf,sf)γ0αβuβ(pi,si)]
[u+λ(pi,si)γ0+λδγ0+δσuσ(pf,sf)]は変形されます。
Σ±sf,±siΣα,βΣλ,σ[u~α(pf,sf)γ0αβuβ(pi,si)]
[u~λ(pi,si)γ0~λσuσ(pf,sf)]であり,かつγ0~=γ0です。
そして,Σ±siuβ(pi,si)u~λ(pi,si)
=Σr=12εrw(r)β(pi)w(r)~λ(pi) とも書けます。
r=1,2 に対しては,
Λ+(pi)w(r)(pi)=(γμpiμ+m)w(r)(pi)/(2m)
=w(r)(pi),
r=3,4 に対しては,
Λ+(pi)w(r)(pi)=(γμpiμ+m)w(r)(pi)=0
です。
そこで,w(r)+(pi)(γμ+piμ+m)/(2m)=w(r)+(pi) (r=1,2),
かつ,w(r)+(pi)(γμ+piμ+m)/(2m)=0 (r=3,4) です。
ところが,γμ+γ0=γ0γμなので,これは,
w(r)~(pi)(γμpiμ+m)/(2m)=w(r)~(pi)(r=1,2),
かつ,w(r)~(pi)(γμpiμ+m)/(2m)=0 と変形されます。
γμpμをpと略記すると,
w(r)~σ(pi)(pi+m)σλ/(2m)=w(r)~λ(pi) (r=1,2),
かつ,w(r)~σ(pi)(pi+m)σλ/(2m)=0 (r=3,4)
です。
そこで,Σ±siuβ(pi,si)u~λ(pi,si)
=Σr=12εrw(r)β(pi)w(r)~λ(pi)
=Σr=14Σσ=14εrw(r)β(pi)w(r)~σ(pi)(pi+m)σλ/(2m)
です。
故に,Σr=14εrw(r)α(p)w(r)~β(p)=δαβより,
Σ±siuβ(pi,si)u~λ(pi,si)
=Σσ=14δβσ(pi+m)σλ/(2m)
=(pi+m)βλ/(2m)
を得ます。
それ故,Σ±sf,±si|u~(pf,sf)γ0u(pi,si)|2
=Σ±sf,±siΣα,βΣλ,σ[u~α(pf,sf)γ0αβuβ(pi,si)]
[u+λ(pi,si)γ0λσuσ(pf,sf)]
=Σ±sfΣα,ββΣλ,σ[u~α(pf,sf)γ0αβ(pi+m)βλ
γ0λσuσ(pf,sf)]/(2m) です。
さらに,Σ±sf,±si|u~(pf,sf)γ0u(pi,si)|2
=Σ±sfΣα,σ[u~α(pf,sf){γ0(pi+m)γ0}ασ
uσ(pf,sf)]/(2m)
=[Σα,σ{γ0(pi+m)γ0}ασ(pi+m)σα]/(4m2)
を得ます。
何故なら,Σ±sfuσ(pf,sf)u~α(pf,sf)
=Σr=14Σλ=14εrw(r)σ(pf)w(r)~λ(pf)(pf+m)λα/(2m)
=(pi+m)σα/(2m) となるからです。
そして,Σα,σ{γ0(pi+m)γ0}ασ(pf+m)σα]
=Tr[γ0(pi+m)γ0(pf+m)](trace:トレース(跡=対角和))
ですから,
結局,
dσ/dΩ={Z2α2/(2|q|4)Tr[γ0(pi+m)γ0(pf+m)]
です。
§7.2 Some Trace Theorem;the Spin-averaged Coulomb Cross section(幾つかのトレース定理;スピンで平均化した散乱断面積)
前節の最後に得られた微分断面積のトレース因子は,
Tr[γ0(pi+m)γ0(pf+m)]
=Tr(γ0piγ0pf)+m2Tr(γ0)2と分割できますが,公式に
よって,(γ0)2=1であり,Tr(γ0piγ0pf)=8EiEf-4pipf
です。
したがって,dσ/dΩ={Z2α2/(2|q|4)(8EiEf-4pipf+4m2)
={Z2α2E2/(4|q|4)}{1-β2sin2(θ/2)} です。
すなわち,電子のCoulomb散乱の微分断面積の最低次の式として,
dσ/dΩ=={Z2α2/(4|p|2β2sin4(θ/2))}{1-β2sin2(θ/2)}
が得られました。
(↑※これは,"Mottの散乱公式"と呼ばれているらしいです。)
※(注11-3):何故なら,E≡Ei=Ef,p≡pi,pipf≡p2cosθ
とおくと,pipf=EiEf-pipf=E2-p2cosθ
=m2+p2(1-cosθ)=m2+2p2sin2(θ/2) であり,
8EiEf-4pipf+4m2=8{E2-p2sin2(θ/2)}
=8E2{1-β2sin2(θ/2)},E2=p2/β2,|q|2
=(pf-pi)2=2p2(1-cosθ)=4p2sin2(θ/2)
となるからです。
(注11-3終わり)※
※(付録):γ行列,主としてそのトレースの公式集です。
まず,任意の4元ベクトルaμに対し,γμaμ≡Σμ=03(γμaμ)
をイタリック体でaと書きます。
[性質1] 奇数個のγ行列のトレースはゼロである。
(証明)まず,γ52=1です。
そこでa1..an=a1..anγ5γ5です。
よって,Tr(a1..an)=Tr(a1..anγ5γ5)
=Tr(γ5a1..anγ5)です。
γ5γμ=-γμγ5よりγ5a=-aγ5なので,
Tr(a1..anγ5γ5)=(-1)nTr(γ5a1..anγ5)です。
それ故,nが奇数なら,Tr(a1..an)=-Tr(a1..an)より
Tr(a1..an)=0 です。(証明終わり)
[性質2] Tr1=4である。 ← これは明らかです。
[性質3] Tr(ab)=4abである。
(証明):Tr(ab)=Tr(γμγνaμbν)=aμbνTr(γμγν)
=aμbνTr(γνγμ)=Tr(ba)です。
故に,Tr(ab)=(1/2)Tr(ab+ba)
=(1/2)aμbνTr(γμγν+γνγμ)=aμbνTr(gμν1)
=4abです。(証明終わり)
[性質4] Tr(a1..an)
=a1a2Tr(a3..an)-a1a3Tr(a2a4..an)+..
+a1anTr(a2..an-1)である。
特に,Tr(a1a2a3a4)
=4(a1a2a3a4+a1a4a2a3-a1a3a2a4) である。
(証明):a1a2=γμγνa1μa2ν=a1μa2ν(2gμν-γνγμ)
=2a1a2-a2a1です。
故に,Tr(a1..an)
=2a1a2Tr(a3..an)-Tr(a2a1a3..an)と書けます。
この過程を続けると,Tr(a1..an)
=2a1a2Tr(a3..an)-2a1a3Tr(a2a4..an)+..
+2a1anTr(a2..an-1)-Tr(a2..ana1) が得られます。
しかし,Tr(a2..ana1)=Tr(a1..an)なので,
Tr(a1..an)=a1a2Tr(a3..an)-a1a3Tr(a2a4..an)+..
+a1anTr(a2..an-1)です。(証明終わり)
[性質5] (ⅰ)Trγ5=0 ,(ⅱ)Tr(γ5ab)=0 ,
(ⅲ)Tr(γ5abcd)=4iεαβγδaαbβcγdδ である。
ただし,εαβγδ;α,β,γ,δ=0,1,2,3 は,4つの添字のうち
2つ以上が同じならゼロ,また,順列:(α,β,γ,δ)が(0,1,2,3),
およびその偶置換なら+1,奇置換なら-1を取る符号を示す。
(証明):(ⅰ):γ5=iγ0γ1γ2γ3です。
Tr(γ0γ1γ2γ3)=Tr(γ3γ0γ1γ2) です。
ところが,γ3γ0γ1γ2=-γ0γ3γ1γ2=γ0γ1γ3γ2
=-γ0γ1γ2γ3です。よってTrγ5=0 です。
(ⅱ):γ5γμγνはμ=νのときはγ5γμγν=±γ5なので,
Tr(γ5γμγν)=0 です。
他方,μ≠νのときは,例えばγ5γ0γ1ならγ5=iγ0γ1γ2γ3
よりγ5γ0γ1=±iγ2γ3ですが.γ3γ2=-γ2γ3より,
Tr(γ2γ3)=Tr(γ3γ2)=0 ですから,Tr(γ5γ0γ1)=0
です。
よって,一般にTr(γ5ab)=0 です。
(ⅲ):γ5γαγβγγγδは,添字α,β,γ,δのうち2つが等しいとき
例えばα=βならγαγβγγγδ=±γγγδです。
ところが,(ⅱ)によってTr(γ5γγγδ)=0 なので,結局,添字
α,β,γ,δのうちの2つが等しいときには,
Tr(γ5γαγβγγγδ)=0 と結論されます。
一方,γ5=iγ0γ1γ2γ3=-iγ0γ1γ2γ3 なので,
γ5γ0γ1γ2γ3=+i1ですから,Tr(γ5γ0γ1γ2γ3)=4i
です。
そして,添字α,β,γ,δが全て異なる行列積:γαγβγγγδ
を考えると,"添字の2つを交換する置換=互換"ごとに,
γαγβγγγδは符号を変えます。
そこで,γαγβγγγδ=εαβγδγ0γ1γ2γ3です。
故にTr(γ5γαγβγγγδγ0γ1γ2γ3)
=εαβγδTr(γ0γ1γ2γ3)=4iεαβγδ
となります。
したがって,Tr(γ5abcd)=4iεαβγδaαbβcγdδです。
(証明終わり)
[性質6] (ⅰ)γμγμ=4・1,(ⅱ)γμaγμ=-2a,
(ⅲ)γμabγμ=(4ab)1,(ⅳ)γμabcγμ=-2cba,
(ⅴ)γμabcdγμ=2(dabc+cbad) である。
(証明):(ⅰ):γμγν+γνγμ=gνλ(γμγλ+γλγμ)
=2gνλgμλ=2gνμ1です。
故に,γμγμ=gμμ1=4・1 です。
(ⅱ):γμaγμ=γμγνγμaν=γμaν(2gμν-γμγν)
=2a-γμγμa=-2a です。
(ⅲ):γμabγμ=γμγνγλγμaνbλ
=(2gμν-γνγμ)(2gλμ-γμγλ)aνbλ
です。
よって,4gλνaνbλ-2(γνγλ+γνγλ)aνbλ
+γνγμγμγλaνbλ=(4ab)1-4ab+4ab
=(4ab)1 が得られます。
(ⅳ):(ⅲ)より,(4ab)1=γμabγμ=γμabλγλγμ
=γμabλ(2gλμ-γμγλ)=2ba+2ab,
すなわち(2ab)1=ab+ba を得ます。
それ故,γμabcγμ=γμabγσγμcσ
=2cab-γμabγμc=2cab-(4ab)c
=2c{(4ab)1-2ba}-(4ab)c=-2cba
です。
(ⅴ):γμabcdγμ=γμabcγσγμdσ
=2dabc-γμabcγμd=2dabc+2cbad
です。(証明終わり)
[性質7] Tr(a1..a2n)=Tr(a2n..a1) である。
(証明):任意のγμに対し,ある行列Cが存在して
CγμC-1=-γμTが成立します。
(γμTはγμの転置(transport);B-J.text.の表示ではC≡iγ2γ0)
故に,Tr(a1..a2n)=Tr(a1..a2nCC-1)
=Tr(Ca1..a2nC-1)=Tr(Ca1C-1..Ca2nC-1)
=(-1)2nTr(a1T..a2nT)=(-1)2nTr[(a2n..a1)T]
=Tr(a2n..a1)です。 (証明終わり)
(付録終わり)※
今日はここまでです。
参考文献: J.D.Bjorken & S.D.Drell“Relativistic Quantum Mechanics”(McGraw-Hill)
PS:ワールドカップサッカー初戦,日本代表1-0 でカメルーンに勝利!!
おめでとう。。シュート5本未満で1本入れた??珍らしい。。
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