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2010年6月15日 (火)

散乱の伝播関数の理論(12)(応用1-2)

 散乱の伝播関数の理論の続きです。

 

 ついでに陽電子のCoulomb散乱を手短かに書いておきます。

 

§7.3 Coulomb Scattering of Positrons(陽電子のCoulomb散乱)

 

 Coulombポテンシャルによる陽電子の散乱に対する遷移行列要素の

 計算は電子の散乱のそれに同様です。

 

まず,Sfi=ie∫d4xψf~(x)(x)Ψi(x)(f≠i);

(x)≡γμμ(x)です。

 

ただしe<0 は前と同じく電子の電荷です。

 

この場合,入射状態:Ψi(x)は,未来にあって時間的に後退して運動

する(過去に向かって伝播する)4元運動量:-pfを持った負エネル

ギー電子と解釈します。(※負エネルギー電子の抜けた空孔は未来

へ伝播)

よって.最低次のΨi(x)を示す自由平面波は,

ψi(x)≡{m/(EfV)}1/2v(pf,sf)exp(+ipfx)

であるとします。

 

同様に,出て行く方の状態は過去へ伝播する負エネルギー状態です

から,ψf(x)≡{m/(EiV)}1/2v(pi,si)exp(+ipix)です。

 

これは散乱前には,運動量:piのとスピン偏極:siを持っていた

"入射陽電子=空孔(Hole)"を表わしています。

 

Coulombポテンシャル:A0(x)=A0(x)=-Ze/(4πε0||),

(x)=0 を代入すると,

 

最低次では,

fi={-iZe2/(4πε0V)}{m2/(Eif)}1/2

v~(pi,si0v(pf,sf)∫d4x[exp{i(pf-pi)x}/||]

なる式を得ます。

 

これから,Sfi={-iZe2m/(ε0V)}(Eif)-1/2

[v~(pi,si0v(pf,sf)/||2]2πδ(Ef-Ei)

です。

 

荷電共役不変性(charge conjugation invariance:

粒子-反粒子対称性)から,このオーダーでは計算は電子に対する

ものと,ほぼ同様です。

 

すなわち,最低次では,

fi ~ +ie∫d4xψci~(x)(x)ψcf(x)

=-ie∫d4xψfT(x)C^-1(x)C^ψi~T(x)

=+ie∫d4xψf~(x)(x)ψi(x);

 

ψc(x)=Cγ0ψ+(x)です。

 

そして,今採用しているBjorken-DrellのテキストのJガンマ行列の

表示では,C=iγ2γ0=-C-1=-CTです。

 

そこで,この近似での陽電子の散乱の微分断面積は,

dσ/dΩ=(4Z2α22/||4)|v~(pi,si0v(pf,sf)|2

です。

 

さらに終状態のスピンで総和し,始状態スピンで平均すると,

dσ/dΩ=(2Z2α22/||4±sf,±si|

v~(pi,si0v(pf,sf)|2

={Z2α2/(2||4)Tr[γ0(f-m)γ0(i-m)]

です。

 

結局,陽電子散乱は電子散乱の式:

dσ/dΩ={Z2α2/(2||4)Tr[γ0(i+m)γ0(f+m)]

でmを-mにしたものに一致します。

 

したがって,散乱の微分断面積は電子と全く同じで,

dσ/dΩ={Z2α2/(4E2||4)}{1-β2sin2(θ/2)}

={Z2α2/(4||2β22sin4(θ/2))}{1-β2sin2(θ/2)}

です。

 

最低次での散乱は静電Coulombポテンシャルが引力であるか斥力

であるかには無関係であることがわかります。

 

ところが,上図7.2の電子の散乱diagramsのように,もしも左の1次

(最低次)のdiagramに加えて,右の2次のdiagramの寄与をも考慮し

ときには,

   

fi への1次の項が電荷に比例するのに対し,2次の項は電荷の

2乗に比例するため,1次の項に対する2次の項の相対的符号は,

電子と陽電子では反対になります。

 

そして,各々の散乱の微分断面積は,

R=|Sfi|2Vd3f/{(2π)3T}に比例しますが,その因子:

|Sfi|2fi は1次の寄与と2次の寄与の和として出現する

ため,高次近似まで考慮すると,"結果が,引力であるか斥力

あるかに無関係"という命題は正しくありません。

 

※(注12-2):Sfi電子=(-i)(eA+e2B)=-ie(A+eB),

fi陽電子=(-i){-eA+(-e)2B}=ie(A-eB)(e<0)

であれば,|Sfi|2=Sfifiなので2次まで考慮すると一致

しません。

  

S行列のユニタリ性の議論からも,fifi=δfi+iTfi,

fi Hermite(実数)なる形と推論されます。(注12-1終わり)※

  

しかし,任意のFeynman-diagramの寄与の計算おいて,電子と陽電子

の間でi⇔-pf とすればいいという簡単な置換ルールがあります。

  

これは,ここまで展開してきた伝播関数理論と密接に結びついて

います。

 

今日はここまでにします。

 

参考文献: J.D.Bjorken & S.D.Drell"Relativistic Quantum Mechanics"(McGrawHill)

 

PS:今日(6/15)も夜は手話講習会に行ってきました。

 

手話は,ただ聴いて(見て)いるだけでは身に付かないので,毎回教室

の生徒全員が順に皆の前であいさつ,自分の名前とか家族構成,生年

月日,出身地,身長などを身振り,手振りでやらされるのですが。。

 

私は,何故か人一倍覚えが悪くて仕草も滑稽で下手なせいなのか?

このごろは順番がまわって出る直前から,かなり失笑が湧いて。。

 

イヤ楽しいですネ,笑われるのは。。。

(休み時間に大笑いしたコに謝られました??)

 

別に笑いを取ろうとしているのでなく,手話なのでシャベルわけ

でもなく,恐らく天然らしいのですがネ。。

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