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2010年6月24日 (木)

散乱の伝播関数の理論(15)(応用2-3)

 散乱の伝播関数の理論の続きです。

 

ここまでの最低次近似の電子-陽子散乱についてさらなる高次補正

を与えます。

 

ただし,Feynman-rulesが与える手順によって定められる計算式の

導出が主目的ですから,行列のトレースの評価等,具体的な計算結果

を追求するものではありません。

 

§7.5 Higher-order Corrections to Electron-Proton Scattering

 (電子-陽子散乱の高次補正)

 

ここまでの電子-陽子散乱の計算結果は,S行列要素Sfiではeと

p(=-e)の1次,遷移確率では,e2p2の1次のオーダーまで

で正しいに過ぎません。

 

その次に高次の補正を得るには「散乱の伝播関数(10)」で与えた

S行列要素の近似表現,つまり,

 

fi=δfi-ie∫d4yψf~(x)(x)Ψi(x)のn次の寄与:

-ien∫..∫d41..d4nψf~(yn)(yn)SF(yn-yn-1)

(yn-1)..SF(y2-y1)(y1(+)i(y)

 

に戻る必要があります。

 

この式から,電子と陽子の間のeの2次の補正は,

fi(2)=-ie2∫d4xd4yψf~(x)(x)SF(x-y)

(y)ψi(y) です。

 

この式における電磁ポテンシャル:Aμ(x),Aν(y)も再び電磁

カレントによって生起されます。

 

この場合のカレントを決めるために,Aμ(x),Aν(y)と相互作用

する2次のカレントの形を見ます。

 

1次の計算におけると同様,Sfi(2)の2次の電子カレントは,

f~(x)γμF(x-y)γνψi(y)

=ψf~(x)γμn;p0>0θ(x0-y0n(x)ψn~(y)

-Σn;p0<0θ(y0-x0n(x)ψn~ (y)}γνψi(y)

で与えられます。

 

先頭の因子iはカレントを2つのカレント積で表わすためです。 

ここで,「散乱の伝播関数(10)で得た式:

F(x-x0)=-iθ(t-t0)∫d3Σr=12ψp(r)(x)ψp(r)~(x0)

+iθ(t0-t)∫d3Σr=34ψp(r)(x)ψp(r)~(x0)

を用いました。

 

電磁ポテンシャルは,Aμ(x)=ε0-1∫d4yDF(x-y)Jμ(y);

μ(y)=epψpf~(x)γμψpi(y)で与えられます。

 

これから2次のカレントから生起されるμ(x)Aν(y)の表現が

得られます。

  

μ(x)Aν(y)=ε0-2p2∫d4wd4zDF(x-w)DF(y-z)

ψf~(w)γμn;p0>0θ(w0-z0n(w)ψn~(z)-

Σn;p0<0θ(z0-w0n(w)ψn~(z)}γνψpi(z)

=iε0-2p2∫d4wd4zDF(x-w)DF(y-z)ψpf~(w)γμ

pF(w-z)γνψpi(z)

 

です。

 

ここで,因子DF(x-w)DF(y-z)は,図7.4の光子の2本の内線に

対するFeynman-propaggatorです。

 

それらは単なる点(dot)で表わされる電子,または陽子との相互作用

頂点(vertex)の間を伝播します。

 

一方,電子,陽子のそれらの頂点はそれぞれeγλ,epγσの寄与を

します。

 

電子,陽子内線にはFermi粒子のpropagator:

F(x-y),SpF(w-z) を対応させます。

 

これらの因子は,座標空間で書かれたFeynman-graphとS行列要素

の間の対応付けの例です。

 

fi(2)に対する表現を完成させるためには,陽子カレントにもう

一つ項を付け加えて2つの光子の区別不可能性を表現する必要

があります。

 

すなわち,電子と点xで相互作用する光子が点wで生じたか?,

点zで生じたか?ということをその電子は知りません。

 

それ故,下図7.5のような可能性も一緒に含む必要があります。

何故なら,光子に対するFeynman-propagatorは正振動数部分のみが

未来に伝播することを保証しますから,4つの点x,y,z,wの相対

的な時間順序が相互作用の中で生じるからです。

 

したがって,例えばwにおける光子は,対等に電子によって放出され

たり吸収されたりする最初のものにも第二のものにも成り得ます。

 

そこで,2つの区別できない交換光子の変数を対称化するため,

0-2p2∫d4wd4zDF(x-w)DF(y-z)ψpf~(w)γμ

pF(w-z)γνψpi(z)に,

 

項:iε0-2p2∫d4wd4zDF(x-z)DF(y-w)ψpf~(w)γμ

pF(w-z)γνψpi(z) を加えます。

 

これから,

fi(2)=-ie2∫d4xd4yψf~(x)(x)SF(x-y)(y)ψi(y)

は,Sfi(2)=ε0-22p2∫d4xd4yd4zd4wψf~(x)γμ

F(x-y)γνψi(y)

[DF(x-w)DF(y-z)ψpf~(w)γμpF(w-z)γνψpi(z)

+DF(x-z)DF(y-w)ψpf~(w)γμpF(w-z)γνψpi(z)]

を得ます。

 

この右辺の2つの項は,座標空間において,対応する

Feynman-diagramからS行列要素を書き下すことに対する同じ

ルールを満足します。

 

 しかし,今までのところ,これらのルールは因子iに関しては幾分

 不明確なことに気付きます。

 

 そこで,全体としての因子:(-i)をS行列に結び付け,因子iSpF

 陽子伝播関数(propagator)に結び付けます。

 

 高次のオーダ-においては,全ての陽子伝播関数SpFは同じ理由で

 因子iを伴ないます。

 

 そして,各電子内線についてもiSFを対応させ,同時にに因子:

 (-i)を結び付けると,Fermi粒子のpropagatorを統一して考える

 規則とすることができます。

 

 すなわち,-ieFF...e

 =(-ie)(iSF)(-ie)(iSF)...(-ie)

 とするわけです。

 

 こうすれば全体としての因子:(-i)もの余分な因子に含まれます。

 

 eに因子:(-i)を結び付けるのは,全ての電子線における頂点に

 対して(-ieγμ)を付与することに相当します。

 

 一方,光子のpropagator:DFにもiを付加して(iDF)に置き換え,

 同時に陽子線頂点に(-iepγν)を付与すれば,Fermi粒子に対し

 て統一されたルールが得られます。

 

すなわち,因子:(-i)を電子,陽子の各頂点(vertex)に対応させ,

因子:iを各内線propagatorに対応させます。

 

以下,一貫してこのルールを仮定します。

 

実際の計算は,座標空間でなくむしろ運動量空間で実行するのが

有利なので散乱の遷移要素をFourier変換します。

 

まず.外粒子線(すなわち,入射,散乱の電子,および陽子)の波動関数は

平面波と見なされます。

 

再び,Sfi(2)=ε0-22p2∫d4xd4yd4zd4wψf~(x)γμ

F(x-y)γνψi(y)

[DF(x-w)DF(y-z)ψpf~(w)γμpF(w-z)γνψpi(z)

+DF(x-z)DF(y-w)ψpf~(w)γμpF(w-z)γνψpi(z)]

から出発します。

 

右辺第1項のFourier変換のみ考えると,

0-24/V2)∫d4xd4yd4zd4w{m2/(Efi)}1/2

{M2/(Epfpi)}1/2(2π)-441(2π)-442(2π)-44

(2π)-44Pexp{-iq1(x-w)}(q12+iε)-1exp{-iq2(y-z)}

(q22+iε)-1[exp(ipfx)u~(pf,sfμexp{-ip(x-y)}

(-m+iε)-1γνu(pi,si)exp(-ipiy)]

[exp(iPfw)u~(Pf,Sfμexp{-iP(w-z)}

(-M+iε)-1γνu(Pi,Si) exp(-iPiz)]

を得ます。

 

全ての時空座標についての積分を実行すれば,各積分が関わる頂点

,y,z,wにおけるエネルギー・運動量保存に対応する4次元

δ関数,および(2π)4の因子を生じます。

 

 すなわち,(ε0-24/V2){m2/(Efi)}1/2{M2/(Epfpi)}1/2

 ∫d41424pd4Pδ4(-q1+pf-p)δ4(-q2+p-pi)

 δ4(q2+Pf-P)δ4(q1+P-Pi)(q12+iε)-1(q22+iε)-1

 [u~(pf,sfμ(-m+iε)-1γνu(pi,si)]

 [u~(Pf,Sfμ(-M+iε)-1γνu(Pi,Si)]

 です。

 

これを,さらにd424pd4Pで運動量積分します。

 

結果は,(ε0-24/V2){m2/(Efi)}1/2{M2/(Epfpi)}1/2(2π)4

δ4(Pf+pf-Pi-pi)∫d41(2π)-4(q12+iε)-1

{(q-q1)2+iε}-1

[u~(pf,sfμ(f1-m+iε)-1γνu(pi,si)]

[u~(Pf,Sfμ(f1-M+iε)-1γνu(Pi,Si)]

です。

 

ただし,前と同じくqはq≡pf-pi=Pi-Pfで定義されます。

 

結果,全体としてのエネルギー・運動量保存のδ関数が出現し,

そして運動量空間でのFeynman-diagramにおいて閉曲線(loop)を

描いて走る4元運動量q1にわたる積分が出現することに着目し

ます。

 

全体としてのエネルギー・運動量保存のδ4と結びついた(2π)4

除けば,(2π)4因子は全て系統的に相殺されて消えています。

 

そして,残った(2π)4因子は∫d41(2π)-4に伴なう因子(2π)-4

それを補っています。

 

運動量空間の図7.6の他の因子については,各頂点は(-ieγμ),

または,(-iepγμ)=(ieγμ)に寄与し,各外線は因子(m/E)1/2,

または,(M/Ep)1/2を持ちます。

 

内線には因子:i(-m+iε)-1,i(-M+iε)を割り当てます。

      

こうして少しの経験を経ると,与えられたFeynman-diagramを視察

するだけで,

[u~(pf,sfμ(f1-m+iε)-1γνu(pi,si)]

[u~(Pf,Sfμ(f1-M+iε)-1γνu(Pi,Si)]

なる形を連想できるようになります。

  

例えば,図7.7のような運動量空間でのFeynman-graphは座標空間で

の図7.5に対応しており,この振幅は図7.6の陽子のspin因子:

[u~(Pf,Sfμ(f1-M+iε)-1γνu(Pi,Si)]を,

単に[u~(Pf,Sfν(f1-M+iε)-1γμu(Pi,Si)]

で置換しただけ違います。

 

残りの因子∫d41(2π)-4(q12+iε)-1{(q-q1)2+iε}-1[...]

の評価は,初等的に見積もることが困難な4次元積分を含んでいる

ため簡単ではありません。

 

これは,陽子をCoulom力の点源と見た静電的極限に対してはDalitz

によって計算されました。

 

この例では,Coulombポテンシャルの到達範囲が無限大であるため,

特殊な困難を生じています。

 

この記事の目的は一応達成したので,この計算をこれ以上は行なわ

ないことにします。

 

参考文献: J.D.Bjorken & S.D.Drell“Relativistic Quantum Mechanics”(McGraw-Hill)

  

PS:いやー惜しかったなあ,もうちょっとで三原じゅん子氏の手を握れた

 のに。。もしかしてジジィのスケベな意図がバレタかな?

 

 今日は地蔵通りは"4のつく日=縁日"でした。散歩はお金が無くて

 もお茶とワインや,当たり女などのツマミなど屋台の試食や試飲も

 バッチリでした。

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