散乱の伝播関数の理論(9)
散乱の伝播関数の理論の続きです。
まず,前記事の最後の部分を要約します。
S系において粒子が速度v=βで運動することは,この粒子が固
定されている"静止系=S0系"に対してS系が相対速度-v=-β
で運動するのと同等です。
そして,S0系に対しx軸に沿った相対速度-v=-β=tanhω
を持って運動するS系に対応する時空座標のLorentz変換:
x'μ=aμνxνは,
x'0=x0coshω-x1sinhω,x'1=x1coshω-x0sinhω,
x'2=x2,x'3=x3
です。
このLorentz変換:(ax)μ=aμνxνに対応する波動関数の変換:
ψ(ax)=S(a)ψ(x)を与える変換行列S(a)を具体的に求め
ると,S(a)=cosh(ω/2)-α1sinh(ω/2) となります。
静止系S0では運動量pμ=(m,0)を持つ粒子が,S0系に対して
x軸に沿った相対速度-v=-β=tanhωで運動するS系では
運動量pμ=(E,p)を持つとします。
S系での独立な自由粒子波動関数は,
ψ(r)(x)=w(r)(p)exp(-iεrpx)
=S(a)w(r)(0)exp(-iεrmt) (r=1,2,3,4)
と書けます。
ここに,εr≡1(r=1,2),εr≡-1(r=3,4) です。
ただし,w(1)(0)≡(1,0,0,0)T,w(2)(0)≡(0,1,0,0)T,
w(3)(0)≡(0,0,1,0)T,w(4)(0)≡(0,0,1,0)Tで.
w(r)(p)=S(a)w(r)(0)
={cosh(ω/2)-α1sinh(ω/2)}w(r)(0)です。
(↑ ※右上添字Tは行列の転置(transport)を示しています。
これは前記事では,例えば(1,0,0,0)Tではなくt(1,0,0,0)と
表記していました。
気紛れです。本当はブログの科学記事全体で統一すべきですが
迷ってます。※)
座標のLorentz変換:xμ→aμνxνに対応する運動量の
Lorentz変換:pμ→aμνpνから,
E=p0=mcoshω=m/(1-β2)1/2,
p=p1=-msinhω=mβ/(1-β2)1/2
を得ます。
そこで,-tanh(ω/2)=-tanhω/{1+(1-tanh2ω)1/2}
=β/{1+(1-β2)1/2}=p/(E+m)であり,
cosh(ω/2)={1-tanh2(ω/2)}-1/2={(E+m)/(2m)}1/2
であること,がわかります。
故に,-sinh(ω/2)=-tanh(ω/2)cosh(ω/2)
={p/(E+m)}{(E+m)/(2m)}1/2=p/{2m(E+m)}1/2
を得ます。
そして,S(a)=(w(1)(p),w(2)(p),w(3)(p),w(4)(p))
=cosh(ω/2)-α1sinh(ω/2) です。
これから,
w(1)(p)={(E+m)/(2m)}1/2(1,0,0,p/(E+m))T,
w(2)(p)={(E+m)/(2m)}1/2(0,1,p/(E+m),0)T,
w(3)(p)={(E+m)/(2m)}1/2(0,p/(E+m),1,0)T,
w(4)(p)={(E+m)/(2m)}1/2(p/(E+m),0,0,1)T
と書けます。
一般の速度:β=(β1,β2,β3)を持つ粒子のw(r)(p)
=S(a)w(r)(0)を得るには,
S(a)αβ=exp{-(i/4)ω(σμνInμν)}αβ
= exp{-(1/8)ω[γμ,γν]Inμν}αβの右辺の生成行列:
Inμνを速度βの空間軸回転の3×3直交行列:Tを考慮した形
にします。
pμ=(E,p)は,E=m/(1-β2)1/2,p=mβ/(1-β2)1/2
ですが,特にp±≡p1±ip2=m(β1±iβ2)/(1-β2)1/2と
定義します。
計算結果だけ書くと,
w(1)(p)={(E+m)/(2m)}1/2
(1,0,p3/(E+m),p+/(E+m))T,
w(2)(p)={(E+m)/(2m)}1/2
(0,1,p-/(E+m),-p3/(E+m))T,
w(3)(p)={(E+m)/(2m)}1/2
(p3/(E+m),p+/(E+m),1,0)T,
w(4)(p)={(E+m)/(2m)}1/2
(p-/(E+m),-p3/(E+m),0,1)T
です。
特に,ここだけ単位を復活させると,
まず,β=v/c,pμ=(E/c,p)で,
E=mc2/(1-β2)1/2,p=mv/(1-β2)1/2,
p±=p1±ip2=m(v1±iv2)/(1-β2)1/2です。
w(1)(p)={(E+mc2)/(2mc2)}1/2
(1,0,p3c/(E+mc2),p+c/(E+mc2))T,
w(2)(p)={(E+mc2)/(2mc2)}1/2
(0,1,p-c/(E+mc2),-p3c/(E+mc2))T,
w(3)(p)={(E+mc2)/(2mc2)}1/2
(p3/(E+mc2),p+c/(E+mc2),1,0)T,
w(4)(p)={(E+mc2)/(2mc2)}1/2
(p-c/(E+mc2),-p3c/(E+mc2),0,1)T
です。
さて,波動関数:ψ(r)(x)=w(r)(p)exp(-iεrpx)は,
もちろん, Dirac方程式:(γμp^μ-m)ψ(r)(x)=0
を満足します。
そして,p^μ=(p^0,-p^)=(i(∂/∂t),-i∇)=i∂μより,
γμp^μψ(r)(x)=iγμ∂μw(r)(p)exp(-iεrpx)
=εrγμpμw(r)(p)exp(-iεrpx)ですから,
(εrγμpμ-m)w(r)(p)=0 が成立します。
これは,(γμpμ-εrm)w(r)(p)=0 とも書けます。
これらの式の両辺のHermite共役を取ると,
w(r)+(p)(γμ+pμ-εrm)=0 です。
そして,γ0+=γ0,γ+=-γですから,γμ+γ0=γ0γμより,
等式の両辺の右からγ0を乗じた後,4行1列の行ベクトル:
w(r)~(p)≡w(r)+(p)γ0を用いると,
w(r)~(p)(γμpμ-εrm)=0 を得ます。
また,ψ(ax)=S(a)ψ(x)より,ψ+(ax)=ψ+(x)S+(a)
ですから,ψ~(ax)=ψ+(ax)γ0=ψ+(x)S+(a)γ0
=ψ~(x)γ0S+(a)γ0です。
容易にわかるように,γ0S+(a)γ0=S-1(a)なので,
ψ~(ax)ψ~(x)S-1(a)です。
故に,ψ~(ax)ψ(ax)=ψ~(x)ψ(x)となり,ψ~(x)ψ(x)は
Lorentz-scalarですから,
w(r)~(p)exp(iεrpx)w(r')(p)exp(-iεr'px)
=w(r)~(p)w(r')(p)exp{i(εr-εr')px}はscalar
(Lorents不変量)です。
そして,εr,pxもscalarですから,
w(r)~(p)w(r')(p)exp{i(εr-εr')px}は,
w(r)~(0)w(r')(0)=εrδrr'に一致します。
故に,w(r)~(p)w(r')(p)=εrδrr'なる関係式を得ました。
また,証明は省略しますが,
Σr=14εrw(r)α(p)w(r)~β(p)=δαβなる式も成立します。
ψ~(x)ψ(x)がLorentz-scalarなので,確率密度:
ψ+(x)ψ(x)=ψ~(x)γ0ψ(x)はLorentz不変では
ありません。
これは,jμ(x)≡(ρ(x),j(x))=ψ~(x)γμψ(x)の第 0 成分
として変換します。
また,簡単な計算からw(r)+(εrp)w(r')(εr'p)=(E/m)δrr'
を得ます。
E/m=(1-β2)1/2ですから,β=0 での3次元体積をΔV0とすると,
w(r)+(εrp)w(r')(εr'p)ΔV
=w(r)+(εrp)w(r')(εr'p)ΔV0(1-β2)1/2
=δrr' となります。
よって,この規格化では確率密度でなく確率がLorentz不変です。
ψ(r)(x)=w(r)(p)exp(-iεrpx)から,
上記のw(r)+(εrp)w(r')(εr'p)=(E/m)δrr'なる表式は,
運動量がpの正エネルギーのspinor:
w(r)(p)exp(-iEt+ipr)(r=1,2)は,
逆符号の運動量-pを持つspinor:
w(r')(-p)exp(iEt+ipr)(r'=3,4)
のHermite共役と直交するという描像です。
そこで,同じ空間運動量pを持ち反対符号のエネルギーを持つ
平面波解ψ(r)(x),ψ(r')(x)は,r=1,2;r'=3,4,または
r=3,4;r'=1,2ならψ(r)+(x)ψ(r')(x)=0 になるという意味
で直交します。
さて,u(p,s)で運動量:pμ=(E,p)とspin:sμ=(s0,s)
を持つDirac方程式の正エネルギー解を記述します。
すなわち,(γμpμ-m)u(p,s)=0 です。
ただし,sμは静止系p0μ=(m,0)での偏極ベクトルs0により
s0μ=(0,s0)で定義される4元ベクトルです。
したがって,任意の慣性座標系でsμsμ=s0μs0μ=-s02
=-1,pμsμ=p0μs0μ=0 です。
そして,u(p,s)がspin:sを持つという意味を,
静止系p0μ=(m,0)ではu(p0,s0)がσs0u(p0,s0)
=u(p0,s0)を満たすことと定義します。
ただし,σs0=σis0iでσi≡εijkσjk=iεijkγjγkです。
行列σi=iεijkγjγkは,Pauliの2×2スピン行列
σi=iεijkσjσkの4×4行列版です。
(※下図では区別する便宜のため,4×4行列の方をσ(4)k,と
表記しました。※)
静止系では,i∂ψ/∂t=βmψ,H=βmですが,
よって,(γμpμ-m)u(p,s)=0,σs0u(p0,s0)
=u(p0,s0)によりu(p,s)の定義が可能です。
同様に,(γμpμ+m)v(p,s)=0 を満たす解で,静止系で
-s0のspinを持つという条件σs0v(p0,s0)=-v(p0,s0)
によってv(p,s)を定義します。
この結果,w(1)(p)=u(p,uz),w(2)(p)=u(p,-uz),
w(3)(p)=v(p,-uz),w(4)(p)=v(p,uz) です。
ただし,uz=(uz0,uz)は,静止系では,uz0μ=(0,uz0)
=(0,0,0,1)という形になる4元ベクトルです。
そして,uz0=(0,0,1)はz方向の spin-upを意味します。
さて,天下り的ですが,Λr(p)≡(εrγμpμ+m)/(2m)
(r=1,2,3,4),またはΛ±(p)≡(±γμpμ+m)/(2m)
とおけば,
Λr(p)Λr'(p)=(1+εrεr')Λr(p)/2 が成立するので,
Λ+2(p)=Λ+(p),Λ-2(p)=Λ-(p),
Λ+(p)Λ-(p)=0,Λ+(p)+Λ-(p)=1 です。
Λr(p)w(r')(p)=(εrγμpμ+m)w(r')(p)/(2m)
={εr(γμpμ-εr'm)/(2m)+(1+εrεr')/2}w(r)(p)
={(1+εrεr')/2}w(r)(p)です。
故に,r=1,2,かつr'=1,2,または,r=3,4,かつr'=3,4
なら,Λr(p)w(r')(p)=w(r')(p) です。
r=1,2,かつr'=3,4,または,r=3,4,かつr'=1,2
なら,Λr(p)w(r')(p)=0 です。
そして,また,Σ(s)≡(1+γ5γμsμ)/2とおきます。
すると,Σ(uz)=(1+γ5γμuzμ)/2です。
ただし,γ5=γ5≡iγ0γ1γ2γ3です。
明らかに,Σ(uz)u(p,uz)=u(p,uz),
Σ(uz)v(p,uz)=v(p,uz)で,
Σ(-uz)u(p,uz)=Σ(-uz)v(p,uz)=0 です。
Σ(uz)は共変形なので,Σ(s)u(p,s)=u(p,s),
Σ(s)v(p,s)=v(p,s)で,
Σ(-s)u(p,s)=Σ(-s)v(p,s)=0
が成立します。
以上から,P1(p)≡Λ+(p)Σ(s),P2(p)≡Λ+(p)Σ(-s),
P3(p)≡Λ-(p)Σ(-s),P4(p)≡Λ-(p)Σ(s)とおけば,
これらはPr(p)w(r')(p)=δrr'w(r')(p),または,
Pr(p)Pr'(p)=δrr'を満たす正負のエネルギー固有関数
の射影演算子となります。
さて,これで準備完了したので散乱の伝播関数の話に戻ります。
5/30の記事「散乱の伝播関数(7)」の最後では,
自由電子の伝播関数が,
SF(x-x0)=∫d4p(2π)-4exp{-ip(x-x0)}
×{(γμpμ+m)/(p2-m2+iε)}
=∫d4p(2π)-4exp{-ip(x-x0)}/(γμpμ-m+iε)
で与えられるのを見ました。
これに,上で論じた射影演算子:Λ±(p)=(±γμpμ+m)/(2m)
を適用すると,
t>t0ならSF(x-x0)
=-i∫d3p(2π)-3exp{-iE(t-t0)}exp{ip(r-r0)}
(m/E)Λ+(p),
t<t0ならSF(x-x0)
=-i∫d3p(2π)-3exp{iE(t-t0)}exp{-ip(r-r0)}
(m/E)Λ-(p) です。
そこで,po=E>0 として,
SF(x-x0)=-i∫d3p(2π)-3(m/E)[θ(t-t0)Λ+(p)
exp{-ip(x-x0)}+θ(t0-t)Λ-(p)exp{ip(x-x0)}]
を得ます。
ところで,Σr=14εrw(r)α(p)w(r)~β(p)=δαβ or
Σr=14εrw(r)(p)w(r)~(p)=1ですから,
Λ+(p)Σr=14εrw(r)(p)w(r)~(p)
=Σr=12w(r)(p)w(r)~(p)
=Λ+(p),
Λ-(p)Σr=14εrw(r)(p)w(r)~(p)
=-Σr=34w(r)(p)w(r)~(p)
=Λ-(p) です。
故に,規格化された波動関数を,
ψp(r)(x)≡(2π)-3/2(m/E)1/2w(r)(p)exp{-iεrp(x-x0)}
とおくと,
(2π)-3(m/E)Λ+(p)exp{-ip(x-x0)}
=Σr=12ψp(r)(x)ψp(r)~(x0),
-(2π)-3(m/E)Λ-(p)exp{-ip(x-x0)}
=Σr=34ψp(r)(x)ψp(r)~(x0) となります。
したがって,SF(x-x0)
=-iθ(t-t0)∫d3pΣr=12ψp(r)(x)ψp(r)~(x0)
+iθ(t0-t)∫d3pΣr=34ψp(r)(x)ψp(r)~(x0)
を得ます。
そこで,任意の正エネルギー解を,
ψ(+)(x)≡∫d3pΣr=12Cr(p)ψp(r)(x),
任意の負エネルギー解を,
ψ(-)(x)≡∫d3pΣr=34Cr(p)ψp(r)(x)とおきます。
すると,w(r)+(εrp)w(r')(εr'p)=(E/m)δrr' or
w(r)+(p)w(r')(p)=(E/m)δrr'によって,
ψp(r)+(x)ψp(r')(x)=(2π)-3δrr' です。
また,∫d3r0(2π)-3exp{-iεr(p'-p)x0}
=δ(p'-p)exp{-iεr(p0'-p0)t0}ですから,
∫d3r0∫d3pΣr=12ψp(r)(x)ψp(r)~(x0)γ0ψ(+)(x0)
=Σr,r'=12∫d3pd3p'Cr'(p')ψp(r)(x)∫d3r0(2π)-3
(m2/EE')1/2w(r)+(p)w(r')(p')exp{-iεr(p'-p)x0}
=Σr,r'=12∫d3p(m/E)Cr'(p)ψp(r)(x)w(r)+(p)w(r')(p)
=Σr=12∫d3pCr(p)ψp(r)(x)=ψ(+)(x)
を得ます。
したがって,θ(t-t0)ψ(+)(x)
=i∫d3r0SF(x-x0)γ0ψ(+)(x0)が成立します。
同様にして,θ(t0-t)ψ(-)(x)
=-i∫d3r0SF(x-x0)γ0ψ(-)(x0) も成立します。
これらは,SF(x-x0)が正エネルギー解ψ(+)(x0)を時間
の前方(=未来)へ,負エネルギー解ψ(-)(x0)を時間の後方
(=過去)へ運ぶことを明示しています。
SF(x-x0)は自由電子のFeyman-propagater(伝播関数)として
知られています。
これは,最初1942年に,Stükelbergによって陽電子理論に導入され
ました。
そして,1948年には,Feynmanによっても独立に導入されました。
Feynmanはそれを広範囲にわたって実際の計算に適用しました。
自由伝播関数SF(x-x0)から,正確で完全なGreen関数,そして,
S行列要素,つまり相互作用の力場が存在する場合の電子や陽電子
の種々の散乱過程に対する振幅を作ることができます。
このことを遂行するため,前の非相対論的扱いを書き直します。
まず,電磁相互作用のみ存在する場合の正確なFeyman-propagater
(伝播関数)SF'(x;x0)は,
[iγμ(∂/∂xμ)-eγμAμ(x)-m]SF'(x;x0)
=δ4(x-x0) を満たします。
これと,前に求めた式:{i(∂/∂t)-H0(x)}G(x;x0)
=∫d4x1δ4(x-x1)[δ4(x1-x0)+V(x1)G(x1;x0)],
および,G(x;x0)
=∫d4x1G0(x;x1)[δ4(x1-x0)+V(x1)G(x1;x0)]
=G0(x;x1)+∫d4x1G0(x;x1)V(x1)G(x1;x0)
を利用します。
つまり,上の表現で{i(∂/∂t)-H(x)}γ0,V(x1)γ0を,
それぞれ,(iγμ∂μ-m),-eγμAμ(x)に置き換え,
G0(x;x0),G(x;x0)を,それぞれ,
SF(x-x0),SF'(x;x0) に置換します。
すると,{i(∂/∂t)-H0(x)}G(x;x0)
=∫d4x1δ4(x-x1)[δ4(x1-x0)+V(x1)G(x1;x0)]は,
(iγμ∂μ-m)SF'(x;x0)
=∫d4yδ4(x-y)[δ4(y-x0)+eγμAμ(y)SF'(y;x0)
となります。
これとδ4(x-y)=(iγμ∂μ-m)SF(x-y)より,
(iγμ∂μ-m)SF'(x;x0)
=(iγμ∂μ-m)[SF(x-x0)
+e∫d4ySF(x-y)γμAμ(y)SF'(y;x0)]
が成立します。
すなわち,SF'(x;x0)=SF(x-x0)
+e∫d4ySF(x-y)γμAμ(y)SF'(y;x0)
が成立します。
また,Dirac方程式;(iγμ∂μ-m)Ψ(x)=eγμAμ(x)Ψ(x)
の正確な解で,Feynmanの境界条件を満たすΨ(x)を考えます。
先述したように,相互作用のない自由伝播関数は,
SF(x-x0)
=-iθ(t-t0)∫d3pΣr=12ψp(r)(x)ψp(r)~(x0)
+iθ(t0-t)∫d3pΣr=34ψp(r)(x)ψp(r)~(x0)
で与えられます。
そこで,ψ(x0)が正負の両振動数成分を含む場合でも,
t>t0ではψ(x)は自由電子の正振動数成分のみの重ね合わせ
としてψ(x)=i∫d3r0SF(x-x0)γ0ψ(x0)と表わされます。
一方,Ψ(y)=lim t0→-∞ i∫d3r0SF'(y;x0)γ0ψ(x0)
です。
そこで,SF'(x;x0)
=SF(x-x0)+e∫d4ySF(x-y)γμAμ(y)SF'(y;x0)
により,
Ψ(x)=ψ(x)+e∫d4ySF(x-y)γμAμ(y)Ψ(y)
です。
他方,t<t0ではψ(x)は自由電子の負振動数成分のみの
重ね合わせとして,ψ(x)=-i∫d3r0SF(x-x0)γ0ψ(x0)
と表現され,
Ψ(y)=lim t0→ ∞ (-i)∫d3r0SF'(y;x0)γ0ψ(x0)
です。
よって,いずれの場合も、
Ψ(x)=ψ(x)+e∫d4ySF(x-y)γμAμ(y)Ψ(y)
なる同じ表現が得られます。
そして,Ψ(x)=ψ(x)+e∫d4ySF(x-y)γμAμ(y)Ψ(y)
は,未来t>t0では正振動数成分のみ,過去t<t0では負振動数
成分のみを含みます。
すなわち,t→ ∞ では,
Ψ(x)-ψ(x)=∫d3pΣr=12ψp(r)(x)[-ie∫d4yψp(r)~(y)
γμAμ(y)Ψ(y)],
および,t→-∞ では,
Ψ(x)-ψ(x)=∫d3pΣr=34ψp(r)(x)[+ie∫d4yψp(r)~(y)
γμAμ(y)Ψ(y)] です。
[ ]の中は,いずれもp,rに依存するc-数です。
こうして,電磁場Aμ(y)による散乱では,"散乱後(未来)t→ ∞
には電子は決して負エネルギーの海に落ちないという空孔理論
の要請"に従う散乱定式化が得られました。
まだ,満たされてない正エネルギー状態のみを取ることができる
のです。
今日はここまでにします。
参考文献:J.D.Bjorken & S.D.Drell "Relativistic Quantum Mechanics" (McGraw-Hill)
PS:今6/8(火)22時半です。
今日も,ちゃんと椎名町駅近く(目白5丁目)で18:45~20:45
の手話講習会(第6回)(私は4回目)を受けてきました。
そろそろ,クラスに馴染んできて楽しいです。
(金払って飲み屋に行かなくても話相手がたくさんいるし。)
今日は往きはJR山手線で巣鴨→目白,都バスで目白→聖母病院,
帰りは西武線で椎名町→池袋,都バスで池袋→西巣鴨,都営三田線
で西巣鴨→巣鴨のコースでした。
都営は無料なのですが,往きはノンビリ都バスで巣鴨→池袋だと
時間かかって遅れる可能性があるので,このコースがいいかも
知れません。
PS2:いくらケンカが強いから,いくら頭がいいからといっても
人は決して神ではない!!
増長している私,あなたのそばにもきっと自分の器,裁量を
はるかに超えた,どうしようもないモンスターがいるはずだ。。
人間とは,子供とは,大人とは,男とは,女とは,年寄りとは,
こういうものだ。。と狭い固定観念で上から目線で決め付け
てはいけない。。。
上には上の例外,突然変異のモンスター,ミュータントがいる。。
GTOでも"ごくせんのヤンクミ"でもままならない子供とかね。
それでもなお,無常である,滅びるが故に救いはある。
殺されてもひたすら愛するとか。。
↑ ※自分でも何を言いたいのか?わからない。
何となく浮かんだ啓示か,散文詩のような。。
何故か,私の中のモンスターもあばれているよ。。
| 固定リンク
「115. 素粒子論」カテゴリの記事
- くりこみ理論(第2部)(2)(2020.12.30)
- 物理学の哲学(15)(終)(アノマリー)(2020.11.03)
- 物理学の哲学(14)(アノマリー)(2020.10.28)
- 物理学の哲学(13)(アノマリー)(2020.10.10)
- 物理学の哲学(12)(アノマリー)(2020.10.08)
「111. 量子論」カテゴリの記事
- クライン・ゴルドン方程式(8)(2016.09.01)
- クライン・ゴルドン方程式(7)(2016.08.23)
- Dirac方程式の非相対論極限近似(2)(2016.08.14)
- Dirac方程式の非相対論極限近似(1)(2016.08.10)
- クライン・ゴルドン方程式(6)(2016.07.27)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント