共形場理論(3)
共形場理論の続きです。
1.4 頂点作用素
無限個の変数t=(t0,t1,t2,..),複素パラメータk,およびzを用意します。
そして,tの関数に作用する頂点作用素(vertex operator):Vk(z)を次式で定義します。
すなわち,Vk(z)≡Vk-(z)Vk+(z);Vk-(z)≡exp(kΣn=0∞zntn),Vk+(z)≡exp{kΣn=0∞un(z)∂/∂tn}です。ただし,u0(z)≡logz,un(z)≡z-n/n(n>0)です。
un(z)はzの対数:log(z-w)のwによるベキ級数展開をlog(z-w)=Σn=0∞un(z)wnと表現したときの展開係数です。
Vk(z)は掛け算作用素部分Vk-(z)が左側に,微分作用素部分Vk+(z)が右側にくる正規積(normal-ordering)の形です。
しかし,2つの頂点作用素の積:Vl(w)Vk(z)=Vl-(w)Vl+(w)Vk-(z)Vk+(z)を考えると,中央のVl+(w)Vk-(z)が正規積の順序になっていません。
そして,Vl+(w)Vk-(z)=exp{lΣm=0∞um(w)∂/∂tm}exp(kΣn=0∞zntn)=exp{klΣm=0∞um(w)zm}[exp(kΣn=0∞zntn)exp{lΣm=0∞um(w)∂/∂tm}]です。
右辺,最初の因子はexp{klΣm=0∞um(w)zm}=exp{(kl)log(w-z)}=(w-z)klですから,Vl+(w)Vk-(z)=(w-z)klVk-(z)Vl+(w)と書けます。
したがって,Vl(w)Vk(z)=(w-z)kl:Vl(w)Vk(z):です。
この証明をよりスマートに書くと次のようになります。
(証明):Vl+(w)=exp(A),Vk-(z)=exp(B),A≡lΣm=0∞um(w)∂/∂tm},B≡kΣn=0∞zntnと置くとき[A,B]=klΣm=0∞um(w)zm=(kl)log(w-z)です。
それ故,exp(A)exp(B)=exp([A,B])exp(B)exp(A)=(w-z)klexp(B)exp(A)が得られます。(証明終わり)
同様な計算の連続により,一般的公式:Vk1(z1)..VkN(zN)=Π1≦i<j≦N (zi-zj)kikj:Vk1(z1)..VkN(zN):が得られます。
私自身が忙しいということもあり,このシリーズは少しずつゆっくり進むことにします。
参考文献:山田泰彦 著「共形場理論入門」(培風館)
PS:7/29に南大塚一丁目に引越し予定です。昨日まで脱水症状でしたが2軒ハシゴで治りました。
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コメント
どもTOSHIです。
タイプミスよりもっと大きい勘違いのようです。ご指摘ありがとうございます。
TOSHI
投稿: TOSHI | 2010年7月21日 (水) 11時39分
この頂点というのは、ファインマン図の vertex に関連するということですかね。
何となく分かる気がします。
さて、タイプミスではないかと思われるのは、次の点でした。
>そして,Vl+(w)Vk-(z)=exp{lΣm=0∞um(w)∂/∂tm}exp(kΣn=0∞zntn)=exp(kΣn=0∞zntn)exp{lΣm=0∞um(w)∂/∂tm}+exp{klΣm=0∞um(w)zm}です。
という式の最右辺の「+」は「×」の間違いではないでしょうか?
>同様な計算の連続により,一般的公式:Vk1(z1)..VkN(zN)=Πi≦i<j≦N (zi-zj)kikj:Vk1(z1)..VkN(zN):が得られます。
Πの条件は「i≦i<j≦N」→「1≦i<j≦N」ではないでしょうか?
投稿: T_NAKA | 2010年7月21日 (水) 08時57分