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2010年7月

2010年7月30日 (金)

デジャブ(既死感?)

 雨の朝,目の前を高速で車が走っていく。

 

 バス停で母の手を離れた小児が遊んでいる様を見ていると,

 次の瞬間には私が車にはねられて死んでいる。。

 というような予知夢?が頭に浮かぶ。

 

 別に,何か死ぬ時と場所を探しているわけじゃないが。。

 マイナス1よりも,プラスマイナスゼロの方が,まだましだろう。

 

PS1以下は.唄(歌詞)の私が泣けるフレーズ集です。

 

 (※番号は,別に泣ける順のランクではありません。)

 

1. Freedom's  just another word for  nothin' left  to lose

  And nothin' ain't worth nothin' but it's free 

   Feeling good was easy Lord ..

 

 Freedom's  just another word for  nothin' left to lose

   And nothin' left is all he left for me

 

 (※Janis Joplin 「Me and Bobby Macgee」から。)

 

 外国語でも日本語でも,なぜか「失なうものは何もない。」

というフレーズ聴くと涙が出てきます。

 

 2.あなた,最後のわがまま贈りものをねだるわ。

   ねえ,涙拭く木綿のハンカチーフください。ハンカチーフください。

 

 (※太田裕美が唄う 「木綿のハンカチーフ」から。)

 

 うん,悲しくて,感情移入してしまう失恋の唄です。。。

 

3. No.1にならなくてもいい,もともと特別なOnly one。。

 

 (※慎原j敬之作でスマップも歌う 「世界に一つだけの花」から。)

 

 デカルトではないけど,自分(エゴ)こそが全てです。

 

 約70億もいても,他に1つとしてそっくり同じものは無い希少価値のある

 存在ですね。。

 

4.. チューリップのアップリケ付いたスカート持ってきて。。

  お父ちゃんもときどき買うてくれはるけど,

  うち,やっぱりお母ちゃんに買うてほしい。。

 

  (※岡林信康 「チューリップのアップリケ」から。)

 

  かつての靴職人というのは?。。。。

 

5. 泣いて帰った道すがら,母ちゃんの働くとこを見た。

 

  慰めてもらおう。抱いてもらおうと息をはずませ帰ってはきたが,

  母ちゃんの姿見たときに泣いた涙も忘れ果て。。

 

  (※美輪(丸山)明弘 「ヨイトマケの唄」から。。)

 

 etc.etc.。。。

 

 PS2:私はキモいロリコンオヤジであり,また,成人なら白痴女性

 が好みであるというのは,実は共通していて,こんな歳になっても

 未だに成熟した大人の女性を相手にする自信がない,怖い

 ということだろうか?

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散乱の伝播関数の理論(18)(応用4)

 散乱の伝播関数の理論の続きです。

 

 今日は自由電子による光子の散乱(Compton散乱)の微分断面積の

 最低次の計算を行います。

 

 まず,すぐ前の電子による制動輻射(Bremsstrahlung)の

 Feynman-diagramを再掲します。

 

 すなわち,電荷:-Ze>0 を源とする静電Coulomb場:

 A0Coul(x)=-Ze/(4πε0||)

 =-Ze∫d3{exp(iqx)/||2}の中を電子が通過する際に

 1光子を放出する2次のグラフ:下図7.8です。 

  

 このグラフで静電Coulomb場の源:-Zeと交換される仮想光子

 が実光子である場合,

 

 つまり正電荷の原子核に相当する源:-Zeは存在せず,単に

 自由電子が光子を吸収して放出する過程を想定すると,これが

 記述するのは,"自由電子による光子の散乱=Compton散乱"です。

  

§7.7 Compton Scattering(コンプトン散乱)

 

 前の制動輻射において与えたのと同じ平面波の場:

 Aμ(x;k)=(2|0V)-1/2

 εμ{exp(-ikx)+exp(ikx)}を電子線の1つの頂点で

 吸収される入射光子とします。

 

一方,運動量k'μ,偏光ε'μを持つ別の平面波:

A'μ(x;k')=(2|'|ε0V)-1/2

ε'μ{exp(-ik'x)+exp(ik'x)}が第2の頂点で放出

されて終光子になるとします。

 

 この過程は,k+pi=k'+pfなる関係によって,エネルギー・

 運動量保存を示す光子の自由電子による散乱,

 つまり,Compton散乱として知られています。

 

 このCompton散乱の2次のS行列要素は,先の制動輻射のS行列要素

 Sfi=e2∫d4xd4yψ~f(x)

 [-i(x;k)iSF(x-y)(-iγ0)A0Coul(y)

 +(-iγ0)A0Coul(x)iSF(x-y){-i(y;k)}]ψi(y)

 において,γ00Coul(y)を'(y;k')に,γ00Coul(x)を

 '(x;k')に置き換えるだけ異なります。

 

 制動輻射の2次のS行列要素の運動量表示は,

 Sfi{-Ze3/(ε0V)3/2}2πδ(Ef+k0-Ei)(2k0)-1/2

 {m2/(Efi)}1/2(1/||2)

 u~(pf,sf)[(-iε){i/(f-m)}(-iγ0)

 +(-iγ0){i/(i-m)}(-iε)]u(pi,si)

 でした。

 

この式から,電磁ポテンシャルの置換:γ00Coul 'によって,

Compton散乱の2次のS行列要素SfiCompが得られます。

 

すなわち,SfiCompの運動量表示として,

fiComp={e2/(ε02)}(2π)4δ4(pf+k'-pi-k)

(4k0k'0)-1/2{m2/(Efi)}1/2

u~(pf,sf)[(-iε'){i/(i-m)}(-iε)

+(-iε){i/(i'-m)}(-iε')]u(pi,si)

を得ます。

 

これは,以下の図7.10のFeynman-diagramに対応しています。

このSfiCompの表現式からは,他のk,またはk'の符号が異なる3つ

の追加項を落としました。

 

これらの追加項は,Aμ(y;k)とA'μ(x;k')の積とその交換

グラフに対応する交代項:A'μ(y;k')とAμ(x;k)の積によ

る計2×4個の項のうち,

 

exp(iky)exp(-ik'x),exp(-ik'y)exp(ikx)に比例する項,

exp(iky)exp(ik'x),exp(ik'y)exp(ikx)に比例する項, 

および,exp(-iky)exp(-ik'x),exp(-ik'y)exp(-ik'x)

に比例する項に由来するものです。

 

これらのうち,前の2×2個の項は,Compton散乱の4元運動量保存

条件として,pi=pf+k+k',またはpf=pi+k+k'を要求し.

これに対応するδ4関数に導くものです。

 

しかし,こうした条件は1つの自由電子が1つの自由電子と2つの

光子に崩壊する過程,またはその逆反応に対応する条件で,これを

満たすことは運動学的に不可能です。

 

(※例えば,後述する対生成は光子の電子,陽電子対への崩壊に相当

 しますが,これも1つの光子だけからの生成は運動学的に不可能

 で,2つ以上の光子からの生成のみ可能です。※)

 

残る第3の項の対は,SfiCompの表現でkとk'を入れかえた項の対

に相当します。

 

これは入射光子がk'で終光子がkの散乱に対応します。

  

この項は,δ4(pf+k-pi-k')に比例するため,この項がゼロで

ない場合が,上記のSfiCompの右辺の因子:δ4(pf+k'-pi-k)

ゼロでない場合と共存することは有り得ません。

 

しかし,SfiCompが(k,ε)⇔(-k',ε')なる交換に対して対称で

あることに着目すれば,

 

入射光子がk'で終光子がkの場合のCompton散乱の断面積も

同じ値を与えることがわかります。

 

これは,2体散乱のCrossing Symmetry(交叉対称性)として知られて

いる性質ですが,実は相互作用の2次の摂動近似だけでなく摂動の

あらゆる次数で成立する正確な対称性です。

 

この交叉対称性は,素粒子論の多くの場合に成立して重要な役割を

果たすもので,"詳細釣り合いの原理(detailed valance)"と呼ばれ

ます。

 

さて,具体的なCompton散乱の2次の散乱断面積の計算は,これまで

幾つかの例において展開してきたラインに沿って実行できます。

 

ただし,スピノール(spinor)代数に関連する因子の計算については

ややハードルが高いです。

 

まず,Compton散乱の2次のS行列要素fiCompを再掲します。

  

fiComp={e2/(ε02)}(2π)4δ4(pf+k'-pi-k)

(4k0k'0)-1/2{m2/(Efi)}1/2u~(pf,sf)

[(-iε'){i/(i-m)}(-iε)

+(-iε){i/(i'-m)}(-iε')]u(pi,si)

です。

 

このS行列要素の絶対値の平方:|SfiComp|2をTV=(2π)4δ4(0)

で割って単位体積,単位時間当たりの遷移率とします。

 

そして,散乱断面積の定義に従って,これを入射粒子の流束(flux):

||/Vで割り,さらに"単位体積に存在する平均の標的粒子数=

標的密度:(1/V)"で割ります。

 

最後に,位相空間体積:{V2/(2π)6}d3f3'にわたる総和

(積分)を取ると散乱断面積:dσが得られます。

 

制動輻射の断面積の式:

dσ={Z262/(2ε030fi|i|)}

∫(|u~(pf,sf)[ε{1/(f-m)}γ0

γ0{1/(i-m)}ε]u(pi,si)|2/||4)(2π)-5

δ(Ef+k0-Ei)d33f

を参考にしてCompton散乱のdσを求めます。

 

Compton散乱では,dσ={e4m/(2k0ε02i||)}

∫(|u~(pf,sf)[ε'{1/(i-m)}ε

ε{1/(i'-m)}ε']u(pi,si)|2)(2π)-2

δ4(pf+k'-pi-k)d3f(m/Ef)d3'{1/(2k'0)}

となります。

 

ここでまず,初期の標的電子が静止している実験室系:

iμ=(Ei,i)=(m,0)を準拠系に採用すると,

||=c=1ですから,m/(2k0i||)}=1/(2k)です。

 

ただし,k≡||=k0です。

 

散乱の伝播関数の理論(13)(応用2-1)」で書いたように,

3/(2E)=∫0dp0δ(p2-m2)d3

=∫-∞4θ(p0)δ(p2-m2);E=(2+m2)1/2

なる有用な公式があります。

 

これを利用し,散乱光子の立体角Ωk'と実験室系で'のなす

θを固定して,dσの右辺の因子:

δ4(pf+k'-pi-k)d3f(m/Ef)d3'{1/(2k'0)}

をk'≡|'|=k'0 で積分します。

 

すると,∫d3f(m/Ef)d3'{1/(2k')}δ4(k+pi-k'-pf)

=(1/2)dΩk'0k'dk'∫(m/Ef)d3fδ4(pf+k'-pi-k)

=mdΩk'0k'dk'

∫θ(k+m-k')δ({k+pi-k'}2-m2)

=mdΩk'0k+mk'dk'δ({2m(k-k')-2kk'(1-cosθ)})

=dΩk'(k'/2){1+(k/m)(1-cosθ)}

を得ます。

 

ただし,最後の式では,k'=k/{1+(k/m)(1-cosθ)}

です。

 

すなわち,∫d3f(m/Ef)d3'{1/(2k')}δ4(k+pi-k'-pf)

={k'2/(2k)}dΩk'であり,k'=k/{1+(k/m)(1-cosθ)}

=k/{1+(2k/m)sin2(θ/2)} です。

 

したがって,dσ={e4m/(2k0ε02i||)}

∫(|u~(pf,sf)[ε'{1/(i-m)}ε

ε{1/(i'-m)}ε']u(pi,si)|2)(2π)-2

δ4(pf+k'-pi-k)d3f(m/Ef)d3'{1/(2k'0)}

において,Ω=Ωk'と書きe2=4πε0αを用いると,

次のようになります。

 

すなわち,dσ/dΩ

=α2(k'/k)2|u~(pf,sf)[ε'{1/(i-m)}ε

ε{1/(i'-m)}ε'u(pi,si)|2

です。

 

これは,始状態,終状態で電子と光子が共に偏極している場合の

Compton散乱に対する微分断面積を表わしています。

 

ここで,準拠系では初期と終期に光子が横方向に偏極していると

して行列要素SfiCompを単純化します。

 

すなわち,εμ=(0,ε);εk=0,ε'μ=(0,ε');

εk'=0 とします。

 

このとき,piμ=(Ei,i)=(m,0)なので,εpi=ε'pi=0

も成立します。

また,スピン行列γμの反交換性から,

iε=2piε-εpi=-εpi であり,

同様にiε'=-ε'i です。

 

そこで,自由粒子のDirac方程式から,

(i+m)εu(pi,si)=-ε(i-m)u(pi,si)=0

が成立します。

 

同様に(i+m)ε'u(pi,si)=0 です。

また,kε=-εk,kε'= -ε'k です。

 

スピノル因子の寄与は,

u~(pf,sf)[ε'{1/(i-m)}εε{1/(i'-m)}ε']

u(pi,si)

=u~(pf,sf)[ε'(i+m)ε/(2kpi)

ε(i'+m)ε'/(-2k'pi)]u(pi,si) です。

  

これに上記の横波光子の性質を用いると,

-u~(pf,sf)[ε'εk/(2kpi)+εε''/(2k'pi)]u(pi,si)

と単純化されます。

 

これをdσ/dΩ

=α2(k'/k)2|u~(pf,sf)[ε'{1/(i-m)}ε

ε{1/(i'-m)}ε']u(pi,si)|2に代入し,さらに

終電子spin:sfについて総和し初期電子spin:siについて平均

します。

 

すると,dσAVE/dΩ=(1/2)Σsi,sf(dσ/dΩ)

={α2/(8m2)}(k'/k)2Tr[(f+m){ε'εk/(2kpi)

εε''/(2k'pi)}(i+m)]{kεε'/(2kpi)

'ε'ε/(2k'pi)}]

を得ます。

 

そして,トレース定理から,

Tr[(f+m)ε'εk(i+m)kεε'

=Tr[εε''(i+m)kεε'(f+m)

=Tr[(f+m)εε''(i+m)kεε'です。

 

以下トレースの途中計算を省略すると,

Tr[(f+m){ε'εk/(2kpi)+εε''/(2k'pi)}

(i+m)]{kεε'/(2kpi)+'ε'ε/(2k'pi)}]

=2{k'/k+k/k'+4(εε')2-2}

を得ます。

 

結局,Compton散乱に対する有名な

Klein-Nishina(クライン・仁科)の公式:

dσAVE/dΩ={α2/(4m2)}(k'/k)2

{k'/k+k/k'+4(εε')2-2}

が得られます

 

この2次のCompton散乱の断面積は,軟光子弾性散乱:

k=k'0 の極限では古典Thomson散乱(トムソン散乱)の

微分断面積の公式:(dσAVE/dΩ)k→0=(α/m)2(εε')2

になります。

 

ここで,電子質量mに対しては,

α/m=e2/(4πε0mc2)~ 2.8×10-13cmですが,

これはいわゆる古典電子半径です。

 

また,散乱角θ→ 0 の前方散乱ではk→k'であり,低エネルギー

(k~0)だけでなく全てのエネルギーのkに対してCompton散乱

断面積が正確にThomson散乱断面積に等しくなることがわかります。

 

最後に,個々の断面積を終状態光子のspin(偏光)にわたって総和し,

始状態光子のspinについて平均すると,散乱光子が偏光していない

場合の断面積:dσ~/dΩを得ることができます。

 

それを得る手順は古典電磁気学における光の散乱と全く同じであり,

その結果を借りると,

dσ~/dΩ={α2/(2m2)}(k'/k)2(k'/k+k/k'-sin2θ)

です。

 

※(注18-1):'のなす角がθのとき,一般に,

^'=sinθcosφε(1)+sinθsinφε(2)+cosθ^と書くことが

できます。ただし,^≡/k,^'≡'/k'です。

 

また,ε(1)'=lε(1)+mε(2)+n^;l2+m2+n2=1

とおけば.ε(1)'^'=0 より

lsinθcosφ+msinθsinφ+ncosθ=0

です。

 

(ε(1)',ε(2)',^')が右手系の正規直交基底をなすという条件

から,ε(2)'=^'×ε(1)'

=(nsinθsinφ-mcosθ)ε(1)+(lcosθ-nsinθcosφ)ε(2)

+(msinθcosφ-lsinθsinφ)

です。

 

故に,全ての偏光(spin)にわたる総和:Σε,ε'(εε')2は,

(ε(1)ε(1)')2+(ε(1)ε(2)')2+(ε(2)ε(1)')2+(ε(2)ε(2)')2

=l2+(nsinθsinφ-mcosθ)2+m2+(lcosθ-nsinθcosφ)2

=1+cos2θとなります。

 

そこで,始光子偏光状態による平均としては,

(1/2)Σε,ε'(εε')2=(1+cos2θ)/2です。

 

ε=(0,ε),ε'=(0,ε')より(εε')2=(εε')2なので,

(1/2)Σε,ε'(εε')2=(1+cos2θ)/2 を得ます。

 

(注18-1終わり)※

  

微分断面積:dσ~/dΩ

={α2/(2m2)}(k'/k)2(k'/k+k/k'-sin2θ)は光子の立体角

Ωについて容易に積分されて全断面積σ~が得られます。

 

すなわち,σ~=(πα2/m2)∫-11d(cosθ)

{(k'/k)2(k'/k+k/k'-sin2θ)}

=(πα2/m2)∫-11dz[1/{1+(k/m)(1-z)}3

+1/{1+(k/m)(1-z)}-(1-z2)/{1+(k/m)(1-z)}2]

です。

 

これから,低エネルギー:(k/m)→ 0 では全断面積は

σ~~ (πα2/m2)∫-11(1+z2dz=(8π/3)(α/m)2となります。

これはThomson散乱の断面積です。

 

一方,高エネルギー:k/m>>1では,全断面積は

σ~~{πα2/(km)}{ln(2k/m)+1/2+O((m/k)ln(k/m)}

となります。

 

右辺の支配的な対数項は被積分関数の[]の中の第2項:

1/{1+(k/m)(1-z)}に由来します。

 

※(注18-2):ζ=1-zとおけば,

(πα2/m2)-1σ~

=∫02dζ{(1+kζ/m)-3+(1+kζ/m)-1

-(ζ2-2ζ)(1+kζ/m)-2}

=[{-m/(2k)}(1+kζ/m)-2+(m/k)ln(1+kζ/m)

+(m/k)2ζ-{2(m/k)2+(m/k)3}(1+kζ/m)-1

-2{(m/k)2+(m/k)3}ln(1+kζ/m)]02 です。

 

すなわち,σ~={πα2/(km)}

[{1-2m/k-2(m/k)2}ln(1+2k/m)+1/2+4m/k+(m/k)2

-(1+2k/m)-2] を得ます。

 

そこで,k/m>>1のとき,右辺の[ ]の中で(m/k)の2次の項を

無視すると,

 

σ~ {πα2/(km)}{(1-2m/k)ln(1+2k/m)+1/2+4m/k

-(1+2k/m)-2} となります。

  

故に,

σ~~ {πα2/(km)}{ln(2k/m)+1/2+O((m/k)ln(k/m)}

が得られました。(注18-2終わり)※

 

今日はここまでにします。

 

参考文献:J.D.Bjorken & S.D.Drell "Relativistic Quantum Mechanics"(McGrawHill)

 

 どういうやむにやまれぬ理由か?はわからないが,自分の子供殺すくらい

 なら オレにくれ。。育児ノイローゼコミで引き受けて,最後の命けずって育て

 たるサカイ。。。

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2010年7月26日 (月)

近況雑感(天上天下唯我独善!!)

 さて,私は相も変わらずの唯我独善ブリです。

 自分だけは絶対に正しく他人は間違っているカワイソウな存在なので正してやろう神のように救ってやろうなどとオゴっている,自己中モノですが,まあ,自分の日記の中では許される範囲のことでしょう。 

 今やクソジジイであり,思いやりから叱ったり諭したりしてくれる親のような存在などは願ってもいないのですから,トキドキ自省する冷静さを取り戻す以外にはどうしようもありません。

 しかし,頑固な無用のプライドなどもあるようで自省するようなタマじゃないのですね,コレが。

 実はジャマだから早くどっかへ行けよと思われているのに気付かず,オレは人気者で望まれてるなどと勘違いしてるシアワセな裸の王様なんですな。。(最近よく思っていることです。フン,またヒガミ的な自己分析かよ。)

 日曜日は雨だったのですが,7月23(金),24(土),25(日)は毎年恒例の巣鴨盆踊り(2008年,および2009年)でした。金曜日にはカメラを持ってたので撮影しました。

     

 

   

PS:7月29日に近くに引越しするため,準備に大忙しです。PCも移動しネットにもアクセスできなくなるため27日から当分ブログは書けません。

 のはずだったのですが。。

 手違いで引越しは8月3日に延期になりました。鍵は7月29日に貰うけど。。

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散乱の伝播関数の理論(17)(応用3-2)

 散乱の伝播関数の理論,制動輻射(Bremsstrahlung)の続きです。

 

さて,弾性散乱断面積因子:(dσ/dΩf)elasticのe2のオーダー

の輻射補正は次の2つのタイプの項から生じます。

 

すなわち,Coulomb場による電子2次散乱において,電子-陽子散乱

図7.4,図7.5に対応する項 → 下の参考図  

および,電子の輻射場を媒介とする自分自身との相互作用

の項です。

 

 後者の自己相互作用の寄与に対応するFeynman-diagramは下の

 図7.9示すように,電子から出発した2つの仮想光子

 (virtual photons)のうちの1つが,Coulomb源(=陽子)に着地

 する代わりに電子自身に戻ってくるようなグラフです。   

 実は,これらのグラフによる遷移振幅を計算すると,これも発散し,

 丁度,先のk=0 の実光子による赤外発散(infrared catastrophe)

 を正確に相殺する寄与を与えることがわかり,

  

 結局,これによってe2ののオーダーでの赤外発散の困難は除去

 されます。

  

 しかし,そうした項を計算するという非常に扱いにくい課題に取り

 組むには,より多くの訓練,経験で武装する必要があります。

 

 ここでは,これ以上深入りしません。

 

(※これら赤外発散の除去についての本ブログでのレヴューは,

 2006年12/16の記事「電流によって発生す光子の個数分布」,

 2006年12/19の記事「赤外発散の問題(エネルギーゼロの光子)

 の中などに示唆しています。よかったら,ご参照ください。※)

 

 さて,軟光子(soft-photon)制動輻射の微分断面積の式:

 dσ/dΩf ~ (dσ/dΩf)elastic{(2π)-32/(2ε0)}

kdkdΩk{(εpf)/(kpf)-(εpi)/(kpi)}2θ(Ei-m+k)

を離れる前に,この式で弾性極限のk=0 を除く光子のエネルギー

の区間ΔEに対する断面積の値を評価します。

 

 まず,Feynmanによる非常に便利な技巧を使って光子の偏極

 (polarization;偏光)にわたる総和を取ることから始めます。

 

 正確な散乱行列要素を再記すると,

 Sfi{-Ze3/(ε0V)3/2}2πδ(Ef+k0-Ei)(2k0)-1/2

 {m2/(Efi)}1/2(1/||2)

 u~(pf,sf)[(-iε){i/(f-m)}(-iγ0)

 +(-iγ0){i/(i-m)}(-iε)]u(pi,si)

 です。

 

 もしも,右辺の各項で因子ε=γμεμにおける光子の偏極(偏光):

 εμを4元運動量:kμに置き換えると,右辺は消えることに着目

 します。

 

これは,軟光子近似の断面積:

dσ/dΩf =(dσ/dΩf)elastic{(2π)-32/(2ε0)}

kdkdΩk{(εpf)/(kpf)-(εpi)/(kpi)}2θ(Ei-m+k)

においても正しい性質です。

 

 これらはカレントの保存:∂μμ0 からの帰結です。

 

 すなわち,カレント保存の運動量空間での表現:kμμ(k)=0

 に起因しています。

 

 あるいは,電磁場のゲージ不変性(gauge-invariance)から要求される

ことであると言ってもいいです。

  

何故なら,ゲージ変換(gauge transformatin):Aμ → Aμ-∂μΛ

の運動量空間での表現は,Aμ(k) → Aμ(k)+kμ{-iΛ(k)}

であり,場にkμに比例する因子を付け加えても最終の物理的結果

には何の変化も起こさないからです。

 

 この結果を利用するために,

 εμενμν{(εpf)/(kpf)-(εpi)/(kpi)}2

 と書きます。

  

 {(εpf)/(kpf)-(εpi)/(kpi)}2

 =εμ{pfμ/(kpf)-piμ/(kpi)}

 ×εν{pfν/(kpf)-piν/(kpi)}

 ですから,

 

 Jμν={pfμ/(kpf)-piμ/(kpi)}

 ×{pfν/(kpf)-piν/(kpi)} です。

  

このJμνは,確かにkμμν=kνμν=0 を満たします。

 

そして,εμενμν{(εpf)/(kpf)-(εpi)/(kpi)}2

はLorentzスカラーであって,εμはベクトルですから,Jμν

2階のテンソルです。

  

そこで,これらの表現は任煮のLorent系で共変的に評価できます。

 

特に,座標系の向きをkμ=(k0,k1,0,0);k0=k1=kとなる

ように取ります。

 

そして∂μμ0 or εμμ=0 ですから,A0(x)=0

となるようにして,横波:(x) (∇=0)の2つの独立な

偏光ベクトルが,ε(1)μ=(0,ε(1))=(0,0,1,0),および,

ε(2)μ=(0,ε(2))=(0,0,0.1)となるように座標系の空間軸を

選択します。

 

するとpolεμενμν=J22+J33=J00-J11-Jμμ

と書けます。

 

(※何故なら,Jμμ=ημνμν=J00-J11-J22-J33 です。)

 

ところが,kμμν=kνμν=0 であって,

μ=(k,k,0,0)より,kμ=(k,-k,0,0)

ですから,=J,Jμ0=Jμ1 です。

 

よって,J00=J11により,Σpolεμενμν=-Jμμです。

 

右辺-Jμμは,任意のLorentz系で一定のスカラーです。

 

こうして偏光の総和は明白に共変な表現に置換されました。

 

これは,単に,

ka(k)=kμμ(k)=0,kb(k)=kμμ(k)=0 を満たす

任意の保存カレントaμ(k),bμ(k)に対して,

Σpolμ(k)aμ(k)}{εν(k)aν(k)}=-abが成立する

という意味です。

 

そこで,Σpol{(εpf)/(kpf)-(εpi)/(kpi)}2

=Σpolμ{pfμ/(kpf)-piμ/(kpi)}]

×[εν{pfν/(kpf)-piν/(kpi)}]

=-pf2/(kpf)2+2(pfi)/{(kpf)(kpf)}-pi2/(kpi)2

=2(pfi)/{(kpf)(kpf)}-m2/(kpf)2-m2/(kpi)2

が得られます。

 

したがって,観測される全偏光成分の軟光子の総和としての

制動輻射断面積は,

dσ/dΩf =(dσ/dΩf)elastic{α/(4π2)}kdkdΩk

Σpol{(εpf)/(kpf)-(εpi)/(kpi)}2θ(Ei-m+k)

=(dσ/dΩf)elastic{α/(4π2)}kdkdΩk

[2(pfi)/{(kpf)(kpf)}-m2/(kpf)2-m2/(kpi)2]

θ(Ei-m+k)

となることがわかりました。

 

これを,全ての光子立体角Ωk,および,区間:

0<kmin≦k≦kmax<<Ei にわたるkで積分すると,

 

dσ/dΩf =(dσ/dΩf)elastic{α/(4π2)}

kminkmaxkdk∫dΩk

[2(pfi)/{(kpf)(kpf)}-m2/(kpf)2-m2/(kpi)2]

 

=(dσ/dΩf)elastic0α/π)ln(kmax/kmin)∫dΩk(4π)-1

[2(1-βfβi)/{(1-^βf)(1-^βi)}-m2/{Ef2(1-^βf)2}

-m2/{Ei2(1-^βi)2}]

を得ます。

 

ただし,βii/c,βff/cで,これらは今の自然単位(c=1)

では,入射電子と散乱電子の速度です。

  

そして,軟光子の極限:=0 ではβf=βiなので,これをβと書くと

βfβi=β2cosθ (θは電子の散乱角)です。

 

そして,∫dΩk(4π)-1[m2/{E2(1-^β)2}

=(m2/E2)(1/2)∫-11dz(1-βz)-2

=m2/{E2(1-β2)}=1です。

 

何故なら,β22/E2より,1-β2=m2/E2だからです。

 

一方,Feynmanによって導入され,開発されたもう1つのトリック

の助けで,∫dΩk(4π)-1[2(1-βfβi)/{(1-^βf)(1-^βi)}

も容易に評価できます。

 

すなわち,このトリックは,容易に確かめられるように,

01dx{ax+b(1-x)}-2=1/(ab) なる公式です。

 

そこで,

∫dΩk(4π)-1[2(1-βfβi)/{(1-^βf)(1-^βi)}

=2(1-β2cosθ)∫01dx∫dΩk(4π)-1

[1-^{βfx+(1-x)βi}-2

=2(1-β2cosθ)∫01dx[1-{βfx+(1-x)βi}2]-1

=2(1-β2cosθ)∫01dx{1-β2+4β2x(1-x)sin2(θ/2)}-1

を得ます。

 

したがって,低エネルギー散乱β<<1なら,

∫dΩk(4π)-1[2(1-βfβi)/{(1-^βf)(1-^βi)}

=2{1+(4/3)β2sin2(θ/2)}+O(β4) です。

 

一方,高エネルギー散乱:-q2>>m2,つまりm2/|q2|<<1の場合

なら,∫dΩk(4π)-1[2(1-βfβi)/{(1-^βf)(1-^βi)}

=2ln(-q2/m2)+O(m2/|q2|) です。

 

(注17-1):β<< 1 なら,

 {1-β2+4β2x(1-x)sin2(θ/2)}-1

 =1+β2-4β2xsin2(θ/2)+4β22sin2(θ/2)+O(β4)

 です。

 

 故に,cosθ=1-2sin2(θ/2)より,

 2(1-β2cosθ){1-β2+4β2x(1-x)sin2(θ/2)}-1

 =2{1+(4/3)β2sin2(θ/2)}+O(β4) です。

 

一方,軟光子極限:Ef=Ei=Eでは,

2=(pf-pi)2=-(fi)2=-4E2β2sin2(θ/2)

です。

  

そこで,||=βEより,-q2>>m2のように運動量遷移

(momentum transfer):qが非常に大きいというのは,

2>>m2を意味しており,このとき,E>>mです。

 

そこで,||=(E2-m2)1/2 ~ Eなので,

β=||/E ~ 1です。

 

正確な積分から,

2(1-β2cosθ)∫01dx{1-β2+4β2x(1-x)sin2(θ/2)}-1

=4(1-β2cosθ)[4β2sin2(θ/2){4β2sin2(θ/2)+4(1-β2)}]1/2

×ln|(4β2sin2(θ/2)+[4β2sin2(θ/2){4β2sin2(θ/2)

+4(1-β2)}]/2)/(4β2sin2(θ/2)-[4β2sin2(θ/2)

{4β2sin2(θ/2)+4(1-β2)}]1/2)| です。(数学公式集による。)

 

すなわち,2(1-β2cosθ)∫01dx

{1-β2+4β2x(1-x)sin2(θ/2)}-1

=4(1-β2cosθ)[4β2sin2(θ/2){4β2sin2(θ/2)+4(1-β2)}]-1/2

ln|(1+[1+(1-β2)/{β2sin2(θ/2)}]1/2)2β2sin2(θ/2)/(1-β2)|

となります。

 

ここで,δ21-β2<<1とおきます。すると,β2=1-δ2です。

 

故に,2(1-β2cosθ)∫01dx{1-β2+4β2x(1-x)sin2(θ/2)}-1

=4{2sin2(θ/2)+δ2cosθ}[1/{4sin2(θ/2)

+O(δ2)ln|{2+O(δ2)}2β2sin2(θ/2)/δ2|

=2ln|4β2sin2(θ/2)}/δ2|+O(δ2)

を得ます。

 

また,δ21-β2=1-2/E2=m2/E2であり,

O(δ2)=O(-m2/q2)ですから,

2(1-β2cosθ)∫01dx{1-β2+4β2x(1-x)sin2(θ/2)}-1

=2ln|42sin2(θ/2)]/m2|+O(δ2)

=2ln(2/m2)+O(-m2/q2)=2ln(-q2/m2)+O(m2/|q2|)

です。

 

(注17-1終わり)※

 

 こうして,軟光子放出の制動輻射の断面積は,

 

 非相対論的エネルギー(N.R)では,

 dσ/dΩf =(dσ/dΩf)elastic(2α/π)ln(kmax/kmin)

 {(4/3)β2sin2(θ/2)+O(β4)} となり,

 

 超相対論的エネルギー(E.R)では,

 dσ/dΩf =(dσ/dΩf)elastic(2α/π)ln(kmax/kmin)

 {ln(-q2/m2)-1+O(m2/|q2|)}

 となることがわかります。

  

 ここではこれ以上論じないですが,

 

 kmin→ 0 におけるln(kmax/kmin)因子の赤外発散を相殺して

 断面積の有限な値を得るために,因子(dσ/dΩf)elastic

 (dσ/dΩf)elastic→ (有限値)×{O(ln(kmax/kmin))}-1となる

ような弾性散乱の仮想光子輻射補正が必要です。

 

今日はここまでにします。

 

参考文献:J.D.Bjorken & S.D.Drell "Relativistic Quantum Mechanics"(McGraw-Hill)

 

PS:昨日は珍しく週末なのに,前夜,酒を飲み歩くことをしなくて,

 今朝7時頃に目が覚めて,体が元気であると感じました。

   

 そこで,急に将棋チェスネットの2チームが参加している社団戦

 の応援にでも行こうと思い立ち,開始時間の朝10時を目指して会

 場の浜松町へと向かいました。

  

 10時20分過ぎにやっと目的地に着いて,知っているメンバーを見

 つけたので観戦していました。

 

 7人対戦して4人勝てばチームは勝ちなので4人いれば参加可能

 ではあるのですが,どうもBチームは正式メンバーが5人しかいな

 いみたいなので急遽2局目から飛び入りしました。

  

 もう1人の飛び入りもあって,これは,将棋チェスネット1の方の

 メンバーのお子さんで小学2年生の男児です。

 

 実は,そんなこともあろうかと多少の色気もあって見に行ったの

 ですが,結局,久しぶりの緊張感にちょっとハマってしまいました。

 

 はじめの2番はすぐ負けましたが,最後の対戦だけは私の勝ちも

 あってチームが4対3勝ちしたので少し貢献できたようです。

 

 2次会は私はどうもおチャラケ気分の異端児なので,おジャマ虫

 だったかも知れませんが。。。

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2010年7月24日 (土)

散乱の伝播関数の理論(16)(応用3-1)

 散乱の伝播関数の理論の続きです。

 

 このシリーズ記事は6/24以来で,丁度1ヶ月の間があきました。

 

§7.6 Bremsstrahlung(制動輻射,または制動放射)

 

※まず,前節の電子-陽子散乱の高次補正のFeynman-diagram

 である図7.6,および図7.7を下に再掲します。※ 

    

 図7.6,図7.7で交換されている2つの量子

 (仮想光子:virtual photons)の一方がEinsteinの条件:2=0

 (実光子条件=質量殻条件:real photon or on mass-shell)

 を満足することは大いに有り得ることです。

 

 この場合,この量子は電子と陽子との間の交換から脱出できて,

 自由輻射,または Bremsstrahlung(制動輻射)として出現します。

 

 散乱過程におけるこの輻射場との相互作用効果を調べるため,

 再びSchiffによって発見されたのと,よく似た発見的議論を進

 めます。

 

 これらは,Bjorken-Drellテキストのcompanion volume

 (場の理論:field theory)で論じる予定の,輻射の厳密に量子論

 的な扱いから得られる答と完全に一致し,実験結果と一致する

 有益な結果を,より小さい労力で与えます。

 

 さて,運動量kμと偏極(polarization)εμを持つ1つの

 "光子(photon)"に相当する4元ベクトルポテンシャルは

 平面波で表現することができて,

 Aμ(x;k)=(2|0V)-1/2εμ{exp(-ikx)+exp(ikx)}

 と書けます。

 

 ただし,k2=kμμ=0 です。

 

 偏光ベクトル:εμは単位ベクトル(ε2=εμεμ=-1)であり,

 横波条件:εk=εμμ=0 を満たします。

 

(注16-1):電磁ポテンシャルAμの波動方程式が□Aμ=0

 (k2=kμμ=0)となるためには,Lorenzゲージ(gauge):

 ∂μμ=0 を取る必要があります。

 

 この条件はεk=εμμ=0 に相当します。

 

また,特別なローレンツ系ではεμは純粋に空間的(space-like):

εμ=(0,ε)であり,|ε|=1ですから,

ε2=εμεμ=-ε2=-1 です。

 

そして,ε2Lorentzスカラーですから,任意のローレンツ系で

ε2=-1(一定:空間的)です。

 

偏極(偏光):εμが単位6クトルに規格化されているとはこういう

意味です。(注16-1終わり)※

 

μ(x;k)=(2|0V)-1/2εμ{exp(-ikx)+exp(ikx)}

における規格化定数:(2|0V)-1/2は,Aμ(x;k)なる平面波

のエネルギーが丁度:ω=k0=||になるよう選んだものです。

(ただし,c=1の自然単位です。)

 

これは,U=(1/2)∫d302+μ0-12)=ε023

を計算すれば得られます。

(※何故なら,μ0-1=c2ε0=ε0(自然単位))

 

すなわち,まず,

=∇×[(2|0V)-1/2ε

{exp(-ikx)+exp(ikx)}]

=i{||/(2ε0V)}1/2(ε){exp(-ikx)-exp(ikx)}

={2||/(ε0V)}1/2(ε)sin(kx) です。

 

ただし,^≡/|| です。

  

そして,(ε)(ε)=-^{(εε}

^{ε2 ^-ε(εk^)}

ε2-(εk^)2ε2-(ε00/||)2ε2-(ε0)2

=-ε2=1 です。

 

 故に,2={2||/(ε0V)}sin2(kx-ωt)ですから,

 確かにU=ε023=||=ω を得ます。

 

 以下,散乱の間にそうした1光子が輻射される現象を記述する

 散乱振幅(scattering amplitude)を考察します。

 

 ただし,簡単のために静電近似に戻って,電子-陽子散乱の自由陽子

 の源による電磁場を静電Coulomb場で置き換えて,eの最低次の寄与

 がゼロでない遷移要素(transition-matrix element):Sfiを計算

 します。

 

 こうした過程に対するFeynman-diagramを図7.8に示します。     

  

 図の1つの頂点(vertex)は,電子とCoulomb場との相互作用に対応し,

 他の頂点は制動輻射の放出につながる2次過程に対応します。

 

 外場がないところでの自由電子による1次のオーダーの光子の輻射

 放出は有り得ません。

 

 つまり,単に自由電子が光子を放出するだけという,

 1次のFeynman-diagramは存在しない,

 または書いても寄与がゼロです。

  

 これは運動学的に禁止されているからです。

 

 何故なら,1次のオーダーの光子放出を仮定すると,

 エネルギー・運動量の保存が不可能であるからです。

 

 つまり,k2=0≠(pf-pi)2となって,k,pf,pi以外にまわりに

 何もない系なら質量がゼロ:k2=0 の実光子では保存則不成立

 です。

 

(注16-2):-(pf-pi)2

 =(fi)2-{(f2+m2)1/2-(i2+m2)1/2}2

 =2{(f2+m2)1/2(i2+m2)1/2-(fi+m2)}

 です。

 

そして,{(f2+m2)1/2(i2+m2)1/2}2-(fi+m2)2

f2i2-(fi)2+(fi)22≧0 です。

 

何故ならf2i2-(fi)2f2i2(1-cosθ)≧0

であるからです。

 

そして,kμ≠0 ですから,(pf-pi)μ=kμ≠0 より,cosθ<1

です。

 

したがって,-(pf-pi)2>0,つまり(pf-pi)2<0 ですから,

2=0≠(pf-pi)2を得ます。(注16-2終わり)※

 

 2次のS行列要素は,

 Sfi=e2∫d4xd4yψ~f(x)[-i(x;k)iSF(x-y)

 (-iγ0)A0Coul(y)+(-iγ0)A0Coul(x)iSF(x-y)

 {-i(y;k)}]ψi(y) です。

 

 ただし,A0Coul(x)は中心電荷が-Zeの静電Coulombポテンシャル

 でA0Coul(x)≡-Ze/(4πε0||)です。

 (e< 0 は電子の電荷)

  

 そして,右辺の2つの項は図7.8に示されているような頂点の2つの

 順序に対応しています。

 

 これまでやってきたように,Sfiの右辺の座標表示の全ての因子

 をFourier展開して座標積分∫d4xd4yを実行して運動量空間

 における表現に変換します。

 

 この型にはまった操作を実行した結果は,

 Sfi{-Ze3/(ε0V)3/2}2πδ(Ef+k0-Ei)(2k0)-1/2

 {m2/(Efi)}1/2(1/||2)

 u~(pf,sf)[(-iε){i/(f-m)}(-iγ0)

 +(-iγ0){i/(i-m)}(-iε)]u(pi,si)

 です。

 

(注16-3):何故なら,

 ψ~f(x)={m/(EfV)}1/2u~(pf,sf)exp(ipfx),

 ψi(y)={m/(EiV)}1/2u(pi,si)exp(-ipiy)

 であり,

   

 また,Aμ(x;k)=(2kε0V)-1/2εμ{exp(-ikx)+exp(ikx)},

 SF(x-y)=∫d4p(2π)-4{exp{-ip(x-y)/(-m+iε)},

 A0Coul(x)=-Ze/(4πε0||) であるからです。

 

 さらに,∫d3{exp(-iqx)/||}=4π/||2です。

 

 それ故,Sfi

 =(-Ze303/23/2)(2k0)-1/2{m2/(Efi)}1/2

 ∫d4xd4yd4p(2π)-4u~(pf,sf)((-iε){i/(-m+iε)}

 (-iγ0)[exp{i(pf-k-p)x+(p-pi)y}

 +exp{i(pf+k-p)x+(p-pi)y}]/(4πε0||)

 +(-iγ0){i/(-m+iε)}(-iε)

 [exp{i(pf-p)x+(p-k-pi)y}

 +exp{i(pf-p)x+(p+k-pi)y}]/(4πε0||))

 u(pi,si) となります。

 

これの座標積分,およびd4p積分を実行すると,確かにSfiに対する

上記の運動量表示表現を得ます。(注16-3終わり)※

 

 さて,Sfi{-Ze3/(ε0V)3/2}2πδ(Ef+k0-Ei)(2k0)-1/2

 {m2/(Efi)}1/2(1/||2)

 u~(pf,sf)[(-iε){i/(f-m)}(-iγ0)

 +(-iγ0){i/(i-m)}(-iε)]u(pi,si)

 から,散乱断面積(cross section)を求めます。

 

そのためには,|Sfi|2を流束密度:|i|/Vで割り,さらに単位時間

当たりにするため,2πδ(0)で割って,観測される光子と終状態電子

の位相空間での区間体積V233f/(2π)6にわたる総和を取り

ます。

 

 {2πδ(Ef+k0-Ei)}2=2πδ(0)2πδ(Ef+k0-Ei)

 に注意すると,

 

 dσ={Z262/(2ε030fi|i|)}∫d33f(2π)-6

 [(2π)δ(Ef+k0-Ei){(εpf)/(kpf)-(εpi)/(kpi)}2|

 u~(pf,sf0u(pi,si)|2/||4]

 を得ます。

 

 そして,d3f=pf2dpfdΩf (pf≡|f|)であり,

 pfdpf=EfdEfですが,

 

 軟光子(soft-photon)放出:k~0 の近似を取ると,

 pf=|f|=|i―k|~|i|=Ei|i|なので,

 d3f=pffdEf~|i|EifdEf です。

 

 また,d3=k2dkdΩk (k≡||),そして,

 δ(Ef+k0-Ei)dEf=θ(∞)-θ(m+k-Ei)

 =1-θ(m+k-Ei)=θ(Ei-m+k) です。

 

 そして,dΩfを残したd3f積分,つまりdEf積分を実行します。

 

すると,dσ/dΩf ~{Z262/(2ε03k)}

{(εpf)/(kpf)-(εpi)/(kpi)}2

|u~(pf,sf0u(pi,si)|2/||4]

2dkdΩk(2π)-5θ(Ei-m+k)

を得ます。

 

これを,先の「散乱の伝播関数の理論(11)(応用1-1)」で得た

弾性散乱(elastic scattering)の最低次の微分断面積:

 (dσ/dΩf)elastic=(4Z2α22/||4)

 |u~(pf,sf0u(pi,si)|2||4

 と比較します。

 

すると,4πα=e20なので,

dσ/dΩf ~ (dσ/dΩf)elastic[e2/{2(2π)3ε0}]

kdkdΩk{(εpf)/(kpf)-(εpi)/(kpi)}2θ(Ei-m+k)

です。

 

 これは,立体角dΩfの中に電子が観測され,運動量を持つ偏極ε

 の光子がdkdΩkの中に出現する断面積を表わしています。

 

 故に,軟光子の極限では,非弾性散乱の断面積は同一のエネルギー

 と同一の散乱角における弾性散乱の断面積の倍数として表現され

 ます。

 

 dσ/dΩfの因子:kdk{(εpf)/(kpf)-(εpi)/(kpi)}2

 よると,k~ 0 で軟光子のスペクトルはdk/kのように挙動する

 ため,k=0 のゼロエネルギー光子を放出する確率は無限大になり

 ます。

 

 これは,赤外発散(infrared divergence)

 or赤外破局(infrared dcatasyrophe)と呼ばれている現象です。

 

 こうした無限大の困難から救済されるためには,制動輻射を観測する

 現実の実験条件の注意深い解析が必要です。

 

 決定的な点は,如何なる検知装置も有限エネルギーの分析しかでき

 ないということです。

 

 もしも検知装置がk=0 を含む有限なエネルギー区間に非弾性的に

 散乱された電子を受けるなら,それは正に弾性的に散乱された電子を

 受け取ることを意味します。

 

 そこで,実験と矛盾しない比較をするためには,散乱の断面積

 として2の同じオーダーまで計算した弾性散乱と非弾性散乱

 の両方の断面積を含む必要があります。

 

 すなわち,制動輻射の寄与は弾性散乱に対してe2培のオーダー

 ですから,(dσ/dΩf)elasticにも同じe2のオーダーまでの輻射

 補正を含める必要があります。

 

 今日はここまでにします。 

 

参考文献: J.D.Bjorken & S.D.Drell "Relativistic Quantum Mechanics"(McGraw-Hill)

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2010年7月22日 (木)

共形場理論(4)

 共形場理論の続きです。

 今日は量子論ではスピンが半奇数のFermi粒子に対応するグラスマン(Grassmann)代数の話です。

以下には,古典的反可換量という記述がありますが量子論の反可換量(Grassmann数)に対応する古典量は存在しないはずです。

ベクトル積(外積):×や面積要素:dSz=dx∧dyのような微分形式を想像すれば古典的対応物が無いとは言い切れませんが。。

1.5 反交換子

 量子論では[A,B]=AB-BAは古典的には可換な量A,Bの量子論的非可換性の度合いを表わしていました。このように,古典的には可換な量はbosonといわれます。

 これに対してfermionといわれる古典的には反可換な量も重要です。ただしA,Bが反可換であるとはBA=-ABなることをいいます。

 量子化されたfermionの非反可換性を表わすものとして,ある代数に属する任意のA,Bの反交換子(anti-commutator):[A,B]を,[A,B]≡AB+BAで定義します。

 

 反交換子も交換子と似た次の基本性質を持ちます。

◎(反交換子の性質):A,B,C∈,およびa,b,c∈に対して次式が成立する。

(ⅰ)双線形性:[aA+bB,C]=a[A,C]+b[B,C],[A,bB+cC]=b[A,B]+c[A,C],

(ⅱ)対称性:[A,B]=[B,A],

(ⅲ)Jacobiの恒等式:

 [A,[B,C]]+[B,[C,A]]+[C,[A,B]]=0,   

(ⅳ)Leibniz則:[A,BC]=[A,B]C-B[A,C]

 交換子の場合同様,成立は自明なのでこれらの証明はしません。

,B,Cが全て互いに反可換な量なら,ABC=-ACB=CABなのでABとCは可換になります。

 

そこで,偶数個のfermionの積はbosonと考えるのが自然です。

 次に,写像δ:が線形でδ(AB)=δ(A)B+(-1)|A|Aδ(B)を満たすとき,δを代数の反微分(anti-derivative)といいます。

 

 ただし,Leibnitz則に対応する式での記号|A|はAの偶奇性(パリティ)を示すものです。この数|A|はAのパリティが±=(-1)|A|となるように定義されます。

つまり,Aがboson的なら|A|=0,fermion的なら|A|=1です。

 bosonにおける微分で述べた演算:adA:B→[A,B]をfermionを含む場合に拡張して,adA:B→AB-(-1)|B|BA と書けば,この演算は1つの微分,または反微分と見なせます。

そして,一般公式:δ(B12..Bn)=Σi=1n{(-1)|B1..Bi-1|1..Bi-1δ(Bi)Bi+1..Bn}も得られます。

 bosonやfermionを同時に含む系をまとめて扱うために,想定している代数をboson(偶)とfermion(奇)の2つの階級に分けます。

すなわち,01と直和分割します。ただし,0,および1は,それぞれ,fermion生成元を偶数個,および奇数個含む項のみの和からなる代数です。

こうすれば,A∈i (i=0,1)に対して|A|=iとなります。

この一般的設定の下で,再度Wickの定理を述べておきます。

の生成元:ai^ (i∈J)には,それぞれ偶奇性:|ai^|∈{0,1}が定まっているとし,それらは交換関係,または反交換関係:[ai^,aj^]±=hijに従うとします。

 

ただし,[A,B]±AB-(-1)|B|BAであり,ij|ai^||aj^|の偶奇に応じ,添字について反対称,または対称です。 

すなわち,ijji=(-1)|ai^||aj^|ijなる対称性を持ちます。

の生成元:ai^ (i∈J)の線形結合全体をWとし,Wの元同士は反可換,Wの元同士は可換であるようなWの直和分解:W=W+Wがあるとします。

全てのhijをゼロとおいてを反可換化,かつ可換化した代数をcとします。(※cの元に対応する古典的量から成る代数です。※)

そして,cからへの線形な写像: :をP∈c,a^±∈W±に対して:a^P:=a^:P:,:Pa^:=:P:a^, :1:=1 なる性質によって定義します。

 

この写像: :を改めて正規積(normal-ordering)と呼びます。

さらに,∀a^∈WのW±への分割をa^=a^+a^ (a±^∈W±)と表わして,縮約c(a^,b^)をc(a^,b^)≡[a^,b^]±と定義します。

これらを用いると,一般的なWickの定理を述べることができます。

※共形場理論(2)で述べたWickの定理は次のようなものでした。

[Wickの定理]:Pi,Qiの任意の線形結合A,Bに対して:exp(A)::exp(B):=exp{c(A,B)}:exp(A+B):が成立する。

そして,これのより便利な形式は次の系です。

(系):Ar(r=1,2,..)をPi,Qi(i∈I)の線形結合とする。xr,yrをパラメータとしてA≡Σrrr,B≡Σrrrと置くと,:exp(A)::exp(B):=:exp(Σrrr)::exp(Σsss):=exp{Σr,srsc(Ar,As)}:exp{Σr(xr+yr)Ar}:である。※

 さて,互いに反可換,可換なパラメータxr,ys (r,s∈J)を用意します。r∈Jに対してxr,yrはar^と同じ偶奇性を持ち,かつ[xr,as^]=[yr,as^]=0とします。

 このとき,xr,ys (r,s∈J)はboson的作用素と考えることができて,:exp(Σrrr^)::exp(Σsss^):=exp{Σr,srsc(ar^,a-s^)}:exp{Σr(xr+yr)ar^}:が成り立ちます。

これは上記のWickの定理の系と全く同じものです。

 前と同様,:exp(Σrrr^)::exp(Σsss^):=exp{Σr,srsc(ar^,as^)}exp{Σr(xr+yr)ar^}の両辺をxr,ys etc.で何回か微分してx=y=0と置けば,

:ar^::as^at^:=c(ar^,as^):at^:±c(ar^,at^):as^:±:ar^as^at^:,そして,:ar^as^::at^au^:=±c(ar^,as^)c(at^,au^)±c(ar^,au^)c(as^,at^)±c(ar^,at^):as^au^:±c(ar^,au^):as^at^:±c(as^,at^):ar^au^:±c(as^,au^):ar^at^:±:ar^as^at^au^:などを得ます。

ここで,±はar^ etc.の順序の違いによって生ずる符号です。  

例えば,±c(ar^,at^)c(as^,au^)では左辺の:ar^as^::at^au^:と比べas^,at^の順序が変わっているので,対応する符号±は(-1)|as^||at^|で与えられます。 

このように,fermionを含む場合でもWickの定理はbosonの場合とほぼ同じであり,違いはfermion(Grassmann数)の順序の違いによる符号のみに現われます。

今日はここまでです。 

参考文献:山田泰彦 著「共形場理論入門」(培風館)

 

PS:今日も暑かったです。帰宅途中の小石川植物園の世界最大の花は今日も咲かなかったとの掲示がありました。(※その後,夕方から23日朝にかけて開花したらしいですね。)

 

 昨日が仕事に通い始めてから1ヶ月でした。今のところ皆勤です。

 

 そして,なんと高校野球岡山県予選準々決勝で私の母校金光学園も父の母校岡山東商も共に1点差で惜敗しました。

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2010年7月21日 (水)

脱水症状?肺水腫?

 はじめて心臓病の初期症状が出たのは2006年12月末に北区のエレベーターの無い3階の部屋に引っ越す予定のときでした。

(2006年12/22の記事「肺気腫にかかってしまいました。」,2006年12/25の記事「引越し{巣鴨から滝野川へ)」参照)

 そして,結局は2007年1月に心不全が原因の肺水腫であることが判明して急いで引っ越した後,水を抜くために帝京大病院に一週間入院ました。

(普段,あまりトイレに行かない私から,オシッコで水を抜くだけなので,点滴や飲み薬の利尿剤で無理やりオシッコ出させて,尿が6リットル出たところで退院しました。なぜか体重は7キロくらい減りました。)

(2007年1/10「肺気腫ではなくて心不全でした。」,2007年1/12「入院のため一週間お休みします。」)

 その後,2月には仕事に復帰しましたが,3月末には悪化して再入院した末,順天大病院に移って,4月10日に心臓手術を受け,4月22日には退院して,同時に失業しました。

 生まれ変わったような気持ちになって,再び巣鴨に戻ってきたのは2008年3月のことでした。

(2007年3/23の「タミフルと異常行動の因果性」の最後の部分,2007年3/24の「辞世」,2007年,4/22の「無事生還しました。」,2008年3/14の「引越し,孟母三遷,神の意思」参照)

(,どんな心境の変化なのか?人間,特に子供を前より"いとおしい"と感じるようになりました。)

 奇しくも,今回も7月29日にエレベーター無しの2階の部屋へと引越し予定ですが,先週の土曜日からずっと下血ならぬ下水?で何か脱水症状のような状態になりました。

 その上,完全に寝転ぶと咳が止まらず座った状態でしか眠れないというかつて経験した,肺に水が貯まった肺水腫に似た症状でなかなか寝られません。

 しかし,少しでも睡眠を取って目覚めると,意外とさわやかで,下痢気味である以外には元気な感覚なので将棋旅行や軽い仕事,手話教室に行こうという気になって実行しています。

 3階くらいはどうってことない体のときに,引越しを決めたとたんに坂を上れないのが主症状の病気になり,退院後も約1年間辛い思いをしました。

 しかし,まあ偶然であって,病気は引越しとは関係ないでしょうね。

 でも,私にとっては2階と3階は大きな違いで,2階までは結構楽なのに最後の1階が辛いのです。今回は2階の部屋ですからリハビリ程度でしょう。

 今朝は整腸剤を飲んだせいか,下痢はおさまり月耀の夜に近くのスナックの親切な元中国人のママに頂いたスイカを切って食べました。オイシイね。。

PS:クソ暑くて会社から帰宅途中に地下鉄巣鴨駅ホームのベンチでダウン,売店に熱中対策水というのがあったのでガブ飲みすると小康状態ですが力が出ない。。レモン味だけどよく見るとカロリーゼロ。。

 クソー,食欲なくて昼飯半分残したから低血糖かもしれないのに,今ドキの飲料はコレだから注意して買わないと意味がない。。。

 ともあれ,今日は寄り道をする体力もないので帰宅して冷房効いた部屋でゴロ寝しています。

 まだ少しお腹がユルイけど今のところ寝転んでも咳は出ません。

 (↓ところで,帰宅途中に小石川植物園の前を通ると,昨日同様,世界最大の花であるらしい「ショクダイオオコンニャク(燭台大蒟蒻)はまだ咲いていません。」との張り紙がありました。)

  

 高校野球の岡山県予選で私の母校の金光学園がベスト8に進出したらしいですが,次は強豪倉敷商が相手ですから勝つのは大変でしょうね。。

(確か春の大会の西地区予選リーグでは,金光が倉商に勝ったのに県大会のベスト16以上の決勝トーナメントに行けなかったのでした。)

 もしも勝てば,亡父の母校の岡山東商と当たるでしょう。

 春の選抜で平松投手を擁して岡山東商が初優勝した日が父の命日です。

 金光学園は,過去,春選抜のための秋の県大会と夏の県予選はベスト4が最高です。

 夜になると,酒でも唄でもなくて,ひとのぬくもりが恋しくなる。。。

 誰でーも弱ーいウソーつき,責めることなどありゃーせん。。(山崎ハコより)

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2010年7月20日 (火)

共形場理論(3)

 共形場理論の続きです。 

1.4 頂点作用素

 無限個の変数(t0,t1,t2,..),複素パラメータk,およびzを用意します。

 

 そして,の関数に作用する頂点作用素(vertex operator):Vk(z)を次式で定義します。

 すなわち,Vk(z)≡Vk(z)Vk(z);Vk(z)≡exp(kΣn=0nn),Vk(z)≡exp{kΣn=0n(z)∂/∂tn}です。ただし,u0(z)≡logz,un(z)≡z-n/n(n>0)です。

n(z)はzの対数:log(z-w)のwによるベキ級数展開をlog(z-w)=Σn=0n(z)wnと表現したときの展開係数です。

k(z)は掛け算作用素部分Vk(z)が左側に,微分作用素部分Vk(z)が右側にくる正規積(normal-ordering)の形です。

しかし,2つの頂点作用素の積:Vl(w)Vk(z)=Vl(w)Vl(w)Vk(z)Vk(z)を考えると,中央のVl(w)Vk(z)が正規積の順序になっていません。

そして,Vl(w)Vk(z)=exp{lΣm=0m(w)∂/∂tm}exp(kΣn=0nn)=exp{klΣm=0m(w)zm}[exp(kΣn=0nn)exp{lΣm=0m(w)∂/∂tm}]です。

右辺,最初の因子はexp{klΣm=0m(w)zm}=exp{(kl)log(w-z)}=(w-z)klですから,Vl(w)Vk(z)=(w-z)klk(z)Vl(w)と書けます。

したがって,Vl(w)Vk(z)=(w-z)kl:Vl(w)Vk(z):です。

この証明をよりスマートに書くと次のようになります。 

(証明):Vl(w)=exp(A),Vk(z)=exp(B),A≡lΣm=0m(w)∂/∂tm},B≡kΣn=0nnと置くとき[A,B]=klΣm=0m(w)zm=(kl)log(w-z)です。

 それ故,exp(A)exp(B)=exp([A,B])exp(B)exp(A)=(w-z)klexp(B)exp(A)が得られます。(証明終わり)

同様な計算の連続により,一般的公式:Vk1(z1)..VkN(zN)=Π1≦i<j≦N (zi-zj)kikj:Vk1(z1)..VkN(zN):が得られます。

私自身が忙しいということもあり,このシリーズは少しずつゆっくり進むことにします。

参考文献:山田泰彦 著「共形場理論入門」(培風館)

 

PS:7/29に南大塚一丁目に引越し予定です。昨日まで脱水症状でしたが2軒ハシゴで治りました。

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2010年7月19日 (月)

将棋オフに行ってきました。

 前記事最後のPSで報告の通り,17日の朝東京駅を8:20溌のJR高速バスに乗って,毎年恒例の将棋チェスネットの夏合宿(お泊りオフ)に出かけて無事昨日かえってきました。

 今年は,隔年の湯河原以外でのオフで場所は静岡市清水区の三保松原付近の「三保園ホテル」です。このオフも毎年1回ですがニフティの将棋フォーラム時代を含めて15年は越えてるでしょうか。。

 今のスタイルも楽しいですが,初期の頃はプロも呼ばかったし,囲碁フォーラム,麻雀フォーラム合同ではるかに多人数でワイワイやっていましたね。

   (↓ホテルの窓から海岸方向の松林を見る)

      

 今回はアマ14名,プロ3名の総勢17名参加でした。

 JR静岡駅に11:27分着予定でしたが,3連休の渋滞のためか2時間以上も遅れて13時50分前後に着きました。そこで東海道線で3つ東の清水駅に行き,さらにバスで三保本町バス停で降りてホテルに電話し送迎車に来てもらって着いたのは16時前でした。

 外は暑いし慣れない場所では必要以上に時間かかりましたね。

 着くと,既に,2対局が終わっていました。北島忠雄6段は既にお越しでしたが,女流の2人坂東香菜子2級と伊藤明日香初段は浜崎先生(私の主治医?)の車で来る予定で,まだ到着してませんでした。

 私は着いてほっとしてから2局平手先手で指して連敗でした。

 あとの3人を待っていても仕方ないので,みんなで露天風呂付きの温泉でゆっくりした後,19時過ぎからまずビールで乾杯した後に海の幸中心の夕食を取りました。

 私は,最近小食で食べるという行為にも汗をかくという有様でもあり,すぐに満腹になって食べきれないほどでした。

 結局,浜崎組は夕食を取っている最中の20時過ぎに到着でした。

 夕食後には,連将棋2局後,お風呂が24時までということでフリ-タイムとなり,次の日にまた対局しようということになりました。私はバス疲れか無性に眠くなったので23時半ころ引き上げて先に寝ました。

 翌日は指導対局中心でお昼には引き上げました。私は1勝3敗で勝率計算でブービーでした。まだ,疲れてるので写真だけアップします。優勝北島6段勝率8割1分,準優勝伊東女流初段3勝1敗です。

 バンカナさん,今回は何故か不調でしたね。

   (↓多面指しですがプロも同列のハンデイ戦本戦 兼 指導対局風景)

     

 

   

 (↓全体写真です。私ともう1名は写真を撮ってるので写ってません。実は何も告げない不意打ち写真なので誰もつくり笑顔もピースサインも無し)

   

   (↓三保海岸から遠く富士山をのぞむ。。。)

    

 実は静岡は5年間住んでいた私のゆかりの地です。ここは,楽しい思い出ばかりではなく,最後には鬱病になって逃げるように去った地でもありますが,いわば現在の私のルーツです。

 その後は関西に移って,東京に就職した後に,1度だけ30歳くらいのときに,東京で急死した友人を悼んで,共通の旧友数人だけと故人を偲ぶため集まって以来30年ぶりの訪問でした。三保周辺もよく行った場所でなつかしかったです。

 まあ,将棋オフについては毎年書いてるのでこれくらいにします。私は2日目の朝酸欠になりましたが異常に暑くて水分不足,脱水症状であり心臓病のせいではないらしいです。

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2010年7月16日 (金)

共形場理論(2)

 共形場理論の続きです。

1.3 Wickの定理

をP=∂/∂x,Q=xの生成する非可換代数とします。他方,p,qを可換な変数としてF(p,q)をp,qの任意の多項式とします。

(p,q)においてp→P=∂/∂x,q→Q=xに置き換えてFをの元として読み直すことがSchrödingerに始まる伝統的な量子化の方法です。

ただし,この量子化は一意的ではなく例えばF=pqならFをpqと見るか,またはqpと見るかによってpq→PQ=QP+1,またはqp→QPという違いが生じます。

こうした不定性を固定する1つの処方箋として記号: :で表わされる正規積(normal-ordering)があります。

 

正規積とは,可換量F(p,q)に対して非可換量:F(p,q):∈Aを定義して対応させるものです。この対応F→:F:はP,Qそれぞれに対する線形性,および次の関係式によって定義されます。

すなわち,:qF(p,q):=Q:F(p,q):, :F(p,q)p:=:F(p,q):P,:1:=1 なる関係式です。

上記においては,説明の都合上,可換量p,qと非可換量P,Qの記号を小文字と大文字で区別しました。

しかし,今のp,qとP,Qのみの作用素代数の場合,正規積を取るとはp,qをそれぞれP,Qに置き換えながらQを左にPを右にという順序にする操作を行なうことなので,混乱のおそれがないなら両者に同じ記号を用いて差し支えないです。

 

以下では,全ての変数をP,Qのみで表わします。

例えば,:(P+Q)2:=:P2+2PQ+Q2:=P2+2QP+Q2といった具合いです。

以上の話は,変数が{Qi,Pi}(i∈I)から成るときのように,変数P,Qの組が複数ある場合も同様です。

そして,A≡Σi∈I(uii+vii) (ui,vi)について,これをA=A+A,A≡Σi∈Iii,A≡Σi∈Iiiと分解します。

 

この記号を,Pi,Qjの任意の線形結合A,Bに適用したとき,c(A,B)≡[A,B]と定義して,これをA,Bの縮約(contraction)といいます。

 

ここで,正規積と縮約に関する重要な"Wickの定理"を与えます。

 

[Wickの定理]:Pi,Qiの任意の線形結合A,Bに対して:exp(A)::exp(B):=exp{c(A,B)}:exp(A+B):が成立する。

 

(証明):正規積の定義から:exp(A):=:exp(A+A):=exp(A)exp(A)です。

 

同様に:exp(B):=exp(B)exp(B)です。

 

それ故,:exp(A)::exp(B):=exp(A)exp(A)exp(B)exp(B)が成立します。

 

 そして,Pi,Qiの線形結合A,Bについては[A,B]がA,Bの両方と可換なので,既に求めた公式によりexp(A)exp(B)=exp[A,B]exp(B)exp(A)={c(A,B)}exp(B)exp(A)です。

 

 また,AとB,およびAとBは明らかに可換なので:exp(A+B):=exp(A+B)exp(A+B)=exp(A)exp(B)exp(A)exp(B)です。

 

 よって,定理の結論である:exp(A)::exp(B):=exp{c(A,B)}:exp(A+B):が得られました。(証明終わり)

(系):Ar(r=1,2,..)をPi,Qi(i∈I)の線形結合とする。

 

 xr,yrをパラメータとしてA≡Σrrr,B≡Σrrrと置くと,:exp(A)::exp(B):=:exp(Σrrr)::exp(Σsss):=exp{Σr,srsc(Ar,As)}:exp{Σr(xr+yr)Ar}:である。

 この命題は自明なので証明は省略します。

 得られた式:exp(Σrrr)::exp(Σsss):=exp{Σr,srsc(Ar,As)}exp{Σr(xr+yr)Ar}の両辺をxr,ys etc.で何回か微分してx=y=0 と置けば,次の便利な関係式も得られます。

 :Ar::Ast:=c(Ar,As):At:+c(Ar,At):As:+:Arst:,:Ars::Atu:=c(Ar,As)c(At,Au)+c(Ar,Au)c(As,At)+c(Ar,At):Asu:+c(Ar,Au):Ast:+c(As,At):Aru:+c(As,Au):Art:+:Arstu:などです。

 また,Wickの定理の結論式:exp(A)::exp(B):=exp{c(A,B)}:exp(A+B):から,:exp(A1)::exp(A2)::exp(A3):=exp{c(A1,A2)}:exp(A1+A2)::exp(A3):=exp{c(A1,A2)}exp{c(A1+A2,A3)}:exp(A1+A2+A3):=exp{c(A1,A2)+c(A1,A3)+c(A2,A3)}:exp(A1+A2+A3):です。

 したがって,一般にΠr=1n:exp(Ar):=[Πs<texp{c(As,At)}]:{Πr=1nexp(Ar)}:を得ます。

 

 この式で,Ar→xrrなる置き換えをした後,両辺のx12..xrの係数を比較すると,A12..Ar=Σ{Πc(Ai,Aj):Π残りr:}なる恒等式が得られます。

ただし,右辺の和は{1,2,..,r}を幾つかの対(i1,j1),(i2,j2),..と残りの{r1,r2,..}に分割する全ての分け方にわたって取ります。

短いですが今日はここまでです。

参考文献:山田泰彦 著「共形場理論入門」(培風館)

 

PS:7/17,18は毎年恒例の将棋チェスネットのお泊りオフです。

 

 今年は三保の「三保園ホテル」です。17日朝8時20分に東京駅八重洲口から出る東名高速バスで向かう予定です。

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2010年7月14日 (水)

共形場理論(1)

 昨日(7/13)に記事予告として次のように書きました。

※たまには私自身の60の手習いということで,はじめて読む本で勉強する過程をそのままブログ記事にします。

 山田泰彦著「共形場理論入門」(培風館)を読みます。

 ただし,今から早い夕食を取って主話教室に行く予定です。

 それが終わって帰宅して,テキストを読みつつワードに草稿を書いた後にアップする予定なので初稿は恐らく明日です。※

と書きました。

 今日(7/14)に,上記に予定した記事を開始します。

 まず,唐突に共形場理論(conformal field theory)と言われても何のこと?と思われる諸兄もおられるかと思います。まあ,私自身もこれは定義からして,ややあやふやな概念です。

共形場の定義は,"共形変換(conformal transformation)に対して不変な場を共形場という。"というものですが,これは単に共形場を共形変換に言い換えたに過ぎません。

 

これでは単に,"共形変換とは何か?"という疑問に置き換えられただけです。

共形というのは形を保存すると読めますから,共形変換とは小さい円を大きい円に写す,あるいはその逆のような単なるスケール変換(Weyl変換)と平行移動のことではないか?と想像されます。

 

しかし,これは大域的意味の形保存であり局所的には複素関数論で御馴染みの等角写像のことを指します。

つまり,空間のある点で交わる任煮の2曲線の交角(=接線同士のなす角)が変換の前後で保存されるような写像(等角写像)を与える変換のことを共形変換と呼び,これはスケール変換,平行移動も含みます。

複素関数論によれば,2次元の複素平面上での解析関数と等角写像は同義でしたね。

 

さて,これ以上の話は先走ることなく参考テキストの"はしがき"をそのまま引用します。

2次元の共形場理論は1984年にBelavin-Polyakov-Zamolodchikovによる画期的論文以降,多くの数学者,物理学者により集中的に研究が進められ,1990年頃までにはほぼ基本的な結果が出そろったといえます。

その成果は2次元の臨界現象の記述や弦理論などへの物理的応用はもちろん,表現論や可積分系,位相的場の理論などその後の数学に与えた影響も少なくありません。

 

共形場理論そのものの研究は現在では少なくなっていますが,基本的結果や方法は,その後の数理物理の飛躍的進展の中で繰り返し活用されています。

 このように,著者が導入部の序文に述べている要約的内容において読者には曖昧と思える概念があっても,一般にPendingにして疑問を抱いたままで本文を地道に読んで反芻しているうち概念に対する疑問は次第に氷解していくことが多いです。

 

 そこで,とにかく本文に入りましょう。

第1章:作用素の代数(algebra of operators)

1.1交換子(commutator)

非可換な代数(non-Abelian algebla)を考えます。代数(多元環)ですから,をある数体として∀A,B∈,∀c∈に対して和A+B,積AB,スカラー陪cA∈が定まります。

 

そして,これらには結合則,分配則が成り立ちます。

∀A,B∈に対して[A,B]≡AB-BAと書いて.これをA,Bの交換子と呼びます。一般に交換子は非可換代数:の非可換性の度合いを示す量です。

 

ただし,以下ではを複素数体に限定します。すると交換子は以下の性質を有することがわかります。

◎[交換子の性質]:∀A,B,C∈,および∀a,b,c∈に対して次式が成立する。

(ⅰ)双線形性:[aA+bB,C]=a[A,C]+b[B,C],[A,bB+cC]=b[A,B]+c[A,C],

(ⅱ)反対称性:[A,B]=-[B,A],

(ⅲ)Jacobiの恒等式:[A,[B,C]]+[B,[C,A]]+[C,[A,B]]=0,(ⅳ)Leibniz則:[A,BC]=[A,B]C+B[A,C]

 これらは,量子論の計算などにおいて既知の性質であり,ほぼ自明なので証明は省略します。

[定義]:ベクトル空間において,括弧積とよぶ演算:[ , ]:×が与えられ,これが∀A,B,C∈,∀a,b,c∈に対して上記性質(ⅰ),(ⅱ),(ⅲ)を満たすとき,をLie代数という。

 一般のLie代数に対して,[A,B]=AB-BAという式が意味を持つような非可換代数が普遍的に構成されます。これを()と書いて,の普遍包絡環(universal ring)という。

※つまり,元の演算:[ , ]:×に関して定義されたLie環に対して,その元A,B∈の交換子:AB-BAを改めて代数()を定める演算:[A,B]=AB-BA:()→(()と定義して新たなLie代数()が得られます。

  

 これをの普遍包絡環というわけです。※

 次に,線形変換δ:でA,B∈に対してδ(AB)=δ(A)B+Aδ(B)を満たすものをの微分といいます。

普遍包絡環の上では交換子が性質(ⅳ)のLeibniz則を満たすので,交換子のこの性質と線形性から「交換子をとる。」という演算:adA:B→[A,B]を一種の微分と見なせます。(adAはadjoint of Aと読みます。)

実際,交換子は微分と同じ以下の性質を持ちます。

すなわち,[A,B12..Bn]=Σi=1m1..Bi-1[A,Bi]Bj+1..Bnです。そして特に,[A,B2]=[A,B]B+B[A,B],[A,B3]=[A,B]B2+B[A,B]B+B2[A,B]です。

もしも,Bに逆元B-1がある場合には[A,B-1]=[A,B-1BB-1]=[A,B-1]+B-1[A,B]B-1+[A,B-1]により,[A,B-1]=-B-1[A,B]B-1が成立します。

そこで,特にBと[A,B]が可換:[[A,B],B]=0 なら,[A,Bn]=n[A,B]Bn-1です。

これらの性質による次の有用な公式を与え証明しておきます。

:exp(A)Bexp(-A)=exp(adA)(B)=Σn=0(1/n!)(adA)n(B);ただし,(adA)n(B)=[A,[A,..,[A,[A,B]..]](括弧はn重)。

(証明):F=F(t)≡exp(tA)Bexp(-tA)と置くと,dF/dt=exp(tA)[A,B]exp(-tA)=exp(tA)(adA)(B)exp(-tA),d2F/dt2=exp(tA)[A,[A,B]]exp(-tA)=exp(tA)(adA)2(B)exp(-tA)です。

 

 それ故,dnF/dtn=exp(tA)(adA)n(B)exp(-tA)です。よって,[dnF/dtn]t=0=(adA)n(B)です。

 

 したがって,Taylorの展開定理によって,F(t)=Σn=0(tn/n!)(adA)n(B)を得ます。

 

 これにt=1を代入すると,F(1)=exp(A)Bexp(-A)=Σn=0(1/n!)(adA)n(B)=exp(adA)(B)です。(証明終わり)

 そこで,もしもAと[A,B]が可換:[A,[A,B]]=0 ならexp(A)Bexp(-A)=B+[A,B]です。

 また,B∈に対してB≡exp(A)Bexp(-A)=exp(adA)(B)と定義すれば,(B+C)=B+C,(BC)=Bとなり,写像:exp(adA):は代数の1つの同型を与えることがわかります。

 これらのことから,一般の性質の良い関数fについて,[f(B)]=f(B)が成立します。

 したがって,特にexp(A)exp(B)exp(-A)=exp(B)=exp{exp(adA)(B)}=exp{B+[A,B]+(1/2)[A,[A,B]]+..}です。

もしも,Aと[A,B]が可換:[A,[A,B]]=0 なら,exp(A)exp(B)exp(-A)=exp{B+[A,B]}です。

 

さらに,Bと[A,B]も可換:[B,[A,B]]=0 なら,上記の式の右辺はexp[A,B]exp(B)と書けますから,exp(A)exp(B)=exp[A,B]exp(B)exp(A)です。

1.2 微分作用素の代数

行列以外に交換子の活躍する典型的具体例を挙げます。

n変数:x1,x2,..,xnの多項式の全体を[x1,x2,..,xn],または単に[];=(x1,x2,..,xn)と表記します。

 

[]の任意の元:f=f()はf()=Σt1t2..tn≧01t1..xntnなる形の全ての有限和で表わされます。

そこで,空間[]は通常の和とスカラー倍によって無限次元ヒルベルト空間をなします。

 

次に,[]に作用する線形作用素として次のものを考えます。

すなわち,xi:f(x)→xif(x),および(∂/∂xj):f(x)→∂f/∂xjです。これら線形作用素の和やスカラー倍の他に作用素同士の積も定義します。このとき,積は必ずしも可換ではありません。

[]に作用する線形作用素の交換関係をまとめると,[xi,xj]=0,[∂/∂xi,∂/∂xj]=0,[∂/∂xi,xj]=δijです。

 

この関係式は,Heisenberg代数を定義する基本関係式であり量子力学において正準交換関係と呼ばれるものと本質的に同じです。

これらの積和で与えられる任意の作用素は一意的に,D=Σt1t2..tn≧0t1t2..tn(x1,..,xn)(∂/∂x1)t1.. ,(∂/∂xn)tnなる形に表わすことができます。

 

この(掛け算×微分)の和の形は,微分作用素の正規形と呼ばれます。

 

なお,t1,t2,..,tnの全てがゼロの場合は作用は微分ではなく単なる掛け算ですが,これも微分作用素の特別なモノと考えます。

最初でもあり,今日はここまでにします。

参考文献:山田泰彦 著「共形場理論入門」(培風館)

 

PS:解党主義ではないが,この際,たとえは悪いかも知れないけど大政翼賛会のように,小異を無視して大同団結(大連合)して非常時を乗り越えてはいかがでしょうか?

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2010年7月13日 (火)

幸せの1つに出逢えたかも(天職か?)

 今の仕事は,いまのところ,給料を貰わなくていいくらいの天職にめぐり逢えたと感じています。

 しかし,カスミだけでは死んでしまうので,願わくは体が許せばフルタイム労働させて頂いて,時給として日々の糧を賄えるだけの手当てが欲しいです。

 たとえば,金融機関ではなく好意で無利子で寸借詐欺みたいに借りているお金くらいは早く全部返したいですしね。

 ところで,「井上ひさし」さん(享年75)に続いて「つかこうへい」さん(享年62)も亡くなられました。

 冥福をお祈り致します。

 今さらのことで,しかもつか氏には関係ないですが,つい思い出しました。

 昔,井上ひさしさんと奥さんの離婚問題について話題が出たときに,若き頃敬愛していた作家:高橋和己の死後奥さんのやはり作家の高橋たか子氏が出した「高橋和己の思い出」を読んだ内容を連想したことを思い出しました。

 彼女は,こわれてしまったと思えそうな自分の夫の自己中心で他人(奥さん?)の心を思いやる余裕がない行動,ある意味では彼の書いた小説とは正反対とも見える実像を赤裸々につづっていました。

 こういうのは赤の他人が入る余地はないのでしょうが,つい先だって長門裕之氏がこわれた南田洋子氏の映像を全国にさらしていたのと同様,若干ですが私はムカっ腹が立ちました。

 さて,話変わって一昨日の選挙の感想です。

 あまり選挙がないのも考えモノですが,短い期間に何回も選挙があると学生の及第試験ではないですが,ケツが落ち着かないと思います。

 試験ばかりだと,肝心の本分たる人民のための政策についてじっくり腰を据えて検討し論議することができず,政局や責任追求論議の方に目をとられて仕方がないのでは?と邪推します。

 政治家というのは1人の"公僕=奉仕(サ-ヴィス)者=ご主人様(人民)のしもべ"ではあるのでしょうが,前にも述べたように,誰であろうとカスミを食って生きているわけじゃないです。

 自分の生活の保証が無い,明日にでも路頭に迷ってしまうかも知れないというのでは腰が落ち着かなくて,まず自分の保身が先に立つだろうというのは人間ですから仕方ないと思います。

 でも当選した片山さつき氏が「地獄を見た。」と会見されているのは,私の邪推かもしれませんが,ちょっとムカつきました。

 あなたのおっしゃる"地獄"ってどんな地獄なんでしょうか。。。それは人には人それぞれあるでしょうが。

 かつて,どなたの言でしたか?「金持ちには金持ちの苦労があるんだ。」というご発言を聞いたときにも,「そうした苦労がイヤなら金持ちやめればいいだけじゃん,それで死ぬわけじゃなし。」と勝手に思ったこともあります。

 代議員以外は選挙しか政治に参加できない,しかもどんなに声が大きかろうとたったの1票という現在の代議制,選挙制そのものを疑問視しているので,それに共謀する共犯になることはずっと避けて生きてきています。

 これは,40年以上も昔,まだ選挙権を得る前の年齢にアジテーションやデモンストレーションというプロパガンダ(情宣活動)や,すわり込み,(ハンガー)ストライキ.etc.のように,ごく偶にお上から下される投票機会にだけ"清き一票"を投じるよりも有効と感じられ充実感も感じられる社会活動,政治活動の洗礼を受けた影響かもしれません。

 自分の是とする意見があって,それを主張したいならテロ行動をやれとはいいませんが,"これ=投票だけ"にこだわる必要ないと感じています。

 もっとも,昔そうした投票以外のハデに見える"甘えた"活動ができたのは,日本という平和な国で,生まれたときにはふた親もそろっていて,自活で暮らしたとはいえ大学にも行ける余裕があったからです。

 どこかの国のように娘の身売りでもしなければ飢え死にするという状況であれば,たとえば投票するだけという以外には"ヒマ=肉体的,精神的余裕"はないでしょうね。

 まあ,上からの政治,あるいはマスコミ(所詮はスポンサー様のしもべ)による情宣が人々をそういう状況に追い込んでいるという意味もありますが。。

 そこで,今自分に可能であって目指していることは上からの政治とは直接には関係ないことです。

 つまり,たとえ偽善でキレイゴトであろうと,外野の目線は気にせず,募金を含むボランティア的な草の根活動です。

 いかんせん,障がいがあって(甘え?)自分の世話もままならないのですが,「夢は持ってさえいればいつかはかなう。」のでしたよね。。。

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2010年7月12日 (月)

大哺乳類展に行きました。

 先週7/8(木)に帰宅してPCのメールを開くと「朝日新聞アスパラ(aspara)クラブ」から上野公園内の国立科学博物館で7/10から開かれる「大哺乳類展(海のなかまたち)」への特別招待メールが来ていました。

 7/12(月)の14時から14時半の入場限定で2名までということなので,M子さんを誘って2人で行く予定でしたが,私が午前に仕事を終えて昼食後13時過ぎに,彼女から「雨でもあり急用ができて行けない。」との連絡があって,今さら他の誰も誘う余裕がないので,もったいないとは思いつつ仕方なく私一人で行ってきました。

 こういうせっかく抽選?に当たったものを断ったりスッポカシたりすると,次の招待が当たっても見送られるカモと思ったので一人でも行くべきでしょうネ。

 海の哺乳類というとほぼ同種目らしいイルカ,クジラ,シャチが中心でした。他にはアザラシ,オットセイ,セイウチ,後はジュゴンやマナティくらいかな。。さらにむしろ陸の哺乳類のラッコにシロクマについての展示でした。

 写真をパシャパシャ取ってるうちに,すぐにデジカメの電池がなくなってしまったので後は単に見てまわりました。そういえば,昨日も教会礼拝コンサートで結構何枚も写真を取ったので電池を換えておくべきでした。

 下の最初の骨格の写真はシャチです。次がハクジラ類2つ,そしてその頭部だけetc.だったかな。。記憶あいまい。。

      

   

      

       

 

    

 1階は,ところどころに大画面モニターで骨じゃなく生きている海の哺乳類の映像と音声がある以外には歯やヒゲも含めてほとんど骨ばかりでした。

 とにかく,一人でまわると逆に疲れますね。座れるところ余りないし。。

 2階は,結局中でしか買えない関連グッズ販売という感じでした。。

 次はシュールレアリストの端くれとして,東京芸大美術館の「シャガール展」にでも行ってみたいですね。。           

      

(「TOSHIの宇宙」のURLのmaldoror-ducassecocolog-nifty.com)のマルドロール-デュカス(ロートレアモン),および2006年9/2の記事「ロートレアモンとサド」,2006年12/12の記事「ロートレアモンとサド(その2)」参照)

 最近,金もないけど飲みに行こうとか考える前に早い時間から疲れて眠ってしまっていて,それでも5時間経てば確実に覚醒するので夜中の2時~5時に起床すること多いですね。

 まあ,常人の半分以下のスピードですが,携帯の歩数履歴によると私としては多い平均5千歩くらいを毎日歩いているらしく,それも緩やかとはいえ坂道ばかりなので病気のせいか異常に疲れます。健康的なのかなあ?

 昨日は教会,今日は博物館,明日は手話,そして週末には年1回の将棋夏合宿と,このところ仕事以外にもゼイタクなスケジュールで充実してます。

 別に,数物系の勉強や読書,そしてCD,DVDでの音楽や映画の鑑賞にブログ書き,息抜きにネット将棋をして遊ぶという感じで,歩き回らなくてもそれなりに充実していてヒマは無いのです。 

 モノや人に飢えなければ,ずっとゴロゴロして家にこもる趣味に耽けってるばかりでしたが,体を動かした方がイイんでしょうね。

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2010年7月11日 (日)

教会に行ってきました。

 小石川白山教会に行ってきました。

 日本基督教団の教会ということです。神父でなく牧師という呼び名なのでプロテスタントですね。

 白山駅からいつも上るゆるやかで長い坂が異常にしんどかったのは,やはり気温が高かったせいなのかな?時間に余裕あったので休み休みゆっくり進んだのでOKでしたが。。。

 10時半礼拝開始なのに10時15分頃着いて早過ぎたかと思いましたが,5分前までに着席ということで問題ありませんでした。

 念のため,以前,御茶ノ水を歩いてたとき無料で配っていたのを貰った英日対訳横書きの新約聖書(NEW TESTAMENT)(写真左)を持参して見せたのですが,もっと訳が新しいという日本語だけの縦書きの新共同訳の大きさ同じの新約聖書(写真右)を礼拝堂入り口で無料で頂きました。

 対訳は老眼鏡で見てもやっと読めるくらいでしたが頂いた縦書きは字が大きいのが助かります。

 もっとも,ちゃんと有料で買った新共同訳の全世界でベストセラーの聖書(旧約・新約)を持ってはいますが。。。ほとんど開いていません。

  昨日であれば,礼拝日ではないので無料のゴスペルコンサートとして入るだけだったのでは?と思ったのですが普通に教会員の方が多かったようです。

 2日とも謂わゆるオープンチャーチで今日は礼拝日として,後で聞いたところでは,非会員(新参者)は昨日22名,今日は私を含め26名ということでした。

 入場者数は見た感じでは全体でもこの倍くらいでしょうか?

 映像で見るのでなく,実際に教会に入ったのは高校の修学旅行での長崎以来で,礼拝は初めての体験です。目が悪いし,ブログ用の写真を取るという目的があったので中央真ん中よりちょっと前に座りました。

 やはり,まず天井が高いのに目が行ってしまいました。これは音響的には楽しみだなと思いました。

 舞台右肩で演奏の(パイプ)オルガンのきれいな音色と共に,当番制らしい司会の方によって礼拝が始まり聖書の本日の題目部分が読まれました。

 私も知っている有名な,「金持ちが神の国に入るのはらくだが針の穴を通るより難しい。」という部分でした。その直前には子供を祝福したという項目があってこの順番にも意味があることを後で教えてもらいました。

 立つことが無理な人以外は全員が起立して歌う賛美歌の歌詞がわからないので突っ立ってじっと聞いてると,後ろから老婦人(スタッフ?)が愛星幼稚園のロゴつきの賛美歌本を貸してくださいました。

 そこで,賛美歌312番とその後の461番は無難に歌いました。

 立って朗読するアーメン(さぞあれかし?)や主の祈りはいいとしても,使徒の誓い?でしたか?イエスが三日後によみがえられたのを信じます云々の信じますというくだりは,私は求道者でも洗礼を授かった信者でもないのでウソを言うのは嫌なため,口をモゴモゴしてました。

 いずれにしろいい経験でした。教会の敷居,少しは低くなったかも。。

 やはり,昔の使徒行伝の時代とは違って,統一教会や「エホバの証人(ものみの塔)」がやってるように向こうからセッセと布教してまわる金集めのカルト教団では無くて,異端でないキリスト教はこちらから積極的に門を叩くべき狭き門なのですね。

 後で献金もまわってきましたが,私は1円にも泣いてる日々で(食って寝るだけで満足すればいいのに。。好きな本(専門書)や酒に金を使わずにね),無料というから入ったのですから,これは正直に遠慮しました。

 牧師さんだってカスミを食べてるわけじゃないでしょうから,余裕あれば神社のお賽銭のように少しはお礼がしたかったのですが。。

 代表者のお礼の言葉は予想はしてましたが,やはりほんの一部を神にお返しするというようなセリフでした。

 細川牧師の「一生の出会い」という本日のテーマは,「イエスとの出会い」という意味でした。これを聞いただけでも本日来たかいがありました。

 "らくだが針の穴。。"の部分の誤解が一つ解けたからです。

 今までは,「金持ちが神の国に入れない。」というのを,「私のように日銭は無いながらも生まれつき飽食の日本人として生まれたことも含め,文字通り日々食べていく以上の余分な金を持った"金持ち"が神の国に入りたかったら,お金を全部を捨てなさい。」という意味と解釈していました。,

 つまり,私の2009年5/15の記事「カルネアデスの舟板」の内容と同じ意味だろうと思っていました。

 すなわち,新約聖書の別の箇所の「愚か者よ,お前は今夜召される。」とか,「神と富(マモン)の両方に仕えることはできぬ。」などと同義と解釈してました。

 しかし,お金に限らず,"財産=各自が命の他に?最も大事にしているもの全て"(=私ならライフワークの物理,数学や雑学の思想,哲学,趣味の将棋,人助けをしたいという思い上がったエゴの気持ちetc)を捨てろという意味ですね。

 つまり,(神よりも)愚かな人間の考えなどは捨てて,すぐ前の項目の子供が親に甘えるごとく,全てを神に委ねることが解放される,救われる,あるいは死後に復活する道である,「全ての他のしがらみを捨てて私に従いなさい」ということを意味しているらしいです。

 イヤー,自力本願は全部捨てて完全にイエス(神?)に頼るべきという意味であって,イエス後のペトロ教皇以下の宗教,信仰が本当に聖書の中のイエスの意図するところ,イエスの計画かどうかはわかりませんが,確かにこれは人が真に解放される道の1つでしょう。

 私は,不遜にも面白いとは感じましたが自身は今のところエゴを捨てられないし捨てようとも思えないので無理ですね。

 確かに,頬をぶたれようが自己主張をせず,我慢しろという意味にも取れますから,社会革命が必要であると考える輩にとってはその意味で「宗教は人民のアヘン」となるのでしょう。←古るーい。。

 ところで,私がこれまでに把握していた聖書の内容として実際に読んだものは,退屈な聖書そのものでなく,解説書的物語的なものです。(ヨハネ黙示録だけはわからないなりに原文のみですが。。)

 ,主として読んだのは,まず文庫本の「聖書物語」と犬養道子著の「旧約聖書物語」,「新約聖書物語」,および翻訳本の「小説 聖書(旧約篇)」,「小説 聖書(新約篇)」,「小説 聖書(使徒行伝)」です。

 最後の3冊目の使徒行伝は,いつの頃か?心臓病になった頃かな?何らかの理由で途中読みかけのままになってます。

 まだ,パソコン通信時代のニフティサーブの「FLORD(キリスト教フォーラム)」か「FBIBLE(聖書フォーラム)」の会員時代にプレゼント応募して抽選で七十人訳聖書(ギリシャ語)の,さらに邦訳の「創世記」が当たったので送って,頂いたものもまだ大事に持っています。

 ただし,これらを読んだ内容は例えば新約ならマルコ,マタイ,ヨハネ,ルカ,あと何だっけ?の何番であるかとかの細かいことは知らないけれど,例の「忘れない病」という頭の病気のせいか,90%以上を記憶しているので,ブログでも不正確ながらときどき聖書の言葉として引用しています。

 その他,興味が湧くことに神学的解釈も含めて資料を読み漁ったりしています。例えば,心の貧しきものと貧しきものの違いは?とかです。

 FLORDの会議室を読んでいた当時,「心の貧しきものというのは欲がないという意味ですか?」と質問したら,「面白い解釈ですが少し違うのでは?」というお答えでした。

 「心の貧しきもの」というのは物質ではなく霊的な意味で貧しくて求めている人,卑近な表現では愛に飢えていて霊,主を求めるものという意味らしいです。でも聖書の福音の別の部分では,"心の”抜きのただの「貧しきものは幸いである」という表現もありました。

 これは普通の「物質的に貧しい方が神の国に迎えられるので幸福である。」という意味でしょう。福音は一度でなく何度もあったのでしょうね。。

 私は別に,信仰をしているわけではなく,聖書,キリスト教は純粋に好奇心,興味の対象なのです。こんな興味深いものに探究心が湧かないわけがない。 

 映画も「サムソンとデリラ」,「十戒(C.ヘストン)」,「ゴルゴダの丘(ジャン・ギャバン他)」,「奇跡の丘」,「偉大な生涯の物語」,「ベンハー(C.ヘストン)」,「ジーザス・クライスト・スーパースター」,「最後の誘惑」「パッション(メル・ギブソン監督)」etcの聖書が源のもの,

 それに,十字軍の頃のアッシジの修道士の祖:フランチェスコ(フランシスコ)や修道女の祖:キアラ(クララ)を描いた「ブラザーサン・シスター・ムーン」↓

  

 そして,ミッキーーローク主演の同じテーマの「フランチェスコ」など,

 それに,関連した,魔女裁判モノかな?「ジャンヌ・ダルク(リュック・ベッソン監督,ミラ・ジョボビッチ主演)」や,ペンシルバニア州のアーミッシュのような教団の話「ヴィレッジ(シャマラン監督)」(2006年11/22「思い出し泣き(その2)」参照)etc.

 そうそう肝心な「天使にラブソングを」も見ました。同じウーピーの「カラーパープル」も見たけどこれはクリスト教の映画じゃない。。。

 音楽では,ヘンデルの「メサイヤ」,モーツァルトの「レクイエム」,フォーレの「レクイエム」,グリーグの「ペールギュント」etc.,

 小説ではSF異端モノが中心ですが,斉藤栄「イエス・キリストの謎」,マイケル・コーディ「イエスの遺伝子」,「最後の。。」そして,最近のダン・ブラウンの「ダヴィンチ・コード」,「天使と悪魔」etcも鑑賞しています。

 肝心のコンサートですが,ソプラノの河村靖代さんとピアノの鳥原和代さんはキリスト教的意味ではなく本当の姉妹でした。

 彼女たちによる歌唱は美しい日本語訳の歌詞の賛美歌らしいものでした。たった数曲でしたが生のソプラノの声感動しました。。来て良かったあ。。

 

 ただ,これらは本当にゴスペルなの?と私は感じました。

 もっともゴスペルは奴隷当時のアメリカの黒人が唄ったものという以外に明確な線引きがあるの?ということさえ,私は知らないのですが。。どうも明るすぎると感じただけです。

 例えば,ジャズなら私なりのブルースの概念があります。

PS:7月12日(月)早朝です。スペイン優勝おめでとう,決勝を夜中の3時半から見る予定でしたが珍しく疲れて朝まで寝てしまいました。

 ゴルフの全米女子オープンは朝方に見ましたが。。解説のアヤコさん相変わらずカワイらしい!って関係ないか。。。

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2010年7月10日 (土)

ゴスペルコンサート(小石川白山教会)

 今日は午後1時半から,最近通っている職場のすぐそばの東洋大学と小石川植物園の間の愛星幼稚園の中の小さな小石川白山教会での無料ゴスペルコンサート・福音メッセージに行く予定です。

 本日のメニューはジャズ・ピアノ 上保一恵さん(アメージンググレイスほか)と福音メッセージ「変えられた人生」清瀬弘毅牧師です。

 明日(11日)も日曜日ですから,午前10時半からソプラノ独唱 河村靖代さん(ピアノ鳥原和代さん) ,聖歌隊の賛美歌合唱と細井茂徳牧師の「一生の出会い」など,もっと大々的なメニューがあるらしいのですが,日曜日は私にも他に予定があるので土曜日にしました。

 マンション内の資源ゴミ置き場に梁石日の小説「闇の子供たち」が捨ててあったので,拾って読み始めました。まだ少ししか読んでませんが,タイの子供の人身売買の話で幼児虐待を告発する話らしいです。

 ドキュメンタリーじゃないし本当の話とは断定できませんが,モデルがいるらしく一昨年に日本で映画化されたらしいです。

 背景には,子供を売らないと飢え死にするほどの極貧があるようで,貧困という環境をそのままにして倫理にもとるからやめろ。というのでは,残る家族全員が飢え死にしてもいいのか?という,昔の日本の貧困農家の娘の身売りと同じような難しい問題があるようです。 

 私は日ごろから軽々しく人助けを口にしてますが,本当に甘チャンで,おボッチャンのお遊びに過ぎないことを痛感しています。

 ともあれ,無料コンサートや拾った本でゼイタクが楽しめる日本は北朝鮮とか東南アジアに比べると,まだまだ本当に平和ですね。。。

↓「北村忠三「足の向くままに」から小石川白山教会です。

※白山駅から植物園への道すがら、偶然前を歩いた「小石川白山教会」で、白が印象的だったのでパチリ。1902年,ミス・バンファインドトミス・カメラーが小石川区指ヶ谷町83、84番地に土地を借りて、宣教師館と約15坪の小さなチャペルを建て、11月12日にそこに移り住んだ。

 これが、小石川福音教会で、現在の小石川白山教会の前身 だそうです。

PS:実は土曜日のコンサートには行けませんでした。

 これを書いてる最中の朝8時過ぎに3年前までいた会社の後輩3人から携帯が入って西荻まで呼び出され,交通費がギリギリだったのですが10時頃に自宅を出て,11時過ぎからN目チャン家で飲んでるうちに,友達の方を優先して間に合わなくなったのでした。

 またまた,西荻駅前のカラオケボックスで唄いまくりしゃべりまくりで帰宅は18時過ぎになりました。何故か上着のポケットに5千円入っていて,"俺は物乞いじゃないぞ"と思いつつ,思わず手を合わせてしまいました。

 いつか100倍にして返すからネ。。

 久しぶりに自分をさらけだしてもいい連中と会って,年上の後輩Tさんをちょっと殴りました。, 

 いつもいつも,"甘ったれやがって死にたいならサッサと死ね。俺が殺したるぞ"。。"ならさあ殺せ”という話になって,"何だできないのか"と殴って挑発したのでした。,

 去年は門前仲町のカラオケボックスの開かない窓に私が頭からぶつかってコブができたし,もっと以前は忘年会の2次会で上野駅近くの24時間喫茶で店員が借金の取立てかなんかと勘違いして,"他のお客さんもいらっしゃるので"と注意され,後で肩くんで帰ったので驚いてたこともあったっけ。。

 俺を何とかして怒らせて本性を引きだそうという魂胆はわかってるのだが,俺は男より女の方が好きなんだよ。。

 他に誰も見てないし私も唄いながら大泣きしたあげく,帰りの電車の中では,またT氏と二人になって俺を大して知りもしないくせに,”お前は天才だ"と大声で連呼してバカにしくさって。。

 そんなに買いかぶってるなら,昔の漫画家に戻って大金でもつかんで,オゴってくれよナ。。

 俺はナルシストで自分がカワイイのは本当だが,そこまでうぬぼれちゃいねえよ,一体何の天災なんだ?。。酔っ払ってるし,まわりは知らない人ばかりとはいえ,恥ずかしいじゃねえか。。。

 (女房も子供もいて酔ったときだけなんだけど。。)

 あっと,セッカクの無料で聞けるプロのゴスペルだから,明日の朝行こう。。。

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2010年7月 6日 (火)

場理論におけるS行列とLSZの公式(5)

 閑話休題というか(摂動論について先走ります。 

 

 摂動論の目的は,LSZの公式でS行列要素を構成する源になる

 全ての完全なGreen関数:

 τ(x1,..,xn)≡<0|T(φ(x1)..φ(xn))|0>を具体的に

 計算する1つの方法を提供することです。

 

 さて,一般の相互作用する場φ(,t),および正準共役運動量

 (canonical conjugate):π(,t)の同時刻交換関係は,

 In-field(漸近場):φin(,t),およびπin(,t)によって満足

 される交換関係と同じです。

 

 さらに,仮定によって,状態の完全系が真空(vacuum);|0>に

 φ,またはφinを繰り返し作用させることによって得られるので

 これらの場もまた演算子の完全系を作っています。

 

 (※演算子の完全系とは任意の演算子がこれらによって展開可能

 という意味です。※)

 

 

 故に,φとφinとは摂動論適用可能性の仮定に従って1対1に

 対応するため,それらはあるユニタリ演算子U^(t)による

 ユニタリ変換で関係付けられます。

 

 すなわち,φ(,t)=U^-1(t)φin(,t)U^(t),

 およびπ(,t)=U^-1(t)πin(,t)U^(t)です。

 

 演算子U^(t)の動力学は,この関係式から見出すことが

 できます。

 

 というのは,φ(x)とφin(x)の両方についての運動方程式

 が既知であるからです。

 

 特に,自由場の交換関係と自由場の方程式を満足するIn-field

 に対する定義関係式から,次のHeisenberg方程式が導かれます。

 

 ∂φin(x)/∂t=i[Hin^(φinin),φin(x)],

 ∂πin(x)/∂t=i[Hin^(φinin),πin(x)] です。

 ここでHin^(φinin)は物理的質量mを持つ粒子に対する

 自由場のHamiltonianです。

 

 さらに,正確なHeisenberg場に対する(時間の)平行移動不変性

 から次式の成立することが保証されます。

 

 すなわち,∂φ(x)/∂t=i[H^(φ,π),φ(x)]です。

 これはまた,∂π(x)/∂t=i[H^(φ,π),π(x)]の成立も

 保証します。

 

 そこで,φdin(x)≡∂φin(x)/∂t

 =(∂/∂t){U^(t)φ(,t)U^-1(t)}

 =U^d(t)φ(,t)U^-1(t)U^(t)φ(,t)

 U^-1d(t)U^(t)φd(,t)U^-1(t)

 =U^d(t)U^-1(t)φin(x)+φin(x)U^(t)U^-1d(t)

 +iU^(t)[H^(φ,π),φ(x)]U^-1(t) です。

 

 ここで,公式:U^(t)U^-1d(t)

 =(∂/∂t){U^(t)U^-1(t)}-U^d(t)U^-1(t)

 =-U^d(t)U^-1(t)を使用します。

 

 また,φin(x)=U^(t)φ(x)U^-1(t)によって,

 U^(t)H^(φ,π)U^-1(t)=H^(φinin) です。

 

 したがって,結局,

 φdin(x)=[U^d(t)U^-1(t),φdin(x)]

 +i[H^(φinin),φin(x)]

 =φdin(x)+[U^d(t)U^-1(t)+iHI^(φinin),φin(x)]

 を得ます。

 

 同様にして,πdin(x)=πdin(x)

 +[U^d(t)U^-1(t)+iHI^(φinin),πin(x)]

 も得られます。

 

 ただし,HI^(φinin)≡H^(φinin)-Hin^(φinin) です。

 

 このHI^(φinin)は時間tに陽に依存する相互作用項(摂動項)

 をIn-fieldで表現したものです。

 以下,このHI^(φinin)をHI(t)と表記することにします。

 

 φdin(x)=φdin(x)+[U^d(t)U^-1(t)+iHI(t),φin(x)],

 かつ,

 πdin(x)=πdin(x)+[U^d(t)U^-1(t)+iHI(t),πin(x)]

 から,[U^d(t)U^-1(t)+iHI(t),φin(x)]=0,

 かつ,[U^d(t)U^-1(t)+iHI(t),πin(x)]=0 です。

 

 そして,φininが演算子の完全系を構成することから

 E0(t)をc数として iU^d(t)U^-1(t)=HI(t)+E0(t)

 と書けます。

 

 そこで,改めてHI'(t)≡HI(t)+E0(t)と定義すると,

 U^d(t)U^-1(t)=HI'(t)ですからU^(t)は方程式;

 ∂U^(t)/∂t=HI'(t)U^(t) を解けば得られます。

 

 U(t,t')≡U^(t)U^-1(t')と定義すると,

 i∂U(t,t')/∂t=HI'(t)U(t,t'),

 ただし,U(t,t)=1です。

 

 これを近似展開に便利な積分方程式で表わせば,

 U(t,t')=1-i∫t'tdt1I'(t1)U(t1,t')

 となります。

 

 これから,解の初期値をU(t1,t')≡1とする反復法によって

 U(t,t')=1-i∫t'tdt1I'(t1)

 +(-i)2t'tdt1I'(t1)∫t't1dt2I'(t2)+..

 +(-i)nt'tdt1t't1dt2..∫t'tn-1dtn[HI'(t1)HI'(t2)

 .HI'(tn)]+.. なる摂動展開を得ます。

 

 明らかに,t1≧t2≧..≧tnですから,相互作用項の積:

 [HI'(t1)HI'(t2)..HI'(tn)]を時間順序積(経時積;T積):

 T(HI'(t1)HI'(t2)..HI'(tn))で置き換えることができ

 ます。

 

 すると,

 U(t,t')=1+Σn=1(-i)nt'tdt1t't1dt2..∫t'tn-1dtn

 T(HI'(t1)T-HI'(t2).HI'(tn)) と書けます。

 

 この表現式は時間変数t1,t2,..,tnの交換対称な形をしている

 ので,対称化して

 U(t,t')=1+Σn=1t'tdt1t'tdt2..∫t'tdtn

 T(HI'(t1)HI'(t2)HI'(tn))と書くことができます。

 

 これを記号的にU(t,t')≡T(exp{-i∫t'tI'(t)dt})

 =T(exp{-i∫t't4Iin(x)}) と表現します。

 

 U演算子:U(t,t')の有用な性質は

 U(t,t')=U(t,t")U(t",t')です。

 これは定義:U(t,t')=U^(t)U^-1(t')から明らかな

 性質です。

 

 特に,1=U(t,t)=U(t,t')U(t',t)により,

 U(t,t')=U-1(t',t)です。

 さて,これを用いてHeisnbeg場の"時間順序積=T積"の

 真空期待値:

 τ(x1,..,xn)≡<0|T(φ(x1)..φ(xn))|0>

 をIn-fieldで表現することに向かいます。

 まず,τ(x1,..,xn))=<0|T(φ(x1)..φ(xn))|0>

 =<0|T(U^-1(t1in(x1)U(t1,t2in(x2)U(t2,t3)..

 U(tn-1,tnin(xn)U^(tn))|0>

 =<0|T(U^-1(t)U(t,t1in(x1)U(t1,t2in(x2)

 U(t2,t3)..U(tn-1,tnin(xn)U(tn,-t)

 U^(-t))|0>

 です。

 ただし,tは∞ に近づくことも許される準拠時間です。

 

 こうした極限では,t1,t2,..,tn∈(-t,t)ですから,

 U^-1(t)とU^(-t)をT積から外に出して

 τ(x1,..,xn)=<0|U^-1(t)T(U(t,t1in(x1)U(t1,t2)

 φin(x2)U(t2,t3)..U(tn-1,tnin(xn)U(tn,-t))

 U^(-t)|0> と書くことができます。

 そして,T(U(t,t1in(x1)U(t1,t2in(x2)U(t2,t3)

 ..U(tn-1,tnin(xn)U(tn,-t)) において,

 一般性を失なうことなく

 t>t1>t2>..>tn-1>tn>-t と仮定できます。

 すると,T(U(t,t1in(x1)U(t1,t2in(x2)U(t2,t3)

 ..U(tn-1,tnin(xn)U(tn,-t))

 =U(t,t1in(x1)U(t1,t2in(x2)U(t2,t3)..

 U(tn-1,tnin(xn)U(tn,-t) です。

 これに,U(t,t1)=T(exp{-i∫t1tI'(τ0)dτ0}),

 U(t1,t2)=T(exp{-i∫t2t1I'(τ1)dτ1}),..,

  U(tn-1,tn)=T(exp{-i∫tntn-1I'(τn-1)dτn-1}),

  U(tn,-t)=T(exp{-i∫-ttnI'(τn)dτn}) 

  を代入します。

 

 かくして,

 U(t,t1in(x1)U(t1,t2in(x2)U(t2,t3)

 ..U(tn-1,tnin(xn)U(tn,-t)

 =T(exp{-i∫t1tI'(τ0)dτ0})φin(x1)

  T(exp{-i∫t2t1I'(τ1)dτ1})φin(x2)..

  T(exp{-i∫tntn-1I'(τn-1)dτn-1})φin(xn)

  T(exp{-i∫-ttnI'(τn)dτn}) 

 となります。

 

 t≧τ0≧t1≧τ1≧t2..≧tn-1≧τn-1≧tn≧τn≧-t

 ですから,T記号は,

 t,τ0,t11,t2,..,tn-1n-1,tnn,-tに対する

 記号と考えます。

 

 すると,

 T(U(t,t1in(x1)U(t1,t2in(x2)U(t2,t3)..

 U(tn-1,tnin(xn)U(tn,-t))

 =T(φin(x1in(x2)..φin(xn)

 T(exp{-i∫t1tI'(τ0)dτ0})T(exp{-i∫t2t1I'(τ1)dτ1})

 ..T(exp{-i∫-ttnI'(τn)dτn})) です。

 結局,T(U(t,t1in(x1)U(t1,t2in(x2)U(t2,t3)

 ..U(tn-1,tnin(xn)U(tn,-t))

 =T(φin(x1in(x2)..φin(xn)T(exp{-i∫-ttI'(τ)dτ})

 と書けます。

 

 さらに記号的に書けば,これは,

 T(φin(x1in(x2)..φin(xn)exp{-i∫-ttI'(τ)dτ})

 となります。

 これは,より正確には

 Σm=0{(―i)m/m!}∫-ttdτ1.. dτm

 T(φin(x1in(x2)..φin(xn)HI'(τ1) HI'(τ2)..HI'(τ))

 で定義される記号で,確かに元のT積を忠実に示すものです。

※(注):つまり,

 Σm0=0Σm1=0..Σmn=0{(―i)m0/m0!}{(―i)m0/m1!}..

 {(―i)m0/mn!}t1tdτ01dτ02..dτ0m0

 ∫t2t1dτ11dτ12..dτ1m1..-ttndτn1dτn2..dτnmn

 {HI'(τ01)HI'(τ02)..HI'(τ0m0in(x1)HI'(τ11)

 HI'(τ12)..HI'(τ1m1in(x2)HI'(τ21)..HI'(τn-1mn-1)

 φin(xn)HI'(τn1)I'(τn2)..HI'(τnmn)} 

 

 が次のT積の特別な場合です。

 Σm0=0Σm1=0..Σmn=0{(―i)m0/m0!}{(―i)m0/m1!}..

 {(―i)m0/mn!}∫t1tdτ01dτ02.. dτ0m0t2t1dτ11dτ12..

 dτ1m1..∫-ttndτn1dτn2..dτnm

 T(φin(x1in(x2)..φin(xn)HI'(τ01)

 HI'(τ02)..HI'(τ0m0)n..HI'(τn1)HI'(τn2)..HI'(τnmn))

 です。(注終わり)※

 

 かくして,τ(x1,..,xn)

 =<0|U^-1(t)T(φin(x1in(x2)..φin(xn)

 T(exp{-i∫-ttI'(τ)dτ})U^(-t)|0> であり,

 U^-1(t),U^(-t) を除いてIn-fieldsによってS行列

 が表現されました。

 

 最後に,U^-1(t),および,U^(-t)は,真空|0>がt→∞

 の極限において,これらの演算子の固有状態であることを示す

 ことによって除去できます。

 

 このことを示すため,他のαと共に1粒子pを含む任意の

 入射状態|αp;in>を考えます。

 

 pがKlein-Gordon粒子の場合には

 <β;out|pα;in>=<β;out|ain^+(p)|α;in>

 =<β-p;out|pα;in>

 -i∫d3p(x)∂0<β;out|φin(x)-φout(x)|α;in>

 でした。

 

 これによって,

 <pα;in|U^(-t)|0>

 =<α;in|ain^(p)|U^(-t)|0>

 =-i∫d3

 fp*(x,-t')∂0'<α;in|φin(x,-t')U^(-t)|0>

 です。

 

 (※同様な形式はFermi粒子や光子に対しても少し違う形で

 得られます。) 

 φ(,t)=U^-1(t)φin(,t)U^(t)を代入すると

 <pα;in|U^(-t)|0>

 =-i∫d3

 fp*(,-t')∂0'<α;in|U^(-t')φ(,-t')

 U^-1(-t')U^(-t)|0> です。

 

 これはt=t'→∞ とするとき,漸近条件:

 lim t→-∞<α|φf(t)|β>=√Z<α|φinf|β>に従って,

 次の値に近づきます。

 

 すなわち,

 √Z<α;in|U^(-t)ain^(p)|0>

 +i∫d3p*(,-t)<α;in|U^d(-t)φ(,-t)

 +U^(-t)φ(,-t)U^-1d(-t)U^(-t)|0>

 に近づきます。 

 そして,明らかに,ain^(p)|0>=0 です。

 また,U^dφ+U^φU^-1dU^

 =U^dU^-1φinU^+φinU^U^-1dU^

 =[U^dU^-1in]U^=-i[HI',φin]U^=0 です。

 

 何故なら,相互作用:HI'(t)=HI'(φinin)にはπin=φid

 などの時間微分結合が含まれないと仮定しているので,

 [HI',φin]=0 です。 

 したがって,t→∞ のとき,1粒子以上を含む全ての

 In-states |pα;in>に対して

 <pα;in|U^(-t)|0>→ 0 が成立します。

 

 それ故,真空の一意性によりt→∞ では状態U^(-t)|0>

  は|0;in>=|0> の定数陪です。

 

 すなわち,ある定数λが存在してt→∞で

^(-t)|0>=λ|0>と書くことができます。

同様にしてt→∞でU^(t)|0>=λ|0>も示すこと

ができます。

 

定数λ,およびλは,t→∞ において,

λλ*=<0|U^-1(t)|0><0|U^(-t)|0>

=<0|U^(-t)|0><0|U^-1(t)|0>=<0|U^(t-t)|0>

=<0|T(exp{i∫-ttI'(τ)dτ})|0>

=T(exp{-i∫-ttI'(τ)dτ})|0>-1を満たします。

 

 そこで,

τ(x1,..,xn)

=<0|U^-1(t)T(U(t,t1in(x1)U(t1,t2in(x2)

U(t2,t3)..U(tn-1,tnin(xn)U(tn,-t))U^(-t)|0>

=<0|T(φin(x1in(x2)..φin(xn)

exp{-i∫-ttI'(τ)dτ})|0>/T(exp{-i∫-ttI'(τ)dτ})|0>

です。

さらにt→∞ に極限移行すると,

τ(x1,..,xn)=<0|T(φin(x1in(x2)..φin(xn)

exp{-i∫-∞I'(τ)dτ})|0>

/<0|T(exp{-i∫-∞I'(τ)dτ})|0> です。

すなわち,

τ(x1,..,xn)=Σm=0{(-i)m/m!}∫-∞∫d41..d4m

<0|T(φin(x1in(x2)..φin(xn)Iin(y1))

Iin(y2)..Iin(ym)))|0>

/[Σm=0{(-i)m/m!}∫-∞∫d41..d4m

<0|T(Iin(y1))Iin(y2)..Iin(ym)))|0>

です。

 これが,摂動論の基本的な最終結果です。

 

§17.4 Wick's Theorem(Wickの定理)

 まず,摂動展開の最終結果は,

 τ(x1,..,xn)

 =Σm=0{(-i)m/m!}∫-∞∫d41..d4m

 <0|T(φin(x1in(x2)..φin(xn)Iin(y1))

 Iin(y2)..Iin(ym)))|0>

 /[Σm=0{(-i)m/m!}∫-∞∫d41..d4m

 <0|T(Iin(y1))Iin(y2)..Iin(ym)))|0>

 です。

 さらに,これを評価するには,右辺各項の

 <0|T(φin(x1in(x2)..φin(xn)Iin(y1))

 Iin(y2)..Iin(ym)))|0>

 を具体的に計算する必要があります。

 <0|T(φin(x1in(x2)..φin(xn)

 Iin(y1))Iin(y2)..Iin(ym)))|0>

 に含まれるスカラー場の真空期待値項は

 <0|T(φin(x1in(x2)..φin(xn)|0>なる因子の

 積分を含みます。 

 これを具体的に積分できる形にするため,消滅演算子

 を1つ1つ右に生成演算子を左に移動させることを

 試みます。

 こうして,時間順序積を謂わゆる正規順序積

 (normal-ordering product)にする計画からFeynman振幅

 が得られます。

 

 これは,最初1949年にDysonによって展開され,後にWick

 によって拡張されました。Wickは次のような定理を証明

 しました。

 

 内容は次の通りです。

 

 T[φin(x1)..φin(xn)]

 =:φin(x1)..φin(xn):

 +{<0|T(φin(x1in(x2)|0>:φin(x3)..φin(xn):

 +(全ての置換項))

 +{<0|T(φin(x1in(x2)|0><0|T(φin(x3in(x4)|0>

 :φin(x5)..φin(xn):+(全ての置換項)))+..

 +{<0|T(φin(x1in(x2)|0><0|T(φin(x3in(x4)|0>..

 <0|T(φin(xn-1in(xn)|0>+(全ての置換項))

 (↑ nが偶数のとき),

 

 または,

 +{<0|T(φin(x1in(x2)|0><0|T(φin(x3in(x4)|0>..

 <0|T(φin(xn-2in(xn-1)|0>φin(xn)+(全ての置換項))

 (↑ nが奇数のとき)

 です。

(※記号;;で表わしたものが正規順序積でありこれは場の演算子

を正振動数部分(消滅演算子)+負振動数部分(生成演算子)に分けて

積を展開した後,生成が左に消滅が右にくるように交換して交換子

からの寄与は無視したものです。これの真空期待値はゼロです。※)

 

 真空期待値,または縮約(contractions)は場の演算子を

 正規順序(normal-order)に並べ換えるとその交換子から

 発生します。 

 そして,これらの"縮約=場のT積の真空期待値"は

 自由場のFeynman伝播関数の場の理論的表現となって

 います。

 

 演算子の正規順序積:φin(x1)..φin(xn):は,これの因子

 である各演算子をφin(x)=φin(+)(x)+φin(-)(x)と正振動数

 部分と負振動数部分に分解することから形成されることを思い

 起こします。

 

 ここで,φin(+)(x)は消滅演算子のみ,φin(-)(x)は生成演算子

 のみから成っています。

 

 正規順序に到達するためには,あらゆる生成演算子があらゆる

 消滅演算子の左に位置するようにします。

 

 ただし,もしもFermi場を互換するときには順序の交換のたび

 に(-)符号が導入される必要があります。

 

 陽に書くと:φin(x1)..φin(xn):

 =ΣA,BδpΠi∈Aφin(-)(xij∈Bφin(+)(xj) です。

 

 ここで和ΣA,Bはn個の添字のあらゆる集合A,B

 (※ A∪B={1,2,..,n},A∩B=φを満たす{1,2,..,n}

 の直和分割 ※) にわたって取られます。

 

 δpはFermi場の場合の置換の符号です。

そして,正規順序積の真空期待値は全てゼロです。

何故なら,φin(+)|0>=<0|φin(-)=0 だからです。

 

 以上から,nが奇数なら<0|T(φin(x1)..φin(xn)|0>=0

であり,

nが偶数なら

<0|T(φin(x1)..φin(xn)|0>

=Σpermδp<0|T(φin(xp1in(xp2)|0>

<0|T(φin(xp3in(xp4)|0>..<0|T(φin(xp(n-1)in(xpn)|0>

です。(※ これは単に自由場の2点Green関数(伝播関数:propagator),

実スカラーΔ場なら(x-y)=<0|T(φin(x)φin(y)|0>の積

ですね。※)

ただし,<0|T(φin(xiin(xj)|0>のφin(xi),φin(xj)

の場φ(x)がFermion場の場合には,必ずi<jとなるようにして添字

の若い順に並べるという規約に従います。

 

(Wickの定理の証明):スカラー場を仮定して帰納法で

証明します。

 

 n=1に対しては定理は明らかに正しいです。

 

 また,n=2に対しては

 T(φin(x1in(x2))=:φin(x1in(x2):+(c数)

 です。

 

 何故なら,時間順序から正規順序に変えるのは単にいくつかの

 生成演算子と消滅演算子の交換を意味するに過ぎず,交換後に

 残る交換子は.

 [φin(+)(x1),φin(-)(x2)]

 =<0|[φin(+)(x1),φin(-)(x2)]|0>

 =<0|φin(+)(x1),φin(-)(x2)|0>

 であって,これはc数だからです。

 

 このc数を求めるために,

 T(φin(x1in(x2))=:φin(x1in(x2):+(c数)

 の両辺の真空期待値を取れば,

 (c数)=<0|T(φin(x1in(x2))|0>より

 T(φin(x1in(x2))=:φin(x1in(x2):

 +<0|T(φin(x1in(x2))|0> を得ます。

 

 そして,一般のnについても定理が正しいと仮定します。

 

 このとき,T(φin(x1)..φin(xn+1))においてtn+1を最小時刻

 に選ぶと,

 T(φin(x1)..φin(xn+1))

 =T(φin(x1)..φin(xn))φin(xn+1))

 =:φin(x1)..φin(xn):φin(xn+1)

 +Σperm<0|T(φin(x1in(x2))|0>

 :φin(x3)..φin(xn):φin(xn+1)+.. 

 です。 

 

 ところで,:φin(x1)..φin(xn):

 =ΣA,BΠi∈Aφin(-)(xij∈Bφin(+)(xj) です。 

 故に,:φin(x1)..φin(xn):φin(xn+1)

 =ΣA,BΠi∈Aφin(-)(xij∈Bφin(+)(xj)

 {φin(+)(xn+1) +φin(-)(xn+1)} 

 =ΣA,BΠi∈Aφin(-)(xij∈Bφin(+)(xjin(+)(xn+1)

 +ΣA,BΠi∈Aφin(-)(xiin(-)(xn+1j∈Bφin(+)(xj)

 +ΣA,BΠi∈Aφin(-)(xik∈BΠi∈B,j≠kφin(+)(xj)

 <0|φin(+)(xkin(-)(xn+1)|0> です。 

 ここで,<0|φin(+)(xkin(-)(xn+1)|0>

 =<0|φin(xkin(xn+1)|0>

 =<0|T(φin(xkin(xn+1))|0> です。

 

 よって,:φin(x1)..φin(xn):φin(xn+1)

 =:φin(x1)..φin(xnin(xn+1):

 +Σkin(x1)..φin(xk-1in(xk+1)..φin(xn):

 <0|T(φin(xkin(xn+1))|0> となります。

 

 これは定理の結論のn →(n+1)の形です。

 

 したがって,帰納法により定理は証明されました。(証明終わり)

 

 Wickの定理を,τ(x1,..,xn)

=<0|T(φin(x1in(x2)..φin(xn)

exp{-i∫-∞I'(τ)dτ})|0>

/<0|T(exp{-i∫-∞I'(τ)dτ})|0>

 

=Σm=0{(-i)m/m!}∫-∞∫d41..d4m

 <0|T(φin(x1in(x2)..φin(xn)

Iin(y1))Iin(y2)..Iin(ym)))|0>

/[Σm=0{(-i)m/m!}∫-∞∫d41..d4m

 <0|T(Iin(y1))Iin(y2)..Iin(ym)))|0>

に適用します。

 

 このとき,相互作用Hamiltonian項:Iin(y))は通常は既に正規順序

にされていることに注目します。 

 そこで,時間順序積を計算する際に同一の相互作用項Iin(y))

から生じた同一の座標yの2つの場の演算子を含む縮約項は

出現しません。

 

 これらは,τ(x1,..,xn)の右辺において正規順序から出発しており,

また明らかにT:φin(y)φin(y):=:φin(y)φin(y):です。

(※これは謂わゆるTad-poleですね。)

 

 今日はここまでにします。

 

参考文献:J.D.Bjorken,S.D.Drell "Relativistic Quantum Field" (McGraw-Hill)

 
PS:ちょっと下品かも知れないけど,便秘でもなんでも,人間穴からモノを
出すと気持ちいいものですね。 
PS2:今日7月7日は西宮にいる愛する姪(ミクシィ名いくよくるよ)の37
 回目の誕生日です。(まだ永久就職しないのか?) 
 昨夜,手話講習後に椎名町から帰る途中,携帯メールで37歳おめでとう
 とやったら。。。。フライングだという返事がきました。。 
 ウーン女性の歳1つの差は大きいかも。。 
 先ほどスペインが1対0でドイツに勝ったので,サッカーWカップ決勝
 はオランダ対スペインに決まりました。。
 
 昨日のウルグァイについては,私は既にガーナに負けていたと思う
 ので順当だと思いました。
 
 いくら勝つために手段選ばない。。何でも反則アリといっても意図的
 に手で止めるなんて。。と思ってましたから。。
 
 思わず手が出たぁ ? 
 キャッチャーのブロックならいいけどそれ以外のサードか誰かが
 走路妨害?野球ならPK抜きで得点が認められるし,バスケットなら
 バスケットカウント,日本のラグビーじゃ認定トライ。。
 ま,ルールといえばルールですが。。
 
 勝つための手段として例えば昔の高校野球の松井の全打席敬遠
 くらいなら反則でもないし別に何も文句はないけれど。。
 
 しかし,話は変わって大相撲のことですが,相撲の八百長でもやった
 のならいざ知らず,たかが法律で禁止されてるギャンブルに手を出した
 くらいで”死刑”は量刑不当だろう?。。
 
 競馬,競輪,競艇,toto,パチンコetc.なら何の罪にもならないのに。。
 
 麻雀,花札,トランプ,高校野球の小額程度なら私も含めて現在は取り
 締まる側の関係者でも,ほとんどが学生時代にでも経験あるはずです。。
 
 暴力団についてはむしろ被害者だろうし。。またまた腐った上役たち
 のスケープ・ゴートかよ。。

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2010年7月 5日 (月)

場理論におけるS行列とLSZの公式(4)

 場理論におけるS行列とLSZの公式の続きです。

今日はLSZの還元公式(Reduction formula)について記述します。

§16.7 The Reduction Formula for Scalar Fields(スカラー場に対する還元公式)

 前節では散乱演算子S^に明確な定義が与えられ,その一般的性質が解明されました。その結果として,S行列要素に対する興味がさらに刺激されます。

S行列要素の絶対値の2乗:|Sβα|2は始状態(In-state)αから終状態(Out-state)βへの実験的に観測される遷移確率を与えます。

  

そこで,これ以後はS行列要素を実際に計算するという非常に厄介な課題に向かうことにします。

 1954年まではS行列の計算への唯一の系統的アプローチは相互作用カレントj~(x)のベキによる摂動展開の理論だけでした。

 そのときから後の進歩としては,最初Low,そしてLehmann,Symanzik,およびZimmmermann(LSZ)によって始められた理論展開に由来するものがあります。

彼らは"弱い結合項=摂動"による展開に訴えることなく,S^に含まれる情報の幾つかを表面化する方法を示しました。

 これは,物理的に興味あるS行列要素を場の演算子の真空期待値によって表現する方法で漸近条件limt→-∞<α|φf(t)|β>=√Z<α|φinf|β>やlimt→+∞<α|φf(t)|β>=√Z<α|φoutf|β>を適用することで成し遂げられました。

 既に,場の交換子[φ(x),φ(y)]に対して,有用な式Δ'(x-y)=ZΔ(x-y;m2)+∫mt2dσ2ρ2)Δ(x-y;σ2)を導出する際に,真空期待値:iΔ'(x-y)=<0|[φ(x),φ(y)]|0>を扱うことが有利であるという例を見ました。

 そこでは,理論のLorentz不変性や他の一般的性質に訴えることによってΔ'(x-y)の簡略な一般形を導きました。

 以下ではLSZの方法に従って,βα=<β;out|α;in>の形の行列要素より幾らかは扱いやすい場の演算子の積の真空期待値を見出すことから出発します。

 別の意味では,場の演算子φ(x)を直接摂動級数で展開する方法で自由なin-field漸近場の演算子の積の真空期待値を用いてS行列要素の展開を作り上げていくことも可能です。

 こうした表現の計算規則は既に発見されていて,それは伝播関数アプローチ(propagator-approach)でのFeynmanルールに等しいものです。

 すなわち,Δ'(x-y)を研究する上で訴えられたような不変性の論旨はHeisenberg演算子:φを一意的で不変な真空状態に挟まれた行列要素を研究する場合に最も定式化が容易でうまく使用できるわけです。

 以下では,これら不変性(対称性)の助けを借りてS行列要素Sβα=<β;out|α;in>における物理状態α,βから情報を引き出し,それを真空状態で挟まれた場の演算子の積に表わすLSZの一般的な"Reduction  Teqchnique(還元記述)"を段階的に展開していきます。

 まず,S行列要素:Sβαp=<β;out|αp;in>を考えます。

βは終状態|β;out>において散乱されて出現する粒子を記述しており,|αp;in>は入射粒子の集合αに加えてさらに運動量pを持った入射粒子が存在する状態を表わす始状態(In-state)です。

 漸近条件を用いてIn-state:|αp;in>から粒子pを差し引く代わり適当な場の演算子を導入します。

そして,ain^()=i∫d3p*(x)∂0φin(x),aout^()=i∫d3p*(x)∂0φout(x)なる表式を用います。

すなわち,<β;out|αp;in>=<β;out|ain^+(p)|α;in>=<β;out|aout^+(p)|α;in>+<β;out|ain^+(p)-aout^+(p)|α;in>=<β-p;out|α;in>-i<β;out|∫d3p(x)∂0in(x)-φout(x)]|α;in>です。

 |β-p;out>,もしも集合βの中にpが存在するなら,集合βからpを除いたOut-stateを表わします。しかし,βの中にpが存在しないならこの項はゼロであって無くなります。

 また,|αp;in>が初期に2粒子がある場合の散乱の始状態なら<β-p;out|α;in>は入射粒子と標的粒子が運動量を含め,それらの量子数を保存する前方弾性散乱にのみ寄与します。

 

 つまり,<β-p;out|α;in>=δα(β-p)です。

(注):|α;in>が1粒子の場合,<β-p;out|P^2|α;in>=α2<β-p;out|α;in>=(β-p)2<β-p;out|α;in>より<β-p;out|α;in>≠0 なら(β-p)2=α2=m2ですから,|β-p;out>も1粒子Out-stateです。

そして,<β-p;out|P^μ|α;in>=αμ<β-p;out|α;in>=(β-p)μ<β-p;out|α;in>ですから,<β-p;out|α;in>≠0 は(β-p)μ=αμ,つまりβμ=αμ+pμなる弾性散乱を意味し,しかも方向を変えず素通りする前方散乱のみの振幅です。(注終わり)※

さて,<β;out|αp;in>=<β-p;out|α;in>-i<β;out|∫d3p(x)∂0in(x)-φout(x)]|α;in>の右辺の項:-i∫d3<β;out|fp(x)∂0in(x)-φout(x)]|α;in>はGreenの定理から,時間tに依存しません。

これは,前にもGreenの定理から√Z<α|φinf|β>においてφinf(t)≡i∫d3*(,t)∂0φin(,t)が時間tに依存しないのでφinfと表現できることを示したのと同様です。

そして,漸近条件limt→-∞<α|φf(t)|β>=√Z<α|φinf|β>,およびlimt→+∞<α|φf(t)|β>=√Z<α|φoutf|β>から,x0→-∞ の極限ではφin(,x0)を(1/√Z)φ(,x0)で,x0→+∞ の極限ではφout(,x0)を(1/√Z)φ(,x0)で置き換えることが許されます。

それ故,結局<β;out|αp;in>=<β-p;out|α;in>+(i/√Z)(lim x0→+∞-lim x0→-∞)<β;out|∫d3p(x)∂0φ(,x0)|α;in>と書けます。

 これが"Reduction(還元)"の手続きの第一歩です。

これから,より便利な形を得るため,恒等式:(lim x0→+∞-lim x0→-∞)∫d31(x)∂02(x)=∫-∞4x[∂0{g1(x)∂02(x)}]=∫-∞4x[g1(x)∂022(x)-{∂021(x)}g2(x)]を用います。

また,(□+m2)fp(x)=0 により,得られた式に∂02p(x)=(∇2-m2)fp(x)を代入します。

(i/√Z)(lim x0→+∞-lim x0→-∞)∫d3<β;out|fp(x)∂0φ(,x0)|α;in>=(i/√Z) ∫-∞4x<β;out|fp(x)∂02φ(x)-{∂02p(x)}φ(x)|α;in>=(i/√Z)∫-∞4x<β;out|fp(x)(∂02+m2)φ(x)-(∇2p(x))φ(x)]|α;in>=(i/√Z)∫-∞4xfp(x)(□+m2)<β;out|φ(x)|α;in>です。

最後の変形では部分積分に対するGreenの公式を用いました。

最終式として<β;out|αp;in>=<β-p;out|α;in>+(i/√Z)∫-∞4xfp(x)(□+m2)<β;out|φ(x)|α;in>を得ました。

 この手続きは,始状態と終状態から全ての粒子を取り除き,場の演算子積の真空期待値のみが残るようになるまで繰り返すことができます。

例えば,<β;out|αp;in>=<β-p;out|α;in>+(i/√Z)∫-∞4xfp(x)(□+m2)<β;out|φ(x)|α;in>の右辺の因子:<β;out|φ(x)|α;in>の集合βがβ=γp'のときこれから,さらに粒子p'を取り除きます。

<β;out|φ(x)|α;in>=<γ;out|aout^(p')φ(x)|α;in>=<γ;out|φ(x)ain^(p')|α;in>+<γ;out|aout^(p')φ(x)-φ(x)ain^(p')|α;in>=<γ;out|φ(x)|α-p';in>+<γ;out|aout^(p')φ(x)-φ(x)ain^(p')|α;in>です。

故に,<β;out|φ(x)|α;in>=<γ;out|φ(x)|α-p';in>-i∫d3<γ;out|φout(y)φ(x)-φ(x)φin(y)|α;in>∂y0p'*(y)を得ます。

漸近条件によって再びy0→-∞ の極限ではφin(y)を(1/√Z)φ(y)で,y0→+∞ の極限ではφout(y)を(1/√Z)φ(y)で置き換えることが許されます。

このとき,項-i∫d3<γ;out|φout(y)φ(x)-φ(x)φin(y)|α;in>∂y0p'*(y)を時間順序積(T積;T-product)で表現することができます。

まず,<γ;out|φout(y)φ(x)-φ(x)φin(y)|α;in>=(1/√Z){lim y0→+∞<γ;out|φ(y)φ(x)|α;in>-lim y0→-∞<γ;out|φ(x)φ(y)|α;in>}です。

これは,<γ;out|φout(y)φ(x)-φ(x)φin(y)|α;in>=(1/√Z){lim y0→+∞<γ;out|θ(y0-x0)φ(y)φ(x)+θ(x0-y0)φ(x)φ(y)|α;in>-lim y0→-∞<γ;out|θ(x0-y0)φ(x)φ(y)+θ(y0-x0)φ(y)φ(x)|α;in>}=(1/√Z)(lim y0→+∞-lim y0→-∞)<γ;out|T(φ(y)φ(x))|α;in>とも書けます。

最後に,恒等式(lim x0→+∞-lim x0→-∞)∫d31(x)∂02(x)=∫-∞4x[g1(x)∂022(x)-{∂021(x)}g2(x)],および自由平面波の方程式(□y+m2)fp'*(y)=0 の助けを借ります。,

結局,<γp';out|φ(x)|α;in>=<γ;out|φ(x)|α-p';in>+(i/√Z)∫d4y<γ;out|T(φ(y)φ(x))|α;in>(□y+m2)fp'*(y)なる式を得ます。

ただし,記号g(y)(□y+m2)は,演算子(□y+m2)が前の関数g(y)に作用すること,つまり(□y+m2)g(y)を意味します。

 

単純に後者のように書けば問題ないのですが,Out状態からの粒子除去をIn状態からのそれと区別してfp'*(y)を後ろに置く表現を際立たせるためにこう表現します。

このReduction(還元)テクニックを繰り返し適用して,行列要素の両側の状態から全ての粒子を除き,場の演算子のT積の真空期待値に到達する道は今や明らかです。

すなわち,全ての運動量対についてpi≠qjの場合には,<p1,..,pn:out|q1,..,qm:in>=(i/√Z)m+nΠi=1m∫d4iΠj=1n∫d4jqi(xi)(□xi+m2)<0|T(φ(y1)..φ(yn)φ(x1)..φ(xm))|0>(□yj+m2)fpj*(yj)となります。

これを書くに当たって簡単のために全ての{pi},{qj}についてpi≠qjを仮定して前方散乱の項を落としました。

 

しかし,これには何の問題もありません。

というのは,これら落とした項もまた同じ還元テクニックをうまく適用すれば,同様な場の演算子のT積の真空期待値に帰着させることが可能だからです。

最終式:<p1,..,pn:out|q1,..,qm:in>=(i/√Z)m+nΠi=1m∫d4iΠj=1n∫d4jqi(xi)(□xi+m2)<0|T(φ(y1)..φ(yn)φ(x1)..φ(xm))|0>(□yj+m2)fpj*(yj)は場の量子論の散乱振幅の全ての計算の基礎となる役割を果たします。

 

        

上図16-2は,(z1,..,zr)でr個の粒子が消滅,または生成するあらゆるFeynman-diagramを表現していることに着目します。

 

この図は<0|T(φ(z1)..φ(zr))|0>を表現していますが,これはr粒子に拡張された完全なGreen関数と見なすことができます。

ReductionFormula:<p1,..,pn:out|q1,..,qm:in>=(i/√Z)m+nΠi=1m∫d4iΠj=1n∫d4jqi(xi)(□xi+m2)<0|T(φ(y1)..φ(yn)φ(x1)..φ(xm))|0>(□yj+m2)fpj*(yj)における因子(□i+m2)の役割を考えます。

この演算は,伝播関数 i/(pi2-m2+iε)に(□i+m2)~ (m2-pi2)を掛けることで互いに相殺させて,Feynman-diagramの相互作用Black-Box部分へと入っていく外線の足から伝播関数を除去します。

  

そして,伝播関数の代わりに外線因子として自由平面波fpi(xi)またはfpj*(yj)を付与するわけです。

Reduction Formula(還元公式)から,S行列要素は完全なr粒子Green関数<0|T(φ(z1)..φ(zr))|0>から外線の足を取り除かれ,質量殻pi2=qj2=m2に置かれた外線運動量を持ったr=n+m個の粒子のGreen関数であることがわかります。

もしも,r粒子Green関数:<0|T(φ(z1)..φ(zr))|0>のFeynman-diagram に(□i+m2)~(m2-pi2);(pi2=m2)を作用させたとき,

 

相殺すべき相手の i/(pi2-m2+iε)の因子が存在せず,p2≠m2の質量殻外の内線仮想粒子の伝播関数因子 i/(p2-m2+iε)が存在するだけなら,m2-pi2=0 が掛かる結果,このdiagramのS行列への寄与はゼロとなって消えます。

 

途中ですが今日はここまでにします。

 

参考文献:J.D.Bjorken & S.D.Drell "Relativistic Quantum Fields" (McGraw-Hill)

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2010年7月 3日 (土)

場理論におけるS行列とLSZの公式(3)

 場理論におけるS行列とLSZの公式の続きです。

 

 今日はS行列の定義と性質について記述します。

 

§16.6 The Definition and General Properties of the S-Matrix

(S行列(散乱行列)の定義と一般的性質)

 この時点で漸近場φin(x)とφout(x)の全ての必要な性質が既知

となり,実験的興味のある"遷移振幅=S行列要素"を定義して探求

するための道具は全て揃いました。

 まず,量子数:P1,P2,..,Pnを持つ互いに相互作用してない

(空間的(space-like)に離れた)n個の物理的粒子系が存在する

始状態から出発します。

 

 この状態を|α;in>≡|P1,P2,..,Pn;in>と記述します。

 ただし,ラベルPj(j=1,2,..,n)は粒子jの4元運動量

加えて粒子jを特徴付ける電荷とか奇妙さ(strangeness)

のような全ての内部量子数を表わしています。

 φin(x)の定義:

√Zφin(x)=φ(x)-∫d4yΔret(x-y;m)j~(y)

によれば,φin(x)は内部対称性変換の下でφ(x)と同一の

変換性を持つのでこうした記述が可能なのです。

 すなわち,

より一般的にφ(x)が内部空間のm次元ベクトルであって,

φ(x)=(φ1(x),..,φm(x))Tと表わせる場合,

もしも.[Q^,φr(x)]=-λrsφs(x)なる変換性を持つなら

[Q^,j~r(x)]=(□+m2)[Q^,φr(x)]=-λrsj~s(x)

なので[Q^,φinr(x)]=-λrsφins(x)が成立します。

※(注1):φ(x)=(φ1(x),..,φm(x))T

φr(x)→φ'r(x)=φr(x)-iελrsφs(x)(εは無限小)なる変換

に対する理論の不変性は量子力学では次のことを意味します。

 

 これは,Φαβを任意の状態とするとき,変換に伴なう状態

のユニタリ変換(unitary transformation):

α>→|Φα'>=U(ε)|Φα>,|Φβ>→|Φβ'>=U(ε)|Φβ

に対して,<Φαr(x)|Φβ>=<Φα'|φ'r(x)|Φβ'>

=<ΦαU^(ε)-1|{φr(x)-iελrsφs(x)}|U^(ε)Φβ

が成立することを意味します。

すなわち,U^(ε)φr(x)U^(ε)-1=φr(x)-iελrsφs(x)

が成立します。

 

εが無限小なので,あるHermite演算子Q^が存在して

ユニタリ変換U^(ε)はU^(ε)≡exp(iεQ^)=1+iεQ^

と表わせます。

 

すると,U^(ε)φr(x)U^(ε)-1=φr(x)-iελrsφs(x)

は,φr(x)+iε[Q^,φr(x)]=φr(x)-iελrsφs(x)

と同等です。 よって,[Q^,φr(x)]=-λrsφs(x) です。

 

このときのHermite演算子Q^をこの対称性変換の生成子(generator)

といいます。

Q^は実数演算子なので何かの物理量に同定されます。

(※例えば平行移動:xμ→x'μ=xμ-εμの生成子:P^μは,

φ'(x')=φ(x)によりφ'(x)=φ(x+ε)

=φ(x)+εμ(∂φ(x)/∂xμ)=φ(x)+iεμ[P^μ,φ(x)]

を満たします。

 

 すなわち,[P^μ,φ(x)]=-i(∂φ(x)/∂xμ)

が成立します。この生成子:P^μは運動量と同定できます。)

もしも,入射漸近場(In-field):

φin(x)=(φin1(x),..,φinm(x))T に対しても,

[Q^,φinr(x)]=-λrsφins(x)が成立するなら,

U^(ε)φinr(x)U(ε)-1=φinr(x)+iε[Q^,φinr(x)]

=φinr(x)-λrsφins(x) です。

そこで, <Φαinr(x)|Φβ

=<ΦαU(ε)-1|U(ε)φinr(x)U(ε)-1|U(ε)Φβ

=<ΦαU(ε)-1|{φinr(x)-λrsφins(x)}|U(ε)Φβ

=<Φα'|{φinr(x)-λrsφins(x)}|Φβ'> です。

 

よって,φ(x)と同じく漸近自由場φin(x)でも

φinr(x)→φin'r(x)=φinr(x)-iελrsφins(x)(εは無限小)

なる変換に対する理論の不変性が維持されます。(注1終わり)※ 

※(注2):例えば,φ(x)がπ中間子の場なら,φ(x)は荷電空間

(Isotopic -space)のIsotopic-spin(アイソスピン)^の大きさ

I=1の3次元表現であるvector(ベクトル)と考えることができ

て,φ(x)(φ1(x),φ2(x),φ3(x))Tと書けます。

 

 そして,φ0(x)=φ3(x),φ(x)=(1/√2){φ1(x)-iφ2(x)},

φ(x)=(1/√2){φ1(x)+iφ2(x)}が,それぞれ,π0

中間子の場を示します。

そこで,これらが生成する1粒子状態を,

i>=φi+(x)|0>とすると,

0>=|π3>=(0,0,1)T,

|π>=(1/√2){|π1>+i|π2>}=(1/√2)(1,i,0)T,

>=(1/√2){|π1>-i|π2>}=(1/√2)(1,-i,0)T

です。

 

次に,Istopic-space(荷電空間=アイソ空間)の回転対称性

を考えます。

 

この内部空間(internal space)を荷電空間と呼ぶ理由は,

電荷がQ^=B^/2+I3^なる式で与えられるからです。

 

ただし,B^はbaryon-number(バリオン数=重粒子数)で

π中間子はその固有値がB=0 の固有状態です。

 

一方,核子はB^のB=1の固有状態です。

そのIsospinはI=1/2であり,陽子,中性子はそれぞれ,

3=1/2,-1/2の固有状態です。

  

さて,|π0>=(0,0,1)T,|π±>=(1/√2)(1,±i,0)TはIso-vector

演算子:^=(I1^,I2^,I3^)のI=1,I3=0,±1の固有状態です。

 

このときの^=(I1^,I2^,I3^)の行列表現(representation)

はL=1の角運動量=(L1,L2,L3);(Li)jk=-iεijk

3次元回転行列:Liと同じです。

 

すなわち,荷電空間対称性は線型Lie群の一種である回転群SO(3)

or 特殊ユニタリ群SU(2)に属する変換の下での不変性で,回転

不変性に基づくNoether保存量:^がこの群の生成子(Lie代数)

です。

(※余談ですが,このSU(2)はup,downの2自由度だけを特別扱い

したものですが,strangenessをも加えたSU(3)の部分群です。

 

その他にも,charm,bottom,topという合計3世代6個のflavor

自由度があります。

さらに,独立なcolorSU(3)との直積対称性もあります。※)

 

上記の|π0>,|π±>の3次元縦行列表現に対しては

30>=0,L3±>=±|π±>(複号同順)です。

 

これは,もちろん|π1>=(1,0,0)T,|π2>=(0,1,0)T,

3>=(0,0,1)Tを基底(basis)とした表現です。

 

これらは演算子で書けば,Ii^|πj>=Iij+(x)|0>

=(Li)jkφk+(x)|0>です。

 

これは中間子場:φ(x)の内部空間不変性,つまり荷電空間

における回転対称性;[I^ij(x)]=-(Li)jkφk(x),

or [I^ij+(x)]=(Li)jkφk+(x)の反映です。(注2終わり)※

 始状態:|α;in>≡|P1,P2,..,Pn;in>から

終状態|β;out>≡|P1',P2',..,Pm';out>に遷移するS行列

のβα要素をβα≡<β;out|α;in>で定義します。

 この定義を非相対論的理論でも与えた直感的な伝播関数の理論(propagator theory)におけるS行列の定義と比較してみます。

2010年5/18の記事「散乱の伝播関数の理論(5)」では,始状態と

終状態のpair:(f,i)に対する遷移振幅,またはS行列要素

(S-matrix element)は,

fi≡limt→∞∫φf*(,t)Ψi(+)(,t)d3

=limt→∞<φf(,t),Ψi(+)(,t)>

で定義されています。

ただしΨi(+)(,t)はt→-∞ で運動量(波数)iの入射平面波

になるという境界条件を持ったSchrödinger方程式の正確な散乱解

です。

 つまりfiはΨi(+)(,t)の与えられた終状態:φf(,t)への

t→+∞ における射影振幅に等しいものです。

 

 このSfiβα≡<β;out|α;in>に似た形に書き直すため,

t→+∞ で量子数f(運動量f)の自由平面波φf(,t)に近づく

というout-境界条件を持ったSchrödinger方程式の正確な散乱解

Ψf(-)(,t)を導入します。

 Ψf(-)(,t)は自由場に加え,t→+∞ となるにつれ散乱体

に収束して消えていくような球面波の重ね合わせから成っています。

Ψf(-)(,t)は散乱の伝播関数の理論(5)」の表式:

Ψ(,t)

=φ(,t)+∫d410(,t;1,t1)V(1,t1)Ψ(1,t1)

において遅延Green関数:G0を先進Green関数:G0advで置き換えたSchrödinger方程式の解です。

つまりf(-)(,t)

=φf(,t)+∫d410adv(,t;1,t1)V(1,t1)

Ψf(-)(1,t1) です。

ただし先進Green関数は,

0adv(,t;1,t1)=0 for t>t1 を満たすGreen関数です。

そこで,t→+∞ではΨf(-)(,t)→φf(,t)です。

 

故に,Sfi=limt→∞<φf(,t),Ψi(+)(,t)>は,

fi=limt→∞<Ψf(-)(,t),Ψi(+)(,t)>

=limt→∞∫d3Ψf(-)*(,0)exp(i^t)exp(-i^t)Ψi(+)(,0)

=<Ψf(-)(,0),Ψi(+)(,0)>

に帰着します。

ところが,Ψ(,0)は通常のSchrödinger表示の波動関数

Ψ(,t)から時間依存性を除かれたHeisenberg表示の

波動関数です。

 

そして,Sfi=<Ψf(-)(,0),Ψi(+)(,0)>は,入射(In-coming)

境界条件を持つ波動関数Ψi(+)と散乱(Out-going)境界条件を持

つ波動関数Ψf(-)の対により正確に,ここでも定義:

βα=<β;out|α;in>に対応してこれと一致することが

わかります。

さて,In-states,およびOut-statesの完全性の仮定によって,

In-stateをOut-stateに変換する演算子S^を定義すること

により,全ての行列要素Sβα=<β;out|α;in>を得ること

ができます。

すなわち,<β;in|S^≡<β;out|,or <β;out|S^-1≡<β;in|

で演算子S^を定義します。

すると,Sβα=<β;out|α;in>=<β;in|S^|α;in>

と表現することができます。

こうして定義したS行列要素は物理的測定と密接に関わる

遷移振幅を表わすため,これこそが我々の中心的関心の対象

です。 

 S^またはβαの重要な性質は,状態のスペクトルに課せられた

 初期の仮定やφin(x),φout(x)の性質から導かれます。

(1)真空状態(vacuum=ground state)の安定性

(不変性,および非縮退性)から,|S00|2=1 である。

つまり<0;in|S^=<0;out|=exp(iφ0)<0;in|と書ける

 

(※何故なら,<0;in|0;in>=<0;out|0;out>=1ですが,

真空状態は(射線(ray) or 同値類として)一意的(unique)

なので,|0;out>=c|0;in>(cはある定数)です。

 

これにより,<0;out|0;out>=|c|2<0;in|0;in>が成立

しますから,|c|=1です。※)

 

 仮定によって真空状態は一意的であり,exp(iφ0)の位相φ0

はゼロに採ってもいいです。そこで<0;out|=<0;in{=<0|

と規約します。

(2)1粒子状態の安定性(定常性)から,

<p;in|S^|p;in>=<p;out|p;in>=<p;in|p;in>=1

である。

 

 何故なら規格化された運動量がpの1粒子状態は|p>のみ

 なので,|p;in>=|p;out>=|p>です。 

(3)演算子:S^はφin(x)=S^φout(x)S^-1に従ってIn-field

をOut-fieldに変換する。

 

 何故なら,<β;out|φout(x)|α;in>

=<β;in|S^φout(x)|α;in>ですが,一方,

<β;out|φout(x)は1つのOut-stateを表わしているので

<β;out|φout(x)=<β;in|φin(x)S^と書けます。

 そこで,<β;out|φout(x)|α;in>

=<β;in|φin(x)S^|α;in>=<β;in|S^φout(x)|α;in>

が成立します。

そこで,In-statesの完全性により,

<β;in|φin(x)S^|α;in>=<β;in|S^φout(x)|α;in>

から, Σβ|β;in><β;in|φin(x)S^|α;in>

=Σβ|β;in><β;in|S^φout(x)|α;in>

が成立します。

 

これによって,φin(x)S^|α;in>=S^φout(x)|α;in>

を得ます。

同様にしてin(x)S^=S^φout(x)ですから,結局,

φin(x)=S^φout(x)S^-1です。

(4)上で定義した散乱演算子:S^はユニタリ(unitary)である。

 

 何故なら

<α;in|S^=<α;out|によって|α;out>=S^+|α;in>

ですから,<β;in|S^S^+|α;in>=<β;out|α;out>=δβα

です。

 

 故に,Σγ<β;in|S^|γ;in><γ;in|S^+|α;in>=δβα,

つまりSβγαγ*=δβαですから,行列としてSS+=1,

それ故S+=S-1でありSはユニタリ行列です。

これは演算子としてS^がユニタリであることを意味します。

(5)S^はPoincare'不変である。

つまり,(Lorentz変換+平行移動)の下で理論は不変である。

 すなわち,x'μ=aμνν+bμを生ぜしめるユニタリ演算子

をU^(a,b)とすればU^(a,b)S^U^(a,b)-1=S^である。

 何故なら,

φin(ax+b)=U^(a,b)φin(x)U^(a,b)-1

=U^(a,b)S^φout(x)S^-1U^(a,b)-1

U^(a,b)S^U^(a,b)-1U^(a,b)φout(x)

U^(a,b)-1U^(a,b)S-1U^(a,b)-1です。

 

 ところが,U^(a,b)φout(x)U^(a,b)-1=φout(ax+b)

であり,さらにφin(ax+b)=S^φout(ax+b)S^-1です。

 

 それ故,S^'≡U^(a,b)S^U^(a,b)-1と置けば,

 S^φout(ax+b)S^-1=S^'φout(ax+b)S^'-1です。

またはS^'-1S^φout(ax+b)=φout(ax+b)S^'-1S^

です。

 

 したがって,T≡S^-1S^'と置けば,

φout(ax+b)=Tφout(ax+b)T^-1,ですが,これは

ユニタリ変換なのでT^=1である他はないためS^'=S^

です。

 

 すなわち,U^(a,b)S^U^(a,b)-1=S^が成立します。

今日はここまでにします。 

参考文献:J.D.Bjorken & S.D.Drell "Relativistic Quantum Fields","Relativistic Quantum Mechanics"(McGraw-Hill)

 

PS:うん,敗れたけどパラグァイよくやった。。。

(キーパーすごイ,両者PKを1本ずつ止めた。)

 

谷川九段(17世名人)の今回の「光速ノート185」の内容は,

6月29日に(羽生名人に挑戦して敗れA級一位に戻ってきた)

三浦弘行八段と対局した順位戦A級1回戦の感想です。

 

終盤の三浦八段投了の盤面と最後の読みは見ごたえあります。

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2010年7月 2日 (金)

カラオケで歌いまくる。。

 毎度バカなことをやってますが,昨日は夕方に50歳くらいの知り合い2人と男ばかり3人で久しぶりにカラオケボックスに行って歌いまくりました。

 私の歌ったのは次の通りです。(順番はだいたいの記憶です。)

 呪い(山崎ハコ),星の流れに(菊池章子).極め付けお万さんの歌(ツボイノリオ),Honesty(Billy Joel),愛傷歌(森昌子),Automatic(宇多田ヒカル),なにわしぐれ桂春団治(京山幸技若),時代おくれの酒場(高倉健),ラムのラブソング(松谷祐子,misono),Ben(ベンのテーマ)(Michael Jackson)

 Yours~時のいたずら(マルシア),テレサ・テンメドレー(香港,恋人たちの神話,夜来春,スキャンダル別れの予感) Boxer(Simon&Girfunkel),Me.and Bobby Macgee(Janis Joplin),もうひとつの土曜日(浜田省吾),ケ・セラ・セラ(Dolis Day),ヒーロー(麻倉未稀),歌いたいの(山崎ハコ),窓(松山千春),赤い絆(山口百恵),プレイ・バックPart1(山口百恵),

 何曲かは忘れているかも。。。

 岡林信康,泉谷しげる,早川義夫,カルメン・マキと山崎ハコの何曲かは歌いたい曲がDAMのメニューにありませんでした。。

 ノリピーや桜田純子,浅川マキ,八神純子,玉置浩二(安全地帯),アリスetc,そしてド演歌に横文字など予定してましたが時間がきたので次回にまわしました。(キリがないなあ)

 しかし,さらに,1人と別れて夜9時頃ライブ・スナックに行ってステージで

 Oh My Little Girl(尾崎豊),星のフラメンコ(西郷輝彦),白い花(山崎ハコ),Blue~こんな夜には眠れない(桑田佳祐).香港(テレサ・テン),星の流れに(菊池章子),Yours~時のいたずら(マルシア),想い出迷子2(チョー・ヨンピル)

 本当は,女性とデュエットもしたかったのですが,連れがいっぱいいっぱいになったみたいなので夜中12時過ぎには帰宅しました。

※(後記):全て連れのせいにしてるようですが,どこにでも自由に行けて思い通り自由な時間に帰れるのが一人で飲みにいく最大の理由,メリットです。

 偶にはいいのですが,別に,ぽつんと一人寂しく飲むのが好きなわけではなく,基本的には店のママなどいても一人ぽっちは嫌いです。

 むしろ,皆で大騒ぎするのが大好きで,静かでシラケてる雰囲気だと頼まれもしないのに盛り上げたりする太鼓持ち,宴会屋の性格です。知らないまわりの人たちでも盛り上がっていてうるさいくらいの方が大好きですね。

 私だけカヤの外だと何とか仲間に入ろうとして見え透いてないと自分が思う方法でそれとなくサブーイダジャレなどで信号を送ります。

 まあ,できれば,皆よく知っていて気心の知れる相手が大勢いればいるほどいいのですがネ。。。

 とはいっても,帰宅時間とか自分の自由な生活空間とかを拘束されるのはイヤなのです。ワガママでどうしようもないですね。

 というわけで,水商売のお店の関係者とかお互いよく似た自由人?で独立に行動できる連れならよろこんでつるんで飲みますが,私が一緒に行動しなければダメという連れだと時にはイヤになるのです。

 といっても一緒に連れて行った人間がどうなろうと見捨てて自分だけ楽しむほど薄情じゃないし。。ウーン。。。

(↑ だから付き合いがほどほどで本当の友だちも恋人もいないんだな。。。カワイそうなキモイヤツ。。。。

 他の人も自分と同類の自己チューだという尺度で見ているから,「誰にどう思われようと,どう言われようと自分は自分で自分に恥ずかしくなければ関係ないじゃん。。」などと言って時々殴られたりするんだね。。。

↑自分を正当化して相手を論破せんとするだけの目的のために,こういう薄情なセリフを吐いてはいけないんダヨなあ。。

 全世界を敵にまわしても勝てるほどの自負心,心の強さがあるなら,私も含めて誰もあらぬ誹謗中傷,イジメ等で傷ついたり,心弱くてウツ病などの神経症,心因性の精神病になったり,挙句には自殺するなんて不幸なことは生じません。

 病んでいる心のケアをも目指す自分が,たとえ無意識にでも,力まかせにこんなことを述べる,書くようでは。。。)

 自分の自由(ワガママ)を犠牲にしても平気な性格だったり,自分のエゴ,ワガママを捨てて四六時中一緒にいてもいいほど好きだという相手がいたなら,既に同居なり結婚なりしてたでしょうね。(相手がイヤでなければ。。)

 しかし,ここでいう好きな相手というのは,必ずしも恋愛対象という意味でなくペットや子供etc.という意味も含んでいます。

 過去には生き物ではないですが,無機質な将棋,オーディオ,パソコン,物理,数学なども恋愛の?対象でしたが,これらはよほどハマらないと帰宅時間を束縛しません。。話が脱線したかな?。。。※

PS:出社しまーす。

 介護とか人助けとかを軽々しく考えていて甘かったことがさっそく露呈してしまいました。

 一貫して親切心で接していれば心は通じるはずと考えてましたが,口先だけのキレイゴトでなく果たして私の方が最後まで貫けるかどうか?

 初日につい親切にしたおかげで,ある男性にほぼ2週間毎日ストーカーのようにつきまとわれることになりました。

 それとなく時間をずらしたりして避けても待っていたり,帰る途中ではぐれてま,いっかと思っていると相手は必死で探していて汗だくで出くわしたりします。

 冗談を言っても通じず腹を立てられたり謝られたり,怖がられたりです。途中で親切を中断すると逆恨みされそうで最後までやらざるを得ません。

 ま,予想はできたのですが,当分自己の内面分析どころではありません。

 高齢者介護も考えが甘くて,実習中には”認知症相手の方がクレイムが無くて楽だ。”などと薄情で自己中なことを平気で言ってました。

 クレイムを述べたくても訴えるスベのない認知症者にこそ声なき声を真摯に受け取る努力が必要なのに。。

 職場に慣れてきて,そろそろ自己をアピールして居心地の悪さを払拭する必要もなくなってきたので,仕事場ではだんだんと無口になってきています。 

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