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2010年8月17日 (火)

散乱の伝播関数の理論(18-2)(応用4:補遺)

 先ほど,8月17日の17時にやっとNTT東日本のフレッツ光が開通して

 ネットを再開しました。

 

 電話も含めて光配線方式にするということで,さっきの工事,外まで

 来ていた光信号を部屋の内部に引き込んだということでしょう。

 

 同じフレッツ光でも,前のマンションでのVSDL方式とは異なり,

 電話線のモジュラーは全く無関係で,スプリッターも不要でした。

 

 むしろ,加入電話など無かった方がよかったらしいですね。

  

 ともあれ,引っ越し2週間の今日で元のネット中毒に戻りそうです。

 

 新居での開通記念の手初めとして,このくそ暑い中を仕事に出かけ

 る前,早朝に書いておいた科学草稿を以下にアップします。

 

 これは,すぐ前7/30の記事「散乱の伝播関数の理論(18)」の

 Compton散乱断面積の計算の補足です。

 

 前回の記事でCompton散乱に対するKlein-Nishina

 (クライン・仁科の公式):

 dσAve/dΩ

 ={α2/(4m2)}(k'/k)2{k'/k+k/k'+4(εε')2-2}

 を導く際に,"途中計算を省略して,

 

 Tr[(f+m){ε'εk/(2kpi)+εε''/(2k'pi)}(i+m)]

 {kεε'/(2kpi)+'ε'ε/(2k'pi)}]

 =2{k'/k+k/k'+4(εε')2-2} です。

  

と書きました。

 

しかし,"私独自に行間を埋めた部分=計算の詳細"を省略しては,

本記事が単に参考テキストの垂れ流しに過ぎず,画龍天晴を欠く

と感じたので,計算結果の証明として詳細内容を書くことにしま

した。

 

以下,式の証明です。

 

(証明):まず,T1≡Tr(f+m)ε'εk(i+m)kεε'と置けば,

 右辺のトレースにおいて,因子としてmを1個含む項は奇数個の

 γ行列の積なのでその寄与はゼロです。

  

 また,m2に比例する項はkk=k2=0 を因子に持つので消えます。

 

 結局,T1=Trfε'εkpikεε' を得ます。

 

 (何故なら,ab=2ab-baよりaa=2a2aaなので,

 aa=a2です。)

 

 それ故,T1=Trfε'εkpikεε'

 =Trfε'ε(2kpii)kεε'

 =2kpirfε'εkεε'

 =2kpiTrfε'(2εk-kε)εε'

 と書けます。

 

そして,εk=0,かつε2=-1なので,

1=-2kpiTrfε'kεεε'

=-2kpirfε'ε2ε'

=2kpiTrfε'kε'

 

=8kpi[pfε'(kε')+pfε'(ε'k)-(pfk)ε'2]

=8kpi{kpf+2(kε')(pfε')}

=8kpi{k'pi+2(kε')2}

を得ます。

 

ただし,Trfε'kε'を展開する変形では,2010年6/14の記事

散乱の伝播関数の理論(11)(応用1-1)」で与えた.

※(付録):γ行列のトレース中心の公式集における

[性質4]を用いました。

 

また,最後の式変形では,エネルギー・運動量の保存:

k+pi=k'+pf or k-pf=k'-pi

を用いました。

 

すなわち,(k-pf)2=(k'-pi)2,かつ,

f2=pi2=m2 より,kpf=k'pi,

 

および.ε'k+ε'pi=ε'k'+ ε'pfにおいて,

ε'k'=0 であり,準拠系の実験室系ではpi=(m,0),

ε'=(0,ε')よりε'pi=0 ですから,

fε'=kε' となるからです。

 

同じやり方で,T2≡Tr(f+m)εε''(i+m)'ε'ε

を評価します。

 

エネルギー・運動量の保存則:

k+pi=k'+pf ⇔-k'+pi=-k+pf も含めて.

1≡Tr(f+m)ε'εk(i+m)kεε'との違いは,

(ε,k) ⇔ (ε',-k') なる置換のみです。

 

よって,T2=8k'pi{kpi-2(k'ε)2} です。

 

第3のトレースT3は,T3≡Tr(f+m)ε'εk(i+m)'ε'ε

で定義します。

 

これは,pf=pi+(k-k')により,

3=Tr(i+m)ε'εk(i+m)'ε'ε+Tr(')

ε'εk(i+m)'ε'ε と書けます。

 

そして,iε'=-ε'i,かつ,iε=-εpiより,

 

3=Trε'ε(i+m)(i+m)'ε'ε

+Trkε'εkpi'ε'ε-Tr'ε'εkpi'ε'ε

=Tr(i+m)(i+m)'ε'εε'ε

+Trkε'εkpi'ε'ε-Tr'ε'εkpi'ε'ε

です。

 

 そこで,T3=Tr(2kpikpi+m)(i+m)'ε'εε'ε

 +2kε'Trεkpi'ε'ε-2k'ε'Trεkpi'ε'ε

 となります。

 

何故なら,まずTrkε'εkpi'ε'ε

=2kε'Trεkpi'ε'ε-Trε'kεkpi'ε'εですが,

これの右辺第2項はkεkなる因子を含んでいて,この因子は

(2kε)-k2ε=0ですから,これの寄与はゼロです。

 

同様に,Tr'ε'εkpi'ε'ε=Trε'εkpi'ε'εk'

=2εk'Trε'εkpi'ε'-Trε'εkpi'ε''εですが,

これの右辺第2項も'ε''=0 を因子に持つためゼロです。

 

したがって,T3=2kpiTri'ε'εε'ε

-Tr(pi2-m2)'ε'εε'ε

+2kε'Trεkpi'ε'ε-2k'εTrε'εkpi'ε'

=2kpiTri'ε'εε'ε-2kε'Trkpi'ε'

+2k'εTrεkpi' です。

 

故に,T3=2kpi(2ε'εTri'ε'ε-Tri')

-8(kε')2(pik')+8(kε')2(pik) です。

 

よって,T3=2kpi(k'pi){2(ε'ε)2-1}

-8(kε')2(k'pi)+8(kε')2(kpi)

を得ます。

 

したがって,Tr[(f+m){ε'εk/(2kpi)

εε''/(2k'pi)(i+m){kεε'/(2kpi)

'ε'ε/(2k'pi)}]

 

=(1/4)[T1/(kpi)2+T2/(k'pi)2+2T3/{(kpi)(k'pi)}]

=2{k'/k+k/k'+4(ε'ε)2-2}

を得ました。(証明終わり)

 

今日は新居でネットが復活したばかりなので,ブログを書く気力

も少なくてこれだけで終わります。

 

参考文献も下に示してはいますが,今日の部分は35年くらい前の

学生のとき自力で計算したものです。

 

参考文献: J.D.Bjorken & S.D.Drell "Relativistic Quantum Mechanics" (McGraw-Hill)

 

PS:下は引越し後に粗品を持ってあいさつに行ったお返しに,お隣の

 部屋のモンゴル人の留学生夫婦に頂いた鉢植えです。 

 

 鉢植えは"根付く"ので入院患者へのお見舞いにはご法度らしいのです

 が引越しにはピッタリでしょう。

 

 取り合えず,まだ整理中で重ねただけのオーデイオの上に置いたので

 右にヘッドホンが写っています。

 

PS2:ネットを休んでるうちに,やや被フォロー数の増えたTwitterは,

 やはり?というべきか物理系の現役大学生のフォローが多いですね。

   

 昔からいつも思っていることですが,

 「知識があるとかないとかいっても,高々知ってるか知らないかの

 違いだ。」とかね。。

 

 でも,こういうことを偉そうにこう述べること自体が,思い上がり

 でしょうか?

  

 かつて,奥の院の面接試験で.結構偉い先生に

「引力があるから質量が小さいなんて言ってるけど,どうせ

 アインシュタインか誰かの受け売りだろ?」と言われ,

  

 よほど「アンタだってそうだろ」と言ってやろうかと思ったのを

 グッとこらえたことなど思い出しました。

  

 バカだね。>自分。。

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