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2010年11月 9日 (火)

赤外発散の初期論文(3)

 大分,間があきましたが赤外発散の初期論文の紹介の続きです。

 

 気ままで飽きっぽい性格なので,ただ単に既に鑑賞し終わって

歴史的意味はあっても,私の中では既にこれ以上の発展性がなく,

より理解しやすい別の文献の存在を知っている,対象について,

最後まで記述するのさえ,気が向かないということもあります。

 

まあ,特にタイピングに手間取っているだけなのですが,

いつまでも休止期間中のExerciseにばかり関わってるわけ

にもいかないという気持ちもあるので,多少急ピッチで記事

の最終回としました。

 

論文の第Ⅲ章からです。

 

.Application to small Perturbation on the electron;

Transition Probabilities and Mean radiated energy

(電子小摂動への応用;遷移確率と平均放射エネルギー)

 

 さて,まず,下に解:(17)を再掲します。

 

 u=u(μ,m)

 =γ(μ1/2exp[(i/hc)(mc(1-μ2)–1/2μ,)

 +iΣσcos(s){Q-(1/2)σsin(s)}]

 Πmsλ(Q-σsin(s))(17) です。

 

 これは,電子に作用する外的摂動が小さいときの遷移確率の

計算に利用できます。

 

 それぞれ量子数がm,n,速度が=cμ,=cνの電子

で特徴付けられる2つの状態間の遷移を考えます。

 

 電子の位置座標とスピンにかかる相互作用演算子V^の行列要素

は次式で与えられます。

(※V^は0+Vの相互作用ポテンシャルVの意味です。)

 

 すなわち,V(μ,m,ν,n)

 =(1/Ω)∫dexp{(-i/hc)(mc(1-μ2)–1/2μ,)}

 γ*(μ)V^δ(ν)exp{(i/hc)(mc(1-ν2)–1/2ν,)}

 ΠI(s,m,n)(18) です。

 

τμに対する関数σの対応するνに対する関数です。

 

(※:σ=(μ,)/[hc{ks-(μ,s)}](13)に対し,

τ=(ν,)/[hc{ks-(ν,s)}]です。※)

 

δ(ν)は,状態μに対する振幅γ(μ)に対応する状態μに対する

4成分振幅です。

 

(※:δ(ν)はDiracのデルタ関数ではなく,γ(μ)と同じく4成分

の列ベクトル or 4成分Diracスピノールです。※)

 

I(;σ,m,τ,n)

≡∫dQh(Q-σsin(kr))exp{-i(σ-τ)cos(kr)Q

+i(1/2)(σ2-τ2)sin(kr)cos(kr)}hn(Q-τsin(kr))

=exp{-i(m-n)(kr)}K(σ,m,τ,n)(19) です。

 

 ここで,K(σ,m,τ,n)

≡exp{-(σ2-τ2)/2}(m!n!)1/2{-i2-//2(σ-τ)}(m-n)

 Σζ=0l[{-(σ2-τ2)/2}ζ/{(l-ζ)!(|m-n|+ζ)!}](20)

です。

 

 ただし,lはm≦nならl=m,m>nならl=nです。

 

Iの表現(19)を(18)に代入すると,

V(μ,m,ν,n)=(1/Ω)F(K(σ,m,n)

を得ます。

 

ここに,F()≡∫dexp{-i(qr)}γ*(μ)V^δ(ν),

≡(mc/hc){(1-μ2)–1/2μ-(1-ν2)–1/2ν}+

Σ(m-n)s (23)

 

 それ故,単位時間当たりの(μ,m)→ (ν,n)の遷移確率:

Tは次のように書けます。

 

すなわち,T(μ,m,ν,n)

={2π/(hcΩ2)}D[mc2(1-μ2)–1/2-mc2(1-ν2)–1/2

+Σ(m-n)hcωs]|F()|2

ΠK(σ,m,n)2 (24)です。

 

ただし,上の式のD[ ]はDiracのデルタ関数を意味します。

 

 以下では,議論を簡単にするため,(23)の最後と(24)の引数に

おいて最後の電磁項を無視します。

 

 そして,電子のエネルギー・運動量の変化に比べて電磁場の

エネルギー・運動量の変化が小さいという仮定,つまり低振動数

では明らかに正当化される仮定を導入します。

 

 さらに,全てのmがゼロであるような状態:(μ,m)=(μ,0),

つまり自由光量子が全く存在しない初期状態からの遷移を考えます。

 

 その状態から種類s,λの光量子nが放出され,遷移後に電子

が立体角要素:sinθdθdφの中に移動する単位時間当たりの

確率Uは(24),(20)によって,次のように書けます。

 

 U(μ,ν,n)sinθdθdφ

={1/(4π2c4Ω)}sinθdθdφ{m2νc/(1-ν2)}|F()|2

 Πexp{-(σ2-τ2)/2}{(σ-τ)2/2}nsλ/(n!)

(26)です。

 

 この結果は序文で書いた通りに,"任意の有限個数の光量子放出

確率はゼロである。"ことを確証するものです。

 

 これを明示するために,まず光量子が全く放出されないケース:

=0の場合を考えます。

 

 このときには,{(σ-τ)2/2}nsλ/(n!)=1ですから

(26)の指数因子の部分は,単にΠexp{-(σ2-τ2)/2}です。

 

 (13)σ=(μ,)/[hc{ks-(μ,s)}],

τ=(ν,)/[hc{ks-(ν,s)}],および,

  (2)≡2e{πhc/(Ωωs)}1/2より,

 

 Πexp{-(σ2-τ2)/2}

=exp(-2πe2c-1Ω-1Σωs-1[(μ,ε)/{ks-(μ,s)

}-(ν,ε)/{ks-(ν,s)}]2)(27)

となることがわかります。

 

そこで,領域d内には振動モード:Ω(2π)-3が存在する

ことを利用してd積分を実行しλで和を取れば,

 

がゼロのときの(27)右辺の指数の中は,-{e2/(4π2cc)}limω0→0ω0ω1dωsωs-10πsinθsdθs0dφs[{μ/(1-μs)

ν/(1-νs)}2-{μs/(1-μs)-νs/(1-νs)}2]](28)

となります。

 

ここでθsssの極角,μssはμ,νのsに沿う成分です。

そして,dωs積分は上限にω1の切断(cut-off)を持つとしています。

 

(28)の角度にわたる積分:∫0πsinθsdθs0dφsは有限な

正因子を与えますが,一方dωs積分はω0→ 0 の極限で対数発散

します。

 

この結果,(27)は消えます。

 

(注5):つまり,ω0→ 0 でΠexp{-(σ2-τ2)/2}

=exp(-2πe2c-1Ω-1Σωs-1[(μ,ε)/{ks-(μ,s)}

-(ν,ε)/{ks-(ν,s)}]2) → exp(-∞) → 0 です。※ 

 

もしも,(26)のnがゼロと異なる場合,(26)は(27)と有限な因子

しか異ならないのでやはりゼロです。

 

 しかしながら,放出される光量子数とは独立に,電子がμからν

へと遷移する総確率は,個数nにわたる(26)の総和で与えられます。

 

 それを計算すると,

{1/(4π2c4Ω)}sinθdθdφ{m2νc/(1-ν2)}|F()|2

 (29)です。

 

 これは電磁場の相互作用を完全に無視して得る結果と同じです。

 

 こうした結果は電磁場の運動量変化が電子のそれに比べて無視

されるケースであるため物理的には予期されたものです。

 

 したがって,結局,有限個の光量子放出を伴なうμνの確率

はゼロであり,一方,全確率は有限であるという事実から放出される

光量子の平均個数は無限大であると結論されます。

 

 そして,輻射が振動数区間dωs,角度域dθs,dφsに輻射される

(同時に電子が立体角要素sinθdθdφに検出される)平均放射

エネルギーは次式で与えられます。

 

すなわち,{Ω/(2πc)3s2dωssinθsdθsdφs

ΣλΣnsλ=0{ncωsUsinθdθdφ (30)です。

 

これは,{1/(4π2c4Ω)}sinθdθdφ{m2νc/(1-ν2)}

|F()|2・{e2/(4π2c)}[{μ/(1-μs)-ν/(1-νs)}2

-{μs/(1-μs)-νs/(1-νs)}2]}dωssinθsdθsdφs (31)

に比例します。

 

このことは,(26),(13),(2)と

公式:Σn=0{nxn exp(-x)/n!}=x から得られます。

 

(30)の余分なωs因子:ωs2のため,光量子の平均総数は無限大なのに平均総エネルギーは有限です。

 

また,式(31)は丁度,立体角要素sinθdθdφに電子が散乱される

総確率にその方向に古典的に放出される総エネルギーを掛けたもの

に一致しています。

 

低振動数の極限で微細構造定数:e2/(hcc)のベキ展開による和

のエネルギーは,式(31)単独で正しいと仮定されるものと一致して

平均輻射エネルギーの同じ結果へと導きます。

 

もっとも遷移確率に関する限り,ベキ展開手法は,結果を完全に

ミスリードするものではありますが。。。

 

上記考察は,β崩壊の理論の多くの文献ケースにも応用できます。

 

その際には,外的摂動は電子座標には作用しませんが1つの電子

を生成します。上記扱いとの唯一の違いは,電磁場に関する限り,

電子生成と共に核子速度がcμからcνに置き換わることです。

 

散乱と同じく,β崩壊の確率は低振動数輻射を伴なう電子相互

作用によっては変わらず,平均輻射エネルギーはe2/(hcc)の

ベキ展開で計算されるものとよく一致することがわかります。


(※完了)

 

 最後の方では冗長な計算を省略してエッセンスだけにしましたが,

この項についてはこれで終わりです。

 

(参考文献): F.Bloch and A.Nordsieck,

"Note on the Radiative Field of the Electron" Phys.

Rev,Vol.52,p54(1937)

 

(edited by J.Schwinger「(selected papers on)QUANTUM ELECTRODYNAMICS」:Dover books on engineering and

engineering physics)より。

 

PS:最初に書いた発展性がないという意味は,私の頭の中でのこと

であって他意はありません。

 

 赤外発散については,後のYennie-Frauchi-Suuraの70ページ以上

の集大成の論文(D.Yennie S.Frauchi H.suura

"Infrared Divergence Phenomena and High-Energy Processes" Ann.Phys.Vol.13 pp379-452 (1961))でも内容は最初のこの論文

の考察に同等です。

 

 要するに,ゼロ振動数の無限個の実光子の寄与がexp(-∞)で

ゼロ振動数の無限個の仮想光子の寄与がexp(+∞)となるので

実際計算で相殺するという話です。

 

 手法は全く異なりますが紫外発散でのくりこみにおける

Lamb Shiftや異常磁気能率などの輻射補正と同じく,赤外発散

でもexp(-∞)×exp(+∞)が正確に相殺して1になるわけでは

ないために余分の補正因子が得られます。 (以上)

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114 . 場理論・QED」カテゴリの記事

コメント

TOSHIさん、お返事ありがとうございます。

私には、TOSHIさんを攻撃する意思はないことも、一言付け加えておきます。間違いを指摘することで、非難するとか、恥をかかせてやろうとか、そんなつもりは全くありません。単に、違っている(と思われる)ことを、違っていると言っているだけです。もし何か私が失礼なことを言っているようであれば、ご指摘ください。

>違ってるのは最初からわかっています。

> 私がかつてDiracの教科書を最初から最後まで読んで勉強をした際の自分の勉強ノートとも違ってるのですから。。

> それを見てブログ用に再考したのです。

そうだったのですか?2010年9月11日のコメントで、

>まあオリジナルではなくDiracのテキストにあるものを説明して書いたつもりなのでこれ以上は元本を読んでください。

と仰っていますが、この発言とは矛盾しないのですか?

投稿: 冷蔵庫 | 2011年1月16日 (日) 07時31分

 冷蔵庫さん。TOSHIです。

 違ってるのは最初からわかっています。

 私がかつてDiracの教科書を最初から最後まで読んで勉強をした際の自分の勉強ノートとも違ってるのですから。。

 それを見てブログ用に再考したのです。

 あなたにとって,私への指摘内容が是非必要なことであり,それで閉じていて間違いないと思われるのであれば,それでいいんではないでしょうか?

 誰であろうとコメントをし続けるのは自由ですが,あなたの"運動量演算子"に関するというコメントであれば,もはや私は読んでさえいません。
 
 他にもコメント読者はいると思うので,他に読んで人はいるかもしれませんが。。

              TOSHI

投稿: TOSHI | 2011年1月14日 (金) 17時38分

> こうしたネチケット的なことを9月20日ごろ長いコメントで書いてる最中にPCがこわれて内容も消えたこともありますがぜひ必要な事務連絡的コメント以外返事は自由ですね。

かなり間が空いてしまいましたが、もう一言(?)だけ言わせていただきます。今回問題にしている、私の、"運動量演算子のシュレーディンガー表現"のコメント(TOSHIさんの書かれたブログ内容が、Diracの教科書通りではない、という指摘)ですが、私個人としては"必要な事務連絡的コメント"であったと思っています。例えば、Phys.RevのVolが間違っていることを指摘するのと同様の。教科書の内容を説明する文章と、その教科書の内容が食い違っているわけですからね。

TOSHIさんに、"必要な事務連絡的コメント"とは受け取っていただけなかったことは私にとって残念ですし、予想外でした。ですが、コメントを返す立場にある人がそう判断したのならそれはしかたないと思います。私がコメントの返事を執拗に求めたことが失礼に値することに変わりありません。それについては私も反省しております。

ただ、"運動量演算子のシュレーディンガー表現"のコメントは必要だと思ったから書いた、ということを再度強調しておきます。

教科書とブログの相違点については、同記事のコメント欄に後から具体的に書いておきました。もうご覧になられたでしょうか?そこでも言いましたが、一応まだその続きは書くつもりでいます。もちろんそれも、必要なことだと私が勝手に判断して行っていることです。もし、TOSHIさんがそれを迷惑と感じるようでしたら、遠慮せずに仰ってください。
(途中まで書いてしまってから言うのもなんですが)

投稿: 冷蔵庫 | 2011年1月14日 (金) 08時43分

TOSHIさん、お返事ありがとうございます。
そして私のほうは返事が遅れ気味ですみません。

まずはじめに、私がコメントを要求したことは確かにマナー違反であったことを認め、謝罪しておきます。申し訳ありませんでした。

それから、9/26の私のコメント、

>コメントをしないつもりでも、ただ無視するのではなく、その旨を伝えるべきではないでしょうか。疑問文でお聞きしているので、お返事を待っていることは明らかですよね。たしかにここはTOSHIさんのブログですが、無視するのはマナーに反すると思うのですが。
同じ説明を繰り返したくないのなら、前に説明しましたよ、と言えばいいだけなのでは?もしくは、以前に説明した箇所を挙げていただくとか。

ですが、マナーに反するというのは言い過ぎであったことを認めておきます。ただ、コメントの返事はできるだけ返したほうがいいとは思います。

本当はTOSHIさんの返事を頂いたうえで「運動量演算子のシュレーディンガー表現」のコメントの続きを書きたかったのですが、返事なしに書いていくことにします。

何か他に私のコメントでマナーの至らぬ点があればご指摘くださるようお願いします。

投稿: 冷蔵庫 | 2010年11月20日 (土) 19時56分

 冷蔵庫さん。こんにちは

>それで、"運動量演算子のシュレーディンガー表現"のコメントの返事は?

返事を書くつもりがあるのかどうかだけでもお答えいただけますか?(できればその理由も)

 まず,ネット?での基本的なことから。。。

 ブログのコメントにしてもメールにしてもその返事を書くかどうかは本人の自由なんですよ。

 このコメントでさえもしもシカトして書かなかったとしても理由を聞かれる,詰問されるおぼえはないです。

 今のところコメントをするつもりはないです。理由は"めんどくさいから"じゃダメでしょうか。。。

 1990年からネットやってますけど,今まで掲示板を含めてコメントに返事を要求されたのはこれがはじめてです。

 ネチケットという言葉は嫌いなんですが使いたくなりました。

 せかされてもPendingにして続きを書いてない記事の続きを書くのも,今書くかどうかは私の自由ですしコメントに返事を書く気になるかどうかも私の自由です。

 こうしたネチケット的なことを9月20日ごろ長いコメントで書いてる最中にPCがこわれて内容も消えたこともありますがぜひ必要な事務連絡的コメント以外返事は自由ですね。

 ただし,よほど場違いな商売宣伝とかアダルトなチャチャいれ,2チャンネル的な中傷発言などでない限りは,私を攻撃するものであろうと,その他如何なるコメントであろうと削除権限あっても削除はしません。

 これも私のポリシーですが。。

           TOSHI

投稿: TOSHI | 2010年11月12日 (金) 06時31分

それで、"運動量演算子のシュレーディンガー表現"のコメントの返事は?

返事を書くつもりがあるのかどうかだけでもお答えいただけますか?(できればその理由も)

投稿: 冷蔵庫 | 2010年11月11日 (木) 23時11分

 ども冷蔵庫さん,ご指摘ありがとうございます。

>今回取り上げている論文が載っているのはPhys.RevのVol.は72ではなく、Vol.52ではないですか?ページは54~59です。

 おっしゃる通りです。Vol.72,p241は論文集の目次のすぐ後のLambの1947年の論文の見間違いでした。失礼しました。

            TOSHI

投稿: TOSHI | 2010年11月10日 (水) 00時03分

TOSHIさん、ご無沙汰しています。冷蔵庫です。

今回取り上げている論文が載っているのはPhys.RevのVol.は72ではなく、Vol.52ではないですか?ページは54~59です。

http://prola.aps.org/abstract/PR/v52/i2/p54_1

(このURLでは、お金を払わないと記事は見られませんが)


それから、"運動量演算子のシュレーディンガー表現"の私のコメントの返事には、もう少し時間がかかりそうでしょうか?

投稿: 冷蔵庫 | 2010年11月 9日 (火) 22時18分

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