« 2011年元旦!!新年ですね。 | トップページ | 久しぶりの雑感 »

2011年1月 2日 (日)

線型代数のエッセンス(1)(行列)

 久しぶりに,数学,それも線型代数学の話題でも取り上げようかという気になり1985年8月の覚書きノートを取り出してきてアップします。

取り合えずは,"正方行列Aの固有多項式をφ(λ)≡|λE-A| or φ(λ)≡det(λE-A)とおくとき,A自身がφ(λ)=0 の根になる,つまりOを零行列としてφ(A)=Oが成立する。"というHamilton-Cayleyの定理を証明するところが第一目標です。

ほぼ予備知識なしという仮定でゼロからスタートします。

 

もっとも,面倒な証明が必要なところは大抵の教科書に載ってるはずなので,証明を省略します。

 

数学のテキストによくある必要事項(定義,定理,証明)の羅列に過ぎないと見えるかもしれませんがご容赦ください。 

§1.行列(複素数体の行列)

 

[定義1-1](行列):複素数体のmn個の元を,m個の行(row)とn個の列(column)を持つ長方形の型に配列したものをm行n列の行列(matrix),または(m×n)行列という。

 

 そして,これを

 または,A=[aij]と表わす。

そして,A=[aij]のとき,aijを行列Aの成分,または要素(matrix-element)と呼び,このaijを(A)ijと表わす。

特にm=nのときには,(m×n)行列を次数(order)がmの正方行列(square-matrix),またはm次の正方行列と呼ぶ。

[定義1-2]:(m×n)行列においてm=1の行列を行ベクトル(row-vector),n=1の行列を列ベクトル(column-vector)という。

[定義1-3]:行列A=[aij],B=[bij]があって,∀(i,j)成分の要素について等式:aij=bijが成立するとき,そのときに限り行列Aと行列Bは等しいといい,A=Bと表わす。

[定義1-4]:A=[aij],B=[bij]と∀α∈に対し,行列の和(sum)をA+B≡[aij+bij],スカラー倍(複素数倍:complex-multiple)をαA≡[αaij]で定義する。

 

 また,全ての要素(成分)がゼロの行列を零行列(zero-matrix)と呼び,これをOで表わす。

[定理1-5](行列の性質Ⅰ):A,B,Cをm行n列の任意の行列とし,α,β∈とする。

  (ⅰ)    1・A=A,(ⅱ) 0・A=O,

 (ⅲ)α(βA)=β(αA)=(αβ)A,

 (ⅳ)A+(B+C)=(A+B)+C,(ⅴ)A+B=B+A,

 

 (ⅵ)A+O=O+A=A,(ⅶ)(α+β)A=αA+βA,

 (ⅷ)α(A+B)=αA+αB,

 (ⅸ)(-1)Aを-Aと書けばA+(―A)=O 

 これらの性質の成立は行列の定義と照らし合わせると自明なので証明は省略します。

[定理1-6](行列の性質Ⅱ):A,B,Cをm行n列の任意の行列とし,α,β∈とすると次の性質が成り立つ。

(ⅹ) A+(-B)をA―Bと書けば(A-B)+B=A,またC+B=AならC=A―Bである。

 

(xi) (-α)A=-αA,(xⅱ)-(A+B)=-A-B,(xⅲ) -(-A)=A, (xⅳ)A+A=2A,A+A+A=3A,..etc.

 

↑これらも自明です。

[定義1-7](行列の乗法):(m×n)行列A=[aij](i=1,2,..,m;j=1,2,..,n)と(n×p)行列B=[bjk](j=1,2,..,n;k=1,2,..,p)に対し,cik≡Σj=1nijjkを成分とする(m×p)行列C=[cik](i=1,2,..,m;k=1,2,..,p)をAとBの積といい,C=ABと書く。

 

(※注意:一般にm=n=pでもBA≠ABです。)

[定理1-8](行列の積の性質):A,B,Cを以下のような積が定義可能な行列とし,α∈とする。以下の性質が成り立つ。

(ⅰ) α(AB)=(αA)B=A(αB),(ⅱ)(A+B)C=AC+BC,(ⅲ) C(A+B)=CA+CB,(ⅳ)A(BC)=(AB)C

(証明)(ⅰ),(ⅱ),(ⅲ)は自明なので(ⅳ)だけを証明します。

 さて,M=[mik]≡AB,N=[njl]≡BCとすると,mik=Σj=1nijjk,njl=Σk=1pjkklです。

 故に,(AN)il=Σj=1nijjl,=Σj=1nΣk=1pijjkkl=Σk=1pikkl=(MC)ikです。

 したがって,AN=MC,つまりA(BC)=(AB)Cが示されました。

 

(証明終わり)

[定義1-9](行列式):Aがn次の正方行列のとき,Pを(1,2,..,n)→(i1,i2,..,in)なる(1,2,..,n)の任意の置換としてΣP(-)P1i12i2..aninをAの行列式(determinant of A)と呼び,これを|A|またはdetAと表わす。

 

 ただし,(-)Pでは置換Pの符号である。(これはPが偶置換ならプラス,奇置換ならマイナスを示す。)

[定理1-10](行列式の性質):A,Bをn次の正方行列とし,α∈とする。このとき,(ⅰ)|αA|=αnA,(ⅱ)|AB|=|A||B|が成り立つ。 (←証明略:線形代数学のテキストを参照)

[定義1-11](余因子):行列A=[aij]の(i,j)成分aijに対応する第i行と第j列を削除して得られる(n-1)次行列の行列式に(-1)i+jを掛けた値を行列Aの要素aijの余因子(cofactor)といいAijで表わす。

[定理1-12](行列式の展開公式):行列Aの行列式|A|は|A|=Σj=1nijijと展開される。

  

 また,k≠iのとき,和Σj=1nijkjはゼロである。

(証明)A=[aij]のとき,Pを(1,2,..,n)→(j,i2,..,in)のような任意の置換,Qjを1→jに特定した(1,2,..,n)→(j,i2,..,in)のような置換とすると,行列式の定義により|A|=ΣP(-)P1i12i2..anin=Σj1jΣQj(-)Qj2i2..aninと書けます。

 右辺の因子ΣQj(-)Qj2i2..aninはAから(1,j)成分a1j対応する第1行と第j列を除いた(n-1)次行列式に(-1)j+1を掛けたもの,つまり余因子A1jですから,|A|=Σj1j1jが得られます。

 そこで2≦k≦nのk≠1なるkに対して和Σjkj1jを取れば,これはAの第1行目を全て第k行目で置き換えた行列の行列式です。

 

 行列式の行や列の交換反対称性から1行目とk行目の値が全く同じ場合の行列式はゼロですから,k≠1ならΣjkj1j=0 です。

ここまでは(i,j)成分aijをi=1の(1,j)成分a1jに特定して考察しましたが,明らかにi=1に特定することなく任意のiについて,Σjijij=|A|,かつΣjkjij=0 (k≠i)が成立します。(証明終わり)

[定義1-13](単位行列):E=[δij](i,j=1.2,..,n)なる行列Eをn次の単位行列(unit matrix)という。

 

ただしδijはKronckerのデルタ記号です。これは,i=jならδij=1,i≠jならδij=0 なる値を示すi,jの関数です。

[定理1-14](単位行列の性質):Eと同じ次数の正方行列Aに対してAE=EA=Aが成立する。(自明)

[定義1-15](対角行列):行列の対角線上の要素がλ12,..,λnである以外に全ての行列要素がゼロの,A=[λiδij]なる形の正方行列を対角行列(diagonal matrix)という。

 

※(注):λ1=λ2=..=λn=1の特別な対角行列が単位行列です。※

[定理1-16](対角行列の性質):対角行列の積は対角行列である。(自明)

[定義1-17](可逆性):n次の正方行列Aに対してXA=AX=Eなる行列Xが存在するならAは可逆(invertible)であるといい,XをAの逆行列と呼んでX=A-1と書く。

[定理1-18](余因子行列):n次の正方行列A=[aij](i,j=1.2,..,n)に対して(j,i)成分の要素がAijの行列を余因子行列A~,つまりA~≡[Aji]と定義すると,AA~=A~A=|A|Eである。

(証明)(AA~)ik=Σj=1nijkjですが,この右辺は[定理1-5]の行列式の展開公式そのもので(AA~)ik=|A|δikです。これは,AA~=|A|Eを意味します。

他方,(A~A)ik=Σj=1nijkj=|A|δikより,A~A=|A|Eが成立することも明らかです。(証明終わり)

(定理1-18の系):Aがn次正方行列のとき,|A~A|=|A|nである。(自明)

[定義1-19](正則行列):正方行列Aが|A|≠0 を満たすとき,Aを正則行列(regular-matrix)という。

 

 また,Aが|A|=0 を満たすときには,Aを非正則行列(irregular-matrix) or 特異行列(singular-matrix)という。

[定理1-20](逆行列):Aが正則行列のとき,Aは可逆であり逆行列はA-1=A~/|A|で与えられる。(← [定理1-18]より自明)

[定理1-21]:Aが可逆(正則)のとき,(ⅰ)|A-1|=|A|-1=1/|A|,(ⅱ)(A-1)-1=A,(ⅲ)(AB)-1=B-1-1が成立する。

(証明)(ⅰ)AA-1=Eより|A||A-1|=|E|=1です。そしてAが可逆(正則)より|A|≠0 なので|A-1|=|A|-1=1/|A|です。

 (ⅱ) (ⅰ)によりAが正則ならA-1も正則ですから,A-1の逆:(A-1)-1が存在します。すなわち,A-1(A-1)-1=Eです。この両辺に左からAを掛けると(A-1)-1=Aを得ます。

 (ⅲ)(AB)-1=E(AB)-1=(B-1EB)(AB)-1=(B-1-1AB)(AB)-1=(B-1-1){(AB)(AB)-1}=B-1-1E=B-1-1です。(証明終わり)

[定義1-22](行列の多項式):多項式φ(λ)=α0+α1λ+..+αpλp01,..,αp)に対し,対応するn次正方行列Aの多項式φ(A)をφ(λ)の変数λをAに置き換えたもの:φ(A)≡α0+α1A+..+αpp01,..,αp)で定義する。

[定理1-23]:λの2つの多項式φ(λ),ψ(λ)の和:f(λ)≡φ(λ)+ψ(λ),積:g(λ)≡φ(λ)ψ(λ)もλの多項式である。このときf(A)=φ(A)+ψ(A),g(A)=φ(A)ψ(A)も成立する。

 

 特にψ(A)φ(A)=φ(A)ψ(A)(積の交換法則)が成立する。

(証明)行列の四則演算は,複素数体の上の複素数の四則演算と行列の積が可換でないことのみが異なりますが,単一の行列AとAのベキAjについては全て積が可換なので,行列Aの多項式は複素数の多項式と四則演算においては同一の性質を持ちます。(証明終わり)

[定義1-24](行列の転置):(m×n)行列A=[aij](i=1,2,..m,j=1.2,..,n)に対し,行と列を逆転させた(n×m)行列B≡[bij]=[aji]をAの転置行列(transport-matix)といいtAと表わす。

(特に行ベクトルの転置は列ベクトル,列ベクトルの転置は行ベクトルなので,列ベクトルをと表記するとその行ベクトルはtと書けます。)

[定理1-25](転置行列の性質):(ⅰ)t(αA+βB)=αtA+βtB,(ⅱ)t(AB)=ttA,(ⅲ)t(A-1)=(tA)-1 (証明略)

[定義1-26](対称性):行列A=[aij]においてtA=A ⇔ aji=aijならAは対称(symmetric)であるという。

 

 また,tA=-A ⇔ aji=-aijならAは交代(alternative)である,または反対称(anti-symmetric)であるという。

[定理1-27]:A,Bが共に対称行列;つまりtA=A,tB=Bであり,かつAB=BAならばABも対称行列である。(自明)

[定義1-28](直交行列):Aが正方行列でtAA=AtA=E,つまりtA=A-1なるとき,Aを直交行列という。

[定理1-29]:直交行列の逆行列,直交行列の積は直交行列である。

(証明)Aが直交行列:tA=A-1とすると,[定理1-25](ⅲ)によってt(A-1)=(tA)-1=(A-1)-1ですから,A-1も直交行列です。

 次に,tA=A-1,かつtB=B-1とする。このとき,t(AB)=ttA=B-1-1=(AB)-1です。(証明終わり)

[定義1-30](複素共役,エルミート共役):A=[aij]をaijの複素数行列とする。α*でα∈の複素共役(complex-conjugate)を表わすとき,A*≡[aij*]をAの複素共役行列という。

 また,A+t*=[aji*]をAのエルミート共役(Hermitian-conjyugate),またはAの随伴(adjoint)行列という。

[定義1-31](エルミート行列):A+=AならAをエルミート行列(Hermitian),または自己随伴(self-adjoint)行列という。

[定義1-32](ユニタリ行列):A+A=AA+=E,つまりA+=A-1なるとき,Aをユニタリ(unitary)行列であるという。

[定理1-33]:(ⅰ)A+=A-1ならば(A-1)+=Aである。(ⅱ)(AB)+=B++,(ⅲ)A+=A-1,B+=B-1なら)(AB)+=(AB)-1である。(証明略)

[定理1-34]:Aがユニタリ:A+=A-1,ならAの行列式|A|の絶対値は1である。

(証明)Aのエルミート共役行列A+の定義から|A+|=|t*|=|A*|=|A|*です。そして,AがユニタリならE=A+Aより,1=|E|=|A+A|=|A+||A|=|A|*|A|です。(証明終わり)

[定義1-35](相似性):行列AとBに対してある正則行列Xが存在してA=X-1BX,あるいはXA=BXが成立するとき,AはBに相似(similar)であるという。

[定理1-36](相似関係の同値性):

 

(ⅰ)AはAに相似である。(反射的:reflecsive) 

(ⅱ)AがBに相似ならBはAに相似である。(対称的:symmetric) 

(ⅲ)AがBに相似,かつBがCに相似ならAはCに相似である。(推移的:transitive) 

 

 が成立する。

 

※(注):これら反射性,対称性,推移性は関係が同値関係であるための必要十分条件なので,相似性(similarity)は同値関係(equivalence relation)の1つであることがわかります。(注終わり)※

(証明)まず,(ⅰ)A=E-1AEです。また,(ⅱ)AがBに相似なら正則行列Xが存在してA=X-1BXです。故にB=XAX-1=(X-1)-1-1-1EでありX-1は正則なのでBはAに相似です。

(ⅲ)AがBに相似,かつBがCに相似なら正則行列X,Yが存在してA=X-1BX,B=Y-1CYです。A=X-1BX=X-1(Y-1CY)X=(YX)-1C(YX)でYXは正則ですからAはCに相似です。(証明終わり)

[定理1-37]:正則行列Xと行列の族:{A1,A2,..,Am}について,(ⅰ)X-1k=1mk)X=Σk=1m-1kX,(ⅱ)X-1(A12..Am)X=(X-11X)(X-12X)..(X-1mX) が成り立つ。(証明略)

(定理1-37の系):正則行列Xと行列Aに対しX-1kX=(X-1AX)kである。そして一般に,任意の多項式f(λ)に対してX-1f(A)X=f(X-1AX)である。(自明)

[定義1-38](固有多項式):Aをn次の正方行列とするとき,n次多項式;φ(λ)≡|λE-A| or φ(λ)≡det(λE-A)をAの固有多項式という。そして,φ(λ)の零点,or 方程式φ(λ)=0 の根λ12,..,λnを行列Aの固有値という。

(注):列ベクトルがAの固有値λに属する固有ベクトルであるとは,0 であってA=λなる関係式が成立することです。そして,A=λは(λE-A)0 と行列表現できます。

このn元連立1次方程式:(λE-A)0 が自明解(0)以外の解を持つための必要十分条件がφ(λ)=|λE-A|=0 です。(注終わり※)

[定理1-39]:行列A=[aij]の固有多項式φ(λ)≡|λE-A|の次数は,Aの次数に等しく,そのλnの係数は1,λn-1の係数はAのトレース(trace)(対角和):TrA≡Σi=1niiに(-)符号を付けた値に等しい。

 

(証明)まず,行列式の定義によって|λE-A|=ΣP(-)P(λE-A)1i1(λE-A)2i2..(λE-A)ninです。

 

 また,行列:(λE-A)の要素を陽に書けば,(λE-A)ij=λδij-aijです。

  

 したがって,固有多項式:φ(λ)=|λE-A|において,λの最高次λnを含む項は,ΣPの置換Pが恒等置換I:(1,2,..,n)→(1,2,..,n)の場合:P=Iに対応する行列の対角項の積(λE-A)11(λE-A)22..(λE-A)nn=(λ-a11)(λ-a22)..(λ-ann)のみから発生します。

 

 そして,ΣPの恒等置換P=I以外の置換Pによる項は,n個の因子のうち単なる定数の行列の非対角項因子を少なくとも2個含むため,高々λの(n-2)次項しか持ち得ません。

 

 以上から,固有多項式φ(λ)のλnn-1の項は共に,項:(λ-a11)(λ-a22)..(λ-ann)のみから発生することがわかります。

   

 そこで,φ(λ)におけるλの最高次λnの係数は1であり,λn-1の係数は-(a11+a22+..+ann)=-TrAとなることが示されました。

(証明終わり)

   

[定理1-40]:行列Aの固有多項式φ(λ)≡|λE-A|の定数項はφ(0)=|-A|=(-1)n|A|である。(自明)

  

[定理1-41]:相似な行列の固有多項式は相等しい。

 

(証明)相似の定義によれば,行列AがBに相似であることは|X|≠0 なる行列Xが存在してA=X-1BXと表現できることを意味します。

 

 そして,A=X-1BXならAの固有多項式は|λE-A|=|λE-X-1BX|=|X-1(λE-B)X|=|X-1||λE-B||X|=|X|-1|λE-B||X|=|λE-B|です。最右辺の|λE-B|はBの固有多項式です。(証明終わり)

 

(定理1-41の系):相似な行列は同一の固有値,同一のトレース,同一の行列式を持つ。

 

(証明)これは[定理1-41]を[定理1-39],[定理1-40]と組み合わせると得られます。(終わり)

 

[定理1-42]行列の固有値の総和はその行列のトレースに等しい。

 

(証明)[定理1-39]より,行列A=[aij]の固有多項式はφ(λ)=|λE-A|=λn-(a11+a22+..+annn-1+..と表現されます。

 

 一方,Aの固有値λ12,..,λnはφ(λ)=0 の根なのでφ(λ)はφ(λ)=(λ-λ1)(λ-λ2)..(λ-λn)と因数分解されます。

 

 したがって,λn-(a11+a22+..+annn-1+..=(λ-λ1)(λ-λ2)..(λ-λn)=λn-(λ1+λ2+..+λnn-1+..なるλの恒等式が成立します。

 

 それ故,この両辺のλn-1の係数比較によってλ1+λ2+..+λn=a11+a22+..+ann=TrAを得ます。(証明終わり)

  

[定理1-43](Hamilton-Cayleyの定理):行列Aの固有多項式をφ(λ)≡|λE-A|とするとφ(A)=Oである。つまりAはφ(λ)=0 の行列の根になっている。

(証明) (λE-A)の余因子行列(λE-A)~をBと表記すると,Bの要素は(λE-A)の余因子ですから全てλの(n-1)次多項式です。

そこで,行列B自身も要素が定数項のみの行列,λの1次項のみの行列,2次項のみの行列,..,(n-1)次項のみの行列の和に分解できます。

 

すなわち,B=B(0)+B(1)λ+..+B(n-1)λn-1と係数が行列のλの(n-1)次多項式の形に書けます。係数:B(0),B(1),..,B(n-1)は要素(成分)が定数のn次正方行列です。

一方,余因子行列の性質から,B(λE-A)=|λE-A|Eです。

この恒等式は,φ(λ)=|λE-A|=α0+α1λ+..+αnλnと書けば,(B(0)+B(1)λ+..+B(n-1)λn-1)(λE-A)=(α0+α1λ+..+αnλn)Eなる等式の成立を意味します。

両辺のλの係数を比較すると,-B(0)A=α0,-B(1)A+B(0)=α1E,-B(2)A+B(1)=α2E,..,-B(n-1)A+B(n-2)=αn-1E,-B(n-1)A=αnEです。

 

これら(n+1)個の等式の両辺に,順にE,A,A2,..,An-1,Anを右から掛けて辺々加えると,左辺は相殺されてOとなり,右辺はα0E+α1A+..+αnn=φ(A)となります。(証明終わり)

 今日はここまでにします。

 

参考文献:ア・イ・マリツェフ著(柴岡康光 訳)「線型代数学」(東京図書?) (← これは,元々30年くらい前に既にボロボロの状態の古書で入手したのですが,今,探してみたけど,もはやどこに行ったか?手元にないみたいです。)

|

« 2011年元旦!!新年ですね。 | トップページ | 久しぶりの雑感 »

306. 線型代数学」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 線型代数のエッセンス(1)(行列):

« 2011年元旦!!新年ですね。 | トップページ | 久しぶりの雑感 »