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2011年1月12日 (水)

線型代数のエッセンス(3)(線型空間1)

 線型代数の続きです。§2の線型空間に入ります。

§2.線型空間 

[定義2-1]:空でない集合について以下の諸条件が満たされるとき,を複素数体の上の線型空間(linear space),またはベクトル空間(vector space)という。

 

 また,の任意の元(要素;element)をベクトル(vector)と呼ぶ。

 

(a)の各元,に対しての1つの元を対応させ,の和(sum)と呼び,と書く。

  

(b)の各元の各元αに対しての1つの元を対応させ,をαとの積(product),またはのスカラー倍と呼び,=αと書く。

 

(c)上述の2つの演算(combination):和,積は次の性質を有する。

 

(ⅰ) (,),(ⅱ)()++() (,,),(ⅲ)∀,に対してを満たすが存在する。このと書く。

  

(ⅳ)α(β)=(αβ) (α,β∈,),

 

(ⅴ)α()=α+α (α∈,,),(ⅵ)(α+β)=α+β (α,β∈,),

  

(ⅶ)∀に対し1・

 

[定理2-2]:∀に対しを満たすが存在する。このを零ベクトルと呼び,0と書く。

 

(証明)[定義2-1]の(ⅲ)により各に対してaが存在してa+()=と書けます。

  

 ところが,∀に対してa+()={()+}+()=()+です。つまりaですから,ab,またはです。

これはaが全てのに共通であることを意味しますから,共通なa単にと書きます。

 

こうすれば,∀に対しa+=aです。

一方,∀に対し'=なら'=,かつ'+'ですから,'です。

したがって,∀に対しを満たすは一意的(unique)です。(証明終わり)

[定義2-3]:に対し0 なるに関する負ベクトルといい,これを(-)で表わす。

 

[定理2-4]:,,α∈とする。このとき次の諸性質が成立する。

 

(ⅰ)+(-),(ⅱ) 0・0,(ⅲ)-(-)=,

  

(ⅳ)-=(-1),(ⅴ)(-α)=-α,(ⅵ)α・00,(ⅶ)m+..+ (右辺はm項ある。)

 

(証明)(ⅰ)=()+0=()+{+(-)}={()+}+(-)=+(-),

 

(ⅱ) 0・=0・0=0・+{+(-)}={0・+1・}+(-)=(0+1)+(-)=+(-)=0,

(ⅲ)-(-)=-(-)+0=-(-)+{+(-)}={-(-)+(-)}+0,(ⅳ)-=-0=-a+0・=-+{1+(-1)}={(-)+}+(-1)0+(-1)=(-1),

(ⅴ)(-α)=(-α)+0=(-α)+{αa+(-α)}={(-α)+α}+(-α)=-αa,(ⅵ)α・0=α・0+0=α・0+{α+(-α)}=α(0)+(-α)=α+(-α)=0,

(ⅶ)m=(1+1+,,+1)+..+ (右辺はm項ある。) (証明終わり)

[定理2-5]:α∈,でα0 なら,α=0,または0である。

(証明)α0でα≠0ならα-1)=0 より=0 です。

 

(証明終わり)

[定義2-6]:α12,..,αs,1,2,..,sに対し,α11+α22+..+αssをベクトル1,2,..,sの1次結合または線型結合(linear combination)という。

[定義2-7]:α12,..,αs,1,2,..,sに対し,α11+α22+..+αss0 なる関係をベクトル1,2,..,sの1次関係式という。

そしてα1=α2=..=αs=0 のときこの関係は自明である(trivial)といい,そうでないときは自明でない(non-trivial)という。

[定義2-8]:1,2,..,sに対し自明でない関係式が成立するとき,これらのベクトルは1次従属である(linearly-dependent)といい,さもなければ1次独立である(linearly-independent)という。

[定理2-9]:ある順序に並べられたのゼロでないベクトルの系(set):1,2,..,mが1次従属ならば,それらのベクトルのうち少なくとも1つはそれに先行するベクトルの1次結合として表わされる。

逆に,このベクトル列の1つがそれに先行するベクトルの1次結合として表わされるなら,この系は1次従属である。

(証明)1,2,..,mが1次従属であるとし,これについて成立する自明でない1次関係式をα11+α22+..+αmm0 と書きます。

複素数の列:α12,..,αmのうちでゼロでない最後のものをαkとすると,α11+α22+..+αkk0 ,かつαk≠0 により,k=(-α1k)1+(-1α2k)2+..+(-αk-1k)k-1と書けます。

逆に,k=β11+β22+..+βk-1k-1なら,β11+β22+..+βk-1k-1+(-1)k+0・k+1+..0・m0となりますが,これは自明でない1次関係式です。(証明終わり)

[定義2-10]:を線型空間のある部分集合とする。に属するベクトルの系):1,2,..があって∀がこれらのうちの有限個のベクトルの1次結合として表わされるとき,1,2,..を集合の生成元(generator)の系という。

[定義2-11]:を線型空間のある部分集合とする。このとき集合の1次独立な生成元の系をの基または基底(basis)という。

[定理2-12]:を線型空間のある部分集合とする。 

 の生成元の系1,2,..の中の1つの元kがそれ以外の生成元の1次結合で表わされるとき,元の生成元の系から元kを除いた残りの系は,なおの生成元の系である。

(証明)まず1,2,..がの生成元の系なので,∀=α11+α22+..(α12,..∈)と書けます。

そこで,k=β11+β22+..+βk-1k-1+βk+1k+1+..(β12,..∈)と表わされるなら=(α1+α1β1)1+(α2+α2β2)2+..+(αk-1+αk-1βk-1)ak-1+(αk+1+αk+1βk+1)k+1+..と書けます。(証明終わり)

[定理2-13]:線型空間の任意の生成元の系の中から,この空間の基底を選び出すことができる。

(証明)の生成元の系の1つを1,2,..,sとします。

 

 このベクトル列1,2,..,sの中からそれに先行するベクトルの1次結合で表わされるものを削除していけば,最後に得られる系はなおの生成元の系でしかも1次従属でないので1次独立です。

 したがって,これらがL の基底を成します。(証明終わり)

[定理2-14]:1,2,..,sを線型空間Lの基底とすると∀1,2,..,sの1次結合で表わされるが,この表わし方は一意的である。

(証明)L =α11+α22+.. +αss12,..,αs),かつ=β11+β22+..+βk-1k-1+..βss12,..,βs)と表わされるとします。

 このとき,0=(α1-β1)1+(α2-β2)2+..(αs-βs)sなる1次関係式が成立しますが1,2,..,sは1次独立なのでαi-βi=0(i=1,2,..,s)です。故にαi=βi(i=1,2,..,s)です。(証明終わり)

[定義2-15]:線型空間が少なくとも1組の有限個のベクトルから成る基底を持つとき,の次元(dimension)は有限(finite)であるという。またはLは有限次元(finite-dimensional)であるという。

 なお,"零ベクトル:0だけから成る空間=零空間(zero-space)"の次元は 0(ゼロ)であると規定する。

[定理2-16]:零空間でない1つの有限次元線型空間の基底は全て同一個数のベクトルから成る。この基底を成すベクトルの個数を空間の次元といいdimで表わす。

(証明)有限次元線型空間の1組の基底を1,2,..,n,別の任意の1組の基底を1,2,..,mとします。

基底の定義より1,2,..,nの生成元の系ですから,これに1を加えた1,1,2,..,nも生成元の系です。

しかし,11,2,..,nの1次結合で表わされるので,この(n+1)個のベクトルの系1,1,2,..,nは1次従属です。

そこで系のベクトル列を1,1,2,..,nと書くとき,1,2,..,nの中の1つiが先行するベクトルの1次結合で表わされます。

そして,このiを除外したn個のベクトルの列を1,'1,..,'n-1と書けば,これはなおの生成元の系となっています。

次に(n+1)個のベクトル列2,1,'1,..,'n-1を考えると,これも1次従属であり列2とx1は1次独立ですから'1,..,'n-1の中に先行するベクトルの1次結合で表わされるものがあります。

これを除外すれば,n個のベクトル列2,1,"1,..,"n-2が得られますが,これもなおの生成元の系です。

以下,この操作を繰り返して基底1,2,..,mの個数mがn以上の場合には,n回目の操作で列n,n-1,..,2,1が得られ,これらは1次独立な生成元の系です。

そして,m>nなら(n+1)回目の操作でn+1n,n-1,..,2,1の1次結合で表わされることになるため,基底1,2,..,mの1次独立性に矛盾します。

 

よって,基底の個数はnを超えません。m≦nです。

逆に,n≧mのとき,基底1,2,..,mから出発して1,2,..,nを順に加えてm個の生成元を構成していく手続きから,nはmを超えないこと:n≦mが云えます。

以上から,n=mです。(証明終わり)

[定理2-17]:n次元線型空間における任意の1次独立な系1,2,..,mを(m<n)に対して,適当なLのベクトル系m+1,..,nを加えて系1,2,..,m,m+1,..,nの基底となるようにできる。

(証明)n次元線型空間において1組の基底1,2,..,nを取り,ベクトルの列:1,2,..,m,1,2,..,nをつくります。

そして,この列の中から先行するベクトルの1次結合として表わされるものを全て削除していきます。

 

すると,前定理によって,残った系のベクトルの個数はnに等しくて1,2,..,m,i1,,..,inとなります。

 

これらは1次独立であっての生成元の系です。(証明終わり)

[定理2-18]:n次元線型空間の(n+1)個のベクトルからなる系は全て1次従属である。この空間の任意のn個の1次独立なベクトルの系はL の基底を成す。

 

 Lの1次独立なベクトルの個数の最大値はその空間の次元n=dimに等しい。

 

上記のことは,これまでのことから自明なので証明を省略します。

今日はここまでにします。 

参考文献:ア・イ・マリツェフ(柴岡康光訳)「線型代数学」(東京図書)

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