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2011年1月22日 (土)

線型代数のエッセンス(4)(線型空間2)

 線型代数の§2.線型空間の続きです。

 

 まず,線型空間の定義を再掲します。

 

[定義2-1]:空でない集合について以下の諸条件が満たされるとき,を複素数体の上の線型空間(linear space)またはベクトル空間(vector space)という。またの任意の元(要素;element)aをベクトル(vector)と呼ぶ。

 これが既に与えた線型空間の定義ですが,実は空間のスカラー積の係数を与える数体としては,ここで特定した複素数体に限る必要はなく一般の数体として構いません。

そして,上の定義のように係数を与える数体を複素数体に選んだ線型空間なら,これを複素数体の上の線型空間といいます。

[定義2-19](同型):同一の数体の上の2つの線型空間が同型(isomorphic)であるとは2つの空間の元(要素)間に1対1の対応が存在して,第1の空間のベクトルの和には第2の空間の対応するベクトルの和が対応し,第1の空間のベクトルと数αの積には第2の空間の対応するベクトルの積が対応するようにできることをいう。

 上述の1対1対応(one to one correspondence)を同型対応または同型写像(isomorphism)という。

※(注):紛らわしいのですが,ここでいう1対1対応とは単に写像(mapping)として"1対1(one to one)=単射(injection)"であるという意味ではなく,"1対1上への写像(one to one onto-mappimg)=全単射(bijection)"であることを意味します。

線型空間として同型であるためには,少なくとも集合(set)として同型である必要があります。

 

そして,AとBが集合として同型であるとはAからBへの"全単射=1対1写像(単射:injection)かつ全射(surjection)"が少なくとも1つは存在することです。

 

もしも,A,Bが有限集合の場合ならAとBが集合として同型であることは両者の元(要素)の個数が同じであることを意味します。この場合には単射と全射は同義です。

 

,Bを集合(set)とするとき,ある規則に基づいてAの各々の元に対してBの元を1つずつ対応させる操作をAからBへの写像という。

 

fが集合AからBへの写像であることをf:A→Bと表わす。

写像fによって∈Aが∈Bに写されることを記号的に=f()と表わす。

 

このとき,Aをfの定義域(domain),Bを値域(range)という。

また,Bの部分集合:f(A)≡{f()∈B|∈A}をfによるAの像(image)という。

 

Bの部分集合Cに対して,f-1(C)≡{∈A|f()∈C}をCのfによる原像または逆像(inverse image)という。

 

1,2∈Aに対して1=f(1),2=f(2),1,2∈Bと書くと,12なら常に12となるとき,この写像fはAからBへの単射であるという。

 また,∀∈Bに対し=f()を満たす∈Aが必ず存在する:つまりB=f(A)のとき,写像fはAからBへの全射であるという。また,AからBへの全射をAからBの上への写像(onto mapping)という。

 fが単射かつ全射のとき,これを全単射という。

さて,fが集合の同型写像(全単射)なら,Bの原像はA=f-1(B)≡{∈A|f()∈B}ですが,単一の∈Bに対する原像をf-1()≡{∈A|f()=}と定義すれば,fの単射性からこれは単一の元から成るAの部分集合です。

 

すなわち,=f()ならf-1()={}です。

 このときは∈Bに∈Aを対応させる写像をgと表わすとgも全単射です。この写像g:B→Aを記号的にf-1:B→Aと書き,fの逆写像といいます。=g()=f-1()です。

ただし,[定義2-19]での線型空間における同型,あるいは同型写像の定義は,集合としての同型写像(全単射)の上,さらに線型空間における和,積の演算の準同型(homomorphic)の意味を持っています。(注終わり)※

[定義2-20]:2つの線型空間を,1としから1へのある写像をfとするとき,∀,,∀α∈に対しf()=f()+f(),f(α)=αf()が成立するなら,この写像fを準同型写像(homomorphism)という。

 

 準同型写像fが上への写像(全射)ならfを同型写像という。

このようなから1へのある同型写像fが存在するなら1は同型である。

[定理2-21]:線型空間における同型写像において,00 に対応する。

(証明)線型空間1が同型でfをから1への任意の同型写像とすると,f(0)=f(+(-))=f()+f(-)=f()+f((-1))=f()+(-1)f()=f()+(-f())=0 です。

 

(証明終わり)

[定理2-22]:同型な線型空間から1への同型写像においてはの生成元の系は1の生成元の系に写像される。

(証明)fをから1への同型写像とし,{1,2,..,s}をの生成元の系とします。

 

 そして,1≡f(1),2≡f(2),..,s≡f(s)とおきます。

 

 任意の1に対して≡f-1()とおきます。

 

 このとき{1,2,..,s}がの生成元の系であるという仮定より,=α11+α22+..+αss12,..,αsと書けます。

故に,=f()=f(α11+α22+..+αss)=α1f(1)+α2f(2)+..+αsf(s)=α11+α22+..+αssです。

 よって,{1,2,..,s}は1の生成元の系です。

 (証明終わり)

[定理2-23]:同型な線型空間から1への同型写像においてはの1次独立なベクトルは1の1次独立なベクトルに写像される。

(証明)fをから1への同型写像とし,1,2,..,mの1次独立なベクトルとします。さらに,j≡f(j)(j=1,2,..,m)とします。

j(j=1,2,..,m)に対する1次関係式をβ11+β22+..+βmm012,..,βmと書けば,これはβ1f(1)+β2f(2)+..+βmf(m)=f(β11+β22+..+βmm)=0 を意味します。

故にβ11+β22..+βmm=f-1(0)ですが,fがから1への同型写像ならf-11からへの同型写像なので,[定理2-21]によりβ11+β22+..+βmm0 です。

ところが,仮定から1,2,..,mの1次独立なベクトルなのでβ1=β2=..=βm=0 でなければなりません。

 

よって,1,2,..,m1の1次独立なベクトルです。(証明終わり)

[定理2-24]:同型な線型空間から1への同型写像によっての基底が1の基底に写像され,それ故同型な線型空間は同一の次元を持つ。すなわち,1が同型 ⇔ dim=dim1である。

 また,2つの線型空間が同一の次元を持てばそれらは同型である。

(証明)定理の前半は[定理2-22],[定理2-23]より明らかです。

また,前半の逆命題である後半の証明は以下の通りです。

 

1が共通の次元nを持つとし,および1のそれぞれの基底を{1,2,..,n},および{1,2,..,n}とするとき,各々のjjを対応させる写像をfとします。すなわち,j≡f(j)です。

さらに,任意の=α11+α22+..+αnn12,..,αn=α1f(1)+α2f(2)+..+αnf(n)=α11+α22+..+αnn1を対応させることでから1への写像としてfを定義できます。

 

この写像fが線型空間から1への1つの同型写像であることは明らかです。

したがって,1は同型であることがわかります。(証明終わり)

このところ科学記事の間が開きすぎている感があるので,中途半端で短かいですが続きは後回しにして今日はここまでにします。

参考文献:ア・イ・マリツェフ(柴岡康光訳)「線型代数学」(東京図書)

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