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2011年2月28日 (月)

線型代数のエッセンス(11)(ユニタリ空間-2)

 線型代数のエッセンスの§4.ユニタリ空間の続きです。

[定義4-21](同型写像):2つのユニタリ空間1が線型空間として同型であり,その同型写像において,"スカラー積=ユニタリ内積"が保存されるとき,ユニタリ空間1は同型であるという。

[定理4-22]:2つのユニタリ空間1が同型 ⇔ dim=dim1

(証明)十分性(1が同型ならdim=dim1)は明らかです。.

必要性を示すため,dim=dim1=nと仮定します。

そして,および1の正規直交座標系をそれぞれ(1,2,..,n),および('1,'2,..,'n)と選びます。

'∈1は,ここで選んだ座標系に対して座標が同一であるとき,'が対応するということにします。

 

このとき,この対応は1対1であって,加法と乗法(スカラー倍)が保存されることは既に示しました。

また,の任意の2つのベクトルを=α11+α22+..+αnn,=β11+β22+..+βnnとすると,これらに対応する1のベクトルは'=α1'1+α2'2+..+αn'n,'=β1'1+β2'2+..+βn'nです。

このとき,明らかに(,)=Σj=1nαjβj*=(',')が成立しますから,ユニタリ内積も保存されることがわかります。(証明終わり)

[定義4-23](集合の直交性):ユニタリ空間の集合において,∀と∀が直交する:(,)=0 のとき,は直交するといいと書く。

 また,あるが∀と直交する:"(,)=0 for ∀"のとき,は直交するといいと書く

[定理4-24]:なら={0}である。

(証明)なら(,)=0 なので0 です。(証明終わり)

[定義4-25]:ユニタリ空間の線型部分空間の和:12+..+s={12+..+s|11,22,..,ss}において,jk(j≠k)なら,この和を直交和(orthogonal sum)という。

[定理4-26]:ユニタリ空間の部分空間の直交和は常に直和である。

(証明)12+..+sとし直交和であるとします。

 

 そして,12+..+s0;11,22,..,ssとします。

 両辺にjを掛けてユニタリ内積をとると,(j,j)=0 となるためj0 (j=1,2,..,s)です。

  

 したがって,jk={0}(j≠k)ですから12+..+sが直和(direct sum)であることがわかります。(証明終わり)

[定理4-26]:ユニタリ空間の部分空間12+..+sが直交和で12+..+s;11,22,..,ss,かつ12+..+s0;11,22,..,ssなら,(,)=(1,1)+(2,2)+..+(s,s)である。

(↑自明なので証明略)

[定義4-27]:ユニタリ空間の空でない部分集合と直交するベクトルの全体をの直交補空間(orthogonal complement)といいで表わす。≡{|}である。

[定理4-28]:ユニタリ空間の任意の空でない線型部分空間の直交補空間の線型部分空間である。

(証明),,α,β∈に対し(α+β,)=α(,)+β(,)=0 よりα+βですから,の線型部分空間です。(証明終わり)

[定理4-29]:ユニタリ空間はその任意の部分空間とその直交補空間の直和としてと表わせる。

(証明)n=dim,m=dim,s=dim(としての正規直交基を1,2,..,m,の正規直交基をm+1,m+2,..,sとします。

1,2,..,m,m+1,m+2,..,sの基底ではないと仮定すると,(,)=1,(,j)=0 (j=1,2,..,s)を満たすが存在します。

このは明らかにに直交しますから,であり,しかもゼロではないのでm+1,m+2,..,の全てと直交することは不可能ですから,矛盾を生じます。

よって,系1,2,..,m,m+1,m+2,..,sの基底であり,s=nでです。(証明終わり)

(別証明)の正規直交基を1,2,..,mとするとき,任意のに対して’≡-{(,1)1+(,2)2+..+(,m)m}と置けば,任意のについて(',)=(,)-{(,1)(,1)+(,2)(,2)+..+(,m)(,m)}=0 です。

 何故なら,=(,1)1+(,2)2+..+(,m)mなので(,)=(,1)(,1)+(,2)(,2)+..+(,m)(,m)であるからです。

故に,'∈であり∀が常に=(a-a')+';a-a'∈,'∈の形に書けるのでです。(証明終わり)

[定理4-29の系]:()である。(←自明)

[定義4-30]:ユニタリ空間がその部分空間と直交補空間の直和としてと表わされるとする。

;,と一意的に分解されるが,このへの射影(projection),への射影という。

;,のとき=Pr^,=Pr^と表わす。Pr^(またはPr^)を射影変換,または作用素として射影演算子(projection operator)という。

[定理4-31]:Pr^はにおける1次変換であり,Pr^である。特にPrL^=E^(恒等変換)である。 (←自明)

[定理4-31の系]:ユニタリ空間の2つのベクトルの和の部分空間への射影はそれぞれの射影の和に等しく,ベクトルと数の積の射影はベクトルの射影と数の積に等しい。

すなわち,のとき,∀,,∀α∈に対してPr^()=Pr^+Pr^,Pr^(α)=αPr^である。

(↑自明)

短かいですが今日はここまでにします。 

参考文献:ア・イ・マリツェフ(柴岡康光訳)「線型代数学」(東京図書)

 

PS:エリカ様,ちょっとイメージ変わったかな?変わらなくていいのに,様がとれたらツマンナイ。。。

 

 京大の入試,私も現役,浪人と理学部を2回受けて2回とも落ちたのでちょっと懐かしいですネ。

 

 安田講堂事件で東大入試中止の年の2回目(1969年3月)は,京大も封鎖中だったので受験会場は京都工繊大でしたが,現役(1968年3月)のときは学部は覚えてないけど確か京大構内で試験を受けました。

 

 私も数学の試験でカンニング,といっても机の右端に座っててそれとなく右隣の離れた席の解答が見えたので1問だけ答合わせをして,ほぼ同じだったので安心した,という記憶があります。

 

 当時は,今と違ってまだ両目とも視力が2.0でしたからね。(母子家庭で貧乏だったので私立は受けてません。。)

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