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2011年2月 5日 (土)

線型代数のエッセンス(6)(線型部分空間)

 線型代数のエッセンスの続きです。

[定義2-35]:線型空間の空でない部分集合が次の2つの条件(ⅰ),(ⅱ)を満たすときの線型部分空間(linear subspace)という。

(ⅰ)なら∀α∈に対してα

(ⅱ),なら

[定理2-36]:線型空間(ベクトル空間)の線型部分空間はそれ自身1つの線型空間(ベクトル空間)である。

(証明)線型空間(ベクトル空間)の定義:[定義2-1]における和とスカラー積の演算をの部分空間においてそのまま保持すれば,これらの演算はでも"次の性質=線型空間の公理"を満たすのは明らかです。

(ⅰ)(,),(ⅱ)()++()(,,),(ⅲ) ∀,に対してを満たすが存在する。このと書く。

(ⅳ)α(β)=(αβ) (α,β∈,),

(ⅴ)α()=α+α (α∈,,),(ⅵ) (α+β)=α+β (α,β∈,),(ⅶ)∀に対し1・

(証明終わり)

[定理2-37]:線型空間の線型部分空間をとすると0である。また,,,α,β∈ならα+βである。

(証明)ほぼ自明ですが,なら,0=0・より 0,,,α,β∈なら,α,かつβよりα+β

(証明終わり)

[定義2-38]:線型空間の零元:0のみから成る集合:{0}は明らかにの線型部分空間であるが,この{0}を零空間(zero-subspace)という。

そして,{0},およびの自明な(trivial)(線型)部分空間),これ以外の部分空間をの自明でない(non-trivial)部分空間,または真の部分空間(true subspace)という。

[定理2-39]:線型空間をとし1,2,..,mとする。このとき,集合≡{|=α11+α22+..+αmm}はの線型部分空間である。(←自明)

[定義2-39]:上記の線型空間の部分空間≡{|=α11+α22+..+αmm}を1,2,..,mによって張られるの部分空間,または1,2,..,mの上に張られるの部分空間(linear-subspace spanned on 1,2,..,m)という。

(※(注):1,2,..,mは部分空間の生成系=生成元(generator)の系です。※)

[定理2-40]:線型空間をとする。1,2,..,mによって張られるの部分空間の次元は,系1,2,..,mに含まれる1次独立なベクトルの個数の最大値である。(←自明)

[定義2-41]:,を線型空間の(線型)部分空間とするとき,集合としてのの共通部分(intersection):≡{|,かつ}にの線型演算を含めたものを部分空間の共通部分と呼び,記号で表わす。

[定理2-42]:,が線型空間の線型部分空間ならもまたの線型部分空間である。

(証明)[定理2-37]より,が線型空間の線型部分空間なら,0ですから,≠φです。

そして,明らかに,(ⅰ)なら∀α∈に対してα (ⅱ),ならを満たすので線型部分空間の定義によって,もまたの線型部分空間です。(証明終わり)

[定義2-43]:線型空間の有限個の線型部分空間1,2,..,sの和(sum):12+..+s12+..+s≡{|12+..+s;ii(i=1,2..,s)}によって定義する。

[定理2-44]:線型空間の有限個の線型部分空間sの和は,またの線型部分空間である。

(↑自明なので証明は略)

[定理2-45]:,,が線型空間の線型部分空間とする。このとき,(ⅰ), (ⅱ)+()=()+C,(ⅲ),なら,が成立する。(←自明)

[定理2-46]:線型空間の2つの線型部分空間,の和:の次元は,それぞれの次元の和からの次元を引いたものに等しい。すなわち,dim()=dim+dim-dim()である。

(証明)r=dim,s=dim,m=dim()とし,の任意の基底を1,2,..,mとします。

 この1,2,..,mに,1次独立なベクトル系1,2,..,kを補って1,2,..,m,1,2,..,kの基底になるようにすることができます。r=m+kです。

 同様に,1,2,..,mに1次独立なベクトル系1,2,..,pを補って1,2,..,m,1,2,..,pの基底になるようにすることができます。s=m+pです。

 これによって,∀,∀に対する任意のの元1,2,..,m,1,2,..,k,1,2,..,pの1次結合で表わせることは明らかです。

 ところで,これらの1次関係式をα11+α22+..+αkk+β11+β22+..+βpp+γ11+γ22+..+γmm0 と書けば,β11+β22+..+βpp=-α11-α22-..-αkk-γ11-γ22-..-γmmですが,左辺はに属し右辺はに属します。

 それ故11+β22+..+βppです。

 

 そこで,右辺からα11+α22+..+αkk+γ11+γ22+..+γmmですが,1,2,..,mだけがの基底をなすのでα1=α2=..=αk=0 です。

 そこで元の1次関係式はβ11+β22+..+βpp+γ11+γ22+..+γmm0 と書けますが,1,2,..,m,1,2,..,pの基底なのでβ1=β2=..=βk=γ1=γ2=..=γk=0を得ます。

以上から,1,2,..,m,1,2,..,k,1,2,..,pは全て1次独立での基底をなすことがわかりました。

よって,dim()=m+k+p=r+s-m=dim+dim-dim()が示されました。(証明終わり)

[定理2-46の系]:線型空間の2つの線型部分空間を,とする。このとき,共通部分の次元は,それぞれの次元の和からの次元を引いたものより小さくは成り得ない。つまりdim()≧dim+dim-dimである。

(証明)n=dim,m=dim(),r=dim,s=dimとすると[定理2-46]よりdim()=r+s-mでこれがn以下ですから,r+s-m≦nよりm≧r+s-n,つまりdim()≧dim+dim-dimです。(証明終わり)

[定義2-47]:線型空間の有限個の線型部分空間1,2,..,sの和:12+..+sにおいて任意の12+..+s;ii(i=1,2..,s)と表わされるが,この分解表現が一意的(unique)であるとき1,2,..,sの直和(direct sum)という。

ここでは,直和12..sと書くことにする。

[定理2-48]:線型空間の有限個の線型部分空間1,2,..,sの和:12+..+sにおいて,零元 0の部分空間への分解:012+..+s(ii;i=1,2..,s)が常に12=..=s0 を意味するとき,和12+..+sは直和である。

(証明)12+..+s;ii(i=1,2..,s),かつ'1'2+..+'s;'ii(i=1,2..,s)と分解されたとすると,(1'1)+(2'2)+..+(s's)=0 i'ii(i=1,2..,s)が成立します。

 すると,定理の仮定によりi'i0,すなわちi'i(i=1,2..,s)ですから,∀の分解表現は一意的です。したがって和12+..+sは直和です。

 

(証明終わり)

(注):上記の定理は"12+..+s0 (ii;i=1,2..,s)なら12=..=s0 なること"が,和:12+..+sが直和にであるための十分条件であると述べるものですが,この条件が必要条件でもあることは明らかです。(注終わり)※

[定理2-49]:線型空間の分解:12+..+s;11112+..+1,m1,22122+..+2,m2,..,ss1s2+..+s,msが全て直和であるなら,分解:1112+..+1,m1+..+s1s2+..+s,msも直和である。

(証明)1112+..+1,m1+..+s1s2+..+s,ms0 (ijij)とする。

 

 このとき12+..+s0 ;11112+..+1,m11,22122+..+2,m2,..,ss1s2+..+s,mssと書けます。

 

 A12+..+sが直和なので,12=..=s0です。

 そこでii1i2..+i,mi0,ii1i2..i,mi (i=1,2..,s)(直和)により1112=..=s,ms0 です。

(証明終わり)

[定理2-50]:線型空間の2つの線型部分空間の和が直和であるための必要十分条件は={0}なることである。

(証明)≠{0}とし,0,とすると,(-)∈で,0+(-)∈;,(-)∈,かつ0,(-)≠0 となるためは直和ではありません。

逆にが直和ではないなら,0の分解も一意的ではないので,ある0,とある0,が存在して 0と書けます。すると,=-0,ですから≠{0}です。

 

(証明終わり)

[定理2-51]:線型空間の2つの線型部分空間の直和の次元は部分空間の次元の和に等しい。つまり,dim()=dim+dim

(証明) [定理2-46]よりdim()=dim+dim-dim()ですが和が直和の場合は≠{0}よりdim()=0ですからdim()=dim+dimです。(証明終わり)

[定理2-51の系]:線型空間の2つの線型部分空間の和の次元がの次元の和に等しいなら和は直和である。(←自明)

短いですが今日はここまでにします。

次回からは,1次変換(線型変換)と行列の関係などの話に移行する予定です。

参考文献:ア・イ・マリツェフ(柴岡康光訳)「線型代数学」(東京図書)

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