« 夢を諦めてしまうと気楽ですが寂しいものです。 | トップページ | 線型代数のエッセンス(8)(1次変換-2)」 »

2011年2月10日 (木)

線型代数のエッセンス(7)(1次変換-1)

 線型代数のエッセンスの続きです。

※(余談:"ソリトンやインスタントン,非線形戸田格子etc.の可能性")

 私的には,21世紀に入った頃から非線形現象に着目していました。

 摂動のない多重周期の基準モードの線型運動のようなものだけを考慮するなら,粒子間にエネルギー交換があるという統計力学の根本的仮定が満足されません。

 また,1次元の非線型バネのコンピュータ解析でのFermi-Pasta-Ulamの再帰現象(和達三樹著「非線型波動」参照)のように,非線型振動では不安定な分散が生じるのとは逆に時間的に安定な振動が見られます。

 直感的に考えても,理想気体を構成する各気体分子が完全弾性衝突するだけでは,ビリアードでの玉のように衝突で軌道は折れ曲がっても究極的には永久に同じモードで周期運動するだけです。

 玉の数が増えれば基準振動モードの軌道形は複雑になっても,軌道間のモードの乗換えによるエネルギー交換は不可能です。

 話は変わりますが,物理現象を規定する微分方程式を数値計算可能にするために差分化すると,元が線型微分方程式の場合には差分方程式は連立1次方程式になります。

 そして,こうした線型な連立方程式でさえ,ガウス-ザイデル法のような緩和法の反復法を用いると比較的安定な陰解法でもコンピュータがデジタルであるための可算演算の限界故,差分スキームの選択次第では丸め誤差の累積により解が不安定になって発散する現象が起こります。

 理想的な無限ビットのアナログコンピュータを仮定してそれで計算するなら線型方程式の有限であるべき解が計算されて発散することはないのですが。。。

(↑全ての無限小数をデジタルで表現できるのですから)

 一方,たとえアナログコンピュータでも線型でなくわずかな非線型項があれば同等な累積現象による発散が期待できます。

 くりこみにおけるλφ4理論のように,実は自由場が線型ではなくプランクオーダーの係数λを持つ非線形項があって,その累積がマイナスの引き算項として紫外発散と相殺するなら,などと自分で勝手気儘なことを考えていたのですが。。。

 Higgs粒子についても同様な非線型項を夢見ていました。

 私がこれらの具体化を考える前に,そうしたものに似た既存理論があるみたいですね。

 私が思い付きで考えることぐらいは既にあるみたいで去年還暦を機会にやろうかと思って調べていてやや挫折感がありました。(終わり)

 さて,本題の§3に入ります。

§3.1次変換

[定義3-1]:集合があるとする。∀m∈の各々に1つのの元を対応させる写像(mapping)を集合の上の変換(transformation)という。

ここでは変換をの元に左からA^,B^,..の作用素(operator:演算子)を施すことで表現する。

すなわち,m∈に変換A^を行なった結果として得られる元をA^mと表わしA^mを変換A^による像(image)という。逆にmをの元A^mの原像(inverse image)という。

 

※(注):が量子力学の状態を表わすケット(ket)の状態空間で|ψ>∈,A^が量子演算子なら像はA^|ψ>ですね。(注終わり)※ 

[定義3-2]:にの2つの変換:A^,B^があるとする。mをB^(A^m)∈にうつす変換をA^とB^の積と名付け,これをB^A^と表わす。

すなわちB^(A^m)=(B^A^)mと書く。

[定理3-3](積の結合則):A^,B^,C^をの任意の変換とすると(A^B^)C^=A^(B^C^)である。

 

 特に,A^A^をA^2,A^2A^をA^3,...etc.と指数で表現すれば,A^mA^n=A^ m+n,(A^m)n=A^ mnが成立する。(←自明なので証明は略)

[定義3-4]:∀m∈の各々にm自身を対応させる変換を恒等変換(identity)と呼び,この変換をE^で表わす。E^m=mである。

[定理3-5]:A^をの任意の変換とするとE^A^=A^E^=A^である。(↑自明)

[定義3-6]:の変換A^に対してA^B^=B^A^=E^を満たす変換B^を見出し得るとき,B^をA^の逆変換(inverse)といいA^-1で表わす。

 

 また,A^に関する逆変換A^-1があるとき,変換A^は可逆(invertible)であるという。

[定理3-7]:可逆な変換に対しその逆変換は常に唯一(unique)である。

(証明)変換A^は可逆であってA^B^=B^A^=E^,かつA^C^=C^A^=E^が成立するとする。

 

 このとき,C^=E^C^=(B^A^)C^=B^(A^C^)=B^E^=B^となりC^とB^は全く同じものです。(証明終わり)

[定理3-8]:可逆な変換A^に対し逆変換A^-1もまた可逆であり(A^-1)-1=A^である。

 

 また,A^-n≡(A^-1)n=と定義し,A^0=Eと規約すると(A^n)-1=A^-n,(A^B^)-1=B^-1A^-1が成立する。

(証明)まず,(A^-1)-1=(A^-1)-1E^=(A^-1)-1(A^-1A^)={(A^-1)-1A^-1}A^=E^A^ n=Aです。

次に,明らかにE^ n=E^なので,(A^n)-1=(A^n)-1E^=(A^n)-1E^n=(A^n)-1(A^A^-1)n=(A^A^..A^)-1{(A^A^-1)(A^A^-1)...(A^A^-1)}=(A^A^..A^)-1(A^A^...A^)(A^-1)n=E^(A^-1)n=^(A^-1)n が得られます。

 最後に,(A^B^)-1=E^(A^B^)-1=(B^-1E^B^)(A^B^)-1={B^-1(A^-1A^)B^}(A^B^)-1=(B^-1A^-1)(A^B^)(A^B^)-1=(B^-1A^-1)E^=B^-1A^-1です。(証明終わり)

[定理3-9]:集合の上の変換A^が可逆である。⇔A^はからそれ自身への双一意写像である。(⇔ は同値(必要十分)を表わす記号)

(注):双一意写像とは,先に述べた1対1上への写像=全単射(bijection)のことです。

 

 すなわちA^がからそれ自身への双一意写像であるとは,各々のm∈がそのA^による原像をの中に有し,さらにm1,m2,m1≠m2なら常にA^m1≠A^m2となることです。(注終わり)※

(証明)まず,A^が可逆であってA^-1が存在するとします。このとき,∀m∈に対してn=A^-1mとおけば,n∈でありA^n=A^A^-1m=mです。

次に,m1,m2についてA^m1=A^m2ならA^-1A^m1=A^-1A^m2よりm1=m2です。故に,m1≠m2ならA^m1≠A^m2が従います。

逆にA^がからそれ自身への双一意写像(全単射)であるとすると,∀m∈に対してあるn∈が存在してA^n=mであって,この対応:m→nは一意的(unique)です。

そこで,このm→nの変換をB^で表わすと,B^m=nですからB^A^n=B^m=n,A^B^m=A^n=mなので,これはB^A^=A^B^=E^を意味しますからB^=A^-1と書けます。(証明終わり)

[定義3-10]:線型空間の上の変換A^が1次変換(線型変換:linear transformation)であるとは,∀,,∀α,β∈に対してA^(α+β)=αA^+βA^が成立することをいう。

[定理3-11]:A^を線型空間の上の1次変換とするとA^00 である。

(証明)A^(α)=αA^においてα=0とするとA^00 を得ます。

(証明終わり)

[定理3-12]:恒等変換E^は1次変換である。(←自明)

[定義3-13]:∀を全て零元:0にうつす変換を零変換と呼びO^で表わす。

[定理3-14]:零変換O^は1次変換である。(←自明)

[定理3-15]:1,2,..,nをn次元線型空間の任意の基底とする。そしての任意に選んだn個の元を1,2,..,nをとする。

 

 このとき,1,2,..,nを,それぞれ1,2,..,nにうつす1次変換が一つ,しかも唯一つに限って存在する。

(証明)∀は基底1,2,..,nによって=ξ11+ξ22+..+ξnnと一意的に表わされます。

 

 このとき,のA^による像:'=A^を同じ座標成分:ξ12,..,ξnを用いて'≡ξ11+ξ22+..+ξnnにより定義します。

 

 この定義において,特にξi=1,j≠iならξi=0 おくことにより,i=A^i(i=12,..,n)を得ます。

 また,,,α,β∈に対してA^(α+β)=αA^+βA^が成立することも明らかですから,変換A^は1次変換です。

 次に,変換B^がB^(α+β)=αB^+βB^がB^ii (i=1,2,..,n)を満たすとすれば,=ξ11+ξ22+..+ξnnのとき,B^=ξ11+ξ22+..+ξnn=A^です。

つまり,∀に対してB^=A^ですから,B^=A^です。

(証明終わり)

[定義3-16](1次変換の行列):線型空間の座標系を1,2,..,n,1次変換をA^とし,A^1≡α111+α212+..+αn1n=(1,2,..,n)[1]=(1,2,..,n)t1121,..+αn1),A^2≡α121+α222+..+αn2n=(1,2,..,n)[2]=(1,2,..,n)t1222,..+αn2),

  

...,A^n≡α1n1+α2n2+..+αnnn=(1,2,..,n)[n]=(1,2,..,n)t1n2n,..+αnn),つまり(i=1,2,..,n)

とする。

 このとき,A≡([1],[2],,..,[n]),すなわち

 を座標系:1,2,..,nにおける変換A^の行列と名付ける。

 

 (※(A^1,A^2,..,,A^n)=(1,2,..,n)Aです。)

[定理3-17]:行列Aによって,ベクトルA^1,A^2,..,,A^nが定まるため,AとA^は1対1対応である。(※ここでの1対1対応は同型対応(全単射)の意味です。)

(証明)[定理3-15],およびその証明から変換A^が定まることは,基底(1,2,..,n)に対して(1,2,..,n)≡(A^1,A^2,..,,A^n)が全て定まることに同値であることがわかります。

 

 そして,(A^1,A^2,..,,A^n)=(1,2,..,n)Aにより行列Aが一意に定まることも明らかです。(証明終わり)

[定理3-18]:[定義3-16]で定義される変換の行列の同型対応において,零変換O^には成分が全てゼロの零行列Oが,恒等変換E^には単位行列Eが対応する。(← 自明なので証明略)

[定理3-19]:線型空間の座標系を1,2,..,n,1次変換をA^とし,その行列をAとする。

の任意の元=ξ11+ξ22..+ξnn=(1,2,..,n)[]=(1,2,..,n)t12,..,ξn)と表わされるとすれば,A^=(A^1,A^2,..,,A^n)t12,..,ξn)=(1,2,..,n)At12,..,ξn)である。

 

つまり,

である。

 

すなわち,座標ベクトル:[]=t12,..,ξn)に対してA^の座標ベクトルは行列Aにより[A^]=At12,..,ξn)=A[]と表現される。

(証明)A^=A^{(1,2,..,n)[]}={(1,2,..,n)A}[]=(1,2,..,n)A[]により,[A^]=A[]です。

(証明終わり)

[定理3-20]:(1,2,..,n),および(',',..,')を線型空間の2つの座標系とし,Tをその変換行列とする。(※すなわち,(1,2,..,n)=('1,'2,..,'n)Tです。)

の上の1次変換^の(1,2,..,n)に対する行列をAとすると,A^の('1,'2,..,'n)に対する行列は(TAT-1)である。

(証明)=ξ11+ξ22+..+ξnn=(1,2,..,n)t12,..,ξn)に,(1,2,..,n)=('1,'2,..,'n)Tを代入すると,=('1,'2,..,'n)Tt12,..,ξn)です。

 

 それ故,同じの別基底による表現:=ξ'1'1+ξ'2'2+..+ξ'n'n=('1,'2,..,'n) t(ξ'1,ξ'2,..,ξ'n)での座標は変換行列Tによって t(ξ'1,ξ'2,..,ξ'n)=Tt12,..,ξn)と表わされます。

 

 これは,実は既に[定理2-34]で既に示されています。

 

 そして,これの逆表現は(ξ12,..,ξn)=(T-1)t(ξ'1,ξ'2,..,ξ'n)ですね。

 他方,[定理3-19]よりA^=(A^1,A^2,..,,A^n)t12,..,ξn)=(1,2,..,n)At12,..,ξn)です。

 

 これに,(1,2,..,n)=('1,'2,..,'n)Tを代入すると,A^=('1,'2,..,'n)TAt12,..,ξn)を得ます。

上式の最右辺にさらに,t12,..,ξn)=(T-1)t(ξ'1,ξ'2,..,ξ'n)を代入すると,A^=('1,'2,..,'n)(TAT-1)t(ξ'1,ξ'2,..,ξ'n)が得られます。

これは,座標系:('1,'2,..,'n)に対する変換A^の行列が(TAT-1)であることを意味します。(証明終わり)

[定理3-21]:1次変換の積は1次変換である。

(証明)A^,B^を線型空間の上の1次変換とし,,,α,β∈とします。

 すると,(B^A^)(α+β)=B^{A^(α+β)}=B^(αA^+βA^)=α(B^A^)+β(B^A^)ですから,B^A^も線型空間の上の1次変換です。(証明終わり)

[定理3-22]:線型空間の上の1次変換A^,B^の行列をA,Bとすると,積変換B^A^,およびA^B^の行列はそれぞれBA,およびABである。

 

 特に,A^自身のm個の積:A^m=A^A^...A^の行列はAのm個の積:Am=AA..Aである。

(証明)の座標を[]とすると,定義により[A^]=A[]です。したがって,[(B^A^)]=[B^(A^)]=B[A^]=BA[]となります。(証明終わり)

[定理3-23]:A^が線型空間の上の可逆な1次変換ならA^-1も1次変換である。A^の行列がAならA^-1の行列はA-1である。

(証明)XをA^-1に対応する行列とすれば,A^A^-1=A^-1A^=E^ですから,たった今証明した[定理3-22]の積の同型対応によりAX=XA=Eが成立します。故に,X=A-1です。(証明終わり)

[定理3-24]:1次変換の和,およびスカラー倍も1次変換であり,それらの行列は,それぞれ各変換の行列の和,およびスカラー倍である。

(↑自明)

[定理3-25]:1次変換の多項式は1次変換であり,その行列は行列の多項式に等しい。(←自明)

 

 今日はここまでにします。

 

※(余談2):Schroedingerの波動力学では状態空間を部分空間とする線型空間は粒子の位置座標の関数ψ()全体から成る関数空間で1次変換の演算子A^は(∂/∂x),∇のスカラー倍のような微分演算子,単なるの関数f()を掛ける演算,∫dxのような積分演算子でした。

 

 一方,を関数空間に特定せず,その概念も包摂した抽象的ベクトルを元とする抽象線型空間として定式化してみます。

 

 もしも空間が有限次元であるなら,上述のようには数を成分とする列ベクトルを元とする数ベクトル空間[]に同型対応し,の1次変換の演算子A^は数ベクトル空間[]の行列Aに同型対応します。

 

 したがって,状態の空間が有限次元ではなく無限次元を取る可能性を除けば,Schroedingerの波動力学がHeisenbergの行列力学と同値であるということは線型代数学から自然に演繹されます。

 

 1粒子の通常の素朴な量子力学では,DiracやVon.Neumannを待つまでもなく.この程度の認識でいいでしょう。

 

 しかし,量子電磁力学以後の定式化で生じている主要な問題は,正に有限次元と無限次元の違い,多粒子系の状態ベクトルを元とする空間の可分性(可算基底と非可算基底の問題)等に起因していると考えられます。

 

 有限次元と無限次元の違いを認識するためにも,こうした私的に線型代数のエッセンスを確認する作業は無駄ではないと思います。※  

参考文献:ア・イ・マリツェフ(柴岡康光訳)「線型代数学」(東京図書)

 

PS:一昨日夜は手話講習,昨日は早朝から春日部(武里)での定期診断でしたが異常に寒くて疲れました。

 

 前からの予定ですから,こういうのは天候くらいでめったに予定変更しませんが,何故か私は雨男,雪男で,これまでも普段と違う行動の日には決まって地震,台風を含む天変地異がよく起こると感じています。

 

 でも,こういうことは困ったもんです。昔とは違って今は私は病人で心臓は寒さ暑さには滅法弱いですから。。。

 

 前に,私の認識の閾値がオカシイと書いたのはシャレではなく,実際,手話講習会での手話認識では年齢とか不真面目のせいではなく,真剣に授業受けても思い込みでなく人一倍劣等生であることを自認しています。

 

 生まれてこの方パターン認識,特に空間認識は苦手なようです。

 

 自慢ですが,岡山の田舎の2クラス100人程度の小学校ではほとんど常にペーパーテストでは学年トップの成績でした。

 

 ところが,当時のアチーブメントテスト,つまりIQテストでは手を抜いたわけではなく平均点よりかなり低いことがよくあり先生に心配されました。

 単に図形とかの認識の問題ができなかったのですね。

 そこで,当時少しはやった将棋なども最弱の方でした。

 しかし,将棋,卓球など持って生まれた才能はダメでも訓練して集中力が続けば人並みになりました。勉強もそうだったのかな?

 右脳の劣等性を左脳でカバーした,というわけですかね。イヤ逆かな?

 中学に入って,幾何の平面図形は普通にできましたが,空間図形には少し苦労しました。高校でデカルト座標で解析幾何学やベクトルの成分表示など数式に変換されるとこれも問題なくなりましたが。。。

 というようにパターン認識等の自然現象の常識認識には生来の欠陥があるかもしれません。

 まあ,大げさに考えなくても生活に支障なかったし,サバン症候群ほどではないけれど何かのプラスに作用してるかも知れませんネ。

|

« 夢を諦めてしまうと気楽ですが寂しいものです。 | トップページ | 線型代数のエッセンス(8)(1次変換-2)」 »

306. 線型代数学」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 線型代数のエッセンス(7)(1次変換-1):

« 夢を諦めてしまうと気楽ですが寂しいものです。 | トップページ | 線型代数のエッセンス(8)(1次変換-2)」 »