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2011年2月14日 (月)

線型代数のエッセンス(8)(1次変換-2)」

 線型代数のエッセンスの§3.1次変換の続きです。
 

[定義3-26]:線型空間の部分集合の上の1次変換A^による像

(image)の全体をA^に関するの像といいA^と書く。

また,{|^}の原像(inverse image)といい

^-1と書く。
 

[定理3-27]:線型空間の線型部分空間の1次変換A^に関する像,

および原像は共に線型部分空間となる。
 

(証明)を線型空間の線型部分空間とします。

^はA^に関するの像です。
 

,∈A^とすると,=A^,=A^を満たす,

が存在します。よって,の線型部分空間なので∀α,β∈

に対してα+βです。
 

それ故,^(α+β)=αA^+βA^=α+β∈A^

です。したがって,,∈A^,α,β∈ならα+β∈A^

なのでA^の線型部分空間です。
 

他方,^に関するの像原像をA^-1と書けば,∈A^-1

ならA^,^です。
 

よって,の線型部分空間なので∀α,β∈に対し,

αA^+βA^=A^(α+β)です。

したがって,α+β∈A^-1なのでA^-1の線型部分

空間です。(証明終わり)
 

[定義3-28]:^を線型空間における1つの1次変換とする。

のとき,Ker^{|^0}をA^の核(kernel)という。

また,^をの値域(range)という。
 

値域A^の次元dim(^)を変換A^の階数といいrank^と書く。

Ker^の次元dim(Ker^)をA^の退化次数

(degenerate dimension:縮退次数)という。
 

[定理3-29]:線型空間の1次変換A^の階数と退化次数の和は

の次元dimLに等しい。
 

(証明)r=rank^dim(^),d=dim(Ker^),とします。

また,^の基底を1,2,..,rとします。1,2,..,r∈A^

ですからA^ii(i=1,2,..,)となる1組の1,2,..,r

を選択するとこの{i}i=1,2,..,1次独立です。
 

 なぜなら,1次関係式α11+α22..+αrr0 の左から

^を掛けると式α11+α22..+αrr0となり

式:α1=α2..=αr0 が従うからです。
 

 そこで,1,2,..,rによって張られるのr次元部分空間

とします。
 

とすると=α11+α22..+αrrと書けます。

そしてA^=α11+α22..+αrrです。

故に,もしA^0 ならα11+α22..+αrr0 より

α1=α2..=αr0 ですから0 です。
 

したがって,ker^{0}です。
 

 一方,とすると,^∈A^ですから

^=β11+β22..+βrrと書けます。

^ii(i=1,2,..,)より≡β11+β22..+βrr

とおけばでA^=β11とβ22..+βrr=A^

となります。

よって,^()0 より()ker^(),

かつです。は任意であって,Ker^{0}なので

Ker^の直和:Ker^です。
 

したがって,”[定理2-51]:線型空間の2つの線型部分空間

の直和の次元は部分空間の次元の和に等しい。

によってdim=d+rです。(証明終わり)
 

[定義3-30]:線型空間における可逆な1次変換を

正則(regular)変換,非可逆な1次変換を

非正則(irregular)な変換,または特異(singular)な変換という。
 

[定理3-31]:線型空間Lにおける1次変換A^が正則である。

 ⇔ Ker^{0}
 

(証明)まず,変換A^が正則なら可逆なのでA^-1が存在します。

そしてA^-1 00 なのでA^-1 {0}{0},つまりKer^{0}

です。
 

 逆にKer^{0}ならdim(Ker^)0より,[定理3-29]:

dim dim(Ker^)dim(^)よりdimdim(^),

つまりA^です。


また,,∈LでA^=A^ならA^()0

Ker^{0}より0 or です。

つまりならA^≠A^です。
 

したがって,^は全単射(bijection)ですから可逆,つまり正則です。

(証明終わり)
 

[定理3-31の系]:線型空間における1次変換A^が正則である。

 ⇔ A^ 

 (↑自明)
 

[定義3-32]:線型空間から自身への同型写像を自己同型写像(automorphism)という。
 

[定理3-33]:^が正則な1次変換であることと自己同型写像である

ことは同値である。((↑自明)
 

[定義3-34](相似変換):線型空間の2つの1次変換A^,^がある

とする。のある自己同型写像C^が存在してA^による変換がB^

による変換にうつされるとき,

つまり=A^のとき=C^,=C^すれば=B^

となるとき,変換A^とB^は相似(similar)である,

または同型であるという。
 

[定理3-35]:変換A^とB^は相似である。⇔ 正則な変換C^が存在

してA^=C^-1^^, or ^=C^^^-1と書ける。
 

(証明)=B^=C^,=C^を代入すると,

^=B^C^,故に=C^-1^^です。

ところが=A^なのでA^=C^-1^^,すなわち,

^=C^-1^^を得ます。(証明終わり)
 

[定理3-35の系]:変換A^とB^は相似である。⇔ 行列AとBは

相似である。ただしA,Bはそれぞれ変換A^,^の行列である。

(↑自明)
 

"[定義1-19](相似性):行列AとBに対してある正則行列Xが存在

てA=X-1BX,あるいはXA=BXが成立するとき,AはBに相似

であるという。"を参照されたい。)
 

[定理3-36](変換の行列の階数):線型空間の任意の1次変換A^

の階数は,この変換の行列Aの階数に等しい。
 

(証明)1,2,..,nの座標系とします。変換の行列の定義

から(^1,^2,.., ^n)(1,2,..,n)Aです。
 

 変換A^の階数の定義:“値域A^の次元dim(^)を変換A^

の階数といいrank^と書く。から,

^の階数はA^1,^2,.., ^nのn個のベクトルのうち

で1次独立なベクトルの最大個数に等しいです。
 

 これは,(1,2,..,n)がn個の1次独立な基底なので

行列A=([1],[2],..,[n])のn個の列ベクトル

[j]t(α1j,α2j,.., αnj)(j=1,2)のうちで1次独立な

ベクトルの個数の最大値,つまり行列Aの階数に等しいこと

がわかりました。(証明終わり)
 

():まず,行列の階数の定義を再掲します。
 

[定義2-29]:1,,..,mが座標:

[1]t(α11,α21,..,αn1),[2]t(α12,α22,..,αn2),..,[m]

t(α1m,α2m,..,αnm)を有するとき,これらの列ベクトルから

作られる行列を

[[1][2]..[m]][t(α11,α21,..,αn1)

t(α12,α22,..,αn2)..t(α1m,α2m,..,αnm)] とする。
 

 このAを構成する数空間の列ベクトル:[1],[2],..,[m]

のうちで1次独立なベクトルの個数の最大値を行列Aの階数

という。
 

次に,関連する定理の再掲です。
 

[定理2-31]:[定義2-29]と同じ前提で1,2,..,mの1次独立

なベクトルの個数の最大値は行列Aの階数に等しい。(再掲終了)
 

これらのことから,(^1,^2,.., ^n)(1,2,..,n)

のうちの1次独立なベクトルの個数の最大値,つまりdim(^)

行列AL≡([^1],[^2],..,[^n])の階数に等しいこと

がわかります。
 

しかし,(1,2,..,n)を基底とするなら,

(^1,^2,.., ^n)

(1,2,..,n)([^1],[^2],..,[^n])

(1,2,..,n)Aなので,行列ALと行列Aは実は同じ

ものです。(注終わり)
 

[定義3-37](行列の退化次数):正方行列Aの次数と階数の差:

(n-rank)を行列Aの退化次数という。
 

[定理3-38]:1次変換A^の退化次数とその行列Aの退化次数

は等しい。

(1次変換A^の退化次数)dim(Ker^)=n-dim(^)

=n-rankA=(行列Aの退化次数)は自明です。)
 

[定理3-39]:n元同次(斉次)連立1次方程式A[]0の1次独立

な解の最大個数はこの方程式の行列Aの退化次数に等しい。

(※1次独立な解は[0]とは異なる非自明解です。)
 

(証明)方程式A[]0を同等な線型空間の1次変換A^でA^0

と書けば1次独立な解の最大個数はdim(KerA^)ですが,これは

(行列Aの退化次数)=n-rankAと同じです。 

(証明終わり)
 

任意のベクトルが変換A^によって再びに属するベクトルにうつされるとき:^のときは変換A^に関して不変である,

あるいはのA^に関する不変部分空間であるという。
 

[定理3-40]:線型空間の線型部分空間のうち零空間{0}と全空間

は任意の1次変換に関して不変である。また,2つ以上の不変

部分空間の和,および共通部分はまた不変である。 

(↑自明)
 

[定理3-41]:線型空間の線型部分空間が1次変換A^に関して

不変なら,はA^の関数f(^)で与えられる変換に関してもまた

不変である。(←自明)
 

[定理3-42]:線型空間における1次変換A^が不変な線型部分空間

を持てばA^の行列Aは4ゆの細胞に分割され,そのうち主対角線

上の細胞は正方行列で左下の矩形細胞はO(ゼロ)である。
 

(証明)不変部分空間の基底を1,2,..,mとし,これと1次独立

M+1,..,nを補っての基底,つまり座標系とします。
 

 このとき,1≦j≦mなら

^j=α1j1+α2j2..+αmjm,m+1≦j≦nなら

^j=α1j1+α2j2..+αmjm+αm+1j1..+αnjn

です。

つまり,^j(1,2,..,m,M+1,..,m)t(α1j,α2j,..,αmj,0,..,0)(1≦j≦m), 

  A^j(1,2,..,n)t(α1j,α2j,..,αnj) (m+1≦j≦n)

です。
 

 故に,(^1,^2,.., ^n)(1,2,..,n)

で与えられる行列Aは
 

となります。
 

ただし,1はm次正方行列,2(n-m)次正方行列,

Bはm×(n-m)矩形行列,Oは(n-m)×mの矩形零]行列

です。 (証明終わり)
 

[定理3-42の系]:線型空間における1次変換A^の行列Aが

m次正方行列A1,(n-m)次正方行列A2,m×(n-m)矩形行列

,(n-m)×mの矩形零]行列Oによって
 

と書けるとき,の座標系1,2,..,nのうち,はじめのm個の

基底ベクトル1,2,..,mので張られる空間は変換A^に関して

の不変部分空間である。(←自明)
 

[定義3-43]:線型空間における1次変換A^がm次の不変部分空間

を有するとき,^における変換A1^がと見なしA1^をA^

によって誘導される変換(induced transformation by ^)

という。
 

[定理3-43]:線型空間における1次変換A^の行列Aが
 

と書けるとき,^によって誘導される変換A1^の行列はA1

である。 

( (^1,^2,.., ^m)(1,2,..,m)1

より自明) 
 

[定理3-44]:線型空間が1次変換A^によって2つの不変部分空間

12の直和に分解されるならば,適当な座標系においてA^の行列

Aは細胞対角行列になり,その主対角線上の細胞はA^のによって誘導

された変換A1^,2^の行列A1,2となる。
 

 すなわち,12ならA=A12となる。
 

(証明)不変部分空間1の基底を1,2,..,mとし,これと

1次独立なM+1,..,nを補っての座標系とします。
 

ただし,今の場合は12なのでM+1,..,n2

基底です。
 

 すると,^j(1,2,..,m,m+1,..,n)t(α1j,α2j,..,αmj,0,..,0)(1≦j≦m), 

  A^j(1,..,m,m+1,m+2,..,n)t(0,..,0,αm+1j,αm+2j,..,αnj) (m+1≦j≦n)

です。
 

 故に,(^1,^2,.., ^n)(1,2,..,n)

で与えられる行列Aは
 

となります。(証明終わり)
 

途中ですが今日はここまでにします。
 

参考文献:ア・イ・マリツェフ(柴岡康光 訳)「線型代数学」(東京図書)

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