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2011年4月30日 (土)

量子電磁力学の輻射補正(6)(電子自己質量-2)

輻射補正の電子の自己質量の項目の続きです。


§8.5 Renormalization of the Electron Propagator

(電子伝播関数のくりこみ)

 さて,前項で低次の散乱行列要素について実行した波動関数

の修正:u~(p) → ~(p)[1+{-iΣ(p)}i(-m)-1]を,

電子伝播関数(propagator)に適用します。

 すなわち,上記修正は,伝播関数:i/(-m)を,

i/(-m){i/(-m)}{-iΣ(p)}i(-m)-1

=i/{-m-Σ(p)}+O(α2) に置き換えることに

等価です。

(注1):i/(-m){i/(-m)}{-iΣ(p)}i(-m)-1

={i/(-m)}[1+{-iΣ(p)}i(-m)-1]

={i/(-m)}[1-Σ(p)(-m)-1]-1+O(α2)

=i/{-m-Σ(p)}+O(α2),


 また
,i/(-m){i/(-m)}Σ(p)(-m)-1

 +{i/(-m)}Σ(p)(-m)-1Σ(p)(-m)-1+..

 ={i/{-m}}/{1-Σ(p)(-m)-1}=i/{-m-Σ(p)}

です。

 (注1終わり)


 
 これは,前項で求めた,

Σ(p) ~ {3αm/(4π)}log(Λ2/m2)

-{α/(4π)}(-m)[log(Λ2/m2)+4log{(m2―p2)/m2}],

または,Σ(p) ~ {3αm/(4π)}log(Λ2/m2)

-{α/(4π)}(-m){log(Λ2/m2)+4log(λ/m)}

から,次のように表現できます。


 すなわち,Σ(p)≡δm-{Z2-1-1+C(p)}(-m),

ただし,δm≡{3αm/(4π)}log(Λ2/m2),

 および,Z2-1-1+C(p)

≡{α/(4π)}[log(Λ2/m2)+4log{(m2―p2)/m2}]

(for mλ<<p2-m2<<m2),

 または,Z2-1-1+C(p)

≡{α/(4π)}log(Λ2/m2)+4log(λ/m)(for p2-m2<<mλ)

とします。

 実数C(p)は質量殻上(on-shell):=mでC(p)=0 となる

ように選びます。こうすればC(p)は切断Λには依らない数

になります。

 こう規定すると,=mでは,

2-1-1={α/(4π)}{log(Λ2/m2)-2log(m22)}

です。

 そこで,i/{-m-Σ(p)}

=iZ2/[(-m){1+Z2C(p)}-Z2δm]

=iZ2/[(-m-δm){1+C(p)}]+O(α2)

と書けます。

※(注2):-m-Σ(p)

-m-δm+{Z2-1-1+C(p)}(-m)

=Z2-1[(-m){1+Z2C(p)}-2δm] です。

 そして(-m)|1+Z2C(p)}-Z2δm

=(-m-δm){1+C(p)}+(Z2-1)C(p)(-m)

-{Z2-1-C(p)}δm です。

 αの最低次までの計算では,Z2-1-1=O(α)ですから,

2-1=O(α),Z2-1-C(p)=O(α)です。

 さらに,C(p)=O(α),δm=O(α)ですから

(Z2-1)C(p)(-m)-{Z2-1-C(p)}δm=O(α2)

です。

 故に,i/{-m-Σ(p)}

=iZ2/{(-m-δm){1+C(p)}+O(α2)}

=iZ2/{(-m-δm){1+C(p)}+O(α2)

を得ます。

 または,Z2=1+O(α),C(p)=O(α)でO(α2)を無視する

近似では,Z2 ~ 1として,直接,

i/{-m-Σ(p)}

=iZ2/[(-m)|1+Z2C(p)}-Z2δm]

~ iZ2/{(-m-δm){1+C(p)}  です。※

  ここで,mph≡m+δmを電子の物理的質量(physical mass),

つまり観測される電子の質量と認定します。

 自由Dirac方程式:(iγ∇-m)ψ=0 or (-m)u=0 に

現われるパラメータmは,前の論議での裸の電荷と同じく

裸の質量(bare mass)と呼ばれ観測にはかからない数です。

  質量mの"くりこみ"の必要性は既に古典電磁力学に

 おいても生じています。

 自由電子に関する実験では,Lorentz力の法則でのパラメータ

 mに電子の自己場の慣性を加えたものが測定にかかります。

 (※電場,磁場の中に投げ入れた電荷eの1電子の速度を

 vとすると,その運動は運動方程式:md/dt=e+e×

 に厳密には従わず,md/dt=e×となって余分な力

 Fがあります。

 このは場の反作用と呼ばれ,これは電子の加加速度:2/dt2

 にも依存するような複雑な力ですが,投入した電子自身によって

 発生した自己場による抵抗力と考えられます。

 そこで,質量がmphの電子は,mph/dt=e+e×

 なるLorentz力を含む普通の電磁場の法則に従うべきである。

 という仮説の下で電子の慣性質量mphを測定すると,

 mph=m(電子質量)ではなく.mph=m+δmと余分の慣性δm

 を加えた形で観測されます。※)

 古典半径aの電子を仮定し古典電磁気学に従って理論的に電子

 の自己エネルギーを計算すると,~ α/a であり,それ故観測

 される質量は,~ (m+α/a)=mph となるはずです。

 ただし,α≡e2/(4πε0)で,これは微細構造定数です。

 大きさのない点電荷ではa→ 0であり,これでは質量補正は

 無限大になってしまいます。これは古典電磁力学だけでなく,

 たった今計算した量子論においても真です。

 しかし,古典論ではa → 0 に対して自己エネルギーが1次の

 発散をするのに反して,量子論では切断について対数的に発散

 します。

 こうした発散の緩和化は,Diracの空孔理論の帰結です。 

 最初,Weiskopfによって研究されたように(2006年12/21の過去

 記事:電子の自己エネルギーとDiracの海」を参照),

 下図8.7(a)の時間順序グラフでの仮想電子-陽電子対が

 図8.7(b)の主要な発散を相殺します。 

  さて,量子論で計算した自己エネルギーは形式的には無限大ですが,

 この質量補正はΛ<<exp{2r/(3a)}m ~10100m程度の切断質量

 Λに対してはかなり小さい値です。

 
一方,宇宙の全質量でさえ,1080mくらいと評価されています。

 "質量くりこみ"を実行する体系的な方法は,Dirac方程式を物理的

 質量で書き直し,その差異を付加的相互作用として扱うことです。


 すなわち,元の素朴な方程式:(iγ∇-m)ψ=eAψを,

 (iγ∇-mph)ψ=eAψ-(mph-m)ψ=eAψ-(δm)ψ

 と書き直します。

 右辺の付加的相互作用:-(δm)ψのS行列への寄与は

 下図8.8のFeynmanグラフで表わされます。 

  

この項の寄与は,丁度.

Σ(p) ~ {3αm/(4π)}log(Λ2/m2)-{α/(4π)}(-m)

[log(Λ2/m2)+4log{(m2―p2)/m2}]etc.の第1項(Leadingterm)

と相殺してこれを消す働きをします。


 (※図8.8の項はくりこみ理論ではcountertermと呼ばれます。)

 そして,修正された(くりこまれた)電子伝播関数は,=mph

とき自由伝播関数の倍数になります。

 さて,これ以後は質量は既にくりこまれていると仮定します。

 すなわち,図8.8も含まれているとします。

 そして,改めてmphの代わりにmを電子の物理的質量を記述する

記号とします。(裸の質量はmの代わりに,m0とします。)

 残りの電子伝播関数の補正は,定数Z2と関数C(p)です。

このうちC(p)は=m(=mph)のときゼロと選択しています。

 そこで,~mでの伝播関数は,i/(p-m) → iZ2/(p-m)

となり積因子で修正されます。


 この意味で,Z2は前の真空偏極(vacuum polarization)による

光子伝播関数の補正において遭遇した定数Z3に似ています。

 この因子はまた,電子線の"各端点=頂点(vertex)"に現われる

電荷e0に吸収することも可能です。

 しかし,Z2が多くの物理学を含むことは期待できません。

 何故なら,それは,

2-1-1={α/(4π)}{log(Λ2/m2)-2log(m22)}によって,

光子の切断質量Λに依存するからです。

 また,外線(質量殻上=実電子)については,二重に補正しない

よう注意する必要があります。

 この状況は,光子外線(実光子)の補正係数において出会った状況

に似ています。

 こうしたFeynman伝播関数は,後に第二量子化された場理論では,

2点Green関数として場の時間順序積の真空期待値で与えられる

のですが,こうした伝播関数は場の振幅について双一次の表現です。

 
 一方,外線は単一の場の振幅を表わす波動関数に相当するので,

 それは因子:Z21/2でくりこまれます。

 その結果,各外線については,Z21/2で割る必要があります。

 
この結果の馴染み深い例は,通常の量子力学の摂動論において

見出されます。

 
すなわち,摂動論の1次近似結果の,

ψn=Zn1/2φn+Σm≠n<φmVψn>φm/(En-E0m)2,

およびZn=1-Σm≠n|<φmVψn>|2/(En-E0m)2

なる表現です。

 
ここでも,Z因子は本質的にはGreen関数に対して計算され,

波動関数はZn1/2 よって再規格化されています。

 
短かいですが,今日はここで終わります。

 そして,これで電子自己質量の項は終わりです。

 次回は頂点補正(The Vertex Correction)に入る予定です。

 (参考文献): J.D.Bjorken & S.D.Drell

"Relativistic Quantum Mechanics"(McGraw-Hill)

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