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2011年5月30日 (月)

量子電磁力学の輻射補正(11)(頂点補正-5)」

 ,5/30午前2時半です。これから5時間ほど寝て朝には帝京大学病院眼科に入院し.5/31には右目を手術,6月第一週週末には退院できると思います。

 

 帝京大学病院はTVを見るのさえ10時間1000円のカードを買って挿入する必要があります。

 

取り合えず手元に数百円しかなかったので,入院前日にも関わらず,毎日曜の予定通りに飲みに行って図々しくも支払いはPendingで逆に2千円借りてきてさっき1時頃帰宅したところです。

  

帝京大学病院の一階には1時間100円でネットにアクセスできるPCがありますが,まあ一種間か10日くらいは忘れて別のことやりたいと考えています。 

 

(※読むかどうかはわかりませんが格子ゲージ理論の本を1冊持っていきます。)

 さて,入院前最後に科学記事を書きます。

輻射補正の頂点補正:Λμ(p',p)(下図)の続きです。

 

頂点補正のうちμに比例した項について考えます。

 

これらは電子散乱の赤外発散(infrared divergence)への寄与に関係しています。

  

しかし,この仮想軟光子k~0による発散は断面積に実軟光子(soft-photon:k~0)の制動輻射(bremsstrahlung)の寄与を加えると相殺して消えます。

 

以下,これを説明します。

  

あらゆる実験装置の分解能(resolution:解像度)は有限です。

 

そして,電子がエネルギー分解能ΔEで検出されるなら,観測事象の数は弾性散乱の断面積にエネルギーが弾性値のΔE以内にある電子に到る制動輻射(非弾性散乱)の断面積をプラスしたものに対応するはずです。

 

(注1):2010年7/26の記事「散乱の伝播関数の理論(17)(応用3-2)」での制動輻射の論議の最後で次のように書きました。

(*)軟光子放出の制動輻射の断面積は,非相対論的エネルギー(N.R)では,dσ/dΩf =(dσ/dΩf)elastic(2α/π)ln(kmax/kmin){(4/3)β2sin2(θ/2)+O(β4)},

超相対論的エネルギー(E.R)ではdσ/dΩf =(dσ/dΩf)elastic(2α/π)ln(kmax/kmin){ln(-q2/m2)-1+O(m2/|q2|)}となります。

 

ここでは論じませんが,kmin→ 0 におけるln(kmax/kmin)因子の赤外発散を相殺して断面積の有限な値を得るために,因子(dσ/dΩf)elasticが(dσ/dΩf)elastic→ (有限値)×{O(ln(kmax/kmin))}-1となるような弾性散乱の仮想光子輻射補正が必要です。 (*)

 

です。

 

なお,この記事では対数の記号としてlnを使っており,このシリーズして統一性がありませんが,lnは単に底がeの自然対数を意味するだけなのでここでの記号logと意味は同じです。

 

以下,lnはlogに変更します。(注1終わり)※

 

さて,以下ではここで得たγμ+Λcμ(p',p)~γμ[1+{α/(3π)}(q2/m2){log(m/λ)-3/8}]+{α/(8πm)}[μ](N.R),

 およびγμ+Λcμ(p',p)~γμ[1-(α/π)log(m/λ){log(-q2/m2)-1+O(|m2/q2|)}]から得られる断面積を上記の制動輻射の断面積と比較します。

 その結果,e2のオーダーまででは弾性散乱と非弾性散乱の断面積の和は有限になり赤外発散の困難から解放されることを説明します。

 ここで得た結果によれば,弾性散乱のe2のオーダーまででの赤外発散部分は(dσ/dΩ)λ=(dσ/dΩ)0{1-(2α/π)log(λ/m)χ(q2)}と書けます。

 ただし,-q2/m2<<1ではχ(q2)≡-(1/3)(q2/m2),-q2/m2>>1ではχ(q2)≡log(-q2/m2)です。

 また,(dσ/dΩ)0は弾性散乱断面積への最低次の寄与です。

(※S行列要素から断面積dσ/dΩにするときには絶対値を2乗するため,γμ→γμ+Λcμ(p',p)のλ~0 付近の補正因子も2乗されるので,こうなります。)

 記号:χ(q2),および(dσ/dΩ)0を用いると,制動輻射の断面積は(dσ/dΩ)brem=(dσ/dΩ)0(2α/π)log(kmax/kmin)χ(q2)と書けます。

(注2): 制動輻射の断面積の式は,(E.R):-q2/m2>>1では(dσ/dΩ)brem=(dσ/dΩ)0(2α/π)log(kmax/kmin)log(-q2/m2)ですから,これは上記の表現で全く問題なしです。

 一方,(N.R):-q2/m2<<1ではE≡Ef ~Ei,||≡|f|~|i|,β≡||/E,fi2cosθですが,q=pf-pi=kでありk~0の極限ではEf ~Eiなので-q2=-(pf-pi)2 ~ (fi)2=22(1-cosθ)=4E2β2sin2(θ/2)です。」

 故に,22+m2,-q2=22(1-cosθ)<<m2で42<<m2よりE2~m2ですから,-q2~4m2β2sin2(θ/2), )(4/3)β2sin2(θ/2)~(-1/3)(q2/m2)です。

 それ故,(dσ/dΩ)brem~(dσ/dΩ)0(2α/π)log(kmax/kmin)(4/3)β2sin2(θ/2)=(dσ/dΩ)0(2α/π)log(kmax/kmin)(-1/3)(q2/m2)を得ます。(注2終わり)※

 しかし,これら2種類の式は一方は光子が小ですが有限な正の質量λ>0 を持つと仮定する,他方はエネルギーor 波数kに下限kminが存在するという形なので,それぞれ異なったやり方で低振動数の切断を実行した結果として得られたものですから,これらを単純に加えることはできません。

(※記号λはよく用いられる波長の意ではなく質量を表わすことに注意)

 この問題点を克服するための処方として,制動輻射の断面積を有限質量λの光子で再導出するか?kminより小さいエネルギーの光子の放出が禁止されていると仮定して頂点補正を再計算するか?のいずれかを選択できます。

 

 しかし,光子がλ>0の質量を持つときにはゼロ質量では存在し得ない縦波の実光子の出現という複雑な問題が生じると考えられるため,ここではこれを避けるため後者の方法を選択します。

 

 ところが,光子の波数切断kminの導入は非共変的手続きなので,頂点補正のくりこみ部分の確認はとても繊細(delicate)な状況になります。

 

 実は,このことが最初の計算において低振動数の切断を共変的なスカラーである質量λで行なった理由です。

 

 さて,λ~0,かつkmin~0 の極限につて考察中なのですが,ここでは数式化を簡単にするため,特にkmin>>λという選択をします。

 

 この選択は頂点補正Λμ(p',p)≡(-ie)2ε0-1∫d4k(2π)-4{(-i)(k2-λ2+iε)-1γνi('--m+iε)-1γμi(-m+iε)-1γν}のkによる積分において,k<kminの振幅を禁止して∫kmin4kとすることを意味します。

 

 そこで,結局,光子の伝播関数(photon propagator):iDF(x)=∫d4k(-i) exp(-ikx)/(k2-λ2+iε)での∫d4k→∫kmin4kなる修正の必要性に帰着することがわかります。

 

 短いですが,明朝入院なので今日はこれでPendingです。

 

 皆様,ごきげんよう,また会いましょう。

 

参考文献: J.D.Bjorken & S.D.Drell "Relativistic Quantum Mechanics"(McGrawHill)

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コメント

お早うございます。
今日からですね。たまになら病院暮らしも悪くないですね。のんびりとして下さい。
お帰りをお待ちしています。
いってらっしゃーい。

投稿: 明男 | 2011年5月30日 (月) 07時29分

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