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2011年7月26日 (火)

水素様原子の微細構造(2)

水素様原子の微細構造」の続きです。

 

まず,解くべき方程式は(αp+βm-Zα/r)Ψ=EΨです。

 

ところで,もしもσが2成分のPauli-spinor:σσ(2)の場合, 

(σr)2=r2より,(σp)=(σr)r-2(σr)(σp) です。

 

故に,任意のf(r)に対して,

 

(σp){f(r)/r}ψjml=(σr)r-2(σr)(σp){f(r)/r}ψjml

(σr)r-2{(rp)+iσ(×)}{f(r)/r}ψjml

(σr)r-2{(1/i)r(∂/∂r)+i(σL)}{f(r)/r}ψjml

 

です。

 

ここで,rp={(1/i)r(∂/∂r)および,

公式:(σLjml=-(1+κ)ψjmlより

 

(σr)r-2{(1/i)r(∂/∂r)+i(σL)}{f(r)/r}ψjml

[(1/i)(d/dr){f(r)/r}-i(1+κ){f(r)/r2}{(σr)/r}ψjml ですから,

 

結局,(σp){f(r)/r}ψjml

=(-i/r){df/dr+(κ/r)f}{(σr)/r}ψjml

を得ます。

 

ただし,κはj=l+1/2⇔l=j-1/2ならκ=-(l+1)=-(j+1/2)で,j=l-1/2⇔l=j+1/2)ならκ=-l=j+1/2 です。

 

 そこで,動径関数Glj(r),Flj(r)が満たすべき方程式は,

(E-m+Zα/r)Glj(r)=-dFlj(r)/dr+(κ/r)Flj(r),

(E+m+Zα/r)Flj(r)=+dGlj(r)/dr+(κ/r)Glj(r)  

です。

 

(注2-1):Dirac方程式:(αp+βm-Zα/r)Ψ=EΨ

 において,σσ(2)の場合,

 

 4次の正方行列:(αp)は,2次の行列:(σ)を反対角成分

 とするブロック反対角行列で,βは対角成分が1,-1のブロッ

 ク対角行列です。

  

そこで,Ψ=[ψ,χ]と書けば,Dirac方程式:

(αp+βm-Zα/r)Ψ=EΨは,

 

ψの成分ψ,χのそれぞれに対する方程式の形で,

(E-m+Zα/r)ψ=(σp)χ,および,

(E+m+Zα/r)χ=(σpと2成分表現できます。

 

故に,Ψ=[ψ,χ]が動径関数と角変数関数の積の変数分離型で,

Ψjml [{iGlj(r)/r}ψjml,{Flj(r)/r}{(σr)/r}ψjml]

のときには,これらの方程式は次のようになります。

 

(E-m+Zα/r)(iGlj/r)ψjml

=(σp)(Flj/r)(σr)/r}ψjml,および,

(E+m+Zα/r){Flj/r}{(σr)/r}ψjml

=(σp)(iGlj/r)ψjml です。

 

ただし,{(σr)/r}ψjmlはψjmlとlが1だけ異なる

rを含まない角変数θ,φのみの関数です。

 

ところが,上に示した恒等式:(σp){f(r)/r}ψjml

=(-i/r){df/dr+(κ/r)f}{(σr)/r}ψjmlを用いると,

 

第1式は,(σp)(iGlj/r)ψjml

={(dGlj/dr)/r+κGlj/r2}{(σr)/r}ψjml

と書けます

 

一方,(σp)(Flj/r){(σr)/r}ψjmlにおいて,因子(σr)/r

は動径rを含まないθ,φのみの関数なので,(σp)の中の

よる動径rの微分(d/dr)は影響せず,素通りします。

 

しかし,(σp)(σr)/r=(pr)/r+iσ(p×r)/r

=-i∇(/)-i∇+σ{∇×(/)}-i(σL)なので,

軌道角運動量の固有値lが関係します。

 

このベクトル式を用いて細かい計算をするより,{(σr)/r}ψjml

がψjmlとlが1だけ異なるものであることを用いた方が簡単です。

 

すなわち,定数κはj=l+1/2 ⇔l=j-1/2なら,

κ=-(l+1)=-(j+1/2)で,

j=l-1/2⇔l=j+1/2)ならκ=-l=j+1/2 なので,

{(σr)/r}ψjmlはψjmの際のκが-κに変わるだけです。

 

そこで,第2の式から,

(σp)(Flj/r){(σr)/r}ψjml

=-i{(dFlj/r)/dr}/r-κFlj}{(σr)/r}ψjml が得られます。

 

それ故,(E-m+Zα/r){Glj/r}φjml

=-{(dFlj/dr-(κ/r)Flj/r2jml,

 

(E+m+Zα/r){Flj/r}{(σr)/r}ψjml

={(dGlj/dr)/r+κGlj/r2}}{(σr)/r}ψjml です。

 

したがって,動径関数の満たすべき方程式は,それぞれ,

   

(E-m+Zα/r)Glj(r)

=-dFlj(r)/dr+(κ/r)Flj(r),および,

(E+m+Zα/r)Flj(r)

=dGlj(r)/dr+(κ/r)Glj(r) 

となります。

 

(注2-1終わり)※

 

さて,(E-m+Zα/r)G=-dF/dr+(κ/r)F,および,

(E+m+Zα/r)F=dG/dr+(κ/r)Gは,

  

r→ ∞に対しては,κ/r,-Zα/rがO(1/r)なので, 

dG/dr=(m+E)F,dF/dr=(m-E)G

となります。

 

この線形微分方程式:[dG/dr,dF/dr]=A[G.F]

の係数行列:Aの固有値はλ≡(m2-E2)1/2>0 として±λです。

 

そして,固有値λ,-λに属する固有ベクトルは,それぞれ,

[(m+E)1/2,(m-E)1/2],[(m+E)1/2,-(m-E)1/2]

です。

 

故に,r→ ∞での線形微分方程式の一般解の漸近形は,

 

任意係数をc(+),c(-)として,

[G,F] ~ (+)t[(m+E)1/2,(m-E)1/2]exp(λr)

(-)t[(m+E)1/2,-(m-E)1/2]exp(-λr)

と表わせます。

 

しかし,r→ ∞で有限であるべきという条件からexp(λr)

に比例する第1項は捨てる必要があります。

 

よって,求める漸近一般解は,

t[G,F]~ c(-)t[(m+E)1/2,-(m-E)1/2]exp(-λr) です。

 

これは,a=1/(2λ) or 2a=(m2-E2)-1/2とおいて規格化すると,

 

[G,F] ~ (2m)-1/2π-1/4-1/2t[(m+E)1/2,-(m-E)1/2]

exp{-r/(2a)}です。

 

簡単のため,ρ≡r/aとして,

G(r)≡(1+E/m)1/2{f(ρ)+g(ρ)}exp(-ρ/2),

(r)≡(1-E/m)1/2{f(ρ)-g(ρ)}exp(-ρ/2)

とおきます。 

 

(注2-2):まず,ρ~ ∞でG~(2a)-1/2π-1/4[(1+E/m)1/2,

 F~-(1-E/m)1/2]exp(-ρ/2)となるよう,

 

 ρ~ ∞で,(ρ)~(2a)-1/2π-1/4,q(ρ)~-(2a)-1/2π-1/4

 となるようなG,Fの未定係数の関数(ρ),q(ρ)を仮定します。

 

 すなわち,[G,F]

 =[(1+E/m)1/2p(ρ),(1-E/m)1/2q(ρ)]exp(-ρ/2)

 とします。

 

さらに,f=(p+q)/2,g=(p-q)/2とすれば,

p=f+g,q=f-gなので,

 

常に,[G,F]=[(1+E/m)1/2{f(ρ)+g(ρ)},

(1-E/m)1/2{f(ρ)-g(ρ)}] と書くことが可能です。

  

(注2-2終わり)※

  

さて,ρ=r/aより,

dG/dr+(κ/r)G=(E+m+Zα/r)}Fは,

dG/dρ+(κ/ρ)G={a(m+E)+Zα/ρ}F,

 

-dF/dr+(κ/r)F=(E-m+Zα/r)Gは,

dF/dρ-(κ/ρ)F={a(m-E)-Zα/(aρ)}G

となります。

 

ただし,a=(1/2)(m2-E2)-1/2

(1/2m)(1+E/m)-1/2(1-E/m)-1/2

⇔ 1/a=2m(1+E/m)1/2(1-E/m)1/2

です。

 

G=(1+E/m)1/2exp(-ρ/2)(f+g),

F=(1-E/m)1/2exp(-ρ/2)(f-g),および,

 

dG/dρ=(1+E/m)1/2exp(-ρ/2)

×{df/dρ+dg/dρ-(1/2)(f+g)},

dF/dρ=(1-E/m)1/2exp(-ρ/2)

×{df/dρ-dg/dρ-(1/2)(f-g)}から,

 

dG/dρ+(κ/ρ)G={a(m+E)+Zα/ρ}Fは, 

(1+E/m)1/2{df/dρ+dg/dρ-(1/2)(f+g)

+(κ/ρ)(f+g)}

=(1-E/m)1/2{a(m+E)+Zα/ρ}(f-g),

 

dF/dρ-(κ/ρ)F={a(m-E)-Zα/ρ}Gは, 

(1-E/m)1/2{df/dρ-dg/dρ-(1/2)(f-g)

-(κ/ρ)(f-g)}

=(1+E/m)1/2{a(m-E)-Zα/ρ}(f+g) と書けます。

 

ここで,a={1/(2m)}(1+E/m)-1/2(1-E/m)-1/2/より,

a(1-E/m)1/2/(1+E/m)1/2=(1/2)/(m+E),

(1-E/m)1/2/(1+E/m)1/2={(m-E)/(m+E)}1/2,

 

(1+E/m)1/2/(1-E/m)1/2=(1/2)/(m-E),

(1+E/m)1/2/(1-E/m)1/2={(m+E)/(m-E)}1/2

ですから,結局,

 

df/dρ+dg/dρ-(1/2)(f+g)+(κ/ρ)(f+g)

=(1/2)(f-g)+{(m-E)/(m+E)}1/2(Zα/ρ)(f-g)①

  

df/dρ-dg/dρ-(1/2)(f-g)-(κ/ρ)(f-g)

=(1/2)(f+g)-{(m+E)/(m-E)}1/2(Zα/ρ)(f+g)②  

 

を得ます。

  

 ここで,μ≡(1/2){(m-E)/(m+E)}1/2

 +(1/2){(m+E)/(m-E)}1/2=m(m2-E2)-1/2,

 ε≡(1/2){(m+E)/(m-E)}1/2-(1/2){(m-E)/(m+E)}1/2

 =E(m2-E2)-1/2とおきます。

  

 また,α1≡Zαとします。

  

 ①+②から,2(df/dρ)-f+(2κ/ρ)g

 =f+{(m-E)/(m+E)}1/21/ρ)(f-g)

 -{(m+E)/(m-E)}1/21/ρ)(f+g)より,

 

 df/dρ=f-(κ/ρ)g-(εα1/ρ)f-(μα1/ρ)g,

 

 ①-②から,2(dg/dρ)-g+(2κ/ρ)f

 =-g+{(m-E)/(m+E)}1/21/ρ)(f-g)

 +{(m+E)/(m-E)}1/21/ρ)(f+g)より,

  

dg/dρ=-(κ/ρ)f+(μα1/ρ)f+(εα1/ρ)g

を得ます。

 

最終的な式として,

  

df/dρ=(1-εα1/ρ)f-(κ+μα1)g/ρ,

dg/dρ=(εα1/ρ)g-(κ-μα1)f/ρ

 

が得られます。

 

次に,簡単な方の第2式をρで微分してfを消去します。

  

2/dρ2=(εα1/ρ)(dg/dρ)-(εα12)g

-(κ-μα1){(df/dρ)/ρ-f/ρ2}

=(εα1/ρ)(dg/dρ)-(εα12)g

-(κ-μα1){(1-εα1/ρ)f/ρ-(κ+μα1)g/ρ2-f/ρ2}

です。

 

さらに,2/dρ2-(εα1/ρ)dg/dρ+(εα12)g

-(κ-μα1)(κ+μα1)g/ρ2

=-(κ-μα1){(1-μα1/ρ)f/ρ-f/ρ2} です。

   

右辺に,-(κ-μα1)f/ρ=dg/dρ-(εα1/ρ)gを代入すると

2g/dρ2-(εα1/ρ)dg/dρ+(εα12)g

-(κ-μα1)(κ+μα1)g/ρ2

=(1-εα1/ρ-1/ρ){dg/dρ-(εα1/ρ)g}

です。

 

結局,簡単な方程式:

2g/dρ2-(1-1/ρ)(dg/dρ)

+{εα1/ρ+(α12-κ2)/ρ2}g=0 が得られました

 

(最後の式変形でμ2+ε2=1を用いました。)

  

 今日はここまでにします。   

 

参考文献:J.D.Bjorken & S.D.Drell "Relativistic Quantum Mechanics"(McGraw-Hill), 

岩波講座 現代物理学の基礎[第2版]3「量子力学Ⅰ」(岩波書店)

 

PS:暑くて夏バテのせいなのか,最近体も頭も結構疲れやすく,ブログ

 の科学記事を書く作業は,なかなかはかどりません。

 

さすがに,右目はもう充分に見えるのですが,まだ例えばネット将棋

の際に画面の将棋盤を両目で見ると直線のはずの枡目が歪んだ曲線

に見えることなどあります。

 

ドライアイなのか,食が細く栄養失調で鳥目のような感じなのか,

はたまた,単に睡眠不足で疲れ目なだけなのか?

  

長時間ブログを書いてると,参照用ノ-トも本もテキスト画面も

字が判読できなくなってきて,ときどき中断せざるを得なくなり

ます。

  

前のように急がず,休み休み気長にやるようになってますが,急ぐ

旅でもないしその方がいいかもしれませんね。

 

(※昔の自分のノートをチェックしながら書き写してるだけなの

ですが,過去ノートの途中で二重,三重の計算間違い,勘違いをし

た結果,最後の結果だけが辻褄が合ってるものなどあり,所々直し

ています。

 

その作業で,直さなくてもいいのにワザワザ間違ったり写し間違

いをしたりもして,本文の符号など何度も書き直したりしていま

が,結果,若い頃の記憶が蘇り温故知新もあるので,よしとしま

しょう。※)

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コメント

2次の行列

2次の正方行列

投稿: 凡人 | 2013年3月24日 (日) 17時18分

=-i∇(r/r)-i∇+σ{∇×(r/r)} ⇨ =-i∇(r/r)+σ{∇×(r/r)}
G~(2a)-1/2π-1/4[(1+E/m)1/2 ⇨ G~(2a)-1/2π-1/4(1+E/m)1/2exp(-ρ/2)
F~-(1-E/m)1/2]exp(-ρ/2) ⇨ F~-(2a)-1/2π-1/4(1-E/m)1/2exp(-ρ/2)

投稿: hirota | 2013年3月24日 (日) 01時01分

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