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2011年8月11日 (木)

水素様原子の微細構造(4)(超微細構造)

「水素様原子の微細構造(3)」からの続きです。

  

異常な暑さとお盆の季節でもあり,夏休み気分で頭もふやけてシリアスな計算は滞りがちです。この記事は10日間も間が空きました。

  

 1947年にLamb-Rutherfordの水素原子の測定において,エネルギー

準位の微細構造では,2P1/2より2S1/2レベルの方が上にあるのでは?

いう従来からのの疑いが真であることが確認されたということの

続きです。

 

このシフト="同一のnとjでもlが異なるときには縮退を破ること

は,「量子電磁力学における輻射補正」シリーズ:

 

すなわち,"最低次のくりこみ"のシリーズで述べたように,

量子化された輻射場のゆらぎ,と電子の相互作用に由来する

Lamb-Shiftも関係しています。

  

現在では,エネルギー準位のこうした超微細分離は,非常に高い精度

で計算されて,よい一致が見られています。

  

 これら超微細構造の一部は,電子の磁気モーメントと陽子の相互作用

に起因しています。

 

 これは電子の角運動量と核の半奇数スピンから結合される可能な2つの

 全角運動量状態に対して,あらゆる縮退を2重に分離させる効果を有します。

  

 s状態(l=0)に対して,その効果を計算します。

  

 この目的のためには,非相対論的記述で十分です。

 

 相互作用形式は,Hint=-{e/(2m)}σB(e<0 は電子の電荷)

 で()={gP/(2MP)}(4πε0)-1

  ×(∫d3'ρ(')∇×(×∇)(1/|'|)です。

 

ただし,は陽子のスピン演算子です。

 

ρ()は陽子(原子核)を点粒子でなく構造を持つとした磁気

モーメント密度です。

 

これは∫d3ρ()=1と規格化されています。 

 

※(注4-1):静電磁場のベクトルポテンシャルを()とすると,

 定義によって()=∇×()です

 

 そして,()=(4πε0)-1∫d'{∇'×(')}/|'|

(4πε0)-1∫d'(')×∇'(1/|'|)

=-(4πε0)-1∫d'(')×∇(1/|'|)

です。

 

磁気能率密度:ρは∫d3ρ()=1と規格化されていて,

核磁気モ-メントは.

()={gP/(2MP)}∫d3{ρ()}

で与えられます。

 

また,Mは陽子質量です。

 

陽子の磁気回転比:gpは電子のそれgと同じオーダーであり,

他方,質量は,MP ~ 1840m(mは電子換算質量でm~m)なので,

p/(2Mp)<<g/(2m) です。

 

そこで,普通は核磁気は小さ過ぎて問題にしないのですが,

超微細レベルの評価では,それこそが問題なのです。

 

(注4-1終わり)※

 

 そして,∇×(×∇)=2-(∇)∇,および,波動関数の対称性

 から,∇ij=∂Ijを(1/3)δijに置き換えてよいので,

 ∇×(×∇)を,(2/3)2に同一視できます。

 

(注4-2):角運動量に依らないので,

 {∇×(×∇)}i=εijkjεklmlm

  =(δilδjm-δimδjl)∂jlm=∂jii-∂jji

  =Jijj-Jjji です。

 

 故に,∇×(×∇)=2-(∇)∇ です。

 

 そして,∂Ij(1/3)δij2より,(∇)∇=(1/3)∇2ですから,

 ∇×(×∇)=(2/3)2が成立します。(注4-2終わり)※

 

故に,

()

=(2/3)gPe/(2MP)(4πε0)-1∫d3'ρ(')2(1/|'|)

=-(2/3)gpeε0-1/(2Mp)ρ() 

と書けます。

 

これは,公式:∇2(1/|'|)=-4πδ3(')

が成立するからです。

 

したがって,この摂動によるエネルギー変化は,

 

ΔEn=<Ψn|Hintn>=-{e/(2m)}<Ψn|σBintn

(2/3)gP2ε0-1/(4mMP)(σJ)∫dΨn()ρ(n()

 

です。

 

 近似的には,ΔEn~(1/6)gp2ε0-1/(mMP)(σJ)|Ψn(0)|2

 =(1/2)mα[(4/3)(gp3α2/n3)(m/Mp)(σJ)]

 と書けます。

 

(注4-3):何故なら,

 非相対論では,水素様原子の電子の波動関数は,

 Bohr半径をa0≡1/(mα)として,

 

 ψnlm()=ψnlm(r,θ,φ)=Rnl(r)Ylm(θ,φ);

 

 Rnl(r)={2Z/(na0)}3/2{(n+l)!/(2l+1)}

 {(2n)!(n-l-1)!}-1/2(-)2l+1

  ×exp(-ρ/2)ργF(l+1-n,2l+2;ρ)

 と書けますから

 

n0(0)=2(mZα/n)3/2であり,またY00(0,φ)=(4π)-1/2です。

 

故に,ψn(0)=π-1/2(mZα/n)3/2なので,

 

n(0)|2 ~|ψn(0)|2=π-1(mZα/n)3 です。

 

そして,e2/(4πε0)=αですから上のΔEnの最終表現を得ます。

(注4-3終わり)※

 

 また,(σJ)]は,

 (σJ)=1/2,  (tripletのとき),

 (σJ)=-3/2 (singletのとき) です。 

 

(注4-4):S=1/2,J=1/2でJ+S=1,がtriplet(3重項),

  J-S=0 がsiglet(1重項)です。Pending※

  

 こうして,核磁気によるエネルギーの分離δnは,

 δn=(1/2)mα2(8/3)(gP3α2/n3)(m/MP)

 =(4/3)(3α4/n3)(gPm/MP)

  であることがわかります。

 

これを,先の相対論効果による微細構造:

ΔEnj=-mZ4α4/(2n3)[(j+1/2)-3/(4n)]と比較すると,

大体質量比(m/MP)だけ小さい値です。

 

 一方,Waltonは,電子の相互作用を非相対論的に扱って,

 電磁場の真空のゆらぎ(Vacuum-fluctuation)の相互作用

 を評価して,Lamb-Shiftの単純で定性的な記述を行ないま

 した。

 

すなわち,電磁場のnomal-mode(=展開項の単一振動数の波動成分)

の力学は,調和振動子の力学に等価なので,量子化された各modeは,

零点エネルギー:ω/2を獲得します。

 

その結果,外場のない場合でさえ電磁場のゆらぎが存在します。

 

平均の場の強さがゼロであるにもかかわらず,場の二乗平均値は

消えないで場と相互作用する二乗平均のゆらぎに導かれます。

 

そして,ここで評価すべきは水素原子における,こうしたゆらぎの

振幅(大きさ)です。

 

 Darwin項の源の論議で見たように,電子から見たCoulomb

 ポテンシャルが不鮮明になることから付加的相互作用

 ネルギー:(1/6)(δ)22Vの存在があります。(↓注4-5参照)

 

※(注4-5):(Darwin項の源) 

 相対論的Dirac方程式のFoldy-Wouthuysen変換における

 Darwin項は-{e/8m2}divですが,これはZitterbewegung

 (負エネルギー部分との相互作用運動)の効果です。

   

 電磁場のポテンシャルをV(r)とすると,そのゆらぎは.

 <δV>=<V(+δ)>-<V()>

 =<δ(∂V/∂)+i/2Σi,jδriδr)(∂2V/∂ri∂r))>

 ~ (1/6)(δ)22V ~ {1/6m2}∇2Vです。

  

 =-∇Vより,<δV>=-{1/6m2}divですから,

 これは係数の違いを除き,Darwin項:-{e/8m2}div

 を表わしています。

 

 (注4-5終わり)※

 

 それ故,これによる電子に対するエネルギーレベルの変化を

 Lamb=Shiftと同定してΔEn(Lamb)と書けば,

 

 (r)=-Zα/rで2(r)=4πZαδ3()なので,

 最低次では,

 

ΔEn(Lamb)=(1/6)<(δ)2>∫dΨn()∇2V(r)Ψn()

(2π/3)Zα<(δ)2>|Ψn(0)|2となります。

 

そして,<(δ)2>を評価するために,電子を1つの荷電粒子として

古典的非相対論的扱いをします。

 

 原子の中で平衡点0のまわりでの振動0に対する

 運動方程式は,d2)/dt2=e/mです。

 

 ただしはゆらぎ電場です。

 

 δを調和振動子の集まりにFourier展開すると,角振動数ωの

 Fourier振幅:δωに対しては,δω=-eω/(mω2)です。

(※2ωexp(-iωt)}/dt2=eωexp(-iωt)/m ※)

 

 よって,δωの平均二乗振幅は,

 <(δω)2>={e2/(m2ω4)}<ω2> です。

 

故に,このFourier成分δωを,ωとω+dωの間の

振幅の密度とすれば,<(δ)2>=∫<(δω)2>dω

=(e2/m2)∫dω<ω2>/ω4 です。

 

 一方,平均二乗場の強さを見るために,真空場のエネルギー

 を考えると,これは,hc=h/(2π)=1の自然単位で,

 (ε0/2)∫(22)d=Σλ=12Σkω/2 となります。

  

 Σλ=12のλの2つの値は横波の2成分を意味し,和Σkは対象となる

 系の大きな体積内のあらゆるモードに対応します。

  

対象となる系の体積を一辺Lの立方体の箱でモデル化すると,

体積はL3=∫dでΣk={L3/(2π)3}∫dです。

 

そして,自由電磁波ではε02ε02であり,

c=1の自然単位ではω=||なので,

<ε02>=(1/L302=2{1/(2π)3}∫d(ω/2)

={1/(2π2)}∫0ω3dω です。

 

他方,<2>=∫dω<ω2>ですから,上式から

ω2>=ω3/(2π2ε0)を得ます。

   

これを<ω)2>={e2/(m2ω4)}<ω2>に代入して,

結局,<(δ)2>=∫0dω<(δω)2

={e2/(2π2ε02)}∫0dω/ω

が得られます。

 

 この式では,電子の近似の扱いの粗さから,因子:

 ∫0dω/ωが,その積分域の両端で発散します。

 

 こうした事態は正確な水素様原子に局所化された電子の相対論的扱

 いでは生じない困難です。

 

 すなわち,Bohr半径 ~ 1/(mZα)よりも大きい波長λは効かない

 と考えられます。

 

 それは,この典型的な原子サイズに対応する誘導発振に対する

 振動数ω=2π/λは,ωmin ~ mZαの最小振動数を持つに違い

ないと考えられるからです。

 

 そしてまた電子の相対論的構造に由来するCompton波長1/m~

 の距離にある高振動数の限界もあります。

 

 このZitterbewegung振幅に対応する構造は揺動電子においては

 ωmax~mより大きい振動数が効かないであろうことを示唆して

 います。

 

 そこで∫dω/ω~∫ωminωmaxdω/ω~log{1/(Zα)}と

 近似すれば,真空場の振動の平均二乗振幅の式:

 <(δ)2>={e2/(2π2ε02)}∫dω/ωにより,

 )2> ~ {2α/(πm2)log{1/(Zα)}

 を得ます。

  

 これから,ΔEn(Lamb)=(2π/3)Zα<(δ)2>|Ψn(0)|2

 =(4/3)(Zα2/m2)log{1/(Zα)}|Ψn(0)|2

 ={8/(3π)}(Z4α3/n3)log{1/(Zα)}|(1/2)α2mδl0

 となります。

 

故に,Z=1,n=2,l=0 よりΔEn(Lamb)~ 1000mc/secです。

(mcはmega-cycle)

 

(※ΔEn(Lamb)~4.42×10-25J/sec, ΔEn(Lamb)/h=667mcです。)

 

これは水素原子の2S1/2レベルの観測されるシフトの大部分を説明

しています。

 

P状態(l=1)と,大きいlの状態に対しては原点における波動関数

がゼロなのでδl0因子がありますが,実際にはエネルギーのシフトは

厳密にゼロではないです。

 

しかし,波動関数のゼロ値のため,それらはS状態のシフトより

はるかに小さいです。

 

通常の微細構造との比較方法により,Zitterbewegung構造への

平均二乗ゆらぎ振幅の比:~ 1/m2に対応して,

 

Lamb-Shift項のDarwin項に対する比が,{Zα/(3π)}log{1/(Zα)}

で与えられることが,Hamiltonianを見返して理解されます。

  

量子電磁力学の輻射補正(14)(Lamb Shift)」では,

 

ΔEn {4α(Zα)4/(3πn3)}[log|m/(2E~)}+11/24-1/5]m;

(E~~(Zα)2m)と評価されました。

 

ただし,E~の実際の値はBetheによって計算され,水素原子(Z=1)

についてはE~~ 8.9α2mと見積もられました。

 

という内容のことを書きました。

 

上で別の方法で評価したΔEn(Lamb)

{4Z4α5/(3πn3)log{1/(Zα)}mは,正に

 ΔEn {4α(Zα)4/(3πn3)}[log|m/(2E~)}+11/24-1/5]m

の右辺第1項に一致しています。

 

またまた,Pending・・・

 

参考文献:J.D.Bjorken & S.D.Drell "Relativistic Quantum Mechanics"(McGraw-Hill),

 

岩波講座:現代物理学の基礎(第2版)3「量子力学Ⅰ」(岩波書店)

 

W.E.Lamb and R.C.Rutherford ”Fine Structure of the Hydrogen Atom by a Microwave Method”Phys.Rev.Vol.73,pp241-243

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コメント

このシフト="同一のnとjでもlが異なるときには縮退を破ることは,

このシフト=同一のnとjでもlが異なるときには縮退を破ることは,

投稿: 凡人 | 2013年3月27日 (水) 22時26分

∂I∂j=(1/3)δij∇2 ⇨ ∂i∂j=(1/3)δij∇2
={8/(3π)}(Z4α3/n3)log{1/(Zα)}|(1/2)α2mδl0 ⇨ ={8/(3π)}(Z4α3/n3)log{1/(Zα)}(1/2)α2mδl0
ΔEn ~{4α(Zα)4/(3πn3)}[log|m/(2E~)}+11/24-1/5]m ⇨ ΔEn ~{4α(Zα)4/(3πn3)}[log{m/(2E~)}+11/24-1/5]m

投稿: hirota | 2013年3月27日 (水) 04時14分

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