東電OL殺人事件(続きの続き)
2011年7/21のブログ記事「東電OL殺人事件,冤罪か?」,および8/25の記事「東電OL殺人事件(続き)」の続報です。
8月25日の記事で佐野真一氏のノン・フィクション「東電OL殺人事件」(新潮文庫)を買って読み始めたと書きましたが約一ヶ月で読み終えました。
実は,上野動物園に遠足に行った9月27日の前日26日には読了してスグにでも感想を書こうと思っていたのですが色々と野暮用があってやっと記事を書く気になりました。
読み終えるのに一ヶ月もかかったのは,小説と違って没頭して一気に読むということがなかったのと,目が悪くて老眼鏡に頼ったり,最近は時に不定愁訴のようなモノが起きて読書どころではなくなったりするのが理由です。
さて,東電OL殺人事件に関心を持った理由は冤罪事件であろうということもありますが,被害者の不可解な特殊性に好奇心が湧いたからです。
この事件は,1997年3月に渋谷駅近く(渋谷区神泉)で,円山町界隈で売春婦(街娼)をナリワイとしていたらしい渡邊泰子さん(39歳)が殺害された事件です。
(今生きていれば,まだ53歳ですね。)
そして,近くに住んでいたネパール人のゴビンダ・プラサド・マイナリさん(現44歳,当時30歳)が逮捕され,2001年の一審は無罪でしたが検察控訴後,有罪で無期懲役となり現在も服役中です。
14年間も妻子がいる故郷(ネパール)にも帰れず拘束されています。
どうとでも認定できる情況証拠(でっちあげ?)ばかりで,物的証拠がほとんどないのに,死後10日くらいで発見された死体のトイレに捨てられていた誰のモノかわからない精液の血液型と本当にそんな古い精液から検出可能か疑わしいDNAが,被疑者のそれらと一致したということです。
詳細は,「東電OL殺人事件」→ http://www.alpha-net.ne.jp/users2/knight9/touden.htm などのホームぺージ参照してください。
しかし,最近の鑑定で,その唯一の?物的証拠のDNAも別人のモノらしいということで,冤罪が濃厚です。
でも,本当に驚いたことは,被害者女性が昼間は東電の企画調査室副長で世間でいわれるところのエリートのOLであったということです。
彼女は,当時は(特に東電では)珍しい女性管理職で,その給料による年収も1千万円近くもあったようです。
母と妹との3人暮らしの持ち家自宅通勤で,借金も無いし特別誰かに貢いでいたということも無いらしく,お金に困る理由は全くないと考えられます。(セックスも好きじゃなかったようです。)
それにも関わらず ,毎晩,円山町の街角に立って"夜たか"のように客を引き身体を売っていたという事実です。
殺されていたのは,誰も住んでいないアパートの空室で,買春客の接待に高級料理やラブホテル使うなどのゼイタクはせず,倹約していたらしいです。
一晩で4人というノルマをかけてお得意客はノートに付けていたという几帳面さからも,ほんの気まぐれでの売春でなかったことがわかります。
亡くなった頃は,1回最低2千円で身体を売っていたという事実もあります。
当時は,被害者のこうした特異な状況が,三面記事的話題に上って,映画化もされたらしいですね。
私も野次馬根性で少し興味を持ちましたが,やがて忘れていました。
佐野真一氏は坂口安吾の「堕落論」をしきりに引用していましたが,確かに当時村上龍氏によって書かれた「限りなく透明に近いブルー」という作品が芥川賞を取ったこともあったようで,
モラルにシバられることのない一部の男性と同様,セックスも自由で人間として今を楽しむことは人間の解放にも繋がるというような「翔んでる女」であった,という線もアリかも知れませんが,それは飛躍し過ぎでしょう。
彼女の「堕落」の原因要素としては。
1. 被害者の泰子さんを溺愛していた父親が彼女が20歳のときに,同じ東京電力で重役になる一歩手前の52歳でガンのため亡くなったこと。
(父親は彼女(長女)ベッタリ,一方,母親は妹(次女)と一卵性母娘のような関係で,父の死後,家庭では孤立感があったらしいこと。)
2. 28歳当時には拒食症にかかっていること。
3. 第一志望の父親の出身校である東京大学に受験失敗し,結果,慶応大学に入ったこと。
その結果か?東電をも管理し得る?キャリア官僚になれなかったこと?(しかし国家公務員試験を受けたかどうかも定かではないので,単なる邪推?)
そうした父親のカタキ討ち的要素も有り得るというに過ぎません。.
4.社内エリートにのみ許される?ハーバード大への留学研修etc.でもう1人だけいた女性総合職の同僚に負けたこと。
しかし,この理由3,4は失礼な憶測です。
彼女がこういう過度と思える上昇志向性(出世欲)を持っていたか?については不明ですし,私のような人間には例えば学歴が慶大でも東大でもそれほど違いは感じません。
あくまで憶測であると但し書きありますが,佐野氏の結論めいた話は
"意に染まないと思われる売春行為のノルマは,近親相姦的なエレクトラコンプレックス(ファザコン)を持つ彼女が,亡父が期待したであろう理想の姿になれない自分に対して課した処罰ではないだろうか?"
というものです。
これは,佐野氏と交流のあった精神科医の斉藤学(さいとうさとる)氏の言う"懲罰的超自我"を参照とした論点です。
実際,拒食症患者の中には,そういう懲罰的行動に向かう例があるらしいです。
こうした分析をしても,全ては憶測ですし,本当のところは本人にしかわからない部分が多いでしょう。
イヤ,超自我とでも呼ぶべきものが原因なら,本人が生きていても自分でさえわからないかも知れません。
一種の病気だと仮定して一般的な議論をしても,その他大勢に当てはまることが,天才,またはエスパー的かもしれない特殊な個人に当てはまるかどうかはわかりません。
自分たちがそうであるからといって,他人もそうだろうと思うのは僭越であり,思い上がった行為です。
女性にしては病的なほど体の線が細かったらしいので,普通に考えると精神の病を患っていたとは思います。
拒食症の原因の多くが,ある種の潔癖症にあること,
そして,うつ病の原因の多くは私自身の経験も含め,彼,彼女は"完全主義者"であり自分の完全でない部分があることを異常に悩みこだわるような傾向があることは事実だと思います。
しかし,精神を論じる場合には,誰であろうと,どこまでが性格(人格)に属し,どこからが病気であるという線引きをするのは困難でしょう。
たとえ,本人が生きていて,いくつかの適切なテスト(実験)をしたとしても恐らくは部分的にでも理解するのはかなり無理でしょうね。
さて,被害者の性癖は興味深いけれど,冤罪の方に関心を移動します。
DNA鑑定が誤りという新証拠出たにも関わらず,再審請求通らないようです。
困ったもんだ,日本の警察,検察,司法組織は。。。
一旦,犯人にされると,恐らく無実なのに14年も拘束されてる人間より,自分たちのメンツとか誰が誤認逮捕の責任をとるか?の方が大事なんだろうなあ。
(↑あくまで憶測ですがネ。。(^^;))。。人間的な,あまりにも人間的な!!
PS:この記事が東電スキャンダルの1つであり公序良俗に反するという理由からか(私の被害妄想?)?書いてる途中でフリ-ズして7日朝から3時間も書いてる原稿消えました。
(↑なぜか,この事件のWikiを参照しようとするとフリーズすることわかりました。)
朝10時頃から,記憶をたどり1時間ちょっとでここまで書きました。(11時半になると出かける時間です。)
最近,記事をPendingにすることが多いのは,PCが不調で新規投稿中に消えてしまうことが多々あるからです。
中途半端でも,少なくともアップしておけば,サイバー攻撃でも受けない限りは,書いたモノは消えないと思いますからネ。。。
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