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2011年11月 1日 (火)

水素様原子の微細構造(補遺3-2)

「水素様原子の微細構造(補遺3)」は10/4にアップして以来,Pendingのまま少しずつ追加しながらほぼ1ヶ月が経ちます。

  

どうもサイズが大きくなり過ぎたのが原因らしく,書き加えるたびにフリーズするようになったので二つに分割しました。

 

以下↓は,「補遺3」を分割した前半の「補遺3-1」の続きです。

 

さて,ここまでは粒子の速度v=βがx軸(x1軸)に平行で,μ=(E,)=(E,p,0,0)の特別な場合でした。

   

これを,速度の方向が任意で,μ=(E,)=(E,p1,p2,p3)の場合に一般化することを考えます。

 

時空座標:xμ(x0,)に対するLorentz変換x'μ=aμννは,

粒子の速度v=βがx1軸に平行な場合には,

x'0=γ(x0-βx1),x'1=γ(x1-βx0),

x'2=x2,x'3=x3 ですが,

 

粒子の速度v=βの方向が任意の場合には,

x'0=γ{x0-(βx)},'-γβ0(γ-1)(βx)β2

と書けます。

 

ただし,γ≡1/(1-β2)1/2です。

 

それ故,速度が無限小速度Δβで与えられる無限小Lorentz変換:

μνμν+Δωμν;Δωνμ=-Δωμνでは,

 

Δβがx1軸に平行な場合には,

x'0=x0-Δβx1,x'1=x1-Δβx0,x'2=x2,x'3=x3

より,Δω01=Δω10=-Δβで,それ以外のΔωμνはゼロですが,

  

Δβの方向が任意の場合は,速度Δβの方向余弦を

/v=Δβ/Δβ(cosA,cosB,cosC)とすると,

 

x'0=x0-ΔβcosAx1-ΔβcosBx2-ΔβcosCx3,

x'1=x1-ΔβcosAx0,x'2=x2-ΔβcosBx0,

x'3=x3-ΔβcosCx0

 

です。

 

したがって,   

そこで,変換行列:S=exp{-(i/4)ω(σμνμν)}

= exp{-(1/8)ω[γμν]Iμν}において,σμνμνは,

 

σμνμν=-σ0101-σ0202-σ0303+σ1010+σ2020+σ3030

     =2(σ01cosA+σ02cosB+σ03cosC) と書けます。

 

ここで,σ0k=-σk0=iγ0γk=-iγ0γk=-iαkですから,

σμνμν=-2i(αv)/||=-2i(αβ)/|β|であることがわかります。

 

ω=tanh(-β)=-tanhβ,つまり速度として-=-βをとることにすると,

 

S=exp{-(i/4)ω(σμνμν)}=exp{-(ω/2)(αβ)/|β|} 

=Σn=0{-{(ω/2)(α1β1+α2β2+α3β3)/|β|}nです。

 

ところが,(α1β1+α2β2+α3β3)2=|α|2|β|2+{α121β2+{α232β3+{α313β1=|β|2です。

 

故に,{-{(α1β1+α2β2+α3β3)/|β|}2k=1,かつ

{-{(α1β1+α2β2+α3β3)/|β|}2k+1=-(αβ)/|β|です。

 

そこで,S=cosh(ω/2)-{(αβ)/|β|}sinh(ω/2)

     =cosh(ω/2)[1-{(αβ)/|β|}tanh(ω/2)]

を得ます。

 

 

なので,特にβ±≡β1±iβ2とおけば,

です。

 

このとき,cosh(ω/2)={(E+m)/(2m)}1/2,-tanh(ω/2)=p/(E+m)であり,

-sinh(ω/2)={(E+m)/(2m)}1/2{p/(E+m)}です。

 

粒子の運動量は,=(p1,p2,p3)=mγ=mβγ;γ≡1/(1-β2)1/2ですが,

 

特に,p±≡p1±ip2とおけば,

 

一般のLorentz変換の行列:S=S(a)の陽な表現として,

を得ます。

 

したがって,これに伴う4つの独立な規格化された変数分離解:

Ψ(r)(x)=exp(-iεrpx)w(r)()

    =exp(-iεrpx)Sw(r)(0) (r=1,2,3,4)  

ただし,εr=+1(r=1,2),εr-=-1(r=3.4)

 

を陽に書けば,

 

Ψ(1)(x)={(E+m)/(2m)}1/2exp(-ipx)

     t(1,0,p3/(E+m),p-/(E+m)),

Ψ(2)(x)={(E+m)/(2m)}1/2exp(-ipx)

     t(0,1,p+/(E+m),-p3/(E+m)),

 

Ψ(3)(x)={(E+m)/(2m)}1/2exp(+ipx)

      t(p3/(E+m),p/(E+m),1,0),

Ψ(4)(x)={(E+m)/(2m)}1/2exp(+ipx)

     t(/(E+m),-p3/(E+m),0,1)

  

となります。

  

これらの解:Ψ(r)(x)=exp(-iεrpx)w(r)()の因子w(r)()は,

μμ-εrm)w(r)()=0 を満たします。

 

そこで,w(r)~()≡w(r)+(0とおけば,

(r)~()μμ-εrm)=0 が成立します。

 

さらに,これらは,性質:(r)~()(r')()=δrr'εr,

および,Σr=14εrα(r)()β(r)~()=δαβを持ちます。

 

さて,r=1,2についてはεr=1で,これらは正エネルギーの方程式:

μμ-m)w(r)()=0 の解です。

 

そして,今の表示では,

(1)()={(E+m)/(2m)}1/2 t(1,0,p3/(E+m),p-/(E+m)),

(2)()={(E+m)/(2m)}1/2 t(0,1,p+/(E+m),-p3/(E+m)),

です。

 

これらの第3,4成分は非相対論近似での小成分です。

 

E~mのとき,これら(1),(2)は,w=t[ψ,χ]なる2成分×2の表現に対して,外場のない自由場の非相対論的方程式:χ=(σp)ψ/(2m)

;ψ=t(1,0) or t(0,1)に帰着します。

 

※(注):以前書いたように,

 

電磁場のある場合のDirac方程式:{γμ(i∂μ-eAμ)-m}Ψ=0 or

i(∂Ψ/∂t)={α(-e)+βm-eΦ}Ψにおいて,

4成分スピノールΨをΨ≡t[ψ~,χ~]と書いて,

2つの2成分スピノール:ψ,χに分解すると,

 

i(∂/∂t)t[ψ~,χ~]=(σΠ)t[χ~,ψ~]+eΦt[ψ~,χ~]+mt[ψ~,χ~]となります。ただし,Π-eです。

 

それ故,正エネルギーの静止状態に近いE~mの場合には,

さらに,t[ψ~,χ~]≡exp(-imt)t[ψ,χ]と書けば,

i(∂/∂t)t[ψ,χ]=(σΠ)t[χ,ψ]+eΦt[ψ,χ]-2mt[0,χ]

となります。

 

このとき,小成分χは,i(∂χ/∂t)=(σΠ)ψ+eΦχ-2mχより,

2mχ=(σΠ)ψ+eΦχ-i(∂χ/∂t)を満たします。

ただし,eΦχ-i(∂χ/∂t)<<(σΠ)ψと考えられるので,

χ≡(σΠ)ψ/(2m)とおき,これを大成分の満たす方程式:

i(∂ψ/∂t)=(σΠ)χ+eΦψに代入します。

 

すると,i(∂ψ/∂t)={(σΠ)(σΠ)/(2m)+eΦ}ψとなります。

 

これは,結局,i(∂ψ/∂t)=[(-e)2-e(σB)/(2m)+eΦ]ψ

となって非相対論的な方程式に帰着するわけです。(注終わり※)

 

他方,r=3,4ではεr=^1で,これは負エネルギーの方程式:

μμ+m)w(r)()=0 の解です。

 

そして今の表示では,

(3)()={(E+m)/(2m)}1/2 t(p3/(E+m),p/(E+m),1,0),

(4)()={(E+m)/(2m)}1/2 t(/(E+m),-p3/(E+m),0,1)

です。

 

これは,r=1,2の正エネルギー解とは,大成分と小成分が交替しています。

   

さらに,性質:(r)~()(r')()=δrr'εr,および,Σr=14εrα(r)()β(r)~()=δαβから以下の考察が可能です。

  

すなわち,(r)~()(r')()は1つのLorentzスカラーですが,運動量空間での確率密度:(r)+()(r)()はLorentz不変ではなく,運動量空間でのLorentz収縮を補充する4元ベクトルの第0成分として変換します。

  

つまり,w(r)+r)(r')r')=(E/m)δrr'です。

 

(m/E)=(1-β2)1/2ですが,これはLorentz収縮の因子ですから,

β=0 での微小体積をΔV0とすると,この領域の確率は,

(r')r')(1-β2)1/2ΔV0=δrr'ΔV0となって,

 

密度でなく確率の方は確かに不変量(スカラー)です。

 

(r')r')=(E/m)δrr'ですから,これは同じ空間運動量を持ち,エネルギーだけが正負反対符号の平面波解が,r=1,2,かつr'=3,4,またはその逆なら直交すること:Ψ(r)+(x)Ψ(r')(x)=0 を意味します。

 

(※:何故なら,例えばΨ(1)(x)=w(1)()exp{-i(Et-px)},Ψ(3)(x)=w(3)(-)exp{-i(-Et-px)}は直交します。

 

次に,Σr=14εrα(r)()wβ(r)~()=δαβですが,これは静止系のw(r)(0)では明らかに真です。

 

(r)()=Sw(r)(0)なので,Σr=14εrα(r)()wβ(r)~()=εrαγγ(r)(0)wλ(r)~(0)S-1λβ=Sαγδγλ-1λβ=δαβが従います。

 

この完全性関係に,w~が現われてwが現われないのは,Lorentz変換S:がユニタリでなくS=γ0-1γ0であることの反映です。

 

(※具体的に計算すればわかりますが,空間回転:S=SRに対しては,SR=SR-1(unitary)ですが,運動座標系のブースト変換:S=SLに対しては,SL≠SL-1です。ただしS=γ0-1γ0は常に成立します。)

 

中途半端ですがここで終わります。まだまだ補遺4に続きます。

   

参考文献:J.D.Bjorken & S.D.Drell "Relativistic Quantum Mechanics" (McGrawHill)

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コメント

or
http://t-ikeda.akira.ne.jp/enter/science/phys/relativity/relativity18.pdf
によると、
密度でなく確率の方は確かに不変量(スカラー)です。

密度でなく確率の方は確かにスカラー(不変量)です。

投稿: 凡人 | 2013年4月 4日 (木) 09時40分

密度でなく確率の方は確かに不変量(スカラー)です。

密度でなく確率の方は確かにスカラー不変量です。

投稿: 凡人 | 2013年4月 4日 (木) 00時35分

=Σn=0∞{-{(ω/2)(α1β1+α2β2+α3β3)/|β|}n ⇨ =Σn=0∞{-(ω/2)(α1β1+α2β2+α3β3)/|β|}n
{-{(α1β1+α2β2+α3β3)/|β|}2k=1 ⇨ {-(α1β1+α2β2+α3β3)/|β|}2k=1
{-{(α1β1+α2β2+α3β3)/|β|}2k+1=-(αβ)/|β| ⇨ {-(α1β1+α2β2+α3β3)/|β|}2k+1=-(αβ)/|β|
εr=^1 ⇨ εr=-1

投稿: hirota | 2013年4月 3日 (水) 22時34分

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