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2011年11月22日 (火)

水素様原子の微細構造(補遺5-1)

 またまた,かなり間が空きましたが.「水素様原子の微細構造」(補遺4)」の続きです。

 

 別に考え込んでいたわけではなく,最近は頚椎捻挫もあって単に自分のノートからの転記でPCに向かってキーボードを叩くだけでも,ひどく疲れしょっちゅう中断していたせいです。

 

 今回も,記事全体では長すぎるので2つに分けました。

 

 まずは,前半です。

 

 前回までの自由粒子Dirac方程式の平面波の基本解に関する知見と道具を前提として,さらに先へと進みます。

 

 さて,自由粒子の平面波解の重ね合わせによって局所化された波束(wave-packet)を作ることができます。

 

 重ね合わせの原理(方程式の線形性)により,これらの波束もなお自由粒子Dirac方程式の解です。

 

 まず,正エネルギー解のみを重ね合わせたものは,Ψ(+)(,t)

=∫d3p(2π)-3/2(m/E)1/2±s{b(p,s)u(p,s)exp(-ipμμ)

と表現できます。

 

 展開係数:b(p,s)を単位確率に規格化するため,先述したスピノールの直交関係:w(r)+r)w(r')r')=(E/m)δrr’に訴えます。

 

 これから,u(p,s')u(p,s)=(E/m)δss'ですから,

  

∫Ψ(+)+(,t)Ψ(+)(,t)d3=∫d3pd3p'

{m2/(EE')1/2}∑±s,±s'*(p',s')b(p,s)u(p',s')u(p,s)

∫d3x(2π)-3 exp{i(p'μ-pμ)xμ}

=∫d3(m/E)∑±s,±s'*(p,s')b(p,s)u(p,s')u(p,s)

  

です。

 

 すなわち,規格化は.∫Ψ(+)+(,t)Ψ(+)(,t)d3

 =∫d3p)∑±s,|b(p,s)|2=1 です。

 

 

 次に波束に対する平均currentは速度演算子の期待値で与えられ,

 J(+)=∫(+)+αΨ(+)3xです。

 

 これを評価するに当たって,自由粒子解から形成される4元ベクトルの重要な次の関係式を用います。 

 

 Dirac方程式:(^-m)Ψ=0 の任意の解:Ψ1(x),Ψ2(x)に対し,次の 恒等式が成立します。

 

Ψ2μΨ1={1/(2m)}{Ψ2~p^μΨ1 -(p^μΨ2~)Ψ1}-{i/(2m)}p^ν2μνΨ1) です。

 

※(注1):ab=aμγμνγν=aμν[(γμγν+γνγμ)/2+[γμν]/2]=aμμ-iaμνσμνですから,

 

 (^-m)Ψ1=0,Ψ2~(-^-m)=0 より,

  

 0=Ψ2~(-^-m)Ψ1+Ψ2~(^-m)Ψ1

    =-2mΨ2~Ψ1+Ψ2~ap1-Ψ2~^Ψ

 が成立します。

 

 -2mΨ2~Ψ1

 Ψ2~(aμp^μ-iaμp^νσμν-p^μμ+ip^μνσμ1=0

 です。

 

 故に,aμ(2mΨ2μΨ1)=aμ2~p^μΨ1 -(p^μΨ2~)Ψ1}

 -iaμ2~p^νσμνμΨ1+(p^νΨ2~)σμνΨ1} となります。

 

 これが,任意のaμに対して成立するので,

 2mΨ2μΨ1=Ψ2~p^μΨ1 -(p^μΨ2~)Ψ1}-ip^ν2μνΨ1)

 が成立するわけです。(注1終わり)※

 

 この恒等式は,Gordon-decompositionとして知られています。

  

 これは,Dirac currentを非相対論currentとspin-currentに似た相応currentとの和として表現しています。

 

 特に,Ψ1=Ψ2=Ψの場合には,ΨμΨ={1/(2m)}{Ψ~p^μΨ-

 (p^μΨ~)Ψ}-{i/(2m)}p^ν(Ψ~σμνΨ)が成立するため,

 

 k(+)=∫Ψ(+)~(x)γkΨ(+)(x)d3=∫d3x∫d3pd3p'(2π)-3

 {m2/(EE')1/2}∑±s,±s'[b*(p',s')b(p,s) exp{i(p'-p)x}

 {1/(2m)}u~(p',s'){(p'k+pk)-(p'ν+pν}u(p,s)]

 =∫d3p(pk/E)∑±s,±s’{b(p,s)|2

 

 と書けます。

 

 つまり,(+)=∫Ψ(+)~(x)γΨ(+)(x)d3

 =∫Ψ(+)+(x)αΨ(+)(x)d3x=<α

 =∫d3/E)∑±s,±s’{b(p,s){2=</E>です。

 

 前に与えた規格化によれば,currentは,(+)=<α=</E>

 =<gpと書けるわけです。

 

 gpは波束の群速度(group velocity)です。

 

 ただし,記号:< >は正エネルギー波束のみに関する期待値です。

 

 そこで,正エネルギー解から形成される任意の波束に対するcurrentは,丁度古典論の群速度に一致します。

 

 相応する説明は,非相対論的Schroedinger理論ではよく知られています。

 

 (※:αgp,=m/(1-β2)1/2,E=m/(1-β2)1/2 であり,

 α/Eです。)

 

 こうして,Diracの相対論的理論における重要な違いに到達しました。

 

 非相対論的Schroedinger理論においてcurrentの中に常に出現する速度演算子は/mです。これは定数ベクトルです。

 

 一方,Diracの相対論的理論ではcurrentは運動量に比例しません。

 

 =ΨαΨであり,この場合,速度演算子はopα=γ0γです。

 

(注2):Dirac方程式:(^-m)Ψ=(iγμμ-m)Ψ=0 の行列α,βによる表現は,i(∂Ψ/∂t)=H^Ψ=(-iα∇+βm)Ψ

or i(∂Ψ/∂t)=(αp^+βm)Ψです。

 

 そこで,∂(ΨΨ)/∂t+∇(ΨαΨ)=0 が成立するので,

 確率密度をρ≡ΨΨとし,≡ΨαΨとおけば,

 ∂ρ/∂t+∇=0 という連続の方程式の形になります。

 

 これは,確率P=∫ρd3x∫ΨΨd3xの保存を保証するcurrent密度が

 J=ΨαΨで与えられることを示しています。

 

 連続方程式∂ρ/∂t+∇=0 は,相対論的4次元形式では∂μμ=0 と書けます。Jμは4元電流密度で,Jμ=Ψ~γμΨ=(ρ,)です。

 

 また,自由粒子ではなくて,電磁場Aμ(Φ,)があれば,波動方程式は,

 i(∂Ψ/∂t)=H^Ψ={α(^-e)+βm+eΦ}Ψです。

 

 ^=α(^-e)+βm+eΦなので,

 d/dt=i[H^,]=i[αp^,]=α です。

 

  さらに,π^≡^-eとおけば,H^=απ^+βm+eΦで,

 dπ^/dt=i[H^,π^]+∂π^/∂t=i[H^,π^]-e∂/∂tより,

 

 dπ^/dt=e[α×]を得ます。ただし=-∇Φ-∂/∂t,

 =∇×です。

 

 何故なら,^=-I∇より簡単な計算によって,

 

 [H^,π^]=[H^,^-e]=[α(^-e)+βm+eΦ,^-e]

 =e[Φ,]-e[αp^,]-e[,αp^]

 =-ie[∇Φ+α×(∇×)

 

 となるからです。

 

 そこで,d/dt=α,およびdπ^/dt=e[α×]であり,

 π^=-eは∂L/∂で定義される正準運動量ですから,

 

 αが古典論での粒子速度,または波束の群速度を示す量子演算子opに対応することがわかります。opα=γ0γです。(注2終わり)※

 

 dπ^/dt=e[op×](π^≡^-e)のEhrenfest関係から,自由粒子の運動ではd/dt=0 ですが,速度演算子αは[H^,α]≠0 なので定数ベクトルではありません。

  

(※何故なら,^=α(^-e)+βm+eΦなので

^/dt=i[H^,]=i[αp^,^]=0 ですが,

 

 [α,H^]=i{pjij]+m[αi,β]=2i{pjαiαj-mβαi}

=2i{pi-iσijj-mγi}≠0 です。※)

 

 実際,<α=∫d3p(/E)∑±s,±s’{b(p,s){2=</E>ですから,opα=γ0γの固有関数を作る際,行列αkの固有値は1,つまり光速cに等しいにも関わらず,

  

 </E><1より,その正エネルギー期待値は|<αk|<1を満たしています。

  

 そこで,波束は正エネルギーだけではなくて,一般に負エネルギー解をも含む解である必要があると考えられます。(つづく)

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コメント

{b(p,s){^2=<p/E>+ですから,

{b(p,s)}^2=<p/E>+ですから,

投稿: 凡人 | 2013年4月 9日 (火) 23時54分

=∫d3p)∑±s,|b(p,s)|2=1 ⇨ =∫d3p∑±s,|b(p,s)|2=1
J(+)=∫(+)+αΨ(+)d3x ⇨ J(+)=∫Ψ(+)+αΨ(+)d3x
=∫d3p(pk/E)∑±s,±s’{b(p,s)|2 ⇨ =∫d3p(pk/E)∑±s |b(p,s)|2
=∫d3pp/E)∑±s,±s’{b(p,s){2 ⇨ =∫d3p(p/E)∑±s |b(p,s)|2
<α>+=∫d3p(p/E)∑±s,±s’{b(p,s){2 ⇨ <α>+=∫d3p(p/E)∑±s |b(p,s)|2

投稿: hirota | 2013年4月 9日 (火) 02時34分

 どもTOSHIです。hirotaさん。ご指摘ありがとうございます。手直ししておきます。

 ミスプリだけでなく内容も少し。。

             TOSHI

投稿: TOSHI | 2011年11月25日 (金) 02時21分

>一方,iracの相対論的理論理論ではcurrentは速度に比例しません。

これは直した方が良いのでは?

投稿: hirota | 2011年11月24日 (木) 10時07分

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