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2011年11月23日 (水)

水素様原子の微細構造(補遺5-2)

 ※いやあ。驚きました。

 

 下の科学記事を書いた後の真夜中,なにげにこのブログのアクセス履歴を見てみたら,何と11月21日のアクセス数が1日だけで6672です。

 

 訪問人数も半分の3120です。(大体1人平均2回アクセスですね。)

  

 イツモは平日なら大体300アクセスで訪問者200人くらいですから,アクセス数で約20倍の大爆発。。何が起きたのでしょうか??

 

 23日休日だからいいのですが,目が覚めてしまいました。

 

 カウンターも数日前に56万を超えたばかりだったのに,たちまち57万

を超えています。 

(※300/日×365日で約10万アクセス/年で5年半経ってます。)

 

 前も1000アクセス/日を超えたことはありました。

 

 そのときは,X-JAPANのTOSHI関連の比較的大きいニュースがあったときでしたから,TOSHI違いの勘違いでした。またそうなのかな?

  

 22日も前日の余韻なのか?1537アクセスの736人。

 

 普通,休日祝日は半減しますから,

 今日23日はもっと減るでしょうが。。。。

 

(※記事別アクセスだと11/21は不明ですが,11/22なら2006年3~4月の過去記事「サルにもわかる相対性理論①~⑥」が56%と半分以上で,

 

 特に2006年3/24の本論に入る「サルにもわかる相対性理論②」が最大で40%ですね。ふーむ?)

   

 アクセス増えるのはうれしいけれど???

  

(PS:11月21日は私の母の91回目の誕生日。何事も無ければいいが。)※※ 

   

 さて,水素様原子の微細構造)(補遺5-1)の続き,後半です。

  

 波束を正エネルギー,負エネルギーの両方の重ね合わせに一般化

 します。

 

 Ψ(,t)=∫d3p(2π)-3/2(m/E)1/2±s{b(p,s)u(p,s)

 exp(-ipμμ)+d*(p,s)v(p,s)exp(ipμμ)} です。

 

 これによる全確率を計算すれば,

 ∫Ψ(x)Ψ(x)d3x=∫d3p∑±s{|b(p,s)|2+|d(p,s)|2}

 ですから,

 

 係数,dは,∫d3p∑±s{|b(p,s)|2+|d(p,s)|2}=1

 と規格化されます。

 

(注3):∫Ψ(+)+(x)Ψ(+)(x)d3

=∫d3pd3p'{m2/EE')}1/2±s,±s'[b*(p',s')b(p,s)

(p',s')u(p,s)δ3('-)exp{i(E'-E)t}

 

+b*(p',s')d*(p,s)u(p',s')v(p,s)δ3('+)

exp{i(E'+E)t}+d(p',s')b(p,s)v(p',s')u(p,s)

δ3(p')exp{-i(E'+E)t}

 

+d(p',s')d*(p,s)(p',s')v(p,s)δ3(')exp{i(E-E')t}] です。

 

 右辺のd3p'積分の被積分関数の各項には因子δ3()がある

 ため,'=±よりE'=Eなので,{m2/(EE')}1/2=m/Eで,

  

 exp{i(E'-E)t}=exp{i(E-E')t}=1,かつ

 exp{i(E'+E)t}=exp(2iEt),exp{-i(E+E')t}

 =exp(-2iEt)です。

 

 さらに,u(p,s')u(p,s)=v(p,s')v(p,s)

 =(E/m)δss',

 u(-p,s')v(p,s)=v(p,s')u(-p,s)=0

 ですから,

 

 結局,∫Ψ(x)Ψ(x)d3

 =∫d3p(m/E)∑±s,±s'[b*(p,s')b(p,s)

 u(p,s')u(p,s)+d(p,s')d*(p,s)v(p,s')v(p,s)]

 =∫d3p∑±s{|b(p,s)|2+|d(p,s)|2}

 を得ます。

 

(注3終わり)※

 

 一方,そうした波束Ψのcurrentについては,同様な計算から

 

 k=∫Ψ~(x)γkΨ(x)d3

 =∫d3p(pk/E)∑±s{|b(p,s)|2+|d(p,s)|2}

 +i∑±s,±s'{b*(-p,s')d*(p,s)u~(-p,s')

 σk0v(p,s)exp(2iEt)

 +d(-p,s')b(p,s)v~(p,s')

 σk0u(-p,s)exp(2iEt)}

 

 を得ます。

 

 ただし,E=(2+m)1/2であり,u(-p,s)=u(E,-,s),

 v(-p,s)=v(E,-,s)です。

 

 やや矛盾したnotationですが。。

 

 この表現では,時間に依存する群速度に加えて,振動数:2Eで急速に

 振動する正エネルギーと負エネルギーの交叉する項が出現してい

 ます。

 

振動数は非常に高く2E=2cE/hc>2cm/hc~2×1021sec-1です。

 

こうした形で現われる急速振動は,ドイツ語でZitterbewegung

(ツィッターベベーグング)と呼ばれています。

 

この振動の大きさは,波束中の負エネルギー解の振幅に比例して

います。

 

解のこの現象については,これまでの議論からすぐに何らかの解釈

をすることはできませんが,次のような考察は可能です。

 

自由粒子解の一般形:Ψ(,t)=∫d3p(2π)-3/2(m/E)1/2

 ±s{b(p,s)u(p,s)exp(-ipx)+d*(p,s)v(p,s)

exp(ipx)}は,

 

係数b(p,s),d*(p,s)の時間独立性によって,波束が初期に特に

正エネルギー解のみから形成されていれば,外力のないところでは

負エネルギー成分を持つような発展をしないことは明らかです。

 

しかし,初期において有限な大きさの領域に局在化され,1つの電子

表わすように形成される波束は,必ず負エネルギー解の成分を含み

ます。

 

(※↑ 実は,既に2006年8/8の記事

負エネルギー解と相対論的因果律」で,こうした事情を詳述

しています。)

  

 例えば,Ψ(,0,)=(πd2)-3/4exp{-r2/(2d2)}w(1)(0),

 (r≡||)とします。

 

 これは初期時刻t=0 において,原点r=0の周りの半値幅~dの

 Gauss分布に相当する局在化された波束です。

 

 そこで,t=0 では(πd2)-3/4exp{-r2/(2d2)}w(1)(0)

 =∫d3p(2π)-3/2(m/E)1/2±s{b(p,s)u(p,s)exp(ipx)

 +d*(p,s)v(p,s)exp(-ipx)}です。

 

 そこで,Fourier変換を実行し,

 ∫-∞3xexp{-r2/(2d2)}exp(ilx)

 =(2πd2)3/2exp(-22/2)を用いると,

 

b(p,s)=(m/E)1/2(π/d2)3/4exp(-22/2)u(p,s)w(1)(0),

*(p,s)=(m/E)1/2(π/d2)3/4exp(-22/2)v(p,s)w(1)(0)

 

 です。

 

 故に,Gaussの波束:

Ψ(,0,)=(πd2)-3/4exp{-r2/(2d2)}w(1)(0)の中の

負エネルギー成分の係数d*はゼロではありません。

 

 *はbに相対的に,uの大成分(上成分)に対するvの小成分(上成分)

の比率:~p/(E+m)だけ小さい値になっています。

 

 このことは,運動量がm程度の粒子に対しては負エネルギーの振幅

を評価できることを示しています。

 

 しかし,さらに,今求めた表現から波束は主として||≦1/dを満たす

運動量から形成されると見られます。

 

こうした困難のうちで,有名なパラドックスの1つは,Kleinのparadox

と呼ばれるものです。

 

電子を局所化するためには,望ましい領域に閉じ込める強い外力を

導入する必要があります。

 

例えばエネルギーがEの自由電子をz=0 の左側の領域Iに閉じ込め

たい場合を考えます。

 

電子がz=0 の右側の領域Ⅱの距離dより先には見出されない

ようにしたいなら,領域Ⅱにおける特性幅:πdで振幅が急減少

するように,0≦z≦dの微小区間の中でVが高さV0(>E)まで

非常に鋭く上昇するような形になるはずです。

 

これは,幽閉長さdが~1/mまで縮み,(V0-E)がmより大きくなる

までは,普通の非相対論的Schroedinger理論におけるのと同様です。

 

 相対論で何が生じるかを見るため,下図に見られるような絶壁境界

を持つ静電ポテンシャルを想定して,z方向に沿って左から入射する

運動量(波数),spin-upの1電子の反射currentと透過currentを

計算してみます。

   

 

 領域Ⅰにおける入射波:Ψincと反射波:Ψrefに対する正エネルギー解

は次のように書けます。

 

 Ψinc=aexp(ipzz)t[1,0,pz/(E+m),0],

 Ψref=bexp(-ipzz)t[1,0,-pz/(E+m),0]

 +b'exp(-ikzz)t[0,1,0,pz/(E+m)]です。

 

 何故なら,入射波:Ψincは,w(1)()

t[1,0,pz/(E+m),p/(E+m)]に対応しており,

z方向に沿った解なのでp±=0 ですから,exp(ipx)

=exp(ipzz)です。

 

 また,反射波も自由Dirac方程式の正エネルギー解です。 

 反射波なので,が(0,0,pz)→-=(0,0,-pz)と変わります。

 

 そして,w(2)(-)=t[0,1,-p/(E+m),pz/(E+m)]です。

 

 透過波については,Dirac方程式の一定の外場ポテンシャル

eΦ=V0の存在の下での解ですが,これは単に自由Dirac方程式の解

でのEを(E-V0)におき換えたものです。

 

そこで,領域Ⅱでは'2=(E-V0)2-m2

=(E-m-V0)(E+m-V0)であり,

Ψtrans=dexp(ip'zz)t[1,0,p'z/(E-V0+m),0]

+d'exp(ip'zz)t[0,1,0,-p'z/(E-V0+m)]です。

 

そして,振幅dとd'はcurrent保存によって要求されるポテンシャル

障壁境界における解の連続性条件により,

 

a+b=d,および(a-b)pz/(E+m)=p'z/(E-V0+m)

or,(a-b)=(p'z/pz)(E+m)/(E-V0+m)≡rd,

そして,b'=d',b'pz/(E+m)=-d'p'/(E-V0+m)]より,

b'=d'=0 を満足します。

 

00 で|E-V0|<mなら,波数(運動量)は虚数でp=i||です。

 

これは,領域Ⅱにおける解が距離d>1/mにおいて急減衰する描像

に対応しています。

 

 しかし,電子を閉じ込めるために障壁の高さV0をE+mを超えて

増大させると透過波の方が振動的になります。

 

 透過カレントと反射カレントの比率,透過率と反射率を計算すると,

 

 jtrans/jinc=4r/(1+r)2,

 jref/jinc=(1-r)2/(1+r)2=1-jtrans/jinc

 

 となります。ただし,r=(a-b)/dです。

  

こうした形の結果は,Schroedinger理論での類似した予測

(トンネル効果)を想起させます。

  

 しかし,今は連続性条件が成立し,かつV0>E+m,r<0 のケース

が存在することを観る必要があります。

 

 何故なら,rd=a-b=(p'z/pz)(E+m)/(E-V0+m)

なので,0>E+mならr<0 となるのです。

  

 この場合には,透過率:jtrans/jinc=4r/(1+r)2,反射率:

ref/jinc=(1-r)2/(1+r)2=1-jtrans/jincの式から,

負の透過current,

 

 および,入射currentを超過する反射currentが示され通常の理論の

常識に反する結果が見出されます。

   

では,V0>E+mのケースに領域Ⅰへ,つまり左の方へと動く

領域Ⅱでのcurrentの源(source)は一体何なのでしょうか?

   

また,Compton波長~1/mの中に解を局在化させようとして

障壁ポテンシャルの高さV0を(E+m)より大きく増加させ

ましたが,

 

結局は,目的に反して減衰しない振動解を伴なう結果に終わり

ました。

 

このことも,どのように解釈され得るのでしょうか?

  

これらの疑問への回答は,ただ新たに加わった負エネルギー解を

理解し解釈することのみにより得られると考えられます。

 

それは,1/mに局在化させた波束(例えばGauss分布解)の中には

必然的に負エネルギー解成分を含む必要があるという議論からも

明らかです。

   

前記のcurrentの計算から,こうした短距離では進むという描像は

うまくいかないこともまた等しく明らかです。(Zitterbewegung)

   

こうした疑問は,前期量子電磁気学ともいうべきDiracの空孔理論

(Hole theory)に頼れば,一応は出発点に戻って解決されます。 

   

しかし,その前にエネルギーの単位がmのオーダーで距離の単位が

1/m規模であるような,ポテンシャルがV=V0<E+mで弱い滑らかに

変動する領域での正エネルギー電子に対しても,相対論方程式の意味

を問う必要があります。

  

Dirac方程式,そしてDirac理論の適用により,非相対論的エネルギーの

領域にも新たな展開が期待できる豊富な分野があることにも着目します。

 

そして,ここで初めてFoldy-Wouthuysen変換や水素様原子の束縛状態

におけるエネルギー準位の相対論効果による超微細構造,Lamb-shift

などを論じた,

  

2011年7/17の記事「水素様原子の微細構造(1)」に始まるシリーズへと

回帰することになるわけです。

 

忘却のかなたですが,そもそも補遺を書くようになった動機は,2011年8/11

の「水素様原子の微細構造(4)」の(注13)で書いたZitterbewegungと

Darwin項:-{-e/(8m2)}divの関連を明らかにすることでした。

 

(※(再掲:注13):相対論的Dirac方程式のFoldy-Wouthuysen変換におけるDarwin項は,-{e/(8m2)}divですが,これはZitterbewegung(負エネルギー部分との相互作用運動)の効果です。※)

  

 Darwin項は,-{e/(8m2)}div={1/(8m2)}∇2Vです。

  

 これは,∇~1/(1/m)のCompton波長付近で∇2~m2,V>E+m

 によって強く効く項という意味で,Zitterbewegung効果ということ

 でしょうね,

  

これで「水素様原子の微細構造(補遺)」シリーズは完全に

終了です。

   

残されているのは後はDiracの空孔理論(Hole theory)だけです。

 

一応,乗りかかった船なので,この過渡期的理論についても続く記事

で題名を改め詳しく述べる予定です。 

  

参考文献: J.D.Bjorken & S.D.Drell“Relativistic Quantum Mechanics”(McGraw-Hill)

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コメント

前記のcurrentの計算から,電子が真っ直ぐ進むというよ描像はうまくいかないことは明らかです。(Zitterbewegung)

前記のcurrentの計算から,電子が真っ直ぐ進むという描像はうまくいかないことは明らかです。(Zitterbewegung)

投稿: 凡人 | 2013年4月10日 (水) 23時53分

前記のcurrentの計算から,こうした短距離では進むという描像はうまくいかないこともまた等しく明らかです。(Zitterbewegung)

前記のcurrentの計算から,電子が真っ直ぐ進むというよ描像はうまくいかないことは明らかです。(Zitterbewegung)

投稿: 凡人 | 2013年4月10日 (水) 23時32分

=∫d3p(pk/E)∑±s{|b(p,s)|2+|d(p,s)|2}
 +i∑±s,±s'{b*(-p,s')d*(p,s)u~(-p,s')
 σk0v(p,s)exp(2iEt)
 +d(-p,s')b(p,s)v~(p,s')
 σk0u(-p,s)exp(2iEt)}

=∫d3p[(pk/E)∑±s{|b(p,s)|2+|d(p,s)|2}
 +i∑±s,±s'{b*(-p,s')d*(p,s)u~(-p,s')
 σk0v(p,s)exp(2iEt)
 +d(-p,s')b(p,s)v~(p,s')
 σk0u(-p,s)exp(2iEt)}]

投稿: hirota | 2013年4月10日 (水) 17時56分

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