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2012年1月30日 (月)

相対論的場の量子論(正準定式化)(4)

相対論的場の理論の続きです。

  

今日は,多体系の自由度を連続無限に拡張して場の解析力学を展開し,

正準量子化への道筋を付けます。

  

さて,N個のHermite演算子:qj^(t)(j=1,2..,N)

(Heisenberg表示)と,そのN個の共役運動量演算子:

j^(t)による記述をします。

 

まず,N個の1次元調和振動子の集まりとしては全系のHamiltonian

は,H^=(1/2)∑j=1N(pj^2+ω0j2j^2) です。

 

そして,正準交換関係は[pj^(t),qk^(t)]=-iδjk

(j,k=1,2..,N)で与えられます。

  

古典論の運動方程式は,dj /dt=-∂/∂j[,j]P.B,

 dqj /dt=∂/∂pj[,qj]P.B (j=1,2..,N)です。

  

 初期時刻t=0 における,qj(0),pj(0)の全ての値を与えたとき,

 古典論の運動方程式は系の運動を完全に決定します。

 

 一方,それを量子化した方程式は時間tを陽に書いて,

 dj^(t)/dt=-i[H^,j^(t)],

 dqj^(t)/dt=-i[H^,qj^(t)] (j=1,2..,N)

 です。

 

初期時刻t=0 における座標演算子:pj^,qj^の次の正準交換

関係を満た座標演算子:j^,qj^の行列要素を全て与えたと

き,それらはこの量子動力学の問題を完全に決定します。

 

ただし,それら演算子は任意時刻のそれらと同じ換関係

[pj^(0),qk^(0)]=--iδjk,

[pj^(0),pk^(0)]=[qj^(0),qk^(0)]=0

(j,k=1,2..,N) 

を満たす必要があるので,

 

与えるべき初期行列要素もこれらと無矛盾であるべきです。

   

§1.3 Canonical Formalism and Quantization(正準定式化と量子化 )

 

さらに系の自由度をNからN→∞にすると,謂わゆる場の理論に

なります。

 

すなわち,N個の添字jを持つ一般化座標qj^(t),N→∞で添字

が連続無限個の空間座標の場φ(,t)に変わります。

 

これが,空間の各点で与えられた系の互いに独立な一般化座標である

とするのが,場の理論の考え方です。

 

比較的単純な古典物理学での例としては,弾性運動する弦,膜,流体を

構成する各点での平衡位置からのずれの場などが,考えられます。

 

 この場合,場φ(,t)は(,t)における平衡位置からのずれを

 表わし,∂φ(,t)/∂tはその点での局所速度を示します。

 

 これのアナロジーで,φ^(,t)にqj^(t)の役目を,∂φ^/∂t

 にj^d=dqj^/dtの役目をさせます。

 

 離散ラベルiが連続座標変数に取って代わられるわけです。

 

Heisenberg表示なので,場は時空座標:xμ=(,t)の関数です。

 

そして,Heisenberg表示では,xμ=(,t) or,φ^(,t)の表

現はLorentz共変性という意味を陽に含んでいます。

 

 つまり,場は4元ベクトルxμ=(,t)の関数ですが,座標の

 xμ=(,t) → xμ(,t)=ΛμννなるLorentz変換:

 に伴って,場φ^が,φ → φ’と変換するとき,

 

 φ'(,t)=φ(,t)(Lorentz不変なスカラー)や,

 Lorents群のベクトル表現やスピノル表現の行列Sについて,

 φr(,t)=Srsφs(,t)を満たす4元ベクトルとか,

 スピノルの変換性を持たせて理論をLorentz不変にする上で,

 

 こうした場の演算子という表現方法は便利です。

 

 通常の量子力学では,特別視された時間座標の空間座標に対する唯

 一の優先的な役割の痕跡は,t=0 における初期条件と交換関係を

 与えるときに見られるだけです。

 

­ そして,t=0 という3次元超平面(surface)の選択は,理論における

 1つの非共変(non-covarint)な要素ではありますが,

 

 その上で初期条件と交換関係を特定できる空間的3次元超平面

 (space-like surface)という概念で置き換えることで,こうした

 非共変性も一掃されます。

 

(注4-1):

 空間的(space-like)とはx2≡xμμ=t22≦0 なる点:

 xμ=(,t),または4次元距離を意味します。

 

 ここで用いているc=1という自然単位ではなくて,光速cを陽に

 書いた表現では,この空間的とはt≦||/c,または||≧ct

 ということを意味しています。

 

これは,等号でない場合は,時刻t=0 に原点0 から出た

光でさえ時刻tにには到達不可能であるという事象(event)

を示しています。

 

そして,空間的というのは,どのような慣性座標系を採用しても

不変な性質なので,22≦0 を満たす事象xμ=(,t)は

慣性座標系の取り方:=Λx μ=Λμνν) 次第では,

 

0 となり,μ(,0)なる空間座標のみの点とする

ことが可能であることを意味しています。

 

一方,時間的(time-like)とは,x2=xμμ=t22≧0 なる

μ=(,t),または4次元距離を意味します。

 

光速cを陽に書いた表現では,||≦ct,またはt≧||/cです。

 

これは,時刻t=0 に原点0 から出た光が時刻tに

まで到達可能であること,を示しています。

 

時間的という性質も空間的と同様,Lorentz不変な性質です。

 

22≧0 なので,xμ=(,t)を満たす事象xμ=(,t)

から慣性座標系の取り方 (x=Λx)第第では,0 となり,

μ(0,t)なる時間座標のみの点とすることが可能です。

 

なお,x2=t22=0 と等号の場合は,空間的かつ時間的ですが,

特に光的(light-like)であるといいます。

 

これは,||=ctを意味するので光の軌道ですね。

 

 結局,空間的に離れた光的でない2点:xとx2,つまり

 (x1―x2)2=(t1―t2)2-(12)2<0 のケースでは,

 

 |12|>c(t1―t2)なので,一方が原因で他方が結果になる

 というような因果的意味では,2つの事象x,とx2は全く無関係で

 あるということになります。

 

 下図は,現在をt=0 として,今自分のいる場所を原点=0

 としたとき,過去と未来に自分が存在可能な時間的領域全体と,

 その外側の存在不可能な空間的領域を示す,ct=±||の光

 円錐(light-cone)です。

 

 (※他のホームページからの引用図です。)

    (注終わり※)

 

空間的な超平面は,Minkowski空間上での3次元平面として一意的

決まる平面(=6次元空間)です。

 

そこで,t=0 で初期条件を与えるの代わりに,任意に固定された

空間的平面の上で初期条件や交換条件を与えれば十分となります。

 

 (※共変性を明確に表現した理論形式としては,有名な朝永振一郎の

「超多時間理論]があります。

  

 結局は,特別な慣性系で時間軸に垂直な3次元空間を想定して

 論じるとしても,以上のことに留意すれば一般性を失うことなく,

 理論としては共変的であるということですね。(注4-1終わり※)

 

 空間的な3次元表面σの法線ημは至るところで,時間的:

 η2=ημημ0 であるような距離となります。

 

 さらに,η0>0 であるように向きを選びます。

 

空間的な3次元表面の4次元法線ベクトルが時間的であるということを

理解するには,座標原点におけるそれを想定すれば十分です。

 

すなわち,ηdx=ημdxμ=0,かつdx2=dxμdxμ<0 なら,

η2=ημημ>0 となります。

※(注4-2):以下,これを証明しておきます。

 

 (証明):ημは原点における任意の空間的表面上のベクトル:

 dxμに垂直ですから,dx2=dx3=0 ,つまりx2=x3=0 の

 平面内の空間的微小ベクトルとも垂直です。

  

 この場合μdxμ=η0dx0+η1dx1

 =η0dx0-η1dx1=0 です。

 

然るに,これは,  

0=(η0dx0+η1dx1)2

=(η0dx0)2+(η1dx1)2+2η0dx0η1dx1

 ={(η0)2-(η1)2}{(dx0)2-(dx1)2}+(η0dx1+η1dx0)2

 を意味します。

 

 故に,(η0η0+η1η1)(dx0dx0+dx1dx1)

 =-(η0dx1+η1dx0)2≦0 ですから, dxμが空間的:

 dxμdxμ=dx0dx0+dx1dx1≦0 なら,

 η0η0+η1η1≧0 です。

 

 ところで,時間軸を固定して空間回転のみを行なえば,ベクトル:

 ημの成分η23がゼロになるような座標系が存在するはずで,

 η2=ημημは,こうした空間回転で不変ですから,

 

 結局,任意の空間的dxμに垂直な方向ベクトルημに対して,

 ημημ≧0 (時間的)ということがわかりました。(証明終わり)

(注4-2終わり※)

 

 一般に,物理量を表わす関数が座標のLorentz変換に対し変化しても,

 その関数によって表わされる物理法則の方程式が変換で形を変えな

 いとき,

 

 あるいは,その示す量が4元スカラー,4元ベクトル成分,4元テンソ

 ル成分として変化するとき,共変的(covariant)であるといいます。

 

 一方,関数形と,その示す量も同一の時空点においてLorentz変換に

 よって変化しないとき,不変(invariant)であるといいます。

 

 さて,古典場の理論を量子化する方法は,まず,場の方程式を求める

 ことから始まり,それがわかるとHamiltonの原理からその方程式が

 再生されるLagrangian を求めます。

 

次に,Lagrangianから正準共役運動量が定義できます。

 

そして,"座標=場"と,その共役運動量に交換関係を設定することに

よって量子化の手続きを実行することができます。

 

 この手続くによって,場φj^(,t)とその正準運動量πj^(,t)

 はHilbert空間の状態ベクトルΦに作用する線型演算子

 (=operator:作用素)となります。

 

Φは,場の演算子がその上で定義されているような時空点全体で

時空点に無関係に状態を示すHilbert空間のベクトルです。

 

通常の1粒子量子力学のケースと同じように,Hilbert空間において

状態Φは完全系を形成することを仮定します。

 

すなわち,Diracのbracket記号で表わすと,∑nn><Φn|=1,

または,∫|Φ>dΦ<Φ|=1と仮定します。

 

 1粒子量子力学からのアナロジ-で,大抵の場合,Heisenberg表示

 の状態Φは,場φj^(x)と運動量πj^(x)から形成される,

 Hamiltonian H^の固有状態という形で遭遇します。

 

 つまり,H^(φj^,πj^)Φn=EnΦnという形です。

 

まず,古典質点系力学の運動方程式からLagrangian Lを構築したこと

思い出し,模倣して場の理論でのLagrangian Lを構築します。

 

Newton運動の法則:

i(d2i/dt2)=-(∂/∂qi)V(q1,..,qN) から,

i=1Ni(d2i/dt2)δqi=-∑i=1N(∂V/∂qi)δqi

=-δVです。

 

 次に,粒子軌道として固定した端点を持つ時間区間:[t1,2]

 わたって,これを積分します。

 

 固定端点ということは,δqi(t1)=δqi(t2)=0

 を意味します。

 

すると,∫tit2dt{-∑i=1N(mi(d2i/dt2)δqi-δV)=0  

(ただしδqi(t1)=δqi(t2)=0 ) です。

 

 これが,Hamiltonの原理:δ∫tit2dt{L(qi,dqi/dt)=0

 に一致するようなLを求めればいいわけです。

 

 ところで,

 ∫tit2dt{-∑i=1N(mi(d2i/dt2)δqi}

 =[-∑i=1N(mi(dqi/dt)δqi)] tit2

 tit2dt{∑i=1Ni(dqi/dt)(dδqi/dt)}」

 =∫tit2dt{∑i=1Ni(dqi/dt)δ(dqi/dt)}

 です。

 

 したがって,

 ∫tit2dt{-∑i=1N(mi(d2i/dt2)δqi-δV)

 =∫tit2dt{∑i=1Ni(dqi/dt)δ(dqi/dt)-δV}=0

 と書けますが,

 

 ∑i=1Ni(dqi/dt)δ(dqi/dt)

 =δ{∑i=1N(1/2)mi(dqi/dt)2} ですから,

 

 L=∑i=1N(1/2)mi(dqi/dt)2-Vとおけば,

 δ∫tit2dt{L(qi,dqi/dt)=0 となり,これが作用原理

 (Hamiltonの原理)に一致することがわかります。

 

次に,これと丁度同じ手続きに従う実例として,

 

自由 Klein-Gordon方程式:

(□+m2)φ=(∂2/∂t2-∇2+m2)φ=0 に従う古典場:φ(x)

のケースに.前と同じ手続きを実行します。

 

 (※自由 Klein-Gordon方程式は,E22+m2に,

 E=i(∂/∂t),=-i∇を代入すれば得られます。※)

 

 場φは自由度が無限大の空間座標を添字とするので,座標qi対する

 和:∑が3次元の積分:∫d3に置き換わります。

 まず,(∂2/∂t2-∇2+m2)φ=0 の両辺にxにおける場の

 無限小の変分:δφを掛けます。

 

 変分は,δφ=φ(x)-φ(x) です。

 

 そして,全てのと時間区間:[t1,t2]の上で積分すれば, 

 ∫tit2dt∫-∞3(∂2φ/∂t2-∇2φ+m2φ)δφ=0

 です。

 

 この変分原理でも,φの変分δφはt1,t2では消えるよう制限

 されるとしています。

 

 δφ(,t1)=δφ(,t2)=0  for ∀です。

 

また,実際には系は遠方=±∞からは何の寄与も受けないよう,

暗に局在化されていると想定します。

 

 こうした制限の下で,式:

 ∫tit2dt∫-∞3(∂2φ/∂t2-∇2φ+m2φ)δφ=0 は,

 ∫-∞3tit2dt(∂2φ/∂t2-∇2φ+m2φ)δφ=0

 と同じです。

 

 ∫-∞3tit2dt(∂2φ/∂t2-∇2φ+m2φ)δφ

 =∫-∞3[(∂φ/∂t)δφ]tit2

 -∫-∞3tit2dt(∂φ/∂t)δ(∂φ/∂t)

 -∫tit2dt∫-∞2(∇φ)δφ

 +∫tit2dt∫-∞3{∇φδ(∇φ)+m2φδφ}

 

 =-δ∫tit2dt∫-∞3{(1/2)(∂φ/∂t)2

 -(1/2) (∇φ)2-(1/2)m2φ2}=0

 です。

 

 したがって,

 (φ,∂μφ)≡(1/2)(∂φ/∂t)2-(1/2)(∇φ)2-(1/2)m2φ2

 (1/2){(∂φ/∂xμ)(∂φ/∂xμ)-m2φ2}

 とおけば,δ∫tit2-∞(φ,∂μφ)d4x=0

 を得ます。

 

 ただし,∂μφ≡∂φ/∂xμ,∂μφ≡∂φ/∂xμとします。

 

(※ Hamiltonの最小作用の原理における,このLagrangianの符号の

 選択は後の定式化に従って正当化されます。※)

  

(φ,∂μφ)は,φとその1次導関数のLorentz不変な関数形を

しています。

 

これを,Lagrangian密度(Lagrangian density)といいます。

 

系のLagrangianはL=∫-∞3(φ,∂μφ)で与えられます。

 

今日はここまでにします。

 

参考文献:J.D.Bjorken,& S.D.Drell "Relativistic Quantum Fields"(MacGrawHill)

 

PS:そうでなくても外出から帰ると同じくらいの時間は休まないと

部屋内で動くことも辛いのですが,

 

今は,寒いので風邪を引かぬように,腹筋などの筋肉を緊張させて耐

えている時間が長いいせいか?もっと疲れて,18時前後に帰宅しても

22時近くまで昏睡?してることが多いです。

  

屋明るいままで外出着のまま寝てしまったときには,電話がかかっ

てきたくらいでは起きないみたですね。

 

起きて携帯を見ると,いくつか着信が入ってたりします。

  

話は変わりますが,昨日,ふとドキュメンタリ-番組を見たら,過去の

ビキニ環礁での水爆実験で大漁被曝した福竜丸のせっかく獲った被曝

マグロがもったいないので,いくらか市場に出まわったそうな。, 

 

イヤ,チョット通りすがりで,どの程度の放射線被曝か知らないし,そ

の頃の放射能汚染に対する意識がどの程度かも知らない素人の素朴な

感想で「風評被害」の当てコスリかも知れないですが。。。

   

まあ,例え話ですが,いくら見かけは立派な食品で捨てるのがもったい

なくて,また,売ればお金になりそうだったにしても,毒入り?の食品

とわかっているモノなら,マサカそれを売ったりすることはないと思

います。

  

もちろん,加害者は米国の水爆実験を命令したり実施した当事者であ

って,日本のマグロ船は被害者には違いないですが。。

  

無責任な一過性の感想で,これ以上発展させる気はないです。

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コメント

座標演算子:pj^,qj^の次の正準交換関係を満たす座標演算子:pj^,qj^の行列要素を ⇨ 座標演算子:pj^,qj^の次の正準交換関係を満たす行列要素を
2点:xとx2 ⇨ 2点:x1とx2
2つの事象x,とx2 ⇨ 2つの事象x1とx2
(注終わり※) ⇨ 削除
平面(=6次元空間) ⇨ 平面(=3次元空間)
「超多時間理論]があります。 ⇨ 「超多時間理論」があります。)
この手続くによって ⇨ この手続きによって
∫tit2 ⇨ ∫t1t2

ところでhtmlをspan抜きで表した
∫<sub>t1</sub><sup>t2</sup>
は、僕が使ってるSafariでは
<font size=+3>∫</font><sub>t<sub>1</sub></sub><sup>t<sub>2</sub></sup>
にした方が見栄えが良くなりますが、試してみませんか?

投稿: hirota | 2013年3月19日 (火) 02時16分

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