相対論的場の量子論(正準定式化)(5)
相対論的場の量子論のきです。
前記事の最後では.系のLagrangian密度として,
L(φ,∂μφ)=(1/2){(∂φ/∂xμ)(∂φ/∂xμ)-m2φ2}
=(1/2)(∂μφ∂μφ-m2φ2)を得ました。,
※(注3):φは,Lorentzスカラーなので,∂μφ=∂φ/∂xμ
=(∂φ/∂t,-∇φ)は,反変ベクトルであり,∂μφ=∂φ/∂xμ
=(∂φ/∂t,∇φ)は共変ベクトルです。
故に,(∂φ/∂xμ)(∂φ/∂xμ)=∂μφ∂μφはLorentzスカラー
であり,-m2φ2もLorentzスカラーなので,それらの和のスカラー
倍はLorentzスカラーです。 (注3終わり※)
粒子力学におけるものと同じLagrangian Lは,このLagrangian密度の3次元体積積分によって定義されます。
すなわち,L≡∫-∞∞L(φ,∂μφ)d3xです。
この例だけではなく,一般の理論においても,常に場の方程式は
Lagrangian密度から導かれると仮定します。
作用原理:δJ=δ∫t1t2L(q,dq/dt)dt=0 のアナロジー
として,運動方程式の解である場に対しては,作用Jが停留値をとる
べきことを要求します。
つまり,δ∫t1t2dt∫d3xL(φ,∂μφ)=0 を要求します。
この左辺の変分の計算を積分区間における場φを変化させること
によって実行し,t,1,t2における場φの境界値を固定しておけば,
場の発展を与えるEuer-Lagrange方程式を得ます。
特に,系が単一の場で記述され,Lがφと∂φ/∂xμの関数で
あるような単純なケースに対しては,
作用原理:δ∫t1t2dt∫d3xL(φ,∂μφ)=0 は,
∫t1t2dt∫d3x[L{φ+δφ,(∂φ/∂xμ)+δ(∂φ/∂xμ)}
-L(φ,∂φ/∂xμ)φ]]=0 です。
これは,∫t1t2dt∫d3x[(∂L/∂φ)δφ
+{∂L/∂(∂φ/∂xμ)}δ(∂φ/∂xμ)]=0
と変形されます。
ところがδ(∂φ/∂xμ)=∂(δφ)/∂xμですから,結局,
∫t1t2dt∫d3xδφ[(∂L/∂φ)-(∂/∂xμ){∂L/∂(∂φ/∂xμ)}]
=0 が得られます。
よって,場の方程式=Euer-Lagrange方程式は,
(∂L/∂φ)-(∂/∂xμ){∂L/∂(∂φ/∂xμ)}=0
となります。
こうして得られる方程式は,局所的に各時空店での微分で表現される
微分方程式です。
Lがφ(x)の1次導関数のみを含んでいる限り,場はある微分方程式を
満足し,理論は局所的です。
ここで与えられる波動の正準な発展方式は,長距離に対する"対応原理"
の意味においてのみ適切なものです。(※もしも自然が短距離では非局所
的か,または粒子状であるのなら。。)
全てのケースについて,Lagrangianの選択は場が従う特殊な方程式
によって支配され指定されます。
例えば,スカラー場のLagrangian密度:
L(φ,∂μφ)=(1/2)(∂μφ∂μφ-m2φ2)は,作用原理から
から導かれるEuer-Lagrange方程式がKlein-Gordon方程式に
なるように意図されています。
この他に,特に関心がある例は,Dirac方程式とMaxwell方程式です。
ベクトル,スピノルを含むような,1個より多くの独立な場:
φr(x)(r=1,2,…,N)で記述される系では,作用原理から
N個のEuer-Lagrange方程式:
(∂L/∂φr)-(∂/∂xμ){∂L/∂(∂φr/∂xμ)}=0
(r=1,2,..,N)を得ます。
さて,次の手順に移ります。
テキストに書かれている項目の標題は,
"Canonical Formalism and Quantization Procedure(Analogy of classical particle mechanics)"
これは訳すと,
「正準量子化と量子化手法(古典質点系力学のアナロジー)」です。
場と粒子の力学を平行して扱うため,3次元空間を体積ΔVの
セル(細胞)に分割して,有限(離散)自由度の系の話に戻します。
そうして,j番目の座標φj(t)をj番目のセルΔVjにわたる
場φ(x)=φ(x,t)の平均値と定義します。
つまり,φj(t)≡(1/ΔVj)∫ΔVjd3xφ(x,t)です。
さらに,φjd(t)≡dφj(t)/dt
≡(1/ΔVj)∫ΔVjd3x{∂φ(x,t)/∂t} とします。
こうすると全系のLagrangian:L=∫ΔVjd3xL は,
∑jΔVjL~j(φjd(t);φj(t),φj±1(t),))
と書き直されます。
すると,正準運動量Pは,簡単にPj(t)=∂L/∂φjd(t)
=ΔVj{∂L/∂φjd(t)}=ΔVjπj(t)と書けます。
そこで,系のHamiltonianHは,H≡∑jPj,φjd-L
=∑jΔVj(πjφjd-L~j) です。
ここで,連続体の記法に戻り,φ(x)=φ(x,t)に共役な運動量
を,π(x)=π(x,t)≡∂L(φ,∂μφ)/∂φd(x,t)
で定義します。
すると,H=∑jΔVj(πjφjd-L~j)は,ΔVj→ 0 の連続体極限
では,H=∫d3xH(π(x,t),φ(x,t)),
;H(π(x,t),φ(x,t))≡πφd-L なる形になる
と考えられます。
さて,φj(t)の正準運動量Pj(t)が明示されたので,
多粒子系の量子力学の交換関係[pj^(t),qk^(t)]=-iδjk,
[pj^(t),pk^(t)]=0,[qj^(t),qk^(t)]=0 からの
アナロジーで,
力学変数qj^(t),およびpj^(t)を,それぞれHermite演算子
φj(t),およびPj(t)で置き換える量子化手続:きを行なう
ことで,
交換関係;[φj^(t),φk^(t)]=0,[Pj^(t),Pk^(t)]=0,
および,[Pj^(t),φk^(t)]=-iδjkが自然に得られます。
最後の式は,[πj^(t),φk^(t)]=-iδjk/ΔVjとも
書くことができます。
これらはΔVj→ 0 の連続体極限では,
[φ^(x,t),φ^(y,t)]=0,[π^(x,t),π^(y,t)]=0,
および,[π^(x,t),φ^(y,t)]=-iδ3(x―y)
を意味します。
※(注4):[φj^(t),φk^(t)]=0 より,
∫ΔVjd3x∫ΔVkd3y[φ^(x,t),φ^(y,t)]=0 ですが,
これがΔVj,ΔVkを任意にゼロに近づけるとき常に成立するため,
[φ^(x,t),φ^(y,t)]=0 と結論されます。
同様にして,[π^(x,t),π^(y,t)]=0 も明らかです。
また,[πj^(t),φk^(t)]=-iδjk/ΔVjの左辺のΔVj→ 0 の
極限は,∫ΔVkd3y[π^(x,t),φ^(y,t)]ですから,ΔVk→ 0
では,[πj^(t),φk^(t)]=[π^(x,t),φ^(y,t)]ΔVkです。
他方,右辺のδjk/ΔVjがΔVj→ 0,ΔVk→ 0 のとき,Δ(x,y)ΔVk
になると仮定すれば,Δ(x,y)ΔVk=∫ΔVkd3yΔ(x,y)です。
また,交換関係:[πj^(t),φk^(t)]=-iδjk/ΔVjは,
[π^(x,t),φ^(y,t)]ΔVk=-iΔ(x,y)ΔVk
を意味します。
そして,Δ(x,y)ΔVk=δjk/ΔVjは,k=jのとき,つまりyが
xと空間の同じセルに属するとき,そのときに限って,
∫ΔVkd3yΔ(x,y)=Δ(x,y)ΔVk=ΔVkであり,
それ以外では,∫ΔVkd3yΔ(x,y)=Δ(x,y)ΔVk=0です。
つまり,Δ(x,y)はDirac=のデルタ関数の定義に一致するので,
Δ(x,y)=δ3(x―y)であり,
[π^(x,t),φ^(y,t)]ΔVk=-iΔ(x,y)ΔVk は
[π^(x,t),φ^(y,t)]ΔVk=-iδ3(x―y)ΔVkとなるので
,[π^(x,t),φ^(y,t)]=-iδ3(x―y)を得ます。(注終わり※)
ここまでの手順を要約すると,
π^(x)=∂L/∂φ^d(x)の正準運動量の定義,
そしてHamiltonian,およびHamiltonian密度の定義,:
H^=∫d3xH^(π^(x,t),φ^(x,t)),および
H(π(x,t),φ(x,t))≡πφd-L が与えられ,
これらに正準交換関係:[φ^(x,t),φ^(y,t)]=0,
[π^(x,t),π^(y,t)]=0,[π^(x,t),φ^(y,t)]
=-iδ3(x―y),および運動方程式
を加えれば,正準量子場の理論の基礎が与えられたことに
なります。
次に,いくつかの独立な場φr^(x,t)が記述される物理系
へと一般化するために,各々の場に共役な運動量を
πr^(x,t)≡∂L/∂φr^d(x,t) によって定義します。
そして,系の Hamiltonian密度を,
H^(π1..,,φ1..)≡∑rπr^φr^d-Lとします。
正準交換関係は,[φr^(x,t),φs^(y,t)]=0,
[πr^(x,t),πs^(y,t)]=0 および,
[πr^(x,t),φs^(y,t)]=-iδrsδ3(x―y)
です。
最後に運動方程式は,∂πr^(x,t)/∂t=i[H^,πr^(x,t)],
∂φr^(x,t)/∂t=i[H^,φr^(x,t)]と多体系の問題から
書き写されることがわかります。
ただし,これは証明すべきことではなく,"これこそ場の運動方程式
になるべきである"という前提です。
この正準アナロジーの流れではこちらのHeisenbergの方程式
の方が本質的で方程式としてのPriorityは上です。
この正準定式化では,Euler-Lagrange方程式が場の方程式に
一致するようにLagrangianが意図されて構成された初めから,
Heisenbergの方程式が場の運動方程式に一致すること
が保証されているのです。
今日はここまでにします。
(参考文献:J.D.Bjorken S.D.Drell "Relativistic Quantum Fields"(McGrawHill)
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
相対論的場の量子論のきです。→相対論的場の量子論の続きです。
投稿: 凡人 | 2013年3月19日 (火) 00時06分
-L(φ,∂φ/∂xμ)φ]]=0 です ⇨ -L(φ,∂φ/∂xμ)]=0 です
投稿: hirota | 2013年3月17日 (日) 23時24分
TOSHIさんのブログ楽しくて結構チェックしてるんですよヾ(@^▽^@)ノ実は読者なんです(笑)普段はあんまりコメントとかしないほうなんだけど(照)見てるだけなのもアレかなって思ってメッセしてみました(笑)TOSHIさんに仲良くしてもらえたら嬉しいですヾ(@^▽^@)ノ一応わたしのメアド載せておくので良かったらお暇なときにでもメールくださいヾ(@^▽^@)ノココログやってないからメールしてもらえたら嬉しいですヾ(@^▽^@)ノまってるねえヾ(@^▽^@)ノ
投稿: まりこ | 2012年2月 9日 (木) 16時14分