相対論的場の量子論(正準定式化)(12)
4/17(火)から,急遽,左眼の手術前にインスリン投与のために一週間
早く帝京大付属病院の内科に入院したので,相対論的場の量子論の
続き記事の草稿を用意してアップするばかりだったのですが,アッ
プしても十分な校正,編集の余裕がないと考えて,Pendingにしてい
ました。
退院後のアレコレが一段落したので,それをアップしておきます。
まず,前記事までのエッセンスを要約します。
Klein―Gordon方程式:(□+m2)φ^=0,つまり,
(∂μ∂μ+m2)φ^=(∂2/∂t2-∇2+m2)φ^=0 に従う
自由実スカラー場の演算子:φ^(x,t)は,
演算子の展開係数:a^(k),a^+(k)によって,
φ^(x)=φ^(x,t)
=∫d3k{a^(k)fk(x)+a^+(k)fk*(x)}
と基本平面波によるFourie積分展開形に表わされます。
ただし,fk(x)=fk(x,t)≡(2π)-3/2(2ωk)-1/2exp(-ikx)
=(2π)-3/2(2ωk)-1/2exp(ikx-iωkt),
fk*(x)=fk*(x,t)≡(2π)-3/2(2ωk)-1/2exp(ikx)
=(2π)-3/2(2ωk)-1/2exp(-ikx+iωkt) であり,
それぞれ,正,負振動数を持つ平面波解です。
これらは,Klein―Gordon方程式の基本解なので,角振動数
ωkは,ωk≡(k2+m2)1/2 なる関係式で定義されています。
よって,φ^(x,t)
=∫d3k(2π)-3/2(2ωk)-1/2[a^(k)exp{i(kx-ωkt)}
+a^+(k)exp{-i(kx-ωkt)}]
と書けます。
一方,この自由K;ein^Gordon場のLagrangian 密度Lは,
L=(1/2)(∂μφ^∂μφ^-m2φ^2)で与えられます。
故に,場φ^(x,t)の共役運動量は,π^(x,t)=∂L/∂φ^d
=φ^d(x,t)です。
ただし,φ^d≡φ^dot=∂φ^/∂t=∂φ^/∂x0です。
故に,π(x,t)=∂φ^(x,t)/∂t
=-i∫d3k(2π)-3/2(2ωk)-1/2ωk[a^(k)exp{i(kx-ωkt)}
-a^+(k)exp{-i(kx-ωkt)}]
となります。
さて,前記事の最後では,
φ,π^の正準同時刻交換関係:
[φ^(x,t),φ^(y,t)]=[π^(x,t),π^(y,t)]=0,
および,[π^(x,t),φ^(y,t)]=-iδ3(x-y) と,
a^(k)=i∫d3x{fk*(x,t)∂⇔0 φ^(x,t)}から,
a^(k)の交換関係を導くことができます。
すなわち,
[a^(k),a^+(k')]=∫d3xd3y
[{fk*(x,t)∂⇔0φ^(x,t)},
{fk’(y,t)∂⇔0φ^(y,t)}]
=i∫d3xfk*(x,t)∂⇔fk'(x,t) より,
[a^(k),a^+(k')]=δ3(k-k')です。
同様に,[a^(k),a^(k')]=[a^+(k),a^+(k')]=0
が得られます。
と書きました。
今日のこの記事では,まず,以下の(注12-1)として,
この交換関係の証明から始めます。
※(注12-1):まず,a^(k)=∫d3xfk*(x,t){ωkφ^(x,t)
+iφ^d(x,t)}で,φ^d(x,t)≡∂φ^(x,t)/∂tであり,
ωkは実数で,φ^+=φ^,φ^d+=φ^dですから,
a^+(k)=∫d3xfk(x,t){ωkφ^(x,t)-iφ^d(x,t)}
です。
そして,fk(x,t)=(2π)-3/2(2ωk)-1/2exp(ikx-iωkt),
fk*(x,t)=(2π)-3/2(2ωk)-1/2exp(-ikx+iωkt),
ωkfk(x,t)=i∂fk(x,t)/∂t ですから,
a^+(k)=∫d3xfk(x,t){ωkφ^(x,t)-iφ^d(x,t)}
です。
よって,[a^(k),a^+(k')]
=∫d3xd3yfk*(x,t)fk'(y,t)[{ωkφ^(x,t)
+iφ^d(x,t)},{ωk'φ^(y,t)-iφ^d(y,t)}]
=i∫d3xd3yfk*(x,t)fk’(y,t)
×{ωk[φ^(x,t),π^(y,t)]-ωk'[π^(x,t),φ^(y,t)]}
=∫d3xd3yfk*(x,t)fk'(y,t)(ωk+ωk')δ3(x-y)
=(2π)-3(4ωkωk')-1/2∫d3x(ωk+ωk')
×exp{-i(k-k')x+i(ωk-ωk')t}
=δ3(k-k')
を得ます。
一方,[a^(k),a^(k')]=∫d3xd3yfk*(x,t)fk'*(y,t)
[{ωkφ^(x,t)+iφ^d(x,t)},{ωk'φ^(y,t)+iφ^d(y,t)}]
=i∫d3xd3yfk*(x,t)fk'*(y,t)
×{ωk[φ^(x,t),π^(y,t)]+ωk'[π^(x,t),φ^(y,t)]}
=∫d3xd3yfk*(x,t)fk'*(y,t)(ωk-ωk')δ3(x-y)
=(2π)-3(4ωkωk')-1/2∫d3x(ωk-ωk')
×exp{-i(k+k')x+i(ωk+ωk')t}
=0 です。
同様にして,[a^+(k),a^+(k')]=0 も明らかです。
(注12-1終わり)※
この展開係数a^(k),a^+(k)を用いて,自由Klein-Gordon場に
対するエネルギー・運動量を単純でより陽な形に表現することが
できます。
すなわち,まず,
H^=P^0=∫d3x{π^(∂φ^/∂x0)-L}
=(1/2)∫d3k[ωk{a^(k)a^+(k)+a^+(k)a^(k)}]
です。
そして,P^=∫d3xπ^∇φ^
=(1/2)∫d3k[k{a^(k)a^+(k)+a^+(k)a^(k)}]
です。
※(注12-2):まず,自由K;ein^Gordon場のLagrangian密度は,
L=(1/2)(∂μφ^∂μφ^-m2φ^2)で与えられます。
そこで,場φ^(x,t)の共役運動量は,π(x,t)=∂L/∂φ^d
=φ^d(x,t); φ^d≡∂φ/∂t=∂φ^/∂x0 ですから,
Hamiltonian密度をH(π,φ)=π^φ^d -L
=π^φ^d-(1/2){(φ^d)2-(∇φ^)2-m2φ^2}
=(1/2){π^2+(∇φ^)2+m2φ^2} として,
場のエネルギー(Hamiltonian)は,
H^=∫d3x{π^(∂φ^/∂x0)-L}=∫d3xH((π,φ)
と書けます。
すなわち,
H^=(1/2)∫d3x{π(x,t)2+|∇φ(x,t)|2+m2φ(x,t)2}
です。
また.
φ^(x,t)=∫d3k{a^(k)fk(x,t)+a^+(k)fk*(x,t)}
=∫d3k(2π)-3/2(2ωk)-1/2[a^(k)exp{i(kx-ωkt)}
+a^+(k)exp{-i(kx-ωkt)}]
ですから,
π(x,t)=φ^d(x,t)=∂φ^(x,t)/∂t
=-i∫d3k(2π)-3/2(2ωk)-1/2ωk[a^(k)exp{i(kx-ωkt)}
-a^+(k)exp{-i(kx-ωkt)}] です。
さらに,
∇φ^(x,t)=i∫d3k(2π)-3/2(2ωk)-1/2
×[ka^(k)exp{i(kx-ωkt)}
-ka^+(k)exp{-i(kx-ωkt)}]
です。
よって,まず,
π^(x,t)2
=-(1/2)∫d3kd3k'(2π)-3(ωkωk')1/2
[a^(k)a^(k')exp{i(k+k')x-i(ωk+ωk')t}
-a^(k)a^+(k')exp{i(k-k')x-i(ωk-ωk')t}
-a^+(k)a^(k')exp{-i(k-k')x+i(ωk-ωk')t}
+a^+(k)a^+(k')exp{-i(k+k')x+i(ωk+ωk')t}]
より,
∫d3xπ^(x,t)2
=-(1/2)∫d3kd3k'ωk[a^(k)a^(k')δ3(k+k')
exp(-2iωkt)-a^(k)a^+(k')δ3(k-k')
-a^+(k)a^(k')δ3(k^-k')
+a^+(k)a^+(k')δ3(k+k')exp(2iωkt)]
です。
結局,∫d3xπ^(x,t)2
=-(1/2)∫d3kωk[a^(k)a^(-k)exp(-2iωkt)
-a^(k)a^+(k)-a^+(k)a^(k)+
a^+(k)a^+(-k)exp(2iωkt)]
を得ます。
同様に,
|∇φ^(x,t)|2=∇φ^(x,t)∇φ^+(x,t)
=(1/2)∫d3kd3k'(2π)-3(ωkωk')-1/2(kk')
×[a^(k)a^+(k')exp{i(k-k')x-i(ωk-ωk')t}
-a^(k)a^(k')exp{i(k+k')x-i(ωk+ωk')t}
+a^+(k)a^+(k')exp{-i(k+k')x+i(ωk+ωk')t}
+a^+(k)a^(k')exp{-i(k-k')x+i(ωk-ωk')t}]
より,
結局,
∫d3x|∇φ^(x,t)|2
=(-1/2)∫d3k(k2/ωk)[a^(k)a^+(k)
+a^(k)a^(-k)exp(-2iωkt)
+a^+(k)a^+(-k) exp(2iωkt)+a^+(k)a^ (k)]
です。
そして,
∫d3x{m2φ^(x,t)2}
=(-1/2)∫d3k(m2/ωk)[a^(k)a^(-k)exp(-2iωkt)
+a^(k)a^+(k)+a^+(k)a^(k)+
a^+(k)a^+(-k)exp(-2iωkt)]
です。
したがって,全てを総和すると,
∫d3x[π^(x,t)2+|∇φ^(x,t)|2+m2φ^(x,t)2]
=∫d3k[ωk{a^(k)a^+(k)+a^+(k)a^(k)}]
が得られます。
ここで 最後の計算では,
ωk+(k2/ωk)+(m2/ωk)=2ωk,
および,-ωk+(k2/ωk)+(m2/ωk)=0
を用いました。
以上から,
H^
=(1/2)∫d3x{π^(x,t)2+|∇φ(x,t)|2+m2φ(x,t)2}
=(1/2)∫d3k[ωk{a^(k)a^+(k)+a^+(k)a^(k)}]
を得ました。
一方,P^=-∫d3xπ^(x,t)∇φ^(x,t)
です。
π^(x,t)∇φ^(x,t)
=(1/2)∫d3kd3k'(2π)-3(ωk/ωk')1/2
k'[a^(k)a^(k')exp{i(k^+k')x-i(ωk+ωk')t}
-a^(k)a^+(k')exp{i(k-k')x-i(ωk-ωk')t}
-a^+(k)a^(k')exp{-i(k-k')x+i(ωk-ωk')t}
+a^+(k)a^+(k')exp{-i(k+k')x+i(ωk+ωk')t}]
より,
∫d3xπ^(x,t)∇φ^(x,t)=(1/2)∫d3kd3k'k'
[a^(k)a^(k')δ3(k+k')ωkexp(-2iωkt)
-a^(k)a^+(k')δ3(k-k')-a^+(k)a^(k')δ3(k-k')
+a^+(k)a^+(k')δ3(k+k')exp(-2iωkt)]
です。
結局,P^=-∫d3xπ^(x,t)∇φ^(x,t)
=(1/2)∫d3k[k{a^(k)a^(-k)exp(-2iωkt)
+a^(k)a^+(k)+a^+(k)a^(k)
+a^+(k)a^+(-k)exp(2iωkt)}]
です。
ところが,2つの項:∫d3k{ka^(k)a^(-k)},および,
∫d3k{ka^+(k)a^+(-k)} では,
被積分関数:ka^(k)a^(-k),および,ka^+(k)a^+(-k)
がkの奇関数なので,被積分関数の中で,これらの因子を持つ項の
寄与はゼロです。
つまり,前者の場合なら,
∫d3k{ka^(k)a^(-k)においてk=-lと変数置換
すれば,
∫d3k{ka^(k)a^(-k)=-∫d3l{-la^(-l)a^(l)
ですが,
これは∫d3k{ka^(k)a^(-k)
=-∫d3k{ka^(k)a^(-k)を意味しますから,
∫d3k{ka^(k)a^(-k)=0 と結論されるわけです。
したがって,P^=-∫d3xπ^ (x,t)∇φ^(x,t)
=(1/2)∫d3k[k{a^(k)a^+(k)+a^+(k)a^(k)}]
を得ます。
(注12-2終わり※)
長くなるので,取り合えず,ここまでにします。
(参考文献):J.D.Bjorken S.D.Drell "Relativistic Quantum Fields" (MacGrawHill)
| 固定リンク
「114 . 場理論・QED」カテゴリの記事
- くりこみ理論第2部(1)(2020.11.11)
- くりこみ理論(次元正則化)16)(2020.06.13)
- くりこみ理論(次元正則化)(15)(2020.06.07)
- くりこみ理論(次元正則化)(14)(2020.05.31)
- くり込み理論(次元正則化)(13)(2020.05.31)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
=∂φ^/∂x0)ですから → =∂φ^/∂x0ですから
[a^(k)a^(k')δ3(k+k')ωkexp(-2iωkt) → [a^(k)a^(k')δ3(k+k')exp(-2iωkt)
+a^+(k)a^+(k')δ3(k+k')exp(-2iωkt)] → +a^+(k)a^+(k')δ3(k+k')exp(2iωkt)]
投稿: hirota | 2013年3月 6日 (水) 04時40分