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2012年5月 3日 (木)

相対論的場の量子論(正準定式化)(12)

4/17(火)から,急遽,左眼の手術前にインスリン投与のために一週間

早く帝京大付属病院の内科に入院したので,相対論的場の量子論の

続き記事の草稿を用意してアップするばかりだったのですが,アッ

プしても十分な校正,編集の余裕がないと考えて,Pendingにしてい

ました。

 

退院後のアレコレが一段落したので,それをアップしておきます。

 

まず,前記事までのエッセンスを要約します。

 

Klein―Gordon方程式:(□+m2)φ^=0,つまり,

(∂μμ+m2)φ^=(∂2/∂t2-∇2+m2)φ^=0 に従う

自由実スカラー場の演算子:φ^(,t)は,

 

演算子の展開係数:a^(),a^()によって,

φ^(x)=φ^(,t)

=∫d3{a^()fk(x)+a^()fk(x)}

 と基本平面波によるFourie積分展開形に表わされます。

 

ただし,fk(x)=fk(,t)≡(2π)-3/2(2ω)-1/2exp(-ikx)

=(2π)-3/2(2ω)-1/2exp(ikx-iωt),

 

k(x)=fk(,t)≡(2π)-3/2(2ω)-1/2exp(ikx)

=(2π)-3/2(2ω)-1/2exp(-ikx+iωt) であり,

  

それぞれ,正,負振動数を持つ平面波解です。

  

これらは,Klein―Gordon方程式の基本解なので,角振動数

ωは,ω≡(2+m2)1/2 なる関係式で定義されています。

 

よって,φ^(,t)

=∫d3(2π)-3/2(2ω)-1/2[a^()exp{i(kx-ωt)}

+a^()exp{-i(kx-ωt)}]

と書けます。

 

一方,この自由K;ein^Gordon場のLagrangian 密度は,

=(1/2)(∂μφ^∂μφ^-m2φ^2)で与えられます。

 

故に,場φ^(,t)の共役運動量は,π^(,t)=∂/∂φ^d

=φ^d(,t)です。

 

ただし,φ^d≡φ^dot=∂φ^/∂t=∂φ^/∂x0です。

 

故に,π(,t)=∂φ^(,t)/∂t

=-i∫d3(2π)-3/2(2ω)-1/2ω[a^()exp{i(kx-ωt)}

-a^()exp{-i(kx-ωt)}] 

となります。

 

さて,前記事の最後では,

 

φ,π^の正準同時刻交換関係:

[φ^(,t),φ^(,t)]=[π^(,t),π^(,t)]=0,

および,[π^(,t),φ^(,t)]=-iδ3() と,

  

a^()=i∫d3{fk(,t)∂0 φ^(,t)}から, 

a^()の交換関係を導くことができます。

  

すなわち,

[a^(),a^(')]=∫d33

[{fk(,t)∂0φ^(,t)},

{f(,t)∂0φ^(,t)}]

=i∫d3k(,t)∂'(,t) より,

 

[a^(),a^(')]=δ3(')です。

 

同様に,[a^(),a^(')]=[a^(),a^(')]=0

が得られます。

 

 と書きました。

  

 今日のこの記事では,まず,以下の(注12-1)として,

 この交換関係の証明から始めます。

  

(注12-1):まず,a^()=∫d3k(,t){ωφ^(,t)

 +iφ^d(,t)}で,φ^d(,t)≡∂φ^(,t)/∂tであり,

 ωは実数で,φ^=φ^,φ^d+=φ^dですから,

 

 ^()=∫d3k(,t){ωφ^(,t)-iφ^d(,t)}

 

 です。

 

 そして,fk(,t)=(2π)-3/2(2ω)-1/2exp(ikx-iωt),

 fk(,t)=(2π)-3/2(2ω)-1/2exp(-ikx+iωt),

 ωk(,t)=i∂fk(,t)/∂t ですから,

 

^()=∫d3k(,t){ωφ^(,t)-iφ^d(,t)}

です。

 

よって,[a^(),a^(')]

=∫d33k(,t)f'(,t)[{ωφ^(,t)

+iφ^d(,t)},{ω'φ^(,t)-iφ^d(,t)}]

 

i∫d33k(,t)f(,t)

×[φ^(,t),π^(,t)]-ω'[π^(,t),φ^(,t)]}

=∫d33k(,t)f'(,t)(ω+ω'3(-y)

 

(2π)-3(4ωω')-1/2∫d3+ω')

×exp{-i(')+i(ω-ω')t}

=δ3(')

 

を得ます。

 

一方,[a^(),a^(')]=∫d33k(,t)f'(,t)

 [φ^(,t)+iφ^d(,t)},{ω'φ^(,t)+iφ^d(,t)}]

 

 =i∫d33k(,t)f'(,t)

 ×[φ^(,t),π^(,t)]+ω'[π^(,t),φ^(,t)]}

 

 =∫d33k(,t)f'(,t)(ω-ω'3(-y)

 

 =(2π)-3(4ωω')-1/2∫d3-ω')

 ×exp{-i(')+i(ω+ω')t}

 =0 です。

 

同様にして,[a^(),a^(')]=0 も明らかです。

 

(注12-1終わり)※

 

この展開係数a^(),a^()を用いて,自由Klein-Gordon場に

対するエネルギー・運動量を単純でより陽な形に表現することが

できます。

 

すなわち,まず,

H^=P^0=∫d3{π^(∂φ^/∂x0)-}

=(1/2)∫d3{a^()a^()+a^()a^()}]

です。

  

そして,^=∫d3π^∇φ^

=(1/2)∫d3[{a^()a^()+a^()a^()}]

です。

 

(注12-2):まず,自由K;ein^Gordon場のLagrangian密度は,

 L=(1/2)(∂μφ^∂μφ^-m2φ^2)で与えられます。

 

 そこで,場φ^(,t)の共役運動量は,π(,t)=∂/∂φ^d

 =φ^d(,t); φ^d≡∂φ/∂t=∂φ^/∂x0 ですから,

 

Hamiltonian密度を(π,φ)=π^φ^d

π^φ^d-(1/2){(φ^d)2-(∇φ^)2-m2φ^2}

=(1/2){π^2+(∇φ^)2+m2φ^2} として,

 

場のエネルギー(Hamiltonian)は,

^=∫d3{π^(∂φ^/∂x0)-}=∫d3((π,φ)

と書けます。

 

すなわち,

H^=(1/2)∫d3{π(,t)2+|∇φ(,t)|2+m2φ(,t)2}

です。

 

また.

φ^(,t)=∫d3{a^()fk(,t)+a^()fk(,t)}

=∫d3(2π)-3/2(2ω)-1/2[a^()exp{i(kx-ωt)}

+a^()exp{-i(kx-ωt)}]

ですから,

 

π(,t)=φ^d(,t)=∂φ^(,t)/∂t

=-i∫d3(2π)-3/2(2ω)-1/2ω[a^()exp{i(kx-ωt)}

-a^()exp{-i(kx-ωt)}] です。

 

さらに, 

∇φ^(,t)=i∫d3(2π)-3/2(2ω)-1/2

×[a^()exp{i(kx-ωt)}

^()exp{-i(kx-ωt)}] 

です。

 

よって,まず,  

π^(,t)2

=-(1/2)∫d33'(2π)-3ω')1/2

[a^()a^(')exp{i(')-i(ω+ω')t}

-a^()a^(')exp{i(')-i(ω-ω')t}

-a^()a^(')exp{-i(')+i(ω-ω')t}

+a^()a^(')exp{-i(')+i(ω+ω')t}]

より,

 

∫d3π^(,t)2

=-(1/2)∫d33'ω[a^()a^(')δ3(')

exp(-2iωt)-a^()a^(')δ3(')

-a^()a^(')δ3(^-')

+a^()a^(')δ3(')exp(2iωt)]

です。

 

結局,∫d3π^(,t)2

=-(1/2)∫d3ω[a^()a^(-)exp(-2iωt)

-a^()a^()-a^()a^()+

a^()a^(-)exp(2iωt)]

を得ます。

 

同様に,

|∇φ^(,t)|2=∇φ^(,t)∇φ^(,t)

=(1/2)∫d33'(2π)-3ω')-1/2(')

×[a^()a^(')exp{i(')-i(ω-ω')t}

-a^()a^(')exp{i(')-i(ω+ω')t}

 

+a^()a^(')exp{-i(')+i(ω+ω')t}

+a^()a^(')exp{-i(')+i(ω-ω')t}]

より,

 

結局,

∫d3|∇φ^(,t)|2

=(-1/2)∫d3(2)[a^()a^()

+a^()a^(-)exp(-2iωt)

+a^()a^(-) exp(2iωt)+a^()a^ ()]

です。

 

そして,

∫d3{m2φ^(,t)2}

=(-1/2)∫d3(m2)[a^()a^(-)exp(-2iωt)

+a^()a^()+a^()a^()+

a^()a^(-)exp(-2iωt)]

です。

 

したがって,全てを総和すると,

∫d3[π^(,t)2+|∇φ^(,t)|2+m2φ^(,t)2]

=∫d3{a^()a^()+a^()a^()}]

が得られます。

 

ここで 最後の計算では,

ω+(2)+(m2)=2ω,

および,-ω(2)+(m2)=0 

を用いました。

 

以上から,

H^

=(1/2)∫d3{π^(,t)2+|∇φ(,t)|2+m2φ(,t)2}

(1/2)∫d3{a^()a^()+a^()a^()}]

を得ました。

 

一方,^=-∫d3π^(,t)∇φ^(,t) 

です。

 

π^(,t)∇φ^(,t)

=(1/2)∫d33'(2π)-3')1/2

'[a^()a^(')exp{i(^+')-i(ω+ω')t}

-a^()a^(')exp{i(')-i(ω-ω')t}

 

-a^()a^(')exp{-i(')+i(ω-ω')t}

+a^()a^(')exp{-i(')+i(ω+ω')t}]

 

より,

 

∫d3π^(,t)∇φ^(,t)=(1/2)∫d33''

[a^()a^(')δ3(')ωexp(-2iωt)

-a^()a^(')δ3(')-a^()a^(')δ3(')

+a^()a^(')δ3(')exp(-2iωt)]

 

です。

 

結局,^=-∫d3π^(,t)∇φ^(,t)

=(1/2)∫d3[{a^()a^(-)exp(-2iωt)

+a^()a^()+a^()a^()

+a^()a^(-)exp(2iωt)}]

です。

 

ところが,2つの項:∫d3{a^()a^(-)},および,

∫d3{a^()a^(-)} では,

 

被積分関数:a^()a^(-),および,a^()a^(-)

の奇関数なので,被積分関数の中で,これらの因子を持つ項の

寄与はゼロです。

 

つまり,前者の場合なら,

∫d3{a^()a^(-)において=-と変数置換

すれば,

∫d3{a^()a^(-)=-∫d3{-a^(-)a^()

ですが,

 

これは∫d3{a^()a^(-)

=-∫d3{a^()a^(-)を意味しますから,

∫d3{a^()a^(-)=0 と結論されるわけです。

 

したがって,^=-∫d3π^ (,t)∇φ^(,t)

(1/2)∫d3[{a^()a^()+a^()a^()}]

 を得ます。

 

(注12-2終わり※)

 

長くなるので,取り合えず,ここまでにします。

 

(参考文献):J.D.Bjorken S.D.Drell "Relativistic Quantum Fields" (MacGrawHill)

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コメント

=∂φ^/∂x0)ですから → =∂φ^/∂x0ですから
[a^(k)a^(k')δ3(k+k')ωkexp(-2iωkt) → [a^(k)a^(k')δ3(k+k')exp(-2iωkt)
+a^+(k)a^+(k')δ3(k+k')exp(-2iωkt)] → +a^+(k)a^+(k')δ3(k+k')exp(2iωkt)]

投稿: hirota | 2013年3月 6日 (水) 04時40分

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