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2012年5月31日 (木)

相対論的場の量子論(正準定式化)(18)

 久しぶりに,相対論的場の量子論の続きです。

 

 余談ですが,昨日5/30(水)は休みを取り,午前中早くに帝京大学病院に行き,左眼手術から退院後の2度目の眼科診察を受けてきました。

 

 まだ,左眼に手術時の糸が全部は溶け切らず残ってるらしいですが.術後の経過は順調ということでした。

 

 確かに,AVを見ると肝心なところが前よりよく見えるようです。

    

 帝京大病院まで行ったついでに,内科でインスリン治療関係で無料で借りていた血糖値測定器を返してきました。

 

 私の内科の外来診療は,循環器(心臓・血管)内科,糖尿内科とも,完全にお]茶の水の順天堂医院に移り.帝京大で返したのと同等な血糖測定器の代替器は,既に順天堂医院でもほぼ無期限で借りています。

  

 さて,前回での予告通り荷電スカラー(spinがゼロ)粒子に入ります。

 

§2.5 荷電スカラー場(The Charged Scalar Field)

 

 これまでは,専ら,単一の自由な実Klein-Gordon場の量子論について述べてきました。

 

 この結果は,荷電粒子の場の記述に適用することができます。

 

 荷電1粒子は次のような複素波動関数によって記述できます。

 

すなわち1(x),φ2(x)を実数値関数として,複素数値をとる波動関数φ(x)を,φ(x)≡(1/√2){φ1(x)+iφ2(x)}で定義します。

 

そのため,まず,2つの相互作用しない実スカラー場:φ1^(x),

φ2^(x)の存在を想定します。

 

これらが従う場の方程式は,同じ質量mの自由 Klein-Gordon方程式:

(□+m21^(x)=0 ,(□+m22^(x)=0 です。

  

ただし,□はd'Alembertianと呼ばれる線形の微分演算子で,

□≡∂2/∂t2-∇2=∂μμで定義されます。

 

ここで,∂μ=∂/∂xμ,∂μ=∂/∂xμです。

 

これは,次のようなLagrabgian密度から導かれます。

 

すなわち,

=(1/2):∂μφ1^∂μφ1^-m2φ1^2+∂μφ2^∂μφ2^-m2φ2^2:

です。

 

ただし,: :は以前に定義した,正規順序積(normal-ordered product)

意味する記号です。

 

このLagrangian 密度から,実際にEuler-Lagrange方程式:

/∂φj^-∂μ{∂/∂(∂μφj^)}=0 (j=1,2)を作れば,先の2つのKlein-Gordon方程式が得られるのを確かめることができます。

 

これは,12;j=(1/2):∂μφj^∂μφj^-m2φj^2:

(j=1,2)と表現すれば,今までの単一の実スカラー場の論議から

明らかです。

 

正準共役運動量は1^≡∂/∂(∂0φj^)=φ1^d=∂φ1^/∂t,

π2^≡∂/∂(∂0φ2^)=φ2^d=∂φ2^/∂tです。

 

そして,正準交換関係は,[φj^(x),φk^(y)]=iδjkΔ(x-y)

(j,k=1,2)で与えられます。

 

(注18-1):先に,単一場で示したように,この一般的交換関係から次の

 同時刻交換関係が得られます。

 

j^(,t),φk^(,t)]=iδjkΔ(,0)=0 ,および,

 

j^(,t),φk^(,t)]=iδjk[∂Δ(x-y)/∂x0]μx0=yo

=iδjkδ3(),(j,k=1,2)です。(注18-1終わり)※

  

系のLagrangianをLとするとき,L=∫3で定義される

Lagrangian密度が,12という2項の和の形なので,

 

系のHamiltonian:H^=∫3=∫:Σjπjj^ d:d3

から定義されるHamiltonian密度12という2項の

和の形になります。

 

そして,単一スカラー場でのエネルギー・運動量4元ベクトル演算子

のPμ^=∫d3μa^()a^()なる形式と同様,今の独立な

2個のスカラー場でも,エネルギー・運動量4元ベクトルは,

 

μ^=P1μ^+P2μ^;

1μ^=∫d3μ1^()a1^()

2μ^=∫d3μ2^()a2^()

と表わされることがわかります。

 

ただし,k0=ωk,P0^=H^です。

 

(注18-2):Hamiltonian密度の引数を具体的に書くと,

 P0^=H^=∫d31^,π2^,φ1^,φ2^),

 

 H1^,π2^,φ1^,φ2^)=π11^d+π22^d12 です。

 2

 そこで,1^,π2^,φ1^,φ2^)

 =(1/2){π1(,t)2+|∇φ1^(,t)|2+m2φ1^(,t)2}

 +(1/2){π2(,t)2+|∇φ2^(,t)|2+m2φ2^(,t)2}

 です。

  

また,運動量はPj^=∫d31(,t){∂φ1^(,t)/∂xj}

+π2(,t){∂φ2(,t)/∂xj}]ですから,

 

φ1^(x)=∫d3(2π)-3/2(2ωk)-1/2

{a1^()exp(-ikx)}+a1^()exp(ikx)},

 

φ2^(x)=∫d3(2π)-3/2(2ω)-1/2

{a2^()exp(-ikx)}+a2^()exp(ikx)}

 

とFourier積分で表現すると,

 

単一の実スカラー場での導出と同様な手順により,

^=(1/2)∫d3ωk{1^()a1^()+a1^()a1^()

+a2^()a2^()+a2^()a2^()},

 

および,j^=(1/2)∫d3j{1^()a1^()

+a1^()a1^()+a2^()a2^()+a2^()a2^()}

を得ます。

 

そして,正規順序積を取った再定義により,

 

結局,μ^=∫d3μ{1^()a1^()+a2^()a2^()}

が得られます。

 

さらに.同時刻の正準交換関係:

i^(,t),φj^(,t)]=iδijδ3(),および,

i^(,t),φj^(,t)]=[πi^(,t),πj^(,t)]=0

から,

 

やはり,単一の実スカラー場の場合と同様にして,交換関係::

[ai^(),aj^(')]=δijδ3('),

[ai^(),aj^(')]=[ai^(),aj^(')]=0

(j,k=1,2) を得ます。

 

そこで,Pμ^=∫d3Σjμj^()aj^()ですが,

 

∫d3μ1^()a1^()の固有状態は,

Φm(1)(m!)-1/2∫d31..d3m1^(1)..a1^(m0(1)

と表わすことができます。

 

ただし0(1)は,任意のに対するa1^()について,

1^(0(1)=0 となるような,場φ1^についての真空状態

を示すものです。

 

こうして作られた固有状態m(1)の線型結合(重ね合わせ):

Φ(1)=ΣmmΦm(1)の全体は1つのHilbert空間を作ります。

 

これを場1に対して張られるilbert空間と呼ぶことにします。

 

一方,場1の項と同様な方法で,場2の項:

∫d3μ2^()a2^()の固有状態を作り,その線型結合

(重ね合わせ)で,場2に対して張られるilbert空間を作ることが

できます。

  

その基底(固有状態)は,

Φn(2)=(n!)-1/2∫d31..d3n2^(1)..a2^(n0(2)

と書くことができます。

 

Φ0(2),任意のに対するa2^()についてa2^(0(2)=0 となるような,場φ2^についての真空状態を示すものです。

 

ところで,場1に対して張られるHilbert空間の任意のベクトルに

∫d3μ2^()a2^()を作用させてみます。

 

特に,固有状態:Φm(1)

=(m!)-1/2∫d31..d3m1^(1)..a1^(m0(1)に,

∫d3μ2^()a2^()を作用させると,

 

上記の交換関係により,全てのa1^(i)(i=1,2,..,m)と,

2^()a2^()が全てのについて交換するため,

 

Φ0(1)が,場2に対して張られるHilbert空間のベクトルに属さ

ない限り,2^()a2^((1)は何の意味も持たず,定義さえ

されません。

 

そこで,一般のエネルギー・運動量の固有状態では,真空状態:

Φ0をΦ0(1)とΦ0(2)の直積として定義できます。

 

すなわち0≡Φ2(1)×Φ0(2)です。

 

そして,真空だけでなく,個々の固有状態についても,固有状態を

直積により,Φmn≡Φm1)×Φn(2) と定義します。

 

一般の状態ベクトルは,Φ=ΣmnmnΦmn

=Σmnmnm(1)×Φn(2)) となります。

 

固有状態:Φmn≡Φm(1)×Φn(2)を離散的個数表示の形で書けば,

Φ(1)(nk1..nkm..)×Φ(2)(n'k1..n'kn..) です。

 

これは連続的表現では,

{(m!)-1/2∫d31..d3m1^(1)..a1^(m0(1)}

×{(n!)-1/2∫d3'1..d3'n2^('1)..a2^('n0(2)}

 となります。

 

 この式では演算子:a1^(),a1^()は直積記号×の前の項にのみ

 作用し,a2^(),a2^()は後ろの項にのみ作用するように,演算

 が定義されます。

 

 しかし,エネルギー・運動量は場1のみによる項と場2のみによる

 項の単純和です。

 

 新しく作られた状態空間は,それぞれの項の固有状態ベクトルで

 張られる2つのHilbert空間の直積空間としての1つのHilbert空間

 と考えることができます。

 

 ai^(),aj^(')(i,j=1,2)は,i≠jのときには全てが交換

 するという事実から,固有状態を記号的に次のように表わすことが

 できます。

 

 すなわち,(m!n!)-1/2∫d31..d3m3'1..d3'n

[a1^(1)..a1^(m)a2^('1)..a2^('n0

 です。

 

そして,この表現式では,a1(i)とa2^('j)の順序はどの

ように入れ換えても同じであり,任意の順序に取ってよいことは

明らかです。

 

(注18-2終わり)※

 

場1の表わす量子と場2の表わす量子の個数は,相互作用がないとき

には別々に保存されます。

 

そこで,以前の単一の実スカラー場のケースと同じく,個数演算子:

 

1^()≡a1^()a1^(),および,N2^()≡a2^()a2()

を導入し,それらの固有値(個数)によって状態を分類します。

 

特に,今,考察中のケースは2つの実スカラー場1,2が等しい質量m

を持つという特殊な場合である結果として,

 

2つの実場の方程式:(□+m21^=0 ,(□+m22^=0 を,次の1

つの複素場に対する方程式に置き換えることができます。

 

すなわち,φ^≡(1/√2)(φ1^+iφ2^)です。

 

すると,これの複素共役場はφ^≡(1/√2)(φ1^-iφ2^)です。

 

φ^とφ^は同じKlein-Gordon方程式を満足します。

つまり,(□+m2)φ^=0,(□+m2^=0 です。

 

複素場φ^とφ^によって,系のLagrangian密度は,

:∂μφ^∂μφ^-m2φ^φ^:となります。

 

(注18-3):複素場の方程式:(□+m2)φ^=0 ,(□+m2^=0 は,

 実場の方程式:(□+m21^=0,(□+m22^=0 と全く同値です

 から,

 

 複素場のLagrangian密度は,実場のそれ:

=(1/2):∂μφ1^∂μφ1^-m2φ1^2+∂μφ2^∂μφ2^-m2φ2^2:

 に一致します。

 

ところが,φ^=(1/√2)(φ1^+iφ2^),

φ^≡(1/√2)(φ1^-iφ2^)より,

 

φ^φ^=(1/2)(φ1^2+φ2^2)であって,

φ1^=(1/√2)(φ^+φ^),

φ2^=(i/√2)(φ^-φ^)です。

 

故に,μφ1^∂μφ1^+∂μφ2^∂μφ2^

 =(1/2)(∂μφ*^+∂μφ^)(∂μφ^+∂μφ^)

 -(1/2)(∂μφ^-∂μφ^)(∂μφ^-∂μφ^)

  

 =∂μφ^∂μφ^+∂μφ^∂μφ^ です。

 

 φ1^とφ2^が交換するので,φ^とφ^も交換するため,

 ∂μφ^∂μφ^=∂μφ^∂μφ^ですから,結局,

 ∂μφ1^∂μφ1^+∂μφ2^∂μφ2^=2∂μφ^∂μφ^です。

 

以上から,∂μφ1^∂μφ1^-m2φ1^2+∂μφ2^∂μφ2^-m2φ2^2

 =2∂μφ^∂μφ^-2m2φ^φ^です。

 

こうして,

=(1/2):∂μφ1^∂μφ1^-m2φ1^2+∂μφ2^∂μφ2^-m2φ2^2:

から,:∂μφ^∂μφ^-m2φ^φ^:

が導かれました。

 

実際, 変分δφ^がφ^と独立であると考えて,このから変分

原理で得られるEuler-Lagrange方程式:

/∂φ^-∂μ{∂/∂(∂μφ^)}=0 は,

確かに,(□+m2)φ^=0 に一致します。

 

他方, 変分δφ^がφ^と独立であると考えれば,

μ{∂/∂(∂μφ^)}-∂/∂φ^

=(□+m2^=0 を得ます。 (注18-3終わり)※

 

 こうした,複素座標φ^,φ^の正準共役運動量は,

 π^=∂/∂φ^d=φ^d(1/√2)(φ1^d-iφ2^d), 

 π^=∂/∂φ^d=φ^d=(1/√2)(φ1^d+iφ2^d)

 です。

 

 そこで,Hamiltonian密度は,=π^φ^d+π^d

 =π^π^+(∇φ^)(∇φ^)+-m2φ^φ^です。

 

 正準交換関係は[φ^(x),φ^(y)]=[φ^(x),φ^(y)]=0 ,

 [φ^(x),φ^(y)]=iΔ(x-y)です。

 

これから,φ^,φ^の同時刻交換関係,

[φ^(,t),φ^(,t)]=[φ^(,t),φ^(,t)]=0,

 [φ^(,t),φ^(,t)]=iΔ(,0)=0

 が得られます。

 

さらには,ゼロでない同時刻交換関係,

 [π^(,t),φ^(,t)]=[∂φ^^(,t)/∂t,φ^(,t)]

 =i∂Δ(x-y)/∂x0=iδ3(),

 

 そして,[π^(,t),φ^(,t)]=-iδ3()

も得られ,最後に,

 [π^(,t),π^(,t)]=[π^(,t),π^(,t)]=0

 を得ます。

 

(※これらは,交換関係:[φj^(x),φk^(y)]=iδjkΔ(x-y)

 (j,k=1,2),および,複素場の定義:φ^≡(1/√2)(φ1^+iφ2^),

 φ^≡(1/√2)(φ1^-iφ2^)から,容易に示せるので具体的証明は

 割愛します。)

 

草稿は.まだこの続きができているのですが,長くなるので

一旦終わります。

 

(参考文献:J.D.Bjorken S.D.Drell "Relativistic Quantum Fields" (McGrawHill)

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