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2012年5月

2012年5月31日 (木)

相対論的場の量子論(正準定式化)(18)

 久しぶりに,相対論的場の量子論の続きです。

 

 余談ですが,昨日5/30(水)は休みを取り,午前中早くに帝京大学病院に行き,左眼手術から退院後の2度目の眼科診察を受けてきました。

 

 まだ,左眼に手術時の糸が全部は溶け切らず残ってるらしいですが.術後の経過は順調ということでした。

 

 確かに,AVを見ると肝心なところが前よりよく見えるようです。

    

 帝京大病院まで行ったついでに,内科でインスリン治療関係で無料で借りていた血糖値測定器を返してきました。

 

 私の内科の外来診療は,循環器(心臓・血管)内科,糖尿内科とも,完全にお]茶の水の順天堂医院に移り.帝京大で返したのと同等な血糖測定器の代替器は,既に順天堂医院でもほぼ無期限で借りています。

  

 さて,前回での予告通り荷電スカラー(spinがゼロ)粒子に入ります。

 

§2.5 荷電スカラー場(The Charged Scalar Field)

 

 これまでは,専ら,単一の自由な実Klein-Gordon場の量子論について述べてきました。

 

 この結果は,荷電粒子の場の記述に適用することができます。

 

 荷電1粒子は次のような複素波動関数によって記述できます。

 

すなわち1(x),φ2(x)を実数値関数として,複素数値をとる波動関数φ(x)を,φ(x)≡(1/√2){φ1(x)+iφ2(x)}で定義します。

 

そのため,まず,2つの相互作用しない実スカラー場:φ1^(x),

φ2^(x)の存在を想定します。

 

これらが従う場の方程式は,同じ質量mの自由 Klein-Gordon方程式:

(□+m21^(x)=0 ,(□+m22^(x)=0 です。

  

ただし,□はd'Alembertianと呼ばれる線形の微分演算子で,

□≡∂2/∂t2-∇2=∂μμで定義されます。

 

ここで,∂μ=∂/∂xμ,∂μ=∂/∂xμです。

 

これは,次のようなLagrabgian密度から導かれます。

 

すなわち,

=(1/2):∂μφ1^∂μφ1^-m2φ1^2+∂μφ2^∂μφ2^-m2φ2^2:

です。

 

ただし,: :は以前に定義した,正規順序積(normal-ordered product)

意味する記号です。

 

このLagrangian 密度から,実際にEuler-Lagrange方程式:

/∂φj^-∂μ{∂/∂(∂μφj^)}=0 (j=1,2)を作れば,先の2つのKlein-Gordon方程式が得られるのを確かめることができます。

 

これは,12;j=(1/2):∂μφj^∂μφj^-m2φj^2:

(j=1,2)と表現すれば,今までの単一の実スカラー場の論議から

明らかです。

 

正準共役運動量は1^≡∂/∂(∂0φj^)=φ1^d=∂φ1^/∂t,

π2^≡∂/∂(∂0φ2^)=φ2^d=∂φ2^/∂tです。

 

そして,正準交換関係は,[φj^(x),φk^(y)]=iδjkΔ(x-y)

(j,k=1,2)で与えられます。

 

(注18-1):先に,単一場で示したように,この一般的交換関係から次の

 同時刻交換関係が得られます。

 

j^(,t),φk^(,t)]=iδjkΔ(,0)=0 ,および,

 

j^(,t),φk^(,t)]=iδjk[∂Δ(x-y)/∂x0]μx0=yo

=iδjkδ3(),(j,k=1,2)です。(注18-1終わり)※

  

系のLagrangianをLとするとき,L=∫3で定義される

Lagrangian密度が,12という2項の和の形なので,

 

系のHamiltonian:H^=∫3=∫:Σjπjj^ d:d3

から定義されるHamiltonian密度12という2項の

和の形になります。

 

そして,単一スカラー場でのエネルギー・運動量4元ベクトル演算子

のPμ^=∫d3μa^()a^()なる形式と同様,今の独立な

2個のスカラー場でも,エネルギー・運動量4元ベクトルは,

 

μ^=P1μ^+P2μ^;

1μ^=∫d3μ1^()a1^()

2μ^=∫d3μ2^()a2^()

と表わされることがわかります。

 

ただし,k0=ωk,P0^=H^です。

 

(注18-2):Hamiltonian密度の引数を具体的に書くと,

 P0^=H^=∫d31^,π2^,φ1^,φ2^),

 

 H1^,π2^,φ1^,φ2^)=π11^d+π22^d12 です。

 2

 そこで,1^,π2^,φ1^,φ2^)

 =(1/2){π1(,t)2+|∇φ1^(,t)|2+m2φ1^(,t)2}

 +(1/2){π2(,t)2+|∇φ2^(,t)|2+m2φ2^(,t)2}

 です。

  

また,運動量はPj^=∫d31(,t){∂φ1^(,t)/∂xj}

+π2(,t){∂φ2(,t)/∂xj}]ですから,

 

φ1^(x)=∫d3(2π)-3/2(2ωk)-1/2

{a1^()exp(-ikx)}+a1^()exp(ikx)},

 

φ2^(x)=∫d3(2π)-3/2(2ω)-1/2

{a2^()exp(-ikx)}+a2^()exp(ikx)}

 

とFourier積分で表現すると,

 

単一の実スカラー場での導出と同様な手順により,

^=(1/2)∫d3ωk{1^()a1^()+a1^()a1^()

+a2^()a2^()+a2^()a2^()},

 

および,j^=(1/2)∫d3j{1^()a1^()

+a1^()a1^()+a2^()a2^()+a2^()a2^()}

を得ます。

 

そして,正規順序積を取った再定義により,

 

結局,μ^=∫d3μ{1^()a1^()+a2^()a2^()}

が得られます。

 

さらに.同時刻の正準交換関係:

i^(,t),φj^(,t)]=iδijδ3(),および,

i^(,t),φj^(,t)]=[πi^(,t),πj^(,t)]=0

から,

 

やはり,単一の実スカラー場の場合と同様にして,交換関係::

[ai^(),aj^(')]=δijδ3('),

[ai^(),aj^(')]=[ai^(),aj^(')]=0

(j,k=1,2) を得ます。

 

そこで,Pμ^=∫d3Σjμj^()aj^()ですが,

 

∫d3μ1^()a1^()の固有状態は,

Φm(1)(m!)-1/2∫d31..d3m1^(1)..a1^(m0(1)

と表わすことができます。

 

ただし0(1)は,任意のに対するa1^()について,

1^(0(1)=0 となるような,場φ1^についての真空状態

を示すものです。

 

こうして作られた固有状態m(1)の線型結合(重ね合わせ):

Φ(1)=ΣmmΦm(1)の全体は1つのHilbert空間を作ります。

 

これを場1に対して張られるilbert空間と呼ぶことにします。

 

一方,場1の項と同様な方法で,場2の項:

∫d3μ2^()a2^()の固有状態を作り,その線型結合

(重ね合わせ)で,場2に対して張られるilbert空間を作ることが

できます。

  

その基底(固有状態)は,

Φn(2)=(n!)-1/2∫d31..d3n2^(1)..a2^(n0(2)

と書くことができます。

 

Φ0(2),任意のに対するa2^()についてa2^(0(2)=0 となるような,場φ2^についての真空状態を示すものです。

 

ところで,場1に対して張られるHilbert空間の任意のベクトルに

∫d3μ2^()a2^()を作用させてみます。

 

特に,固有状態:Φm(1)

=(m!)-1/2∫d31..d3m1^(1)..a1^(m0(1)に,

∫d3μ2^()a2^()を作用させると,

 

上記の交換関係により,全てのa1^(i)(i=1,2,..,m)と,

2^()a2^()が全てのについて交換するため,

 

Φ0(1)が,場2に対して張られるHilbert空間のベクトルに属さ

ない限り,2^()a2^((1)は何の意味も持たず,定義さえ

されません。

 

そこで,一般のエネルギー・運動量の固有状態では,真空状態:

Φ0をΦ0(1)とΦ0(2)の直積として定義できます。

 

すなわち0≡Φ2(1)×Φ0(2)です。

 

そして,真空だけでなく,個々の固有状態についても,固有状態を

直積により,Φmn≡Φm1)×Φn(2) と定義します。

 

一般の状態ベクトルは,Φ=ΣmnmnΦmn

=Σmnmnm(1)×Φn(2)) となります。

 

固有状態:Φmn≡Φm(1)×Φn(2)を離散的個数表示の形で書けば,

Φ(1)(nk1..nkm..)×Φ(2)(n'k1..n'kn..) です。

 

これは連続的表現では,

{(m!)-1/2∫d31..d3m1^(1)..a1^(m0(1)}

×{(n!)-1/2∫d3'1..d3'n2^('1)..a2^('n0(2)}

 となります。

 

 この式では演算子:a1^(),a1^()は直積記号×の前の項にのみ

 作用し,a2^(),a2^()は後ろの項にのみ作用するように,演算

 が定義されます。

 

 しかし,エネルギー・運動量は場1のみによる項と場2のみによる

 項の単純和です。

 

 新しく作られた状態空間は,それぞれの項の固有状態ベクトルで

 張られる2つのHilbert空間の直積空間としての1つのHilbert空間

 と考えることができます。

 

 ai^(),aj^(')(i,j=1,2)は,i≠jのときには全てが交換

 するという事実から,固有状態を記号的に次のように表わすことが

 できます。

 

 すなわち,(m!n!)-1/2∫d31..d3m3'1..d3'n

[a1^(1)..a1^(m)a2^('1)..a2^('n0

 です。

 

そして,この表現式では,a1(i)とa2^('j)の順序はどの

ように入れ換えても同じであり,任意の順序に取ってよいことは

明らかです。

 

(注18-2終わり)※

 

場1の表わす量子と場2の表わす量子の個数は,相互作用がないとき

には別々に保存されます。

 

そこで,以前の単一の実スカラー場のケースと同じく,個数演算子:

 

1^()≡a1^()a1^(),および,N2^()≡a2^()a2()

を導入し,それらの固有値(個数)によって状態を分類します。

 

特に,今,考察中のケースは2つの実スカラー場1,2が等しい質量m

を持つという特殊な場合である結果として,

 

2つの実場の方程式:(□+m21^=0 ,(□+m22^=0 を,次の1

つの複素場に対する方程式に置き換えることができます。

 

すなわち,φ^≡(1/√2)(φ1^+iφ2^)です。

 

すると,これの複素共役場はφ^≡(1/√2)(φ1^-iφ2^)です。

 

φ^とφ^は同じKlein-Gordon方程式を満足します。

つまり,(□+m2)φ^=0,(□+m2^=0 です。

 

複素場φ^とφ^によって,系のLagrangian密度は,

:∂μφ^∂μφ^-m2φ^φ^:となります。

 

(注18-3):複素場の方程式:(□+m2)φ^=0 ,(□+m2^=0 は,

 実場の方程式:(□+m21^=0,(□+m22^=0 と全く同値です

 から,

 

 複素場のLagrangian密度は,実場のそれ:

=(1/2):∂μφ1^∂μφ1^-m2φ1^2+∂μφ2^∂μφ2^-m2φ2^2:

 に一致します。

 

ところが,φ^=(1/√2)(φ1^+iφ2^),

φ^≡(1/√2)(φ1^-iφ2^)より,

 

φ^φ^=(1/2)(φ1^2+φ2^2)であって,

φ1^=(1/√2)(φ^+φ^),

φ2^=(i/√2)(φ^-φ^)です。

 

故に,μφ1^∂μφ1^+∂μφ2^∂μφ2^

 =(1/2)(∂μφ*^+∂μφ^)(∂μφ^+∂μφ^)

 -(1/2)(∂μφ^-∂μφ^)(∂μφ^-∂μφ^)

  

 =∂μφ^∂μφ^+∂μφ^∂μφ^ です。

 

 φ1^とφ2^が交換するので,φ^とφ^も交換するため,

 ∂μφ^∂μφ^=∂μφ^∂μφ^ですから,結局,

 ∂μφ1^∂μφ1^+∂μφ2^∂μφ2^=2∂μφ^∂μφ^です。

 

以上から,∂μφ1^∂μφ1^-m2φ1^2+∂μφ2^∂μφ2^-m2φ2^2

 =2∂μφ^∂μφ^-2m2φ^φ^です。

 

こうして,

=(1/2):∂μφ1^∂μφ1^-m2φ1^2+∂μφ2^∂μφ2^-m2φ2^2:

から,:∂μφ^∂μφ^-m2φ^φ^:

が導かれました。

 

実際, 変分δφ^がφ^と独立であると考えて,このから変分

原理で得られるEuler-Lagrange方程式:

/∂φ^-∂μ{∂/∂(∂μφ^)}=0 は,

確かに,(□+m2)φ^=0 に一致します。

 

他方, 変分δφ^がφ^と独立であると考えれば,

μ{∂/∂(∂μφ^)}-∂/∂φ^

=(□+m2^=0 を得ます。 (注18-3終わり)※

 

 こうした,複素座標φ^,φ^の正準共役運動量は,

 π^=∂/∂φ^d=φ^d(1/√2)(φ1^d-iφ2^d), 

 π^=∂/∂φ^d=φ^d=(1/√2)(φ1^d+iφ2^d)

 です。

 

 そこで,Hamiltonian密度は,=π^φ^d+π^d

 =π^π^+(∇φ^)(∇φ^)+-m2φ^φ^です。

 

 正準交換関係は[φ^(x),φ^(y)]=[φ^(x),φ^(y)]=0 ,

 [φ^(x),φ^(y)]=iΔ(x-y)です。

 

これから,φ^,φ^の同時刻交換関係,

[φ^(,t),φ^(,t)]=[φ^(,t),φ^(,t)]=0,

 [φ^(,t),φ^(,t)]=iΔ(,0)=0

 が得られます。

 

さらには,ゼロでない同時刻交換関係,

 [π^(,t),φ^(,t)]=[∂φ^^(,t)/∂t,φ^(,t)]

 =i∂Δ(x-y)/∂x0=iδ3(),

 

 そして,[π^(,t),φ^(,t)]=-iδ3()

も得られ,最後に,

 [π^(,t),π^(,t)]=[π^(,t),π^(,t)]=0

 を得ます。

 

(※これらは,交換関係:[φj^(x),φk^(y)]=iδjkΔ(x-y)

 (j,k=1,2),および,複素場の定義:φ^≡(1/√2)(φ1^+iφ2^),

 φ^≡(1/√2)(φ1^-iφ2^)から,容易に示せるので具体的証明は

 割愛します。)

 

草稿は.まだこの続きができているのですが,長くなるので

一旦終わります。

 

(参考文献:J.D.Bjorken S.D.Drell "Relativistic Quantum Fields" (McGrawHill)

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訃報!!新藤兼人監督

 乙羽信子さんが亡くなられて久しいですが,正直言ってまだ生きておられたのか?という感想です。

 新藤兼人さん。5月29日午前9時過ぎ,100歳,大往生でした。

 スポーツ報知→ 新藤兼人監督,妻,乙羽信子さんの眠る墓ヘ

 黒澤明監督の映画品は有名な作品はほとんど見たと記憶していますが,

 新藤監督作品は,ウィキで私がものごころついてからのリストを見ると,シリアスなものから座頭市とかす浪人とかの娯楽的作品もあるようです。

 題名に記憶があるものは多々ありますが,映画と同じ題名の原作小説を読んだ記憶か,宣伝・予告編を見ただけの記憶か,それとも作品を見たのかという記憶が定かでないです。

 記憶あっても,ひょっとしたら,同題名の別監督作品かも知れず,

 私の学生時代は,アパートの部屋には冷房も暖房もなく,とても暑かったり,寒かったりで,冷暖房のためだけに七番館程度の安い映画館に入り浸っていた頃もあります。

 特にジャンルも監督も意識せず,封切ではない映画を多々見ていたので意識して見たものでないと何が誰の作品なのかよくわかりませんね。

 作品リストはここ(Yahoo映画)にもあります。http://info.movies.yahoo.co.jp/detail/typs/id115866/tm/s1/b1/

 

    ファイル:Kaneto Shindō.png

    ご冥福を祈ります。合掌!!

PS:訃報とは何の関係もないですが,政党,政党政治とは何なのか?綱領もない野合?の民主党の執行部の数が足りないから決まらないとかの理由でしょうか?解党主義にはアキレました。

 100年に1度?の危機的状況なので,

 戦時下の大政翼賛会モドキ,緊急時の挙国一致体制であれば,妙な方向のファシズムへと移行しない限り,本ブログの過去記事ではむしろ賛成を表明していましたが。。。

 船頭=指導的中央集権者がアホでは???。。

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2012年5月28日 (月)

鉄面皮。。???

 確かに,もしも"想定外"の大地震が無かったら,原発事故は起きていなかったでしょうから,元々の原因を考えれば天災ですが,その後の対応次第で被害状況は変わったと思います。

 当時は,誰もが精神的にもバタバタして政府や東電等の関係者は,未知の経験に即座の判断,対応を求められ大変でしたでしょう。

 それに,関係者といえども自分自身や家族,身内のことも心配でしたでしょう。

 それでも,後から考えて,対応がマズかったと,わかったら,誰かが責任を取る,オトシマエをつける,必要があるでしょう。(後からでなく前からわかっていたら尚更ですが。。。)

 特に,それが仕事である人が,まるで他人事のように,平気な顔で「責任のなすり合いをする」のはみっともないですねえ。。。

 イヤ、私は昔から組織は批判しても,個々人を非難するのは本意ではありませんが。。

 前言や公約を撤回するケースなら,まずは謝罪からやるモノでしょう。

 もちろん,それだけで終わりじゃないけれど。。。

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2012年5月24日 (木)

里美香奈さん,清水以来の女流4冠(速報)

 将棋女流の里美香奈さんが,福岡での女流王位戦5番勝負第3局で甲斐智美女流王位(28)を破り,3連勝で女流王位を獲得し,20歳の最年少で4冠のタイトルを独占しました。

 ニュース報知 → 里美女流4冠達成:2人目,最年少

       (下は倉敷藤花戦での写真)

       

 女流4冠は,清水市代さん(六段:45)以来ということです。

 現在,女流は全部で6j冠あります。

 マイナビ女王の上田初美さん(23:二段)や藤田綾さん(25:初段)(ペコちゃん)も頑張ってるみたいですね。 応援しています。

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2012年5月23日 (水)

相対論的場の量子論(正準定式化)(17)

相対論的場の量子論の続きです。

 

今日のテーマは真空(基底状態)においてもゼロでない場のゆらぎ(fluctuation:分散)が存在して計算値は無限大に発散し,これは正規順序のような単純な方法では除去できず,

 

量子論だけに存在して避けることが不可能な,不確定性原理に根ざした本質的なものであるということなどを説明します。

 

§2.4 真空のゆらぎ(Vacuum Fluctuation)

 

既に,場の量子化とは基本的に無限に多くの調和振動子の集まりの量

子化である,ということに着目してきました。

 

そして,素朴な計算で真空に存在する無限大のエネルギーは,振動子の

零点エネルギーに起因するものと考えられました。

 

そこで,エネルギーを測る基準の原点をずらす,という単なる引き算

操作に相当する,演算子積の正規順序(normal-ordering)を取るとい

う方法で,これを除去しました。

  

一方,場φ^(x)には,無限大のゆらぎ(分散)が存在して,無限大に発

散しますが,これはこうした単純な引き算操作では除去できないこと

を以下で説明します。

  

1つの調和振動子の1つの固有状態においては,座標q^はsharpに定まるものではありません。

 

つまり,n=0,1,2..の固有状態Ψnについて,座標q^の期待値

(平均値)はゼロ:<Ψn|q^|Ψn>=0 ですが,

 

<Ψn|q^2n> >|<Ψn|q^|Ψn>|2 なので,,

<Ψn|q^2n> >0 であり,座標q^のゆらぎはゼロでは

なく,一般に有限確定値です。

 

 そこで,調和振動子の無限個の集まりである場のゆらぎが,無限大に

発散するであろうことは最初から予想されたことです。

 

(※もっとも,有限値の無限個の和であっても,数列の無限級数の和のようなものなら,有限値に収束するものも多々あありますが。。) 

 

※(注17-1):ω0を調和振動子の固有振動数とし,座標q^と,

共役運動量p^に対して,^≡(2ω0)-1/20q^+ip^),

a^≡(2ω0)-1/20q^-ip^) とおけば,

 

^=(2ω0)-1/2(a^+a^)=q^です。

 

ところが,<Ψm|a^|Ψn>=m1/2δm,n+1=(n+1)1/2δm,n+1,

<Ψm|a^n>=(m+1)1/2δm,n-1=n1/2δm,n-1ですから,

<Ψn|a^n>=<Ψn|a^|Ψn>=0 です。

 

それ故,<Ψn|q^|Ψn>=0 (n=0,1,2..)です。

 

次に,<Ψn|q^2n>≧|<Ψn|q^|Ψn>|2を証明します。

 

そのため,任意の状態ベクトルΨ,Φに対するSchwartzの不等式;

|<Ψ|Φ>|2≦<Ψ|Ψ><Φ|Φ>を証明します。

 

まあ,この証明手順は有名ですが。。。

 

まず,<Φ|Ψ>=<Ψ|Φ>ですから,

|<Ψ|Φ>|2=|<Φ|Ψ>|2=<Φ|Ψ><Ψ|Φ>です。

  

<Φ|Φ>≠0の場合には,χ≡Ψ-(<Φ|Ψ>/<Φ|Φ>)Φと

おきます。

 

すると,<χ|χ>

=<Ψ|Ψ>-(<Φ|Ψ>/<Φ|Φ>)<Ψ|Φ>

(<Φ|Ψ>/<Φ|Φ>)<Φ|Ψ>

|<Φ|Ψ>/<Φ|Φ>|2<Φ|Φ>

となります。

 

 結局,<χ|χ>=<Ψ|Ψ>-|<Ψ|Φ>|2/<Φ|Φ>ですが,

 <χ|χ>≧0 ですから,

 

 <Ψ|Ψ>-|<Ψ|Φ>|2/<Φ|Φ>≧0,<Φ|Φ>>0 より.

 |<Ψ|Φ>|2≦<Ψ|Ψ><Φ|Φ>を得ます。

 

 また,<Φ|Φ>=0 の場合は,Φ=0 ですから,

 |<Ψ|Φ>|2=<Ψ|Ψ><Φ|Φ>=0 です。

 以上から,不等式が常に成立することが示されました。

  

証明手順から,等号はχ=Ψ-(<Φ|Ψ>/<Φ|Φ>)Φ=0 のときとΦ=0 のときに成立することがわかります。

  

前者はΨ=(<Φ|Ψ>/<Φ|Φ>)Φを意味します。

 

これはΨがΦの定数倍のときですから,αをある複素数として

Ψ=αΦと書くことができるときです。

 

このとき,<Φ|Ψ>=α<Φ|Φ>なので,<Φ|Ψ>/<Φ|Φ>=α

ですから辻褄は合っています。

 

証明すべき不等式は,ΨとΦについて対称ですから,上式の証明でΨとΦの役割を交代させても同じです。

 

よって,βをある複素数としてΦ=βΨのときも等号が成立します。

 

そこで,β=0,それ故,Φ=0 のとき,そしてα=0でΨ=0 のときも

一般的等号成立条件の中に含まれています。

 

結局,ΨとΦがベクトルとして平行,あるいは,規格化定数が異なるだけで状態としては同じである場合にのみ,等号が成立し,異なる状態の場合には不等号です。

 

Ψが<Ψ|Ψ>=1と規格化され,ΦがHermite演算子A^によって

Φ=A^Ψと表現される場合,<Ψ|Φ>=<Ψ|A^|Ψ>,

<Φ|Ψ>­=<A^Ψ|Ψ>=<Ψ|A^|Ψ>ですから,

 

|<Ψ|Φ>|2=<Ψ|Φ><Φ|Ψ>­=<Ψ|A^|Ψ>2です。

 

そして,<Φ|Φ>=<A^Ψ|A^Ψ>=<Ψ|A^2|Ψ>であり,

かつ<Ψ|Ψ>=1 なので,

 

Schearzの不等式:|<Ψ|Φ>|2≦<Ψ|Ψ><Φ|Φ>は,

<Ψ|A^|Ψ>2≦<Ψ|A^2|Ψ>を意味します。

 

一般に,<Ψ|Ψ>=1のとき,物理量O^の期待値は<Ψ|O^|Ψ>で

与えられますが,これを<O^>と表記するとA^,B^については,

<A^>=<Ψ|A^|Ψ>,<B^>=<Ψ|A^|Ψ>です。

 

このとき,δA^≡A^-<A^>,δB^≡B^-<B^>と定義すると,

[δA^,δB^]=[A^,B^]- [<A^>, B^]-[A^,<B^>]

+[<A^>,<B^>][A^,B^] です。

 

そしてSchwarzの不等式から,

<δA^Ψ|δA^Ψ><δB^Ψ|δB^Ψ>

≧|<δA^Ψ|δB^Ψ>|2ですが,

 

明らかに^,B^がHermiteならδA^,δB^もHermiteですから,

これは次式を意味します。

 

すなわち,<Ψ|(δA^)2|Ψ><Ψ|(δB^)2|Ψ>

≧|<Ψ|δA^δB^\Ψ>|2です。

 

ところが,<Ψ|δA^δB^|Ψ>=<Ψ|δB^δA^|Ψ>なので,

 

Im<Ψ|δA^δB^|Ψ>

={1/(2i)}(<Ψ|δA^δB^|Ψ>-<Ψ|δA^δB^|Ψ>)

{1/(2i)}(<Ψ|δA^δB^|Ψ>-<Ψ|δB^δA^|Ψ>)

 

{1/(2i)}<Ψ|[δA^,δB^]|Ψ>

={1/(2i)}<Ψ|[A^,B^]|Ψ> 

 

です。

 

そこで,

|<Ψ|δA^δB^|Ψ>|2

≧|Im<Ψ|δA^δB^|Ψ>|2(1/4)|<Ψ|[A^,B^]|Ψ>|2

です。

 

したがって,<Ψ|(δA^)2|Ψ><Ψ|(δB^)2|Ψ>

≧(1/4)|<Ψ|[A^,B^]|Ψ>|2 を得ます。

 

調和振動子の場合,状態:Ψnの期待値は,<q^>=<Ψn|q^|Ψn>=0

ですから,δq^=q^-<q^>=q^です。

 

一方,a^≡(2ω0)-1/20q^+ip^),a^≡(2ω0)-1/20q^-ip^)

から,^=i(ω0/2)1/2(a^-a^)=p^+ですから,

 

<p^>=(ω0/2)1/2<Ψn|a^-a^|Ψn>= 0 です。

 

故に,δp^=p^-<p^>=p^です。

しかも,[p^,q^]=-iです。

 

そこで,<Ψn|p^2n><Ψn|q^2n

≧(1/4)|<Ψn|[p^,q^]|Ψn>|2=1/4 >0,

 

 これでやっと,<Ψn|q^|Ψn>=0 なのに<Ψn|q^2n>>0

 なることをが 証明されました。

 

でも,ちょっと具体的な計算をしてみれば明らかなことなのに,

わざわざ,一般的,演繹的論議を展開して大げさでしたね。

 

しかし,そのおかげで,ゼロでないゆらぎが存在する理由が量子論

特有の不確定性にあることが明確に見えたと思います。

(注17-1終わり※)

 

 さて,<Ψn|q^2n>>|<Ψn|q^|Ψn>|2 であり,不等式左辺の

 ゆらぎが正の値を取ることは,場の理論においても真です。

 

すなわち,時間tに依存するHeisenberg表示の多体系の一般座標

i^(t)の離散添字iを,連続添字に拡張した座標である場:

φ^(x)=φ^(,t)も,ゼロでないゆらぎ(分散)を持つことがわ

かります。

 

例えば,真空においては,真空をΦ0ではなく,Diracのブラケット表

|0>と表現すると,

  

0|φ^(x)|0>=0 にも関わらず,Δ(x,y)

≡<0|φ^(x)φ^(y)|0>≠0 です。

  

※(注17-2):φ^(x)=∫d3(2π)-3/2(2ω)-1/2

 {a^()exp(-ikx)+a^()exp(ikx)} ですから,

 

 0|φ^(x)|0>=∫d3(2π)-3/2(2ω)-1/2

{<0|^()|0>exp(-ikx)}+<0|a^()|0>exp(ikx)}=0 

です。 (17-2終わり※)

 

φ^(x)=∫d3(2π)-3/2(2ω)-1/2{a^()exp(-ikx)

+a^+()exp(ikx)},

 

正準交換関係:[a^(),a^+(')]=δ3('),

[a^(),a^(')]=[a^+(),a^+(')]=0 ,

および,a^()|0>=0 を用いれば,

 

Δ(x,y)=<0|φ^(x)φ^(y)|0>を具体的に計算して評価する

ことができます。

 

すなわち,φ^(x)φ^(y)=∫d33'(2π)-3(4ωω')-1/2

{a^()exp(-ikx)+a^()exp(ikx)}

{a^(')exp(-ik'y)+a^(')exp(ik'y)}です。

 

<0{と|0>で挟んで真空期待値を取れば,a^()a^('),

a^()a^('),a^()a^(')を因子とする項の寄与はゼロ

で消えますから,

 

Δ(x,y)=<0|φ^(x)φ^(y)|0>

∫d33'(2π)-3(4ωω')-1/2exp(-ikx)exp(ik'y)

0|^()a^(')|0> です。

 

ところが,^()a^(')

^(')a^()[a^(),a^(')]

=a^(')a^()δ3(')であり,

  

0|^(')a^()|0>=0 なので,<0|^()a^(')|0>

=<0|δ3(')|0>=δ3(')ですから,

 

Δ(x,y)=<0|φ^(x)φ^(y)|0>

k0=ω3(2π)-3(2ω)-1exp{-ik(x-y) を得ます。

 

これから,Δ(x,y)は(x-y)のみの1変数関数であることがわかるので,以下,この関数を改めてΔ(x-y)と表記することにします。

 

Δ(x-y)=<0|φ^(x)φ^(y)|0>においてy→xとすると,

これは真空のゆらぎ:<0|φ^(x)2|0>が2次的に発散するという

ことの具体的表現を与えます。

 

つまり,<0|φ^(x)2|0>=Δ(0)

k0=ω3(2π)-3(2ω)-1(1/2)∫d3(2π)-3(2+m2)-1/2

= ∞ ≠ 0 です。

 

※(注17-3):積分領域を,||={(k1)2(k2)2(k3)2}1/2≦R

 という,半径R(>0)の球の内部に取り,

 Δ(0,R)≡(1/2)||≦R3(2π)-3(2+m2)-1/2とおくと,

 

Δ(0)=limR→∞Δ(0,R)です。

 

r=||として-空間での極座標:1=rsinθcosφ.

2=rsinθsinφ.3=rcosθに変数変換すれば,

∫d32drsinθdθdφであり,

 

被積分関数は角変数θ,φには無関係な球対称関数ですから,

Δ(0,R)=(2π)-20Rdrr2(r2+m2)-1/2となります。

 

さらに,u=(r2+m2)1/2とおけば,r=(u2-m2)1/2,

du=r(r2+m2)-1/2drなので,

Δ(0,R)=(2π)-20Rdrr2(r2+m2)-1/2

(2π)-2mUdu(u2-m2)1/2 となります。

 

ただし,U≡(R2+m2)1/2です。

 

ここで,u=m coshωと最後の変数変換をします。

 

すると,u2-m22(cosh2ω-1)=m2 sinh2ω,

du=m sinhωdωです。

 

そこで,U≡m coshΩ or Ω≡=cosh-1(U/m)によってΩを

定義すれば,

 

Δ(0,R)=(2π)-2mUdu(u2-m2)1/2

(2π)-220Ωsinh2ωdω

(2π)-22(1/2)∫0Ωdω{cosh(2ω)-1}

(2π)-22{sinh(2Ω)/4-Ω/2} となります。

 

そして,coshΩ=U/mよりmsinhΩ=(U2-m2)1/2ですから,

2sinh(2Ω)=2m2sinhΩcoshΩ=2U(U2-m2)1/2なので,

Δ(0,R)=(8π2)-1{U(U2-m2)1/2-m2cosh-1(U/m)}

を得ます。

 

さらに,U=(R2+m2)1/2,(U2-m2)1/2=Rですから,

 

結局.Δ(0,R)

={2/(8π2)}{(R/m)(1+R2/m2)1/2-cosh-1(1+R2/m2)1/2}

{2/(8π2)(R/m)(1+R2/m2)1/2

×[1-cosh-1(1+R2/m2)1/2/{(R/m)(1+R2/m2)1/2}]

です。

 

R→∞のとき,(R/m)(1+R2/m2)1/2→∞,かつ

cosh-1(1+R2/m2)1/2→∞ですが,

de'lHospital(ド・ロピタル)の定理が適用できて,

limR→∞[cosh-1(1+R2/m2)1/2/{(R/m)(1+R2/m2)1/2}]

limR→∞[(1+R2/m2)-1/2/{(1+R2/m2)1/2}+(R2/m2)(1+R2/m2)-1/2]

limR→∞[1/{(1+R2/m2)+(R2/m2)}]=0 です。

 

したがって,

limR→∞[1-cosh-1(1+R2/m2)1/2/{(R/m)(1+R2/m2)1/2}]=1

なので,

 

limR→∞Δ(0,R)=Δ(0)=∞であり,

これはR2のオーダーでの発散です。

 

しかし,こうしたことは,実は,

Δ(0,R)=(2π)-20Rdrr2(r2+m2)-1/2から,

すぐにわかることです。

 

例えば,r≧mでは,(r2+m2)1/2<√2r,

2/(r2+m2)1/2(r/√2)なので,

 

Δ(0,R)=(2π)-2[∫0Rdrr2(r2+m2)-1/2

mRdrr2(r2+m2)-1/2]

(2π)-2[∫0Rdrr2(r2+m2)-1/2+(1/√2)∫mRdrr]

(R2-m2)/(2√2)→ ∞ (R→ ∞のとき)

 

です。

 

余談ですが,∫0Rdrr2(r2+m2)-1/2のようなやや面倒な積分は,

ここまで地道に計算実行しなくても,40年くらい前のノート作成の

学生当時も,既存の信頼に足る公式集があり,それを信用して参照

すればすぐ結果が得られる,という安直な道がありました。

 

しかし,当時も今もなるべく公式集に頼らず計算を実行してみて,

それで解けるものは実際に解いて,貴重な時間を無駄にするという

悲しい?習慣が身に付いています。

(注17-2終わり※)

 

前に遭遇した零点エネルギーとは異なり,この発散:

<0|φ^(x)2|0>=∞は,正規順序のような単なる引き算によっては

完全に取除くことはできません。

 

実際,真空のゆらぎは観測可能な"Lamb-Shift"において,有限な物理的効果として発現していることがわかっています。

 

こうした発散するという面倒な結果は,

「1点における場の振幅の平方を実際に測定することは不可能である。」という言説で,困難な思いをやや緩和することができます。

 

すなわち,孤立した1時空点を深く調べるためには無限大の振動数と無限に短い波長が必要ですが,これらは無限大のエネルギーがないと実効不可能なことです。

 

そしてまた,実際的な計算の際には<0|φ^(x)2|0>が無限大に発散するという事実は重大な困難を生じさせることはありません。

 

時空の有限領域における平均という意味での場の演算子積のみが観測可能な実在として存在し得ます。

 

つまり,孤立した1時空点における場の演算子積というのは,数学的には存在しても物理学的に観測可能量という意味を持たない,ということに留意すべきです。

 

0|φ^(x)2|0>=∞という結果は,連続的な場(連続体場)の記述の極限における表現と解釈します。

 

すなわち,こうした連続的な場(連続体場)の記述というのは大きな時空区間に対する対応原理の意味でのみ,物理的世界の十分な記述を与える理想化です。

 

これについては,連続体近似の臨界(閾:Threshold)における量的修正を要求する前に,時空点の間隔が十分に小さいことを示すことが実験に対して残されている課題です。

(※(私自身の注):1時空点での定義のために存在する局所演算子積

の特異性を避けるため,古くは双1次非局所カレント

(bilocal-current):μ(x,ε)=ψ(x-ε)γμψ(x+ε)(ε>0)

を想定してε→+0 の極限を取ったり,最近では格子上の場理論が展

開されたりしています。

 

これらは,そもそも高々可算無限個数しか存在しない素粒子の記述を

連続無限自由度の局所場で定式化したため生じたであろう種々の発散

の困難を,本質的なところから解決する試みです。(終わり※)

  

今日はここまでです。

 

次回は,荷電スカラー場(Charged scalar field=複素スカラー場)

の項目に入る予定です。

 

今の質量mの実スカラー場は,電荷を持たない中性π中間子(Pion):

π0の場がいい例です。

 

しかし,π中間子には電荷を持つπ0の仲間であるπ±もあります。

 

荷電スピン(Isotopic spin)空間の,I=1の3次元ベクトルという意味

で,場をt1^,φ2^,φ3^)で表わすと,φ3^がπ0の実スカラー場です。

 

π±についてはφ^=(1/√2)(φ1^+iφ2^),および,

φ^=(1/√2)(φ1^-iφ2^)が,その消滅,生成に関わる場ですが,

 

π(1/√2)(a1^+ia2^)|0>=(1/√2)(a1^-ia2^)|0>

ので,π(1/√2)t(1,i,0)の場は,φ^=(1/√2)(φ1^-iφ2^)

です。

 

一方,π(1/√2)t(1,-i,0)の場はφ^=(1/√2)(φ1^+iφ2^)

ですから,状態と場で1次結合(or 列ベクトル)表現の係数が逆転し

いて混乱し勝ちです。

  

少し先走ってしまいましたが,これで本当に終わります。

 

(参考文献:J.D.Bjorken S.D.Drell "Relativistic Quantum Fields" (McGrawHill)

 

追伸:しかし,数式を入力した記事での,このココログフリーでのテキストからHTMLや,その逆へのコンバータには大いに悩まされています。

 

 例えば,ワードで作成した数式では添字のサイズは適切に見えるのに,何故かここで自動的コンバートされると,必ず添字が上下とも私の肉眼で見えないほどに縮小されています。

  

 HTMLで見ると,普通の文字がサイズ1.2なのに添字は全部サイズ0.8になっています。文字を拡大しても添字の比率は同じです。

  

 昔はこんなことはありませんでした。

  

 ですから,せっせとHTMLで0.8に変えるコマンドを削除して1.2に戻したり,その戻した文字をテキスト画面でコピーしてペーストしたりとか,なかなか大変です。

  

 しかも,あまりコピーとペーストを多用すると,HTMLエラーや文字化けなどが起きます。

  

 あるいは,作業の最中に,リソース不足とかの理由で収拾がつかなくなってPCがフリーズしたり,急にホストがメンテナンスになったりして,数時間の編集作業がパーになってしまったり。。

  

 また,保存を押してホームページを更新した途端にに,画面フリーズして全部が水泡となり消えてしまったりしているうち,出勤時間が近づいたりすると,完全に頭に来て編集など放り出して出かけてしまい,

  

 夜帰っても何もする気起きず,放置したまま,編集放棄してフテ寝することもあります。(ブログやPC依存症なので,感情,気分までがしょっちゅう左右されているようです。)

   

 思えば,まだ,メジャーな世界にはワープロもパソコンも無く,仕事では大型コンピュータを使っていても,プログラムを入力するのはコンソールや端末ではなく,紙のカードにパンチして穴をあけていた時代,

 もちろん,漢字変換システムもまだ研究段階だった時代には,

  

 最大では,自分1人だけで2年くらいもかかってプログラムを全部作って,入力も自分だけでした約18000step(18000行=紙カード:18000枚)のプログラム(中造工から依頼のプロペラ設計プログラム)を,

  

 それでもカードリーダーから磁気テープ(MT)に吸い取ることはできたので,プログラムの修正は少しはましな時代になってましたが,

  

 やがて,完成で納品した後,それを三鷹のKDDの近くにあった運輸省船研に移殖した頃は,TSS端末入力に変わってきていました。

  

 その頃は1985年までいた新高円寺の自宅から,神保町の会社でなく,半年くらいは,三鷹の船研に出勤していました。

  

(※会社では,自宅で昼頃に起床して出勤し,会社に着いてまず大盛りの飯を食らい,それから定期便(ていきベン)という,典型的不良社員でしたが,出向中はそうもいかず,シブシブ朝9時までに出勤していました。)

  

 当時は,自会社使用マシンはACOS(NEC,東芝)で,船研のマシンはFACOM(富士通)でした。(最後,会社辞めた頃は自分のいた会社のマシンは,一応スパコンのFACOM-VP30でしたが,今のパソコンの方が高性能です。)

  

 JIS70000レベルの標準FORTRANで作成したプログラムでも,マシンが異なるとOSSが違っていて,そのためJCL(job controlシステム)が違うとプログラムの動作が保証されず,

 

 自社マシンではスム-ズで確実に動いても,他社のメーカーも違うマシンでは,実行前のコンパイル(=機械語(アセンブラ)への翻訳,文法のチェック)でさえ,一発でOKとはいきません。

   

 今の,IAEAの数値計算に似た?原燃などの事故を想定して当時の気研(気象研)から依頼のジョブでの放射能拡散の数値シミュレーションのプログラムなども,自社とはマシンが違うので,

   

 これは最初から,つくばの気研に行って作業し,そこのビジネスホテルにはよく泊まっていました。

  

 また,毎年8月初旬には,1人で作成した数値計算プログラムの磁気テープを持って,飛行機で広島に出張して球場近くの県の環境センター?に年1回行ってたのが,なつかしいです。

   

 1年目は,夕方までには移殖がうまくいかなくて,飛行機で日帰りするには間に合わず,市内の「法華クラブ」というホテルに泊まって,そこのTVでロサンゼルスオリンピック放送の体操で具志堅が金?メダルを取ったのを見た,という記憶がありますから,1984年(34歳)だったようです。

  

 書いてるうち,ついつい,いつものように自己顕示的(露悪的)に脱線してしまいましたが。。。

  

 何が言いたかったのかというと,漢字入力もできなかった当時のTSS端末でさえ,修正は一括変換でできたということです。,

   

 もしも,1万行程度のプログラムのどこかで,+と-のミス程度の僅かですが致命的な間違いを見つけた場合,1回の操作でプログラムの全行程において一括で修正できなかったとしたら,

  

 その当時クビをくくっていたかも。。。という話を例に出して,今の,自分がよくわからないPCのHTMLでは,全てを1つ1つ修正して,途中なのに疲れて休んで寝てしまったり,完了したはずなのに修正抜けが有ったりすることへのグチを言いたかっただけです。

   

 また,余談ですが,元々不良社員だったので,島流しの特命係は仕方ないのですが,私には"相棒"も部下もなく,

   

 広島とか,決してすぐには帰れないb所への出張でも,往復の飛行機代とせいぜい一泊くらいの出張費で,行き先では知り合いもなく,何かトラブル起きたとしても自分で何とかするしかありませんでした。

   

 まあ,何とかなったのですが,自分の食い扶持くらいは,自分一人で稼げということだったのでしょうかね。。。

 

(自力で事業起こして自営の会社やるとかの能力も気力もないから,サラリーマンになったのにね。)

    

(※イエス死後(復活?),サウロという名で迫害者であったのに,何故か敬虔な使徒に転向したパウロも,各地を伝道しながらも,

   

 他人から施しを受けるのをよしとせず「私は怠け者ではない。」と,ズック地でテントを作って売るという自分のもとの職で自分たちの食い扶持を稼いでいたらしいですね。)

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2012年5月21日 (月)

国際バラとガーデニング(西武ドーム)

 昨日20日土曜日は休みを取って所沢の西武ドームで,5/17から5/20まで開催されていた第14回国際バラとガーデニングショウに,T.Iさんのお供で,私も含め障がい者4人で行ってきました。

 ここは障がい者でも入場料無料じゃなく半額の1000円でした。。。痛い。。

 100枚くらい写真を撮ったところで電池切れでしたが,取り合えず,そのうちから,抜粋して,ここにアップしておきます。整理編集はPendingです。

 T.Iさんが車椅子なので,車椅子やベビーカーで階段を使えない人だけが入れる外野席の連絡通路で見学前の昼飯の駅弁を食べながらの撮影

   

   

   

  池田「理代子さんの大ヒット劇画「べルサイユのばら」を

 モチーフに栽培されたバラだそうです

   

  

  

   

  

  

  

  

  

  

  

   大賞をもらったバラたちです。

  

  

  

  

  

  

  ここからは単に撮影しまくりです。

   

  

  

  

  

PS:今日21日も前から休みの予定でした。予約なしで病院に行くつもりでしたが,昨日歩き疲れたのでやめて,自宅でゴロゴロ寝てヨウビです。

 ヤフオク出品していた2000年頃に買った定価3万円くらいのオーディオとしては高級とは言えないFM.・AMチューナーが19日(土)朝,最初に設定した3千円そのままで落札されてしまいました。

 もっとお金が欲しかったですが仕方ありません。

 まあ,オ-ディオ(音質など)が趣味でない方なら,これアンプもスピーカーも付いてない不完全なラジオ本体に過ぎませんからね。

 今どきは,こうした単品ではなく,アンプもスピーカーも一体のCDラジオ,いやCDラジカセでさえ新品で3000円以下で買えますから,良しとします。

 「Yahooかんたん決済」で既に21日の真夜中1時頃に送料込みで入金完了のメールが来たので,すぐ送ってもいいのですが,実際に口座に入るのは22日ということです。

 今,送料さえないので着払いならスグ送れたのですが,元払いご希望なので明日振込まれた金うを下ろしてから,送るつもりで,今日は急いでやることもなく昼過ぎまで爆睡していました。

PS2:金環日食があったみたいですね。見る予定なかったですが。。

 昔から天体イベントとかあまり気になりません。

 関係ない話ですが,子供のころから理屈ばかりで,嫌いじゃないけど他人の実験は見ても,自分じゃやらない派でした。

 星や天体なども,図鑑や事典では見ても本物を積極的に見ようともしない夢のない変なガキでした。

 またまた脱線ですが,生まれつき負け犬性格なんでしょうか?

 海外旅行とか海外生活とかも含めパッと見でハデなことや,今の感覚ですが比較的上昇志向的に見えることには,何故か淡白で珍しくてもあまり感激しない,ダメな?性格です。

 (そもそもモチベイションが違い過ぎるので"でんじろうさん"みたいにはなれません。)

 私は好奇心が薄いのじゃなく実は旺盛なのですが,エジソン的ではなくてニュートン的(アインシュタイン的)方向に向かって,というのでしょうか?

 スグ見える珍しさでなく,よくよく考えた結果初めて珍しく思えることに出会うと,時には偏執狂的でオタク化するほどの好奇心に包まれてしまうイヤな性格かも知れまえせん。。。

 (※見た目フツウの現象の中に存在する不思議さに魅入られて捕えられたままでいるのが今の姿で,見た目フツウでないことまでまだ手がまわらない。。,)

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2012年5月18日 (金)

今日の癒し(You-Tubeメール)

 いつものYou-Tubeメールから今日の 癒しです。

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2012年5月17日 (木)

相対論的場の量子論(正準定式化)(16)

 相対論的場の量子論シリーズの微視的因果律(microscopic causality)の項目の続きです。

 

 同時刻とは限らない任意のx,yにおける場の交換関係を示す

 Lorenyz不変な特性関数の表現:

 

 iΔ(x-y)=[φ^(x),φ^(y)]

∫d3(2π)-3(2ω)-1[exp{-ik(x-y)}-exp{ik(x-y)}]

∫d4k(2π)-3δ(k2-m2)θ(k0)[exp{-ik(x-y)}

-exp{ik(x-y)}] において,

 

00 ならε(k0)≡1,k0>0 ならε(k0)≡-1なる符号関数

ε(k0)を導入すると,Δ(x-y)はより簡単な形に書けて,

 

Δ(x-y)=-i∫d4(2π)-3δ(k2-m2)ε(k0)

[exp{-ik(x-y)} となります。

 

ε(k0)の関数値はk2=kμμ=((k0)22>0 を満たす,時間的ベクトルkμ=(k0,)に対しては不変です。

  

(※何故なら,時間的ベクトルは光円錐(light-cone)の内側にあり,

 k0>0,またはk0<0という性質はLorentz変換によっては変わらない

 からです。

  

 そして,実スカラー場の質量をmとすると,k2=m2>0 ですから,

 ベクトルkμ=(k0,)は確かに時間的です。)

  

(注16-1):

 ∫0dk0δ(k2-m2)[exp{-ik(x-y)}-exp{ik(x-y)}]

=∫0dk0δ(k2-m2)[exp{-ik0(x0-y0)}

+∫-∞0(-k0)δ(k2-m2)exp{-ik0(x0-y0)}

   

 =∫-∞dk0δ(k2-m2)ε(k0)[exp{-ik0(x-y)} です。

  

 そして,∫d3(2ω)=1=∫d4kδ(k2-m2)θ(k0)であり, 

 また,∫d3(2ω)-1exp{i()}

 =∫d3(2ω)-1exp{-i()}

 であることは,既に示しました。

  

したがって,∫d4kδ(k2-m2)θ(k0)[exp{-ik(x-y)}

-exp{ik(x-y)}]

 =∫d4(2π)-3δ(k2-m2)ε(k0)[exp{-ik(x-y)}

 を得ます。 (注16-1終わり)※

  

Δ(x-y)=-i[φ^(x),φ^(y)]であり,(□+m2)Φ^(x)=0

ですから,明らかにΔ(x-y)は(□+m2)Δ(x―y)=0

を満たします。

  

つまり,Δ(x)もKlein-Gordon方程式の1つの解です。

  

しかも,[φ^(y),φ^(x)]=-[φ^(x),φ^(y)]なので,

Δ(y-x)=-Δ(x-y) or Δ(-x)=-Δ(x) です。

  

0=y0のときの同時刻交換関係:[φ^(x),φ^(y)]x0=y00

より,0-y00 では,Δ(x-y)=Δ(,0)0 です。 

 

Δ(x-y)のLorentz不変性から,

(x-y)2=(x0-y0)2-()2<0を満たす任意のx,y:

空間的(space-like)に離れた2つの時空点x,y

に対して,Δ(x-y)=-i[φ^(y),φ^(x)]=0 です。

 

(注16-2):何故なら,Δ(x-y)はLorentz不変なスカラーですが,

 (x-y)2も同じくLorentzスカラーです。

  

そこで,x,yが空間的に離れているという性質:

(x-y)2=(x0-y0)2-()2<0 なることは,如何なる

Lorentz系でも変わりません。

  

そして,空間的:(x-y)2=(x0-y0)2-()2<0 であれば,

適切なLorentz系に座標変換すれば,その慣性座標系では2点x,y

は同時刻:x0-y0=0 であって,(x-y)2=-()2<0 であ

るようにすることが可能です。

 

しかも,同時刻:x0=y0では正準交換関係の基本仮定から,

 Δ(x-y)=Δ(,0)=-i[φ^(x),φ^(y)]x0=y00

 であることがわかっています。 

  

Δ(x-y)は,座標系に依存しないLorentz不変なスカラー

なので,座標変換前後のどちらの系でも,同じ値ゼロを取ります。

  

したがって,(x-y)2=(x0-y0)2-()2<0 (空間的)を

満たす任意のx,yに対して,[φ^(x),φ^(y)=iΔ(x-y)=0

と結論されます。 (注16-2終わり)※

  

 そこで,光信号でさえ決して結び付くことはない空間的に離れた2つ

 の時空点(Events:事象)x,y:

 (x-y)2=(x0-y0)2-()2<0,あるいは,

 光速cを陽に書き,ct=|x0-y0|として,||>ct

 を満たすx,yでは,常に[φ^(x),φ^(y)=0 ですから,

 

φ^そのものが物理的可観測な量,謂わゆる場の強さと解釈できる

場合には,φ^(x)とφ^(y)は互いに独立に,正確に測定できるはず

です。

  

一方,別の同時刻での正準交換関係:

[π^(x),φ^(y)]0=y0d^(x),φ^(y)]0=y0

=-3()から,

 

Δ(x-y)の同時刻での時間微分は,

[∂Δ(x-y)/∂x0]0=y0=-δ3()となり,

原点)=0 では消えることがわかります。

  

しかし,実際,Δ(x-y)={-1/(2π)3}∫d3ω-1

[exp{i()}sin{ω(x0-y0)}なる表現からも,

 

Δ(x-y)/∂x0 ={-1/(2π)3}∫d3

[exp{i()cos{ω(x0-y0)}なので,

  

0=y0では,[∂Δ(x-y)/∂x0]0=y0

{-1/(2π)3}∫d3exp{i()=-δ3()

となり矛盾のない結果を得ます。

  

 これらの結果に,物理的内容を結びつけるため,場の測定という

 ことに物理的な意味を付与することが意味を為す,ということを

 仮定しなければないません。

  

 この概念は,既に以前のparagraphで批評され評価されていることで

 もあります。

  

※(記事全体の注):実は因果律として,要請されるのは,一般には場φ^の

 双1次形式であり,量子エンタングルなどに見られるように,

 

 時には光速な非局所的存在でもある場:φ^そのものは,観測可能な

 物理的実在(observable)とは見なされません。

 

 場φ^そのものは一般には物理的実在ではなくて,1の期待値である

 確率を含む物理量の期待値が観測可能な量なのですが,それらは

 カレントなど,場の2次(or 双1次)で与えられる量です。

  

 これは,状態の固有状態による展開係数である波動関数の言葉では,

 複素数値をとる確率振幅(=波動関数):n(1,.,n)は必ずしも

 観測可能な物理的実在ではなくて,

  

 実際に常に観測可能な物理量は,確率密度|Cn(1,..,n)|2である

 ことを意味します。

  

 そこで,量子の交換対称性についても,n(..j,.,i..)

 =Cn(..i,..,j..)なる要請は条件としては強過ぎます。

 

観測可能なのは,確率密度の対称性:|n(..j,.,i..)|2

|n(..i,..,j..)|2であり,必ずしも波動関数の対称性:

n(..j,.,i..)=n(..i,..,j..)を意味しません。

 

しかし,同時刻での正準交換関係に基づく定式化からは,幾らか過度の

条件とも思われますが,場自身の交換関係が微視的因果律を満たす

不変デルタ関数:Δ(x-y)に必然的に帰着します。

   

そして,Bose粒子はBose-Einstein統計に,Fermi粒子はFermi-Dirac

統計に従う必然性は,この強い方の要請に起因しているわけです。

  

このあたりの詳細事情は,以前の2007年5/6の過去記事

スピンと統計の関係(微視的因果律)」と,5/7の過去記事

量子化された場と調和振動子(パラ統計)に詳述しています。

 

ここでは,前者の関連部分を再掲しておきます。

  

後者は,Bose粒子がBose-Einstein統計に,Fermi粒子がFermi-Dirac統計に従う以外の可能性に言及しています。

 

これは,同時刻で必ずしも正準交換関係に従わない定式化です。 

よって正準量子化とは異なる定式化ということになりますね。

 

(※頭の中で常識的に考えると,2回連続のの空間反転や2回連続の

同じ量子の交換では,全く同じ元に戻ると想像されるので,1回の反転

や量子交換では,波動関数は±1倍の変化しか有り得ないと考えがち

です。

  

しかし,波動関数そのものは観測されない実在であれば,その他の位相

変化が生じても検知できませんね。※)

 

(※以下,2007年5/6の記事の再掲記事です。)

 

 スピンがゼロのBosonとスピンが1/2 のFermion

に対するスピンと統計の間に成立すべき関係を,いくらか詳細に論

じてみます。

 

Lorentz共変性の要請を満たす,唯1つの"基底状態(ground-state)=真空(Vacuum)"を持つ局所的理論において,

 

"もしも,微視的因果律(microscopic causality)の成立条件を満たすべきことを要請するなら,

 

整数スピンの場は"Bose場=Bose統計に従う場"として, 

半奇数スピンの場は"Fermi場=Fermi統計に従う場"として, 

量子化されなければならない。" 

 

という命題を証明します。

 

"ここで,微視的因果律の成立条件を満たす。"というのは, 

「観測可能な作用素(演算子)Oの局所密度をo(x)=o(,t),

つまり,O≡∫d3o(,t)とするとき,

 

xとyが空間的(space-like)に離れている場合には,

ρ(x)とρ(y)は干渉することが不可能であり,それ故,

交換すること が要求されること」を意味します。

 

つまり,"(x-y)2<0なら[o(x),o(y)]=0 "

なることが微視的因果律の成立条件です。

 

空間的に離れている:(x-y)2<0""というのは,ct=|x0-y0|

と書けば,||>ctなることを意味します。

 

これは,2つの事象の空間的距離の差が||,時間座標の差がtなので,3次元の空間内の2点,の一方の点から他方の点まで,相対論で限界速さとされている光速cの信号でも到達不可能な場合です。

 

微視的因果律とは「超光速信号が存在しない限り一方が原因で他方が

結果とは成り得ない場合,両者の観測可能量が作用素として交換する

(=無関係である)べきこと」を主張します。

 

ここでは,任意の2つの作用素A,Bに対して交換子を[A,B]≡AB-BAで,反交換子を[A,B]≡AB+BAで定義しています。

 

粒子場に,この微視的因果律の要請を課せば,それは特に

 

スピンがゼロKlein-Gordon場の反交換子による量子化,および

スピンが1/2のDirac場の交換子による量子化とは相容れない。」

 

ということを以下で示そうと思います。

 

電荷密度ρ(,t)や電流密度jμ(,t)のような理論における観測可能量の密度は,場を表わす作用素(場の演算子)の2次形式(または双1次形式)で構成されています。

 

すなわち,粒子場の成分を場の作用素(演算子)としてφa(x)etc.で表現すれば,観測可能量の密度o(x)はo(x)≡φa(x)φ(x),またはこれらの代数和で与えられます。

 

そして,これらが空間的に離れた2点x,yでは交換することを要請すると,これは(x-y)20 なら,

[o(x),o(y)]=[φa(x)φ(x),φa(y)φ(y)]=0 です。

 

[o(x),o(y)]の場の演算子の交換子による表現は,

 

a(x)φ(x),φa(y)φ(y)]

φa(x)[φ(x),φa(y)]φ(y)

+φa(x)φa(y)[φb(x),φ(y)]

+[φa(x),φa(y)]φb(x)φ(y)

+φa(y)[φ(x),φa(y)]φ(x)

 

となります。

 

一方,同じ[o(x),o(y)]の場の反交換子による表現は,

 

[o(x),o(y)]=φa(x)[φ(x),φa(y)]φ(y)

-φa(x)φa(y)[φb(x),φ(y)]

+[φa(x),φa(y)]φb(x)φ(y)

-φa(y)[φ(x),φa(y)]φ(x)

 

です。

 

ここで,φr(x),φs(y)をKlein-Gordon場のφ,φ*の組み合わせ,

または,Dirac場のψやψ+γ0の異なるスピノル成分の組み合わせ

とします。

 

すると,上述の[o(x),o(y)]の表現式から,

空間的に離れた(x-y)20 を満足する2点x,yに対して,

 

r(x),φs(y)]=0 (Bose条件),または

r(x),φs(y)]=0 (Fermi条件)が成立することが,

 

[o(x),o(y)]=0 が成立するための十分条件になっている

ことがわかります。

 

もちろん,十分条件ですが必要十分条件ではないので,これらの交換関係に基づく統計性の他にも,謂わゆるパラ統計などが成立する可能性もありますが,ここでは上記の交換子,あるいは反交換子による定式化の2つだけに限定して考えます。

 

特に,(x-y)20 なら,あるLorentz系ではx0=y0,とすることができるので,同時刻で(反)交換関係がゼロであるという条件は,

 

(x-y)20 を満たす任意のx,yに対し(反)交換関係がゼロである

という条件と同等です。

 

そして,Klein-Gordon場に対しては,通常はLorentz不変性と同時刻正準交換関係に基づいて正準量子化が実行され,相互作用が存在するときでも

 

(x-y)20 の2点x,yに対して,[φr(x),φs(y)]=0 のBose条件が満足されるとします。

 

しかし,もしもKlein-Gordon場をFermi場のような反交換子を基にして定式化しようと試みるなら,

 

場の反交換子の真空期待値:

Δ1'(x-y)δrs=<0|[φr(x),φs(y)]|0>を考えること

によって,微視的因果律と矛盾することが示されます。

 

すなわち,この定式化では相互作用のある自由ではないKlein-Gordon場の不変デルタ関数(反交換子の真空期待値)Δ1'(x-y)は,

 

自由場の不変デルタ関数(反交換子の真空期待値)

Δ1(x-y)=∫d3[1/{(2π)3(2ωk)}]{e-ik(x-y)+eik(x-y)}

でスペクトル表示できます。

 

これは,Δ1'(x-y)=ZΔ1(x-y)

+∫2dσ2ρ21(x-y,σ2) す。

 

ただし,Zはくりこみ定数の1つです。

  

また,右辺のΔ1(x-y,σ2)は,平方質量がσ2のときのΔ1(x-y)

を意味します。

 

そして,Δ1(x-y,σ2)(またはΔ1(x-y))は,もちろん自由場

のKlein-Gordon方程式に従います。

 

(x-y)20 のとき,通常の交換子による定式化での不変デルタ関数

(交換子の真空期待値):

iΔ(x-y)=∫d3[1/{(2π)3(2ωk)}{e-ik(x-y)ik(x-y)}

が確かにゼロになるのに反し,Δ1(x-y)はゼロとはならない

ことを示すことができます。

 

具体的表現はΔ1(x)=∫d3[1/{(2π)3(2ωk)}](e-ikx+eikx)

=[-1/(2π2||)](∂/∂||)[∫0(cos(kx)/(k2+m2)1/2)

cos{(k2+m2)1/2}dk]です。

 

そして,x2<0 のときのΔ1(x)はLorentz不変性により,t=0 を仮定して計算しても同じです。

 

t=0 のときには,||=(-x2)1/2=(||2-t2)1/2なので,これを一般化して||→(-x2)1/2とおくことにします。

 

一方,通常の交換子による定式化でのΔ(x)は,Δ1(x)の

cos{(k2+m2)1/2}なる因子がsin{(k2+m2)1/2}に変わる

だけなので,t=0 のLorentz系を取れば,これは確かにゼロに

なることがわかります。

 

ところが,Δ1(x)の方は,0(z)を第2種の変形ベッセル関数として,

Δ1(x)=[-1/{2π2(-x2)1/2|]{∂/∂(-x2)1/2}K0[m(-x2)1/2]

=[m/{2π2(-x2)1/2|]K0'[m(-x2)1/2] と表現されます。

 

0(z)は大きいzに対しては,K0(z)~{π/(2z)}1/2exp(-z)と

漸近近似されます。

 

したがって,その微分係数の漸近近似は

0'(z)~(π/2)1/2(-z-3/2/2--1/2)exp(-z)

となります。

 

それ故,-x21/m2のような大きく離れた空間的距離では,

Δ1(x)=Δ1(,t,m2)~[m1/2/(2π)3/2}

xp[-m(||2-t2)1/2]/(||2-t2)3/4となり,

 

大きい||に対して

Δ1'(,0)~Ze-m||/||3/2+∫2dσ2ρ2)e-σ||/||3/2

となります。

 

そこで,(x-y)2<0 となる空間的なx,yに対し,Δ1'(x-y)

≡<0|[φr(x),φs(y)]|0>が,ゼロにはなりません。

 

これは,この定式化での微視的因果律成立の条件である,

(x-y)2< 0 でr(x),φs(y)]=0 になるということに

矛盾するため,正当な定式化とは成り得ません。

 

一方,スピンが1/2のFermi場を通常の反交換子によって定式化すると,

考察すべきLorentz不変な関数(場の反交換子の真空期待値)は

 

αβ'(x-y)=<0|[ψα(x),(ψ+γ0)β(y)]|0>ですが,

これは∫0dM21(M2)(iγμμ)+ρ2(M2)}αβΔ(x-y;M)

なるスペクトル表示で表現されます。

 

しかし,もしもスピンが 1/2 のFermi場を交換子で表現しようとするなら,その定式化で考察すべき場の交換子の真空期待値の表現は,

  

上に与えた場の反交換子の真空期待値の表式で反交換子:

α(x),(ψ+γ0)β(y)]交換子[ψα(x),(ψ+γ0)β(y)]

に置き換える必要があります。

 

これによって,スペクトル表示はΔ(x-y;M)をΔ1(x-y;M)

に変えた表式に変更されます。

 

それ故,微視的因果律成立の条件である,(x-y)2< 0 なるx,yに対して α(x),(ψ+γ0)β(y)]=0 となるべきことに矛盾するという結果が得られます。

 

スピンが1/2より大きい粒子場は,全てスピン1/2の粒子場の直積で表わされ,こうしたスピンの大きい自由粒子はいわゆるBerdman-Wignerの方程式に従う場で記述されます。

 

このうち,スピンが整数の場合は,この方程式はFieltz-Pauliパウリの方程式というKlein=gordon方程式を高次元に一般化したものにゲージ条件を加えたものへと変換されます。

 

一方,スピンが半奇数の場合は,Dirac方程式を高次元に一般化して,

ガンマ行列による拘束条件を付加した謂わゆるスピンが(n+1/2)

のRarita-Schwingerの方程式に従う場となります。

 

いずれにしろ,場の交換子,反交換子の真空期待値を示す不変デルタ関数は,スピンが整数の場合に反交換子で定式化したり,スピンが半奇数の場合に交換子で定式化すると微視的因果律に反する結果を与えます。

 

それ故,微視的因果律の要請を認める局所場の理論では,粒子の統計を表わす同時刻の正準関係が交換子,または反交換子のみで表現される,というような二者択一的な定式化に従うことを前提とする場合,

 

粒子のスピンが整数の場合にはBose統計に,粒子のスピンが半奇数の場合にはFermi統計に従うものしか観測可能量を表現する物理的粒子として存在できない,という結論が得られます。

 

理論が局所的対称性(つまり大域的だけではなく位置座標に依存する対称性)を持つために,ゲージ不変性を有する場合には,共変的量子化を行うためにゲージを共変ゲージに固定する必要があります。

 

このときは,通常要求されるFPゴースト(Fadeev-Popov Ghost)を記述する粒子はスピンが1/2なのにBose統計に従うものがあります。

 

それ故,これらゴースト粒子は微視的因果律の要請を満たしませんが,

ゴーストは補助場として理論に関係するのみで現実の観測可能量を記

述する際には埋没してしまう非物理的粒子なので,これらは矛盾の種

には成り得ません。

 

参考文献:J.D.Bjorken S.D.Drell 「Relativistic Quantum Fields」 (McGraw-Hill) 大貫義郎 著「ポアンカレ群と波動方程式」(岩波書店)

  

(再掲記事終わり※)

 

その他の関連記事としては2006年8/8の記事「負エネルギー解と相対論的因果律」があります。

  

(全体の注終わり)※

 

今日は,過去記事で水増しもしまたが,比較的重いテーマなので,このくらいで終わります。

  

参考文献:J.D.Bjorken S.D.Drell 「Relativistic Quantum Fields」(McGrawHill)

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訃報!!!小林すすむさん。(ヒップアップ)

 5月16日の夜,元お笑いトリオ「ヒップアップ」のメンバー小林すすむさんがスキルス性胃がんと肝臓ガンが死因で亡くなられました。享年58歳。。まだまだ若いです。

 報知新聞ニュース→「ヒップアップ」小林すすむさん,死去...がん

 「ヒップアップ」と聞くと,私はまず島崎俊郎さんが思い浮かびます。

 1980年代に「ひょうきん族」などで活躍後,小林すすむさんは俳優に転身して人気を博しました。「踊る大捜査線」などに出演していました。

   

      冥福を祈ります。  合掌!!

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2012年5月12日 (土)

相対論的場の量子論(正準定式化)(15)

相対論的場の量子論の続きです。

  

記事の最後では,便利な個数演算子:N^を導入し,正規順序

(normal-ordering)取って再定義した自由場のエネルギー・

運動量4元ベクトル演算子をμ^=Σμ^と表現して,

 

μ^の固有状態,特にH^=0^=Σω^のエネルギー

固有値:E=Σωに属する固有状態がN^の固有値

(状態の占有数=運動量がの量子の個数)の総目録{..,n,..}

のみによって完全に決定されて,

  

総個数:N^=Σ^の固有値n=Σに属する固有状態:

Φ(..,n,..)で尽くされることを見ました。

 

ずっと昔の学生時代から,量子論の本質は変換理論にある,と教えられ,そう認識してきましたが,

  

ここまでの段階でも,"場の量子化(第二量子化)というのは,通常の"座標表示の状態ベクトル=波動関数"を運動量表示,あるいは個数表示の状態ベクトルに変換するという表示の変換を意味する"ということが,再認識されましたね。

 

さて,その続きです。同種量子の区別不可能性からです。

  

§2.2 状態の対称性(Symmetry of states)

 

さて,古典自由 Klein-Gordon場に正準量子化の手続きを適用した結果,量子個数による多粒子の記述が得られました。

 

自由場に対しては,量子個数(占有数)演算子:N^はHamiltonian:H^と交換し,そこで量子個数(N^or n)は運動の常数(定数=保存量)になります。

 

(注15-1):何故なら,自由場ではH^=Σ0^ですが,

 全ての,'に対して[N^,N'^]=0 なので,明らかに全てのに対して[H^,N^]=0 です。

 

したがって,dN^/dt=i[H^,N^]=0 です。

(注15-1終わり)※

 

そして,自由なH^に加え,占有数nを変化させる相互作用項:

int^を付加すると,興味深い物理的問題に遭遇します。

 

しかし,今の自由 Klein-Gordon場の論議だけでも,まだ対象とする量子が"対称場の統計=Bose-Einstein統計"に従うことを証明するという問題が残されています。

 

まず,対象としている1種類の実スカラー粒子だけから構成される任意の状態は,異なるでの占有数のnの組み合わせにわたって,

  

固有状態:Φ(..,n,..)=Π(n!)-1/2(ak^)nkΦ(0)

 

を重ね合わせたもので与えられます。

 

そして,Φ(..,n,..)は,各々のについての量子個数nを全て与えることにより,完全に決定され,記述できます。

 

各々のについての,基本的な正準交換関係:[a^,a'^]=δkk',

[a^,a'^]=[a^,a'^]=0 に従って,全てのa^は互

いに交換するため,

 

Φ(..,n,..)=Π(n!)-1/2(a^)nkΦ(0)の右辺において,

生成演算子ak^の順序を決める必要はなく,それ故,個々の

対する量子は全く区別できないと結論されます。

 

このことは,異なる固有状態に対する展開係数の対称性に反映され

ます。以下,その詳細を検討します。

 

これは,Φ=[C0+Σn=1(1/n!)1/2{∫d31..d3nn(1,..,n)

×a^(1)..^(n)})Φ0 において,

 

演算子a^(j)の順序を交換しても状態は不変であるという事実

が,展開係数Cn(1,..,n)の引数jの交換対称性に帰着するとい

う主張です。 

 

ここで,因子(1/n!)1/2は係数Cnに課せられる規格化条件が簡単で便利な形になるよう挿入されました。

 

こうすれば,規格化は次のように書けます。

 

1=<Φ|Φ>=|C0|2+Σn=1∫d31..d3n|Cn(1,..,n)|2

です。

 

(注15-2):|Φ>=[C0+Σn=1(1/n!)1/2{∫d31..d3n

n(1,..,n)a^(1)..^(n)}|Φ0>に対して,

 

<Φ|=<Φ0|{C0+Σm=1(1/m!)1/2{∫d31'..d3m'

m(1',..,m')a^(m')..^(1')}} 

です。

 

故に,<Φ|Φ>=<Φ0|[C0+Σm=1(m!)-1/2{∫d31'..d3m'

m(1',..,m')a^(m')..^(1')}] 

×[C0+Σn=1(n!)-1/2{∫d31..d3n

n(1,..,n)a^(1)..^(n)}]|Φ0

 

|C0|2+C0m=1(m!)-1/2{∫d31'..d3m'

m(1',..,m')×<Φ0|a^(m')..^(1')|Φ0>}

 

+C0n=1(n!)-1/2{∫d31..d3nn(1,..,n)

×0|a^(1)..^(n)|Φ0>}

 

+Σm=1Σn=1(m!n!)-1/2∫d31'..d3m'd31..d3n

m(1',..,m')Cn(1,..,n)

×<Φ0|a^(m')..^(1')a^(1)..^(n)|Φ0

です。

 

ところが,明らかに,<Φ0|a^(m')..^(1')|Φ0>=0,

かつ,<Φ0|a^(1)..^(n)|Φ0>=0 です。

 

そして,<Φ0|a^(m')..^(1')a^(1)..^(n)|Φ0>は,

m≠nの場合には,^(),a^()のどちらかの数が多くて,

生成・消滅ペアから余るので真空Φ0で挟む結果ゼロです。

 

他方,m=nなら,

0|a^(n')..^(1')a^(1)..^(n)|Φ0

=ΣPδ3(P1'-13(P2'-1)..δ3(Pn'-n)となり,

 

<Φ|Φ>=|C0|2+Σn=1(n!)-1∫d31'..d3n'd31..d3n

m(1',..,m')Cn(1,..,n)

×{ΣPδ3(P1'-13(P2'-1)..δ3(Pn'-n)} 

です。

 

ただし,和記号:ΣPにおける下添Pはn個のmode番号{1,2,.,n}に対する置換(Permutation)を意味します。

 

つまり,Pは並替え順列の写像:P≡{(1,2,..,n)→(P12,..,Pn)}を意味し,それ故,ΣPは全部で丁度n!通りあるそうした全ての置換Pにわたる総和です。

 

そしてPの各項に係数Cm(1',..,m')Cn(1,..,n)を掛け,

∫d31'..d3n'の積分を実行すると,

 

重ね合わせの係数Cnに対する対称性から,n!個の置換Pの各々について全て同一の積分結果を与えるため,Pの個数n!が先頭の因子(n!)-1と相殺します。

 

(※↑ここでの因子(1/n!)1/2の挿入の理由説明では,これから示すべき展開係数Cn(1,..,n)の引数jの交換対称性は既知としました。)

  

結局,<Φ|Φ>

=|C0|2+Σn=1(n!)-1∫d31..d3n|Cn(1,..,n)|2

を得ます。

 

(注15-2終わり)※

 

そして,係数Cn(1,..,n)はn量子を含む状態のエネルギー・運動量分布を示しています。

 

n(1,..,n),与えられたの集合を持つn個の同種粒子の集まりに対する,運動量空間での波動関数と見ることができます。

  

|C0|2+Σn=1(n!)-1∫d31..d3n|Cn(1,..,n)|2=1 から.

|Cn(1,..,n)|2の個数がnの場合の存在確率密度と見なし,

n(1,..,n)を確率振幅を示す複素数と解釈するわけです。

 

 そして,Φ=[C0+Σn=1(1/n!)1/2{∫d31..d3n

 n(1,..,n)a^(1)..^(n)}]Φ0において,

 a^(1),..,^(n)のそれぞれを互いに入れ替えても

 状態として同じであるため,

 波動関数:n(1,..,n)は,引数1,..,nについて交換対称

 な関数であることがわかります。

 

つまり,n(..j,.,i..)=Cn(..i,..,j..)なることを示す

ことができます。

 

(注15-3):すなわち,

  Φ'=[C0+Σn=1(1/n!)1/2{∫d31..d3n n(..i,.,j..)

×^(1)..^(j).. a^(i)..^(n)}]Φ0 ,

 

 Φ=[C0+Σn=1(1/n!)1/2{∫d31..d3nn(..j,.,i..)

 ×a^(1)..^(j)..a^(i)..^(n)}]Φ0

  

 に対してΦ'とΦとが同一であるべき,という要求から,

 

0=Φ'-Φ=Σn=1(1/n!)1/2{∫d31..d3n

{Cn(..j,.,i..)-Cn(..i,..,j..)} 

×a^(1)..^(j)..a^(i)..^(n)]Φ0 

ですから,

  

n(..j,.,i..)=Cn(..i,..,j..) 

と結論するわけです。(注15-3終わり)※

 

上に論じたように,状態を決定付けることは,様々な値を持つ量子

の個数を全て与えるというだけの操作です。

 

同種量子は区別不可能であり,量子aが運動量iを,量子bが運動量

jを持つつ確率も,aとbを交換した場合の確率も同じです。

 

つまり,|n(..j,.,i..)|2|n(..i,..,j..)|2です。

 

こういう理由で,多体系の波動関数に対称性の条件が存在するのは,

^()の交換可能性の結果と考えられます。

 

これは正準量子化の手法で生じる実スカラー場の量子(=粒子描像の波)が"対称統計=Bose-Einstein統計"に従うこと,を示すものです。

 

§2.3場の観測可能性と微視的因果律

(Measurability of the Field and Microscopic Causality)

 

古典的には場φ(x)は,1つの物理量(observable=可観測量)であり,

その点xにおける強さ:φ(x)は測定可能なものでした。

 

量子論では,第1章の場の量子化への序文(introduction)で論じた条件により,量子領域において時空点xで定義される局所的な場の演算子として,φ^(x)を導入しました。

 

場の量子論においては古典論とは対照的に,ゼロでない交換関係が存在するため,場の強さの正確な測定には限界があります。

 

例えば,2つの異なる時空点xとyにおける場の強さ:φ^の正確な測定が可能なのは,交換子:[φ^(x),φ^(y)]がゼロとなって消える場合に限られます。

 

ところが,

φ^(x)=∫d2{a^()fk(x)+a^()fk(x)}

 =∫d3(2π)-3/2(2ω)-1/2×[a^()exp(-ikx)

 +a^()exp(ikx)}

 

 という形で,既に自由Klein-Gordon場:φ^(x)の陽な解表現が

 得られています。

  

 ただし,kx=kμμ=k00kx,k0=ω≡(2+m2)1/2,

 f k(x)=(2π)-3/2(2ω)-1/2exp(-ikx) です。

  

 場の同時刻交換関係だけから導き出されたa^(),a^()

 の交換関係:[a^(),a^(')]=δ3('),および,

 [a^(),a^(')]=[a^(),a^(')]=0 から逆に,

  

 同時刻とは限らない任意の時空点x,yにおける場の交換子:

 [φ^(x),φ^(y)]を評価できます。 

  

すなわち,  

[φ^(x),φ^(y)]∫d33'(2π)-3(4ωω')-1/2

 ×([a^(),a^(')]exp{-ik(x-y)}

 +[a^(),a^(')]exp{ik(x-y)})

  

=∫d3(2π)-3(2ω)-1[exp{-ik(x-y)}-exp{ik(x-y)}]

{-i/(2π)3}∫d3[exp{i()}sin{ω(x0-y0)}/ω] 

です。 

  

こう表現される関数を,iΔ(x-y)と定義します。 

つまり,iΔ(x-y)[φ^(x),φ^(y)] です。 

 

(注15-4):

 ∫d3)-1[exp{ik(x-y)}-exp{-ik(x-y)}]/(2i)

 =∫d3)-1[exp{{-i()+iω(x0-y0)}

 -exp{i()-iω(x0-y0)}]/(2i)

 

 ところが,∫-∞3)-1exp{-i()}

 =-∫-∞3)-1exp{i()}

 =∫-∞3)-1exp{i()}なので,

 

∫d3)-1[exp{ik(x-y)}-exp{-ik(x-y)}/(2i)]

 =∫d3)-1exp{i()}exp{iω(x0-y0)}

 -exp{-iωk(x0-y0)}

 

 =∫d3[exp{i()}sin{ω(x0-y0)}/ω]

 

(注15-4終わり※

 

Δ(x-y)は,不変特性関数の族(相対論的波動方程式の境界条件に従うGreen関数の集合)に属する関数の1つです。

 

そのLorentz不変性は, 

iΔ(x-y)∫d3(2π)-3(2ω)-1[exp{-ik(x-y)}

-exp{ik(x-y)}]なる形から明らかです。

 

つまり,Lorentz不変な指数関数が,不変体積要素

∫d3(2ω)-1=∫d4kδ(k2-m2)θ(k0)の上にわたって積分

されるからです。

 

ここで,θ(k0)は,k0>0 ならθ(k0)≡1,k00 ならθ(k0)≡0

で定義されるHeaviside関数(階段関数)です。

 

(注15-5):まず,次のようなδ-関数の性質を証明します。

 すなわち,

a>0 ならδ(x2-a2)={δ(x-a)+δ(x+a)}/(2a)

なる性質です。

 

 これは,以下のようにして証明することができます。

 

 まず,∫-∞f(x)δ(x2-a2)dx

 =∫0(x)δ(x2-a2)dx+∫-∞0f(x)δ(x2-a2)dxです。

 

 y=x2-a2と変数置換すると,2xdx=dyです。

 

0≦x<∞では,x=(a2+y)1/2.dx=dy/{2(a2+y)}1/2

ですから,0(x)δ(x2-a2)dx

=∫-a2dy[f((a2+y)1/2)δ(y)/{2(a2+y)1/2}]

=f(a)/(2a)です。

 

-∞≦x<0では,x=-(a2+y)1/2,dx=-dy/{2(a2+y)}1/2

ですから,-∞0(x)δ(x2-a2)dx

=∫-a2dy[f(-(a2+y)1/2)δ(y)/{2(a2+y)1/2}]

=f(-a)/(2a) です。

 

故に,∫-∞f(x)δ(x2-a2)dx

={f(a)+f(-a)}/(2a) となります。

 

右辺は,∫-∞[f(x){δ(x-a)+δ(x+a)}/(2a)]dx

に等しいので,a>0 では,

δ(x2-a2)={δ(x-a)+δ(x+a)}/(2a)

と結論されます。

 

そこで,F(k0,)を任意関数とすると,

 

δ(k2-m2)=δ((k0)22-m2)=δ((k0)2-ω2)

={δ(k0-ω)+δ(k0+ω)}/(2ω)なので,

 

-∞dk0F(k0,)δ(k2-m2)θ(k0)

=F(ω,)/(2ω) です。

 

したがって,∫d3[F(ω,)/2ω]

=∫d3-∞dk0δ(k2-m2)θ(k0)F(k0,)

=∫d4kδ(k2-m2)θ(k0)F(k0,) です。

 

以上から,∫d3(2ω)-1=∫d4kδ(k2-m2)θ(k0) 

を得ました。

 

(注15-5終わり)※

 

ここで,またまた,一休みです。

 

(参考文献:J.D.Bjorken S.D.Drell "Relativistic Quantum Fields" (McGrawHill)

 

PS: 40年くらい前の学生(院生)の時代には,指導教官から,

 

「細かいところに拘泥していると,学生時代の数年間では,とても論文も書ける最先端のオリジナルな領域には到達できないから,1度目の勉強,読書では,ある程度は書いてあることを信用してとにかく先に進め。。」

  

 というようなことを,よく言われていました。

 

 しかし,私の専攻は,実験ではなく理論ということもあり,

 

「一言でも理解できないことがあったり,証明や検算をすべきことがあれば決して避けて通れず,早く(または速く)わかる必要などないいずれわかればいい。理解できないたった1行があればそれに数年,いやもっと費やすことも厭わない。」

 

 というような,1回精読主義のバカな性分を通したためか?

 

 結局,この道では飯を食うことはできず,

 今も,ライフワークの1つですが,全くお金には結び付かない趣味と

 化しています。

 

 本を読んで理解した履歴の過去ノートにも,種本の内容よりもはるか

 に大量の注がそのまま書いてあり,証明や検算の山です。

 

 それでも,ブログの科学記事に載せてある注は,ノートにある注の全部

 ではなく7~8割くらいです。

 

 "当たり前と思えることでも証明しなければ"という性格は,むしろ

 数学や数理物理学の方に向いていたのかも。。。

 

 これ(=何かひっかかると,どこまでも追求する性格)で,

 さらに,早く(速く)解決できる能力があれば,

 "杉下右京"なのですがね。。

 

 ただし,ポリシーは自分とはかなり違います。

 

 ドラマ(フィクション)だし警察だから仕方ないのでしょうが,

 

「たとえ法律の方が間違っていても,それを破れば犯罪であり断罪さるべきである」とか,「目的が正当であれば手段は正当化される,のは間違いである。」などの"杉下右京"のポリシーでは,

  

 昨今の中東のジャスミン革命を含む,あらゆる革命は許されません。

 

 革命とは,富める者から無理やり財を略奪する義賊に似た行為です

 からね。

 

 上のポリシーもドグマではなく,TPOで使い分けなければ。。

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2012年5月10日 (木)

続・数学の問題(入院中ニトライ)

 ブログネタも同じようなものばかりで特徴あるものは少ないので,退院直後にアップした「数学(算数?)の問題」の続きを書きます。

 

 前の記事では,最初の問題は入院初日の4/17の午後に解いた,と書きましたが,実は入院初日の17日は検査とか,必要品の買い物などやるべきことがたくさんありました。

 

 雑用を済ませた後,問題を見て考えて本に書いてあるヒントを見るのも癪なので,完全解答には17日の消灯後の夜中までかかりました。

 

入院中の日記を兼ねたノートによれば,次の18日には3問に挑戦していますが,18日中に解けたのは次の2問でした。

 

最初の問題を問1として番号を付けます。

 

問2.  0<a,b,c≦1のとき,次の不等式が成り立つことを示せ。

 

/(b+c+1)+b/(c+a+1)+c/(a+b+1)

+(1-a)(1-b)(1-c)≦1

 

(解答)まず,一般性を失なうことなく,a,b,cの大小関係を,

 0<a≦b≦c≦1と仮定する,ことができます。

 

 この条件下では,(a+b+1)≦(c+a+1)≦(b+c+1)ですから,

 1/(a+b+1)≧1/(c+a+1)≧1/(b+c+1) です。

 

そこで,a/(b+c+1)+b/(c+a+1)+c/(a+b+1)

(a+b+c)/(a+b+1)=1+(c-1)/(a+b+1)です。

 

 したがって,1+(c-1)/(a+b+1)+(1-a)(1-b)(1-c)≦1を示せば十分です。

 

 よって,(1-c){(1-a)(1-b)-1/(a+b+1)}≦0 を示せば十分ですが,(1-c)>0 なので,{(1-a)(1-b)-1/(a+b+1)}≦0 を示せばいいことになります。

 

結局,{1-(a+b+1)(1-a)(1-b)}≧0 を示せばいいです。

 

上式の左辺=-(a+b){1-(a+b)+ab}+{a+b-ab}

 =(a+b)2-ab(a+b)-abですが,

 

 正の数の相加平均は相乗平均より大きいので,(a+b)≧2a1/21/2

 ですから,結局,(左辺)≧(3ab-2a3/23/2) です。

 

そこで,簡単のためにX≡a1/21/2 とおくと,0<X≦1です。

 

そして,Xの関数f(X)≡3X2-2X3を考えると,f(0)=0であり,

0<X≦1では,df/dX=6X(1-X)≧0 なので,この範囲では

f(X)は単調非減少です。

 

故に,(X)≧0 (0<X≦1)と結論されます。

 

以上から,f(ab)=3ab-2a3/23/2)≧0,であり,そして,

(a+b)2-ab(a+b)≧f(ab)なので,

(a+b)2-ab(a+b)≧0,です。

したがって,-(1-c){(1-a)(1-b)-1/(a+b+1)}≦0 より,

 

/(b+c+1)+b/(c+a+1)+c/(a+b+1)

+(1-a)(1-b)(1-c)≦1

 

が証明されました。 (終わり)

  

(※PS:今思うと,

(a+b)2-ab(a+b)-ab≧3ab-ab(a+b)

=ab(3-a-b)=ab{1+(1-a)+(1-b)}>0 ですから,

微分までやることはなかったですね。

 

当時(3週間前)は,今より頭が柔らかくなかったようです。※)

  

問3.  任意の正の整数kに対して,S={21―1,..,22k-1}の元の

少なくとも1つは,(2k+1)で割り切れることを示せ。

 

(解答)まず,集合Sの位数,つまりSの元:21―1,..,22k-1の個数は

丁度 2kです。

 

そして,Sの各々の元を(2k+1)で割ったときの余りrは,

r=0,1,2,..,2k のいずれかです。

 

Sの元を(2k+1)で割ったときの余りがrであることを,

2n―1≡r mod(2k+1) (n=1,..,2k)と表現します。

 

仮にSの元の全てが(2k+1)で割り切れないとすると,

2n―1≡0 mod(2k+1),かつ1≦n≦2kを満たすnは存在しません。

 

ところが,もしも2p―1と2q―1の余りが等しいとすれば,つまり,

2―1≡2q―1 mod(2k+1)を満たすp,q(1≦q<p≦2k)が存在

するとすれば,2p-2q≡0 mod(2k+1)なので,

 

2q(2p-q-1)≡0 mod(2k+1)となりますが,偶数の2qが奇数の(2k+1)

で割り切れることはないので,これは,2p-q-1≡0 mod(2k+1)である

こと:(2p-q-1)が(2k+1)で割り切れることを意味します。

 

しかし,1≦(p-q)≦2kですから,1≦n≦2kを満たすnについて,2n―1≡0 mod(2k+1)となるnは存在しないという仮定から,

 

2―1≡2q―1 mod(2k+1)を満たすp,q(1≦q<p≦2k)は存在し

ません。

 

以上から,S={21―1,..,22k-1}の2k個の元を(2k+1)で割った余り

rは全て異なると結論されます。

 

しかも,(2k+1)では割り切れないのですから,余りrは.1,2,.,.2kのいずれかの2k個であって,しかもこれら全てを尽くします。

 

しかし,このことから2n―1≡2k mod(2k+1),かつ1≦n≦2kなるnが少なくとも1つ存在します。

 

このとき,2n≡2k+1≡0 mod(2k+1)ですから,この2nは(2k+1)で割り切れるはずです。

  

2のベキ乗の因数しか持たない2nが,奇数の(2k+1)を因数とするはずはないので,これは矛盾です。

 

そこで,1≦n≦2kを満たすnについて,2n―1≡0 mod(2k+1)となるnは存在しない,という仮定の方が誤りということになります。

 

謂わゆる背理法ですが,これで成立を証明すべき命題の真なることが示されました。(終わり)

 

そして,次の問4は18日中には解けず,結局,翌19日に最後にはヒント(ほぼ答)を見てしまいました。

  

この問4については本日は問題だけをアップしておきます。

 

問4. {xn}を,x1=x,(xはx>1なる実数),xn+1=xn2+xn ,

で定義される数列とする。

 

このとき,級数和:S=Σn=1{1/(1+xn)}を求めよ。

  

という問題です。

  

 これ以後もありますが,私は気紛れなのでブログでこの続きを書くかどうかはわかりません。

 

 でも,整数,数式や数列関連の問題を解くのが得意というわけではなく,ただそれを考えるのが好きな変態?であることは再認識しました。

  

(↑※入院のヒマつぶしに,算数や高校数学の難問?を考えるのはある種の変態(or オタク?)でしょう。)

 

私の弱点は空間図形などのパターン認識がからむ問題です。

 

私は,2次元でも地図を見てもわからず,しょっちゅう他人に聞かないとたどりつけないことが多々ある方向音痴です。(※左脳は何とか機能していても右脳はダメかな。。。)

  

一応,これも入院中の日記の1つをアップしたつもりですが,この手の記事は引用文献を書かないと単なる盗作ですから,タネ本を下に明示しておきます。

 

では,またね。

 

(参考文献):秋山仁+ピーターフランクル共著「(完全攻略)数学オリンピック(増補版)」(日本評論社)

 

PS:難問というと昔,「明聖アカデミー」という御茶ノ水の現役高校生専門予備校のアルバイトで,RQC(randomquestion corner)という教室で何でも質問を聞く講師というのをやってた時代を思い出します。

 

 その予備校の当時の数学主任のH先生の個別指導の宿題で出された数学難問集をRQCで毎回質問する高3なのに中学生のように見える小さくてかわいい女子高生がいて,他のまだ大学生の講師たちと解き方など相談していたことを思い出します。

 

 当時,私は9年間住んでいた江東区の木場から豊島区巣鴨に転居したばかりの40代中半から,50歳代にかかる頃でした。

  

 結局,彼女=K野さん,については,その後,正社員のH先生からアルバイトの私が数学の個別指導を引き継いだのですが,

  

 何と彼女の第一志望は千葉大教育学部で,第二志望は明治大学文系ということでしたから,数学が必要といってもセンター試験だけです。

 

 確かに難問をたくさん解く,考えるという勉強法もありますが,私はセンター試験の過去問を解く訓練をすれば十分と考えました。

 

 何ゆえに,自力ではほとんど解けず,毎回RQCで質問するような難問の宿題ばかりを出していたのか?とそのときは疑問に思いましたね。

 

 結局,その彼女,現役のときは千葉大を落ちて,数学は関係ない明治大には合格したので,私はK野ちゃんの何らかお役に立ったのか,邪魔をしたのかは不明です。

   

 なつかしいですね。

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2012年5月 8日 (火)

順天大付属病院で検査。道すがら花の写真

 昨日5/7(月)はGW明けで帝京大病院眼科入院前から予約していた順天堂大病院の循環器内科の足の動脈硬化検査で,朝9時頃.お茶の水の病院に行きました。

 一昨日5/6(日)朝と昨日の道すがら,花の写真です。

 (※ 金は無くても高楊枝。。ダンゴより花ですか。。)

 最後の写真は,5/7午後,普通に職場に行って帰りに再び神保町まで行って帰りの自宅付近の信号そばのです。

 まず,5/6(日)午前11時頃自宅前」で。。。

    

     

     

     

    ↓会社の男子更衣室。フラッシュなしなので暗い

    

   ↓翌日5//7(月)朝10時半頃病院からの帰り

  明大校舎前の通りでつつじ,白つつじに着目しました。。

   

   

  ↓同じく午前10時半頃,御茶ノ水から都営三田線神保町に帰る途中

 , 明治大学校舎を撮 影

    

 ↓午後5時頃,会社帰りに神保町で古本を買って後

  帰りに巣鴨駅前信号そばの花壇

   

PS:実は本日5/8(火)も休みを取り昨日の検査に続いて朝10時から順天堂大学病院の循環器内科で診察受けました。

 そして明日は帝京大病院眼科で退院後初の診察予定です。

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相対論的場の量子論(正準定式化)(14)

 相対論的場の量子論の続きです。

 

 前記事では,同一の時空点における局所演算子積:A^B^

 =A^(x)B^(x)の特異性のため,A^B^の真空期待値:

 <Φ0|A^B^|Φ0>に出現する無限大の零点エネルギー

 を簡単に除去する手段として,

 

 記号:A^B^:で表記される正規順序積(normal-ordering)を

 定義する,ところで終わりました。

 

 さて,今日はその続きとして,まず,積:φ^φ^=φ^(x)φ^(x)

 の正規順序積を取ります。

 

 これは,:φ^φ^:=φ(-)(-)^+2φ(-)(+)^

 +φ(+)(+)^ですが,これの真空期待値がゼロとなって

 消えることは明らかです。

   

 すなわち,

 φ(-)(-)^

 =∫d33'a^()a^(')fk(x)fk'(x), 

 φ(-)(+)^=∫d33'a^()a^(')fk(x)fk'(x),

 

 φ(+)(+)^=∫d33'a^()a^(')fk(x)fk(x)

 であり,かつ,a^(')|Φ0>=0 ですから,

 

 <Φ0|:φ^φ^:|Φ0>=∫d33'

 [<Φ0|a^()a^(’)|Φ0k(x)fk(x)]

 となりますが,

 

 ここで,a^()|Φ0>=0 のHermite共役を取れば,

 <Φ0|a^+()=0 となるため,

  

 <Φ0|a^()a^(')|Φ0>=0 となって,

 結局,<Φ0|:φ^φ^:|Φ0>=0 を得ます。

  

したがって,一般に,x1(x)φ^(x)}{Σy2(y)φ^(y)},

または,x{C1(+)(x)φ(+)^(x)+C1(-)(x)φ(-)^(x)}]

×y{C2(+)(y)φ(+)^(y)+C2(-)(y)φ(-)^(y)}]

で表わされるような,任意の双1次演算子積について,

 

正規順序を取れば,その真空期待値はゼロとなって消えます。

 

先に,離散的表現でのエネルギー・運動量演算子:

μ^=(1/2)Σμ(a^a^++a^+^)

=Σμ(a^+^+1/2)に対して,

 

これの代わりに無限大を差し引いて真空期待値がゼロとなる

新しい演算子:P'μ^≡Pμ^-<Φ0|Pμ^|Φ0

=Σμ^+^を定義して,これをPμ^に置き換える,

と述べました。

 

いかし,実際の連続的表現での運動量演算子:

j^=-∫d3π(,t)(∂φ(,t)/∂xj)

=(1/2)∫d3[kj{a^()a^+()+a^+()a^()}]

に,正規順序(normal-ordering)を適用すれば,

 

:Pj^:=-∫d3:π(∂φ/∂xj):=∫d3kkja^+()a^()

=P'j^となって,正規順序を取ることが,上の離散表現での無限大

引き算と同じ操作を意味することは明らかです。

 

(注14-1) :Pj^:=:-∫π(∂φ/∂xj)d3:

 =-∫d3:π(∂φ/∂xj):

 =-∫d3:{φ(+)d+φ(-)d}|(∂φ(+)/∂xj)+(∂φ(-)/∂xj)}:

 

 =-∫d3(-)d(∂φ(-)/∂xj)+(∂φ(-)/∂xj(+)d

 +φ(-)d(∂φ(+)/∂xj)+φ(+)d(∂φ(+)/∂xj)}

 =Pj^+∫d3(+)d,(∂φ(-)/∂xj)] です。

 

 然るに, 

 [φ(+)d,(∂φ(-)/∂xj)][∫d3∫d3'

=[(-iωk)a^()fk(x),(ik'j)a^(')fk'(x)]

=-(1/2)∫d33'(2π)-3kωk')-1/2kk'j)

[a^(),a^+(')]×exp{i(')-i(ωk-ωk')t}

です。

 

故に,∫d3(+)d,(∂φ(-)/∂xj)]

=-(1/2)∫d33'(ωkωk')-1/2kk'j)[a^(),a^+(')]

×δ3(')exp{-i(ωk-ωk')t} 

=-(1/2)∫d3{kj[a^(),a^+()]}

です。

 

 また,Pj^

 =(1/2)∫d3[kj{a^()a^+()+a^+()a^()}]

 です。

 

 したがって,

 

:Pj^:=Pj^+∫d3(+)d,(∂φ(-)/∂xj)]

 =(1/2)∫d3[kj{a^()a^+()+a^+()a^()

 -[a^()a^+()]}

 =∫d3{kja^+()a^ ()}=P'j^

  

 を得ます。 (注14-1終わり)※

 

同様に,:P0^:=P'0^=H'^=∫d3ka^+()a^()}

となることも示すことができます。

 

ここでは,正規順序の唯一の効果は,理論から零点エネルギーを

除去し真空状態Φ0をエネルギーゼロの状態として定義できるこ

とです。

 

先に,離散表現:Pμ^=Σμ(a^+^+1/2)で与えた,

エネルギー・運動量の固有値と固有状態の関係:

μ^Φ(nk1,nk2,..,nkr,..)

=Σ(n+1/2)kμΦ(nk1,nk2,..,nkr,..),および,

 

P'μ^≡Pμ^-<Φ0|Pμ^|Φ0>=Σμ^+^

から,P'μ^の固有値を見出すことができます。

 

すなわち,

P'μ^Φ(nk1,nk2,..,nkr,..)=ΣμΦ(nk1,nk2,..,nkr,..)

(nkr=0,1,2,..) です。

 

各nomal-mode:に対する異なる固有状態は,n個の量子に相当

する4元運動量kμを与えます。

 

各々のについて,その固有状態は,Einsteinの関係式:

μμ=m2 に従う4元運動量kμと質量mを有すると

見えます。

 

ここに至って,正準量子化の手続きから,質量mを持つ1個,2個と

個数を数えられるような1つの粒子描像の出現が見られます。

 

各非負の整数n番目の運動量状態の占有数(occupation-number)

と呼ばれます。

 

そして,この量子個数(占有数):nの総目録{nk1,nk2,..,nkr,..}

が量子状態:Φ(nk1,nk2,..,nkr,..)を完全に決定します。

 

ここで,N^≡a^で定義される個数演算子:N^

導入すれば便利です。これは非負の整数固有値を取ります。

 

すなわち,N^Φ(nk1,nk2,..,nkr,..)

=nΦ(nk1,nk2,..,nkr,..) (nkr=0,1,2,..) です。

 

(注14-2):Φ(nk1,nk2,..,nkr,..)=ΠkΦk(nk)であり,

 Φ(n)≡(n!)-1/2(a^)kΦ(0)です。

 

 まず,N^Φ(0)=0 は明らかです。

 

 そして,N^Φ(1)=N^^+Φ(0)

 =a^+^+Φ(0)=^+[a,^+(0)

 =a^+Φ(0)=Φ(1)です。

 

 それ故,Φ(1)は固有値1に属するN^-固有状態です。

 

 ここで,仮に,Φ(nk)が,固有値nkに属するN^-固有状態

 であること:N^Φ(nk)=nΦ(nk)が成立している,と

 すると,

 

 N^Φ(nk+1)=N^(nk+1)-1/2^+Φ(nk)

 =(nk+1)-1/2^+N^Φ(nk)

 +(nk+1)-1/2^+[a,a^+(nk)

 =(nk+1)(nk+1)-1/2^+Φ(nk)

  

 つまり,N^Φ(nk+1)=(nk+1)Φ(nk+1)

 を得ます。

 

 それ故,帰納法によって,

 N^Φ(nk)=nΦ(nk) (nkr=0,1,2,..)が成立する

 と結論されます。

 

したがって,N^Φ(nk1,nk2,..,nkr,..)=N^ΠkΦk(nk)

=ΣkΦk(nk)です。

 

(注14-2終わり)※

 

そして,正規順序を取ったエネルギ-・運動量演算子を

'μ^でなく,primeをはずして改めてPμ^と表記する

ことにすれば,個数演算子^を用いて,

μ^Σkμ^と書けます。

 

そして,交換関係,[a^,a'^+]=δkk',

[a^,a'^]=[a^+,a'^+]=0 から,

 

個数演算子:^≡a^+^とa^,a^+の交換関係が,

次のように書けることを示すことができます。

 

すなわち,まず,[N^,a'^+]=[a^+^,a'^+]

=a^+[a^,a'^+]+[a^+,a'^+]aより,

[N^,a'^+]=δkk'^+=δkk'k'^+  です。

 

他方,[N^,a'^]=-δkk'^=-δkk'' です。

 

これらと,Pμ^Σkμ^とを関連付けると,a^+

4元運動量がμの1量子を生成する生成演算子

(creation operator)を意味すると考えられます。

 

つまり,a^+は4元運動量がkμの量子個数がnkの状態から,

同じ4元運動量で量子個数が(nk+1)の状態を創出すること

を示していると考えられます。

 

すなわち,

μ^a^+Φ(nk1,nk2,..,nkr,..)

=a^(Pμ^+kμ)Φ(nk1,nk2,..,nkr,..)

k'k'μk’+kμ)a^+Φ(nk1,nk2,..,nkr,..)

です。

 

(注14-3):何故なら,

 Pμ^a^+Σk''μN^k'^

Σk'k'μ^N^' Σk(k'μ[N'^,a^]

=a^(Pμ^+kμ)

です。

 

それ故,Pμ^a^Φ(nk1,nk2,..,nkr,..)

 =k'k'μk’+kμ)a^Φ(nk1,nk2,..,nkr,..)

 を得ます。

 

(注14-3終わり)※

 

同様に,^は4元運動量がkμの1量子を消滅させる消滅演算子

(annihilation operator)を意味します。

 

^は4元運動量がkμの量子個数がnk(≧1)の状態から,量子個数が(nk-1)の状態を創出します。

 

しかし,特に,量子個数nkがゼロの状態(nk=0)にa^を作用させると,その状態そのものが消えてしまいます。

 

すなわち,

μ^a^Φ(nk1,nk2,..,nkr,..)

=a^(Pμ^-kμ)Φ(nk1,nk2,..,nkr,..)

k'k'μk’-kμ)a^Φ(nk1,nk2,..,nkr,..)

です。

 

演算子a^,およびa^の行列要素のうちでゼロでないものは,

占有数がn'k=nk±1の量子個数:n'kを持つ状態とnkを持つ状態

とを結び付けるものだけです。

 

すなわち,以下,Diracのブラケット(bra-c-ket)表示を用いて,

状態φk(nk)を|nk>と表示すれば,

 

<n'k|a^|nk>≡<φk(n'k)|a^|φk(nk)>

=(nk)1/2δn'kk-1,

 

<n'k|a^|nk>≡<φk(n'k)|a^k(nk)>

=(nk+1)1/2δn'kk+1

 

です。

 

(注14-3):何故なら,|n>=Φ(n)≡(n!)-1/2(a^)kΦ(0)

ですが,これは,<n'|n>=<φk(n'k)|φk(nk)>=δn'kk

と規格化されています。

 

そこで,<n'+1|n>=<φk(n'k+1)|φk(nk)>

=δn'kk-1より,

 

(n'k+1)-1/2<a^φk(n'k)|φk(nk)>

=(n'k+1)-1/2<n'k|a^|nk=δn'kk-1 です。

 

故に,<n'k|a^|nk>=(n'k+1)1/2δn'kk-1 を得ます。

 

他方,<n'|n+1>=δn'kk+1より,

(nk+1)-1/2<n'k| a^|nk)>=δn'kk+1なので,

<n'k|a^|nk>=(nk+1)1/2δn'kk+1 を得ます。

 

(注14-3終わり)※

 

 かなり,長くなったし切りがいいので,今日はここまでにします。

 

(参考文献:J.D.Bjorken & S.D.Drell "Relativistic Quantum Fields" (MacGrawHill)

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2012年5月 4日 (金)

入院中に撮った写真等

 表題の通りです。

 ,入院中に,何とはなしにときどき,景色を中心に写真を撮りました。

 まずは,4/17(火)に帝京大付属病院の内科病棟の15階に入院した後,7階まで 降りて屋上庭園で撮影した写真からです。

  

 ↓ そこにいた庭師?に聞くと,これは芝桜だそうです。 ふーん。さくら?

   

    ↓この花は何だっただろう?

   

 

    

 次は入院した日の晩,,1503室の同部屋のS川さんから借りた本です。

 恩田陸の「夜のピクニック」(2004年本屋大賞)です。

  

 私なら恐らくこうした小説を読むことを選択することはないでしょうし,病院で読む小説としては,この種の内容がマジ?の本は選ばないと思います。

 折角なので,読み始めたら結構興味深く毎日,少しずつ読み進んでいました。

 しかし,27日の眼科診察で医師から急に「明日退院していい」と言われ,,S川さんは「6月までは15階にいるから返すのはイツでもいい」と言ってましたが,そういうわけにもいかないので,その日のうちに残りを読了し夜消灯前にはお返ししました。 

 結局,今回の入院で読んだ小説はこれだけでしたが,今までの入院時の推理小説やB級の娯楽小説とは違って,病院で読む小説という意味じゃなく,ても新しい読書傾向の趣味が開けたカモ。。

 以下は,時系列順に20枚くらい。。

 まずは,翌朝(4/18(水)),内科15階談話室の窓から見た東京の絶景から。。

 ↓超肥満で,医学的に減量中の元自衛隊員という兄ちゃんから,正面に朝霞の駐屯地のタワー?が見えて,天気が良ければ富士山も見える,と言われたので,こちらは北向きの窓でしょう。

   

↓15階の一般用の中央エレベータの15階フロアです。

 手術の際のストレッチャーとか医師,看護師などの業務用は別に奥のエリアにあって患者は入れません

  

    ↓15階談話室の給湯コ^ナーです。

     

  ↓同じく15階談話室のテレビとゴミ回収ボックスです。

 私は自室ではなく,ほとんどここにたむろしていました。

 「なるべく部屋にいてくれ」とよく注意されましたが,それじゃ退屈なので

    

↓別の日にやはり15階北向きの窓からです。

    

    

    

  4/23(月)の朝の10時半頃,晴れて15階から7階の眼科病棟に移りました。

  ↓その記念に,自室のスグ隣出口から7階屋上に出て病棟側?を撮影

    

  ↓7階の私のベッドとそのまわり

   

  以下は,内科から眼科への転科の数日後にやっと晴れて,屋上に出たときに撮った写真です。

 入院最後の頃,天気が良くてドアが閉鎖されずに屋上に出られる日は少なかったので,これらを撮ったのも全部で2日か3日くらいでしょうか。。

    ..

 ↓7階屋上庭園からさらに病院の上の方を撮りました。

  前にいた15階などまだまだ上の階があります。

  

    

    

 ↓昨年6月には,屋上この当たりの排水路に,カルガモの親子がいました。

 去年は,カメラは無く携帯電話もカメラ機能無いので惜しいことをしました。

   

  

    

   

   

   

 これで終わりです。

 

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5月初めの癒し

 4月30日にもらったYou-Tube メールからです。

 

PS:勘違いしないように。。私は別にプロのカウンセラーでもないし,モチロン神様でもカリスマでもないよ。。。

 リストカットを繰り返して,本気じゃないとしても,いつか事故が起きるから。。

 やめなよ。。

 思い通りにならないからって,それは小さい子供が地面に寝ころがって.,「アレ買ってエー」とか泣きわめく様と変わりない。。

 私自身も平気なようでも,幼いころから今まで,挫折数々あったし今もある。

 ショックを合理化や諦観でゴマかし,鈍感を装っているだけです。

 今となっては普通の人なら簡単にできることさえ頭の中で考える通りには体がいうことを聞いてくれません。

 ある程度は歳もとり,いろいろわかるようでも自分の経験したり出会ったその他大勢とあなたは恐らく違うし,自分はあくまで自分で,その他大勢からの類推からでしか,私にはわかりっこないから,所詮通り一遍のアドバイスや対応,気休めくらいしかできません。

 もっとも,単なる気休めだと思っているのもわかってるから,それはそれでいいのだけどネ。上から目線だけど,みんな救ってアゲたいけど。。

 夜中,零時頃,就寝前にインスリン8単位を打つ前に,久しぶりに血糖値を測ってみると,497です。アリャリャ,退院前はせいぜい250くらいだったのに。。。

 チョッとやばいネ。。

 これから少し寝た後に(あと1,2時間しかないが)朝食前のインスリン4単位は打つとしても朝食抜きですね。

 退院後も,毎日4回のインスリンはちゃんとやってますが,入院中の"おあずけ"連続の反動で,少しくらいはと,ここ数日は食欲旺盛なまま食してるせいでしょう

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2012年5月 3日 (木)

相対論的場の量子論(正準定式化)(13)

相対論的場の量子論の続き記事のまとめアップの続きです。

 

さて,この段階で,Hamiltonian H^も運動量^も角振動数がω

で波数がの単純な調和振動子の集まりという形になりました。

 

Hamiltonianで見ると,

H^=(1/2)∫d3{a^()a^()+a^()a^()}]

は,H^=(1/2)Σω(a^a^+a^^)という離散的表現

を連続的にした形です。

 

そして実際,a^(),a^()は,以前1粒子の例で論じた

調和振動子のエネルギー準位を上げ下げする昇降演算子

そのものです。

 

これらは,互いに同一の交換関係を満足し,規格化の規約を別に

すれば,今のa^(),a^()は前の調和振動子の昇降演算子

と演算子として同一のものです。

 

そこで,規格化が関係する手続きを明らかにして,以前の単純な

1次元調和振動子に対応する粒子の量子的記述との完全な等価

性を得るため,再び一時的に離散的記述に立帰ることにします。

 

運動量(波数)の空間を,ΔVの微小体積を持つセルに分割

すると,∫d3→ ΣΔV3(')→δkk'/ΔV 

と読み変えられることになります。

 

このとき,H^はこの運動量-空間の各セルにおける個々の

Hamiltonian:H^の総和で与えられます。

 

つまり,H^=Σ^=Σ(1/2)ω(a^a^+a^^)

です。

 

ただし,a^≡(ΔV)1/2a^()であり,これらの交換関係は,

[a^,a'^]=δkk',[a^,a'^]=[a^,a'^]=0

です。

 

(注13-1):連続形なHamiltonianを離散形で近似します。

 

 H^=∫d3[(ω/2){a^()a^()+a^()a^()}]

=Σ(ΔV/ΔV)[∫ΔV3/2){a^()a^()

+a^()a^()}]=Σ<H^>ΔV

 

と書けます。

 

ただし,<H^>はセルΔVの中でのH^の平均値です。

 

すなわち,<H^>≡(1/ΔV

[∫ΔV3/2){a^()a^()+a^()a^()]

です。

 

ΔV0 の分割の極限では,セルΔVの中で,a^(),

a^()は一様であり,a^()=a^/(ΔV)1/2である

とすれば,

 

^=(ΔV)1/2a^()であり,H^≡<H^>ΔV

結局,離散的表現として,H^=Σ^ ;

^=(1/2)ω(a^a^+a^^)

と書くことができます。

 

 そして,[a^,a'^]

 =(ΔVΔVk')1/2[a^(),a^(')]

=ΔVδ3(')=δkk' となります。

 

(注13-1終わり※)

 

 この調和振動子との類似は,別に今改めて驚くべきことではなく,

 古典Klein-Gordon波動場は元々noral-mode(正規基本波)による展

 開で記述できて,個々のnoral-mode座標が丁度,調和振動子である

 ことは,既によく知られていることです。

 

※(注13-2):今の場合, noral-modeとはKlein-Gordon方程式の基本解:

 fk(x)=(2π)-3/2(2ω)-1/2exp(-ikx)

 =(2π)-3/2(2ω)-1/2exp(ikx-iωt),

 および,k*(x)=(2π)-3/2(2ω)-1/2exp(ikx)

 =(2π)-3/2(2ω)-1/2exp(-ikx+iωt) 

 を意味します。

 

k(x),fk*(x)が,"noral-mode=正規基本波"で,noral-mode座標

が調和振動子であるという意味は,これらが,Klein-Gordon方程式:

(□+m2)fk=0, (□+m2)fk*=0 を満たす基本解であり,

 

しかも調和振動子場の振幅に対する方程式:

2k/∂t2=-ω2k,∂2k*/∂t2=-ω2k*

を満足するということです。

 

(注13-2終わり※)

 

 さて,たった今実行したことは,単に調和振動子を量子化して

 (生成・消滅)演算子:a^(),a^()を作ることでした。

 

 量子化すると,古典場のエネルギーは離散的な振動子エネルギー

 の和になることが予期されます。

 

エネルギー固有値を定め,その固有状態ベクトルを構築するため,

各振動子のHamiltonian:

^=(1/2)ω(a^a^+a^^)

を個々独立に考察します。

 

総エネルギーH^は,互いに交換する波数,振動数

ω=(2+m2)1/2を持つ振動子の項H^の総和:

H^=Σ^です。

  

そこで,一般の状態ベクトルΦは,そうした全ての値に対する

^の固有状態ベクトルの直積(テンソル積)の重ね合わせ

(線形結合)として表現できるはずです。

 

このことは,場のHamiltonianの固有状態の生成する空間の

完全性(completeness)の仮定に従って成立します。

 

に対する振動子の固有値問題の解は,固有状態と固有値が,

以下の関係式を満足する整数:nk=0,1,2..,によって特徴付け

(characterize)されます。

 

これは,便宜上値が離散的なケースを想定していますが,容易に

連続の値のケースに拡張できます。

 

まず,H^=(1/2)ω(a^a^+a^^)において,

[a^,a^]=1 なのでa^a^=a^^+1 に

より,^=ω(a^^+1/2) と書き直せます。

 

それ故,H(n)=(n+1/2)ωΦ(n)

Φ(n)=(n!)-1/2(a^)nkΦ(0) と表現されます。

 

ただし(0)はH^の基底状態(ground-state)であり,

(0)=0 によって定義される,H^に属する不変部分

空間での最低エネルギー状態です。

 

このとき,H^の固有状態ベクトルの全体:{Φ(n)}は,

<Φ(n)|Φ(n')>=δnkn'k

と規格化されているとしています。

 

さて,運動量演算子:^も,エネルギー:H^=Σ

=Σ(1/2)ω(a^a^+a^^)と同様,

離散的セルによる記述が可能で,

 

^=Σ^=Σ(1/2)(a^a^+a^^)

と分解できます。

 

そして,先に明示した,

(n)=(n+1/2)ωΦ(n)

(nk=0,1,2..)を満たすH^の固有状態:Φ(n)は,

 

(n)=(n+1/2)Φ(n) (nk=0,1,2..)

を満たします。

 

そこで,エネルギーH^と運動量^の共通の固有状態Φは,

Φ(nk1,nk2,..,nkr,,,)≡ΠkrΦkr(nkr)と表現され,

 

μ^Φ(nk1,nk2,..,nkr,..)

=Σ(n+1/2)kμΦ(nk1,nk2,..,nkr,..)

となります。

 

ただし,Pμ^=(H^,^)であり,kμ=(ω,)です。

 

全体としての基底状態:最低エネルギー準位の状態Φ0は,

全てのnkがゼロの状態:Φ(0,0,..,0,..) です。

 

これは0≡ΠkΦk(0)とも表わされます。

  

この状態は,場のどのnormal-modeにおいても励起されていない状態

を意味しています。

 

この状態を,物理的な,真空(vacuum)状態と呼びます。

 

この真空状態のエネルギーE0, 

0Φ0=H^Φ0=Σω(a^^+1/2)Φ0

=Σ(1/2)ωΦ0 で与えられます。

 

そこで,E0=Σ(1/2)ωですが,これは生憎く無限大に発散

します。

 

それは,各nomal-modeの無限個数の振動子の零点エネルギーの

総和となるからです。

 

これが,場の理論において直面するであろう幾つかの発散のうち

の最初のものです。

 

この発散だけなら,元のH^の表現から無限大を差し引く,という

単純な操作でE0=Σ(1/2)ωを相殺すればいいだけで問題あり

ません。

 

こうした無限大を引くという操作が許される理由は,絶対的な

エネルギーの値が観測量として測定されるわけではなく,実測

では単にエネルギーの差だけ,エネルギーの相対値だけ,が,

物理的な観測量として意味を持つに過ぎないからです。

 

そこで,この無限大の零点エネルギ-は,丁度,真空状態の

エネルギーの期待値に一致しますから,エネルギー・運動量

演算子を次式で再定義すれば,この発散は自動的に除去され

ます。

 

すなわち,P'μ^=Pμ^-<Φ0|Pμ^|Φ0

=Σμ(a^^+1/2)-Σ(1/2)kμ

=Σμ^^ですから,

 

μ^を新しくP'μ^で置き換えて,Pμ^≡Σμ^^

と定義します。

 

場に交換関係という条件が課せられる前には,Pμ^でもP'μ^でも

意味的には同一です。

 

何故なら古典的には,全ての物理量,nomal-mode振幅は交換する量

であり,したがってれ零点エネルギーなるものも存在しないから

です。

 

場の理論においてPμ^をP'μ^で置き換えることは,場φ^(x)

の同時積φ^(x)φ^(x)などにおいて,

 

φ^(x)=φ(+)^(x)+φ(-)^(x)の正振動数部分

(消滅演算子部分):φ(+)^(x)≡∫d3a^()f(x)を,

常に負振動数部分(生成演算子部分):

φ(-)^(x)≡∫d3a^()f(x)の右側に位置するように

書き換えることに同等です。

 

この順序換え(ordering)操作は,normal-ordering(正規順序(積))

として知られており,記号: :で表現されます。

 

例えば,:A^B^:=:(A(+)^+A(-)^)(B(+)^+B(-)^):

≡A(+)^B(+)^+B(-)^(+)^+A(-)^(+)^+A(-)^B(-)^

です。

 

(※A^,B^がFermion場:spinor場なら定義は異なります)

 

つまり,A^B^=:A^B^:+[A(+)^,B(-)^] or

:A^B^:=A^B^-[A(+)^,B(-)^]

です。

 

長くなったので,また,ここで一休みします。

 

(参考文献:J.D.Bjorken S.D.Drell "Relativistic Quantum Fields" (McGrawHill)

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相対論的場の量子論(正準定式化)(12)

4/17(火)から,急遽,左眼の手術前にインスリン投与のために一週間

早く帝京大付属病院の内科に入院したので,相対論的場の量子論の

続き記事の草稿を用意してアップするばかりだったのですが,アッ

プしても十分な校正,編集の余裕がないと考えて,Pendingにしてい

ました。

 

退院後のアレコレが一段落したので,それをアップしておきます。

 

まず,前記事までのエッセンスを要約します。

 

Klein―Gordon方程式:(□+m2)φ^=0,つまり,

(∂μμ+m2)φ^=(∂2/∂t2-∇2+m2)φ^=0 に従う

自由実スカラー場の演算子:φ^(,t)は,

 

演算子の展開係数:a^(),a^()によって,

φ^(x)=φ^(,t)

=∫d3{a^()fk(x)+a^()fk(x)}

 と基本平面波によるFourie積分展開形に表わされます。

 

ただし,fk(x)=fk(,t)≡(2π)-3/2(2ω)-1/2exp(-ikx)

=(2π)-3/2(2ω)-1/2exp(ikx-iωt),

 

k(x)=fk(,t)≡(2π)-3/2(2ω)-1/2exp(ikx)

=(2π)-3/2(2ω)-1/2exp(-ikx+iωt) であり,

  

それぞれ,正,負振動数を持つ平面波解です。

  

これらは,Klein―Gordon方程式の基本解なので,角振動数

ωは,ω≡(2+m2)1/2 なる関係式で定義されています。

 

よって,φ^(,t)

=∫d3(2π)-3/2(2ω)-1/2[a^()exp{i(kx-ωt)}

+a^()exp{-i(kx-ωt)}]

と書けます。

 

一方,この自由K;ein^Gordon場のLagrangian 密度は,

=(1/2)(∂μφ^∂μφ^-m2φ^2)で与えられます。

 

故に,場φ^(,t)の共役運動量は,π^(,t)=∂/∂φ^d

=φ^d(,t)です。

 

ただし,φ^d≡φ^dot=∂φ^/∂t=∂φ^/∂x0です。

 

故に,π(,t)=∂φ^(,t)/∂t

=-i∫d3(2π)-3/2(2ω)-1/2ω[a^()exp{i(kx-ωt)}

-a^()exp{-i(kx-ωt)}] 

となります。

 

さて,前記事の最後では,

 

φ,π^の正準同時刻交換関係:

[φ^(,t),φ^(,t)]=[π^(,t),π^(,t)]=0,

および,[π^(,t),φ^(,t)]=-iδ3() と,

  

a^()=i∫d3{fk(,t)∂0 φ^(,t)}から, 

a^()の交換関係を導くことができます。