相対論的場の量子論(正準量子化)(34-2)(34の補遺)
前回,入院前最後の相対論的場の量子論(正準量子化)の記事は,
最後の結論的説明を書かないまま,中途半端に終わったので続き
を補遺として追加します。
まず,前記事の最後の部分は,
以上から,
Λ^(x,ε)≡∫d3y{∇y2Ak d^(y,t)}/(4π|y-x|)}
とおけば,
U^(ε)Aλ^(x)U^-1(ε)
=Aλ^(x)-(i/2)εμν[Mμν^,Aλ^(x,t)]
=Aλ^(x~)-ελσAσ^(x)-ελσ∂σΛ^(x,ε)
が得られます。
ただし,ελσが空間回転:εijのみの場合はΛ(x,ε)はゼロ,
または定数です。
したがって,このΛ^(x,ε)が,この変換に伴うゲージ変換の
ゲージ関数を与えることがわかります。
と書きました。今日はここからの続きです。
まず,このゲージ項が必要なことは明らかです。
何故なら,Φ^(x)=A0^(x)≡0 のとき,任意のユニタリ変換:
U^に対し,U^Φ^(x)U^-1=U^A0^(x)U^-1=0 が成立する
ので
変換前の旧Loretz系における状態:|α>が,新Loretz系
(x~μ=xμ+εμνxν)においては,あるユニタリ変換:
U^(ε)により,U^(ε)|α>に変換されるとすれば,
U^(ε)Aμ^(x)U^-1(ε)
=Aμ^(x~)-εμνAν^(x)-εμν∂νΛ^(x~,ε)
において,
μ=0 に対応するものは,左辺=U^A0^(x)U^-1=0 であり.
右辺=-ε0kAk^(x)-ε0k∂kΛ^(x,ε) です。
したがって,左辺=右辺が成立するためには,ゲージ項が存在
しなければならないことがわかります。
このとき,電磁場Aμ^(x)の行列要素については,
<β|U^+(ε)Aμ^(x~)U^(ε)|α>
+∂μ<β|U^+(ε)Λ^(x~,ε)U^(ε)|α>
=Sμν(ε)<β|U^+(ε)Aν^(x)U^(ε)|α>
が成立します。
つまり,U^(ε)Aμ^(x)U^-1(ε)
=Aμ^(x~)-εμνAν^(x)-εμν∂νΛ^(x~,ε)
なる構造から,
新Loretz系での場の演算子:Aμ^(x~)はMaxwell方程式を満足し,
それ故,この量子論定式化においてもMaxwell方程式は共変である
ことがわかります。
場の従うべき基本方程式が不変という意味では,理論は共変である
といえます。
※(注1):物理的観測量としての場は,その行列要素:
<β|Aμ^(x)|α>で与えられ,これが古典的場の電磁ポテンシャル
Aμ(x)に対応していて,Maxwell方程式を満足します。
そして,新Loretz系での同じ行列要素は,
<β|U^+(ε)Aμ^(x~)U^(ε)|α>
=Sμν(ε)<β|U^+(ε)Aν^(x)U^(ε)|α>
で与えられます。
これが古典的電磁場のポテンシャル:
A~μ(x~)=Sμν(ε)Aμ(x)に対応しているため,
古典電磁気学において,Maxwell方程式は共変である,という
対応原理が成立しています。
(注1終わり)※
そして,さらなる要請は,新Loretz系での場をA~(x~)と書くと,
横波(Coulombゲージ)の条件:∇~A~(x~)=0 が保持されること,
および,新Loretz系においても,旧Lorentz系と同じ,修正された
正準交換関係が保持されることです。
これらのことは,具体的計算から容易に証明できます。
※(注2):上記の言明は,場:A^(x)を,その行列要素:
<β|A^(x)|α>と同一視したときの表記をA^(x)とし,
x~における行列要素:<β|U^+(ε)A^(x~)U^(ε)|α>を,
A~(x~)と見たときの関係です。
A(x~)=<β|U^+(ε)A^(x~)U^(ε)|α>であるという
見地からは,
∇~A~(x~)=0 は,∇~A~(x~)
=<β|U^+(ε)∇~A^(x~)U^(ε)|α>
により,∇~A^(x~)=0 を意味します。
そして,∇~A(x~)=∂~kAk^(x~)
=(∂k+εkν∂ν)Ak^(xμ+εμνxν)
=∂k{Ak^(x)+εμνxν∂μAk^(x)}+εkν∂νAk^(x)
=∂kAk^(x)+(εμk+εkμ)∂μAk^(x)
+εμνxν∂μ∂kAk^(x)
=∇A(x)+εμνxν∂μ{∇A(x)}=0
です。
すなわち,確かに∇~A^(x~)=0 を得ます。
しかし,当時のノートにある通りに書きましたが,
さすがにこれは重箱の隅の蛇足で,ヤリ過ぎです。
つまり,関数A^(x)が∇A^(x)=0 を満たすなら,
この等式はx=xμについての恒等式です。
∇A^(x)=0 は任意のxについて成立する等式なので,
xをx~に変えただけの∇~A^(x~)=0 が成立するのは
確かめるまでもないことでした。
x → x~ がLorentz変換でなくても成立することです。
また,場A(x~)は,x~μをc-数のパラメータとする演算子です。
そこで,lorentz変換に対して単にユニタリ変換を受けるだけ,
つまり,A~(x~)=<β|U^+(ε)A^(x~)U^(ε)|α>
=S(ε)<β|A^(x)|α>より,
A^(x~)=U^(ε)A^(x)U^+(ε)となるだけですから
任意の準拠Lorentz系で同時刻交換関係を取れば,
元の準拠Lorentz系での交換関係:[ , ]はc-数なので,
U^(ε)[ , ]U^+(ε)=[ , ]となるため,
それらが,元の準拠Lorentz系での交換関係と一致するのは
明らかです。
(注2終わり)※
こうして,各準拠Lorentz系で,∇A^=0,かつ,A0^=0 の
輻射ゲージを取って,量子電磁力学
(QED:Quantum ElectroDynamics)を定式化すると,
相対的に運動している観測者OとO~のそれぞれが認識する状態
を関連付ける1つのユニタリ変換を確実で合理的なモノとする
ことができるわけです。
今日は,ここで終わります。
(参考文献):J.D.Bjorken S.D.Drell "Relativistic Quantum Fields" (McGrawHill)
PS:勘三郎さんの急死に驚いて前記事の訃報を書かなければ,今朝予定
していた本記事のアップはもっと朝早くできていたはずでした。
おかげでアップは出勤前となり,まず文字を拡大したあと,一所懸命に
2時間ほど,出かける時刻をイツモより30分遅らせて添削し編集して後
少しというトコロで,フリーズして
謂わゆるMicrosoftに「送信する?」,「送信しない/?]のエラーメッセージ
が出て.アチャーとなって徒労が決まり,,心残りしながらも夕方帰宅する
までそのままでした。
こういうのも心臓に悪いですね。
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コメント
やはり、Windowsの場合は、gvimrcに
set iminsert=0
set imsearch=0
を設定するのが正解でした。
どうもすみませんでした。
投稿: 凡人 | 2012年12月13日 (木) 00時33分
xをx~を変えただけの → xをx~に変えただけの
交換関係:{ , ]はc-数 → 交換関係:[ , ]はc-数
ことができうわけです → ことができるわけです
投稿: hirota | 2012年12月10日 (月) 16時55分
>少しというトコロで,フリーズして
http://www.vim.org/ からvimをダウンロードしてインストールし、vimrcファイル等で、
例えば
set ut=300000
と設定すれば、5分以上前の更新内容を失わない様に出来ます。
また、Windowsの場合は、
set iminsert=1
set imsearch=1
も設定した方が良いでしょう。
投稿: 凡人 | 2012年12月 5日 (水) 22時01分