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2012年12月12日 (水)

相対論的場の量子論(正準量子化)(36)

相対論的場の量子論シリーズ,電磁場の量子化の続きです。

 

今日は,電磁場を量子化した際に付随する場の量子である光子

の性質に言及する節に入ります。

 

§4.5 光子のspin(Spin of the Photon)  

 光子(Photons)は,幾つかの意味でKlein-Gordon量子とは異なって

 います。

 

まず,光子に同定される電磁場の量子は,Einsteinの条件:

2=kμμ=0 を満足するため,静止質量がゼロです。

 

さらに,電磁場のベクトルポテンシャル(x)は実なので,

それが量子化された場^(x)はHermite演算子です。

 

そして,"この量子=光子"は,charge(電荷)を伴なわないので,

実Klein-Gordon理論を量子化する際に出現する中性中間子に

類似しています。

 

しかし,実 Klein-Gordon場に比較して自由電磁場が持つ新しい

1つの特徴は,偏極(polarization)ベクトル:ε(,λ)の存在

です。

 

これは,各光子を分類するもので,spin角運動量に関わる量です。

 

そして,特に,場^(x)がベクトルであることから,spinが1の

光子という描像が導かれます。 

 

ただし,横波(transverse wave)という制限があることから空間

ベクトルの3つの自由度から1つが除かれます。

 

つまり,光子はspin角運動量が1であり,しかもそれの波の伝播

方向に沿った射影は決してゼロになることができず,±1のみを

取るという特徴を有するわけです。

 

このことを具体的に示すため,前に与えた角運動量演算子の表現:

ij=∫d3:Ar d^(xij-xji)Ar^

(Ai d^Aj^-Aj d^Aj^):

用いて,1光子状態の角運動量の第3成分 12^

の値を調べます。

 

すなわち,状態:Φ1.k=a^(,λ)Φ0=a^(,λ) |0 >

について,121.k=[12^,a^(,λ)]|0 >を計算します。

 

ここで,計算の便宜上,この状態:Φ1.k=a^(,λ)|0 >の

波動ベクトルは第3軸に沿っているとします。

 

つまり,として0≡(0,0,ωk0)を採用して1光子状態:

Φ1.kが,そのμ0μ≡(ωk0,0)=(ωk0,0,0,ωk0)に

等し状態;Φ1,k00=a^(00)|0 >であるケース

を考えます。

 

このとき,ik0x=iωk0(t-x3) です。

 

空間は等方的なので,その座標軸の向きをどのように選択しよう

と自由ですから,この仮定で一般性を失なうことはありません。

 

そして,

全角運動量:^=(J1^,J2^,J3^)=(23^,31^,12^)

の第3成分:12^∫d3:Ar d^(x12-x21)Ar^

(A1 d^2^-2 d^1^):を,軌道角運動量の第3成分

3^spin角運動量の第3成分S3^の和に分解し,

 

12^=L3^+3^;L3^≡∫d3:Ar d^(x12-x21)Ar^:

3^≡-∫d3(A1 d^2^-2 d^1^):

書いてみます。

 

まず,軌道角運動量部分:L3^のみの寄与を評価します。 

 

3^≡∫d3:Ar d^(x12-x21)Ar^:

の右辺の表現に,^(x)=∫d3(2π)-3/2(2ωk)-1/2Σλ=12

ε(,λ){a^(,λ)exp(-ikx)+a^(,λ)exp(ikx)}

なる運動量展開を代入して計算すると,

 

結局,3^|0 >=0,かつ,3^a^(0)|0 >=0 なること

が示され,真空,および,自由1光子状態への軌道角運動量の寄与

は無いことがわかります。

 

※(注36-1):何故なら,

 

まず上記の^(x)の運動量展開式から,

d^(x)=^(x)/∂t

i∫d3(2π)-3/2(2ωk)-1/2Σλ=12ε(,λ)

{a^(,λ)exp(-ikx)-a^(,λ)exp(ikx)}

を得ます。

 

そこで,L3^=∫d3:Ar d^(x12-x21)Ar^:

=-(1/2)∫d3∫d33'(2π)-3k/ωk')1/2

(x1k'2-x2k'1)Σλ,λ'=12

×r^(,λ)εr^(',λ')f^(,λ,',λ')]

と書けます。

 

ただし,f^(,λ,',λ')は変数:,λ,',λ'のみに

依存し,には依存しない因子の部分です。

 

これはさらに,

1^≡-(1/2)∫d33'(2π)-3k/ωk')1/2k'1 

×Σλ,λ'=12r^(,λ)εr^(',λ')f^(,λ,',λ')],

 

および,

2^≡-(1/2)∫d33'(2π)-3k/ωk')1/2k'2

×Σλ,λ'=12r^(,λ)εr^(',λ')f^(,λ,',λ')]

とおけば,

 

3^=∫3(x12^-21^)なる形になることがわかります。

 

そこで,3^を任意の状態^|Ψ>に作用させると,

3^|Ψ>=∫3(x12^-21^)|Ψ>ですが,

 

1^|Ψ>,2^|Ψ>が,何らかの演算結果で軌道パラメータ

座標と関連性を持たぬ限り被積分関数 (x12^-21^)|Ψ>

の奇関数となるので,

 

3^|Ψ>=∫3(x12^-21^)|Ψ>=0 と

結論されます。

 

したがって,3^|0 >=0,かつ,3^a^(00)|0 >=0

を得ました。(注36-1終わり)※

 

一方,spin角運動量部分:

3^≡-∫d3(A1 d^2^-2 d^1^):の寄与を評価すると,

 

まず,[S3^,a^(00)]

=-∫d3:A1 d^(x)[A2^(x),a^(00)]

[A1 d^(x),a^(00)]2^(x)

2 d^(x)[A1^(x),a^(00)]

[A2 d^(x),a^(00)]2^(x)

です。 

 

ところが,^(x)=∫d3(2π)--3/2(2ωk)-1/2Σλ=12

ε(,λ){a^(,λ)exp(-ikx)+a^(,λ)exp(ikx)}

ですから,

 

[Ai^(x),a^(00)]

=∫d3(2π)-3/2(2ωk)-1/2exp(-ikx)Σλ=12εi(,λ)

[^(,λ),a^(00)]

(2π)-3/2(2ωk0)-1/2εi(00) exp(-ik0x) です。

 

また,[Ai d^(x),a^(00)]

=(/∂t)[Ai^(x),a^(00)]

=-i (2π)-3/2k0/2)1/2εi(00) exp(-ik0x)

です。

 

したがって,[S3^,a^(00)]

=-∫d3(2π)-3/2(2ωk0)-1exp(-ik0x)

2(00)1 d^(x)k0ε1(00)2^(x)

-ε1(00)2 d^(x)+iωk0ε2(00)1^(x)]

 

∫d3(2π)-3/2(2ωk0)-11(00)exp(-ik0x)02^(x)

-ε2(00)exp(-ik0x)01^(x)]

 

を得ます。

 

ところが,

ia^(00)=∫d3(2π)-3/2(2ωk0)-1/2

ε(00)exp(-ik0x)0^(x) であり,

 

今の0の向きを第3軸の向きとする右手系の空間座標軸選択

では,1^(x)=ε(0,1)^(x),かつ,

2^(x)=ε(0,2)^(x) ですから,

 

結局,[S3^,a^(00)]

1(00)a^(0,2)-iε2(00)a^(0,1)

が得られます。

 

ここで,,右回り(right-handed),および,左回り(left-handed)

の円偏光(circularly polarization of light)の,波数ベクト

ルがの波を生成する演算子を,それぞれ,aR^(),および,

L^()として,

 

それらを,線偏光の波を生成する演算子a^(,1),a^(,2)

の重ね合わせ(1次結合)として,次のように定義します。

 

すなわち,

R^()≡(1/√2){a^(,1)+ia^(,2)},

L^()≡(1/√2){a^(,1)-ia^(,2)}

と定義します。

 

すると,[M12^,aR^(0)]=[S3^,aR^(0)]=aR^(0),

[M12^,aL^(0)]=[S3^,aL^(0)]=-aL^(0)

が得られます。

 

したがって,一般のについて,

12^aR^()|0 >=aR^()|0 >,

12^aL^()|0 >=-aL^()|0 >

が成立します。

 

これらは,右回りの波は波が伝播する方向に+1,左回りの波

は同じ方向に正反対の-1のspinを伴なうことを示している,

と考えられます。

 

※(注36-2):[S3^,a^(00)]

1(00)a^(0,2)-iε2(00)a^(0,1)

ですから,

 

[S3^,aR^(0)]

=(1/√2)[S3^,a^(0,1)]+i(1/√2)[S3^,a^(0,2)]

(1/√2)[iε1(0,1)a^(0,2)-iε2(0,1)a^(0,1)

-ε1(0,2)a^(0,2)+ε2(0,2)a^(0,1)

です。

 

ところが,ε1(0,1)=ε2(0,2)=1,ε1(0,2)=ε2(0,1)=0

なので,[S3^,aR^(0)]=(1/√2){ia^(0,2)+a^(0,1)}

=aR^(0)です。

 

同様にして, [S3^,aL^(0)]=-aL^(0)

を得ます。

 

(注36-2終わり)※

 

少し短かいですが.今日はここで終わります。

(参考文献:J.D.Bjorken S.D.Drell "Relativistic Quantum Fields" (McGrawHill) 

 

PS: 11/11の記事:「相対論的場の量子論(正準定式化)(32)」では,

 

現在,実行している定式化段階での共変性を犠牲にした輻射ゲージ

での量子化手法を,「Gupta-Bleulerの方法」に基づいているという誤解

した前置きを書いてしまいました。

 

昔のノートですから予め内容を全て把握してなくても大体の記憶に頼

って,大前提,,前置きくらいは現在のブログ向きに修正したり,それらしく

体裁を整えたつもりだったのですが。。

 

ここに至って,自身の原稿ノートのこの先を見ると,

 

後はこの定式化での光子のFeynman伝播関数を与えて,最後

にS行列える振幅のdiagramsの計算ルールを与えればこ

の自由電磁場の項目終わることになってました。

 

謂わゆる不定計量の空間を設定し,その中からμμ^の期待値

がゼロとなるという,期待値の意味で共変性を維持する

補助条件(Subsidary-condition)を課す,という

 

有名な「Gupta-Bleulerの方法」に関する論議が文章だけと

しても,私の過去ノートには全く出てきてないことに

気付きました。

 

<Phys|μμ^|Phys>=0,あるいは同義ですが,

μμ^正振動数部分:μμ(+)^に対して,

μμ(+)^|Phys>=0 を満足するベクトル|Phys>のみ

が物理的に許される状態であるとするのが, 

私の記憶している「Gupta-Bleulerの方法」のミソです。

 

今,記述しているB-Dテキストの輻射ゲージ方法は,理論の

整合性に拘泥するより,現実の観測事実を正確に予測できる

公式さえ得られればいい,とする有効理論(対症療法)に近い

手法でした。

 

(※ QEDのくりこみ理論も,未だ,有効理論ですね。)

 

なお,シリーズ記事(32)での誤解を生む記述は既に

削除しました。

 

時間があれば別記事で「Gupta-Bleulerの方法」

も書こうと思います。

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114 . 場理論・QED」カテゴリの記事

コメント

-iωk0ε1(k0,λ0))A2^(x) → -iωk0ε1(k0,λ0)A2^(x)

投稿: hiota | 2012年12月17日 (月) 17時20分

=(2π)-3/2(2ωk0)-1/2ε1(k0,λ0) exp(-ik0x) → =(2π)-3/2(2ωk0)-1/2εi(k0,λ0)exp(−ik0x)

投稿: hiota | 2012年12月15日 (土) 20時15分

(A11 d^A2^-A2 d^A1^) → (A1 d^A2^-A2 d^A1^)
G1^|Ψ>,G2^^|Ψ> → G1^|Ψ>,G2^|Ψ>
-x2G1^^)|Ψ> → -x2G1^)|Ψ>
A2^^(x) → A2^(x)
A1^^(x) → A1^(x)
=(2π)-3/2(2ωk0)-1/εi → =(2π)-3/2(2ωk0)-1/2εi
=-i (2π)-3/2(ωk0/2)1/εi → =−i(2π)-3/2(ωk0/2)1/2εi
今のk0の向き第3軸お向きとする → 今のk0の向きを第3軸の向きとする
ここで,,右回り → ここで,右回り

投稿: hiota | 2012年12月12日 (水) 17時30分

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