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2012年12月18日 (火)

量子電磁力学:続編(準備中)の序文

相対論的場の量子論シリーズの第Ⅱ部に入る前に,

 

ここまでの記事の補足として,電磁場を(正準)量子化する際に

生じる問題点や,Gupta-leuilerの方法の詳細についての記事

を現在準備中です。

 

そのため,今回は参考ノートなどはないので取り合えず,原稿

古典電磁場の定式化の確認から始めている状態ですが,

 

2008年5/19の記事電磁気学と相対論(4)(真空中の電磁気学3)

の内容が,つなぎの序文としてピッタリのようなので,手抜きです

が,ほぼそのまま再掲載しておきます。

 

※以下,再掲記事です。

 

電磁場の基本方程式であるMaxwellの方程式が,

∂Fμν/∂xλ+∂Fνλ/∂xμ+∂Fλμ/∂xν=0 の4個

と,∂Fμν/∂xν=-sμ/(c2ε0)の4個の計8個のテンソル

方程式に帰着することを見ました。

 

しかし,元々真空中の電場,磁場は,,,によって表わさ

れますが,実質的にはだけが決まれば残りも決まるので,

独立な未知関数の成分は6個だけですから,方程式が8個もある

のは過剰ではないかという気がします。

 

実際,div=0 が成立することから,=∇×=rotと表現

できるベクトルポテンシャルの存在がわかります。

 

これをrot+∂/∂t=0 に代入して,

rot(+∂/∂t)=∇×(+∂/∂t)=0 から

+∂/∂t=-∇Φ=-gradΦと表現できるスカラー

ポテンシャルΦの存在することがいえます。

 

それ故,=∇×rot,=-∇Φ-∂/∂t

=-gradΦ-∂/∂tと表現することで,

 

電場,磁場の6成分を決めることを,スカラーポテンシャル

Φ,および,ベクトルポテンシャルの4成分だけを決めること

に帰着せしめるのが,近代電磁気学の通常の理論で行なわれてい

ることです。

  

そして,をこのように表わしたときには,div=0,および,

rot+∂/∂t=0 は自動的に満足されます。

 

このΦ,を総称して,特に電磁ポテンシャルと呼ぶこともあり

ます。

 

そこで,ポテンシャルの4元ベクトル表現:

μ(A0,A1,A2,A3)≡(Φ/c,)から,その成分が

μν≡∂μν-∂νμ=∂Aν/∂xμ-∂Aμ/∂xν

の2階反対称テンソル(Fμν)を作ります。

 

そして,電場,磁場=(E1,E2,E3)≡-c(F01,F02,F03)

=(B1,B2,B3)≡-(F23,F31,F12)と定義すれば,

 

これらが自動的にdiv=0 ,かつrot+∂/∂t=0 を満たす

ことは明白です。

 

つまり∂Fμν/∂xλ+∂Fνλ/∂xμ+∂Fλμ/∂xν=0 は,

μを決める方程式ではなく,Aμをどう取っても常に成立する

恒等式であることは,確かめるまでもなく明らかです。

 

一方,∂Fμν/∂xν=-sμ/(c2ε0)の方は,

(∂2ν/∂xμ∂xν)-(∂2μ/∂xν∂xν)

=-sμ/(c2ε0),

 

または,符号を変えると, 

(∂2μ/∂xν∂xν)-(∂2ν/∂xμ∂xν)

=sμ/(c2ε0),(μ=0,1,2,3)となり,これがxμの未知関数

μ求める4個の微分方程式,という形になります。

 

μ=(A0,A1,A2,A3)≡(Φ/c,)の成分の数は,もちろん

4個であり,方程式の数も4個ですから,

 

この形に書けば,先に基本方程式であるMaxwell方程式において,

未知関数の数と比べて方程式の数が過剰ではないか?と見えた

のは見掛けの上のことであったとわかります。

 

一方,実際の観測などによって電場と磁場がわかっている

場合:つまり,テンソル(Fμν)が確定している場合を想定して,

 

∂Aν/∂xμ-∂Aμ/∂xν=FμνなるFμνの定義式を,右辺の

μνに既知の値,または関数を与えたとき,未知関数Aμを定め

微分方程式であるという見方をしてみます。

 

これの左辺は,"ベクトルAμの4次元的な回転=rot(Aμ)"に相当

するので,この方程式は形式的にrot(Aμ)=Fμνと書けます。

 

そこで3次元ベクトルの渦無し場,または保存力場のアナロジー

で,この方程式:rot(Aμ)=(Fμν)の1つの解をAμとすると,

 

これに,rot(Bμ)=0 を満たす任意の渦無しベクトルBμを加え

も,rot(Aμ+Bμ)=Fμνが満たされるため,(Aμ+Bμ)も

解になることがわかります。

 

ところが,rot(Bμ)=0 ならBμに対しあるxμのスカラー関数:

Λ=Λ(x)が存在して,Bμ=-∂μΛ=-∂Λ/∂xμ=-gradΛ

と表わせます。

  

しかも,Bμはrot(Bμ)=0 を満たす任意の4元ベクトルです

ら,それを表現するΛ=Λ(x)も任意関数に取っていいです。

 

したがって,Aμが∂Aν/∂xμ-∂Aμ/∂xν=Fμνの解で

れば,Λを任意関数として,Aμ-∂μΛもこれの解であると

いう性質があることがわかりました。

 

そして,∂Aν/∂xμ-∂Aμ/∂xν=Fμνは,

=∇×=rot,=-∇Φ-∂/∂

=-gradΦ-∂/∂t なることを意味し,

 

μ→ Aμ-∂μΛなる変換は,Φ→ Φ-∂Λ/∂t,

+∇Λ=+gradΛなることを意味します。

 

すなわち,電磁ポテンシャルAμをAμ-∂μΛと変えることは,

実際に観測される場である電場と磁場,あるいは,

μν=∂Aν/∂xμ-∂Aμ/∂xνには何の影響も与えない

ことがわかります。

 

このAμ→ Aμ-∂μΛ,あるいは,Φ→ Φ-∂Λ/∂t,

+∇Λ=+gradΛなる変換をゲージ変換

(gauge transformation)と呼び,この変換に対し理論が

何の影響も受けないことを,理論はゲージ不変である,

といいます。

 

そして,このスカラー関数Λ,あるいはその微分をゲージ(gauge)

と呼びます。

 

しかし,この変換でAμに対する基本方程式:

(∂2μ/∂xν∂xν)-(∂2ν/∂xμ∂xν)=sμ/(c2ε0)

の方は,その形に変更を受ける可能性があります。

 

すなわち,方程式

(∂2μ/∂xν∂xν)-(∂2ν/∂xμ∂xν)=sμ/(c2ε0)

において,Aμの代わりにA'μを代入すると,

 

(∂2A'μ/∂xν∂xν)-(∂2A'ν/∂xμ∂xν)=sμ/(c2ε0)

となりますが,A'μがゲージ変換:Aμ→A'μ≡Aμ-∂μΛ

=Aμ-∂Λ/∂xμ の結果として得られるものであれば,

 

左辺の第2項の(∂2A'ν/∂xμ∂xν)は,

(∂2A'ν/∂xμ∂xν)=(∂2ν/∂xμ∂xν)

-{∂2(∂Λ/∂xν)/∂xμ∂xν}と書けます。

 

そこで,例えば,

(∂2ν/∂xμ∂xν)-{∂2(∂Λ/∂xν)/∂xμ∂xν}=0

が満たされるようにゲージ Λを取ることができれば,

  

そのときには,基本方程式は,

(∂2A'μ/∂xν∂xν)=sμ/(c2ε0)

簡単な形になります。

 

そこで,こういうゲージΛを取ることができたと仮定して,

 

(∂2ν/∂xμ∂xν)-{∂2(∂Λ/∂xν)/∂xμ∂xν}=0

の両辺をxμで積分すると,これは, 

∂Aν/∂xν-{∂(∂Λ/∂xν)/∂xν}=定数

となります。

 

したがって,この最後の条件となる等式の右辺の定数をゼロ

おいた μμ=∂μμΛ,または,∂Aμ/∂xμ

={∂(∂Λ/∂xμ)/∂xμ}が成立するようなΛが存在する

とき,言い換えると,変換後のA'μが∂A'μ/∂xμ=0 を満足

するようにできれば,

 

そのときは,電磁場の基本方程式は,

(∂2A'μ/∂xν∂xν)=sμ/(c2ε0)

と書けます。

  

(※ただし,右辺の定数はゼロでなくてもいいので,これは1つの

十分条件であり必要条件ではないです。)

  

一方,任意に与えられたAμに対し,Λを未知関数とする

微分方程式:∂μμΛ=∂μμ, or □Λ=∂μμ

考えると,

 

これは解Λに右辺がゼロの斉次方程式:□χ=0 の一般解χだけ

の任意性があることを利用することで,任意の境界条件を満たす

一意解を持つことがわかります。

 

ここで,記号□は,□≡∂μμ=∂2/∂xμ∂xμで定義される

D'Alembertianと呼ばれる微分演算子を示しています。

 

以上から,電磁場のベクトルポテンシャルとして,元々,

∂Aμ/∂xμ=0 なる条件を満たすようなゲージを取った

μを採用しておけば,電磁場の基本方程式は,最初から,

 

(∂2μ/∂xν∂xν)=sμ/(c2ε0),あるいは,

□Aμ=sμ/(c2ε0) と書けることになります。

 

このゲージを採用すれば,テンソル方程式としても対称な美しい

形であると感じます。

 

上記の∂Aμ/∂xμ=0 ,あるいは∇A+(1/c2)(∂φ/∂t)=0

なるゲージ条件はLorenz条件といわれ,この条件を満たすゲージ

Lorenzゲージ(ローレンスゲージ or ローレンツゲージ)と呼ば

れています。

 

Lorenz条件自体は,相対性理論の座標変換に対し不変のまま保存

される(共変な:covariant)ことが自明な形をしていますが,

 

μ → A'μ≡Aμ-∂μΛ=Aμ-∂Λ/∂xμ なる一般の

ゲージ変換は相対性理論の座標変換で不変に保たれる操作と

限りません。

 

そこで,相対論的に共変でないゲージ,例えば良く使用される

もので,Φ/c=A0には関わりなくのみが∇=div=0

を満たすべきである,というCoulombゲージなどは特定の座標系

に固定されたゲージですから,

 

S系 → S'系というように準拠系を乗り移ると,ゲージ条件が

破れてS'系では違う条件に従うゲージになってしまう,という

ことがあります。

 

まあ,それでもすぐ上に書いたように,

"実際に観測される場ある電場と磁場:

μν=∂Aν/∂xμ-∂Aμ/∂xνには何の影響も与えない"

のですが,見た目には美しくありません。

 

そこで古典電磁気学では相対論的に共変なLorenzゲージを採用

することが多いようです。

 

しかし,量子論ではゲージ条件が正準交換関係と矛盾するとか,

不定計量になるとかで確率解釈において困るなどの問題から,

素朴なLorenzゲージのみを用いて共変的量子化をすることは

不可能で,初期にはむしろCoulombゲージが使用されていたこと

が多いようです。

 

荷電粒子と光子の場の量子論であるQED(量子電磁力学)でも形

上では共変でLorenzゲージと一致するものも取ることができ

ますが,それがLorenzゲージとは呼ばれず,Landauゲージと呼ば

るのは上記のような問題があるからです。

 

系統的な共変的量子化の手続きでは,Aμの他にBという補助場

を導入して,ダミーのスカラー場C≡∂Aμ/∂xμ+αBを作り 

α-12という項を含む場のLagrangian密度から,変分原理によっ

て得られる場の方程式=運動方程式のうちの1つであるC=0,

 

つまり,∂Aμ/∂xμ+αB=0 なる方程式を考慮することで

ゲージを一意に固定してゲージ変換の任意性を取除きます。

 

つまり,∂Aμ/∂xμ+αB=0 が場を支配する運動方程式の

1つとなり,この方程式において特にα=0 のLandauゲージを

取った場合がLorenz条件:∂Aμ/∂xμ=0 と一致するという

わけです。

 

しかし,補助場Bがある場合,

もう1つの方程式のsμ=0 のときの自由場の運動方程式の形

,□Aμ=0 ではなく,□Aμ-(1-α)B=0 で与えられる

という事情があるため,

 

α=0 の場合には,方程式の1つが∂Aμ/∂xμ=0 と一致し

ても,Lorenzゲージと呼ばれないのですね。

 

ただ,∂Aμ/∂xμ+αB=0 は相対論的に共変な等式なので,

この意味で共変ゲージはαの数だけ無数にありますが,

  

場の方程式:□Aμ-(1-α)B=0 が古典論の共変な方程式:

□Aμ=0 に一致する場合に相当する,α=1 の特別な場合は

Feynmanゲージと呼ばれています。

 

電磁場は,そのLagrangianが特異であり,それ故,ゲージの自由度

を持つわけですが,その特異性のため,

 

古典論でも単純なPoisson括弧による正準理論として扱うことは

できなくてPoisson括弧を修正したDirac括弧を用いることが必要

になります。

 

そうしたわけで,電磁場ではゲージを固定せずには,普通の正準

量子化によって共変的量子化を行なうことは不可能です。

 

従来から場を表現する空間であるHilbert空間の方に,"その個々

のベクトルが物理的に許される状態であるために必要な条件=

付帯条件(subsidary condition)"を課すことで量子化された場

そのものに生じる困難に対処してきました。

 

(→ ※ 例えばGupta-Bleulerの方法など※)

 

上に挙げた例では,α=0 のLandauゲージの場合には,

∂Aμ/∂xμ=0 かつ,□Aμ-B=0 が成立しますが,

 

補助場Bの正エネルギー部分=正振動数部分

(positive frequency part)をB(+)として,

(+)|ψ>=0 を満足する|ψ>のみが物理的に許される

状態であるという付帯条件を与えます。

 

こう規定すれば,実質上このゲージでも□A(+)μ=0 が成立する

と見なせます。

 

また,α=1 のFeynmanゲージでは∂Aμ/∂xμ+B=0,

かつ □Aμ=0 ですが,これは実質上∂A(+)μ/∂xμ=0 ,

かつ□Aμ=0 なることを示しています。

 

結局,どのαでも共変ゲージとしては同等である,

と考えられます 。

 

このように,一連の量子化の手続きを補助場Bの導入によって

体系化し,電磁場Aμの4元運動量がゼロ質量の光子に対応する

Minkowski空間のヌルベクトル(null-vector)であることから,

 

不定計量の状態空間を扱うことを余儀なくされるため生じる

dipoleゴーストなどの非物理的存在を観測可能量から排除し

電磁場の共変的量子化を完成させた理論は,中西-Lautrap理論

として知られています。

 

既に脱線していますが,さらに量子論の話に脱線します。

 

電磁場のようにゲージ不変な場のことをゲージ場と呼ぶのです

が,ゲージ場に対応する粒子は電磁場の場合の光子のように質量

がゼロのベクトル粒子であり,それ故Bose粒子(Boson)です。

 

質量がゼロでなければゲージ不変性が満たされないという事実

があるにも関わらず,素粒子場の電磁相互作用とは別の相互作用

において,その力を媒介するゲージボゾンの中に有限な質量のあ

る粒子が存在する場合があります。

 

これはゲージ不変性を保証していた対称性が自発的に破れた際に

ヒッグス機構(Higgs mechanism)などによって,元々ゼロ質量だっ

た粒子が有限質量を獲得する場合があるためです。

 

さて,次に物質粒子を示す場の理論において存在する対称性と

ゲージ変換,あるいはゲージ場の関連性について述べてみます。

 

まず,電磁場(光子)と共に荷電粒子を含む系を対象とする量子

電磁力学において,電子などの物質粒子の波動関数,あるいは,

それが第二量子化された粒子場は,粒子がFermi粒子(Fermion)

である場合なら一般にスピノル(spinor)で与えられます。

 

そこで光と電磁相互作用する物質場の粒子がFermi粒子である

として,この粒子の場を表現するスピノルをψ(x)とします。

 

そして,これに対する1パラメータの位相変換:

ψ(x)→ exp(iθ)ψ(x)を考えます。

 

特に,パラメータθが無限小の場合,θの代わりにεと書けば

exp(iε)~ 1+iεによって,

同じ位相変換は,ψ(x) → (1+iε)ψ(x) と書けます。

 

この位相変換に対して,自由粒子のLagrangian密度:

=ψ+γ0(iγμμ-m)ψは明らかに不変です。

 

しかし,もしも位相変換が全ての時空点xμに対して共通な

大域的変換ではない場合,すなわち,パラメータのθまたはε

が定数でなく時空座標xμの関数で与えられ,

 

θ=θ(x),またはε=ε(x)であるような局所的変換の場合,

Lagrangian密度は,=ψ+γ0(iγμμ-m)ψ

'=ψ+γ0(iγμμ-m)ψ-γ0γμμθと変換され,

不変ではなく,余分な項がでてきます。

 

ところが,Lagrangian密度が,自由粒子のそれ:

=ψ+γ0(iγμμ-m)ψではなく,電荷eを持った粒子

が電磁場Aμと相互作用している場合のそれ,であるとすれば,

 

この相互作用の効果は,いわゆる極小相互作用変換

(minimal interaction):μ=i∂μ→ pμ-eAμ

=i∂μ-eAμで表現されますから,

  

自由粒子のLagrangian密度に対し,この極小相互作用変換を

実際に行なえば,新しく得られるLagrangian密度の形は

=ψ+γ0μ(i∂μ-eAμ)-m]ψ(x)となるため,

 

ψ(x)→ exp[iθ(x)]ψ(x)なる位相変換と同時に,

eAμ→eAμ-∂μθなるゲージ変換がなされるなら,

局所変換に対しても,こうしたFerm粒子のLagrangian密度

は不変になります。

 

さらに,"自由な電磁場=光子"自身のLagrangian密度をph

すると,ph(1/2)(ε02-μ0-12)=-(c2ε0/4)Fμνμν

ですから,

 

これは,eAμ→ eAμ-∂μθなるゲージ変換に対して不変な

量のみから構成されています。

 

したがって,電荷eを持つ自由な荷電粒子があるだけでは,

局所的位相変換に対して不変でなかった理論に"電磁場=光子"

というゲージ場を加えることで理論が不変になった,

という見方ができます。

 

この考えを発展させて,スピノルψ(x)が,唯1種類の粒子だけで

なく独立な属性(例えばcolor)を持つ複数種類の粒子;ψi(x)

(i=1,2,3,.)の集まりである場合を想定して,

 

これに対する位相変換のパラメータはQEDの場合のようにθ,

またはεの唯1つでなく,複数の値θk またはεk(k=1,2,3,.)

で与えられるとします。

 

通常の座標軸のまわりの回転が角運動量の軸成分を持つ

ベクトルで表わされるのと同様,

 

抽象空間におけるk軸のまわりのθkの回転が,k軸方向

角運動量演算子に相当する生成子:Lkにより,θkk

で与えられるとすることができます。

 

そして,各々の生成子:Lkは,一般にはψi(x)を成分とする

ベクトルに作用する行列作用素で表現され,対応する粒子

の位相変換は,ψ(x) → exp(iΣkθkk)ψ(x)で与えら

れます。

 

しかし,これらパラメータが複数の局所位相変換に対して,

自由粒子場のLagrangian密度を不変にするために必要な複数

のゲージ場は,Lkが行列であることからも想像されるように,

 

"電磁場=光子場"のような可換なゲージ場ではなく,一般に

非可換な場であり,ゲージ変換も,電磁場のそれである:

eAμ→ eAμ-∂μθのような単純な変換でなく,いくらか

複雑になり非線形な項も出現します。

 

こうした原理=ゲージ原理を初めて導入したのは,ヤン(C.N.Yang)

とミルズ(R.L.Mills)です。

 

それ故,ゲージ場はYang-Mills場,上に考察したゲージ理論は

Yang-Mills理論と呼ばれることがあります。

 

いずれにしても,

 

上では引数xμを省略してθk(x)を単にθkと書きました

が,理論が局所的変換θk=θk(x)に対して不変であるなら,

 

これは,あらゆる時空点:x=xμに対しθk(x)が同一である;

つまり,θk(x)=θk(定数)の場合も特別な場合として含んで

ますから,大域的変換に対しても,もちろん理論は不変です。

 

しかしながら,逆に理論に"大域的対称性=大域的不変性"が

あっても,"局所的対称性=局所的不変性"があるとは限りません。

 

内山先生が,生前,Yang and Millsとは独立に発見したと述べられ

ていて,もうちょっと早く発表していれば,Yang-Mills場ではなく,

ウチヤマ場になっていたのではないか?と悔やんでいたらしく,

 

実際には,自身の発見よりかなり後,自分の論文のReferenceに,

Yang and Millsの論文をも添えている1956年の論文を,私的には

Yang and Millsの有名な論文と並べて,共にゲージ理論の代表的

参考文献として挙げておきます。

 

余談はさておき,最後に上述の位相変換を連続群の一種である線形

Lie群に属する変換群の表現であると見て,位相変換に対する理論

の不変性は"対応する変換群に対して理論が不変である"という対

称性を持つと見なし,

 

粒子場やゲージ場は群のユニタリな既約表現や随伴表現で分類

されるとする系統的な見方をしてみます。

 

こう見たときには,電磁気力を媒介するゲージ粒子として

"光子=電磁場"を必要とする,可換な1パラメーターの位相変換

は1パラメータの線形Lie群の1つである1パラメータユニタリ

群であるU(1)に対応していて,

 

上で行なった位相変換不変性は量子電磁力学の理論がU(1)不変

であるという対称性を持つことを意味しています。

 

一方,例えばquark(クォーク)を結合させる強い相互作用を媒介

る非可換なゲージ場に対応するgauge Boson(ゲージボソン)は,

color gluon(カラーグルオン)と呼ばれており,

 

これを必要とする対称性変換である複数パラメーターを持った

ユニタリ変換群は,カラーSU(3)群と呼ばれています。

  

こうした,U(n)やSU(n)のような変換群に属する位相変換の

局所変換対称性に伴なう非可換ゲージ場の共変的量子化は,電磁

場の場合よりもかなり複雑ですが,

  

基本的には補助場Bを導入して行なわれる電磁場の量子化の

"中西・Lautrap理論"の直線的な応用で与えられます。

  

これは,Faddev-popovゴースト(FP-ghost)のようなゴースト

を用いてゲージを固定する定式化を行なうことなどによって,

中西氏の教え子?であろう九後・小嶋(オジマ)氏により,スマート

な付帯条件が与えられて完成されました。

 

なお,理論の大域的対称性と密接に関係して現われる保存量に

ついてのNoetherの定理と関連した過去の記事をいくつか,列挙

しておきます。よろしければ参照してください。

 

まず,2006年9/6の「不確定性,相補性とネーターの定理」,

9/8の「ポアンカレ群と粒子のスピン」,10/8の

WKB近似,ハミルトン・ヤコービ方程式,経路積分」,

 

さらに,2007年5/7の

量子化された場と調和振動子(パラ統計)」,

8/7の「場の演算子とリー群(Lie群)の生成子」,

11/2の「解析力学の初歩」,

 

そして,2008年2/29の「ネーターの定理と場理論

などがあります。

 

また,記事の順番は違うし,ちょっとマニアックな話題ですが

2008年2/21,2/25の「非ネーター保存量」,および,

非ネーター保存量(続き) 」 もあります。

 

参考文献:

1.メラー 著(永田恒夫,伊藤大介 訳)「相対性理論」(みすず書房)

 

2.中西 (のぼる) 著「場の量子論」(培風館)

3.九後汰一郎「ゲージ場の量子論Ⅰ,Ⅱ」(培風館)

 

4.C.N.Yang and .L.Mills,Phys.Review.Vol.96,p191-(1954)  

5.Ryoyu.Utiyma(内山龍雄)

“Invariant Theoretical Interpretation of Interaction”

(Institute for Advanced Study.Princeton New Jersey,

Received July 1955),Physical Revie,Vol.101,pp1597-1607(1956)

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114 . 場理論・QED」カテゴリの記事

コメント

Fermミ粒子 → Fermi粒子
悔ややんでいた → 悔やんでいた

投稿: hirota | 2012年12月19日 (水) 21時37分

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