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2013年1月 9日 (水)

強い相互作用(湯川相互作用)(10)

 科学記事の原稿をアップしようと,いろいろ平行して記事を画策

 していましたが,結局,今年最初の科学記事としては,手っ取り早

 く安易な道を選択し,過去ノートがある非電磁相互作用の項目と

 なりました。

 

 更新を休んでいた強い相互作用(湯川相互作用)(9)」からの

 続きで,その記事の最後で予告していたπ-N散乱からです。

 

§10.6 Meson-Nucleon Scattering (中間子-核子散乱)

 

 次の図10.8のFeynman-diagramは,結合定数:g02/(4π)の

 オーダーでの最低次の,核子による中間子の散乱を記述し

 ています。

 

 

 Ruleによって,散乱振幅(S行列要素)は, 

fi(2π)4δ4(q2+p2-q1-p1)

(2π)-6{M2/(4Ep1p2ωq1ωq2)}1/2 ,

 

(-ig0)2χ2u~(p2,s2)

×[τφ25i{γ(p1+q1)-M}-15τφ1τφ15

i{γ(p1-q2)-M}-15τφ2]u(p1,s11

 

と表わすことができます。

 

ここで,交叉対称性(Crossing symmetry)に着目します。

 

すなわち,Sfiは,φ1φ2,q1⇔-q2なる交換の下で不変です。

 

この交換の下での対称性は,最低次だけでなく全ての高次の摂動

においても保持されることがわかります。

 

Feynman-diagramから,10.8a図のように,終状態でπが放出される

より前に始状態で入射するπが吸収されるようなグラフの各々に

対して,10.8b図のように終状態でπが放出されるより後に始状態

で入射するπが吸収されるだけ異なるグラフが1つずつ存在します。

 

さて,=(-ig0)2χ2u~(p2,s2)

[τφ25i{γ(p1+q1)-M}-15τφ1τφ15

i{γ(p1-q2)-M}-15τφ2]u(p1,s11 において,

 

Feynman伝播関数因子の分母を有理化してガンマ行列の個数を

減らします。

 

すなわち,

{γ(p1+q1)-M}-1=1/{γ(p1+q1)-M}

{γ(p1+q1)+M}/{(p1+q1)2-M2}

{γ(p1+q1)+M}/(2p11+μ2),および,

 

{γ(p1-q2)-M}-1=1/{γ(p1-q2)-M}

{γ(p1-q2)+M}/{(p1-q2)2-M2}

{γ(p1-q2)+M}/(-2p12+μ2) 

です。

 

また, (γp-M)u(p,s)=0 なので,

~(p',s')iγ5{γ(p+q)+M}iγ5u(p,s)

=u~(p',s'){γ(p+q)-M}u(p,s)

=u~(p's')(γq)u(p,s)

ですから.

 

=-ig02χ2u~(p2,s2)

[(τφ2)(τφ1)(γq1)(2p11+μ2)-1(τφ1)(τφ2)

(-γq2)(-2p12+μ2)-1]u(p1,s11

が得られます。 

 

さて,ここで議論を低エネルギーに制限して,

(1/M)のオーダーのS波散乱項と,(1/M2)のオーダーのP波散乱

項のみを残します。

 

そして,重心系(慣性中心系)と考えて静的近似を行えば,

(-ig02/M)[u(2)u(1)(χ2χ1)(φ2φ1)]

{ig02/(4M2ω)}u(22(2

[(τφ2)(τφ1)(σq2)(σq1)-(τφ1)(τφ2)(σq1)(σq2)]

u(11  となります。 

 

※(注10-1):何故なら,4成分spinoru(p,s)を,正エネルギー核子

の大成分:u()と小成分:u()の2つの2成分spinorに分けて,

u(p,s)≡(u(),u())と表現すれば,

 

(γp-M)u(p,s)=0 は,

(E-M)u()-(σp)u()=0,および,

(σp)u(s)-(E+M)u(p)=0 です。

 

故に.u()=(σp)u()/(E+M);

E=(M22)1/2

~ M{1+(1/2)2/M2}=M+O(2/M2)M

と書けます。

 

よって,u()={(σp)/(2M)+O(2/M2)}u()です。

 

||<<Mとして,(1/M)の3次以上の項を無視すると,

(p,s)=(u(),u())

(u(),(σp)u()/(2M))

 

(p,s)=(u(),u())

~ (u(),(σp)u()/(2M))

 

そこで.

ig02χ2u~(p2,s2)(τφ2)(τφ1)(γq1)(2p11+μ2)-1

u(p1,s11 において,

 

~(p2,s2)(γq1)u(p1,s1)

(u(2),(σp2)u(2)/(2M))(q10-γ0γq1)

×(u(1),(σp1)u(1)/(2M)) ですが,

 

重心系では,11=0 1=-1 かつ,

22=0 2=-2 です。

 

さらに,静的近似では1222 2で,それ故,

10(12+μ2)1/2 ~ q20=(12+μ2)1/2  ですから,

ω≡q10(12+μ2)1/2とおけば,ω ~ q20=(12+μ2)1/2

です。 

 

そして0γqは(σq)を2次の反対角細胞とする

細胞反対角行列:

なので.

  

(u(2),(σp2)u(2)/(2M))(q10-γ0γq1)

×(u(1),(σp1)u(1)/(2M))

=u(2)[ω+{(σq2)(σq1)+(σq1)(σq1)}/(2M)]u(1)

+O(2/M2)

 

=u(2)u(1)[ω+12/(2M)]

+u(2)(σq2)(σq1)u(1)/(2M)

+O(2/M2) 

となります。

 

また,(2p11+μ2)-1=1/(2p11+μ2) 

1/(2Eω+212+μ2)=1/(2Eω+12+ω2)

{1/(2Mω)}{1-(12+ω2)/(2Mω)}+O(2/M2)

1/(2Mω)-(12+ω2)/(4M2ω2)}+O(2/M2)

です。

 

結局,u~(p2,s2)(γq1)u(p1,s1)(2p11+μ2)-1

[u(2)u(1){ω+12/(2M)}

+u(2)(σq2)(σq1)u(1)/(2M)+O(2/M2)]

×[1/(2Mω)-(12+ω2)/(4M2ω2)]+O(2/M2)]

 

~u(2)u(1){1/(2M)-ω2/(4M2ω)}

+u(2)(σq2)(σq1)u(1)/(4M2ω)

を得ます。

 

したがって,

ig02χ2u~(p2,s2)(τφ2)(τφ1)(γq1)(2p11+μ2)-1

u(p1,s11

 

2(τφ2)(τφ11}

×[{-ig02/(2M)}u(2)u(1)-{-ig02ω2/(4M2ω)}

(2)u(1)

{ig02/(4M2ω)}u(2)(σq2)(σq1)u(1)]

 

が得られます。

 

同様に,

ig02χ2u~(p2,s2)(τφ1)(τφ2)(-γq2)(-2p12+μ2)-1

u(p1,s11 では,

 

~(p2,s2)(-γq2)u(p1,s1)

(u(2),(σp2)u(2)/(2M))(-q20+γ0γq2)

×(u(1),(σp1)u(1)/(2M))

[u(2)u(1){-ω-22/(2M)}

-u(2)(σq2)(σq1)u(1)/(2M)+O(2/M2)]

であり,

 

(-2p12+μ2)-1=1/(-2p12+μ2)

1/(-2Eω-212+μ2)

=1/(-2Eω-21222+ω2)

{-1/(2Mω)}{1-(22+212-ω2)/(2Mω)}

+O(2/M2)

=-1/(2Mω)+(22+212-ω2)/(4M2ω2)}

+O(2/M2) です。

 

結局,u~(p2,s2)(-γq2)u(p1,s1)(-2p12+μ2)-1

[u(2)u(1){-ω-22/(2M)}

-u(2)(σq2)(σq1)u(1)/(2M)+O(2/M2)]

×[-1/(2Mω)+(22+212-ω2)/(4M2ω2)+O(2/M2)]

 

~ u(2)u(1){1/(2M)+ω2/(4M2ω)}

-u(2)(σq1)(σq2)u(1)/(4M2ω)

を得ます。 

 

ここで,-212+(σq2)(σq1)=-12+iσ(2×1)

=-12iσ(1×2)=-(σq1)(σq2)

を用いました。

 

故に,

ig02χ2u~(p2,s2)(τφ1)(τφ2)(-γq2)(-2p12+μ2)-1

u(p1,s11

 

2(τφ2)(τφ11}

×[{-ig02/(2M)}u(2)u(1)+{-ig02ω2/(4M2ω)}

(2)u(1)

{ig02/(4M2ω)}u(2)(σq1)(σq2)u(1)]

 

が得られます。

 

さらに,部分的に(τφ2)(τφ1)=φ2φ1+iτ(φ2×φ1)

を用いると,

 

=-ig02χ2u~(p2,s2)[(τφ2)(τφ1)(γq1)

(2p11+μ2)-1(τφ1)(τφ2)(-γq2)(-2p12+μ2)-1]

u(p1,s11,次のようになります。

 

すなわち,

(-ig02/M)[u(2)u(1)(χ2χ1)(φ2φ1)]

{ig02/(4M2ω)}u(22(2

[(τφ2)(τφ1)(σq2)(σq1)-(τφ1)(τφ2)(σq1)(σq2)]

u(11 です。

 

(注10-1終わり)※

 

(-ig02/M)[u(2)u(1)(χ2χ1)(φ2φ1)]

{ig02/(4M2ω)}u(22(2)

×[(τφ2)(τφ1)(σq2)(σq1)

-(τφ1)(τφ2)(σq1)(σq2)]u(11

において,

 

右辺第1項:(-ig02/M)[u(2)u(1)(χ2χ1)(φ2φ1)]

は,Spinにもisotopic-spinにも独立な相互作用です。

 

これは,非相対論的に,Born近似のポテンシャル:

()≡{g02/(2μM)}δ3()=6f2M{4π/(3μ3)}δ3()

によって記述されるものと同等です。

 

ただし,f2≡{g02/(4π)}{μ/(2M)}2であり,πNです。

 

※(注10-2):何故なら,

fi(2π)4δ4(q2+p2-q1-p1)

(2π)-6{M2/(4Ep1p2ωq1ωq2)}1/2

 

(-ig0)2χ2u~(p2,s2)

[τφ25i{γ(p1+q1)-M}-15τφ1τφ15

i{γ(p1-q2)-M}-15τφ2]u(p1,s11

 

へのの近似式の第1項:

(-ig02/M)[u(2)u(1)(χ2χ1)(φ2φ1)] の寄与は,

|1|,|2|,|1|,|2|<<M,μのとき.Ep1~Ep2~M,

ω1~ω2 ~μより,

 

(2π)4δ4(q2+p2-q1-p1)(2π)-6{-ig02/(2μM)}

[u(2)u(1)(χ2χ1)(φ2φ1)] です。

 

一方,ポテンシャル:

V()≡{g02/(2μM)}δ3();πN

による散乱のBorn近似は,

 

2πiδ(E-E)<2,2,22,φ2|V|1,1,11,φ1

2πδ(q20+p20-q10-p10)(2π)-6{-ig02/(2μM)}

×[u(2)u(1)(χ2χ1)(φ2φ1)]∫d3N3π

[exp(-i2N-i2π3(πN) exp(i1N+i1π)]

 

(2π)4δ4(q2+p2-q1-p1)(2π)-6{-ig02/(2μM)}

[u(2)u(1)(χ2χ1)(φ2φ1)] となるからです。

 

あるいは,このπ-N散乱を,π中間子のポテンシャル散乱と考える

,核子Nは散乱の前後で固定されていて,120 なので,

 

Born近似から,(2π)4δ4(q2+p2-q1-p1)の因子が得られ,やはり

双方の一致を見るからです。

 

(注10-2終わり)※

  

途中ですが,この項目はまだ先があって長くなる予定なので,

ここで一旦終わります。

 

(参考文献:J.D.Bjorken S.D.Drell "Relativistic Quantum Mechanics" (McGrawHill)

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コメント

(注10-1終わり)の前
{ig02/(4M2ω2)} → {ig02/(4M2ω)}
これだけ残ってます。

投稿: hirota | 2013年2月 6日 (水) 17時35分

τφ2*iγ5i{γ(p1+q1)-M}]-1iγ5τφ1 → τφ2*iγ5i{γ(p1+q1)-M}-1iγ5τφ1
τφ1iγ5i{γ(p1-q2)-M}]-1iγ5τφ2* → τφ1iγ5i{γ(p1-q2)-M}-1iγ5τφ2*
[1/(2Mω)-(q12+ω2)/(4M2ω2)]+O(q2/M2)] → [1/(2Mω)-(q12+ω2)/(4M2ω2)]+O(q2/M2)

投稿: hirota | 2013年1月11日 (金) 21時04分

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