« 2013年2月 | トップページ | 2013年4月 »

2013年3月

2013年3月14日 (木)

来週から入院します。

 またまたですが,来週の3月18日(月)から最低でも3週間,御茶ノ水の順天堂大学医学部の病棟に入院することが決まりました。

 一応今回は足首の傷を完治させるため,形成外科中心の入院で,2号館7階の大部屋に入院の予定で入院手続きは13日の帰りにやってきました。

 足は第二の心臓,低温ヤケドを放置していたら,糖尿病と動脈硬化の足から感染の危険性もあり,まあ,そんなことは無いでしょうが,最悪足を切断?とか.色々病気持ちなので,何でも油断すると危険がイッパイのようです。

 要するに足の治療で,通院するのも大変なので治るまで入院とか,

 あるいは,全ての病気の元凶である血糖値,ヘモグロビンA1cなどの値を低く安定させなければこれから先もますます身体が悪くなるので1ヶ月ほど普通に病院食とインスリンの規則正しい生活をするとか,

 さらに,色々と腰痛とか足の動脈硬化や筋肉の衰えなどで普通に歩くのさえシンドイし,日常生活もおぼつかない現在の自分の体力,運動機能のリハビリもやろうかな?という私としては,ヒョットしたら体力再生のある意味,願ったりかなったりの入院かもしれません。

 PCやネット,今はタブレットなどもあって入院してもある程度可能ですが,出来れば長年ネット,PCの中毒で半分以上それらに支配されている生活を忘れ,,そうしたモノからの解放と休養,

 眼が悪くなってから億劫になっている本来最大の趣味の読書の習慣なども取り戻したいなどと,今のところは入院を前向きに考えています。

| | コメント (9) | トラックバック (0)

2013年3月13日 (水)

相対論的場の量子論(第Ⅱ部)(1)

相対論的量子論(37)を書いてから後,久しぶりに,

相対論的場の量子論シリーズの続きを書く気になりました。

 

これまでは自由場,自由粒子の場の定式化だけを論じてきました

が,今回,第Ⅱ部として現実の多くの相互作用する場が存在する系

の論議に移ります。

 

これを書くに際して大いに参照した,

Bjorken & Drell著のFieldsのテキストの対応する部分は,

第5章の相互作用する場(Interacting Field)以降です。

 

これは,Mechanics(1~10章)のテキストからの続きとしては

第15章です。

 

§5.1 序文(Introduction) (←※この節は単にテキストの直訳)

 

自由場の理論は,それだけでは何の内実をも持ちません。

物理的世界の性質は別々の場の間の相互作用を通じてのみ明らか

になるものです。

  

そこで,これからはそうしたことの論議へと進みます。

  

相互作用の一般形を作るに際しては,まず,第二量子化の見地から

荷電粒子(特に電子)の電磁相互作用から論じます。

  

強い相互作用,弱い相互作用などの非電磁相互作用については,

結合項,or 相互作用項(Couplig term)の正しい形を見出すための

最大の手がかりは,種々の保存則の実験観測に由来するものです。

  

これらは,Lagrangianがある対称性を持つことを要求することに

よって理論に組み込まれます。

  

特に,連続対称性変換の各々に対して,第1章で述べたNoetherの

定理により,自動的に保存量の存在が導かれます。

 

§5.2 電磁相互作用(The Electromagnetic Interaction)

  

 これまでの論議では,自由粒子に電磁結合項を導入する処方箋

 として,点電荷の古典的相互作用に対応して,極小結合,または,

極小相互作用変換(minimalcoupling),という置き換え,

 

あるいは,総称して,極小置換(minimal substitution):

μ → pμ-eAμ を実行するという方法を採用してきました。

 

この定式化については,第二量子化された場の理論においても,

全く問題ないと考えられるので,以前の慣行に倣って

 

電子場と光子場のLagrangian密度にこの処方を導入することに

よって古典論との対応を保持することにします。

 

この手続きを実行すると,系のLagrangian密度:は, 

(x)=ψ~(x){iγμμ-e0γμμ(x)-m0}ψ(x)

(1/4)Fμν(x)Fμν(x) となります。

  

ただし,ψ(x)=1(x),ψ2(x),ψ3(x),ψ4(x))であり,

ψ~(x)=ψ(x)γ0 です。

 

このLagrangian密度は,電子場と光子場の同一時空点における

局所相互作用を記述しています。

 

そして,このLagrangian密度から,電子と光子のそれぞれの場に

関する独立な変分によって,結合された電子-光子の場の方程式

が導出されます。

 

すなわち,Euler-Lagrange方程式;

/∂ψ~α-∂μ{∂/∂(∂μψ~α)}=0 から, 

{iγμμ-e0γμμ-m0}αβψβ(x)=0,

 

つまり,{iγμμ-e0γμμ-m0}ψ(x)=0

を得ます。

 

また,/∂ψα-∂μ{∂/∂(∂μψα)}=0 から,

ψ~α(x){-e0γμμ-m0}αβ-∂μψ~α(x)(iγμ)αβ=0

を得ます。

 

これは,記号的に,ψ~(x){-iγμμ-e0γμμ-m0}=0

と表現されます。

 

以前の自由場のときにも記述したことですが,これらはψαとψ~α

を独立な変分として導かれた方程式ですが,

 

ψ~(x)=ψ(x)γ0という関係があるなら,両者

は同値な方程式なので,一方だけでいいです。

 

こうして,まず,(iγμμ-m0)ψ(x)=e0γμμ(x)ψ(x)

なる方程式が得られました。

 

一方,Fμν≡∂νμ-∂μνなので,

/∂Aμ-∂ν{∂/∂(∂μν)}=0 は,

-e0ψμψ-∂ννμ=0 :

 

つまり,∂Fμν(x)/∂xν=e0ψ~(x)γμψ(x)

です。

 

方程式:(iγμμ-m0)ψ(x)=e0γμμ(x)ψ(x)

はMechanicsのテキストにおいて,1粒子の相対論的量子力学

を論じた際,電子,陽子の波動関数(4-spinor)が従う方程式と

同じ形をしています。

 

 しかし,そのときには,電子などFermi粒子の動力学を主体に考察

 するため,Aμ(x)は外的に規定された電磁場,つまり,電子の運動

 によって影響されない比較的大きな外場として導入され,

 荷電粒子の影響:反作用は受けないと想定されていました。

 

ここでは,∂Fμν(x)/∂xν=e0ψ~(x)γμψ(x)により,

荷電粒子(電子)のカレント(電流):jμ=e0ψμψ

にCoupleし返されていて,Aμ(x)そのものも,考察対象の

力学系に含まれています。

 

そして,逆にカレント(電流密度);jμ=e0ψμψは,

電磁場(光子の場)Aμの影響下での運動に対する方程式:

(iγμμ-m)ψ=e0γμμψを解いてψを求めることで

構成される量です。

 

そこで,これらの連立方程式系から,場と場の相互作用を論じる

際には,非常に複雑な非線型問題に直面することが明らかになり

ました。

 

これは,古典論においても輻射減衰や相互の場のなす自己場の

影響下での古典的電荷の運動に対する解を探求する場面など

で出現する問題です。

 

こうした場の相互作用については,既に,Mechanicsの第7章

(※本ブログ記事では「散乱の伝播関数の理論」シリーズの

応用編)の電子-電子散乱,Compton散乱,および,電子の自己

エネルギーの計算の際に暗示されています。

 

もしも輻射場に加えて,さらに外部電磁場の影響がある場合の

電子の運動を論じたいなら,単にLagrangian密度や方程式に

外場:Aextμ(x)を追加するだけでいいです。

 

このときには,場の方程式系は,

(iγμμ-m0)ψ(x)=e0μμ(x)+γμextμ(x)]ψ(x)

∂Fμν(x)/∂xν=e0ψ~(x)γμψ(x)

となります。

 

相互作用する結合場に対しては,Lagrangian密度と場の方程式

を書く際に,質量,Charge(電荷)が物理的に観測される値:

mやeとは異なることを予想して,質量をm0,Chargeをe0と,

下添字 0 を付加しておきました。

 

実際,mechanicsの第8章(※本ブログでは輻射補正シリーズ)に

おいて摂動論による計算を行なった際,元々の質量m0と電荷e0

が変化することを見ています。

 

 正確に計算すれば,"くりこみ定数"(m0-m),および,Z3-1という

 ものなどを想定しますが,これらも計算で無限大になるという事態

 に遭遇しますが,現段階ではそうした議論には深入りしません。

 

 くりこみ(Renormalization)という操作の必要性が,謂わゆる

 "くりこみ定数"(m0-m)などの大きさとは全く無関係であること

 を前知識として認識しておくのみです。

 

 しかし,ずっと後の話ですが,摂動論において遭遇する困難のため,

 有限な観測可能な物理量から発散をはっきり分離するには細心の

 注意が必要です。

 

 実際,1948年以来の偉大な進展は,量子電磁力学(QED)が発散との

 共存の地位を確立し,

 

 実験で観測される有限な物理的振幅については,

 求めたいなら如何なるオーダーまででも正確に計算することが

 可能となり,

 

 限られるのは,単に労力だけ,という段階にまで到っています。

 

(↑※基本的理論とかメカニズム,理由,原因は未知でも,どのように

 すれば実験値を正確に計算で再現導出きるか?という対症療法的

 な方法(有効理論?)は確立されたということです。

 そこで,満足するかどうか?は,また別のことです。。)

 

 さて,定式化を古典論の領域から量子論の領域へと拡張するため,

 まず,古典場を量子化された場の演算子として,同時刻交換関係

 を書き下すことができるよう場の(正準)共役運動量を求めます。

 

系全体のLagrangian密度:

(x)=ψ~^(x){iγμμ-e0γμμ^(x)-m0}ψ^(x)

(1/4)Fμν^(x)Fμν^(x)において,古典論との対応に示唆

されて導入された相互作用項:

iny(x)=-e0ψ~^(x)γμμ^(x)ψ^(x)

は,場の時間導関数を含みません。

 

そこで,場の共役運動量は自由場のときの表現と同じです。

 

 光子の場:Aμ^については,自由場で採用したゲージは,輻射ゲージ

 でした。

 

 それは,ゲージとしてはCoulombゲージ:∇^=0 を採用し,

 さらに,A0^(x)≡0 とするというものでした。

  

 相互作用があっても,ゲージはCoulombゲージに留まるとします。

 

 μ^の共役運動量:πemμ^,前と同じく, 

 πem0^≡∂/∂(∂00^)=0,および,

 πemk^≡∂/∂(∂0k^)}=F0k^=∂k0^-∂0k^

 =-∂k0^-∂0k^=Ek^ or πem^=^=-^d-∇A0

す。

 

(↑※「相対論的場の量子論(31)」を参照)

 

また,Dirac場:ψ^=1^,ψ2^,ψ3^,ψ4^)の共役運動量:

πD^は,πD^=(πD1^,πD2^,πD3^,πD4^)=∂/(∂0ψ^)

iψ^=(iψ1^2^3^4^) です。

 

(↑「相対論的量子論(26)」を参照)

 

ただし,相互作用がある場合,スカラー・ポテンシャル:

Φ^=0^は,もはやゼロと見なすことはできません。

 

何故なら,∂Fμν^/∂xν=e0ψ~^γμψ^から,特に,

∂F0k^/∂xk=e0ψ^ψ^ですが,これは,∇^(x)=ρ^(x)

を意味します。

 

ただし,ρ^(x)=ρ^(,t)≡e0ψ^(,t)ψ^(,t)

とおきました。

 

一方,^=-∂^/∂t-∇Φ^より,

^=∂(∇^)/∂t-∇2Φ^=-∇2Φ^です。

 

したがって,∇^(x)=ρ(x)は,

2Φ^(,t)=-e0ψ^(,t)ψ^(,t)≠0 なる

Φ^に対するPoisson方程式になります。

 

それ故,無限遠でぜロと消える境界条件に従うこれの解として,

0^(,t)=Φ^(,t)

={e0/(4π)}∫d3{ρ(,t)/||}

{e0/(4π)}∫d3{ψ^(,t)ψ^(,t)/||}

が得られます。

 

こうして,一見,静電Coulomb型ポテンシャルと見えるゼロでない

0^(,t)の存在があるからです。

 

(※この表現式は一見,静電Coulomb型に見えて実は非現実的です。

 

というのは電荷密度:ρ^(,t)≡e0ψ^(,t)ψ^^(,t)

は時刻tの関数であり,電荷密度の瞬時の変化が即座に,(つまり,

無限大の速度で)左辺に反映する形になっているからです。

 

これは,謂わゆる量子論特有の非局所性に関わることで,物理的

に解釈るすると相対論的因果律にも反しています。

 

しかし,現実の電磁場の観測量はであって,

電磁ポテンシャル:μ(Φ,)は,量子論では本質的なモノ

ですが,"実在"ではないということです。

 

これについては,ブログの2006年10/9の過去記事:

非共変ゲージの非局所性(電磁場)」を参照してください。※)

  

いずれにしろ,このゲージで,スカラー・ポテンシャル:

0^(,t)=Φ(,t)は恒等的にゼロではなくても,

依然として独立な力学変数ではなく,

ψ^(,t)に依存して決まるモノです。

 

さて,量子化を進めるため,場に輻射ゲージの自由場と同じ交換関係,

反交換関係を与えます。

 

α^(,t),ψβ^(,t)}=δαβδ3(),

α^(,t),ψβ^(,t)}

={ψα^(,t),ψβ^(,t)}=0,

 

[Ai^d(,t),Aj^(,t)]=-iδtrij() (ij-1,2,3)

[Ai^(,t),Aj^(,t)]=[Ai^d(,t),Aj^d(,t)]=0

 

ただしtrij()

≡∫d3 exp(ikx){δij-(kij)/2} (ij-1,2,3)

です。

 

このセットを完全にするために,Dirac場とMaxwell場の間の

同時刻交換関係がゼロとなって消えるという条件を課します。

 

すなわち,[ψα^(,t),Aj^(,t)]=0,かつ,

α^(,t),Aj^d(,t)]=0 です。

 

これは,ψα^とAj^が独立な正準変数であるということを示すため

に導入しました。

 

しかしながら,前述したように,スカラー・ポテンシャル:

Φ^=A0^はψα^と独立ではなく,

0^(,t)=Φ^(,t)

{e0/(4π)}∫d3{ψ^(,t)ψ^(,t)/||}

と表現されます。

 

それ故,これは次の交換関係を満たします。

[Φ^(,t),Aj^(,t)]=[Φ^(,t),Aj^d(,t)]=0,

および,

[Φ^(,t),ψα^(,t)]

=-{e0/(4π)}ψα^(,t)/||

 

※(注1-1):Φ^(,t)

 ={e0/(4π)}∫d3{ψ^(,t)ψ^(,t)/||}

 によって,

 

 [Φ^(,t),ψα^(,t)]={e0/(4π)}∫d3

 Σββ^(,t)ψβ^(,t),ψα^(,t)]//||

 ですが,

  

 [ψβ^(,t)ψβ^(,t),ψα^(,t)]

 =ψβ^(,t){ψβ^(,t),ψα^(,t)}

 β^(,t),ψα^(,t)}ψβ^(,t)

 =-δβαδ3()となるからです。

 

(注1-1終わり)※

 

 長くなったので,今日はここまでにします。

 

参考文献:J.D Bjorken S.D Drell "Relativistic Quantum Fiels" (MacGrawHill)

| | コメント (2) | トラックバック (0)

訃報!納谷悟朗さん。

 声優の納谷悟朗さんが慢性呼吸不全のため,3月5日に亡くなられていたことがわかりました。享年83歳でした。

 MSN産経ニュース 

 → 銭形警部,沖田艦長。。声優の納谷悟朗さん。死去83歳

      

 男っぽく野太いダミ声で近年の代表作はルパン三世の銭形警部でした。

    ご冥福を祈ります。合掌!!

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2013年3月 8日 (金)

強い相互作用(湯川相互作用)(15)

強い相互作用(湯川相互作用)」のπ-N散乱の続きです。

 

前記事では本文は少しで,その説明のための(注)が大部分でした。

 

実は今回もそうなのですが。。

 

まずは,改めて(注)以外の本文を再掲載するところから始めます。

 

(※再掲開始)

 

この低エネルギー領域では,散乱は主としてI=J=3/2チャネル

を通るというこれらの示唆で,

 

[dσ33p)/dΩ] C.M.~ {4f2/(3ωμ2)}24(1+3cos2θ)

なる表現式の妥当性を,2つの一般的な観測の助けを借りて

拡張することを試みます。

 

ただし,ω=q2/(2μ)です。

 

まず,[dσ33p)/dΩ] C.M.~ {4f2/(3ωμ2)}24(1+3cos2θ)

のエネルギー依存性は,ω→ ∞(q→ ∞)に対し,σ→ ∞を予測

するため,低エネルギー閾値の近傍を除いては,非現実的である

ということに着目します。

 

実際の全断面積σの大きさには,ユニタリ[性(確率の保存)の結果

として,無限大ではなく上限が存在するはずです。

 

純粋に伝播関数の理論の枠内でS行列のユニタリ性を論じるのは,

かなり,むずかしいので,ここでは,単に非相対論的散乱理論の一般

結果のいくつかを用いることにします。

 

1. 与えられたチャネルに対して,散乱振幅tは次の形を取る。

t ∝ (1/q)exp(iδ)sinδ=1/{q(cotδ-i)}

 

 ただし,qは慣性中心系(重心系)での各粒子の運動量であり,

 δはチャネルの位相のずれ(phase-shift)です。

 

 もしも同じ量子数について匹敵する非弾性チャネルがないなら

 δは実数です。

 

 2.軌道角運動量が~lで,全角運動量J=l+1/2のチャネルの

 全断面積への寄与はtotJ,l≦{4π(2J+1)/2}/q2 のように限定

 される。

 

 (再掲終了※)

 

 さて,ここからが今回の記事です。

 

 3.有効距離展開 (2l+1)cotδ=a+bω+cω2+..

 が低エネルギーで良い近似を与える。

 

※(注15-1):中心対称ポテンシャル:V=V(r);r≡||

 の中にある質量がμの1粒子に対する定常Schoroedinger方程式

 は,粒子の波動関数をΨ()として単位を陽に書くと,

 

 {-hc22/(2μ)+V(r)}Ψ()=EΨ()

 です。

 

 ただし,hc≡h/(2π);hはPlanck定数です。

 

 これの一般解は,極座標を(r,θ,φ)として,

 Ψ()=Ψ(r,θ,φ)=ΣlmlmΨlm(r,θ,φ)

 =Σlmlml(r)Ylm(θ,φ)と,

 球面調和関数:Ylm(θ,φ)の線型結合に

 展開されます。

 

 特に,E=hcωk=hc22/(2μ)に対する解を,

 Ψ,lm()=ul(kr)Ylm(θ,φ) 

 と書くことにします。

  

 ここで,式中のPlank定数hcの存在は煩わしいので,

 (r)≡2μV(r)/hc2 でU(r)を定義した後に,

 hcを1とする自然単位に単位を変えて,運動量=hc

 を波数と同一視し,以下ではでなく,もっぱら

 いう表記を用いることにします。

 

 改めて,E=ω=q2/(2μ)に対する解を,

 Ψ,lm()=ul(qr)Ylm(θ,φ)とすると,

 定常Schoroedinger方程式は少し簡単になって,

 Helmholtz型の方程式:

 {-∇2+U(r)}Ψq,lm()Ψ()=2μωΨ()

 となります。

 

 そこで,動径関数:ul=ul(qr)は,方程式:

 {-d2/dr2+U(r)+l(l+1)/r2 }(rul)=q2rul

 を満たすことがわかります。

 

 特にU=0 のとき,運動量がでz軸の正の向きに進んでいた

 1自由粒子平面波:Cexp(iqz)が,中心対称ポテンシャル:

 U(r)≡2μV(r)の存在によって散乱され(+)()に

 変わったという描像を想定します。(※Cは規格化定数です。)

 

散乱波は,r≡||→ ∞ で外向き球面波の境界条件:

Ψ(+)()r→∞→ C[exp(iqz)+f(θ,φ)exp(iqr)/r]

を満たします。

 

 他方,原点付近:r=||→ 0 で満たすべき境界条件は,

 R→ 0 において,∫0R|ul(qr)|22dr=O(R3)

 となること:

 

 つまり,波動関数が原点において微小体積に比例する確率を与える

 という有限確率密度の条件を課すと,

 

 r=|| → 0 で|ul(0)|<∞であり,{rul(qr)} → 0 です。

 

 ポテンシャル散乱における通常のポテンシャルUは,

 r→ 0 で,|r2U(r)| → 0 を満たすため,

 (※Coulombポテンシャルは例外),

 

 軌道角運動量lがゼロでないときは,これを遠心力l(l+1)/r2

 と比較して無視し,また,右辺のq2rul(l+1)/r2)(rul)

 と比較して無視します。

 

 すると,r→ 0 では,波動方程式:

 {-d2/dr2+U(r)+l(l+1)/r2}(rul)=q2rul

 は,[-d2/dr2+l(l+1)/r2](rul)=0

 と近似されます。

 

 これの解で,r→ 0 でrul → 0 となる条件を見たすものを採用

 すると,Aを積分定数としてrul=Arl+1です。

 

 そこで,r=0 の近傍では,動径関数は,

 ul(qr) ∝ (qr)l なる性質を有すると考えられます。

 

 さらに, r→ ∞ での外向き波境界条件では,

 中心対称ポテンシャル散乱の場合,

 (θ,φ)はφに依存しないので,これをf(θ)と書けば,

 

 外向き散乱波の境界条件は,

 Ψ(+)()r→∞→ C[exp(iqz)+f(θ)exp(iqr)/r]

 となります。

 

 そして,平面波exp(iqz)は,Ylm(θ,φ)の,φに依存しない

 場合球面調和関数であるLegendre多項式:Pl(cosθ)に

 よって部分波展開されて,

 

 exp(iqz)=Σl=0(2l+1)ill(qr)Pl(cosθ)

 となります。

 

 ただし,l(x)2種類の球面Besssel関数:

 l(x)≡{π/(2x)-1/2l+1/2(x),

 nl(x)≡{π/(2x)-1/2l+1/2(x)

 のx=0 で有限な方です。

 

 Jl+1/2(x),Nl+1/2(x)は,Besselの微分方程式の,

 パラメータνがν=l+1/2の場合の2つの独立な解の組

 の1つで,Jl+1/2(x)はBessel関数.Nl+1/2(x)はNeumann関数

 と呼ばれる関数です。

 

 このPl(cosθ)による展開での動径関数の係数である

 球面Bessel関数l(qr)は,

 

 r→∞で,{1/(qr)}sin(qr-lπ/2){1/(2iqr)}

 ×[exp{i(qr-lπ/2)}-exp{-i(qr-lπ/2)}]

 なる漸近形を有します。 

 

 したがって,自由平面波はr→ ∞ では, 

 exp(iqz)=Σl=0(2l+1)ill(qr)Pl(cosθ)

 {1/(qr)Σl=0(2l+1)ilsin(qr-lπ/2)Pl(cosθ)

 

 ={1/(2iqr)}Σl=0(2l+1)ill(cosθ)

 ×[exp{i(qr-lπ/2)}-exp{-i(qr-lπ/2)}]

 となります。

 

 他方,散乱波の部分波展開は,

 Ψ(+)()=C[Σl=0(2l+1)illl(qr)Pl(cosθ)]

 と表現できます。 

 

 これは,r→∞では,自由平面波:

 exp(iqz) → {C/(2iqr)}Σl=0(2l+1)ill(cosθ)

 ×[exp{i(qr-lπ/2)}-exp{-i(qr-lπ/2)}]

 が外向き波の部分のみ変形を受けると想定して,

 

 r→∞で,

 Ψ(+)()→{C/(2iqr)}Σl=0(2l+1)ill(cosθ)

 ×[Sl(q)exp{i(qr-lπ/2)}-exp{-i(qr-lπ/2)}]

 に変わるとして,部分波のS行列因子:Sl(q)を定義します。

 

 さらに特に,位相のずれ:δlを,Sl(q)≡exp(2iδl)

 で導入します。

 

 (※今のところ,必ずしもδlを実数であるとは仮定してないので,

 l(q)≡exp(2iδl)と書くことができる複素数δlが常に存在する

 はずです。)

 

 すると,r→∞で,

 Ψ(+)()→{C/(2iqr)}Σl=0(2l+1)ill(cosθ)

 {C/(2iqr)}Σl=0[(2l+1)ill(cosθ)exp(iδl)

 ×[exp{i(qr-lπ/2+δl)}-exp{-i(qr-lπ/2+δl)}

 

 ={C/(qr)}Σl=0(2l+1)ilexp(iδl)sin(qr-lπ/2+δl)

 Pl(cosθ) となります。

 

 Ψ(+)()=C[Σl=0(2l+1)illl(qr)Pl(cosθ)]

 でしたから,

 

 このことは,Cll(qr)が,r→∞で,

 ll(qr)→{1/(qr)} exp(iδl)sin(qr-lπ/2+δl)

 なる漸近形を持つことを意味します。

 

 個別因子的には,Cl=exp(iδl),かつ,

 l(qr)→{1/(qr)}sin(qr-lπ/2+δl)

 と解釈されます。 

 

 そして,Sl(q)=1+2iTl(q)=exp(2iδl)から,

 T行列因子は,l(q)={Sl(q)-1}/(2i)

 ={exp(2iδl)-1}/(2i)=exp(iδl)sinδl

 となります。

 

 以上から(+)()→r→∞C[exp(iqz)+f(θ)exp(iqr)/r]

 {C/(2iqr)}Σl=0(2l+1)ill(cosθ)

 ×[Sl(q)exp{i(qr-lπ/2)}-exp{-i(qr-lπ/2)}]

 

 =C[exp(iqz)

 +{1/(2iqr)}Σl=0(2l+1){Sl(q)-1}exp(iqr)Pl(cosθ)

 =C[exp(iqz)

 +{1/(qr)}Σl=0(2l+1)Tl(q)exp(iqr)Pl(cosθ)

 

 と書けますから,

 

 f(θ)の展開は,

 f(θ)=(1/q)Σl=0(2l+1)Tl(q)exp(iqr)Pl(cosθ)

 =(1/q)Σl=0(2l+1) exp(iδl)sinδlexp(iqr)Pl(cosθ)

 となります。

  

 ところで,既に2007年8/21の過去記事:

 「S行列とレッジェ理論(1)」でも示したように,

 

 摂動近似でのBorn級数展開によって得られる同じ散乱振幅

 f(θ)の表現は,

 

 f(θ)=f(,'){-1/(4π)}C-1

 ∫exp(-i')U((+)()d3]q'=q です。

 

 ただし,U()=2μV() です。

 

 公式:exp(iqz)=Σl=0(2l+1)ill(qr)Pl(cosθ)

 より,散乱粒子の運動量'がとなす角をβとすると,

 |'|=qなので,exp(-i')

 =Σl=0(2l+1)(-i)ll(qr)Pl(cosβ)

 なる展開式を得ます。

 

 他方,入射粒子の運動量となす角をαとすると,

 Cl=exp(iδl)より,-1Ψ(+)()

 =Σl'=0(2l'+1)il'exp(iδl’)ul'(qr)Pl'(cosα)

 です。 

 

 これらの展開式を,(θ)=f(,'){-1/(4π)}C-1

 ×∫exp(-i')U((+)()d3]q'=q

 の右辺に代入して積分を実行します。 

 

 q'がとなす極角をθ,偏角をφとすると,

 l(cosβ)=Pl(cosα)Pl(cosθ)

 m=1l{(l-m)!/(l+m)!}Plm(cosα)Plm(cosθ)cos(mφ)

 ですが,

 

 3=r2drdΩのうち,dΩ=d(cosα)dφの立体角部分の

 積分を実行すると,dφ積分の実行により,上のPl(cosβ)の表現

 の右辺におけるcos(mφ)の項は消えて,実質的には,

 Pl(cosβ)=Pl(cosα)Pl(cosθ)です。

 

 そこで,Pl(cosβ)Pl’(sosα)=Pl(cosα)Pl(cosθ)Pl’(cosα)

 ですが,Legendre多項式には,

 ∫Pl(cosα)Pl’(cosα)d(sosα)={2/(2l+1)}δll'

 なる直交性があるため,結局,

 

 f(θ)=Σl=0(2l+1)exp(iδl)Pl(cosθ)

 ×[∫0U(r)jl(qr)ul(qr)r2dr]

 なる表式が得られます。

 

 これを,前に得た表式:

 f(θ)=(1/q)Σl=0(2l+1)exp(iδl)sinδl

 exp(iqr)Pl(cosθ)に等置することによって,

 

 sinδl=q∫0U(r)jl(qr)ul(qr)r2dr

 となることがわかりります。

 

 既に,r→ 0 のときr2U(r)→0を満たす普通のポテンシャル

 なら,r→   0 でul(qr) ∝(qr)l,jl(qr) ∝ (qr)l

 となることがわかっているので,

 

 sinδl=q∫0U(r)jl(qr)ul(qr)r2drから,

 低エネルギー極限のq→ 0 に対して,sinδl ∝q2l+1

 を得ます。

 

 そして,第1Born近似ではul(qr)~jl(qr)ですから,

sinδl ~ q∫0U(r){jl(qr)}22drです。

 

ここで,jl(qr)の満たす方程式と,そのGreen関数:

l(r,r';q)の満たす方程式を並べて陽に書くと,

 (1/r)d2(rjl)/dr2+{q2-l(l+1)/r2}jl=0,および,

 (1/r)d2(rGl)/dr2+{q2-l(l+1)/r2}Gl(

 =(1/r)δ(r-r') です。

 

そこで,ul(qr)≡cosδll(qr)

+∫0l(r,r';q)U(r')ul(qr')r'2dr'

とおけば,

 

l(qr)は,

(1/r)d2(rul)/dr2+{q2-l(l+1)/r2}ul=U(r)ul:

 

つまり,

{-d2/dr2+U(r)+l(l+1)/r2}(rul)=q2rul

を満たす1つの解をなすことがわかります。

 

さらに,このul(qr)が,散乱波の境界条件:

 ul(qr)→{1/(qr)}sin(qr-lπ/2+δl)

 を満たすためには.Green関数が,

 Gl(r,r';q)=-qjl(qr)nl(qr') (r<r')

 Gl(r,r';q)=-qnl(qr)jl(qr') (r>r')

 で与えられることが必要です。

 

 こうすれば,r→∞では,

l(qr)→{1/(qr)}cos(qr-lπ/2)なので,

 

l(qr)=cosδll(qr)

+∫0l(r,r';q)U(r')ul(qr')r'2dr'

{1/(qr)}[cosδlsin(qr-lπ/2)

cos(qr-lπ/2)

×[q0U(r')jl(qr')ul(qr')r'2dr’]

となります。

 

ここで,先に得た,

sinδl=-q∫0U(r)jl(qr)ul(qr)r2drなる表式

により,結局,

 

l(qr) → {1/(qr)}[cosδlsin(qr-lπ/2)

cos(qr-lπ/2)sinδl] 

={1/(qr)}sin(qr-lπ/2+δl)

という望ましい結果に導かれます。

 

そして,ul(qr)=cosδll(qr)

+∫0l(r,r';q)U(r')ul(qr')r'2dr'

の両辺をcosδlで割り,ul~(qr)≡ul(qr)/cosδl

とおくと,

l~(qr)=jl(qr)+

0l(r,r';q)U(r')ul~(qr')r'2dr' です。

 

r→ ∞では,

l~(qr) → {1/(qrcosδl)}sin(qr-lπ/2+δl)

{1/(qr)}[sin(qr-lπ/2)+tanδlcos(qr-lπ/2)]

となりますから,

 

tanδl=-q∫0U(r)jl(qr)ul~(qr)r2dr

なる表式を得ます。

 

散乱のポテンシャル:V(r),またはU(r)にある有効レンジa

が存在して,r>aでは, U(r) ~ 0 と見なせるとき,

 

r>aでは,ul(qr)は,U(r)=0 の場合の方程式の解:

l(qr),nl(qr)の線型結合で与えられるはずですが,

 

r→ ∞ で,jl(qr) → {1/(qr)}sin(qr-lπ/2),

l(qr) → {1/(qr)}sin(qr-lπ/2)なので,

l(qr)=cosδll(qr)-sinδll(qr) です。

 

そして,r=aでの接続条件:

[(dul/dr)/ul]r=a+0=[(dul/dr)/ul]r=a-0

を満たす,r≦aでのul(qr)も得られたと仮定し,

εl≡[(dul/dr)/ul]r=a-0 とおきます。

 

l'(x)=djl/dx,nl'(x)=dnl/dxとすれば,

r=aでの接続条件から,

 

εl=[(dul/dr)/ul]r=a+0

=q{cosδll'(qa)-sinδll'(qa)}

/{cosδll(qa)-sinδll(qa)}

 

{qjl'(qa)-qtanδll'(qa)}

/{jl(qa)-tanδll(qa)} です。

 

これを,tanδについて解いて,tanδl

={qjl‘(qa)-εll(qa)}/{qnl‘(qa)-εll(qa)}

です。 

 

半径aの剛体球による散乱というモデルを考えると,

波動関数はr<aではゼロで,r=a+0でゼロから出発

します。

 

そこで,r=aにおいてr>aとの連続性から,

l(qa)=cosδll(qa)-sinδll(qa)=0 なので,

tanδl=jl (qa)/nl (qa) を得ます。

 

qa<<1:a<<λのような剛体粒子による散乱では,

l(qa)~ 2ll!(qa)l/(2l+1)!

l(qa)~-(2l)!/{2ll!(qa)l+1}なので,

tanδl ~ -(qa)2l+1×22l(l!)2/{(2l)!(2l+1)!}

です。 

 

それ故,剛体模型が妥当なら,

2l+1cotδl ~ q2l+1l ∝ -a-(2l+1) です。

 

例えばl=1のP波では,q3cotδl ∝ -1/a3です。

 

2l+1cotδlは低エネルギー極限では,有効距離aのみに依存し,

qには依存しません。 

 

これは,より大きいqについてはq2 or ωで展開されて良い

近似を与え,この展開は有効距離展開と呼ばれます。

 

余談的話ですが,l=1のP波では,

tanδl ~ sinδl ~ δl∝ q33です。

 

そして,散乱される波(粒子)の波長λに対して,

運動量qはq=1/λで与えられます。 

 

ちなみに,散乱の全断面積の位相のずれ:δlによる表現は.

σtot(4π/q2l=0(2l+1)sin2δl ですから,

P波が主体の波ならtot ∝q46∝a64です。

 

太陽光などの光の散乱は,光子はベクトル粒子なので,

これは正に角運動量が1のP波に相当します。

 

qa<<1,a<<λの空気分子のような微細粒子による

光の散乱の大きさは,光の波長λの4乗に反比例していて,

可視光なら紫や青い光が赤い光よりも,はるかに大きい散乱

を受けるという,よく知られたRayleigh散乱の性質をも表現

しています。

  

これらについては,光(電磁波)の古典散乱につい書いた

2009年10/20の記事:「光(電磁波)の散乱(2)

を参照してください。

 

(注15-1終わり)※

 

今回も,非相対論的な散乱理論の話ばかりです。

 

昔のことで,ノートに参考文献も書いていませんでしたし

記憶もハッキリとはしませんが,種本は恐らく当時多用して

ボロボロになり現在はどこかに紛失している,砂川重信著の

岩波全書「散乱の量子論」だと思います。

 

今日はこれで終わります。

1つの記事としては長くなり過ぎました。

 

(参考文献):J.D.Bjorken S.D.Drell "Relativistic Quantum Mechanics" (McGrawHill)

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2013年3月 4日 (月)

本日,また仕事を辞職しました。

 表題の通りです。

 2月1日63歳の誕生日に入社し,まだ4月30日までの試用社員の身分なのに,本日付けで会社辞めました。モッタイナイ。。。

 会社にも先輩同僚にも何の非もなく,仕事も障害者にとっても軽い作業であるにも関わらず,それでも週末の休みには毎回痛みなどで七転八倒してしまうナサケナイ死に損ないの身体を持っている私。。。

 いつ永眠してもいいと豪語してるにも関わらず,まだ少しは生きていたいので,常人には無理でなくても私には無理をして倒れたくないので今日辞職を願って受理されもう明日からは出勤しません。

 取りあえずは報告まで,当分は休んで身体を癒すことにします。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2013年3月 2日 (土)

久しぶりの癒し動画(You-tube)

 忙しい中なので,特に癒しはっ必要です。今月最初の癒し動画です。

 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2013年2月 | トップページ | 2013年4月 »