« 訃報!納谷悟朗さん。 | トップページ | 来週から入院します。 »

2013年3月13日 (水)

相対論的場の量子論(第Ⅱ部)(1)

相対論的量子論(37)を書いてから後,久しぶりに,

相対論的場の量子論シリーズの続きを書く気になりました。

 

これまでは自由場,自由粒子の場の定式化だけを論じてきました

が,今回,第Ⅱ部として現実の多くの相互作用する場が存在する系

の論議に移ります。

 

これを書くに際して大いに参照した,

Bjorken & Drell著のFieldsのテキストの対応する部分は,

第5章の相互作用する場(Interacting Field)以降です。

 

これは,Mechanics(1~10章)のテキストからの続きとしては

第15章です。

 

§5.1 序文(Introduction) (←※この節は単にテキストの直訳)

 

自由場の理論は,それだけでは何の内実をも持ちません。

物理的世界の性質は別々の場の間の相互作用を通じてのみ明らか

になるものです。

  

そこで,これからはそうしたことの論議へと進みます。

  

相互作用の一般形を作るに際しては,まず,第二量子化の見地から

荷電粒子(特に電子)の電磁相互作用から論じます。

  

強い相互作用,弱い相互作用などの非電磁相互作用については,

結合項,or 相互作用項(Couplig term)の正しい形を見出すための

最大の手がかりは,種々の保存則の実験観測に由来するものです。

  

これらは,Lagrangianがある対称性を持つことを要求することに

よって理論に組み込まれます。

  

特に,連続対称性変換の各々に対して,第1章で述べたNoetherの

定理により,自動的に保存量の存在が導かれます。

 

§5.2 電磁相互作用(The Electromagnetic Interaction)

  

 これまでの論議では,自由粒子に電磁結合項を導入する処方箋

 として,点電荷の古典的相互作用に対応して,極小結合,または,

極小相互作用変換(minimalcoupling),という置き換え,

 

あるいは,総称して,極小置換(minimal substitution):

μ → pμ-eAμ を実行するという方法を採用してきました。

 

この定式化については,第二量子化された場の理論においても,

全く問題ないと考えられるので,以前の慣行に倣って

 

電子場と光子場のLagrangian密度にこの処方を導入することに

よって古典論との対応を保持することにします。

 

この手続きを実行すると,系のLagrangian密度:は, 

(x)=ψ~(x){iγμμ-e0γμμ(x)-m0}ψ(x)

(1/4)Fμν(x)Fμν(x) となります。

  

ただし,ψ(x)=1(x),ψ2(x),ψ3(x),ψ4(x))であり,

ψ~(x)=ψ(x)γ0 です。

 

このLagrangian密度は,電子場と光子場の同一時空点における

局所相互作用を記述しています。

 

そして,このLagrangian密度から,電子と光子のそれぞれの場に

関する独立な変分によって,結合された電子-光子の場の方程式

が導出されます。

 

すなわち,Euler-Lagrange方程式;

/∂ψ~α-∂μ{∂/∂(∂μψ~α)}=0 から, 

{iγμμ-e0γμμ-m0}αβψβ(x)=0,

 

つまり,{iγμμ-e0γμμ-m0}ψ(x)=0

を得ます。

 

また,/∂ψα-∂μ{∂/∂(∂μψα)}=0 から,

ψ~α(x){-e0γμμ-m0}αβ-∂μψ~α(x)(iγμ)αβ=0

を得ます。

 

これは,記号的に,ψ~(x){-iγμμ-e0γμμ-m0}=0

と表現されます。

 

以前の自由場のときにも記述したことですが,これらはψαとψ~α

を独立な変分として導かれた方程式ですが,

 

ψ~(x)=ψ(x)γ0という関係があるなら,両者

は同値な方程式なので,一方だけでいいです。

 

こうして,まず,(iγμμ-m0)ψ(x)=e0γμμ(x)ψ(x)

なる方程式が得られました。

 

一方,Fμν≡∂νμ-∂μνなので,

/∂Aμ-∂ν{∂/∂(∂μν)}=0 は,

-e0ψμψ-∂ννμ=0 :

 

つまり,∂Fμν(x)/∂xν=e0ψ~(x)γμψ(x)

です。

 

方程式:(iγμμ-m0)ψ(x)=e0γμμ(x)ψ(x)

はMechanicsのテキストにおいて,1粒子の相対論的量子力学

を論じた際,電子,陽子の波動関数(4-spinor)が従う方程式と

同じ形をしています。

 

 しかし,そのときには,電子などFermi粒子の動力学を主体に考察

 するため,Aμ(x)は外的に規定された電磁場,つまり,電子の運動

 によって影響されない比較的大きな外場として導入され,

 荷電粒子の影響:反作用は受けないと想定されていました。

 

ここでは,∂Fμν(x)/∂xν=e0ψ~(x)γμψ(x)により,

荷電粒子(電子)のカレント(電流):jμ=e0ψμψ

にCoupleし返されていて,Aμ(x)そのものも,考察対象の

力学系に含まれています。

 

そして,逆にカレント(電流密度);jμ=e0ψμψは,

電磁場(光子の場)Aμの影響下での運動に対する方程式:

(iγμμ-m)ψ=e0γμμψを解いてψを求めることで

構成される量です。

 

そこで,これらの連立方程式系から,場と場の相互作用を論じる

際には,非常に複雑な非線型問題に直面することが明らかになり

ました。

 

これは,古典論においても輻射減衰や相互の場のなす自己場の

影響下での古典的電荷の運動に対する解を探求する場面など

で出現する問題です。

 

こうした場の相互作用については,既に,Mechanicsの第7章

(※本ブログ記事では「散乱の伝播関数の理論」シリーズの

応用編)の電子-電子散乱,Compton散乱,および,電子の自己

エネルギーの計算の際に暗示されています。

 

もしも輻射場に加えて,さらに外部電磁場の影響がある場合の

電子の運動を論じたいなら,単にLagrangian密度や方程式に

外場:Aextμ(x)を追加するだけでいいです。

 

このときには,場の方程式系は,

(iγμμ-m0)ψ(x)=e0μμ(x)+γμextμ(x)]ψ(x)

∂Fμν(x)/∂xν=e0ψ~(x)γμψ(x)

となります。

 

相互作用する結合場に対しては,Lagrangian密度と場の方程式

を書く際に,質量,Charge(電荷)が物理的に観測される値:

mやeとは異なることを予想して,質量をm0,Chargeをe0と,

下添字 0 を付加しておきました。

 

実際,mechanicsの第8章(※本ブログでは輻射補正シリーズ)に

おいて摂動論による計算を行なった際,元々の質量m0と電荷e0

が変化することを見ています。

 

 正確に計算すれば,"くりこみ定数"(m0-m),および,Z3-1という

 ものなどを想定しますが,これらも計算で無限大になるという事態

 に遭遇しますが,現段階ではそうした議論には深入りしません。

 

 くりこみ(Renormalization)という操作の必要性が,謂わゆる

 "くりこみ定数"(m0-m)などの大きさとは全く無関係であること

 を前知識として認識しておくのみです。

 

 しかし,ずっと後の話ですが,摂動論において遭遇する困難のため,

 有限な観測可能な物理量から発散をはっきり分離するには細心の

 注意が必要です。

 

 実際,1948年以来の偉大な進展は,量子電磁力学(QED)が発散との

 共存の地位を確立し,

 

 実験で観測される有限な物理的振幅については,

 求めたいなら如何なるオーダーまででも正確に計算することが

 可能となり,

 

 限られるのは,単に労力だけ,という段階にまで到っています。

 

(↑※基本的理論とかメカニズム,理由,原因は未知でも,どのように

 すれば実験値を正確に計算で再現導出きるか?という対症療法的

 な方法(有効理論?)は確立されたということです。

 そこで,満足するかどうか?は,また別のことです。。)

 

 さて,定式化を古典論の領域から量子論の領域へと拡張するため,

 まず,古典場を量子化された場の演算子として,同時刻交換関係

 を書き下すことができるよう場の(正準)共役運動量を求めます。

 

系全体のLagrangian密度:

(x)=ψ~^(x){iγμμ-e0γμμ^(x)-m0}ψ^(x)

(1/4)Fμν^(x)Fμν^(x)において,古典論との対応に示唆

されて導入された相互作用項:

iny(x)=-e0ψ~^(x)γμμ^(x)ψ^(x)

は,場の時間導関数を含みません。

 

そこで,場の共役運動量は自由場のときの表現と同じです。

 

 光子の場:Aμ^については,自由場で採用したゲージは,輻射ゲージ

 でした。

 

 それは,ゲージとしてはCoulombゲージ:∇^=0 を採用し,

 さらに,A0^(x)≡0 とするというものでした。

  

 相互作用があっても,ゲージはCoulombゲージに留まるとします。

 

 μ^の共役運動量:πemμ^,前と同じく, 

 πem0^≡∂/∂(∂00^)=0,および,

 πemk^≡∂/∂(∂0k^)}=F0k^=∂k0^-∂0k^

 =-∂k0^-∂0k^=Ek^ or πem^=^=-^d-∇A0

す。

 

(↑※「相対論的場の量子論(31)」を参照)

 

また,Dirac場:ψ^=1^,ψ2^,ψ3^,ψ4^)の共役運動量:

πD^は,πD^=(πD1^,πD2^,πD3^,πD4^)=∂/(∂0ψ^)

iψ^=(iψ1^2^3^4^) です。

 

(↑「相対論的量子論(26)」を参照)

 

ただし,相互作用がある場合,スカラー・ポテンシャル:

Φ^=0^は,もはやゼロと見なすことはできません。

 

何故なら,∂Fμν^/∂xν=e0ψ~^γμψ^から,特に,

∂F0k^/∂xk=e0ψ^ψ^ですが,これは,∇^(x)=ρ^(x)

を意味します。

 

ただし,ρ^(x)=ρ^(,t)≡e0ψ^(,t)ψ^(,t)

とおきました。

 

一方,^=-∂^/∂t-∇Φ^より,

^=∂(∇^)/∂t-∇2Φ^=-∇2Φ^です。

 

したがって,∇^(x)=ρ(x)は,

2Φ^(,t)=-e0ψ^(,t)ψ^(,t)≠0 なる

Φ^に対するPoisson方程式になります。

 

それ故,無限遠でぜロと消える境界条件に従うこれの解として,

0^(,t)=Φ^(,t)

={e0/(4π)}∫d3{ρ(,t)/||}

{e0/(4π)}∫d3{ψ^(,t)ψ^(,t)/||}

が得られます。

 

こうして,一見,静電Coulomb型ポテンシャルと見えるゼロでない

0^(,t)の存在があるからです。

 

(※この表現式は一見,静電Coulomb型に見えて実は非現実的です。

 

というのは電荷密度:ρ^(,t)≡e0ψ^(,t)ψ^^(,t)

は時刻tの関数であり,電荷密度の瞬時の変化が即座に,(つまり,

無限大の速度で)左辺に反映する形になっているからです。

 

これは,謂わゆる量子論特有の非局所性に関わることで,物理的

に解釈るすると相対論的因果律にも反しています。

 

しかし,現実の電磁場の観測量はであって,

電磁ポテンシャル:μ(Φ,)は,量子論では本質的なモノ

ですが,"実在"ではないということです。

 

これについては,ブログの2006年10/9の過去記事:

非共変ゲージの非局所性(電磁場)」を参照してください。※)

  

いずれにしろ,このゲージで,スカラー・ポテンシャル:

0^(,t)=Φ(,t)は恒等的にゼロではなくても,

依然として独立な力学変数ではなく,

ψ^(,t)に依存して決まるモノです。

 

さて,量子化を進めるため,場に輻射ゲージの自由場と同じ交換関係,

反交換関係を与えます。

 

α^(,t),ψβ^(,t)}=δαβδ3(),

α^(,t),ψβ^(,t)}

={ψα^(,t),ψβ^(,t)}=0,

 

[Ai^d(,t),Aj^(,t)]=-iδtrij() (ij-1,2,3)

[Ai^(,t),Aj^(,t)]=[Ai^d(,t),Aj^d(,t)]=0

 

ただしtrij()

≡∫d3 exp(ikx){δij-(kij)/2} (ij-1,2,3)

です。

 

このセットを完全にするために,Dirac場とMaxwell場の間の

同時刻交換関係がゼロとなって消えるという条件を課します。

 

すなわち,[ψα^(,t),Aj^(,t)]=0,かつ,

α^(,t),Aj^d(,t)]=0 です。

 

これは,ψα^とAj^が独立な正準変数であるということを示すため

に導入しました。

 

しかしながら,前述したように,スカラー・ポテンシャル:

Φ^=A0^はψα^と独立ではなく,

0^(,t)=Φ^(,t)

{e0/(4π)}∫d3{ψ^(,t)ψ^(,t)/||}

と表現されます。

 

それ故,これは次の交換関係を満たします。

[Φ^(,t),Aj^(,t)]=[Φ^(,t),Aj^d(,t)]=0,

および,

[Φ^(,t),ψα^(,t)]

=-{e0/(4π)}ψα^(,t)/||

 

※(注1-1):Φ^(,t)

 ={e0/(4π)}∫d3{ψ^(,t)ψ^(,t)/||}

 によって,

 

 [Φ^(,t),ψα^(,t)]={e0/(4π)}∫d3

 Σββ^(,t)ψβ^(,t),ψα^(,t)]//||

 ですが,

  

 [ψβ^(,t)ψβ^(,t),ψα^(,t)]

 =ψβ^(,t){ψβ^(,t),ψα^(,t)}

 β^(,t),ψα^(,t)}ψβ^(,t)

 =-δβαδ3()となるからです。

 

(注1-1終わり)※

 

 長くなったので,今日はここまでにします。

 

参考文献:J.D Bjorken S.D Drell "Relativistic Quantum Fiels" (MacGrawHill)

|

« 訃報!納谷悟朗さん。 | トップページ | 来週から入院します。 »

114 . 場理論・QED」カテゴリの記事

コメント

しかし,現実の電磁場の観測量はEやBであって,電磁ポテンシャル:Aμ=(Φ,A)は,量子論では本質的なモノですが,"実在"ではないということです。

長い間、現実の電磁場の観測量はEやBであって,マクスウェルが計算の便宜の為に考案した電磁ポテンシャル:Aμ=(Φ,A)は、実在的な場ではないと考えられてきましたが、量子論では電磁ポテンシャルの場の実在性が1956年にヤキール・アハラノフとデビッド・ボームによってAB効果の存在という形で予言され、1986年に外村彰等が楊振寧の応援を得ながら、電子線ホログラフィーの手法を用いて、電磁ポテンシャルの場の実在性が要請するAB効果が実験により確認されました。

投稿: 凡人 | 2013年3月30日 (土) 22時40分

iψ^+=(iψ1^+,ψ2+^,ψ3+^,ψ4+^) ⇨ iψ^+=i(ψ1^+,ψ2^+,ψ3^+,ψ4^+)
ρ^(y,t)≡e0ψ+^(y,t)ψ^^(y,t) ⇨ ρ^(y,t)≡e0ψ^+(y,t)ψ^(y,t)
(ij-1,2,3) ⇨ (i,j=1,2,3)

投稿: hirota | 2013年3月15日 (金) 20時53分

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 相対論的場の量子論(第Ⅱ部)(1):

« 訃報!納谷悟朗さん。 | トップページ | 来週から入院します。 »