« 時代劇チャンネル | トップページ | 量子力学における摂動論Ⅱ(続き) »

2014年8月14日 (木)

量子力学における摂動論Ⅱ

さて,前回の記事「量子力学における摂動論Ⅰ」ではPending

のまま,少し過去の大学講義ノートを参照して書き直すと

書いて中途半端に終わりました。

 

そこでここに続きの記事を書きますが記号の定義はこの前の

記事と同じで前記事を準備として本題の詳細を記述したいと

思います。

 

繰り返しになりますが,定常状態の波動関数Φ=Φ(x)に

対する本のSchroedinger方程式は系のHamiltonianをH

として,EをHの固有値とするHΦ=EΦなる固有値問題

に帰着します。

 

,H=H0のケースには方程式が正確に解けて座標空間全体

の総確率が1となるように規格化された解が,離散的な固有値

:E=E1,E2,E3,..に属する固有関数の完全セット:

Φ=u1(),u2(),u3(),,...で得られているとします。

 

つまり,H0=E(n=1,2,3,..)であるとします。 

ところが,オーダー的にH0とわずかに異なるHamiltonian:

H=H0+VについてはHΦ=EΦを正しく解く方法が見

つからないとき,近似解法が要求されます。

E=E+ΔEの場合のHΦ=EΦの解をΦ=u+ΔΦ

とすれば,方程式:HΦ=EΦは,

(H0+V)(u+ΔΦ)=(E+ΔE)(u+ΔΦ)

となります。

 

これから,H0=Enを除去すると, 

0ΔΦ+V(u+ΔΦ)

=EΔΦ+ΔE(u+ΔΦ),

 

あるいは,

(E-H0)ΔΦ

=V(u+ΔΦ)-ΔE(u+ΔΦ)

となります。

これを次のように書き下します。

 

(E-H0)(Δ(1)Φ+Δ(2)Φ+Δ(3)Φ+..)

=V(u+Δ(1)Φ+Δ(2)Φ+Δ(3)Φ+..)

(1)+Δ(2)+Δ(3)+..)

×(u+Δ(1)Φ+Δ(2)Φ+Δ(3)Φ+..)

です。

これから,前の記事と同じく両辺のVのオーダーを比較して 

(E-H0(1)Φ=Vu-Δ(1) 

(E-H0(2)Φ

=VΔ(1)Φ-Δ(1)nΔ(1)Φ-Δ(2) 

および,(E-H0(3)Φ

=VΔ(2)Φ-Δ(1)Δ(2)Φ-Δ(2)Δ(1)Φ

-Δ(3)...

が得られます。

 

元の非摂動系のエネルギー固有値に縮退が全く無く,

固有関数の正規直交規格化が<m|n>=<u|u

=δmnで与えられる場合なら,

まず,(E-E)<m|Δ(1)Φ

=<m|V|n>-Δ(1)δmnにおいてm=nとして

Δ(1)=<n|V|n>=Vnn を得ます。

また,m=nのときの<m|Δ(1)Φn>=<n|Δ(1)Φ>は不定

ですが,m≠nのときには,E≠Eより, 

<m(1)Φ>=<m|V|n>/(E-E)

=Vmn/(E-E) と書けます。

 

そこで,不定部分をc≡<n|Δ(1)Φn>とおけば, 

Δ(1)Φ=Σ<m(1)Φn>u

=c+Σm≠nmn/(E-E) を得ます。

 

したがって,第1近似ではE近傍の新しいエネルギー

固有値はからE+Δ(1)=E+Vnnへと補正

され,それに属する 固有関数はuから+Δ(1)Φ

(1+c)u+Σm≠nmn/(E-E)

へと補正されます。

 

ところで,固有関数は定数係数だけの不定性を持つので

右辺を(1+c)で割ったものも同じ固有値:E+Vnn

属する固有関数であり最終的には,いずれかを規格化して

確率振幅を表わすものとするわけです

そこで,この係数を修正した固有関数:u+Δ(1)Φ/(1+c)

を改めて+Δ(1)Φと考えてΔ(1)Φ/(1+c)をΔ(1)Φ

と定義し直しておく方法もあります。

それ故,始めからΔ(1)Φのみならず全補正値: 

ΔΦ=Δ(1)Φ+Δ(2)Φ+Δ(3)Φ..)が

とは独立な成分であり,あらゆる摂動Vの次数

d<n|ΔΦ>=<n|Δ(d)Φ>=0 (d=1,2,3,..)

を満たす,と仮定しておくわけです。

 

特に, <n|Δ(1)Φ>=0 から,

Δ(1)Φ=Σm≠nmn/(E-E)であり

+Δ(1)Φ=u+Σm≠nmn/(E-E)

としてこれを摂動論の方法として採用してもいいと

考えられます。

 

そこで,以下ではそういう扱いをすることにします。

 

次に,(E-H0(2)Φ

=VΔ(1)Φ-Δ(1)nΔ(1)Φ-Δ(2)において

左からm()を掛けてdの空間積分をするという内積

をとると

(E-E)<m|Δ(2)Φ

=<m|V|Δ(1)Φ>-Δ(1)n<m|Δ(1)Φ

-Δ(2)δmn

です。

 

Δ(1)Φ同様Δ(2)Φ>もuとは独立なため,

その結果,<n(2)Φ>=<n|Δ(1)Φ>=0

ですから,m=nとして,

Δ(2)=<n|V|Δ(1)Φ

=<n|V|Σm≠nmn/(E-E)>

=Σm≠nmnnm/(E-E)

=Σm≠n|Vmn|/(E-E) 

を得ます。

 

また,

m≠nなら,(E-E)<m|Δ(2)Φ 

=<m|V|Δ(1)Φ>-Δ(1)n<m|Δ(1)Φ 

=<m|V|Σk≠nkn/(E-E)>

-Vnnmn/(E-E) 

=Σk≠nknmk/(E-E)

-Vnnmn/(E-E) 

です。

 

故に,縮退が無くてm≠nならE≠Eの場合は, 

<m(2)Φ 

=Σk≠nknmk/(E-E)(E-E)

+Vnnmn/(E-E) となります。

 

したがって,結局,2次補正固有関数として,

 

Δ(2)Φ=Σm≠n<m(2)Φn>u 

=Σm≠nΣk≠nknmk/(E-E)(E-E) 

-Σm≠nnnmn/(E-E)2  

を得ます。

 

同様に,(E-E)<m|Δ(3)Φ 

=<m|V|Δ(2)Φ>-Δ(1)<m|Δ(2)Φ

-Δ(2)<m|Δ(1)Φ-Δ(3)δmnであって, 

<n(3)Φ>=<n|Δ(2)Φ>=<n|Δ(1)Φ>=0

なので, 

Δ(3)=<n|V|Δ(2)Φ 

=Σm≠nΣk≠nknmk/(E-E)(E-E) 

が得られます。

 

また,<m|V|Δ(2)Φ

=Σj≠mΣk≠mkmjk/(E-E)(E-E)より,

Vの3次補正のm≠nに関する展開係数は,

<m|Δ(3)Φ>={1/(E-E) 

×[<m|V|Δ(2)Φ>-Δ(1)<m|Δ(2)Φ

-Δ(2)<m|Δ(1)Φ>]

=Σj≠mΣk≠mmjkmjk/(E-E)(E-E)(E-E)

-Σk≠nnnknmk/(E-E)(E-E)(E-E) 

-Vnnmn/(E-E)

-Σk≠n|Vkn|mn/(E-E)(E-E)

です。

 

以上から縮退の無い場合のエネルギー固有値の摂動展開は,

 

ΔE=Vnn+Σm≠n|Vmn|/(E-E) 

+Σm≠nΣk≠nknmk/(E-E)(E-E)+.. 

で与えられ,

 

その固有関数の摂動展開は ,

ΔΦ=Σm≠nmn/(E-E) 

 +Σm≠nΣk≠nknmk/(E-E)(E-E)

 -Σm≠nnnmn/(E-E)

 +Σm≠nΣj≠mΣk≠mmjkmjk

 ×u/(E-E)(E-E)(E-E) 

 -Σm≠nΣk≠n|Vkn|mn/(E-E)(E-E) 

 -Σm≠nnnmn/(E-E)+..

 で与えられることがわかります。

 

 さて,改めてH=H0+Vに対してHΦ=EΦを満たす,正確な

 エネルギー固有値をε,固有関数)をΦとします。

 これまでの道筋を改めて確認すると,H0=Eで,

 HΦ=εΦであり,ε=E+ΔE,かつ

 Φ=u+ΔΦです。

 ところが,<Φ>=<u+ΔΦ|u+ΔΦ 

 =1+<ΔΦ|ΔΦ>≠1ですから,波動関数をそれ自身で

 1つの確率振幅を示すものと定義し直すなら,これを

 再規格化(Renormalize)する必要があります。

 

そこでΦを最終的に規格化したものをχ≡Z/2Φ

定義すれば,<χ>=1ですから.

Z=1/{1+<ΔΦ|ΔΦ>}~ 1-<ΔΦ|ΔΦとする

ことが必要です。

 

<ΔΦ|ΔΦ>はVの2次以上のオーダーです。

 

ΔΦ=Σm≠nmn/(E-E) 

 +Σm≠nΣk≠nknmk/(E-E)(E-E)

 -Σm≠nnnmn/(E-E)2 +..から

 

 <ΔΦ|ΔΦ>=Σm≠n|Vmn|/(E-E)

 +O(V)より,

 Vの2次までの近似では,/2=~1-(1/2)<ΔΦ|ΔΦ

  ~ 1-(1/2)Σm≠n|Vmn|/(E-E)なので,結局,

 2次までの近似では規格化により

 χ=Z/2Φ=u+Σm≠nmn/(E-E)

 (1/2)Σm≠n|Vmn|/(E-E)

 +Σm≠nΣk≠nknmk/(E-E)(E-E)

 -Σm≠nnnmn/(E-E)2 

 が得られます。

 

それ故,この近似では規格化も<χ>=1-O(V)

の精度であることに留意しておく必要があります。

 

さて,これまでの議論は元のVが無い非摂動系H0において

エネルギー固有値に対し,全く縮退が無いという特別な場合

の方法でした。

くどいようですが,要約すると,摂動Vの2次の展開項まででは,

H=H0+Vに対するエネルギー固有値はε=E+ΔE

=E+Vnn+Σm≠n|Vmn|/(E-E)

固有関数は=u+ΔΦ

=u+Σm≠nmn/(E-E) 

+Σm≠nΣk≠nknmk/(E-E)(E-E)

-Σm≠nnnmn/(E-E)2 です。

 

しかし,もしもH0の系がエネルギー縮退していれば,m≠n

でもE=E,かつVmn0 なる状態が2つ以上存在する

ことがあり,その結果,Vmn/(E-E)を因子として含む

ような項は有限な値としての意味を失なうため,

 

このままの素朴な摂動近似式の表現は破綻します。

 

もしも,H0の固有値:Eのエネルギー固有状態がg重に

縮退していたなら,同じ固有値に属し正規直交化されたg個

の固有関数をunα(α=1,2,..,g)と書いて,連立方程式:

0nα=Enα(α=1,2,..,g)が成立していると表現

することができます。

 

他方,H0の固有値がEの別の正規直交化されたg個の

固有関数系を取ることもできて,それをnj(j=1,2,..,g)

するとH0nj=Enjであり,これらはunα線型結合

重ね合わせ状態として,vnj=Σα=1αjnαのように

関係付けられるはずです。 

このとき,係数の複素数cαjはcαj=<unα|vnj

で与えられます。

 

そして,正規直交条件はδij=<vni|vnj 

=Σα=1<vni|unα><unα|vnj

=Σα=1αiαj です。

特に,i=jとすると,係数がΣα=1|cαj|=1 

を満たす必要がある,ことを意味する式になります。

 

以前と同じく,以下,<unα|V|unβ>を

<nα|V|nβ>etc.と表記することにします。

 

縮退がない場合の摂動論の方程式系: 

(E-H0(1)Φ=Vu-Δ(1)

 

(E-H0(2)Φ

=VΔ(1)Φ-Δ(1)nΔ(1)Φ-Δ(2) 

(E-H0(3)Φ

=VΔ(2)Φ-Δ(1)Δ(2)Φ-Δ(2)Δ(1)Φ

-Δ(3)... 

において固有値Eに属する非摂動系での固有状態の固有

関数から,より一般的な状態=Σα=1αnα

変更し,新しいHの固有関数Φnを,

Φ=v+ΔΦ

=Σα=1αnα+Δ(1)Φ+Δ(2)Φ+Δ(3)Φ

.. 

とします。

すると,

(E-H0(1)Φ=Vv-Δ(1)

 

(E-H0(2)Φ

=VΔ(1)Φ-Δ(1)nΔ(1)Φ-Δ(2)

 

(E-H0(3)Φ

=VΔ(2)Φ-Δ(1)Δ(2)Φ-Δ(2)Δ(1)Φ

-Δ(3)...

となります。

 

またまた長くなったので中途ですが今日はここまでにします。 

|

« 時代劇チャンネル | トップページ | 量子力学における摂動論Ⅱ(続き) »

111. 量子論」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 量子力学における摂動論Ⅱ:

« 時代劇チャンネル | トップページ | 量子力学における摂動論Ⅱ(続き) »