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2014年8月22日 (金)

量子力学における摂動論Ⅱ(続き)

 さて,前回の記事も中途半端なところで終わりました。 

そこでここに続き記事を書きます。

 

まず,いきなり続きを書いたのでは接続がよくないので最後の

必要な部分を再掲載します。

 

(※)H0の固有値:Eのエネルギー固有状態がg重に縮退して

いたなら,同じ固有値に属し正規直交化されたg個の固有関数を

nα(α=1,2,..,g)としてH0nα=Enα(α=1,2,..,g)

が成立しています。

他方,H0の固有値がEの別の正規直交化されたg個の固有関数

の系をnj(j=1,2,..,g)とするとH0nj=Enjであり,

これらはunα線型結合(重ね合わせ)として,

nj=Σα=1αjnαのように関係付けられるはずです。

 

このとき,係数cαjはcαj=<unα|vnj>で与えられます。

 

そして,正規直交条件はδjj=<vni|vnj 

=Σα=1<vni|unα><unα|vnj

=Σα=1αiαjです。

特にα=1|cαj|=1が成立します。

 

以前と同じく,以下,<unα|V|unβ>を<nα|V|nβ>etc.

と表記します。

 

縮退を考慮する前から扱っていた摂動論の方程式 

(E-H0(1)Φ=Vu-Δ(1) 

(E-H0(2)Φ

=VΔ(1)Φ-Δ(1)nΔ(1)Φ-Δ(2) 

(E-H0(3)Φ

=VΔ(2)Φ-Δ(1)Δ(2)Φ-Δ(2)Δ(1)Φ-Δ(3)

 .. において

固有値Eに属する非摂動系での固有状態の固有関数

から=Σα=1αnαに変更して新しい固有関数

ΦnをΦ=v+ΔΦ

=Σα=1αnα+Δ(1)Φ+Δ(2)Φ+Δ(3)Φ..

とします。

(E-H0(1)Φ=Vv-Δ(1)

(E-H0(2)Φ=VΔ(1)Φ-Δ(1)nΔ(1)Φ-Δ(2)

 

(E-H0(3)Φ

=VΔ(2)Φ-Δ(1)Δ(2)Φ-Δ(2)Δ(1)Φ-Δ(3) 

+.. となります。(※)

ここまでが,前回の終わりの部分の再掲載です。 

ここから続きを書きます。

 

最後の式の両辺に左からunαを掛けて内積を取ります。

 

そして,前と同じく

<nα|Δ(d)Φ>=<unα|V|Δ(d)Φ>=0 (d=1,2.3..)

なる条件を仮定すると,

まず,1次の項については, 

0=<unα|V|v>-Δ(1)<unα|V|v

です。

 

それ故,v=Σβ=1βnβを代入して, 

Σβ=1 [<nα|V|nβ>-Δ(1)δαβ]cβ=0 (

β=1,2,..,g)なるg個の方程式の系を得ます。

 

これは,

第α行β列成分が,

[<nα|V|nβ>-Δ(1)δαβ]のg行g列の正方行列をP,

つまり,Pを{Pαβ}≡<nα|V|nβ>-Δ(1)δαβ 

(α,β=1,2,..,g)なる成分Pαβを持つg次の正方行列とし,

n次列ベクトルt(c,c,,..,c)をと定義すれば,

行列形式では0なるを未知数とする同次方程式に書けます。

 

さらに,A={Aαβ}≡<nα|V|nβ>とし,Iをg次の単位行列I

I={δαβ}とおけば,P0は[A-Δ(1)I]0 ,または

=Δ(1)なる固有値問題の方程式になることがわかります。

 

このt(c,c,,..,c)に対する方程式れが自明な解

0 以外の解xを持つ:

つまり.v=Σα=1αnαがv=0

という,摂動の無かった初めからエネルギーの固有値に属さない

という,仮定に矛盾する無意味なもの以外のEの固有関数である

ためには,係数の行列式がゼロ:

 

detP=det[A-Δ(1)I]=0 が必要十分です。

 

これは固有値Δ(1)に対するg次の代数方程式です。

 

これがg重根を持つのでなければ,摂動の1次で部分的には

縮退が解けることになります。

 

全てのg個の根が相異なる場合は縮退は完全に解けます。

 

まず,全てのg個が相異なるかどうかは別にして 

Δ(1)に対するg次の代数方程式:det[A-Δ(1)I]=0

の根をΔ(1)=Δ(1)1(1)n2,.,Δ(1)ng とします。

 

それぞれの固有値:Δ(1)nj (j=1,2,..,g)には,

固有ベクトル:t(c1j,c2j,,..,cgj)が決まり,

対応してg個の=vnj=Σα=1αjnα (j=1,2,..,g)

が決まります。

 

そこで,1次の式;(E-H0(1)Φ=Vv-Δ(1)

の両辺で,それぞれ(1)Φ=Δ(1)Φnj(1)=Δ(1)nj

=vnjを代入すると,

(E-H0(1)Φnj=Vvnj-Δ(1)njnj

となります。

 

したがって,まず,左からvnjを掛けて内積を取ることにより, 

nj=Σα=1αjnα の具体的係数cαjなどを明示してない以上 

あくまで形式的ですがΔ(1)nj=<vnj|V|vnj>を得ます。

 

そして,m≠n,かつ,E≠Eなるmについて左からumγ

を掛けて内積を取ると,<umγ|vnj>=0 ですから

 

(E-E)<mγ|Δ(1)Φnj>=<mγ|V|vnj>により 

Δ(1)Φnj=Σm≠nΣγ<mγ|Δ(1)Φnj>umγ 

=Σm≠nΣγmγ<mγ|V|vnj>/(E-E) 

を得ます。

 

このとき,(E-H0(2)Φ

=VΔ(1)Φ-Δ(1)nΔ(1)Φ-Δ(2) より,

(E-H0(2)Φnj

=VΔ(1)Φnj-Δ(1)njΔ(1)Φnj-Δ(2)njnj 

から,

<vni(2)Φnj>=<vni(1)Φnj>=0 によって. 

0=<vni|V|Δ(1)Φ>-Δ(2)njδijです。

 

それ故,i=jとして 

Δ(2)nj=<vnj|V|Δ(1)Φ 

=Σm≠nΣγmγ<vnj|V|mγ><mγ|V|vnj>/(E-E) 

=Σm≠nΣγ|<mγ|V|vnj>|/(E-E)

 

同じく,(E-H0(2)Φnj

=VΔ(1)Φnj-Δ(1)njΔ(1)Φnj-Δ(2)njnj

の左からm≠nのumγを掛けて内積を取ると,

<mγ|vnj>=0 なので(E-E)<mγ|Δ(2)Φnj 

=<mγ|VΔ(1)Φnj>-Δ(1)nj<mγ|Δ(1)Φnj

を得ます。

 

≠Eなので,<mγ(2)Φnj 

[<mγ|VΔ(1)Φnj>-Δ(1)nj<mγ|Δ(1)Φnj>]

/(E-E) 

=Σk≠nΣβ|<mγ|V|kβ><kβ|V|vnj

/(E-E)(E-E)

-Σk≠nΣβ<vnj|V|vnj><kβ|V|vnj>/(E-E)

 

以上から摂動の1次で縮退が解ける場合も2次までの近似で, 

εnj~ E+Δ(1)nj+Δ(2)nj 

=E+<vnj|V|vnj>+Σm≠nΣγ|<mγ|V|vnj>|

/(E-E)であり,

このエネルギー固有値に属する摂動近似解は,

 

Φnj~vnj+ΣΣγmγ<mγ|V|vnj>/(E-E) 

+Σk≠nΣβ|<mγ|V|kβ><kβ|V|vnj

/(E-E)(E-E)

-Σk≠nΣβ<vnj|V|vnj><kβ|V|vnj

/(E-E)2 

となります。

 

しかし,摂動の1次ではなおお縮退が解けず,2次で解ける場合, 

これは,detP=det[A-Δ(1)I]=0がg重根を持つ場合 

つまり(1)≡Δ(1)nj=Δ(1)n2=..=Δ(1)ng

の場合です。

このときにも,同じ固有値に属するg個の固有ベクトル:

t(c1j,c2j,,..,cgj):

nj=Σα=1αjnα<vni|vnj>=δij

正規直交化して取ることができますから

同じ論理が成立します。

 

さて,以上のRaileigh-Schroedinger(R-S)の方法と呼ばれる

素朴な摂動論では高次になるほど補正式が煩雑になるため, 

他にやや簡明なBrillouin-Wigner(B-W)の方法があります。

 

定常状態のSchroedinger方程式:(H0+V)Φ=εΦ, 

or (ε-H0=VΦからH0=E

 

において最初から,未知の波動関数Φを正規直交完全系

:{u}で展開してΦ=Σ<m>uと表記して

おきます。

以前のようにΦ=u+ΔΦで<n|ΔΦ>=0 から

<n|Φ>=1と仮定します。

 

よって=u+Σm≠n<m|Φ>um です。

 

-H0=VΦから

-En)<n|Φ>=<n|V||Φ>で 

<n>=1より

ε-En=<n|V||Φ>ですから,  

ε=En+ΔE,ΔE=<n|V||Φ

を得ます。

 

一方,同じ(ε-H0=VΦから

-E)<m|Φ>=<m|V|Φ>より 

<m>=<m|V|Φ>/(ε-E)

 

そこで,Φ=u+Σm≠n<m>u

=u+Σm≠n<m|V|Φ>u/(ε-E)

 

これらは,Φとεが未知のままなので微分方程式を積分

方程式 or 級数方程式?のように方程式を書き換えただけ

です,この形は謂わゆるiteration(逐次代入の反復)

近似解を求めるのに適しています。

 

まず,右辺の<m|V||Φ>のΦに,さらに形式的に 

Φ=u+Σm≠n<m|V|Φ>u/(ε-E)を

代入すると,

 

Φ=u+Σm≠nΣm≠n<m|V|k><k|V|Φ>u

/(ε-E)(ε-E) 

を得ます。

 

これを繰り返せば,Φ

=u+Σm≠nΣm≠n<m|V|k><k|V|n>u

/-E)(ε-E)..なる摂動級数

が得られます。

 

こうして44年前に自分でとったノートを読み返してみると

当時,勉強したばかりで浅薄であった線形代数学の知識では

理解できたかどうかがあやふやな講義の板書をただ書き写し

たにしてはほとんど齟齬がないものだと改めて感心しました。

 

入学後に教養の1年生からイキナリよく知らない方程式や

専門用語の羅列等,初学者にはチンプンカンプンであった多く

の物理学の講義にしては,この教授が書いた板書は,

まるで当時,個人的によく潜入していた専門の数学科の講義

で感じたもののように至極丁寧であったと想像されます。

 

イヤ,それでも40年以上前のノートの式の中には意味を判読するの

に若干の時間がかかろものもありましたが。。。。

 

そうそう。。当時,量子力学の講義で,色々と参考プリントなど

配られ,それを見ていて,

「これらは物理にしては数学的過ぎるのでは?」

というクラスメイトのクレイムが出て,

それに対し「後になって,むしろ数学的であるほど,正に

量子力学なんだ,ということがわかるだろう。」という旨

のことを教授が返答していたと記憶しています。

 

今日はこのくらいにします。

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