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2014年9月25日 (木)

ゲージ場の量子論から(その1)(経路積分と摂動論2)

 「ゲージ場の量子論から(経路積分と摂動論)」の続きです。

 今日は経路積分において以下に定義する中点処方の詳細について

記述し,経路積分を通して量子論と古典論のHamiltonianに如何なる

対応関係があるのか?を考察します。

 

 

Weyl変換とWeyl順序

 

経路積分の表式;<q,t|q,t 

limN→∞∫dp0(2π)-1Πk=1{dpdq/(2π)-1} 

exp(iΣj=0{{p(qj+1-q)/Δt-H(p,(qj+1+q)/2)}

×Δt} 

=∫(tI)=qI(tF)=qFDpDq  

exp(i∫tItFdt[p(t)q(t)-H(q(t),p(t))])

 

において出現する形の古典的なHamiltonian: 

(p,q~);q~≡(qj+1+q)/2

と量子論のHamiltonian演算子;とには一般に如何なる関係

があるのか?という疑問が生じます。

 

そうしたことの考察を述べる前に,経路積分における古典的

Hamiltonianのq座標 としてはq~≡(qj+1+q)/2の

ようにqとqj+1の中点q~で与えると規約しておくこと

にします。

この規約を中点処法(midpoint prescription)と呼びますが,

一般には同一のでもq座標の与え方でHの関数形そのもの

が変わってしまいます。

 

経路積分を定義するに当たっては必ずしも中点処法でなく

他の規約をとる方法もありますが,特に,この中点処法を採用

する理由はN → ∞の有限和から連続極限の積分への移行

がスムーズであることなど,いくつかの利点があるからです。

 

[注1]:通常のLebesgue積分(またはRiemann積分)の定義では

積分変数の区間分割において被積分関数の値として,分割区間

の端点の関数値を採用しようが中央の関数値を採用しようが

極限としての積分結果には無関係です。

,

まあ,それをもって積分可能である,とか可積であるとか,称する

定義となっているわけです。

 

しかし,例えば以前の記事で詳述した伊藤積分のような確率積分

なら,マルチンゲール性の考慮から端点値を採用することが重要

で,こうしたことが結果に重大な差異を生むことを言及したこと

もありました。

 

まあ,これは結局,確立積分自体が有界変動ではない関数の積分

の極限なので,そうだったのですが,今の量子論のケースで

不確定性原理: [,]=-iによってqppqと変数

が可換でないことが本質的な理由です。(注1終わり)※

さて, 

<qj+1,tj+1|q,t

=<qj+1|exp{i(tj+1)}|q 

=<qj+1|(1-iΔt)|q> から,

 

<qj+1,tj+1|q,t 

(2π)-1∫dp

exp[i{p(qj+1-q)-H(p,(qj+1+q)/2)Δt}] 

に至る導出手順と同様に,

 

<qj+1||q

=<qj+1|2/2|q>+<qj+1|V()|q 

=∫dp<qj+1|2/2|p><p|q

+V(q)δ(qj+1-q) 

(2π)-1∫dp[exp[i{p(qj+1-q)}

{p2/2+V((q+qj+1)/2)}] 

(2π)-1∫dp[exp[i{p(qj+1-q)}H(p,q~)

 です。

 

 これをH(p,q)について解くと 

(p,q)=∫dv exp(ipv)<q-v/2|H|q+v/2>,

および, 

(p,q)=∫du exp(iqu)<p+u/2|H|p-u/2> 

を得ます。

  

※[注2]:何故なら,q≡(qj+1+q)/2,p≡p,v≡q-qj+1

とおくとj+1=q-v/2,q=q+v/2,なので, 

<qj+1||q 

(2π)-1∫dp[exp[i{p(qj+1-q)}H(p,q~)

<q-v/2||q+v/2> 

(2π)-1∫dp exp(-ipv)H(p,q)

です。

 

そこで,Fourier逆変換によって, 

(p,q)=∫dv exp(ipv)<q-v/2|H|q+v/2>

が得られます。

 

さらに,右辺=∫dv exp(ipv) 

∫dp1∫dp2<q-v/2|p1><p1||p2><p2|q+v/2> 

=∫dp1∫dp2∫dv(2π)-1exp[I|p-(p1+p2)/2]v}

+i(p1-p2)q]<p1||p2 

=∫dp1∫dp2δ{p-(p1+p2)/2}exp|i(p1-p2)q}

<p1||p2 

2∫dp1exp|i(p1-p2)q}<p1||p2 

2∫dp1exp|i2(p1-p)q}<p1||2p-p1> 

です。

 

それ故,u≡=2(p1-p)とおけばdu=2dp1であり,

1=p+u/2,かつ,2p-p1=p-u/2です。

 

結局,H(p,q)=∫duexp(iqu)<p+u/2||p-u/2>

を得ます。(注2終わり)※

 

さて,再掲すると,

H(p,q)=∫dv exp(ipv)<q-v/2||q+v/2> 

=∫du exp(iqu)<p+u/2||p-u/2> 

ですが,この形の演算子:からc数:H(pq)への変換は

一般にWeyl変換と呼ばれています。

 

これの逆変換は,=∫∫dpdqH(p,q)Δ(p,q) 

 

ただし,Δ(p,q)=∫du exp(iqu)|p-u/2><p+u/2| 

=∫dv exp(ipv)|q+v/2><q-v/2| 

=∫dudv(2π)-1 exp{i(q-)u+i(p-)v}

 

で与えられます。

 

※[注3];(証明):演算子:

≡∫dp'dq'(2π)-1H(p',q')∫du' 

exp(iq'u')|p'-u'/2><p'+u'/2|

ブラ:<p+u/2|とケット:|p-u/2>の間に挟み

exp(iqu)を掛けてduで積分します。

すると, 

∫du exp(iqu)<p+u/2||p-u/2> 

=∫dudu'∫dp'dq'(2π)-1H(p',q')

exp(iqu+iq'u') 

<p+u/2|p'-u'/2><p'+u'/2|p-u/2> 

=∫dudu'∫dp'dq'(2π)-1H(p',q')

exp(iqu+iq'u')δ(p-p'+(u+u')/2)

δ(p'-p+(u'+u)/2) 

=∫dudu'∫dq'(2π)-1H(p+(u+u')/2,q') 

exp(iqu+iq'u')δ(u+u') 

=∫du∫dq'(2π)-1H(p,q')exp{I(q-q')u} 

=∫dq'δ(q-q') H(p,q') 

=H(p,q) 

となります。

 

したがって,H(p,q)=∫du exp(iqu)

<p+u/2||p+u/2> 

=∫duexp(iqu)<p+u/2||p-U/2>

が成立します。

 

同様に,演算子:

≡∫dp'dq'(2π)-1H(p',q')∫dv' 

exp(Ip'v')|q'+v’/2><q'-v'/2|

ブラ:<q-v/2|とケット:|q+v/2>の間に挟み

exp(Ipv)を掛けてdvで積分すると,

 

(p,q)=∫dv exp(Ipv)<q-v/2||q+v/2> 

=∫dvexp(ipv)<q-v/2||q+v/2>

が成立することを示すことができます。

 

これらは,任意のp,q,u,vに対して恒等的に成立する

式ですから,結局,演算子として,が成立する

ことになります。

 

,および,の定義式は,積分変数からプライムをはずすと

それぞれ,

≡∫dpdq(2π)-1H(p,q)

∫duexp(iqu)|p-u/2><p+u/2| 

および, 

≡∫dpdq(2π)-1H(p,q)

∫dvexpipv)|q+v/2><q-v/2| 

であり,なのですから,

 

∫duexp(iqu)|p-u/2><p+u/2| 

=∫dvexpipv)|q+v/2><q-v/2|

と結論されます。

この因子=演算子をΔ(p,q)と表わすことによって 

∫dpdq(2π)-1H(p,q)Δ(p,q)

なる表式を得ます。

 

さらに, 

Δ(p,q)=∫dudv(2π)-1

exp{i(q-)u+i(p-)v}

となることも以下に証明します。

 

それには,

=∫dpdq(2π)-1H(p,q) 

×∫dudv(2π)-1 exp{i(q-)u+i(p-)v}

となることを示せばよいのですが,

 

(p,q)=∫dvexp(ipv)<q-v/2||q+v/2> 

ですから, 

(p,q)=∫dp'dq'(2π)-1H(p',q') 

×∫du'dv'dv(2π)-1exp(ipv) 

<q-v/2|exp{i(q'-)u’+i(p'-)v'}|q+v/2> 

を示せば十分です。

 

さて,右辺=∫dp'dq'(2π)-2H(p',q') 

∫du'dv'dvexp(ipv+iq'u'+p'v') 

<q-v/2|exp(-iu'-iv')|q+v/2> 

と書けます。

 

ところで,線型演算子,の交換子[,]=XYYX

,Yと可換な場合:つまり,[,[,]]=0, [,[,]]=0

が成立するときには,

 

exp()=exp{-[,]/2}expexpY

なる等式が成立する。という性質があります。

(※↑ これについては2006年10/27の本ブログの過去の

 記事:「量子力学の交換関係の問題(その2)」を参照

されたい。※)

 この公式を適用すると,

 

exp(-iu'-iv') 

exp{-(-iu'-iv')/2}exp(-iu')exp(-iv')

です。

そして,[-iu',-iv']

=-u'v'[,]=-iu'v'より,

exp(-iu'’-iv')

exp(-iu'v'/2)exp(-iu')exp(-iv')

です。

 

 故に,

<q-v/2|exp(-iu'-iv')|q+v/2> 

exp(-iu'v'/2)

<q-v/2| exp(-iu')exp(-iv')|q+v/2> 

です。

 

さらに, 

<q-v/2| exp(-iu')exp(-iv')|q+v/2> 

∫dp"<q-v/2|exp(-iu')exp(-iv')|p"> 

<p”|q+v/2> 

=∫dp"(2π)-1exp{ip"(q-v/2)}

exp{-i(q-v/2)u'-ip"v'}exp{-ip"(q+v/2)} 

 exp{-i(q-v/2)u'}δ(v'+v) 

です。

 

そこで,∫du'dv'dv(2π)-2

exp(ipv+iq'u'+p'v') 

<q-v/2|exp(-iu'-iv')|q+v/2> 

=∫du'dv(2π)-2exp(ipv+iq'u'-ip'v) 

exp(iu'v/2)exp{-i(q-v/2)u'} 

(2π)-1∫dvexp{i(p-p')v}δ(q'-q) 

=δ(p-p') δ(q'-q)

 

以上から,∫dp'dq'(2π)-2H(p',q') 

∫du'dv'dvexp(ipv+iq'u'+p'v') 

<q-v/2|exp(-iu'-iv')|q+v/2> 

=∫dp'dq'H(p',q')δ(p-p') δ(q'-q) 

=H(p,q) 

が得られました。 (証明終わり)(注3終わり)※

 

まとめると,H(p,q)

=∫dv exp(ipv)<q-v/2||q+v/2> 

=∫du exp(iqu)<p+u/2||p-u/2>,

 

および,=∫∫dpdqH(p,q)Δ(p,q) 

 

ただし,Δ(p,q)=∫du exp(iqu)

|p-u/2><p+u/2|=∫dv exp(ipv)

|q+v/2><q-v/2| 

=∫dudv(2π)-1 exp{i(q-)u+i(p-)v}

です。

 

これらから,量子論のHamiltonian:と経路積分に現われる

古典的Hamilyonian:(p,q)とは中点処方を採用する規約

下でWeyl変換と逆Weil変換によって1対1に対応すること

が確認されます。

 

さて,次にpのベキの単項式に対するWeyl順序積と呼ばれる

ものを,記号では{..}と書いて次のように定義します。

 

すなわち, 

{pq}≡(1/2)(pqqp), 

{pq3}≡(1/4)(pq32pqqpq23) 

etc.と定義するわけです。

 

 より一般には,演算子の指数関数演算子は

 exp(α+β) 

 ≡Σm,n{1/(n!m!)}αβ{}  

 で定義されます。

  この順序積を用いると,先の(p,q)との対応は,

 (p,q)と{(,)}の対応と理解されます。

 

 したがって,常に演算子をWeyl順序積で与えることに

 すれば,量子論と古典論のHamiltonianは事実上同じ関数形

 を持つと理解されます。

 

(参考文献):九後汰一郎著「ゲージ場の量子論Ⅰ」(培風館)

 

(※ なお,余談であり手前味噌の記事の宣伝の類いですが, 

確率積分やブラウン運動関連がテーマの過去記事については,

 

 ブラウン運動とフラクタル次元  エルゴード問題と次元   

 酔歩(ランダム・ウォーク)  酔歩(ランダム・ウォーク)(訂正)

 

 および,

 

 ブラウン運動と伊藤積分(1)  ブラウン運動と伊藤積分(2)   

 ブラウン運動と伊藤積分(3) ブラウン運動と伊藤積分(4) 

 ブラウン運動と伊藤積分(5) 条件付確率と条件付期待値 

 ブラウン運動と伊藤積分(6) ブラウン運動と伊藤積分(7) 

 ブラウン運動と伊藤積分(8) ブラウン運動と伊藤積分(9)  

 ブラウン運動と伊藤積分(10)

 

 があるので参照してみてください。※)

 

 いやあ,久しぶりでチェックの計算に疲れました。 

 今まで通り※[注]の部分が私が埋めた蛇足かもしれない 

 行間部分です。

 

 そして,読んだことを私自身の認識能力の限界内 に入れて 

 納得するための自己満足的注釈です。

 

 体調の関係で土,日,月が休みという優雅な生活パターン  

 にしてますが,一応,週末ブロガーと化す程度には,気力

 が回復 しているようです。。

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114 . 場理論・QED」カテゴリの記事

コメント

九後汰一郎著「ゲージ場の量子論」を非常に苦労して独習しているまったくの素人ですが,その中で
Δ(p,q)=∫dudv(2π)^-1 exp{i(q-q)u+i(p-p)v}
を自力では導けなくて困っていました.この記事にめぐりあい,大変助かりました.ありがとうございます.

なお1カ所,誤記と思われるものを見つけました.「この公式を適用すると」の後ろの式の2行目
=exp{-(-iqu'-ipv')/2}exp{…}exp{…}

=exp{-[-iqu',-pv']/2}exp{…}exp{…}
ではないでしょうか.

投稿: | 2017年5月12日 (金) 13時46分

TOSHIさんに、1つお願いがあります

数式を展開される前に...
今回は、〇〇=●● の関係を導くために
様々な数式展開を行うなんてような
目標設定を最初におっしゃって頂けると
分かり易いし、理解のmotivatonもUPすると
思います
さらに欲を言えば、これからの数式展開で
①△△...
②□□...
の関係が成り立つ事が、話しの展開にとって
大切で、そういう関係が成り立たないと
話しが結論へと続く事が、なかなか困難に
なる...っていうような

POINTを絞って頂ければ、とても理解しやすい
モノになると思います
そうでなくても、TOSHIさんのコメントで
相当分かり易くなっているのに...
こんな注文付けてイイのか
ハナハダ迷惑な話しではナイカとも思うの
ですが...
言っちゃいました
素人からの1つの切ない希望とご理解頂ければ
幸いです

投稿: like-mj | 2014年9月27日 (土) 10時35分

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