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2014年9月30日 (火)

ゲージ場の量子論から(その1)(経路積分と摂動論3

  ゲージ場の量子論から(経路積分と摂動論)」

 の続きです。

 

 Weyl順序積で与えた演算子の線型和の指数表示: 

 exp(α+β)

 =Σm,n{1/(m!n!)(αβ){}

 は,Weyl順序積 {p}の生成関数,

  または母関数(generating function)

  なっています。

 

 これの古典論での値との対応関係:

  exp(αp+βq) ⇔ exp(α+β) 

  が成立している様を確認します。

 

まず,前にも述べたように,演算子,が, 

[,[,]]=0, [,[,]]=0  

を満たすときには,  

exp()=exp{-[,]/2}expexp 

なる等式が成立します。

 

この場合, exp=Σ(1/m!),かつ  

exp=Σ(1/n!)であり, 

exp()=Σ(1/k!)()です。

 

そして,二項展開の公式から,() 

=Σr=0{k!/(k-r)!r!}k-r 

です。

 

この右辺の二項展開をWeyl順序積を用いて, 

()=Σr=0{k-r}で与えれば, 

k-rの形の単項式の個数が{k!/(k-r)!r!} 

で,Weyl順序積は,それら単項式の総和をの交換 

について対称形にして項の個数で除したものに等しい 

ので,結局,

 

exp() 

=Σm,n{1/(m!n!)}{k-r} 

となって,

 

先に述べたWeyl順序積を用いた演算子の定義に 

一致しています。

 

※[特注]:exp() 

=1+()+(1/2)()2+(1/6)(X+Y)3+.. 

において,これだけでは()のベキ乗の意味が曖昧 

ですから,これを厳密に定義する必要があります。

 

(1/2)(X+Y)2(1/2)(2XYYX2) 

(1/2)(X2+2{XY}2)

 

(1/6)()3 

=(1/6)(32XYXYX2 

XY2YXY23) 

=(1/6)(3+3{2}+3{XY2}3) 

etc.と定義します。

もしもXやYが行列でも表現されるような量子論の 

非可換の演算子ではなくて,古典論のただの数=専門語 

ではc-numberの場合なら,3{XY2}も3XY2も全く同 

じものなのでこのような気使いは不要なのですが。。。

 

 量子論がPlanck定数;h=0 の極限で,通常の我々の 

常識的な古典論の世界の物理的現象と対応する対応原理 

満たすことを根本的なところから検証したり理論的に 

扱うような場合には,こうした微妙なことを明確にして

くのは必要なことです。(特注終わり)※

 

公式:exp()=exp{-[,]/2}expexp 

 [,]が特にc数:γ=[,]のときには, 

 exp()=exp{-γ/2}expexpとなって,

 

 両辺がの交換について対称な形をしているので 

 これはWeyl順序積を用いた定義でもそのまま成立します。

 

 そこで, 

 exp(α+β) 

 =exp{-αβ[,]/2}exp(α)exp(βq)  

  =exp(iαβ/2)exp(α)exp(β)

  ですから,

 

 ∫dvexp(ipv)<q-v/2|exp(α+β)|q+v/2>  

 =∫dvexp(ipv+iαβ/2)∫dp' 

 <q-v/2|p'><p'|exp(α)exp(β)|q+v/2>

 

=∫dvdp'(2π)-1exp(ipv)exp{ip'(q-v/2)}  

exp(αp'+β(q+v/2))exp{-ip'(q+v/2)} 

=∫dvexp(ipv)exp(β(q+v/2))δ(v+iα)  

exp(αp+βq) 

 

を得ます。

 

逆に,∫dpdq(2π)(2π)-1exp(αp+βq)  

∫dudvexp{i(q-)u+i(p-)v}  

=∫dp'dq'(2π)(2π)-1exp(αp'+βq')  

∫dv'exp(ip'v')|q'+v'/2><q'-v'/2|

 

を<q-v/2|と|q+v/2>で挟み, 

exp(ipv)を掛けてdvで積分すると再びexp(αp+βq) 

が得られることは.既にexp(α+β)でなく一般の演算子 

に対して示したのと同じです。

 

 以上,ここまでもっぱら1自由度の系に限って論じて 

 きましたが,

 

 座標変数がq,共役運動量がp (a=1,2,..,n) 

 で与えられるn自由度系の場合でも,

 

 上述のWeyl変換や経路積分の公式は,単に, 

 時刻tの分割:=t0<t1<t<..<t<t =tN+1 

 に対する時刻tのにおける1自由度の位置座標jによる

積分変数dqをn自由度のそれ:Πa=1dqで置き換え,

 

共役運動量の積分変数dpをΠa=1dpajで置き換え, 

 さらに,pをpajで置き換える(ただし,aに

ついて1からnまで総和するというEinsteinの規約を採用)

などと解釈すれば,そのまま拡張されます。

 

 ※ 配位空間における経路積分 

 (※位相空間(p,q)での経路積分∫DpDqのうち,Dp 

 だけを先に実行すると,結果,配位空間qのみでの経路積分 

 ∫Dqexp(-iS);Sは作用積分;S=∫L(q,q)dt 

 の形になるというテーマについてです。※)

 

簡単な系:/2+V()の場合に戻って位相空間 

における経路積分の表式を再掲載すると,

 

<q,t|q,t  

limN→∞∫dp0(2π)-1Πk=1{dpdq(2π)-1}  

exp[iΣj=0{p(qj+1-q)/Δt-H(p,q~)}Δt]  

=∫∫(tI)=qI(tF)=qFDpDq  

exp(i∫tItFdt[p(t)q(t)-H(q(t),p(t))])

 

でしたが,

 

2行目の 

 limN→∞∫∫dp0(2π)-1Πk=1{dpdq(2π)-1} 

exp{iΣj=0{p(qj+1-q)/Δt-H(p,q~)}Δt}  

において,dp積分(k=1,2,..,N)のみを先に実行する 

ことにします。

 

exp(iΣj=0{{p(qj+1-q)/Δt-H(p,q~)}Δt} 

に関わる指数因子の 

exp[iΔt[p(qj+1-q)/Δt-H(p,q~)] 

の指数:iΔt{p(qj+1-q)/Δt-H(p,q~j)} 

は,積分の極限のN→∞,Δt→0 において  

(qj+1-q)/Δt→ q=(dq/dt)t=tj 

となります。

そして,H(p,q~)=p/2+V(q~)

なので,

 iΔt{p-p/2+―V(q~)} 

iΔt{-(p-q)/2+q/2―V(q~)}

です。

そこでk=jのdp積分=dpj積分を実行する際に, 

積分変数の置換:p→p'= p-q

を実行します。

 

iΔt{-(p-q)/2+q}/2-V(q~)} 

iΔt{-p'/2+q/2-V(q~)}

です。

 

これを,指数関数に戻すと

exp{iΔt(-p'/2)}exp{iΔt(q/2-V(q~)} 

ですが,これからqに関わる指数関数因子を分離して残り

exp{iΔt(-p'/2)}dp'で積分します。

 

ここで,次のGauss-Fresnelの積分公式;

∫dxexp(-iαx/2)=(2π/iα)1/2を用いれば

経路積分は,次のようになります。

<q,t|q,t 

limN→∞∫dp0(2π)-1Πk=1{dpdq(2π)-1} 

exp[iΣj=0{p(qj+1-q)/Δt-H(p,q~)}Δt]

 

limN→∞∫(2πiΔt)-1/2Πk=1{dq(2πiΔt)-1/2} 

exp[iΣj=0{(1/2){(qj+1-q) /Δt}-V(q~)}Δt] 

=∫(tI)=qI(tF)=qFDq 

exp(i∫tItFdt[(1/2)q(t)-V(q(t))]) 

=∫(tI)=qI(tF)=qFDq

exp(i∫tItFdtL(q(t),q(t)))

 

です。

 

※[注3]:Gauss-Fresnelの積分公式の証明 

∫dxexp(-iαx/2)

=∫-∞{cos(αx/2)-isin(αx/2)}dx 

=∫0{cos(αy)-isin(αy)}y-1/2dy 

2-1/2(1-i)(2π/α) 1/2

=(2π/iα)1/2  (2-1/2(1-i)=√-iです。)

 (注3終わり)※

 

すなわち,この表式は,Δt→ 0の極限で(2πiΔt)-1/2

という大変特異な積分測度を伴ってはいますが,

 

exp(i∫tItFdtL(q,q))を配位空間における

各々の経路{q(t)}tI<≦t≦tFの確率振幅として,それを

あらゆる経路について足し上げた形の配位空間での経路積分

の表式が得られました。

この形が元のFeynmanの提唱した経路積分の公式です。

 

 しかしながら,実は/2+V()のように簡単ではない

 一般の系の場合にDq経路積分の被積分関数は必ずしも

 作用積分S=∫dtLのi倍の指数関数という形にはなり

 ません。

 

 これを見るために,古典論の段階でLagrangian:Lが

 (q,q)=(1/2)gab(q)qで与えられる

 (a,b=1,2,..,nについて総和します。) ような

 n自由度の系を考察します。

 

 この力学系{q}は,計量がgabで与えられる,ある

 n次元多様体の上の点を表わす座標(q1,q2,,..,q)

 見なすことができます。

 

 このとき,共役運動量は,定義によって,

 p=∂L/∂q=gabb です。

 

 そこで,H(p,q)=p-L(q,q)

 =(1/2)gab となります。

 ただし,gabは計量行列{gab}の逆行列の成分です。

 

※[注4]:何故なら,p-L(q,q)

 =(1/2)gabですが, 

 p=gabより,q=gab,

 かつ,q=gbcですから,

 ab=gabbcad

 =δad=gcdなので,

 p-L(q,q)=(1/2)gab 

 が得られます。(注4終わり)※

 

 量子論の演算子としては,Weyl積を取って 

 H=(1/2)gab{}Hamiltonianとして

 採用します。,

 こうすればWeyl変換がH(p,q)になることは明らか

 ですから,位相空間における経路積分の表式で, 

 qj+1-q=qΔtとして,

 <q,t|q,t 

limN→∞∫dp0(2π)-1Πk=1{dpdq(2π)-1} 

exp[iΣj=0{paj(qjj+1-q)/Δt-H(p,q~)}Δt]

 

limN→∞∫dp0(2π)-1Πk=1{dpdq(2π)-1} 

exp[iΣj=0{paj-H(p,q~)}Δt]

 

limN→∞∫dp0(2π)-1Πk=1{dpdq(2π)-1} 

exp(iΔtΣj=0{{paj-(1/2)gab(q~)pajaj}}

 

となります。

 

1自由度の場合と同様,運動量積分変数dpのk=jに

対応する成分paj(a=1,2,..,n)を

aj→p'aj=paj-(1/2)gab(q~)q

と変数置換すれば, 

aj(1/2)gab(q~)pajaj 

=-(1/2)gab{paj-(1/2)gac}

×{pbj-(1/2)gbd}(1/2)gab 

=-(1/2)gabp'p'+(1/2)gab

 

となります。

(※計量:ab,およびgabは共に行列としては対称行列

であることに注意)

 

ここで,Gauss-Fresnelの積分公式;

∫dxexp(-iαx/2)(2π/I)α-1/2 を変数xが

n次元列ベクトル=(x,x,..,x)である場合

に拡張します。

 

ただし,上添字Tは行列の転値(transport),つまり

行と列の入れ替えを意味します。

したがって行ベクトルに上添字Tをつけたものは

列ベクトルです。その逆も成立します。

 

 被積分関数exp(-iαx/2)の指数の係数αも

 n行n列の対称行列Aに置き換えて,αxなる

 一般の2次形式に変更します。

 

Gauss-Fresnel積分∫dxexp(-iαx/2)の左辺の

n変数への拡張は∫dexp(-i/2)という形

です。

 

そして,

∫dexp(-i/2)

=(2π/i)n/2(detA)-12となることがわかります。

 

※[注5]:(証明)Aが対称行列なので適当な直交行列Pに

 よってPAPが対角行列となるようにできます。

 Pは直交行列なのでdetP=det(P)=±1です。

 

対角行列PAPの対角成分をλ,..,λ

とすると,=P=Pなる変数置換の

変換に対して

AP 

  =λ+λ..+λ

  =Σk=1λ

  となります。

 

  また,det(PAP)=detA=λλ..λ

  です。

 

 よって,n変数の置換積分公式により,

  

 ∫dexp(-i/2) 

 =|det(P)|∫dexp(-iAP/2) 

 =∫dexp(-I(Σk=1λ/2))

 ですが,

 

 右辺 

 =Πk=1∫dyexp(-iλ/2)  

 =(2π/i)n/2n1λ..λ)-12  

 なので,結局,

 

 ∫dexp(-i/2)(2π/i)n/2(detA)-12 

 

 が得られます。

 

(証明終わり)(注5終わり)※

 

拡張されたGauss-Fresnelの公式を用いると, 

<q,t|q,t 

limN→∞∫dp0(2π)-1Πk=1{dpdq(2π)-1} 

 exp[iΔtΣj=0{paj-(1/2)gab(q~)pajaj}] 

limN→∞∫(2πiΔt)1/2Πk=1{dq(2πiΔt)1/2}

∫dp0(2π)-1Πk=1{dpdq(2π)-1} 

 exp[iΔtΣj=0{paj-(1/2)gab(q~)pajaj}]

 

limN→∞∫Πk=1dq{∫dp'0(2π)-1Πk=1{dp'(2π)-1} 

exp[iΔtΣj=0{{-(1/2)gab(q~)p'p'

+(1/2)gab(q~)q}]

 

 =limN→∞(2πiΔt)-n/2∫[Πk=1dq]

 [Πj=0det(gab(q~)-12]

 exp(iΔt[Σj=0{(1/2)gab(q~)q}]

 

 =∫Dqexp[i∫tItFdt[L(q(t),q(t))

 -(i/2)δ(0)ln{det(gab)(q)}

 

  ただし,lnは自然対数(=底がeの対数):

 ln(x)=log(x)です。

 

※[注6]:

 Πj=0det(gab(q~)-12) 

 =exp[-(1/Δt)Σj=0Δt{ln{det(gab(q~))}] 

 積分に移行するN→∞,Δt→0 の極限では,(1/Δt)をδ(0)

 と見なすことができて,

 Πj=0det(gab(q~)-12)

  → exp[-∫tItFdt(i/2)δ(0)ln{det(gab)(q)} 

 となります。(注6終わり)※

 

  したがって,この例の場合,配位空間の経路積分は

  指数部が古典的なLagrangianからδ(0)に比例する項

  だけずれています。

 

 この例でのこのずれは,Lee-Yang項と呼ばれています。

 

  座標変換 q(t)→Q(t):

  つまり,q(t)=q(Q(t))で定義される変換のうち,

  gab(q)(∂q/∂Q)(∂q/∂Q)=gcd(Q)を

  満たすような変換の下では,

  古典的Lagrangian:(q,q)=(1/2)gab(q)q

  は不変です。(証明略:疑問あればトライされたい。)

 

  ところが,経路積分の積分変数は,Dq ∝ Πdq

  =ΠdQ{det(∂q/∂Q)} 

 =ΠdQ[detg(Q)/detg(q)]1/2 

  と変換されるため,Lee-Yang項:Π(detg)1/2

  因子に含めて初めて,配位空間の経路積分は不変になる

  ことがわかりります。

  一方,位相空間における経路積分の不変性は自動的に成立する

  のでした。

 何故なら,座標変換 q→Qは点変換と呼ばれますが.今の

  場合,これはある正準変換の一部分であり,積分測度dpdq

  やなどは正準変換の不変量であって,それ故,H(p,q)

  を不変に保つ正準変換においては,位相空間での経路積分は明白

  に不変だからです。

  今日はここまでにします。この項目まだまだ続きます。

 

(参考文献);九後汰一郎著 「ゲージ場の量子論Ⅰ」(培風館)

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114 . 場理論・QED」カテゴリの記事

コメント

 バクさん。ご指摘ありがとうございます。
OSHIです。

 7年前に書いた記事なので記憶が定かでなく参照した内山先生の原本を読み返しました。

 先生の採用している計量が私とは逆符号なのでブログ記事では全て書き直したつもりが,ここだけは原本のままでした、

 ご指摘の通り元記事の符号を変えて訂正しておきました。またよろしく。。

             TOSHI

投稿: TOSHI | 2014年10月 5日 (日) 11時09分

すみません。表題とは異なるのですが
Kaluza- Kleinの5次元統一場理論
http://maldoror-ducasse.cocolog-nifty.com/blog/2007/03/post_55ac.html
についての質問です。
測地線の方程式を求める所で

K^2=|g_μν(dx^μ/dτ)(dx^ν/dτ)+β^2|  ①

…τを一般相対論における固有時と一致させるために,

c^2=g_μν(dx^μ/dτ)(dx^ν/dτ)=β^2±K^2


となっていますが、
①から

K^2=|c^2+β^2|

より

c^2≡-β^2±K^2

となり、β^2は-β^2になるのでは内でしょうか?
お手数ですが、ご教授いただければありがたいです。


投稿: バク | 2014年10月 3日 (金) 06時11分

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