« 2014年9月 | トップページ | 2014年11月 »

2014年10月

2014年10月25日 (土)

ゲージ場の量子論から(その1)(経路積分と摂動論6)

「ゲージ場の量子論から(経路積分と摂動論)」の続きです。

 いきなり本文に入ります。

 

一般化されたGreen関数の生成汎関数ZFI[J]に

おいて,>=|Ψ>=|0>としたものをZ[J]と

置けば,これは普通のGreen関数:

(N)(x,..,x)=<0|T(φ(x)..φ(x))0>

生成汎関数となることは明らかです。

 

何故なら,元々の定義 

FI[J]=<Ψ,tF||Texp{i∫dxJ(x)φ(x)}| Ψ,t 

/<Ψ,tF,t> に戻ると,

 

[J]=<0||Texp{i∫dxJ(x)φ(x)}|0> 

=Σ=0(i/N!)∫d..dxJ(x)..J(x)

<0|T[φ(x)..φ(x)]|0> 

=Σ=0(i/N!)∫d..dxJ(x)..J(x)

(N)(x,..,x) となるからです。

 

一方,最終一歩手前のまだNFIを消去する前のZFI[J]の

経路積分表式: 

FI[J]=NFIDφΨ[φ(x)]Ψ[φ(x)] 

exp[i∫tItFx{(φ,∂φ)+Jφ}] から,

 

[J]=N00DφΨ0[φ(.+∞)]Ψ[φ(,-∞)] 

exp[i∫-∞x{(φ,∂φ)+Jφ}] と書けます。

 

ただし,J(x)の台がt≦x0≦tの区間内にある

という制限を無意味にするため,t=-∞,かつ,t=+∞

としました。

 

 もしも,t=-∞,t=+∞でなくt,tが有限である

 限りは,一般化Green関数:

(N)(x,..,x; Ψ,t,tF) 

=<Ψ,|exp(-iF)T[φ(x)..φ(x)exp(i)]|Ψ 

/<Ψ|exp{-i(tF-t)}|Ψ 

,境界の状態 |Ψ>,|Ψ> に依存します。

 

しかし,t=-∞,t=+∞ の極限をうまくとると,

こうした種々Green関数が全て同じFeynman型のものに

収束し,境界:>,|Ψ>への依存性は実質上なく

なってしまいます。

 

こうした際に,しばしば取られる方法は,Lagrangian密度

の質量項(1/2)mφのパラメータmを形式的に(m-iε)

に置き換えて全ての計算を実行した後にε→ +0 の極限を

取るという(-iε)処方と呼ばれるトリックです。

 

この処方を行う根拠としては,通常,

(N)(x,..,x; Ψ,t,tF)やZFI[J]の

経路積分表式でのDφ積分の収束性を強めて経路積分

無矛盾なもの(well-defined)にするためとの説明が

なされます。

(※正準形式摂動論などでは,断熱減衰条件,断熱近似として,

この処方が採用されています。これについては,例えば,

本ブログの2010年4/28の過去記事:

散乱の伝播関数の理論(1)(Lippmann-Schwinger-1)

を参照してください。)

 

(φ,∂φ)の項(1/2)mφのmを(m-iε)に変更すれば, 

(N)(x,..,x; Ψ,t,tF)の

exp[i∫tItF(φ,∂φ)]やZFI[J]の

exp[i∫tItFx{(φ,∂φ)+Jφ}]の因子において, 

余分な因子:exp[-ε∫tItFx(φ/2)]がかかる

ことになります。

 

そしてが大きくなると,この因子は実際に絶対値が小さく

なるので確かにDφ積分の収束性を強めます。

 

また,実際,後で陽に見るように,t→ -∞,t→ +∞ の

極限でεの存在のために,自由場の場合のφの係数演算子

(□+m)が運動量表示でゼロとなる点を生じないのでDφ積分

が無矛盾になります。

 

しかし,この説明ではt→ -∞,t→ +∞ の極限で,積分

結果が>,|Ψ>の取り方に依存しなくなる理由が全く

明白ではないので,以下,それを説明します。

 

 m(m-iε)に置き換えることは,時間発展演算子

 exp(-it),Hejsenberg演算子

 φ(x)=exp(it)φ()exp(-it)における 

 Hamiltonian を全て,iε∫dx[φ(x)/2]

 =-iεΦに置き換えることと等価です。

 

(※-iε∫dx[φ(x)/2] を-iεΦと定義)

 

このの置き換えはt→ -∞,t→ +∞ の極限を

考えると,exp(-i)とexp(i)の因子でのみ重要

です。

 

それ故, 一般化Green関数の式:

(N)(x,..,x; Ψ,t,tF) 

=<Ψ,|exp(-iF)T[φ(x)..φ(x)exp(i)]|Ψ 

/<Ψ|exp{-i(tF-t)}|Ψ> は,

 

(N)(x,..,x; Ψ,t,tF) 

=<Ψ,|exp{-i(-iεΦ)tF}T[φ(x)..φ(x)]

exp{i(-iεΦ)t}|Ψ

/<Ψ|exp{-i(-iεΦ)tF} exp{i(-iεΦ)t 

となります。

 

ここで,の固有値と固有状態の組を{E,|n>}とし,

'≡-iεΦの固有値と固有状態の組を{E',|n'>}

とすれば,摂動論によって,

E'=E-iε<n|Φ|n>+O(ε)です。

 

 H'≡-iεΦの固有状態の完全系

 Σ|n'><n'|=1を用いると, 

 exp{i(-iεΦ)t}|Ψ>=exp(i't)|Ψ 

 =Σexp(iE')|n'><n'|Ψ 

 =exp(iE'0)|0><0|Ψ

  +Σn≠0 exp(iE')|n'><n'|Ψ 

  を得ます。(※真空の一意性から|0'>=|0>です。)

 

  ここで,εの2次以上は無視することができて, 

 E'0=E0-iε<0|Φ|0>=-iε<0|Φ|0>

 E'=E-iε<n|Φ|n>

 =E-iε(w+<0|Φ|0>) 

 と書くことができます。

 

 ただし,w≡<n|Φ|n>-<0|Φ|0>と

 置きました。

 

 また,基底状態=真空での場のエネルギーはゼロである

 べきなので,00 としました。

 

 したがって,

 exp{i(-iεΦ)t}|Ψ=exp(i't)|Ψ

 exp(iE'0)|0><0|Ψ+Σn≠0 exp(iE')

|n'><n'|Ψ

 

exp(εt<0|Φ|0>)

{|0><0|Ψ+Σn≠0 exp(εw)exp(iE)

|n><n|Φ|n>}

 

と書き直せます。

 

ところで,w=<n|Φ|n>-<0|Φ|0>は

状態 |n>でのΦ=∫d[φ(x)/2]程度の拡がり

(ゆらぎ)から真空のそれを差し引いたものです。

この量は場φ(x)が謂わゆる"自発的対称性の破れ"を

生じない条件である,場の真空期待値がゼロ:

0|φ(x)|0>=0 を満たしている限り,

n≠0 の励起状態 |n>のゆらぎの程度の方が基底状態

=真空 |0>のそれよりも大きいと予期されるのでn≠0

では,w>0 としてよいと考えられます。

 

そうすれば,t→ -∞では,n≠0 exp(εw)→ 0

ですから,

<0|Ψ>≠0 である限り,t→ -∞では,

[ ]内の第一項:|0><0|Ψ>に比べて,第2項 

Σn≠0 exp(εw)exp(iE)|n><n|Φ|n>

無視できます。

 

故に,t→ -∞では,exp{i(-iεΦ)t}|Ψ 

exp(εt<0|Φ|0>)|0><0|Ψ> となります。

 

全く同様に, t→ +∞では,

<Ψ|exp{-i(-iεΦ)t} 

exp(-εt<0|Φ|0>)<Ψ|0><0| です。

 

したがって,G(N)(x,..,x; Ψ,t,tF) 

=<Ψ|exp{-i(-iεΦ)tF}

T[φ(x)..φ(x)]exp{i(-iεΦ)t}|Ψ 

/<Ψ|exp{-i(-iεΦ)tF} exp{i(-iεΦ)t}|Ψ

から,

 

limtI→ -∞,tF→ +∞(N)(x,..,x; Ψ,t,tF) 

limtI→ -∞,tF→ +∞<Ψ|0>exp(-εt<0|Φ|0>) 

0|T[φ(x)..φ(x)]|0> exp(εt<0|Φ|0>)<0|Ψ 

/{<Ψ|0>exp(-εt<0|Φ|0>)<0|0>

exp(εt<0|Φ|0>)<0|Ψ>} を得ます。

結局,limtI→ -∞,tF→ +∞(N)(x,..,x; Ψ,t,tF) 

=<0|T[φ(x)..φ(x)]|0>=G(N)(x,..,x)

が得られました

 

以上から,一般化Green関数は,t→ -∞,t→ +∞

の極限で,>,|Ψ,>の真空 |0>との重なりが少し

でもある限り,|Ψ>,|Ψ,>には全く依存しなくなり,

T積の真空期待値で与えられる通常のGreen関数に一致

することが証明されました。

 この事実を用いると,先に,元々,t=-∞,t=+∞

として与えたZ[J]の経路積分の表式: 

[J]=N00DφΨ0[φ(.+∞)]Ψ[φ(,-∞)] 

exp[i∫-∞x{(φ,∂φ)+Jφ}] は,

(-iε)処方を取れば,境界の状態は共に自動的に真空となる

ので真空での波動汎関数因子 Ψ0[φ(.+∞)],および,

Ψ[φ(,-∞)]は,これを書く必要が無くなります。

 

それ故,簡単に,Z[J]=N00Dφ exp(i∫-∞

{(φ,∂φ)+iε(1/2)(φ(x)-<φ>)+Jφ}) 

と書けます。

 

ただし,場φ(x)の真空期待値が,万一,ゼロでない:

<0|φ(x)||0>≠0 の場合でも,

(-iε)処方ではΦ項を与えるこのφ(x)から,

<φ>=<0|φ(x)|0>を差し引いておけば,常に

その真空期待値がゼロになることを利用した形を

採用して,これを陽に表わす形にしました。

 

※ 最後に,積分のEuclid化との関連を述べておきます。

 

上記の論議では,w=<n|Φ|n>-<0|Φ|0>(n≠0)

が正の数であることを仮定しましたが,この仮定は.いつでも

成立する保証があるわけではありません。

 

それならばいっそのこと,質量項のΦ=∫dφ(x)/2

による-iεΦなどといわす,全体系のHamiltonian

使って,-iεを挿入すればよいだろうというアイデアも

あります。

 

これであれば,真空は基底状態であるという定義によって,

=<n||n>-<0||0>=E-E0 > 0 (n≠0)

なることは,確かに保証されます。

そして,この-iεのトリックは,Hamiltonian -iε

=exp(-iε)に置き換えることに等しく

結局,これはGreen関数の表式では,あらゆる時間変数を一斉に

exp(-iε)倍することに等価です。

 

すなわち,(t,t,..,t;t,t)

→ exp(-iε)(t,t,..,t;t,t)

です。

 

このとき,(φ,∂φ)=(1/2)(∂μφ∂μφ-mφ)+int(φ) 

(1/2){(∂φ)-(∇φ)-mφ}+int(φ) によって,

対応するGreen関数の経路積分の表式は,

 

(N)(x,..,x; Ψ,t,tF) 

=NFIDφΨ[φ(x)]Ψ[φ(x)]

φ(x)..φ(x)exp[i∫tItF(φ,∂φ)]

に代わって,

 

(N)(x,..,x; Ψ,t,tF) 

=NFIDφΨ[φ(x)]Ψ[φ(x)]

φ()..φ() 

exp[iexp(-iε)∫tItFdtd 

{(1/2){exp(2iε)(∂φ)-(∇φ)-mφ}+int(φ)} 

となります。

 

ただし,φ(,τ)は,zを複素数とするHeisenberg演算子:-

φ(,z)=exp(iz)φ()exp(-iz)のz=τ

=exp(-iε)t における固有値を意味するc-数です。

 

tによる∫積分の∫tItFdtの積分路は複素平面の実軸上

ではなく,角度εだけ時計回りに回転された直線上の積分に

なります。

 

この操作でもw(n≠0)が正である限り,-iεΦ挿入の処方 

と同じく,

limtI→ -∞,tF→ +∞(N)(x,..,x; Ψ,t,tF) 

=<0|T[φ(x)..φ(x)]|0>=G(N)(x,..,x)

であるという結論は同じですが。。。。

 

副産物として4次元積分のEuclid化というアイデアに

結び付きます。

 

すなわち,ここまでは,0<ε<<1として考察してきましたが,

ε=π/2とすれば,exp(-iε)=exp(-iπ/2)=-i,かつ,

exp(2iε)=exp(iπ)=-1であり,exp(-iε)idt=dt

ですから,

 

(N)(x,..,x; Ψ,t,tF) 

=NFIDφΨ[φ(x)]Ψ[φ(x)]

φ()..φ() 

exp[-∫tItFdtd

{(1/2){(∂φ)+(∇φ)+mφ}-int(φ)} 

となります。

 

この経路積分の重み関数因子: 

exp[-∫tItFdtd

{(1/2){(∂φ)+(∇φ)+mφ}-int(φ)}

,|φ| → 大のときに振動するのではなく,本当に値が

小さくなる性質のよいもので,経路積分の数学的に厳密な

取り扱いも.このEuclid版で初めて可能になるようです。

 

文献によっては,-iεのε→(π/2)の操作を,解析接続

とか,Wick回転とか呼んでいますが,この用語の使い方は

ここでは適切ではないようです。

ただし,2点Green関数G(2)で,-t,t→ ∞ のとき

だけは,これがt=t-tの1変数のみの関数となる

ため,この操作はtの解析接続と同じです。

 

今日はここで終わりますが,次回は最後の経路積分の

Euclid化に関連して,統計物理学での(松原)Green関数

に言及するところから始める予定です。

 

この場合には,ここでの生成汎関数(母関数)Z[J]は

分配関数の役割をします。イヤ,少し先走りました。。

ではでは。。。

 

(参考文献);九後汰一郎著 「ゲージ場の量子論Ⅰ」(培風館)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014年10月22日 (水)

ゲージ場の量子論から(その1)(経路積分と摂動論5)

 前記事まででGreen関数の説明が終わったので,再び,

「ゲージ場の量子論から(経路積分と摂動論)」に戻ります。

 

 前回10/5の(経路積分と摂動論4)の記事では,種本での

§4.2 場の理論における経路積分という節の話でした。

そのときには遷移振幅の位相空間の積分∫∫DπDφ

による経路積分の表式が式:

<φ,t,t 

=∫∫φ(,tI)=φI()φ(,tF)=φF()DπDφ 

exp(i∫tItFx[π(x)φ(x)-(π(x),φ(x))])

で与えられ,

この式で,∫Dπだけを先に実行して,配位空間の積分

つまり,∫Dφのみによる経路積分の表式では, 

<φ,t,t

=N∫φ(,tI)=φI()φ(,tF)=φF()Dφ

×exp[i∫tItF(φ,∂φ)]

なる形になります。(ただし,Nは比例定数因子)

いうところで終わりました。

 

今回は,これに続いてGreen関数に対する経路積分から

考察します。

 

ここまでは,量子力学の経路積分では初期状態(始状態)を

|q,t>,終状態を |q,tF>とし,

 

場の理論での経路積分では初期状態を,t>,

終状態を |φ,tF>として,遷移振幅の初期状態,終状態

には,常に,一般座標変数q,または,φの固有状態のみ

当ててきました。

しかし,ここでは,取りあえず,初期(始)状態を |Ψ,t>,

終状態を,tF>として,これらが必ずしもφの固有状態

ではない一般の状態を想定します。

そうして,一般化されたN点Green関数:(N)を,

(N)(x,..,x; Ψ,t,tF) 

≡<Ψ,tF|T[φ(x)..φ(x)]|Ψ,t

 /<Ψ,tF,t 

=<Ψ,|exp(-iF)T[φ(x)..φ(x)exp(i)]|Ψ 

/<Ψ|exp{-i(tF-t)}|Ψ 

によって定義します。

 

ただし,t≦x0=t≦t (j=1,2,..N)とします。

 

この一般化されたGreen関数は,特に初期状態 |Ψ>,

終状態 |Ψが,共に系の真空状態 |0>であるとしたとき

には,前記事までで説明した通常の意味のN点Green関数: 

(N)(x,..,x)=<0|T(φ(x)..φ(x))0>

になります。

 

このとき,各時刻tでのφ(x)=φ(,t)の固有ベクトルは完全系

を成しますが,その完全系条件は

∫Πdφ(,t)|φ(,t),t><φ(,t),t|=1

で与えられます。

 

※[注]:上記の式の意味を説明します。

 まず,多体系の量子力学での完全系条件の陽な形式を

 再確認することから始めます。 

 自由度nの一般化座標の演算子(,..,) の固有値: 

 q=(q,..,q)に属する時間に依存しない固有ベクトル

 |q,..,qに対して,

 演算子が時間tに依存するHeisenberg表示では, 

 q(t)=exp(it)exp(-t)(k=1,..,n)

 であり,時間tに依存する(t)の同じ固有値q

 に属する固有ベクトルは,

 |q,..,q,t>=exp(it)|q,..,q 

 で与えられます。

 これらの固有ベクトルは完全系を成すと

 仮定されています。

 

 A|a>=a|a>を満たす演算子の固有ベクトル|a>

 の全体が完全である,または,完全系を成すとは,任意の状態

 |ψ>がこの固有ベクトルで常に級数展開,または積分展開

 が可能であることを意味します。

 すなわち,任意の状態が|ψ>=Σ|a>と展開可能で, 

 固有ベクトル正規直交化され,<b|a>=δbaを満たす 

 なら,=<a|ψ>なので,|ψ>=Σ<a|ψ>|a>,

 または,|ψ>=Σ|a><a|ψ>と書けます。

 

 そこで|a><a|を演算子と考えると |ψ>の任意性から,

 常にΣ|a><a|=1,が成立しますから,これを以って

 |a>が完全系をなすための条件とすることができます。

 

 さて,(t)の固有ベクトルの任意時刻tにおける完全系条件 

 は時刻tに依らないそれと同値であり,  

 Σ(q1,..,qn)|q,..,q;t><q,..,q;t|  

 =Σ(q1,..,qn)|q,..,q><q,..,q|=1 

 で与えられると考えられますが,

実際にはqkの各qは連続変数なので総和Σqk

積分∫dqとなり(q1,..,qn)は∫Πk=1dqに置き

換わります。

 

すなわち,∫Πk=1dq|q,..,q;t><q,..,q;t| 

=∫Π=1dq|q,..,q><q,..,q|=1 です。

 

一般化座標q=(q,..,q)を成分でなくqで代表させた

簡易形で書くと,上記の完全系条件は

dq|q,t><q,t|=∫dq|q><q|=1と簡単になります。

れを謂わゆる粒子の軌道(t)=(q(t),..,q(t))

にわたって積分するのが配位空間での経路積分:

Dq=ΠDq(t)でした。

そこで,時刻tまで含めた表現で時刻tにおける簡易形の

完全系条件を表わすと,

∫dq(t)|q(t),t><q(t),t|

=∫dq(t)|q(t)><q(t)|=1 です。

そして,この最終表式での固有ベクトルの関係は,

|q(t)>=q(t)|q(t)>,

|q(t),t>=exp(it)|q(t)>,

(t)=exp(it)exp(-it)であって, 

(t)|q(t),t>=q(t)|q(t),t> 

となっています。

このn体系:(,..,)の,スカラー場

φ(x)=φ(,t)においてのアナロジ-を考えます。

 

元々場の演算子φ(x)=φ(,t)はHeisenberg表示の

演算子であり,時刻tでの平行移動不変性もあって, 

φ(,t)=exp(it)φ(,0)exp(-t)

が成立します。

 

このときの,φ(,0)がSchroedinger表示の演算子

に相当します。そこで,このφ(,0)を単にφ()と

表記します。

 

すると,の添字kに相当するのがφ()のなので, 

|q,..,q>=q|q,..,q>の上添字kと

同様,添字を陽に書く固有ベクトルの表現式を採ると, 

φ()|φ()>=φ()|φ()> です。

 

これは,Heisenberg表示の場:φ(x)=φ(,t)

=exp(it)φ()exp(-t)では,

φ(,t)|φ(),t>=φ()|φ(),t> 

であり|φ(),t>=exp(it)|φ()>です。

 

完全系条件は,∫ΠdqのΠを象徴的にΠに代えて 

総和積分を∫Πdφ()と表記すれば, 

∫Πdφ(x)|φ(),t><φ(),t| 

=∫Πdφ()|φ()><φ()|=1

と書けます。

 

そうして,一般化座標での全ての軌道

q(t)=(q(t),..,q(t))にわたって積分する配位空間

での経路積分:∫Dq=ΠDq(t)のアナロジーで,

全ての場の"軌道"φ(,t)にわたって総和する 

配位空間での場の経路積分は∫Dφ=∫ΠDφ(,t)

で与えられると考えられます。

 

したがって,時刻tまで含めた表現での時刻tおける完全系

条件は,多体系で∫Π=1dq|q,t><q,t|=1 を 

∫Π=1dq(t)|q(t),t><q(t),t|=1 

と書き換えたように,

 

∫Πdφ(x)|φ(),t><φ(),t|=1

を書き換えて,

∫Πdφ(x,t)|φ(,t),t><φ(,t),t|=1 

としたものです。(注終わり)※

 

さて,Green関数:G(x,..,x; Ψ,t,tF) 

=<Ψ,tF|T[φ(x)..φ(x)]|Ψ,t

/<Ψ,tF,tにおいて,

特に時空座標 x,x,,..,xの時間引数

,t,,..,tの順序がt≦t..≦tN-1≦t

の場合には,

T[φ(x)..φ(x)]φ(x)..φ(x) により, 

(N)(x,..,x; Ψ,t,tF) 

=<Ψ,tF|φ(x)..φ(x))|Ψ,t>/<Ψ,tF,t 

です。

さらにt0=t,tN+1=tを付加して 

=t0≦t≦t..≦t≦tN+1=tとして,

時刻t(j=0,1,..,N,N+1)での完全系条件 

∫Πdφ(,t)|φ(,t),t><φ(,t),t|

=1,

または,∫Πdφ(x)|φ(x),t><φ(x),t|=1 

を挿入します。

 

すると,G(N)(x,..,x; Ψ,t,tF) 

=∫..∫Πj=0N+1dφ(x,t)} 

<Ψ,tF|φ(x),t><φ(x),t|φ(x)|φ(x),t 

..<φ(x),t|φ(x)|φ(x),t<φ(x1),t,t 

/<Ψ,tF,t> となります。

ところが,<φ(xj+1),tj+1|φ(x)|φ(x),t 

=φ(x)<φ(xj+1),tj+1|φ(x),t>(j=1,2,..,N-1) 

ですが,

この<φ(xj+1),tj+1|φ(x),t>に, 

先の遷移振幅の経路積分: 

<φ,t,t 

=N∫φ(,tI)=φI()φ(,tF)=φF()Dφ 

×exp[i∫tItF(φ,∂φ)] 

を代入すると,

 

<φ(xj+1),tj+1|φ(x)|φ(x),t 

=φ(x)<φ(xj+1),tj+1|φ(x),t 

=φ(x)Nφ(xj)φ(xj+1)Dφ

exp[i∫tjtj+1(φ,∂φ)] なので,

 

求めるGreen関数の経路積分式: 

(N)(x,..,x; Ψ,t,tF) 

=NFIDφΨ[φ(x)]Ψ[φ(x)]φ(x)..φ(x) 

×exp[i∫tItF(φ,∂φ)] 

が得られます。

 

ここで,初期状態|Ψ,t>,終状態|Ψ,tF>の波動汎関数

を<φ(x)|Ψ>=<φ(x),t|Ψ,t>=Ψ[φ(x)], 

<φ(x)|Ψ>=<φ(x),t|Ψ,t>=Ψ[φ(x)]と

定義し,(※ 汎関数(functional)とは関数の関数)

 

<Ψ,tF|φ(x),t>を,Ψ[φ(x)], 

<φ(x),t))|Ψ,t>をΨ[φ(x)]

としました。

 

また,NFIは比例定数Njの積を<Ψ,tF,t>で

除したものです。 

つまり,NFIはNFI=N..NN=1/<Ψ,tF,t

で与えられる定数です。

 

時間引数 t,t,,..,tの順序が

≦t≦..≦tN-1≦tの特別な場合 

で考察しましたが、結果はx,x,,..,xについて

対称な形ですから,こうした特別な順序には依存しません。

 

さて次は,後での摂動論でのツールとしても有用なので,

便宜上,一般化されたGreen関数の生成汎関数:ZFI[J]

なるものを次のように定義して導入します。

すなわち, 

FI[J]≡<Ψ,tF||Texp{i∫dxJ(x)φ(x)}| Ψ,t 

/<Ψ,tF,t> です。

 

ただし,J(x)の台はt≦x0≦tの区間内にあるとします。 

(※J(x)の台(support)とはJ(x)≠0であるxの集合全体の

 ことです。)

 

FI[J]=<Ψ,tF||Texp{i∫dxJ(x)φ(x)}| Ψ,t 

/<Ψ,tF,t>において,

Symbolicな積分の指数関数のT積:Texp{i∫dxJ(x)φ(x)}

の意味を明確にすると, 

FI[J]=ΣN=0(i/N!)∫d..dxJ(x)..J(x) 

<Ψ,tF|T[φ(x)..φ(x)]|Ψ,t>/<Ψ,tF,t

 

つまり,FI[J]=ΣN=0(i/N!)∫d..dx

J(x)..J(x)(N)(x,..,x; Ψ,t,tF)

となります。

 

したがって,ZFI[J]をJでN階微分してJ=0 と置いたもの

が一般化されたGreen関数に一致します。

 

すなわち,

FI[J]/δJ(x)..δJ(x)]jJ(x1)=..J(xN)=0 

=G(N)(x,..,x; Ψ,t,tF) です。

 

実は,これこそが,ZFI[J]が,

(N)(x,..,x; Ψ,t,tF)の生成汎関数である

ということの意味です。

 

FI[J]=ΣN=0(i/N!)∫d..dxJ(x)..J(x) 

(N)(x,..,x; Ψ,t,tF) に,

 

(N)(x,..,x; Ψ,t,tF) 

=NFIDφΨ[φ(x)] Ψ[φ(x)]φ(x)..φ(x) 

×exp[i∫tItF(φ,∂φ)] を代入すると,

 

 FI[J]=NFIDφΨ[φ(x)]Ψ[φ(x)] 

Σ=0(i/N!)∫d..dx

J(x)φ(x)....J(x)φ(x)

exp[i∫tItF(φ,∂φ)]

 

=NFIDφΨ[φ(x)]Ψ[φ(x)]

exp[i∫tItFx{(φ,∂φ)+Jφ}]

 

となることがわかります。

 

比例係数NFIの煩わしさから逃れるため,

J=0 のZFI[J]を考えると,

FI[J]=<Ψ,tF||Texp{i∫dxJ(x)φ(x)}| Ψ,t 

/<Ψ,tF,t>にJ(x)≡0 を代入して。 

FI[0]=<Ψ,tF,t>/<Ψ,tF,t>=1

ですが,

 

一方,ZFI[0] 

=NFIDφΨ[φ(x)]Ψ[φ(x)]

exp[i∫tItF(φ,∂φ)] ですから,

この1で割り算をしてNFIを消去すると, 

FI[J] =∫DφΨ[φ(x)]Ψ[φ(x)]

exp[i∫tItFx{(φ,∂φ)+Jφ}] 

/∫DφΨ[φ(x)]Ψ[φ(x)]exp[i∫tItF(φ,∂φ)]

 

なる表現式を得ます。

 

この最後の表現では比例定数NFI依存性から逃れただけでなく

積分∫Dφおける測度の曖昧さの規格化の規約にも

無関係な便利な式になっています。

 

この項目はまだまだ長くなりそうなので,今日はここでおわります。

 

(参考文献);九後汰一郎著 「ゲージ場の量子論Ⅰ」(培風館)

| | コメント (1) | トラックバック (0)

2014年10月19日 (日)

場理論におけるS行列とLSZの公式(5)(再掲記事)

  経路積分の記事に戻る前に.2010年7/6のLSZシリーズ最後

 の記事 「場理論におけるS行列とLSZの公式(5)」を,ほぼ全文

 再掲載しておきます。

 

 実はこの記事はLSZの公式の話ではなく,前半は経路積分でない

 伝統的な正準形式の場の理論における摂動展開の理論的基礎, 

 特にGreen関数の具体的な摂動展開による計算法を理論的に述

 べたものです。

 後半は,後の記事で書く予定の経路積分に基づく摂動展開でも同じである

 摂動項の因子計算に必要なWickの定理の説明です。

 (※ 以下,過去記事の本文です。)

 

 

 摂動論の目的は,LSZの公式でS行列要素を構成する源になる

 全ての完全なGreen関数:

 τ(x1,..,xn)≡<0|T(φ(x1)..φ(xn))|0>を具体的に

 計算する1つの方法を提供することです。

 

 さて,一般の相互作用する場φ(,t),および正準共役運動量

 (canonical conjugate):π(,t)の同時刻交換関係は,

 In-field(漸近場):φin(,t),およびπin(,t)によって満足

 される交換関係と同じです。

 

 さらに,仮定によって,状態の完全系が真空(vacuum);|0>に

 φ,またはφinを繰り返し作用させることによって得られるので

 これらの場もまた演算子の完全系を作っています。

 

 (※演算子の完全系とは任意の演算子がこれらによって展開可能

 という意味です。※)

 

 

 故に,φとφinとは摂動論適用可能性の仮定に従って1対1に

 対応するため,それらはあるユニタリ演算子U^(t)による

 ユニタリ変換で関係付けられます。

 

 すなわち,φ(,t)=U^-1(t)φin(,t)U^(t),

 およびπ(,t)=U^-1(t)πin(,t)U^(t)です。

 

 演算子U^(t)の動力学は,この関係式から見出すことが

 できます。

 

 というのは,φ(x)とφin(x)の両方についての運動方程式

 が既知であるからです。

 

 特に,自由場の交換関係と自由場の方程式を満足するIn-field

 に対する定義関係式から,次のHeisenberg方程式が導かれます。

 

 ∂φin(x)/∂t=i[Hin^(φinin),φin(x)],

 ∂πin(x)/∂t=i[Hin^(φinin),πin(x)] です。

 ここでHin^(φinin)は物理的質量mを持つ粒子に対する

 自由場のHamiltonianです。

 

 さらに,正確なHeisenberg場に対する(時間の)平行移動不変性

 から次式の成立することが保証されます。

 

 すなわち,∂φ(x)/∂t=i[H^(φ,π),φ(x)]です。

 これはまた,∂π(x)/∂t=i[H^(φ,π),π(x)]の成立も

 保証します。

 

 そこで,φdin(x)≡∂φin(x)/∂t

 =(∂/∂t){U^(t)φ(,t)U^-1(t)}

 =U^d(t)φ(,t)U^-1(t)U^(t)φ(,t)

 U^-1d(t)U^(t)φd(,t)U^-1(t)

 =U^d(t)U^-1(t)φin(x)+φin(x)U^(t)U^-1d(t)

 +iU^(t)[H^(φ,π),φ(x)]U^-1(t) です。

 

 ここで,公式:U^(t)U^-1d(t)

 =(∂/∂t){U^(t)U^-1(t)}-U^d(t)U^-1(t)

 =-U^d(t)U^-1(t)を使用します。

 

 また,φin(x)=U^(t)φ(x)U^-1(t)によって,

 U^(t)H^(φ,π)U^-1(t)=H^(φinin) です。

 

 したがって,結局,

 φdin(x)=[U^d(t)U^-1(t),φdin(x)]

 +i[H^(φinin),φin(x)]

 =φdin(x)+[U^d(t)U^-1(t)+iHI^(φinin),φin(x)]

 を得ます。

 

 同様にして,πdin(x)=πdin(x)

 +[U^d(t)U^-1(t)+iHI^(φinin),πin(x)]

 も得られます。

 

 ただし,HI^(φinin)≡H^(φinin)-Hin^(φinin) です。

 

 このHI^(φinin)は時間tに陽に依存する相互作用項(摂動項)

 をIn-fieldで表現したものです。

 以下,このHI^(φinin)をHI(t)と表記することにします。

 

 φdin(x)=φdin(x)+[U^d(t)U^-1(t)+iHI(t),φin(x)],

 かつ,

 πdin(x)=πdin(x)+[U^d(t)U^-1(t)+iHI(t),πin(x)]

 から,[U^d(t)U^-1(t)+iHI(t),φin(x)]=0,

 かつ,[U^d(t)U^-1(t)+iHI(t),πin(x)]=0 です。

 

 そして,φininが演算子の完全系を構成することから

 E0(t)をc数として iU^d(t)U^-1(t)=HI(t)+E0(t)

 と書けます。

 

 そこで,改めてHI'(t)≡HI(t)+E0(t)と定義すると,

 U^d(t)U^-1(t)=HI'(t)ですからU^(t)は方程式;

 ∂U^(t)/∂t=HI'(t)U^(t) を解けば得られます。

 

 U(t,t')≡U^(t)U^-1(t')と定義すると,

 i∂U(t,t')/∂t=HI'(t)U(t,t'),

 ただし,U(t,t)=1です。

 

 これを近似展開に便利な積分方程式で表わせば,

 U(t,t')=1-i∫t'tdt1I'(t1)U(t1,t')

 となります。

 

 これから,解の初期値をU(t1,t')≡1とする反復法によって

 U(t,t')=1-i∫t'tdt1I'(t1)

 +(-i)2t'tdt1I'(t1)∫t't1dt2I'(t2)+..

 +(-i)nt'tdt1t't1dt2..∫t'tn-1dtn[HI'(t1)HI'(t2)

 .HI'(tn)]+.. なる摂動展開を得ます。

 

 明らかに,t1≧t2≧..≧tnですから,相互作用項の積:

 [HI'(t1)HI'(t2)..HI'(tn)]を時間順序積(経時積;T積):

 T(HI'(t1)HI'(t2)..HI'(tn))で置き換えることができ

 ます。

 

 すると,

 U(t,t')=1+Σn=1(-i)nt'tdt1t't1dt2..∫t'tn-1dtn

 T(HI'(t1)T-HI'(t2).HI'(tn)) と書けます。

 

 この表現式は時間変数t1,t2,..,tnの交換対称な形をしている

 ので,対称化して

 U(t,t')=1+Σn=1t'tdt1t'tdt2..∫t'tdtn

 T(HI'(t1)HI'(t2)HI'(tn))と書くことができます。

 

 これを記号的にU(t,t')≡T(exp{-i∫t'tI'(t)dt})

 =T(exp{-i∫t't4Iin(x)}) と表現します。

 

 U演算子:U(t,t')の有用な性質は

 U(t,t')=U(t,t")U(t",t')です。

 これは定義:U(t,t')=U^(t)U^-1(t')から明らかな

 性質です。

 

 特に,1=U(t,t)=U(t,t')U(t',t)により,

 U(t,t')=U-1(t',t)です。

 さて,これを用いてHeisnbeg場の"時間順序積=T積"の

 真空期待値:

 τ(x1,..,xn)≡<0|T(φ(x1)..φ(xn))|0>

 をIn-fieldで表現することに向かいます。

 まず,τ(x1,..,xn))=<0|T(φ(x1)..φ(xn))|0>

 =<0|T(U^-1(t1in(x1)U(t1,t2in(x2)U(t2,t3)..

 U(tn-1,tnin(xn)U^(tn))|0>

 =<0|T(U^-1(t)U(t,t1in(x1)U(t1,t2in(x2)

 U(t2,t3)..U(tn-1,tnin(xn)U(tn,-t)

 U^(-t))|0>

 です。

 ただし,tは∞ に近づくことも許される準拠時間です。

 

 こうした極限では,t1,t2,..,tn∈(-t,t)ですから,

 U^-1(t)とU^(-t)をT積から外に出して

 τ(x1,..,xn)=<0|U^-1(t)T(U(t,t1in(x1)U(t1,t2)

 φin(x2)U(t2,t3)..U(tn-1,tnin(xn)U(tn,-t))

 U^(-t)|0> と書くことができます。

 そして,T(U(t,t1in(x1)U(t1,t2in(x2)U(t2,t3)

 ..U(tn-1,tnin(xn)U(tn,-t)) において,

 一般性を失なうことなく

 t>t1>t2>..>tn-1>tn>-t と仮定できます。

 すると,T(U(t,t1in(x1)U(t1,t2in(x2)U(t2,t3)

 ..U(tn-1,tnin(xn)U(tn,-t))

 =U(t,t1in(x1)U(t1,t2in(x2)U(t2,t3)..

 U(tn-1,tnin(xn)U(tn,-t) です。

 これに,U(t,t1)=T(exp{-i∫t1tI'(τ0)dτ0}),

 U(t1,t2)=T(exp{-i∫t2t1I'(τ1)dτ1}),..,

  U(tn-1,tn)=T(exp{-i∫tntn-1I'(τn-1)dτn-1}),

  U(tn,-t)=T(exp{-i∫-ttnI'(τn)dτn}) 

  を代入します。

 

 かくして,

 U(t,t1in(x1)U(t1,t2in(x2)U(t2,t3)

 ..U(tn-1,tnin(xn)U(tn,-t)

 =T(exp{-i∫t1tI'(τ0)dτ0})φin(x1)

  T(exp{-i∫t2t1I'(τ1)dτ1})φin(x2)..

  T(exp{-i∫tntn-1I'(τn-1)dτn-1})φin(xn)

  T(exp{-i∫-ttnI'(τn)dτn}) 

 となります。

 

 t≧τ0≧t1≧τ1≧t2..≧tn-1≧τn-1≧tn≧τn≧-t

 ですから,T記号は,

 t,τ0,t11,t2,..,tn-1n-1,tnn,-tに対する

 記号と考えます。

 

 すると,

 T(U(t,t1in(x1)U(t1,t2in(x2)U(t2,t3)..

 U(tn-1,tnin(xn)U(tn,-t))

 =T(φin(x1in(x2)..φin(xn)

 T(exp{-i∫t1tI'(τ0)dτ0})T(exp{-i∫t2t1I'(τ1)dτ1})

 ..T(exp{-i∫-ttnI'(τn)dτn})) です。

 結局,T(U(t,t1in(x1)U(t1,t2in(x2)U(t2,t3)

 ..U(tn-1,tnin(xn)U(tn,-t))

 =T(φin(x1in(x2)..φin(xn)T(exp{-i∫-ttI'(τ)dτ})

 と書けます。

 

 さらに記号的に書けば,これは,

 T(φin(x1in(x2)..φin(xn)exp{-i∫-ttI'(τ)dτ})

 となります。

 これは,より正確には

 Σm=0{(―i)m/m!}∫-ttdτ1.. dτm

 T(φin(x1in(x2)..φin(xn)HI'(τ1) HI'(τ2)..HI'(τ))

 で定義される記号で,確かに元のT積を忠実に示すものです。

※(注):つまり,

 Σm0=0Σm1=0..Σmn=0{(―i)m0/m0!}{(―i)m0/m1!}..

 {(―i)m0/mn!}t1tdτ01dτ02..dτ0m0

 ∫t2t1dτ11dτ12..dτ1m1..-ttndτn1dτn2..dτnmn

 {HI'(τ01)HI'(τ02)..HI'(τ0m0in(x1)HI'(τ11)

 HI'(τ12)..HI'(τ1m1in(x2)HI'(τ21)..HI'(τn-1mn-1)

 φin(xn)HI'(τn1)I'(τn2)..HI'(τnmn)} 

 

 が次のT積の特別な場合です。

 Σm0=0Σm1=0..Σmn=0{(―i)m0/m0!}{(―i)m0/m1!}..

 {(―i)m0/mn!}∫t1tdτ01dτ02.. dτ0m0t2t1dτ11dτ12..

 dτ1m1..∫-ttndτn1dτn2..dτnm

 T(φin(x1in(x2)..φin(xn)HI'(τ01)

 HI'(τ02)..HI'(τ0m0)n..HI'(τn1)HI'(τn2)..HI'(τnmn))

 です。(注終わり)※

 

 かくして,τ(x1,..,xn)

 =<0|U^-1(t)T(φin(x1in(x2)..φin(xn)

 T(exp{-i∫-ttI'(τ)dτ})U^(-t)|0> であり,

 U^-1(t),U^(-t) を除いてIn-fieldsによってS行列

 が表現されました。

 

 最後に,U^-1(t),および,U^(-t)は,真空|0>がt→∞

 の極限において,これらの演算子の固有状態であることを示す

 ことによって除去できます。

 

 このことを示すため,他のαと共に1粒子pを含む任意の

 入射状態|αp;in>を考えます。

 

 pがKlein-Gordon粒子の場合には

 <β;out|pα;in>=<β;out|ain^+(p)|α;in>

 =<β-p;out|pα;in>

 -i∫d3p(x)∂0<β;out|φin(x)-φout(x)|α;in>

 でした。

 

 これによって,

 <pα;in|U^(-t)|0>

 =<α;in|ain^(p)|U^(-t)|0>

 =-i∫d3

 fp*(x,-t')∂0'<α;in|φin(x,-t')U^(-t)|0>

 です。

 

 (※同様な形式はFermi粒子や光子に対しても少し違う形で

 得られます。) 

 φ(,t)=U^-1(t)φin(,t)U^(t)を代入すると

 <pα;in|U^(-t)|0>

 =-i∫d3

 fp*(,-t')∂0'<α;in|U^(-t')φ(,-t')

 U^-1(-t')U^(-t)|0> です。

 

 これはt=t'→∞ とするとき,漸近条件:

 lim t→-∞<α|φf(t)|β>=√Z<α|φinf|β>に従って,

 次の値に近づきます。

 

 すなわち,

 √Z<α;in|U^(-t)ain^(p)|0>

 +i∫d3p*(,-t)<α;in|U^d(-t)φ(,-t)

 +U^(-t)φ(,-t)U^-1d(-t)U^(-t)|0>

 に近づきます。 

 そして,明らかに,ain^(p)|0>=0 です。

 また,U^dφ+U^φU^-1dU^

 =U^dU^-1φinU^+φinU^U^-1dU^

 =[U^dU^-1in]U^=-i[HI',φin]U^=0 です。

 

 何故なら,相互作用:HI'(t)=HI'(φinin)にはπin=φid

 などの時間微分結合が含まれないと仮定しているので,

 [HI',φin]=0 です。 

 したがって,t→∞ のとき,1粒子以上を含む全ての

 In-states |pα;in>に対して

 <pα;in|U^(-t)|0>→ 0 が成立します。

 

 それ故,真空の一意性によりt→∞ では状態U^(-t)|0>

  は|0;in>=|0> の定数陪です。

 

 すなわち,ある定数λが存在してt→∞で

^(-t)|0>=λ|0>と書くことができます。

同様にしてt→∞でU^(t)|0>=λ|0>も示すこと

ができます。

 

定数λ,およびλは,t→∞ において,

λλ*=<0|U^-1(t)|0><0|U^(-t)|0>

=<0|U^(-t)|0><0|U^-1(t)|0>=<0|U^(t-t)|0>

=<0|T(exp{i∫-ttI'(τ)dτ})|0>

=T(exp{-i∫-ttI'(τ)dτ})|0>-1を満たします。

 

 そこで,

τ(x1,..,xn)

=<0|U^-1(t)T(U(t,t1in(x1)U(t1,t2in(x2)

U(t2,t3)..U(tn-1,tnin(xn)U(tn,-t))U^(-t)|0>

=<0|T(φin(x1in(x2)..φin(xn)

exp{-i∫-ttI'(τ)dτ})|0>/T(exp{-i∫-ttI'(τ)dτ})|0>

です。

さらにt→∞ に極限移行すると,

τ(x1,..,xn)=<0|T(φin(x1in(x2)..φin(xn)

exp{-i∫-∞I'(τ)dτ})|0>

/<0|T(exp{-i∫-∞I'(τ)dτ})|0> です。

すなわち,

τ(x1,..,xn)=Σm=0{(-i)m/m!}∫-∞∫d41..d4m

<0|T(φin(x1in(x2)..φin(xn)Iin(y1))

Iin(y2)..Iin(ym)))|0>

/[Σm=0{(-i)m/m!}∫-∞∫d41..d4m

<0|T(Iin(y1))Iin(y2)..Iin(ym)))|0>

です。

 これが,摂動論の基本的な最終結果です。

 

§17.4 Wick's Theorem(Wickの定理)

 まず,摂動展開の最終結果は,

 τ(x1,..,xn)

 =Σm=0{(-i)m/m!}∫-∞∫d41..d4m

 <0|T(φin(x1in(x2)..φin(xn)Iin(y1))

 Iin(y2)..Iin(ym)))|0>

 /[Σm=0{(-i)m/m!}∫-∞∫d41..d4m

 <0|T(Iin(y1))Iin(y2)..Iin(ym)))|0>

 です。

 さらに,これを評価するには,右辺各項の

 <0|T(φin(x1in(x2)..φin(xn)Iin(y1))

 Iin(y2)..Iin(ym)))|0>

 を具体的に計算する必要があります。

 <0|T(φin(x1in(x2)..φin(xn)

 Iin(y1))Iin(y2)..Iin(ym)))|0>

 に含まれるスカラー場の真空期待値項は

 <0|T(φin(x1in(x2)..φin(xn)|0>なる因子の

 積分を含みます。 

 これを具体的に積分できる形にするため,消滅演算子

 を1つ1つ右に生成演算子を左に移動させることを

 試みます。

 こうして,時間順序積を謂わゆる正規順序積

 (normal-ordering product)にする計画からFeynman振幅

 が得られます。

 

 これは,最初1949年にDysonによって展開され,後にWick

 によって拡張されました。Wickは次のような定理を証明

 しました。

 

 内容は次の通りです。

 

 T[φin(x1)..φin(xn)]

 =:φin(x1)..φin(xn):

 +{<0|T(φin(x1in(x2)|0>:φin(x3)..φin(xn):

 +(全ての置換項))

 +{<0|T(φin(x1in(x2)|0><0|T(φin(x3in(x4)|0>

 :φin(x5)..φin(xn):+(全ての置換項)))+..

 +{<0|T(φin(x1in(x2)|0><0|T(φin(x3in(x4)|0>..

 <0|T(φin(xn-1in(xn)|0>+(全ての置換項))

 (↑ nが偶数のとき),

 

 または,

 +{<0|T(φin(x1in(x2)|0><0|T(φin(x3in(x4)|0>..

 <0|T(φin(xn-2in(xn-1)|0>φin(xn)+(全ての置換項))

 (↑ nが奇数のとき)

 です。

(※記号;;で表わしたものが正規順序積でありこれは場の演算子

を正振動数部分(消滅演算子)+負振動数部分(生成演算子)に分けて

積を展開した後,生成が左に消滅が右にくるように交換して交換子

からの寄与は無視したものです。これの真空期待値はゼロです。※)

 

 真空期待値,または縮約(contractions)は場の演算子を

 正規順序(normal-order)に並べ換えるとその交換子から

 発生します。 

 そして,これらの"縮約=場のT積の真空期待値"は

 自由場のFeynman伝播関数の場の理論的表現となって

 います。

 

 演算子の正規順序積:φin(x1)..φin(xn):は,これの因子

 である各演算子をφin(x)=φin(+)(x)+φin(-)(x)と正振動数

 部分と負振動数部分に分解することから形成されることを思い

 起こします。

 

 ここで,φin(+)(x)は消滅演算子のみ,φin(-)(x)は生成演算子

 のみから成っています。

 

 正規順序に到達するためには,あらゆる生成演算子があらゆる

 消滅演算子の左に位置するようにします。

 

 ただし,もしもFermi場を互換するときには順序の交換のたび

 に(-)符号が導入される必要があります。

 

 陽に書くと:φin(x1)..φin(xn):

 =ΣA,BδpΠi∈Aφin(-)(xij∈Bφin(+)(xj) です。

 

 ここで和ΣA,Bはn個の添字のあらゆる集合A,B

 (※ A∪B={1,2,..,n},A∩B=φを満たす{1,2,..,n}

 の直和分割 ※) にわたって取られます。

 

 δpはFermi場の場合の置換の符号です。

そして,正規順序積の真空期待値は全てゼロです。

何故なら,φin(+)|0>=<0|φin(-)=0 だからです。

 

 以上から,nが奇数なら<0|T(φin(x1)..φin(xn)|0>=0

であり,

nが偶数なら

<0|T(φin(x1)..φin(xn)|0>

=Σpermδp<0|T(φin(xp1in(xp2)|0>

<0|T(φin(xp3in(xp4)|0>..<0|T(φin(xp(n-1)in(xpn)|0>

です。(※ これは単に自由場の2点Green関数(伝播関数:propagator),

実スカラーΔ場なら(x-y)=<0|T(φin(x)φin(y)|0>の積

ですね。※)

ただし,<0|T(φin(xiin(xj)|0>のφin(xi),φin(xj)

の場φ(x)がFermion場の場合には,必ずi<jとなるようにして添字

の若い順に並べるという規約に従います。

 

(Wickの定理の証明):スカラー場を仮定して帰納法で

証明します。

 

 n=1に対しては定理は明らかに正しいです。

 

 また,n=2に対しては

 T(φin(x1in(x2))=:φin(x1in(x2):+(c数)

 です。

 

 何故なら,時間順序から正規順序に変えるのは単にいくつかの

 生成演算子と消滅演算子の交換を意味するに過ぎず,交換後に

 残る交換子は.

 [φin(+)(x1),φin(-)(x2)]

 =<0|[φin(+)(x1),φin(-)(x2)]|0>

 =<0|φin(+)(x1),φin(-)(x2)|0>

 であって,これはc数だからです。

 

 このc数を求めるために,

 T(φin(x1in(x2))=:φin(x1in(x2):+(c数)

 の両辺の真空期待値を取れば,

 (c数)=<0|T(φin(x1in(x2))|0>より

 T(φin(x1in(x2))=:φin(x1in(x2):

 +<0|T(φin(x1in(x2))|0> を得ます。

 

 そして,一般のnについても定理が正しいと仮定します。

 

 このとき,T(φin(x1)..φin(xn+1))においてtn+1を最小時刻

 に選ぶと,

 T(φin(x1)..φin(xn+1))

 =T(φin(x1)..φin(xn))φin(xn+1))

 =:φin(x1)..φin(xn):φin(xn+1)

 +Σperm<0|T(φin(x1in(x2))|0>

 :φin(x3)..φin(xn):φin(xn+1)+.. 

 です。 

 

 ところで,:φin(x1)..φin(xn):

 =ΣA,BΠi∈Aφin(-)(xij∈Bφin(+)(xj) です。 

 故に,:φin(x1)..φin(xn):φin(xn+1)

 =ΣA,BΠi∈Aφin(-)(xij∈Bφin(+)(xj)

 {φin(+)(xn+1) +φin(-)(xn+1)} 

 =ΣA,BΠi∈Aφin(-)(xij∈Bφin(+)(xjin(+)(xn+1)

 +ΣA,BΠi∈Aφin(-)(xiin(-)(xn+1j∈Bφin(+)(xj)

 +ΣA,BΠi∈Aφin(-)(xik∈BΠi∈B,j≠kφin(+)(xj)

 <0|φin(+)(xkin(-)(xn+1)|0> です。 

 ここで,<0|φin(+)(xkin(-)(xn+1)|0>

 =<0|φin(xkin(xn+1)|0>

 =<0|T(φin(xkin(xn+1))|0> です。

 

 よって,:φin(x1)..φin(xn):φin(xn+1)

 =:φin(x1)..φin(xnin(xn+1):

 +Σkin(x1)..φin(xk-1in(xk+1)..φin(xn):

 <0|T(φin(xkin(xn+1))|0> となります。

 

 これは定理の結論のn →(n+1)の形です。

 

 したがって,帰納法により定理は証明されました。(証明終わり)

 

 Wickの定理を,τ(x1,..,xn)

=<0|T(φin(x1in(x2)..φin(xn)

exp{-i∫-∞I'(τ)dτ})|0>

/<0|T(exp{-i∫-∞I'(τ)dτ})|0>

 

=Σm=0{(-i)m/m!}∫-∞∫d41..d4m

 <0|T(φin(x1in(x2)..φin(xn)

Iin(y1))Iin(y2)..Iin(ym)))|0>

/[Σm=0{(-i)m/m!}∫-∞∫d41..d4m

 <0|T(Iin(y1))Iin(y2)..Iin(ym)))|0>

に適用します。

 

 このとき,相互作用Hamiltonian項:Iin(y))は通常は既に正規順序

にされていることに注目します。 

 そこで,時間順序積を計算する際に同一の相互作用項Iin(y))

から生じた同一の座標yの2つの場の演算子を含む縮約項は

出現しません。

 

 これらは,τ(x1,..,xn)の右辺において正規順序から出発しており,

また明らかにT:φin(y)φin(y):=:φin(y)φin(y):です。

(※これは謂わゆるTad-poleですね。) 

参考文献:J.D.Bjorken,S.D.Drell "Relativistic Quantum Field" (McGraw-Hill)

 

(↑ ここまでが再掲載記事です。※)

 今日はここまでにします。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014年10月18日 (土)

場の量子論におけるS行列とGreen関数(4)

場の理論におけるS行列とGrren関数」の続きです。

 

今日はLSZの還元公式(Reduction formula)について記述します。

 

これは2010年の過去記事「場理論におけるS行列とLSZの公式(4)」

で既上述していますが改めて読み返してみると最後は中途で終わって

いました。

 

しかし,そこから先に書く予定だったのは,スカラーBosonの場

φ(x)だけでなく,Fermionのスピノル場ψ(x)やベクトル場

の電磁場μ(x)へと拡張する話題だったと思います。

 

本記事の後で,こうした続きの話について書くかどうか?は,

まだ未定ですが。。。

取りあえず,今日は,ここまでの流れとツジツマが合わない

部分を削除・訂正して,の過去記事をほぼそのまま再掲載します。

 

さて,ここまでは,Sβα=<β;out|α;in>=<β;in||α;in>

によって (散乱)行列要素Sβα,そして散乱演算子を定義し,

その一般的性質のいくつかが解明されました。

 

このS行列要素の絶対値の2乗:|Sβα|2は始状態(In-state):

αから終状態(Out-state):βへの実験的に観測される遷移確率

を与えます。

 

ここからは,これを実際に計算するという非常に厄介な課題を

遂行することに向かいます。

 

 1954年まではS行列の計算への唯一の系統的アプローチは

 相互作用カレント~(x)のベキによる摂動展開の理論だけ

 でした。

 

 そのときから後の進歩としては,最初は,Low よって,

 そしてLehmann,Symanzik,およびZimmmermann(LSZ)によって

 始められた理論展開に由来するものがあります。

 

彼らは,"弱い結合項=摂動”による展開に訴えることなく

に含まれる情報の幾つかを表面化する方法を示しました。

 

 これは物理的に興味あるS行列要素を場の演算子の真空

 期待値によって表現する方法で.2つの漸近条件: 

limt→-∞<α|φ(t)|β>=√Z<α|φin|β>,および, 

limt→+∞<α|φ(t)|β>=√Z<α|φout|β> を適用

することで成し遂げられました。

 

 以下ではLSZの方法に従って,βα=<β;out|α;in>の形

 の行列要素を,幾らかはより扱いやすい場の演算子の積の

 真空期待値を見出すことから出発にします。

 

 別の意味では,場の演算子φ(x)を直接摂動級数で展開する

 方法で自由なin-field 漸近場の演算子の積の真空期待値を

 用いてS行列要素の展開を作り上げていくことも可能です。

 

 こうした表現の計算規則は既に発見されています。

 

これは,既に本ブログでは過去記事で何度も取り上げ詳説して

いる伝播関数アプローチ(propagator-approach)における

Feynmanルールに等しいものです。

 

 以下では,不変性(対称性)などの助けを借りて

 Sβα=<β;out|α;in>における物理状態α,βから情報

 を引き出し,それを真空状態で挟まれた場の演算子の積に

 表わすLSZの一般的な還元テクニック(Reduction Teqchnique)

 を段階的に展開していきます。

 

 まず,S行列要素:Sβαp=<β;out|α;in>を考えます。

 

ここで,βは終状態|β;out>において散乱されて出現する

粒子の集合を記述しており,;in>は入射粒子の集合α

に加えて,さらに運動量を持った入射粒子が存在する状態

を表わす始状態(In-state)です。

 

 漸近条件を用いて,In-state:|αp;in>から,粒子を差し

 引く代わりに適当な場の演算子を導入します。

 

そして,in()=i∫d3p(x)∂0φin(x), 

out()=i∫d3p(x)∂0φout(x) なる表式

を用います。

 

すなわち,

<β;out|α;in>=<β;out|in()|α;in> 

=<β;out|out()|α;in>

+<β;out|{in()-out()}|α;in> 

=<β-;out|α;in> 

i<β;out|∫d3p(x)∂0[φin(x)-φout(x)]|α;in>

 

と書けます。

 

 |β-;out>,もしも集合βの中にが存在するなら.集合β 

からを除いた Out-state を表わします。

 

しかし,βの中にが存在しないならこの項はゼロであってなく

なります。

 

 また,;in>が初期に2粒子がある場合の散乱を表現

しているなら,<β-;out|α;in>は入射粒子と標的粒子

が運動量を含めてそれらの量子数を保存する前方弾性散乱

にのみ寄与します。

 

つまり<β-p;out|α;in>=δα(β-p) です。

 

 [注]:<β-;out|α;in>において,|α;in>が1粒子の場合, 

<β-;out|P^2|α;in>=α2<β-;out|α;in> 

(β-)2<β-;out|α;in> なので,

 

<β-p;out|α;in>≠0 のときには,(β-p)2=α2=m2

ですから,|β-;out>も質量mの1粒子Out-stateです。 

そして<β-;out|μ|α;in>=αμ<β-;out|α;in> 

(β-p)μ<β-;out|α;in> ですから, 

<β-p;out|α;in>≠0は,(β-p)μ=αμ,

 

つまりμ=αμ+pμなる弾性散乱を意味し,しかも方向

を変えず素通りする前方散乱のみの振幅です。[注終わり]※

 

 さて.<β;out|α;in> 

=<β-;out|α;in> 

i<β;out|∫d3p(x)∂0[φin(x)-φout(x)]|α;in> 

の右辺の項: 

i∫d3<β;out|fp(x)∂0in(x)-φout(x)]|α;in> 

Greenの定理により,時間tに依存しません。

 

これは,前にもGreenの定理から√Z<α|φin|β>において, 

φin(t)≡i∫d3(,t)∂0φin(,t)が時間tに

依存しないので,単にφinと書けることを示したのと同様です。

 

そして,漸近条件

limt→-∞<α|φ(t)|β>=√Z<α|φin|β> 

およびlimt→+∞<α|φ(t)|β>=√Z<α|φout|β>

から,

0→-∞ の極限ではφin(,x0)を(1/√Z)φ(,x0)

で,0→+∞ の極限ではφout(,x0)を(1/√Z)φ(,x0)

で置き換えることが許されます。

 

それ故,結局,<β;out|α;in> 

=<β-;out|α;in> 

(i/√Z)(lim x0→+∞-lim x0→-∞)

<β;out|∫d3p(x)∂0φ(,x0)|α;in> 

と書けます。

 

 これがReduction(還元)の手続きの第一段階です。

 

これから,より便利な形を得るため,次の恒等式: 

(lim x0→+∞-lim x0→-∞)∫d31(x)∂02(x) 

=∫-∞4[∂0{g1(x)∂02(x)}] 

=∫-∞4[g1(x)∂022(x)-{∂021(x)}g2(x)]

が成立することを用います。

また,(□+μ2)fp(x)=0 により,上に得られた式に

02p(x)=(∇2-μ2)fp(x)を代入します。

 

 すると, 

(i/√Z)(lim x0→+∞-lim x0→-∞)

∫d3<β;out|fp(x)∂0φ(,x0)|α;in> 

(i/√Z)∫-∞4 

<β;out|[fp(x)∂02φ(x)-{∂02p(x)}φ(x)]|α;in> 

 =(i/√Z)∫-∞4 

<β;out|[fp(x)(∂02+μ2)φ(x)-{∇2p(x)}φ(x)]|α;in> 

 =(i/√Z)∫-∞4xfp(x)(□+μ2)<β;out|φ(x)|α;in>

 

 となります。

 

最後の式変形では,部分積分に対するGreenの公式を用いました。

 

最終式として

<β;out|α;in>=<β-;out|α;in> 

(i/√Z)∫-∞4xfp(x)(□+μ2)<β;out|φ(x)|α;in> 

なる表式が得られました。

 

 この手続きは,始状態と終状態から全ての粒子を取り除き,

 場の演算子積の真空期待値のみが残るようになるまで繰り返す

 ことができます。

 

例えば<β;out|α;in>=<β-;out|α;in> 

(i/√Z)∫-∞4xfp(x)(□+μ2)<β;out|φ(x)|α;in> 

から,

さらに右辺の因子<β;out|φ(x)|α;in>における集合β 

がβ=γ'のように集合γと1粒子'の和で表わせる場合, 

これから粒子'を取り除きます。

 

すなわち, 

<β;out|φ(x)|α;in>=<γ;out|aout(')φ(x)|α;in> 

=<γ;out|φ(x)in(')|α;in> 

+<γ;out|out(')φ(x)-φ(x)in(')|α;in> 

=<γ;out|φ(x)|α-';in> 

+<γ;out|out(')φ(x)-φ(x)in(')|α;in>

 

です。

 

故に,<β;out|φ(x)|α;in>=<γ;out|φ(x)|α-';in> 

i∫d3<γ;out|φout(y)φ(x)-φ(x)φin(y)|α;in>

y0p(y) を得ます。

 

漸近条件によって再びy0 → -∞ の極限ではφin(y)を

(1/√Z)φ(y)で,0 → +∞ の極限ではφout(y)を(1/√Z)

φ(y)で置き換えることが許されます。

 

このとき,次の項: 

i∫d3<γ;out|φout(y)φ(x)-φ(x)φin(y)|α;in>

y0p(y) を時間順序積(T積;T-product)で表現すること

ができます。

 

すなわち,

<γ;out|φout(y)φ(x)-φ(x)φin(y)|α;in> 

(1/√Z){lim y0→+∞<γ;out|φ(y)φ(x)|α;in> 

lim y0→-∞<γ;out|φ(x)φ(y)|α;in>}

と書けますが。。。。

 

この右辺は,

(1/√Z){lim y0→+∞<γ;out|θ(y0-x0)φ(y)φ(x)

+θ(x0-y0)φ(x)φ(y)|α;in> 

lim y0→-∞<γ;out|θ(x0-y0)φ(x)φ(y)

+θ(y0-x0)φ(y)φ(x)|α;in>} (1/√Z)

(lim y0→+∞-lim y0→-∞)<γ;out|T(φ(y)φ(x))|α;in> 

と書くことができます。

 

ただし,θ(τ)はHeavisideのStep fuction(階段関数)であり,

これはτ>0 なら,θ(τ)=1,τ<0 ならθ(τ)=0 なるτの関数

として定義されます。

 

そして,T積(時間順序積)は,T(φ(y)φ(x))

=θ(x0-y0)φ(x)φ(y)+θ(y0-x0)φ(y)φ(x), 

つまり,x0>y0ならT(φ(y)φ(x))=φ(x)φ(y), 

 0<y0ならT(φ(y)φ(x))=φ(y)φ(x)  

で定義されます。

 

これから,明らかに, T(φ(y)φ(x))=T(φ(x)φ(x)) 

が成立します。

 

3つ以上の場のT積についても同様です。

 

例えば,T(φ(y)φ(x)φ(z)))は,3つの場φ(x),φ(y),

φ(z)の積をそれらの時刻:x0,y0,z0の大きい順に前から

並べた積で定義されます。

 

最後に恒等式: 

(lim x0→+∞-lim x0→-∞)∫d31(x)∂02(x) 

=∫-∞4[g1(x)∂022(x)-{∂021(x)}g2(x)] 

および,自由平面波の方程式:(□y+μ2)f'(y)=0  

の助けを借ります。

 

すると,

<γ';out|φ(x)|α;in>

=<γ;out|φ(x)|α-';in> 

(i/√Z)∫d4y<γ;out|T(φ(y)φ(x))|α;in>

(□y+μ2)fp'(y) 

を得ます。

 

ただし,g(y)(□y+μ2)は演算子(□y+μ2)が前の関数

g(y)に作用することを意味します。

 

つまり,この意味は(□y+μ2)g(y)ですから,単純にこう書けば

問題ないのですが,Out状態からの粒子除去をIn状態からのそれと

区別してfp'(y)を後ろに置いた表現を際立たせるために,こう

表現しています。

 

このReduction(還元)のテクニックを繰り返し適用して,S行列

要素の両側の状態から全ての粒子を除いて場の演算子のT積の

真空期待値に到達する道は今や明らかです。

 

すなわち,次式において全ての,jjを満たす

場合には

1,,..,:out|1,,..,:in> 

(i/√Z)(M+N)Πj=1∫d4Πk=1∫d4

q(x)(□xj+m2)

0|T(φ(y1)..φ(y)φ(x1)...φ(x))|0>

(□yk+μ2)fp+y) です。

 

これを書くに当たっては簡単のために全ての{}k=1..M,

{}j=1,..Nついてjを仮定して前方散乱の項を

落としました。

これには何の問題もありません。

 

というのは,これら落とした項もまた同じ還元テクニック

をうまく適用すれば同様な場の演算子のT積の真空期待値

に帰着させることが可能であるからです。

M個の粒子が入射して互いに衝突して散乱され終状態では

N個の粒子になるS行列要素を求めたいなら.

 

1,,..,:out|1,,..,:in> 

(i/√Z)(M+N)Πj=1∫d4Πj=1∫d4

q(x)(□xj+μ2) 

0|T(φ(y1)..φ(y)φ(x1)...φ(x))|0>

(□yk+μ2)fp*(y)

 

は場の量子論の散乱振幅の全ての計算の基礎となる役割

を果たします。

 

下図は,(z1,..,zr)でr個の粒子が消滅,または生成するあらゆる 

Feynman-diagramを表現していることに着目します。

(※Bjorken-Drellのテキストの第16章の図です。)

 

この,<0|T(φ(z1)..φ(zr))|0>はr=(M+N)に対する

完全なr点-Green関数として定義しています。

 

そうして,<1,,..,:out|1,,..,:in> 

(i/√Z)(M+N)Πj=1∫d4Πk=1∫d4

q(x)(□xj+μ2) 

0|T(φ(y1)..φ(y)φ(x1)...φ(x))|0>

(□yk+μ2)fp*(y)ですが,

この右辺の因子 (□xj+μ2),(□+μ2)の役割を考えます。

 

これは,運動量表示の伝播関数;i/(q2-μ2+iε),または,

i/(p2-μ2+iε)に運動量表示の(□xj+μ2)~(μ2-q2)

または,(□yk+μ2)~(μ2-p2)を掛けることで,

それぞれ分母相殺させて,Feynman-diagramの相互作用領域

のBlack-Box部分へと入る,またはそれから出る全ての外線の

足から伝播関数を除去し,代わりに自由平面波f(x),

またはfp(y)を付与します。

 

このReduction Formula(還元公式)から,理論的に

S行列要素は,完全なr=(M+N)個の粒子Green関数

0|T(φ(z1)..φ(zr))|0>から,外線の足を取り除かれて,

質量殻 q2=p2=m2の上に置かれた外線運動量を持った

粒子の振幅であることがわかります。

 

r粒子Green関数<0|T(φ(z1)..φ(zr))|0>の 

Feynman-diagram(□i+μ2)~(μ2-pi2);(pi2=μ2)

(i=12..r)を作用させたとき,

もしも相殺すべき,i/(pi2-μ2+iε)の因子(外線)が存在

せず,外線ではないp2≠μ2の質量殻外の仮想粒子の内線の

伝播関数 i/(p2-μ2+iε)のみなら,(μ2-pi2)=0 が掛

けられるのでS行列への寄与はゼロとなって消えます。

※こうして,やっと,

散乱のr点Green関数 <0|T(φ(z1)..φ(zr))|0>

を求めることができれば,

それによって散乱のS行列要素βαは,それから,

1,,..,:out|1,,..,:in>

=(i/√Z)(M+N)Πj=1∫d4Πk=1∫d4

q(x)..f(x)fp*(y1)..fp*(y)

x1..KxMy1..KyN1

<0|T(φ(y1)..φ(y)φ(x1)...φ(x))|0>

なる式で計算可能であることが示されたわけです。

ただし,,Kx=(□+μ2)です。

(※ 基本的にLSZの公式はスピンが1/2のFermionの散乱なら,

xの代わりにDx=(iγμxμ-m)を,光子の散乱なら□

を挿入して,それぞれ,Green関数:

<0|T(ψ(z1)..φ(z))|0>や

<0|T(μ1(z1)..μr(z))|0>に作用させるよう

置き換えるだけです。※)

そして,確かにこの還元テクニック自体には,摂動展開など

の近似計算は無関係ですが,単にS行列要素の計算目的が

Green関数のそれに移っただけともいえます。

そして,結局,Green関数を計算するにも,正準形式であれ

経路積分形式であれ何らかの計算方法が必要です。

10月5日の記事「ゲージ場の量子論から(その1)(経路積分4)」

でシリーズを一旦中断して今の項目に移ったのは,実はGreen関数

の経路積分の項の説明に向かうためでした。

すなわち,,「何故,Green関数の経路積分を考察することが

必要なのか?」の理由を述べるためだけでも,これだけの

記事の準備が必要なのでした。

今日はここまでにします。

参考文献:J.D.Bjorken & S.D.Drell

「;Relativistic Quantum Fields」;(McGraw-Hill)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014年10月15日 (水)

場の量子論におけるS行列とGreen関数(3)

 

 「場の量子論におけるS行列とGreen関数」の続きです。

 

 ここまでは,まず,最初にまだ明確には定義してない

 状態ベクトル間の遷移振幅として暫定的にS行列の

 定義を与えました。

 

 次に,S行列要素を構成する漸近的自由な状態ベクトル

 うちの入射状態のベクトルを,t→ -∞において

 真空 |0>から生成する入射漸近場(Incoming field)

 φin(x)の存在を仮定し,結局,それは現実に場

 φ(x)から構成できることを示しました。

 すなわち,φin(x)は確かに存在して,φ(x)によって

 √Zφin(x)φ(x)-∫d4yΔret(x-y;μ)~(y)

 という形で明確に定義されました。

 

 こうして,t→ -∞では場の動力学を入射漸近場

 (incoming-field or In-field) φin(x)の助けで

 自由粒子の動力学に帰着させることができました。

 

そして,t→ +∞ でも散乱漸近場

(outgoing-fields or Out-fields) φout(x)

 を適切に定義することにより,同じことをなす

 ことができます。

これは散乱問題の終状態における状況なので,

うしたt → +∞における物理的状態を簡単

に記述する手法が求められます。

 実際,φout(x),φin(x)について展開したのと

 密接に類似した方向に従って進めることで構成

 できます。

 すなわち,これは,i[μ,φin(x)]=∂μφin(x),

(□+μ2)φin(x)=0 を満たすφin(x)のアナロジーとして,

i[μ,φout(x)]=∂μφout(x),

(□+μ2out(x)=0  を満たすように定義

されます。

 そしてまたout(x)φin(x)と同じく 

 (□+μ2)<n|φout(x)|0>

 =(μ2-pn2)<n|φout(x)|0>=0

 によって真空から1粒子状態のみを生成

 させます。

 さらに,φin(,t)の展開係数,in(),in()

 out()out()で置き換えるだけで

 φout(,t)のFourier展開が得られます。

 すなわち,

 φout(,t)=∫d3[out()fk(x)+out()fk*(x)] 

(2π)-3/2∫d3(2ωk)-1/2[out()exp(ikx-iωkt) 

out()exp(-ikx+iωkt)];

ωk≡(2+μ2)1/2  です。

 

これから,in()in()についてと同様な, 

エネルギー・運動量演算子:μout(),

out()の交換関係:

 [μ,out()]=-kμout(),および,

[μ,out()]=kμout^()

が得られます。

 

 そして,自由 Klein-Gordon方程式の解である

 粒子波束g(,t)について設定されるZimmerman

 の弱収束の漸近条件は,

 前記事での 

limt → -∞<α|φ(t)|β>=√Z<α|φin|β>

とは対照的に(といっても-∞を+∞に代えるだけ) 

limt → +∞<α|φ(t)|β>=√Z<α|φout|β>

となります。

 

これが,形式的な演算子としての収束(弱収束):

 φ(x) → √Zφout(x) (x0 → +∞) 

の意味です。

こうした要請を満たすようにφout(x)の定義を

与えたいと考えます。

 

すると結局,φout(x)のφ(x)による定義式は, 

√Zφin(x)φ(x)-∫d4yΔret(x-y;μ)~(y) 

の遅延Green関数Δret(x-y;μ)を先進Green関数

Δadv(x-y;μ)で置き換えたけで与えられるはず

です。

 

すなわち,φout(x)は, 

√Zφout(x)=φ(x)-∫d4yΔadv(x-y;μ)j~(y) 

で定義されます。

 

ここに, 先進Green関数(advanced Green's function ) 

 Δadv(x-y;μ)は,x0>y0ならΔadv(x-y;μ)=0

 を満たす,Grren関数の満たすべき方程式:

 (□+μ2adv(x-y;μ)=δ4(x-y)の解です。

 

規格化定数√Zは再びφout(x)が真空から1粒子状態

を生成するときに単位振幅になるように導入されます。

 

よって,0|φ(x)|p>=√Z0|φout(x)|p> 

√Z∫d3(2π)-3/2(2ωk)-1/2<0|out()|p> 

√Z(2π)-3/2(2ωk)-1/2exp(-ipx)です。

 

以上からφout(x)の交換子の真空期待値は自由場のそれ

と同じことがわかります。

 

実は,前回の記事では書き忘れましたが,同じ理由で, 

 φin(x)の交換子の真空期待値もφout(x)のそれと

 同じく,自由場のそれと同じです。

 

 つまり,0|[φin(x),φin(y)]|0>

 =0|[φout(x),φout(y)]|0>iΔ(x-y)

 です。

 

 こうした交換子が実際には単なるc-数であり, 

 [φin(x),φin(y)]=[φout(x),φout(y)]

 iΔ(x-y)と書けることがZimmermanによって

 証明されています。

 

(※ただし,Δ(x-y)は謂わゆる不変デルタ関数で

同時刻x0=y0ときにはΔ(x-y)=δ3(),

そして,xとyが空間的(space-like)に離れているとき,

つまり,(x-y)={(x0-y0)-()}< 0

のときにはΔ(x-y)=0 です。※)

 

さて,次はLSZの還元公式(Reduction Formula)を用いて, 

S行列要素:

βα=<β;out|α;in>=<β;out||α;in> 

=<1,,..,;out|1,,..,;in 

=<0|out()..in()|in(1)..in()|0> 

を後に明確に定義するGreen関数:

0|T[φ(x)..φ(x)]|0>に結び付ける項目に

進む予定ですが。。。

(※TはT積(時間順序積)を示す記号)

 

その前に,私的には常に大いに関心のあるLie群と対称性, 

ネーター(Noether)の定理と保存量等について私的注釈を

述べておきます。

 

ここから後は全て,私の※[注]です。

 

φin(x),および,φout(x)の定義式: 

√Zφin(x)=φ(x)-∫d4yΔret(x-y;μ)j~(y),

および,

√Zφout(x)=φ(x)-∫d4yΔadv(x-y;μ)j~(y)

によって.

漸近場:φin(x),およびφout(x)が対称性変換の下

φ(x)と同一の変換性を持つことから,エネルギー・

運動量演算子μ固有状態を|α;in>や|β;out>

として構成可能であるなことなどを既に示しましたが,

 

その前提となる対称性変換の下での場 φ(x)の変換性と

ネーターの定理などについて要約します。

 

まず,より一般的な場として,場φ(x)が内部空間のm次元

ベクトル,φ(x)=(φ1(x),..,φm(x))T

(各φ(x)はスカラー場)と表わすことができて,

波動方程式(□+μ2)φ(x)~(x)

(~(x)=(~1(x),..,~m(x))T )

に従う場合を考えます。

 

漸近場としてIncoming-fieldの方をとり上げて, 

m次元ベクトル

φin(x)=(φin1(x),..,φinm(x))T  

√Zφin(x)=φ(x)-∫d4yΔret(x-y;μ)~(y) 

で与えられるとします。

 

そこで,もしも,ある物理量と成り得るHermite演算子

,i[,φr(x)]=-Σs=1mλrsφs(x)(r=1,..、m)

なる変換性を持つなら,

 

i[,~r(x)]=i(□+μ2)[,φr(x)]

=-Σλrs~s(x)となるので,

i[,φinr(x)]=-Σλrsφins(x)も成立する, 

というのがφin(x)(同様に,φout(x))も同じ対称性変換

の下で,φ(x)と同一の変換性を持つことの根拠でした。

 

さて,φ(x)=(φ1(x),..,φm(x))T において, 

φr(x)→φr(x)=φr(x)-εΣλrsφs(x) 

(εは無限小)なる変換に対する理論の不変性は 

量子力学においては,|α>,|β>を任意の状態と

するとき,これに伴なう状態のユニタリ変換 

|α> → |α'>=(ε)|α>,

|β> → |β'>=(ε)|β> を行わせる

ユニタリ演算子 (ε)が存在して,

<α|φr(x)|β>=<α'|φ'r(x)|β'> 

=<α(ε)-1|{φr(x)-εΣλrsφs(x)}|(ε)β> 

が成立することを意味します。

 

すなわち,この変換に対して理論が不変に保たれるのは 

あるユニタリ演算子 (ε)があって 

(ε)φr(x)(ε)-1φr(x)-εΣλrsφs(x) 

が成立するとき,そのときに限ります。

 

ユニタリ演算子 (ε)はεが無限小なので をある

Hermite演算子(すなわち)として,

(ε)≡exp(iε)=1+iεと書くこと 

ができます。

 

すると,(ε)φr(x)(ε)-1φr(x)-εΣλrsφs(x)

において

左辺=(1+iε)φr(x)(1-iε)

φr(x)+iε[,φr(x)]と書けるので,

これは 

φr(x)+iε[,φr(x)]=φr(x)-εΣλrsφs(x)  

を意味します。

 

よって,i[,φr(x)]=-Σλrsφs(x) が導かれます。

 

このときのHermite演算子をこの対称性変換の生成子

(generator)と呼びます。

 

例えば座標軸の(無限小)平行移動 μ→x’μ=xμ-εμ

生成子をμとすると,φLorentzスカラーなので

φ'(x’)=φ(x)です。

 

これはつまり,x’=x-εより,

x=x'+εとして右辺に代入し,x'を改めてxと書くことで

φ'(x)=φ(x+ε)=φ(x)+εμ(∂φ(x)/∂xμ) 

を意味します。 

 

一方,生成子の定義から,

(ε)=exp(iεμμ)=1+iεμμ 

,φ'(x)=(ε)φ(x)(ε)-1φ(x)+iεμ[μ,φ(x)] 

ですから,i[μ,φ(x)]=∂φ(x)/∂xμ

が成立します。

 

この平行移動の生成子μははDiracの量子力学のテキスト

にも記されているように,エネルギー・運動量演算子と解釈

されます。

 

そして,i[μ,φ(x)]=∂φ(x)/∂xμから

前記のようにφin(x)に対しても

i[μ,φin(x)]=∂φin(x)/∂xμ 

が成立することが導かれるため,

φin(x)についても

(ε)φin(x)(ε)-1φini)+iεμ[μ,φin(x)]

φin(x)+εμ(∂φin(x)/∂xμ) 

φin(x+ε) となります。

 

そこで,φ(x+ε)=(ε)φ(x)(ε)-1 

exp(iεμμ)φ(x)exp(-iεμμ),

かつ.  

φin(x+ε)=(ε)φin(x)(ε)-1 

exp(iεμμ)φin(x)exp(-iεμ)ですが,

無限小変換でなくても,この対称性から,

φ(x)==exp(i)φ(0)exp(-i),および, 

φin(x)=exp(i)φin(0)exp(-i)

と表現できることがわかります。

 

場の演算子φのユニタリ変換

φ(x)=exp(i)φ(0)exp(-i) 

に対応する状態ベクトルの変換は

|α,x>=exp(i)|α>ですが,

これを,特に,0についてのSchroedinger表示

Heisenberg表示の対応:

φ(,t)=exp(i)φ()exp(-i).

および,|α,t>=exp(i)|α>と対比してみると,

その4次元的一般化となっているのがわかります。

 

このように,時空の一様性(平行移動不変性,または,

時空のどこに座標原点をとっても理論は同じ)から,保存量

としてのエネルギー・運動量の存在が導かれました。

 

一方,ここでは言及しませんが,時空の等方性

(4次元回転不変性,または,時空の座標軸をどの向きにとって

も理論は同じ)から,保存量としてのブーストや回転の角運動量

の存在が導かれます。

 

こうした時空にかかわる対称性とは別に,抽象空間 or

内部空間対称性として,

例えばπ中間子(中性のπ0と電荷を持ったπ±)の場φ(x)を 

荷電空間(Isotopic space)のスピンSに相当するアイソスピン

が1のベクトルと考えることができて,

φ(x)(φ1(x),φ2(x),φ3(x)) と書けます。

 

このとき,φ0(x)=φ3(x),

φ(x)=(1/√2){φ1(x)-iφ2(x)}, 

φ(x)=(1/√2){φ1(x)+iφ2(x)} 

と定義します。

 

そうして,これらから生成される状態として

>=φ(x)|0> (j=1,2,3)とすると 

0>=|π>=(0,0,1),

>=(1/√2){|π>+i|π>}(1/√2)(1,i,0)T,

>=(1/√2){|π>-i|π>}(1/√2)(1,-i,0)

ですが,

これがそれぞれ,π0の1粒子状態

表わしています。

 

最右辺の列ベクトルは,このアイソスピン空間(荷電空間)

時空の3次元空間に類似した3次元ベクトル空間と

見たときの状態ベクトルの3次元ベクトル表現です。

 

ただし,複素成分を許す特殊な複素3次元ベクトルなの

線型代数学でいう,ユニタリ内積を付与された線型空間

=ユニタリ空間です。

 

 この内部空間の等方性は,普通の空間の等方性

 =3次元回転対称性と同じです。

 それ故,アイソ空間回転の生成子

 であるアイソスピン:(1,2,3),3次元空間回転

 の生成子である角運動量 スピン:(1,2,3) 

 の3次元表現と同じ行列表現,()jk=iεijk

 を持つと考えられます。

 

 すなわち,角度θ1)の回転の

 ユニタリ変換の演算子は,U(θ)=exp(iIθ)

 ですが,

 

 特にの3軸の周りのθだけの回転なら

 U(θ)=exp(iθ)であり,

 その3次元行列表現では,

 U(θ)(a1,a,a)

 =exp(iθ)(a1,a,a) 

 =(cosθa1-sinθa,sinθa1+cosθa,a)

 となるのは明らかですから,

 もしもθ=εの無限小変換なら,

 U(ε)=(1+iε(a1,a,a)

 =(cosεa1-sinεa,sinεa1+cosεa,a)

 =(a1-εa,εa1+a,a) 

 =(a1,a,a)ε(-a,a,0) と書けます。

 

 したがって,

 ()(a1,a,a) =(ia,-ia,0)

 ですから,()jk=iε3jk が得られます。

 

 この変換性は演算子としては表記の都合上

 θ1)無限小として

 

 (θ)φ(x)(θ)-1φ(x)+iΣθ[,φ1(x)]

 =φ(x)-Σi,kθεijkφ(x)

 

 or i[,φ(x)] =-Σεijkφ(x)

 と表現されるわけです。

 今日はここまでにします。

 

 参考文献: J.D.Bjorken & S.D.Drell

“Relativistic Quantum Fields”(McGrawHill) 他

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014年10月13日 (月)

今日の癒し動画(本田三姉妹フィギュア)

 むずかしそうな数式ばかりの記事では,疲れるので

 アブナイロリコン爺さんは女優の本田望結(みゅう)ちゃんを含む

 本田三姉妹 がフィギュアスケートする動画をYoutubeで探してブログに転載し,心の癒しとします。癒し動画は久しぶりですね。

 最近は,火,水,木.金だけ出勤で土日月休みにしてますが今日10/13の月曜日は世間でも祝日で休みのところが多いようです。

 私は会社(作業所)に出れば出たで,毎日わずかの間ですが昼に天使を見る(見守るだけ)という幸せな時間もあって,今は本当にお金も何もないですが,人生の中では,とてもしあわせを感じています。

 

(※ 2010年12/20の過去記事 「天使と隣合わせ」 参照)

 衣食が足りていて暑さ寒さがしのげれば,それだけで十分です。

 

(Freedom's  just another word for  nothin' left  to lose;"Me and Bobby-Macgee " Janis Joplin より 

 

(※2010年7/30の記事「デジャブ(既死感?)」参照)

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2014年10月12日 (日)

場の量子論におけるS行列とGreen関数(2)

 場の量子論におけるS行列とGreen関数」の続きです。

 

 すぐ前の記事では,粒子の場φ(x)の説明の前にS行列の

  説明から入ってしまいましたが,改めて順を追って対象と

  する粒子場の導入から理論を展開します。

 

粒子の場は,作用:S=∫Ldt=∫(x)dxにおける 

Lagrangian密度が, 

(x)=(1/2)∂μφμφ-(1/2)μ02φ2(x)+(x) 

で与えらっるような簡単な実スカラー場φ(x)とします。

 

ここでの相互作用カレント(x)は相互作用する他の

粒子場φのみから成る関数で,φの時間微分:

φdφdot≡(∂φ/∂t)は含まない場合を想定します。

 

また0はくりこみ理論でいう粒子の裸の質量(bare mass)

です。

 

対象粒子が単独で存在して全く相互作用がないの場合,

その粒子の質量は裸の質量ですが相互作用をするとその効果

で着物を着て質量がδμだけ増加してμ=μ0+δμとなり,

実際に観測で質量として評価されるのはμ0ではなくμである

というのが,この場における質量のくりこみです。

 

裸の質量μ0に対してμは物理的質量と呼ばれます。

実際に観測機器と相互作用して観測される質量は物理的

質量μであり,これが自由粒子の現実の質量なのですが

 

このくりこみ理論における困難は,理論に基づいて摂動など

の方法でδμを具体的に計算すると,これが無限大に発散

することにあります。

 

しかし,これによって理論を補正して,ときには発散して

しまうこうした物理量の値そのものではなくて,何らかの

比率とか係数という形でその他の種々の物理量を計算した

結果,有限値が得られる場合,この着物を着た効果のために 

裸の物理量の値が補正され,

例えばQEDなどでは非常に高い精度で実測値に一致する

計算値が得られます。

そういう意味で,くこみには理論展開の中途では矛盾したり

説明不可能な計算の部分があっても,最終的には実験観測値

を正確に再現予測できる「有効理論」としての意味があります。

 

ここで,有効理論というのは,医療でいうと,病原菌という原因

を除去することで病気を治す原因療法ではなく,症状を抑える

ことで病気治癒を目指す風邪薬のように,何故効くのか?の

理由ははっきりしなくでも,治療効果のある謂わゆる対症療法 

のようなものというイメージで解釈しています。

(※余談ですが,基礎理論=根本的なしくみがわからなくても,

それを使えば実際に正しい値を計算できて,

例えばそれを使えば実用で必要な科学機器などを正しく作成

できるなら,それでいいじゃないか?という思想,立場なら

それもいいのですが,。。。

私や他の基礎理論研究者は納得できないとダメという

人種でしょう。※)

 

さて,場φ(x)の正準共役演算子は,

π(x)=∂L/∂φd=φd(x)です。

 

φ(x)は,

(x)=(1/2)∂μφμφ-(1/2)μ02φ2(x)+(x) 

から得られる作用:S=∫(x)d4xに対する

変分原理(作用原理:δS=δ∫(x)d4x=0 から

従うEuler-Lagrange方程式:

μ(∂L/∂μφ)-∂L/∂φ=0 (∂μ≡∂/∂xμ))

に一致するKlein-Gordon型の波動方程式

(□+μ02)φ(x)=(x) を満たします。

 

しかし,右辺の相互作用カレント(x)を補正して質量の

くりこみδμをも包括した形のカレント

~(x)として,カレントを,~(x)≡(x)-μ02+μ2

(x)+(μ0+δμ)2-μ02 あるいは,

δμ2=μ2-μ02として~(x)≡(x)+δμ2 

と定義し直すと,

 

φ(x)は波動方程式(□+μ2)φ(x)=~(x) 

を満たすという形に書けます。

 

そして,さらに場φ(x)とその正順共役 π(x)は,

同時刻の正準交換関係:

[φ(,t),φ(,t)]=0 ,

[π(,t),π(,t)]=0 ,および,

[π(,t),φ(,t)]=-iδ3()

を満たす演算子である,というのが,スカラー場の

第二量子化の骨子です。

 

ここで,この粒子が相互作用をせず単独で自由に物理的粒子

として存在する状態を作るための演算子を考え,それを

φin(x)とします。

 

φin(x)は正確な場φ(x)と(x)の中に存在する他の任意

の場の適当な関数によって形成されます。

 

そしてφin(x)の存在を,その陽な形を作ることで示します。

 

φin(x)は真空から自由な物理的スカラー中間子を生成する

演算子である,という望ましい特徴を有することを保証する

ために,自由場が持つのと同じ次の性質を割り当てます。

 

1.φin(x)は平行移動とLorentz変換の下で対応する場φ(x) 

と同じように変換する。

 

この選択はφin(x)によって作られる1粒子状態の共変性

を保証します。

 

特に平行移動についてはμを状態の運動量を示す演算子

としてi[μ,φin(x)]=∂φin(x)/∂xμ  

 or i[μ,φin(x)]=∂μφin(x)

が成立します。

 

2.φin(x)の時間的発展は物理的質量 mを持った自由粒子

自由Klein-Gordon方程式で記述される。

 

すなわち,(□+μ2)φin(x)=0 です。

 

 これら2つの要請からφin(x)は真空から物理的1粒子状態

を生成することが導かれます。

 

これを確認するため,任意のμの固有状態 |n>:

^μ|n>=pnμ|n>を考え,真空状態との次のような

行列要素を作ります。

 

すなわち,i∂μ<n|φin(x)|0>=<n|[μ,φin(x)]|0> 

=pnμ<nin(x)|0> です。

 

 故に,-□<nin(x)|0>

 =-(∂2/∂t2+∇2)<n|φin(x)|0>

 =-∂μμ<nin(x)|0>=pnμi∂μ<n|φin(x)|0> 

=pnμ<nin(x)|0> より,

 

-□<nin(x)|0>=pn2<n|φin(x)|0> 

が得られます。

 

そこで,

(□+μ2in(x)=0 から,(□+μ2)<n|φin(x)|0> 

2-pn2)<n|φin(x)|0>= 0  です。

 

 それ故,真空 |0>からφin(x)によって生じる状態:

 φin(x)|0> ,状態の4元運動量 pnμがpn2=μ2

 を満たす状態,特に質量μの1粒子状態のみです。

 

 何故なら,μの固有状態が完全系を形成するという仮定

 からφin(x)|0>はμの固有状態の線型結合で表わされる

 はずです。

 

 そして,Hermite演算子の異なる固有値に属する固有ベクトル

 は直交することから,<n|φin(x)|0>≠0なるときには,

 φin(x)|0>の中の|n>と同じ固有値の成分のみが寄与して

 残ります。

 

つまり,pn2=μ2を持つ成分のみが状態φin(x)|0>に

ゼロでない寄与をしますが,|n>は任意のμの固有状態

ですから,結局,φin(x)|0>を構成する全てのμの固有

状態はその固有値 pnμがpn2=μ2満たすと結論される

わけです。

 

既に,自由実スカラー場の理論から,自由Klein-Gordon

方程式 (□+μ2)φin(x)=0に従う場 φinは,Fourier展開

 

φin(,t)

=∫d3[in()f(x)+in()f(x)] 

で与えられることを知っています。

 

ただし,f(x)=(2π)-3/2(2ωk)-1/2exp(-ikx), 

(x)=(2π)-3/2(2ωk)-1/2exp(ikx),

0=ωk=(2+μ2)1/2で,ikx=ikωk t-ikx

です。

 

そして,また,in()=i∫d3k(x)∂0φin(x), 

in()=i∫d3k(x)∂0φin(x) です。

 

ここで,微分演算子の記号∂0は, 

(t)∂0b(t)=a(t)(∂b/∂t)-(∂a/∂t)b(t) 

で定義されます。

 

演算子in()は,i[μin(x)]=∂μφin(x)

から得られる交換関係を満足します。

 

すなわち,[Pμ,in()]=-kμin(), 

および,[μ,in()]=kμin ()

です。

 

真空 |0>にin()を繰り返し適用することによって,

一般のN粒子固有状態を作り上げることができます。

 

すなわち,

|1,2,..,N;in

in+(1)in(2)..in(N)|0> 

置けば,ゼロ-エネルギーの一意的な真空状態の仮定

によって.in()|0>=0 なので,

 

μ|1,2,..,N;in

μin+(1)in(2)..in(N)|0> 

=Σ=1Nμ|1,2,..,N;in> 

が成立します。

 

そして,M≠Nか,または,M=Nでも,(1,2,..,M)

(1,2,..N)と完全には一致しない場合には, 

常に<1,2,..,M;in|1,2,..N;in>=0

です。

 

ここで,これらのことは1,2,..,M,および,

1,2,..N の順序には無関係です。

 

そして,数Nと運動量μにの全ての可能な選択によって

作られる固有状態の集合は完全系をなすと仮定されています。

 

このφin(x)をφ(x)がt→ -∞ の極限で収束する

物理的自由粒子を示す漸近場と考えるとき,このφin(x)

φ(x)で表現するために質量をくりこんだ形の方程式

 

(□+m2)φ(x)=(x)+δm2φ(x)=~(x)

を利用します。

 

そして,新しいカレント~(x)が散乱を生じる源として

扱われます。

 

φ(x)からこうした散乱波を除去すると,φin(x)で

与えられる物理的質量mを持って伝播する自由波と

なります。

 

これは,φin(x)が, 

√Zφin(x)=φ(x)-∫d4yΔret(x-y;μ)~(y) 

のように表わされることを示唆しています。

 

ここに,x0<y0ならΔret(x-y;μ)=0を満たす

Δret(x-y;μ)は,遅延Green関数で,方程式:

(□+μ2)∫d4yΔret(x-y;μ)=δ4(x-y)

を満足します。

 

逆に,φin(x)を

√Zφin(x)=φ(x)-∫d4yΔret(x-y;μ)~(y) 

で定義すると,これは入射場I-nfieldが満たすべき条件: 

i[μ,φin(x)]=∂μφin(x),

および,(□+μ2)φin(x)=0  を確かに満足します。

 

(※ 何故なら,まず,~(y)はスカラー演算子なので, 

√Zφin(x+a)

φ(x+a)-∫d4yΔret(x+a-y;μ)j~(y) 

exp(ia)φ(x)exp(-ia)

-∫d4zΔret(x-z;μ)~(z+a) 

exp(ia)[φ(x)-∫d4zΔret(x-z;μ)j~(z)]

exp(-ia)より,

√Zφin(x+a)

=√Zexp(ia)φin(x)exp(-ia) が成立します。

 

定数 √Zは,真空から1粒子状態を生成する行列要素

に対して単位振幅をφin(x)の規格化によって取るように

するために導入されたくり込み定数と呼ばれるものです。

 

φ(x)=√Zφin(x)+∫d4yΔret(x-y;μ)~(y)

なる形は,0 → -∞に対し,

0<y0なら Δret(x-y;μ)=0 に従って相互作用項

が消えます。

 

それ故,x0 → -∞に対してφ(x) → √Zφin(x)

となり因果律の直感的観念に従って場の演算子が入射自由波

に帰することを示唆しています。

 

φ(x) → √Zφin(x) as x0 → -∞と同様な漸近条件

は通常1粒子の通常の量子力学の波動関数に適用されていて,

直感的な伝播関数論議において拡張されています。

 

すなわち,始状態粒子と終状態粒子の相互作用を分離するため

に断熱仮定を使用する代わりに相互作用領域と重ならない

局所化された解を示す波束を作ることによって同等な分離を

遂行しています。

 

場演算子の等式

φ(x)=√Zφin(x)+∫d4yΔret(x-y;μ)~(y)は, 

上記漸近条件の演算子としての表現ですが,

~(x)がx0 →-∞においても自己相互作用項:δμ2φ(x)

を含んでいるので,x0 → -∞でもφ(x)を相互作用 ~(x)

から分離することが不可能となるため,このままでは矛盾を

生じます。

 

しかし場の量子論で波束に対応するのは場の演算子ではなく

その行列要素です。

 

漸近条件が適用さるべきは,演算子の行列要素にであって

演算子そのものにではありません。

 

Lehmann,Symmnzik,Zimmermannによって述べられた正確

な漸近条件は,次のような形です。

|α>,|β>を任意の規格化可能な状態とし,φ(x)を

空間的な領域でぼかすことで場の演算子 φ(t)を

定義します。

 

すなわち,φ(t)≡i∫d3(,t)∂0φ(,t)

で定義します。

 

ただし,g(x)=g(,t)は任意の規格化可能な

Klein-Gordon方程式の解です。

すなわち,(□+μ2)g(x)=0 です。

 

そして,漸近条件は,

limt→-∞<α|φ(t)|β>=√Z<α|φin|β> 

であるとします。

ここにφin(t)≡i∫d3(,t)∂0φin(,t)

であり,Greenの定理から,時間tに依存しません。

 

(※ 何故なら,(d/dt)[∫d3(,t)∂0φin(,t)] 

=∫d3(∂/∂t)[g(,t)∂0φin(,t)]

 

=∫d3[g(,t)(∂2φin/∂t2)-(∂2/∂t2)φin(,t)] 

=∫d3[g(,t)∇2φin(x,t)-∇2(,t)φin(,t)]

 

=∫d3x∇[g(,t)∇φin(,t)-∇g(,t)φin(,t)] 

0です。 ※)

 

漸近条件:limt→-∞<α|φ(t)|β>=√Z<α|φin|β>

は,「弱い漸近条件」と呼ばれています。(※弱収束)

 

以下では,漸近条件を,φ(x) → √Zφin(x)(x0 → -∞)

と書くときには,これは,上のLSZの正確な叙述を意味すると

します。

 

初期の粒子生成演算子で形成される状態, 

|1,2,..,N;in

in(1)in(2)..in(N)|0>は,

in()=i∫d3(x)∂0φin(x)により,

単色平面波 (x)=(2π)-3/2(2ωk)-1/2exp(ikx)]

に近づくf(,t)に対するφinf*で形成される規格化可能

な状態の極限と理解さるべきです。

 

入射状態(incoming-states)の完全系と漸近条件は散乱実験に 

おいてt→-∞における始状態の動力学を特定するために

必要な全ての条件です。

 

もしも,Z≠0なら

√Zφin(x)=φ(x)-∫d4yΔret(x-y;μ)j~(y) 

は初期の散乱状態を構成するための場の演算子を定義します。

 

ここでは局所的Lagrangianを場の演算子によって物理的理論

を数学的に理想化して扱っているためエネルギー無限大に

おける理論の激しい挙動故にZ≠0であるということが保証

できません。

 

もしも現在の定式化が未知のより精巧な理論の局所的極限

であるなら実際にあり得ることです。

 

このことに留意してφ(x)が真空から1粒子状態を生み

出す振幅の平方Zに対する一般的表現をスペクトルに課した

初期の仮定:1,2,および,正準交換関係から正式に導出

できることについて進めてゆきます。

 

いつもよりやや長くなって1記事の大きさの限界が心配

ったので,今日はここまでにしました。

 

参考文献: J.D.Bjorken & S.D.Drell

"Relativistic Quantum Field”(McGraw-Hill)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014年10月11日 (土)

場の量子論におけるS行列とGreen関数(1)

2010年に「場理論におけるS行列とLSZの公式」というシリーズ記事 

(1)~(5)まで書いてアップしました。

 

ここで,S行列(S-matrix)というのは,散乱行列のことです。

 

つまり,粒子の衝突・散乱現象を,ある一定速度で運動していた

粒子が別の標的粒子と衝突した後,最終的にはどの方向に飛んで

いくか?,始状態 |i>から終状態 |f>への遷移現象と見た

ときの遷移振幅 <f,t|i,t>をある行列Sの(f,i)

成分 Sfiと見なす行列の呼称がS行列なのです。

 

正確には,S行列(S-matrix)は,Scattering-matrixです

から,単に散乱行列の英語読みに過ぎません。

 

 そして, LSZの公式というのは,Lehmann,Symmnzik,Zimmermann

により提出された場の理論でのS行列を求めるルールの数学的

定式化の一つです。

 

これも正しくはLSZの還元公式(Reduction-formula)と呼ばれて

います。

 

何故,唐突にLSZの公式なるものを取り上げて考察するのか?

というと,これは,正準形式,経路積分形式のいずれの定式化

によらず,散乱現象の確率計算に関わる振幅,あるいはS行列

を,より簡単に計算することが可能なGreen関数と呼ばれるもの

に厳密に結びつける根拠をなす公式であるからです。

 

現状で,散乱現象の計算においてGreen関数を考察する意味を,

私自身が納得できる理論的基盤としては,唯一これしかない

と思います。

 

これらの話の種本=参考文献はJ.D.Bjorken &S.D.Drellの

“Relativistic Quantum Field”の第16章です。

第16章といってもこのテキストは第11章から始まっています。

 

1章から第10章はこのテキストを読み始める前に読むべきと

されている同じ著者の“Relativistic Quantum Mechanics”

の方にあります。

 

まあ,以下に書く内容は,単に,過去記事の

「場理論におけるS行列とLSZの公式」を(1)~(5)の順に全て

再掲載するなり,または参照して頂くだけでも同じなのですが,

 

少し思い立つことがあってこれらを順不同で編集し直して解説

してみようと思います。

 

過去記事では,議論は漸近場のIncoming-fieldとOutgoing-field

の説明から入るのですが.過去記事ではシリーズの3番目:

場理論におけるS行列とLSZの公式(3)」(2010年7/3)

にあるS行列の定義と性質についての記述から話を始めます。

 

さて,周囲には何も存在せず,何の影響も受けない,つまり全く

相互作用をせず自由に慣性運動しているのみの自由粒子を完全

に指定する固有の量子数には,4元運動量Pμの他にスピン,電荷,

バリオン数,レプトン数,そして,クォーならカラーやフレイバー

の自由度などがあります。

 

すなわち,自由粒子の状態は4元運動量に加えて,その粒子を特徴

付ける電荷とか奇妙さ(strangeness)のような全ての内部量子数

で指定されるのですが,

ここでは簡単のため,それらを1つの運動量を示す記号Pで代表 

させることができると仮定します。

 

まず.量子数P1,P2,..,Pnを持つ互いに相互作用をしてない

空間的(space-like)に離れたn個の物理的粒子系があるという

始状態から出発します。

 

この状態を|α;in>≡|P1,P2,..,Pn;in>で記述します。

 

 ただし,先に述べたように,,ラベルPj(j=1,2,..,n)は

粒子jの4元運動量に加えて粒子jを特徴付ける全ての内部量子数

を表わしています。

 

そうした始状態 |α;in>≡|P1,P2,..,Pn;in>から同様に 

設定された終状態 |β;out>≡|P1’,P2’,..,Pm’;out> 

と遷移をするときのS行列の(β,α)要素を 

βα≡<β;out|α;in>で定義します。

 

ちょっと気になったので,この定義を,通常の非相対論的理論 

量子力学のテキストで一般に与えられている直感的なS行列 

定義と比較してみます。

 

2010年5/18の記事「散乱の伝播関数の理論(5)」では,終状態と

始状態の対 (f,i)に対する遷移振幅,またはS行列要素は,上述

の普通の意味のS行列の式:

filimt→∞∫φf*(,t)Ψi(+)(,t)d3 

limt→∞<φf(,t),Ψi(+)(,t)>

で定義されています。

 

ただしΨi(+)(,t)はt→-∞ で運動量(波数)iの入射平面波

なるという境界条件を持ったSchrödinger方程式の正確な散乱解

です。

 

つまり,fiは入射粒子波:Ψi(+)(,t)が時間発展してt→+∞

でとる状態の,与えられた終状態:φf(,t)への射影振幅に等しい

ものです。

 

このSfiβα≡<β;out|α;in>に似た形に書き直すため,

t→+∞ で量子数f(運動量f)の自由平面波:φf(,t)に

近づくというout-境界条件を持ったSchrödinger方程式の正確

な散乱解Ψf(-)(,t)を導入します。

 

Ψf(-)(,t)は,自由平面波に加えてt→+∞ となるにつれて

散乱体に収束して消えていくような球面波の重ね合わせから成

っています。

 

つまり,このΨf(-)(,t)は「散乱の伝播関数の理論(5)」での

表式:Ψ(,t)=φ(,t)

+∫d410(,t;1,t1)V(1,t1)Ψ(1,t1) 

において普通の遅延Green関数 G0を先進Green関数 G0adv

置き換えて得られるSchrödinger方程式の1つの解です。

 

つまりf(-)(,t)は,

Ψf(-)(,t)=φf(,t)

+∫d410adv(,t;1,t1)V(1,t1f(-)(1,t1) 

を満足します。

 

そして先進Green関数G0advは,t>t1ならG0adv(,t;1,t1)=0  

となるような伝播関数です。

(※ 先進Gren関数とは古典電磁気学でも出現して一見では矛盾する

ように見える未来から過去への波の伝播を意味する球面波です。)

 

そこで,t→ +∞ では.Ψf(-)(,t)→φf(,t)であり, 

遷移振幅行列という意味でのS行列要素は, 

filimt→∞∫φf*(,t)Ψi(+)(,t)d3 

limt→∞<φf(,t),Ψi(+)(,t)> ですが,

 

これは,Sfi=limt→∞<Ψf(-)(,t),Ψi(+)(,t)> 

limt→∞∫d3Ψf(-)*(,0)exp(it)exp(-it)Ψi(+)(,0) 

より,Sfi=<Ψf(-)(,0),Ψi(+)(,0)> なる表式に帰着します。

 

ところが,Ψ(,0)は通常のSchrödinger表示の波動関数

Ψ(,t)から時間依存性を除かれたHeisenberg表示の波動

関数です。Ψ(,t)=exp(-it)Ψ(,0)ですね。

 

そこで,結局,Sfi=<Ψf(-)(,0),Ψi(+)(,0)>は,それぞれ

が散乱境界条件(Outgoing-condition),および,入射境界条件

(Incoming-condition)を持つHeisenberg表示の2つの波動関数

で挟まれた遷移振幅であるという意味で,

 

先に場理論におけるものとして定義したS行列要素 

βα=<β;out|α;in>に概念的に一致し対応している

ことがわかります。

 

さて,前後しますが,

全ての始状態(In-states) |α;in>,および,全ての終状態,

or 散乱状態(Out-states) |β:out>は,共に完全系をなす

別の自由粒子状態の集まりである,という完全性の仮定:

Σα|α;in><α;in |=1,Σβ|β;out><β;out|=1

により,

 

全ての行列要素 Sβα=<β;out|α;in>は,In-stateを

Out-stateに変換する演算子によって得ることができる

とわかります。

 

すなわち,<β;in|≡<β;out|,or <β;out|-1≡<β;in|

で演算子を定義すると, 

βα=<β;out|α;in>=<β;in||α;in>

と書けます。

 

こうして定義したS行列要素は物理的測定と密接に関わる

遷移振幅を表わすので,これこそが我々の中心的関心の対象です。

 

 そして,演繹的に進めるなら,上記のS行列の定義の前に予め

定義して説明しておくべき次の2つの漸近場を想定しています。

 

すなわち,まず,t →t=-∞において,In-state |α;in>を 

生成させたり消滅させたりする生成・消滅演算子を持つ

φ(x)のt→ -∞における漸近場=Incoming field φin(x),

および,t→t=+∞において,Out-state |β;out>を生成

させたり消滅させたりする生成・消滅演算子を持つ,

φ(x)のt→ +∞における漸近場=(Outgoing-field φout(x)

です、 

 

これら漸近場の性質や,状態のスペクトルに課せられた初期の

仮定からβα,または演算子としてのの重要な性質が導かれ

ます。

 

(1)まず,真空状態の安定性(不変性,および非縮退性の仮定)から,

 

00=<0;out|0;in>=<0;in||0;in>については,

|S00|2=1 or <0;in|^=<0;out|=exp(iφ0)<0;in|

です。

 

そして,真空状態は仮定によって一意的であり,exp(iφ0)の

位相φ0をゼロにとることができます。

 

そこで, φ0=0として,<0;out|=<0;in{=<0| と規約します。

 

(※何故なら,<0;in|0;in>=<0;out|0;out>=1ですが

真空状態は一意的なので|0;out>=c|0;in>より

<0;out|0;out>|c|2<0;in|0;in>ですから,

|c|=1よりc=exp(iφ0)と書けます。※)

 

(2)1粒子状態の安定性(定常性)から 

<p;in||p;in>=<p;out|p;in>=<p;in|p;in>=1

です。

 

(※何故なら,規格化された運動量がpの1粒子状態は,他とは

全く相互作用せず単独に慣性運動をする自由粒子の状態であって

一意的であり,|p>のみなので|p;in>=|p;out>=|p>

です。※)

 

(3)は,φin(x)=Sφout(x)-1に従ってIn-fieldをOut-field

変換します。

 

(※何故なら,

<β;out|φout(x)|α;in>=<β;in|φout(x)|α;in> 

ですが,<β;out|φout(x)も1つのOut-stateですから 

<β;out|φout(x)=<β;in|φin(x)と書けます。

 

 

そこで,<β;out|φout(x)|α;in>=<β;in|φin(x)|α;in> 

=<β;in|φout(x)|α;in> が成立します。

 

そこで,<β;in|φin(x)|α;in>=<β;in|Sφout(x)|α;in> 

からβ|β;in><β;in|φin(x)|α;in> 

=Σβ|β;in><β;in|φout(x)|α;in>ですが,

 

In-statesの完全性の仮定によって,β|β;in><β;in|を

に置き換えてして消すことで

φin(x)|α;in>=Sφout(x)|α;in>を得ます。

 

さらに

Σαφin(x)|α;in><α;in |=ΣαSφout(x)|α;in><α;in |

より,φin(x)Sφout(x) を得るわけです。

 

故に,φin(x)=Sφout(x)-1です。※)

 

(4)ここで定義したはユニタリ(unitary)です。

 

何故なら<α;in|=<α;out|によって,|α;out>=|α;in>

ですから,<β;in|SS|α;in>=<β;out|α;out>=δβα

です。

 

故にγ<β;in|S^|γ;in><γ;in||α;in>=δβα, 

つまりΣγβγγα=δβαですから,行列としてSS=1

です。

 

したがって=S-1であり,これからがユニタリ行列である

ことがわかります。これは演算子としてもがユニタリ演算子

であることを意味します。

 

(5)は平行移動かつLorentz不変です。

 (つまり,Poincare'不変です。)

 

 すなわち,x'μ=aμνν+bμを生ぜしめるユニタリ演算子

(a,b)とすれば,この変換で任意の状態 |α>,|β>は,

 

|α> → |α'>(a,b)|α>,

|β> → |β'>=(a,b)|β> 

と変換されます。

 

そこで,任意の演算子のこれらの状態ベクトルによる振幅は, 

<α||β> → <α'||β'>

=<α|(a,b)-1AU(a,b)|β> と変換されます。

 そこで,演算子的には,A → (a,b)-1AU(a,b)です。

 

しかし,この座標系の平行移動やLorentz回転は,同じ時空点の

座標の読みがxからx'=ax+bに変わるといういわばラベル

の張替えに過ぎず,

スカラー場φであれば,それは元の座標系でのφの座標x

での振幅 <α|φ(x)|β>が変換された座標系の

x'=ax+bでの振幅 <α'|φ(x')|β'>となっても

座標軸の向きによって成分が変わることなどないスカラー 

であれば,不変です。

 

すなわち,<α|φ(x)|β>=<α'|φ(x')|β'> 

=<α|(a,b)-1φ(ax+b)(a,b)|β> 

が成立します。

それ故, φ(x)=(a,b)-1φ(ax+b)(a,b), 

あるいは,φ(ax+b)=(a,b)φ(x)(a,b)-1  

です。

 

これら場のPoincare'不変性は上式の場 φを,

φがt → ±∞ において弱収束する漸近場 φin,または,

φoutに置き換えても成立し,

φin(ax+b)=(a,b)φin(x)(a,b)-1,

および,φout(ax+b)=(a,b)φout(x)(a,b)-1

と書けます。

 

そのため,結局,のPoincare'不変性: 

(a,b)SU(a,b)-1 が従います。

 

 (※何故なら,φin(x)=Sφout(x)-1なので,

すぐ上の式から,

 

まず,φin(ax+b)=(a,b)φin(x)(a,b)-1 

(a,b)Sφout(x)-1(a,b)-1 

 =(a,b)SU(a,b)-1(a,b)φout(x)(a,b)-1

 U(a,b)-1(a,b)-1 

 =(a,b)SU(a,b)-1φout(ax+b)(a,b)-1(a,b)-1 

 となります。

 

そこで,'≡(a,b)SU(a,b)-1とおけば, 

'(a,b)-1(a,b)-1'-1より'もユニタリで 

φin(ax+b)='φout(ax+b)'-1となりますが,

 

他方,φout(ax+b)=-1φin(ax+b)ですから。

 

φin(ax+b)='φout(ax+b)'-1

S'-1φin(ax+b)SS'-1です。

さらに-1S'と置けば,-1よりもユニタリ

であり,φin(ax+b)=-1φin(ax+b),

すなわち,Tφin(x)=φin(x)T が得られます。

 

一方,真空 |0>のユニタリ変換|0>は常に真空 |0>の 

ままですから,Tφin(x)|0>=φin(x)|0>=φin(x)|0> 

が導かれます。

 

それ故,真空)|0>にφin(x)の生成演算子in()を繰り返し 

適用して得られる全てのIn-state:|α;in>に対しても 

|α;in >=|α;in >が成立します。

 

したがって,In-statesの完全性から, 

=Σα|α;in ><α;in|=Σα|α;in ><α;in|=1 

を得ます。

それ故,-1'=1より,,

'=(a,b)-1(a,b)-1S が結論されます。※)

 

今日はここまでにします。

 

参考文献: J.D.Bjorken & S.D.Drell“Relativistic Quantum Fields”(McGraw-Hill)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014年10月 5日 (日)

ゲージ場の量子論から(その1)(経路積分と摂動論4)

「ゲージ場の量子論から(経路積分と摂動論)」の続きです。

 

これまでの多体系の量子力学からQED(量子電磁力学)を含む場の理論 

(場の量子論)の話に移行します。

 

§4.2 場の理論における経路積分

 

簡単のためLagrangian密度(φ(x),φ(x))が 

(1/2)∂μφμφ-(1/2)μφint(φ)で与えられる 

実スカラー場:φ(x)の系を考えます。

 

int(φ)は相互作用(interaction)Lagrangianであり,一般には

このスカラー粒子の場φとは異なる,この粒子と相互作用する別の

粒子場をも含みます。

もしも,φだけしか含まないなら,相互作用とはいうものの,自分自身

しか存在せず,他には何の影響も与えない自己相互作用項です。

 

 [注6]:Lを系のLagrangianとするとき,Lagrangian密度

(φ(x),φ(x))とは,L=∫dφ(x),φ(x)) ;

S=∫Ldt=∫dφ(x),φ(x))で定義される

謂わゆる密度を表わしています。(注6終わり)※

 

 この系のHamiltonian:は, 

=∫d[(1/2)π(x)+V(φ(x))]

=∫d(π(x)(x)) で与えられます。

 

ただし,(π(x)(x))は先にLagrangianに対して定義された 

Lagrangian密度と同様,Hamiltonianに対して定義された

Hamiltonian密度です。

 

そして,V(φ)≡(1/2)(∇φ)+(1/2)μφint(φ)であり, 

π(x)は,π(x)=∂/∂φで与えられるφ(x)の共役運動量 

の場です。

 

 ここで,この実スカラー粒子のSchroedinger表示の場と,その

共役運動量の場を,4次元時空座標:x=xμ=(t,)のうちの

時刻t=x0に依存せず空間座標のみに依存する関数の形で

φ(),および,π()と表現します。

 

 これらと,上述の本質的にHeisenberg表示の場,および,その

共役場である φ(x)=φ(,t),および,π(x)=π(,t)

との関係は,φ(,t)=exp(it)φ()exp(-it),および, 

π(,t)=exp(it)π()exp(-it) です。

 

 前節までの素朴な量子力学の経路積分の定式化では,

Schroedinger表示の位置座標演算子;の固有状態は|q>,

同じ座標のHeisenberg表示の演算子:(t)の固有状態は,

|q,t>と書きました。

 

そして,|q>=q|q>,(t)|q,t>=q|q,t>

が成立しますが,これらは,(t)=exp(it)exp(-it),

および, |q,t>=exp(it)|q>なる関係で結びついている

とされました。

 

 これらのアナロジーで,Schroedinger表示の場 φ()

の固有状態|φ>,一方, Heisenberg表示の場

φ(x)=φ(,t)の固有状態|φ,t>と書きます。

 

 すると,φ()|φ>=φ()|φ>,かつ,

φ(,t)|φ,t>=φ()|φ,t>であり,

|φ,t>=exp(it)|φ>です。

 

 つまり,場の理論とは,単に,添字として連続パラメータ

=無限個の空間座標変数 ∈Rを持つ無限自由度の

量子力学系 {φ()}∈R3 と見なせるわけです。

 

 したがって前節のn自由度の{}a=1,2,..,nの添字aを 

読み換えるだけで,ここまでの多体系n自由度の量子力学の経路積分

の式から場の理論のそれを得ることができます。

 

 すなわち,まず,1自由度の系では,遷移振幅の経路積分形は. 

<q,t|q,t 

limN→∞∫dp0(2π)-1Πk=1{dpdq(2π)-1} 

exp[iΣj=0{{p(qj+1-q)/Δt-H(p,q~)}Δt] 

=∫∫(tI)=qI(tF)=qFDpDq 

exp[i∫tItFdt{p(t)q(t)-H(p(t),q(t))}]

 

で与えられました。

 

 そして,これを,n自由度の系の形にするには, 

q → q,p → p(a=1,2…,n)と読み換えるのでした。

 

さらに,a → ,つまりq→ φ(),かつ,p→ π() 

の読み換えで,結局,

<φ,t,t 

=∫∫φ(,tI)=φI()φ(,tF)=φF()DπDφ 

exp[i∫tItFdt∫dx{π(x)φ(x)-(π(x),φ(x))}]

 

=∫∫φ(,tI)=φI()φ(,tF)=φF()DπDφ 

exp[i∫tItFx{π(x)φ(x)-H(π(x),φ(x))}]

 

となります。

 

 ただし,この経路積分は,時間方向(履歴)と空間方向(自由度)

の双方に対する4次元的なものです。

 

(※つまり,Dφのφは,場の量の固有値関数 φ()ですが,

各経路の各時刻tに,それぞれ異なるφ()=φ(,t)=φ(x)

が対応します。※)

 

 表記的に,DφDφ ∝ ΠtI≦t≦tF dφ(x,t)の意味です。

 

[注7]:(閑話休題) 

基本的に4次元的に場:φ(x)=φ(,t)を扱っているにも

関わらず,<